特許第6976634号(P6976634)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976634
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】共沈反応器
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20211125BHJP
   B01D 29/01 20060101ALI20211125BHJP
   B01D 29/66 20060101ALI20211125BHJP
   B01J 19/18 20060101ALI20211125BHJP
   B01F 7/18 20060101ALI20211125BHJP
   B01D 29/11 20060101ALI20211125BHJP
   B01D 29/07 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   B01J19/00 321
   B01D29/04 510A
   B01D29/38 510C
   B01J19/18
   B01F7/18 B
   B01D29/10 510C
   B01D29/06 510F
【請求項の数】17
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-554541(P2019-554541)
(86)(22)【出願日】2018年12月26日
(65)【公表番号】特表2020-512932(P2020-512932A)
(43)【公表日】2020年4月30日
(86)【国際出願番号】KR2018016661
(87)【国際公開番号】WO2019135540
(87)【国際公開日】20190711
【審査請求日】2019年10月2日
(31)【優先権主張番号】10-2018-0000576
(32)【優先日】2018年1月3日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ウク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ベ・キム
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ジュン・ムン
(72)【発明者】
【氏名】イ・ラン・リム
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ワン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ヒ・キム
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/135415(WO,A1)
【文献】 特開2014−007034(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2015−0093320(KR,A)
【文献】 特開平04−260495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00−12/02
14/00−19/32
B01D 24/00−37/04
B01F 7/00− 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応物を内部に収容して反応させる本体(100)、
前記本体(100)の内部に前記反応物を投入する投入部(200)、及び
前記本体(100)の内部に設けられ、前記本体(100)の内部で前記反応物が反応して生成された生成物と反応溶液のうち、前記生成物をフィルタリングするフィルター部(300)、を含み、
前記フィルター部(300)は、
前記本体(100)の内部に位置し、前記反応物が反応して生成された生成物と反応溶液のうち、前記生成物をフィルタリングするフィルター(310)と、
前記フィルター(310)とつながるように形成されて前記本体(100)の外部に延長され、前記フィルター(310)によって生成物がフィルタリングされた前記反応溶液を前記本体(100)の外部に排出する流路管(330)とを含み、
前記流路管(330)と連通し、前記流路管(330)を介して前記フィルター(310)に不活性物質を注入する注入部(390)を含み、
前記フィルター部(300)は、相互離隔されるように複数で設けられ、前記複数のフィルター部(300)にそれぞれ形成されたフィルター(310)は、互いに気孔の大きさが異なることを特徴とする共沈反応器。
【請求項2】
前記本体(100)は、前記本体(100)内部の生成物を外部に排出するためのドレイン部(110)を含むことを特徴とする請求項1に記載の共沈反応器。
【請求項3】
前記ドレイン部(110)は、前記本体(100)の下部又は前記本体(100)の上側円周部のいずれか一つ以上に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の共沈反応器。
【請求項4】
前記本体(100)は、内部中央側に前記本体(100)内部の反応物を混入するためのインペラ部(120)を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の共沈反応器。
【請求項5】
前記インペラ部(120)は、前記本体(100)の上端部に固定され、前記投入部(200)は、前記インペラ部(120)の周辺に位置するように前記本体(100)の上端部に複数で設けられることを特徴とする請求項4に記載の共沈反応器。
【請求項6】
前記投入部(200)への反応物の投入を中断し、前記インペラ部(120)で反応物を混入することを中断する休止期を介して、前記フィルター部(300)に付着した生成物を引き離す作動がなされることを特徴とする請求項4又は5に記載の共沈反応器。
【請求項7】
前記流路管(330)と連通し、前記流路管(330)に排出される前記反応溶液を集水する集水槽(350)を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の共沈反応器。
【請求項8】
前記集水槽(350)と連通し、前記本体(100)内部の反応溶液を前記流路管(330)から前記集水槽(350)にドレインする真空ポンプ(370)を含むことを特徴とする請求項7に記載の共沈反応器。
【請求項9】
前記真空ポンプ(370)の稼働を制御する制御部(400)を含むことを特徴とする請求項8に記載の共沈反応器。
【請求項10】
前記注入部(390)から前記フィルター(310)に注入された不活性物質は、前記フィルター(310)に付着した生成物を引き離すことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の共沈反応器。
【請求項11】
前記不活性物質は、不活性気体又は不活性液体であることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の共沈反応器。
【請求項12】
前記注入部(390)の稼働を制御する制御部(400)を含むことを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の共沈反応器。
【請求項13】
前記フィルター(310)は、プリーツフィルターであることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の共沈反応器。
【請求項14】
前記フィルター(310)は、ステンレス鋼(SUS)素材であることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の共沈反応器。
【請求項15】
制御部(400)によって予め設定された稼働時間に応じて気孔の大きさが小さなフィルター(310)から気孔の大きさがさらに大きい順に稼働されることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の共沈反応器。
【請求項16】
前記予め設定された稼働時間は、それぞれの複数のフィルター(310)の気孔の大きさにより互いに異なるように設定され、この際、前記気孔の大きさの増加によって前記予め設定された稼働時間が増加することを特徴とする請求項15に記載の共沈反応器。
【請求項17】
前記複数のフィルター部(300)にそれぞれ形成されたフィルター(310)は、前記制御部(400)によって一つのフィルターが作動すると、他のフィルターは作動を停止することを特徴とする請求項15又は16に記載の共沈反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年1月3日付韓国特許出願第10−2018−0000576号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、共沈反応器に関し、より詳細には、連続ろ過システムを装着した共沈反応器に関する。
【背景技術】
【0003】
各種化学物質の製造工程は、製造方法によって差はあるが、一般的に結晶化過程、成長過程、洗浄過程、ろ過過程、乾燥過程などを伴う。
【0004】
例えば、二次電池用正極活物質の製造方法としては大きく固相反応法と湿式法があるが、固相反応法は各構成の原料粉末を混合し、数回焼成して粉砕する過程からなる。
【0005】
湿式法は、さらに噴霧熱分解法と共沈法に分けることができるが、噴霧熱分解法は、構成原料を溶媒に溶かして一定の大きさの液滴を発生させた後、瞬間的に焼成して金属酸化物を得る方法であり、共沈法は、構成原料を溶媒に溶かした後、pH調節を介して金属水酸化物前駆体を合成及び成長させ、成長した前駆体を含んだ溶液をフィルタリング及び乾燥させた後、所定の焼成過程を経て二次電池用正極化合物を得る方式である。
【0006】
特許文献1には、共沈反応器に対する技術が開示されている。
【0007】
しかし、このような従来の共沈反応器は、反応物が流入され、反応器内の温度、濃度などの条件が同一の状態になるまで初期生成物は全て捨てられることとなるので、生産収率が低下するという問題点があった。
【0008】
または、反応器の大きさにより反応時間が制限され、これにより反応物の生産量の制限が生ずるようになるところ、反応時間の制限により粒度の均一性の向上に制限が生ずるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2010−0059601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明は、前記のような問題点を解決するために案出されたものであって、本発明の課題は、ろ過流量を向上させた連続ろ過システムを適用した共沈反応器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態による共沈反応器は、反応物を内部に収容して反応させる本体、前記本体の内部に前記反応物を投入する投入部、及び前記本体の内部に設けられ、前記本体の内部で前記反応物が反応して生成された前駆体と反応溶液のうち、前記前駆体をフィルタリングするフィルター部を含むことを特徴とする。
【0012】
前記本体は、前記本体内部の前駆体を外部に排出するためのドレイン部を含んでよい。
【0013】
前記ドレイン部は、前記本体の下部又は前記本体の上側円周部のいずれか一つ以上に形成されてよい。
【0014】
前記本体は、内部中央側に前記本体内部の反応物を混入するためのインペラ部を含んでよい。
【0015】
前記インペラ部は、前記本体の上端部に固定され、前記投入部は前記インペラ部の周辺に位置するように前記本体の上端部に複数で設けられてよい。
【0016】
前記投入部に反応物の投入を中断し、前記インペラ部に反応物を混入することを中断する休止期を介して前記フィルター部に付着した前駆体を引き離す作動がなされてよい。
【0017】
前記フィルター部は前記本体の内部に位置し、前記反応物が反応して生成された前駆体と反応溶液のうち、前記前駆体をフィルタリングするフィルターと、前記フィルターとつながるように形成されて前記本体の外部に延長し、前記フィルターによって前駆体がフィルタリングされた前記反応溶液を前記本体の外部に排出する流路管を含んでよい。
【0018】
前記流路管と連通し、前記流路管に排出される前記反応溶液を集水する集水槽を含んでよい。
【0019】
前記集水槽と連通し、前記本体内部の反応溶液を前記流路管から前記集水槽にドレインする真空ポンプを含んでよい。
【0020】
前記真空ポンプの稼働を制御する制御部を含んでよい。
【0021】
前記流路管と連通し、前記流路管を介して前記フィルターに不活性物質を注入する注入部を含んでよい。
【0022】
前記注入部から前記フィルターに注入された不活性物質は、前記フィルターに付着した前駆体を引き離してよい。
【0023】
前記不活性物質は、不活性気体又は不活性液体であってよい。
【0024】
前記注入部の稼働を制御する制御部を含んでよい。
【0025】
前記フィルターは、プリーツフィルターであってよい。
【0026】
前記フィルターは、ステンレス鋼(SUS)素材であってよい。
【0027】
前記フィルター部は、相互離隔されるように複数で設けられてよい。
【0028】
前記複数のフィルター部にそれぞれ形成されたフィルターは、互いに気孔の大きさが異なり、制御部により予め設定された稼働時間に応じて気孔の大きさが小さなフィルターから気孔の大きさがさらに大きい順に稼働されてよい。
【0029】
前記予め設定された稼働時間は、それぞれの複数のフィルターの気孔の大きさにより互いに異なるように設定され、この際、前記気孔の大きさの増加によって前記予め設定された稼働時間が増加してよい。
【0030】
前記複数のフィルター部にそれぞれ形成されたフィルターは、前記制御部により一つのフィルターが作動されると、他のフィルターは作動を停止してよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、前駆体の生産収率を高める効果がある。
【0032】
本発明によれば、気孔の大きさが3μm〜5μmであるフィルター部を用いてろ過流量を向上させ、連続ろ過システムを具現する効果がある。
【0033】
本発明によれば、生産工程のうちフィルター部の洗浄が可能な連続ろ過方式を具現する効果がある。
【0034】
本発明によれば、フィルター部を脱着することにより連続ろ過方式、回分式(Batch)、連続反応(CSTR)で全て活用することができる効果がある。
【0035】
本発明によれば、生産される前駆体の品質偏差を均等にする効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施形態による共沈反応器の主要部を示した正面図である。
図2】本発明の他の実施形態による共沈反応器の主要部を示した正面図である。
図3】本発明の一実施形態による共沈反応器のフィルターを概略的に示した斜視図である。
図4】従来の不織布フィルターを示した正面図である。
図5】本発明のプリーツフィルターと従来の不織布フィルターのろ過流量を示したグラフである。
図6】本発明のまた他の実施形態による共沈反応器の主要部の構成を示した図である。
図7】本発明の実施例で製造された前駆体のSEM写真である。
図8】本発明の比較例1で製造された前駆体のSEM写真である。
図9】本発明の比較例2で製造された前駆体のSEM写真である。
図10】本発明の実施例と比較例で製造された前駆体の体積基準の粒度分布を示した分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態による共沈反応器に対して詳しく説明する。
【0038】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられた用語や単語は、通常的かつ辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるとの原則に立脚して、本発明の技術的思想に適合する意味と概念として解釈されなければならない。よって、本明細書に記載された実施形態と図面に示された構成は、本発明の最も好ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないため、本出願の時点において、これらを代替することができる多様な均等物があることを理解しなければならない。
【0039】
図面で各構成要素又はその構成要素をなす特定部分の大きさは、説明の便宜及び明確性のために誇張されるか省略されるか又は概略的に示されている。よって、各構成要素の大きさは、実際の大きさを全的に反映するものではない。関連した公知機能あるいは構成に対する具体的な説明が、本発明の要旨を不要に曖昧にする虞があると判断される場合、そのような説明は略する。
【0040】
図1は、本発明の一実施形態による共沈反応器の主要部を示した正面図であり、図2は、本発明の他の実施形態による共沈反応器の主要部を示した正面図である。
【0041】
図1に示されたように、本発明の一実施形態による共沈反応器は、反応物を内部に収容して反応させる本体100、前記本体100の内部に前記反応物を投入する投入部200、及び前記本体100の内部に設けられ、前記本体100の内部で前記反応物が反応して生成された前駆体と反応溶液のうち、前記前駆体をフィルタリング(filtering)するフィルター部300を含む。
【0042】
本体100は、上端が開口された円筒体に形成されてよく、前駆体を外部に排出するためのドレイン部110を含んでよい。
【0043】
本体100は、開口された上端を塞ぐように本体100の上端部にカバー130を設けてよい。
【0044】
カバー130は、固定部131によって端部を固定してよい。
【0045】
ドレイン部110は、本体100の下部又は本体100の上側円周部のいずれか一つ以上に形成されてよい。
【0046】
本体100の下部に形成されたドレイン部110は、本体100内部に蓄積された前駆体を外部に排出させるのに適しており、主に回分式(Batch)反応器で用いられてよい。
【0047】
本体100の上側円周部に形成されたドレイン部110は、本体100の内部に連続的に蓄積される前駆体を外部に排出させるのに適しており、主に連続反応器(CSTR)で用いられてよい。
【0048】
本発明の一実施形態による共沈反応器は、ドレイン部110を本体100の下部と本体100の上側円周部の全てに形成し、フィルター部300を本体100から分離して、必要に応じて回分式反応器又は連続反応器で用いられるようにしてもよい。
【0049】
本体100は、内部中央側に本体100内部に投入された互いに異なる反応物を混入するためのインペラ部120を含んでよい。
【0050】
インペラ部120は、外側端部を本体100の上端開口部を塞ぐカバー130に固定するが、カバー130の外側に設けられたモーターなどのような駆動装置123にインペラ部120の外側端部が連結されるように固定されてよい。そして、駆動装置123を稼働させると、インペラ部120が回転されるようにしてよい。
【0051】
インペラ部120の内側端部は、本体100の内側下部側まで延長され、インペラ部120の外側端部と内側端部の間のうち本体100の内側に羽部121を形成してよい。
【0052】
羽部121は複数に形成され、インペラ部120の外側端部と内側端部の間に均等に設けられてよい。
【0053】
インペラ部120が駆動装置123によって回転されると、インペラ部120に形成された羽部121も共に回転して本体100内部に投入された反応物を互いに混入して反応させてよい。
【0054】
投入部200は、投入部200の外側端部を本体100の上端部に固定してよい。
【0055】
そして、投入部200は、インペラ部120の周辺に位置するように本体100の上端部に複数で設けられてよい。
【0056】
すなわち、投入部200はインペラ部120の周辺に位置することにより、投入部200から投入される反応物がインペラ部120の羽部121の回転によって互いに混入して反応しやすくすることができる。
【0057】
投入部200は、窒素(N)、金属(metal)溶液、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液、アンモニア水(NHOH)水溶液などをそれぞれ投入するための管状であってよい。
【0058】
投入部200は、インペラ部120を基準にインペラ部120からの距離が水酸化ナトリウム水溶液投入管201、金属溶液投入管202、窒素投入管203の順に近くに形成されてよく、アンモニア水水溶液投入管204は、インペラ部120を基準に水酸化ナトリウム水溶液投入管201、金属溶液投入管202、窒素投入管203の反対側に位置してよい。
【0059】
すなわち、投入部200は、投入される反応物の反応順に応じて早い順にインペラ部120から近く設けられてよい。
【0060】
フィルター部300は、本体100の上端部に脱着されるように設けられてよい。
【0061】
フィルター部300は、投入部200のうち近くに位置された管が少なく、相対的に設置が容易なアンモニア水水溶液を投入するための管の近くに設けられてよい。
【0062】
フィルター部300は、図1に示された一実施形態のように、本体100の上端部を直角に貫通するように設けられてよく、図2に示された他の実施形態のように、本体100の上部側面を直角に貫通するように設けられてもよい。
【0063】
フィルター部300を本体100の上端部又は上部側面に設けることは、共沈反応器が設けられる空間環境に最適化されるように選択して設けてよい。
【0064】
図3は、本発明の一実施形態による共沈反応器のフィルターを概略的に示した斜視図である。
【0065】
図1から図3に示されたように、フィルター部300は、プリーツフィルターなどのような気孔の大きさが3μm〜5μmであるフィルター310と流路管330を含んでよい。
【0066】
図示されてはいないが、フィルター部300は、複数で本体100に相互離隔されて設けられてよい。
【0067】
複数のフィルター部300にそれぞれ形成されたフィルター310は、3μm〜5μmの範囲内で互いに気孔の大きさが異なるように形成されてよい。
【0068】
フィルター310は、本体100の内部に位置し、反応物が反応して生成された前駆体と反応溶液のうち前駆体をフィルタリングしてよい。
【0069】
複数のフィルター310の気孔の大きさが3μm〜5μmである理由は、フィルター310の気孔の大きさが3μm未満であると、フィルター310を通過しなければならない反応溶液の通過が円滑になされないことがあり、気孔の大きさが5μmを超過すると、前駆体をフィルタリングすることができずに通過させる可能性が高くなるからである。
【0070】
フィルター310は、ステンレス鋼(SUS)素材のプリーツフィルターであってよい。ステンレス鋼素材は、耐酸性が強くて錆がつかず、強度が強くて寿命が長い効果がある。
【0071】
プリーツフィルターは、立体型でろ過の広さを増加させることができ、耐久性が強くて連続使用ができ、連続使用の際、前駆体の品質偏差が少ない長所がある。
【0072】
本発明によるフィルター310において、山数(m)が41であり、稜線長さ(a)が9.5mmで、bが200mmであるとき、ろ過面積の計算式m×2×a×bに代入して155800mmの値を得ることができる。
【0073】
図4は、従来の不織布フィルターを示した正面図である。
【0074】
図4に示されたように、従来の不織布フィルターfは、薄い板状の平面形でろ過能力が制限的であり、耐久性が弱いため1回性でありつつ、連続使用の際、前駆体の品質偏差が大きい短所がある(従来のフィルターは、流路管の開口を板状の平面形フィルターが単に塞ぐ形態である)。
【0075】
図3の本発明によるプリーツフィルターと下端から上端までの長さである高さが同じ従来の不織布のろ過面積を計算すると、直径が200mmであるとき、3.14×100×100=31400mmの値を得ることができる。
【0076】
図5は、本発明のプリーツフィルターと従来の不織布フィルターのろ過流量を示したグラフである。
【0077】
図5に示されたように、同一高さのろ過装置適用の基準で単位面積当りのろ過流量が同一であると仮定するとき、ろ過流量の差は4.9倍に至る。
【0078】
複数のフィルター部300にそれぞれ形成されたフィルター310は、互いに気孔の大きさが異なり、制御部400によって予め設定された稼働時間に応じて気孔の大きさが小さなフィルター310から気孔の大きさがさらに大きい順に稼働されてよい。
【0079】
すなわち、予め設定された稼働時間は、それぞれの複数のフィルター310の気孔の大きさにより互いに異なるように設定され、この際、気孔の大きさにより前記予め設定された稼働時間が増加し得る。
【0080】
一実施形態として、3μmの気孔の大きさを有するフィルターは25時間の稼働時間が設定され、25時間が経つと3μmの気孔の大きさを有するフィルターは稼働を停止して4μmの気孔の大きさを有するフィルターを稼働させ、4μmの気孔を有するフィルターは65時間の稼働時間が設定されて稼働し、65時間の稼働時間が終了すると、4μmの気孔を有するフィルターの稼働を停止して5μmの気孔を有するフィルターの稼働を開始してよい。
【0081】
流路管330は、フィルター310とつながるように形成されて本体100の外部へ延長され、反応物が反応して生成された前駆体と反応溶液のうち前駆体はフィルター310の外側に付着し、反応溶液はフィルター310を通過し、流路管330により誘導されて本体100の外部に排出されるようにしてよい。
【0082】
本発明の一実施形態及び他の実施形態による共沈反応器は、投入部200への反応物の投入を中断し、インペラ部120で反応物を混入することを中断する休止期を介し、フィルター部300に付着した前駆体を引き離す作動がなされてよい。
【0083】
しかし、これに限らず、本発明のインペラ部120で反応進行中の状態で、フィルター部300に付着した前駆体を引き離す作動がなされてよい。
【0084】
図6は、本発明のまた他の実施形態による共沈反応器の主要部の構成を示した図である。
【0085】
図6に示されたように、本発明のまた他の実施形態による共沈反応器は、集水槽350と真空ポンプ370、注入部390及び制御部400をさらに含んでよい。
【0086】
集水槽350は、流路管330と連通して流路管330に排出される反応溶液を集水してよい。
【0087】
集水槽350には、集水槽350と連通し、本体100内部の反応溶液を流路管330を介して集水槽350にドレイン(drain)するための真空ポンプ370が設けられてよい。
【0088】
注入部390は、流路管330と連通し、流路管330を介してフィルター310に不活性物質を注入してよい。
【0089】
注入部390からフィルター310に注入された不活性物質は、フィルター310によってフィルタリング(filtering)される過程で、フィルター310の表面に付着した前駆体をフィルター310から引き離す逆洗浄の機能を行うことができる。
【0090】
不活性物質は、窒素(N)、ヘリウム(He)などのような不活性気体、又は液体窒素などのような不活性液体であってよい。
【0091】
制御部400は、集水槽350、真空ポンプ370及び注入部390の作動などを制御してよい。
【0092】
すなわち、制御部400は、集水槽350に集水される反応溶液の量を所定の量に調節できるよう、集水槽350に集水された反応溶液が予め設定された量を満たすと排出できるように制御してよい。
【0093】
集水槽350に集水された反応溶液の量を測定するため、集水槽350に感知センサーを設けてよい。
【0094】
また、制御部400は、集水槽350に集水された反応溶液の量が予め設定された量より少なければ、真空ポンプ370を作動させて集水槽350に反応溶液をドレインし、集水槽350に集水された反応溶液の量が予め設定された量を満たすと、真空ポンプ370の作動を停止して反応溶液が集水槽350に流れることができなくすることができる。
【0095】
また、制御部400は、注入部390を作動させてフィルター310に付着した前駆体を引き離すことができる。制御部400は、真空ポンプ370の作動が停止したとき、注入部390を作動させてフィルター310に付着した前駆体を引き離すことができる。
【0096】
以下、本発明を具体的に説明するため、実験による実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は幾つか異なる形態に変形されてよく、本発明の範囲が下記で詳述する実施例に限定されるものとして解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供される。
【0097】
実施例1
NiSO、CoSO、及びMnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が6:2:2となるような量で水中で混合し、2.4M濃度の遷移金属含有溶液を準備した。
【0098】
図1に示されているように、前記遷移金属含有溶液202入りの容器、25重量%濃度のNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液201と、9重量%濃度のNHOH(アンモニア水)水溶液204を準備し、それぞれ反応器(70L)の本体100に連結した。
【0099】
反応器の本体100に脱イオン水20Lを入れた後、窒素ガスを反応器に10L/分の速度でパージングして水中の溶存酸素を除去し、反応器内を非酸化雰囲気に造成した。以後、25重量%濃度のNaOH水溶液201の40mL、9重量%濃度のNHOH水溶液204の870mLを投入した後、50℃で550rpmの撹拌速度で撹拌し、反応器内のpHがpH12.2を維持するようにした。
【0100】
以後、時間当りに遷移金属含有溶液を8mol、NaOH水溶液201を16mol、NHOH水溶液204を2.4molの速度でそれぞれ反応器に投入して240分間反応させることで、pH12.2でニッケルコバルトマンガン複合金属水酸化物の粒子核を形成した。
【0101】
次いで、pHを11.6になるように遷移金属含有溶液202、NaOH水溶液201及びNHOH水溶液204を投入することで、ニッケルコバルトマンガン複合金属水酸化物の粒子の成長を誘導した。以後、3時間の間反応を維持してニッケルコバルトマンガン複合金属水酸化物の粒子を成長させており、反応器(70L)の本体100は満液になった。反応器の本体100が満液になると、反応器の本体100内に位置するろ過装置を介し、反応が完了した溶媒を反応器の本体100外部に連続的に排出しつつ、遷移金属含有溶液202、NaOH水溶液201、及びNHOH水溶液204を投入し続けて73時間の間反応を維持することでニッケルコバルトマンガン複合金属水酸化物の粒子を成長させており、結果として形成されたニッケルコバルトマンガン複合金属水酸化物の粒子を分離して水洗した後、120℃のオーブンで乾燥することでNi0.6Co0.2Mn0.2(OH)前駆体を製造した。
【0102】
比較例1
連続ろ過方式反応器(continuous stirred tank reactor、CSTR)を用いて正極活物質前駆体を製造した。
【0103】
NiSO、CoSO、及びMnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が6:2:2となるような量で水中で混合し、2.4M濃度の遷移金属含有溶液を準備した。時間当りに前記遷移金属含有溶液を8mol、NaOH水溶液を16mol、NHOH水溶液を2.4molの速度で連続ろ過方式反応器(continuous stirred tank reactor、CSTR)に投入した。反応器の温度は50℃とし、400rpmの速度で撹拌してニッケルコバルトマンガン複合金属水酸化物を沈澱させた。結果として形成されたニッケルコバルトマンガン複合金属水酸化物の粒子を分離して水洗した後、120℃のオーブンで乾燥することでNi0.6Co0.2Mn0.2(OH)前駆体を製造した(BET比表面積:7.2m/g、タップ密度:2.02g/cc、縦横比:0.86)。
【0104】
比較例2
回分式(Batch)反応器を用いて、時間当りに遷移金属含有溶液を40mol、NaOH水溶液を80mol、NHOH水溶液を12molの速度でそれぞれ投入し、12時間の間反応を維持して反応器(70L)が満液になるまでニッケルコバルトマンガン複合金属水酸化物を成長させた。反応器が満液になると反応を終了することを除外しては、前記実施例1と同一の方法を用いてNi0.6Co0.2Mn0.2(OH)前駆体を製造した(BET比表面積:8.5m/g、タップ密度:1.84g/cc、縦横比:0.89)。
【0105】
実験例1:粒度分布の評価
前記実施例1及び比較例1〜2で製造した正極活物質前駆体粒子の粒度分布を確認するため、マイクロトラック(Microtrac)社のS‐3500を用いて、実施例1及び比較例1〜2で生成された正極活物質前駆体の粒度を測定し、その結果を図10に示した。
【0106】
図10に示したとおり、実施例1の連続濃縮反応を行う場合、比較例1〜2に比べて狭い粒度分布を示す正極活物質前駆体が製造されることを確認することができた。これを介し、実施例1で製造した正極活物質前駆体が比較例1〜2で製造した正極活物質前駆体に比べて粒度がさらに均一なことが分かった。
【0107】
図7は、本発明の実施例で製造された前駆体のSEM(Scanning Electron Microcopoe)写真であり、図8は、本発明の比較例1で製造された前駆体のSEM写真であり、図9は、本発明の比較例2で製造された前駆体のSEM写真である。
【0108】
図7から図9に示されたように、実施例で製造された前駆体Pは、比較例1及び比較例2で製造された前駆体P’に比べて大きさが均一であることが分かる。
【0109】
図10は、本発明の実施例と比較例で製造された前駆体の体積基準の粒度分布を示した分布図である。
【0110】
図10を介し、実施例で製造された前駆体aが、比較例によって製造された前駆体b、及び比較例2によって製造された前駆体cに比べて狭い粒度分布を有することを確認することができる。
【0111】
したがって、実施例aで製造された前駆体の大きさが最も均一であることが分かる。
【0112】
前述したように、本発明によれば、前駆体の生産収率を高める効果がある。
【0113】
本発明によれば、フィルター部は、複数のプリーツフィルターの気孔の大きさがそれぞれ3μm〜5μmの範囲内で互いに異なるように形成されるので、ろ過流量を向上させて連続ろ過システムを具現する効果がある。
【0114】
本発明によれば、生産工程中に注入部からフィルターに注入された不活性物質は、フィルターによってフィルタリング(filtering)される過程で、フィルターの表面に付着した前駆体をフィルターから引き離す逆洗浄が可能なので、連続ろ過方式を具現する効果がある。
【0115】
本発明によれば、フィルター部を脱着することにより、連続ろ過方式、回分式(Batch)、連続反応(CSTR)で全て活用することができる効果がある。
【0116】
本発明によれば、生産される前駆体の品質偏差を均等にする効果がある。
【0117】
以上のように、例示された図面を参考にして本発明による共沈反応器を説明したが、本発明は、以上で説明された実施例と図面により限定されず、特許請求の範囲内で、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者により多様な実施が可能である。
【符号の説明】
【0118】
100 本体
110 ドレイン部
120 インペラ部
121 羽部
123 駆動装置
130 カバー
131 固定部
200 投入部
201 水酸化ナトリウム水溶液投入管
202 金属溶液投入管
203 窒素投入管
204 アンモニア水水溶液投入管
300 フィルター部
310 フィルター
330 流路管
350 集水槽
370 真空ポンプ
390 注入部
400 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10