特許第6976421号(P6976421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6976421ポリエーテルエステル共重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976421
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】ポリエーテルエステル共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/672 20060101AFI20211125BHJP
【FI】
   C08G63/672
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-513771(P2020-513771)
(86)(22)【出願日】2018年10月30日
(65)【公表番号】特表2020-532638(P2020-532638A)
(43)【公表日】2020年11月12日
(86)【国際出願番号】KR2018013024
(87)【国際公開番号】WO2019103339
(87)【国際公開日】20190531
【審査請求日】2020年3月6日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0158925
(32)【優先日】2017年11月24日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0130140
(32)【優先日】2018年10月29日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョンナム
(72)【発明者】
【氏名】アン、ヒョンミン
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ−チョル
(72)【発明者】
【氏名】パク、ソン−ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ミョン−ハン
(72)【発明者】
【氏名】イ、チョンヨン
【審査官】 飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−012783(JP,A)
【文献】 米国特許第06833428(US,B1)
【文献】 特開昭62−195017(JP,A)
【文献】 米国特許第04680376(US,A)
【文献】 特開昭52−029893(JP,A)
【文献】 特開平04−108760(JP,A)
【文献】 米国特許第05015759(US,A)
【文献】 特開2000−191758(JP,A)
【文献】 特開平04−352878(JP,A)
【文献】 特開2008−094934(JP,A)
【文献】 特開2002−088144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/672
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテルジオールの含有量が60乃至90重量%であり、25℃での固有粘度が2.0dL/g超過である高粘度ポリエーテルエステル共重合体を製造する方法であって、
a)ジオール、ジカルボン酸およびポリエーテルジオールを触媒存在下で反応させるエステル化反応段階;
b)前記a)段階が完了した反応混合物に追加的に触媒を投入し、減圧下で縮重合させて予備重合物を製造する第1縮重合段階;および
c)b)段階より低い圧力条件下で前記予備重合物を縮重合させる第2縮重合段階;を含み、
前記a)段階で投入されるジオール/ジカルボン酸のモル比は、2.5超過であり、
前記a)およびb)段階で投入される触媒量は、活性金属を基準としてそれぞれ50ppm以上である、
高粘度ポリエーテルエステル共重合体の製造方法。
【請求項2】
前記a)段階は、80乃至150℃に維持される蒸留カラムが設置された反応器で行われる、請求項1に記載の高粘度ポリエーテルエステル共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記a)段階は、150乃至300℃の温度および100torr(13332.2Pa)以上乃至760torr(101325Pa)未満の圧力条件下で行われる、請求項1に記載の高粘度ポリエーテルエステル共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記b)段階は、180乃至250℃の温度および5torr(666.612Pa)超過100torr(13332.2Pa)以下の圧力条件下で行われる、請求項1〜3のいずれかに記載の高粘度ポリエーテルエステル共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記c)段階は、180乃至250℃の温度および5torr(666.612Pa)以下の圧力条件下で行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の高粘度ポリエーテルエステル共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記a)段階およびb)段階で投入される触媒の総量は、500ppm未満である、請求項1〜5のいずれかに記載の高粘度ポリエーテルエステル共重合体の製造方法。
【請求項7】
前記ポリエーテルジオールは、数平均分子量が500乃至3000g/molである、請求項1〜6のいずれかに記載の高粘度ポリエーテルエステル共重合体の製造方法。
【請求項8】
前記ポリエーテルエステル共重合体の25℃での固有粘度は、2.2dL/g以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の高粘度ポリエーテルエステル共重合体の製造方法。
【請求項9】
前記ポリエーテルエステル共重合体のASTM D1238により測定された溶融指数は、12g/10min以下である、請求項1〜8のいずれかに記載の高粘度ポリエーテルエステル共重合体の製造方法。
【請求項10】
前記ポリエーテルエステル共重合体のショアD(Shore D)硬度は、40以下である、請求項1〜9のいずれかに記載の高粘度ポリエーテルエステル共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互引用)
本出願は、2017年11月24日付韓国特許出願第10−2017−0158925号および2018年10月29日付韓国特許出願第10−2018−0130140号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容を本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、ポリエーテルエステル共重合体の製造方法に関し、具体的にはジカルボン酸を出発物質としてポリエーテル含有量が高く、低硬度特性を示し、粘度が高いポリエーテルエステル共重合体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー(thermoplastic poly(etherester) elastomer、TPEE)は、ゴムの弾性とプラスチックの成形加工性を兼備した高機能素材であって、加硫ゴムとPVC(polyvinyl chloride)を代替し、自動車をはじめとする家電、建築資材、IT、日常用品などの広範囲な分野で活用されている。前記TPEEは、ポリエーテルエステル系ブロック共重合体樹脂組成物が代表的である。
【0004】
ポリエーテルエステル共重合体は、ジオールとジカルボン酸から構成されるハードセグメントと、ポリエーテルジオールとジカルボン酸から構成されるソフトセグメントとからなってエラストマーの特性を有する。前記ハードセグメントはエラストマーの機械的物性を提供し、ソフトセグメントはエラストマーの弾性および柔軟性を提供する。
【0005】
このような熱可塑性ポリエーテルエステル共重合体は、商業的にジオール、ジカルボキシレートおよびポリエーテルジオールを原料として、エステル交換反応(ester exchange reaction)させた後、反応生成物を縮重合反応(polycondensation)させる2段階の反応を通じて製造される。
【0006】
一例として、広く知られたTPEEのうちの一つであるポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate;PBT)−ポリテトラメチレンエテールグリコール(poly(tetramethylene ether glycol);PTMG)共重合体は、1,4−ブチレングリコール(1,4−butylene glycol;BG)、ジメチルテレフタレート(dimethyl terephthalate;DMT)およびPTMGを出発物質として、エステル交換反応および縮重合段階を経て製造される。
【0007】
一方、ジカルボキシレートの代わりに相応するジカルボン酸を利用する方法が開発されている。この場合、エステル交換反応でなく、エステル化(esterification)反応が起こり、副産物としてアルコールの代わりに水が生成される。前記PBT−PTMG共重合体を例に挙げると、DMTの代わりにテレフタル酸(terephthalic acid;PTA)を出発物質として用いることができ、DMTに比べてPTAの原価が安いため、経済性を向上させることができるという長所がある。
【0008】
しかし、従前のジカルボキシレートを用いる工程で単に出発物質のみをジカルボン酸に置き換えるようになると、エステル化反応が良好に起こらないため、生産性が落ちるという問題がある。このような現像は、出発物質中のポリエーテルジオールの含有量が高いほど、より深刻化するため、従前に知られたジカルボキシレート基盤工程ではポリエーテル含有量が高い低硬度のポリエーテルエステル共重合体を製造することができなかった。
【0009】
前記問題を解決するために、PBT−PTMG共重合体の製造時、BGおよびPTAを先に反応させてプレポリマーを製造した後、PTMGと反応させる方法が提案されている(Chinese J. Polym. Sci. 33 (2015) 1283−1293)。しかし、前記製造方法は、エステル化反応が2段階に複雑になるという問題がある。また、低硬度ポリエーテルエステル共重合体の粘度を高めるためには、縮重合反応後に追加的に固相重合反応を経なければならないため、製造工程が複雑で大量生産に適していない側面があった。
【0010】
したがって、ジカルボン酸を出発物質として用い、ポリエーテル含有量が高くて低硬度特性を示しながらも、粘度が高いポリエーテルエステル共重合体を製造することができる方法であって、大量生産に適するように工程が単純で経済的なポリエーテルエステル共重合体の製造方法が必要であるのが実情である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Chinese J. Polym. Sci. 33 (2015) 1283−1293
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、ジカルボン酸を出発物質として、固相重合を経ることなく低硬度および高粘度を示し、ポリエーテル含有量が高いポリエーテルエステル共重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために本発明は、
ポリエーテルの含有量が60乃至90重量%であり、25℃での固有粘度が2.0dL/g超過である高粘度ポリエーテルエステル共重合体を製造する方法であって、
a)ジオール、ジカルボン酸およびポリエーテルジオールを触媒存在下で反応させるエステル化反応段階;
b)前記a)段階が完了した反応混合物に追加的に触媒を投入し、減圧下で縮重合させて予備重合物を製造する第1縮重合段階;および
c)b)段階より低い圧力条件下で前記予備重合物を縮重合させる第2縮重合段階;を含み、
前記a)段階で投入されるジオール/ジカルボン酸のモル比は、2.5超過であり、
前記a)およびb)段階で投入される触媒量は、活性金属を基準としてそれぞれ50ppm以上である、
高粘度ポリエーテルエステル共重合体の製造方法を提供する。
【0014】
前記a)段階は、80乃至150℃に維持される蒸留カラムが設置された反応器で行われてもよい。
【0015】
前記a)段階は、150乃至300℃の温度および100torr以上乃至760torr未満の圧力条件下で行われてもよい。
【0016】
前記b)段階は、180乃至250℃の温度および5torr超過100torr以下の圧力条件下で行われてもよい。
【0017】
前記c)段階は、180乃至250℃の温度および5torr以下の圧力条件下で行われてもよい。
【0018】
前記a)段階およびb)段階で投入される触媒の総量は、500ppm未満であってもよい。
【0019】
前記ポリエーテルジオールは、数平均分子量が500乃至3000g/molであってもよい。
【0020】
前記ポリエーテルエステル共重合体の25℃での固有粘度は、2.2dL/g以上であってもよい。
【0021】
前記ポリエーテルエステル共重合体のASTM D1238により測定された溶融指数は、12g/10min以下であってもよい。
【0022】
前記ポリエーテルエステル共重合体のショアD(Shore D)硬度は、40以下であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、原価が安いジカルボン酸を出発物質としてポリエーテル含有量が高い低硬度のポリエーテルエステル共重合体を固相重合なしに固有粘度2.0dL/g超過の高粘度で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書で使用される用語は、単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0025】
本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な形態を有することができるところ、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】
本発明は、ポリエーテルの含有量が60乃至90重量%であり、25℃での固有粘度が2.0dL/g以上である高粘度ポリエーテルエステル共重合体を製造する方法であって、
a)ジオール、ジカルボン酸およびポリエーテルジオールを触媒存在下で反応させるエステル化反応段階;
b)前記a)段階が完了した反応混合物に追加的に触媒を投入し、減圧下で縮重合させて予備重合物を製造する第1縮重合段階;および
c)b)段階より低い圧力条件下で前記予備重合物を縮重合させる第2縮重合段階;を含み、
前記a)段階で投入されるジオール/ジカルボン酸のモル比は、2.5超過であり、
前記a)およびb)段階で投入される触媒量は、活性金属を基準としてそれぞれ50ppm以上である、
高粘度ポリエーテルエステル共重合体の製造方法を提供する。
【0028】
本発明の製造方法によれば、出発物質としてジカルボキシレートの代わりにより安いジカルボン酸を用いて、従前のジカルボキシレート工程を変形しなくてもポリエーテル含有量が高く、低硬度特性を示し、固有粘度が2.0dL/g超過で高い高粘度ポリエーテルエステル共重合体を生産することができる。
【0029】
本発明の製造方法は、従前のジカルボキシレート工程設備または従前のジカルボン酸を利用したPBT製造工程設備を利用して行うことができ、2段階のエステル化反応、固相重合反応が不要であるため、原価および工程運用費用を大幅に節減させることができ、生産性が向上して大量生産工程に適している。
【0030】
本発明で熱可塑性ポリエーテルエステル共重合体は、ジオール、ジカルボン酸およびポリエーテルジオールを出発物質として、触媒存在下でエステル化反応させた後、得られた反応混合物を別途の縮重合反応器に移送して触媒存在下で縮重合する段階を経て製造される。
【0031】
本発明で前記ジオールは、炭素数2乃至10の脂肪族または脂環族ジオールであって、分子量300g/mol以下であるものが本発明の効果実現の側面で好ましい。具体的に、本発明に用いられ得るジオールの例としては、1,4−ブチレングリコール(1,4−ブタンジオール)、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールおよびネオペンチルグリコールなどのような脂肪族ジオール;および1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびトリシクロデカンジメタノールなどの脂環式ジオール;などが挙げられるが、これに制限されるのではない。具体的に、本発明で前記ジオールは、1,4−ブチレングリコールであってもよい。
【0032】
本発明に用いられ得るジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸およびセバシン酸が挙げられるが、これに制限されるのではない。具体的に、前記ジカルボン酸は、テレフタル酸であってもよい。
【0033】
本発明の製造方法では、ポリエーテルを60重量%以上含んで低硬度特性を有するポリエーテルエステル共重合体を、固相重合反応なしに高粘度で製造するために前記ジオールおよびジカルボン酸を特定の含有量比で含む。つまり、低硬度および高粘度のポリエーテルエステル共重合体を固相重合反応なしに製造するために、本発明のエステル化反応段階で投入されるジオール/ジカルボン酸のモル比(molar ratio)は、2.5超過、または2.6以上、または2.8以上であると共に、4以下、または3.7以下、または3.5以下の範囲であってもよい。
【0034】
このようにジオール/ジカルボン酸のモル比が2.5を超えてこそ固相重合過程を経なくてもポリエーテル含有量が60乃至90重量%である低硬度ポリエーテルエステル共重合体を高粘度で製造することができる。
【0035】
前記「低硬度」特性は、ポリエーテルエステル共重合体でポリエーテルの含有量が60重量%以上と高い時に得られる特性であり、具体的にショアD(Shore D)40以下、好ましくはショアD(Shore D)35以下の硬度を有する場合、低硬度ポリエーテルエステル共重合体とみることができる。前記低硬度ポリエーテルエステル共重合体の硬度下限値は特に制限されるのではないが、一例としてショアD(Shore D)20以上、またはショアD(Shore D)25以上であってもよい。このように低硬度特性を有するポリエーテルエステル共重合体は、IT機器のグリップ部、高弾性繊維類などの用途により適宜適用され得る。
【0036】
一方、ポリエーテルエステル共重合体の硬度特性により「高粘度」の基準値が異なるようになるが、高硬度ポリエーテルエステル共重合体に比べて低硬度ポリエーテルエステル共重合体の「高粘度」基準がより高い。具体的に、ポリエーテル含有量が60重量%未満である高硬度ポリエーテルエステル共重合体の場合は、25℃での固有粘度が約1.2dL/g以上である時に高粘度特性を満足すると認められるが、本発明の製造方法により製造される、ポリエーテル含有量が60重量%以上である低硬度ポリエーテルエステル共重合体の場合、25℃での固有粘度が2.0dL/g超過である時に高粘度特性を満足するとみることができる。好ましくは、本発明により製造されたポリエーテルエステル共重合体は、25℃での固有粘度が2.0dL/g超過、より好ましくは2.2dL/g以上である。
【0037】
一方、ジオール/ジカルボン酸のモル比が4を超える場合にも、高粘度共重合体の製造が可能であるが、過量のジオールを除去するために縮重合段階でのエネルギー消耗が大きくなるという短所があるため、4以下のモル比を充足することが好ましい。
【0038】
一方、本発明で最終製造されるポリエーテルエステル共重合体は、ポリエーテル含有量が60乃至90重量%、または70乃至90重量%範囲を満足する。このような範囲を満足する時、低硬度のポリエーテルエステル共重合体を製造することができるという効果がある。
【0039】
製造される共重合体内のポリエーテルの含有量は、エステル化反応に投入されるポリエーテルジオールの含有量を調節することによって調節され得る。具体的に、前記ポリエーテルの含有量範囲を得るために、出発物質であるポリエーテルジオールは、ジオール、ジカルボン酸およびポリエーテルジオールから構成される出発物質総100重量%に対して35乃至90重量%、または40乃至85重量%で用いられる。
【0040】
本発明に用いられ得るポリエーテルジオールは、単独重合体または共重合体の形態であってもよく、具体的な例としては、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールおよびポリヘキサメチレングリコールなどからなる群から選択される1種以上が挙げられるが、これに制限されるのではない。具体的に、前記ポリエーテルジオールは、ポリテトラメチレングリコールであってもよい。
【0041】
この時、前記ポリエーテルジオールの数平均分子量(Mn)は、特に限定されるのではないが、500〜3,000g/mol、1,000〜2,500g/molあるいは1,500〜2,200g/mol範囲であることがポリエーテル含有量が60重量%以上であるポリエーテルエステル共重合体の製造に適しており、本発明の効果を確保することができるため好ましい。前記数平均分子量は、例えば、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)または末端滴定法(酢酸無水物を用いてポリエーテルジオールの末端をアセチル化させ、未反応の酢酸無水物を酢酸で分解させ、アルカリを用いて逆滴定することによってアセチル化されたポリエーテルジオールのOH価を測定し、OH価からポリエーテルジオールの数平均分子量を決定することを含む方法)または1H NMR分析を通じた−OH末端基分析法で決定することができる。
【0042】
ジオール、ジカルボン酸およびポリエーテルジオールを反応させるエステル化反応は、触媒存在下で行われ、この時、前記触媒は当業界に知られた物質が適切に用いられてもい。具体的に、前記触媒は、活性金属としてチタンまたはスズを含む触媒であってもよく、より具体的に前記触媒は、テトラブチルチタネート(tetrabutyl titanate;TBT)、テトラエチルチタネートまたはテトラ(イソプロピル)チタネートのようなチタン系触媒;またはn−ブチルスズ酸、オクチルスズ酸、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシド、ジオクチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、トリ−n−ブチルスズアセテート、トリ−n−ブチルスズクロリド、またはトリ−n−ブチルスズフルオリドのようなスズ系触媒が用いられてもよい。また、前記で言及した触媒以外に、活性金属としてMg、Ca、Mn、Zn、Pb、Zrなどを含む酸化物や酢酸塩のような触媒が単独あるいは組合わせて用いられてもよい。このうち、好ましくはTBTのようなチタン系触媒を用いることができる。
【0043】
一方、本発明で前記触媒は、エステル化反応だけでなく、縮重合段階にも投入される。
【0044】
一般にポリエーテルエステル共重合体の製造時、エステル化(またはエステル交換)反応および縮重合反応の触媒は同一であり、二つの反応間に分離工程を含まないため、最初のエステル化(またはエステル交換)反応開始時、または途中で一定量の触媒を投入した後、縮重合段階で触媒を追加的に投入しなくてもよい。
【0045】
しかし、本発明者らの実験結果、ポリエーテルジオール含有量が高く、高粘度であるポリエーテルエステル共重合体の製造のためには、触媒をエステル化反応段階および縮重合反応段階に分割して投入することが好ましいことが確認された。したがって、本発明ではエステル化段階および第1縮重合段階に触媒を分割投入する。
【0046】
具体的にエステル化反応段階であるa)段階および第1縮重合段階であるb)段階の開始前、触媒の活性金属を基準として、出発物質総重量に対してそれぞれ50ppm以上の触媒を投入し、より具体的にはa)およびb)段階でそれぞれ50乃至250ppm、または100乃至200ppmの触媒を投入する。この時、投入される総触媒の量は、活性金属を基準としてa)およびb)段階を合わせて500ppmを超えないことが好ましい。もし、触媒の使用量が各段階で50ppm未満であれば、触媒量が不足して反応進行率が落ちることがあり、総500ppmを超えれば、副反応を起こしたり、触媒が残留して製品に不純物として作用することがあるため、前記範囲内で適切に調節する。
【0047】
以下、本発明の製造方法を段階別に説明する。
【0048】
本発明のa)段階は、ジオール、ジカルボン酸およびポリエーテルジオールを触媒存在下で反応させるエステル化反応段階であって、ジオールおよびジカルボン酸またはポリエーテルジオールおよびジカルボン酸間のエステル化反応が起こりながら、副産物として水とテトラヒドロフラン(THF)が生成される。
【0049】
前述した本発明の効果を達成するために、前記a)段階の反応温度は、150乃至300℃、または200乃至240℃の温度範囲が適しており、反応圧力は100torr以上乃至760torr未満、または100乃至500torr、または200乃至400torrの範囲が適している。具体的に、出発物質および触媒を反応器に投入した後、攪拌下で0.1乃至10℃/minで昇温して前記温度範囲まで到達するようにした後、約30分乃至4時間、または1乃至2時間エステル化反応を行うことができる。
【0050】
前記エステル化反応は、可逆反応であるため、正反応(エステル結合形成)が持続的に起こり得るようにするためには、副産物である水とTHFを除去しなければならない。しかし、この過程中の出発物質であるジオールが共に蒸発されると原料の損失が発生するだけでなく、高粘度のポリエーテルエステル共重合体を得るためのジオールおよびジカルボン酸のモル比率を確保することができなくなるため、ジオールの蒸発を最小化しながら水とTHFを除去することができる方法が必要である。
【0051】
このために、本発明で前記a)段階は、前述のように100torr以上乃至760torr未満、または100乃至500torr、または200乃至400torrの減圧下で進行するものの、80乃至180℃、または100乃至150℃に維持される蒸留カラムが設置された反応器で行われてもよい。このような条件でエステル化反応の転換率が大幅に向上することができ、ポリエーテルの含有量が高い低硬度のポリエーテルエステル共重合体を製造することができる。もし、常圧(760torr)下で反応を進行するようになるとジオールの蒸発率は低くなるが、エステル化反応の転換率が落ちてポリエーテルエステル共重合体の粘度を十分に高めることができず、減圧下で蒸留カラムなしに進行する場合は、ジオールの蒸発率が過度に高いため、ジオール/ジカルボン酸のモル比を2.5超過に維持することができないという問題がある。
【0052】
この時、前記蒸留カラムは、パッキングカラム(Packing column)、またはトレイカラム(Tray column)が好ましく、より具体的にはストラクチャードパッキングカラム(Structured packing column)が好ましい。
【0053】
前記a)段階が完了すると、次いでb)およびc)の縮重合段階を進行する。縮重合段階は、エステル化反応器と別途の反応器で行われてもよく、蒸留カラムなしに進行されてもよい。具体的に、前記縮重合段階は、a)段階が完了した反応混合物に追加的に活性金属基準50ppm以上の触媒を投入した後に進行される。
【0054】
本発明では前記縮重合段階をb)およびc)の2段階に分けて進行する。前記b)およびc)段階は、実質的に連続して進行されるが、圧力条件で差がある。具体的に、前記b)段階は、過量のジオールを除去する過程であり、c)段階は、ポリエーテルエステル共重合体の粘度を高める過程である。
【0055】
本発明のb)段階は、比較的に緩和された条件で行われる第1縮重合段階であって、a)段階が完了した反応混合物に追加的に触媒を投入して減圧下で攪拌しながら縮重合して予備重合物を得る段階である。
【0056】
前記b)段階の実施圧力は、5torr超過100torr以下、または10乃至50torr範囲が好ましく、実施温度は180乃至250℃、または230乃至250℃範囲が好ましい。このような条件で、a)段階で未反応の過量のジオールは気化して除去される。前記b)段階の反応時間は特に制限されないが、約20乃至1時間、または20乃至40分であってもよい。
【0057】
もし、前記b)段階の実施なしに直ちに5torr以下の高真空で縮重合を進行すれば、未反応ジオールの気化が急激に起こって反応器内に突沸(bumping)現像が発生することがあり、反応物の温度低下が深刻化することがある。また、ポリエーテルエステル共重合体を高粘度で得ることができなくなる問題があり得るため、本発明では本格的な縮重合反応前に、緩和された条件下で予備的に第1縮重合段階を行う。
【0058】
一方、a)またはb)段階では、反応効率向上および製造されるポリエーテルエステル共重合体の物性調節などのために通常使用される1種以上の添加剤と共に投入することができる。
【0059】
使用可能な添加剤の例としては、ポリエーテルエステル共重合体の溶融強度増加のための分枝剤(例えば、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリトリトール、1,1,4,4−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパン、ピロメリット酸、1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸など)、色特性改善のための艶消し剤(例えば、TiO2、硫化亜鉛または酸化亜鉛)、着色剤(例えば、染料)、安定剤(例えば、酸化防止剤、紫外光安定剤、熱安定剤など)、充填剤、難燃剤、顔料、抗微生物剤、静電気防止剤、光増白剤、増量剤、加工助剤または粘度増進剤などが挙げられ、これらのうちのいずれか一または二以上の混合物が挙げられるが、これに制限されるのではない。一例として、ポリエーテルエステル共重合体の熱安全性を高めるために、ヒンダードフェノール(hindered phenol、例えば、Irganox 1098)形態の安定剤を投入することができる。
【0060】
これら添加剤は、それぞれが目的とする効果を確保するものの、製造されるポリエーテルエステル共重合体の物性特性を低下させない範囲内で適切な含有量で用いられてもよく、具体的には原料物質総100重量%に対して0.1乃至10重量%で用いられてもよい。
【0061】
c)段階は、b)段階と連続する反応であり、同一の反応器で圧力のみをより低めた状態で予備重合物を縮重合させる段階である。c)段階の実施温度が250℃を超えて過度に高くなる場合、製造されるポリエーテルエステル共重合体の高粘度特性が多少落ちることがあるため、前記範囲を満足することが好ましい。より好ましくは、c)段階の反応温度は250℃未満であってもよい。
【0062】
また、c)段階の実施圧力は、b)より低い圧力であって、5torr以下、または0.5乃至3torr範囲であることが好ましい。
【0063】
このような条件で約30分乃至5時間、または1乃至3時間縮重合させ、トルク値が1.5Nm乃至3.0Nm範囲に到達した時に反応を完了させ、最終的にポリエーテルエステル共重合体を製造する。
【0064】
前記のような方法で製造されたポリエーテルエステル共重合体は、ポリエーテルの含有量が60乃至90重量%、好ましくは70乃至90重量%に高く、これによってショア硬度(Shore D)が40未満、好ましくは20乃至35であることを特徴とする。このように低い硬度を示すことによって、本発明により製造された共重合体は優れた柔軟性を示す。
【0065】
また、本発明の製造方法によれば、固相重合段階なしにエステル化反応および縮重合反応のみで、ポリエーテル含有量が高いながら、高粘度であるポリエーテルエステル共重合体を製造することができる。つまり、本発明により製造されるポリエーテルエステル共重合体は、25℃での固有粘度が2.0dL/g超過、または2.1dL/g以上、または2.3dL/g乃至4.0dL/gで高く示される。これと共に、前記ポリエーテルエステル共重合体は、ASTM D1238方式で測定された溶融指数(MI)が12g/10min以下、好ましくは10g/10min以下の値を満足する。
【0066】
したがって、本発明によれば、従前のジカルボキシレートを利用するポリエーテルエステル共重合体の製造設備をそのまま利用して、原価が安いジカルボン酸から簡単な工程で高粘度および高いポリエーテル含有量を示すポリエーテルエステル共重合体を製造することができる。そこで、本発明は大量生産および産業工程に適しており、工程の経済性および生産性を向上させることができる。
【0067】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇および技術思想範囲内で多様な変更および修正が可能であることは当業者に明らかであり、このような変更および修正が添付された特許請求の範囲に属することも当然である。
【実施例】
【0068】
(実施例1)
2L硝子反応器にテレフタル酸(PTA)20部、1,4−ブチレングリコール(BG)33部およびポリテトラメチレングリコール(PTMG)(Mn=2,000)47部、TBT触媒50ppm(Ti元素基準)を投入後、窒素下で1時間にかけて200℃まで攪拌しながら昇温した。前記BG/PTAモル比率は3.0であり、PTMGはPBT−PTMG共重合体のポリエーテル含有量が69重量%になるように用いられた。
【0069】
エステル化(ES)反応は200〜230℃、300torrで2時間行った。この時、蒸留カラムを代替して、120℃に維持される還流凝縮機(reflux condenser)およびディーン−スタークトラップ(Dean−Stark trap)を反応器に設置してES反応を進行した。反応完了後、ディーン−スタークトラップに捕集された水、THF混合物の密度差を利用して下記数式1で計算されたエステル化反応転換率は97%であった。
【0070】
【数1】
【0071】
ES反応後、反応器にTi触媒50ppm、酸化防止剤としてIrganox 1098を3000ppm投入した。第1縮重合(PP)反応は、還流凝縮機を除去した状態で、230〜240℃領域で30分間10torrまで減圧しながら行った。
【0072】
第2縮重合(PC)反応は、235〜240℃、1torr以下領域で3時間行った。PC反応中にメカニカルスターラー(mechanical stirrer)に付着されたトルク値が持続的に増加し、トルク2.3Nm到達後には反応を完了してPBT−PTMG共重合体を得た。
【0073】
(実施例2)
2L硝子反応器にテレフタル酸(PTA)18部、1,4−ブチレングリコール(BG)26部およびポリテトラメチレングリコール(PTMG)(Mn=2,000)56部、Ti触媒(tetrabutyl titanate、TBT)100ppm(Ti元素基準)を投入後、窒素下で1時間にかけて200℃まで攪拌しながら昇温した。前記BG/PTAモル比率は3.0であり、PTMGはPBT−PTMG共重合体のポリエーテル含有量が77重量%になるように用いられた。
【0074】
出発物質を前記のように用いたこと以外は実施例1と同様な方法でES、PPおよびPC段階を行い、PBT−PTMG共重合体を製造した。
【0075】
前記エステル化反応の転換率は98%であり、反応終結時のトルクは2.0Nmであった。
【0076】
(実施例3)
BG/PTAモル比率2.6で、Ti触媒をES反応前50ppm、反応後100ppmを投入したこと以外は実施例2と同様な方法でPBT−PTMG共重合体を製造した。
【0077】
前記エステル化反応の転換率は98%であり、反応終結時のトルクは2.0Nmであった。
【0078】
(実施例4)
BG/PTAモル比率2.6で、Ti触媒をES反応前、後それぞれ200ppmを投入し、PC反応を2時間行ったこと以外は実施例2と同様な方法でPBT−PTMG共重合体を製造した。
【0079】
前記エステル化反応の転換率は97%であり、反応終結時のトルクは2.6Nmであった。
【0080】
(実施例5)
BG/PTAモル比率2.6で、Ti触媒をES反応前、後それぞれ200ppmを投入し、PC反応を245〜250℃領域で2時間30分にかけて行ったこと以外は実施例2と同様な方法でPBT−PTMG共重合体を製造した。
【0081】
前記エステル化反応の転換率は97%であり、反応終結時のトルクは1.7Nmであった。
【0082】
(比較例1)
Ti触媒をES段階にだけ50ppmを投入したこと以外は実施例3と同様な方法でPBT−PTMG共重合体を製造した。実施例3と同様にエステル化反応転換率は97%であったが、反応終結時のトルクは1.0Nmで低かった。
【0083】
(比較例2)
Ti触媒をES段階100ppmのみを投入したこと以外は実施例1と同様な方法でPBT−PTMG共重合体を製造した。実施例1と同様にエステル化反応転換率は97%であったが、反応終結時のトルクは1.9Nmであった。
【0084】
(比較例3)
BG/PTAモル比率2.6で、Ti触媒をES段階25ppm、PP段階125ppm投入したこと以外は実施例2と同様な方法でPBT−PTMG共重合体を製造した。エステル化反応転換率は51%に過ぎず、反応終結時のトルクは0.5Nmであった。
【0085】
(比較例4)
BG/PTAモル比率を2.5にしたこと以外は実施例2と同様な方法でPBT−PTMG共重合体を製造した。
【0086】
前記エステル化反応の転換率は93%であり、反応終結時のトルクは1.8Nmであった。
【0087】
(比較例5)
BG/PTAモル比率1.7でPC反応を3時間行ったこと以外は実施例5と同様な方法でPBT−PTMG共重合体を製造した。
【0088】
前記エステル化反応の転換率は86%であり、実施例3とは異なり、トルクが1.1Nmでそれ以上増加しなかった。
【0089】
(実験例)
前記各実施例および比較例で製造されたPBT−PTMG共重合体のPTMG含有量、25℃での固有粘度([η])および溶融指数(dg/min)をそれぞれ次のような方法で測定し、その結果を下記表1に示した。
【0090】
(1)PTMG含有量の測定方法
約10〜20mg共重合体を1mlクロロホルム−d、トリフルオロ酢酸−d混合溶液(10:1比率)に投入して完全に溶ける時まで常温で攪拌した。1H NMR(500MHz、Agilent)スペクトル(spectrum)を測定してPBTおよびPTMG含有量を分析した。
【0091】
(2)固有粘度の測定方法
固有粘度は多様な濃度の高分子溶液(溶媒o−クロロフェノール(o−chlorophenol))を製造した後、ゼロせん断粘度(Zero Shear Viscosity)を測定を通じて計算した。ゼロせん断粘度(Zero Shear Viscosity)は回転式レオメーター(Rotational Rheometer)であるDHR II[TA Instruments、USA]装備を利用してShear Rate 50 s−1で測定される粘度を用いた。
【0092】
高分子溶液製造濃度は2wt%、1wt%、0.5wt%、0.25wt%であり、濃度(c)別比粘度(Specific viscosity、ηsp)を測定して下記数式2から固有粘度を計算した。
【0093】
【数2】
【0094】
(3)溶融指数の測定方法
50℃で24時間にかけて除湿乾燥過程を経たサンプルをASTM D1238と同一の方式(230℃で2.16kgの荷重存在下で4分の維持時間)で溶融指数を測定した。
【0095】
(4)硬度の測定方法
ASTM D2240に基づいてショアD(Shore D)硬度を測定した。
【0096】
【表1】
【0097】
前記表1を参照すると、BG/PTAモル比率を2.5超過とし、触媒をES反応およびPP反応にそれぞれ50ppm以上投入した場合(実施例1〜5)、PTMGの含有量が75重量%以上と高い場合にもエステル化反応転換率が97%以上であり、製造されたPBT−PTMG共重合体は25℃での固有粘度が2.2dL/g以上、230℃、2.16kg下での溶融指数12g/10min以下と高い粘度を示すことを確認できる。
【0098】
しかし、触媒をES反応およびPP反応に分割して投入しない場合(比較例1および2)には固有粘度が1.9dL/g以下と高粘度特性を満足していない。
【0099】
また、触媒をESおよびPP各反応に投入された触媒含有量が50ppmに達しないか(比較例3)、BG/PTAモル比率が2.5以下である場合(比較例4および5)には、エステル化反応転換率が95%未満であり、全て固有粘度が2.0dL/g以下と高粘度特性を満足していない。
【0100】
前記結果から、ポリエーテル含有量が高いながらも、低硬度、高粘度の特性を有するポリエーテルエステル共重合体を製造するためには、本発明のジオール/ジカルボン酸のモル比および触媒分割投入条件を全て満足しなければならないことを確認できる。