特許第6976635号(P6976635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976635
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】複合材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/29 20180101AFI20211125BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20211125BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20211125BHJP
【FI】
   C09J7/29
   B32B15/08 M
   C09J7/38
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-500093(P2020-500093)
(86)(22)【出願日】2018年7月6日
(65)【公表番号】特表2020-525628(P2020-525628A)
(43)【公表日】2020年8月27日
(86)【国際出願番号】KR2018007706
(87)【国際公開番号】WO2019009671
(87)【国際公開日】20190110
【審査請求日】2020年1月6日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0086013
(32)【優先日】2017年7月6日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ミン・シン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・キュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ウ・ユ
【審査官】 高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2017−503880(JP,A)
【文献】 特開2019−085439(JP,A)
【文献】 特開平06−104093(JP,A)
【文献】 特開2016−135562(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0303843(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第106893261(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
H05K9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層の少なくとも一部が金属多孔体の気孔内に浸透し、前記金属多孔体の一面に付着しており、前記粘着剤層が存在しない前記金属多孔体の表面に硬化性組成物を適用する段階と、
適用された硬化性組成物を硬化する段階と、を含み、
前記金属多孔体の表面から一部の厚さまで前記硬化性組成物が存在する、複合材の製造方法。
【請求項2】
前記金属多孔体を前記粘着剤層上に位置させ、前記金属多孔体を加圧して前記粘着剤層を付着する、請求項1に記載の複合材の製造方法。
【請求項3】
前記金属多孔体は、金属フォームである、請求項1または2に記載の複合材の製造方法。
【請求項4】
硬化段階後に、前記粘着剤層を除去する段階をさらに行う、請求項1に記載の複合材の製造方法。
【請求項5】
粘着剤の残余物を洗浄する段階をさらに行う、請求項4に記載の複合材の製造方法。
【請求項6】
前記金属多孔体は、厚さが5μm〜5cmのフィルムまたはシート形状である、請求項1から5のいずれか一項に記載の複合材の製造方法。
【請求項7】
前記金属多孔体の厚さT1および前記粘着剤層の厚さT2の比率T2/T1が、0.05以上未満の範囲内である、請求項6に記載の複合材の製造方法。
【請求項8】
前記金属多孔体は、鉄、コバルト、ニッケル、銅、リン、モリブデン、亜鉛、マンガン、クロム、インジウム、スズ、銀、白金、金、アルミニウム、ステンレスおよびマグネシウムよりなる群から選ばれる一つ以上の金属または金属合金を含む骨格を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の複合材の製造方法。
【請求項9】
前記金属多孔体は、気孔度(porosity)が30%〜99%の範囲内である、請求項1から8のいずれか一項に記載の複合材の製造方法。
【請求項10】
前記硬化性組成物は、アクリル系硬化性組成物、エポキシ系硬化性組成物、イソシアネート系硬化性組成物、ウレタン系硬化性組成物、ポリエステル系硬化性組成物、ポリアミック酸系硬化性組成物、ポリアミド系硬化性組成物、フタロニトリル系硬化性組成物またはシリコン系硬化性組成物である、請求項1から9のいずれか一項に記載の複合材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年7月6日付けで提出された韓国特許出願第10−2017−0086013号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本出願は、複合材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
金属フォーム(metal foam)は、軽量性、エネルギー吸収性、断熱性、耐火性または親環境性等の多様かつ有用な特性を具備することによって、軽量構造物、輸送機械、建築資材またはエネルギー吸収装置等を含む多様な分野に適用され得る。
【0004】
金属フォームは、高い比表面積を有すると共に、液体、気体等の流体または電子の流れをさらに向上させることができるので、熱交換装置用基板、触媒、センサー、アクチュエータ、2次電池、燃料電池、ガス拡散層(GDL:gas diffusion layer)または微小流体流量コントローラ(microfluidic flow controller)等に適用されて有用に使用することもできる。
【0005】
金属フォームの適用分野の拡大や物性の補強等を目的として前記金属フォームと樹脂成分を複合化した複合材を製造することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、複合材の製造方法とその方法により製造された複合材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願は、複合材の製造方法とその複合材に関する。用語「複合材」は、金属多孔体(金属フォーム等)と高分子成分を含む材料を意味する。
【0008】
本明細書で用語「金属多孔体(金属フォーム等)または金属骨格」は、金属を主成分として含む多孔性構造体を意味する。前記で金属を主成分とするというのは、金属多孔体(金属フォーム等)または金属骨格の全体重量を基準として金属の比率が55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上または95重量%以上である場合を意味する。前記主成分として含まれる金属の比率の上限は、特に制限されず、例えば、100重量%、99重量%または98重量%程度であってもよい。
【0009】
本明細書で用語「多孔性」は、気孔度(porosity)が少なくとも30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、75%以上または80%以上である場合を意味する。前記気孔度の上限は、特に制限されず、例えば、約100%未満、約99%以下、約98%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下または75%以下程度であってもよい。前記気孔度は、金属多孔体(金属フォーム等)等の密度を計算して公知の方法により算出することができる。
【0010】
本出願の複合材に含まれる金属多孔体(金属フォーム等)は、フィルム形状であってもよい。本出願の複合材は、前記のようなフィルム形状の金属多孔体(金属フォーム等)および前記金属多孔体(金属フォーム等)の対向する両表面のうち少なくとも一つの表面に存在する高分子成分を含むことができる。すなわち、前記複合材では、金属多孔体(金属フォーム等)の対向する両表面共に高分子成分が存在してもよく、一つの表面にのみ高分子成分が存在してもよい。前記で対向する両表面は、フィルム形状の金属多孔体(金属フォーム等)の上部と下部表面や両側面等のように互いに対向する表面を意味する。以下、便宜上、前記互いに対向する表面のうち高分子成分が相対的に多く存在する表面を第1表面と呼称し、その反対側の表面であって、高分子成分が存在しないか、または前記第1表面に比べて少なく存在する表面を第2表面と呼称し得る。
【0011】
複合材において金属多孔体(金属フォーム等)は、気孔度が約40%〜99%の範囲内であってもよい。一例として、後述する方法により前記複合材を形成するに際して、目的とする非対称構造を考慮して前記金属多孔体(金属フォーム等)の気孔度や孔隙のサイズ等を制御することができる。例えば、後述する方法により非対称構造を形成するに際して、金属多孔体(金属フォーム等)の気孔度が小さいか、または孔隙のサイズが小さい場合には、一つの表面から照射した光が他の表面に到達する程度が小さくなり、反対に大きい場合には、前記他の表面に到達する程度が大きくなって、反対表面の光硬化性組成物の硬化度が制御され得る。他の例として、前記気孔度は、50%以上、60%以上、70%以上、75%以上または80%以上であるか、95%以下、90%以下、85%以下または80%以下程度であってもよい。
【0012】
金属多孔体(金属フォーム等)は、フィルム形状であってもよい。この場合、フィルムの厚さは、後述する方法によって複合材を製造するに際して、目的とする非対称構造の形状等を考慮して調節され得る。すなわち、前記フィルム形状の厚さが厚いほど、後述する方法により非対称構造を形成するに際して、粘着剤層によりマスキングされる領域が、そうでない領域に比べて相対的に小さく、反対に薄いほど、前記マスキングされる領域が、そうでない領域に比べて相対的に大きいので、複合材の非対称性が制御され得る。前記フィルムの厚さは、例えば、約5μm〜5cmの範囲内であってもよい。前記厚さは、他の例として、4cm以下、3cm以下、2cm以下または1cm以下、9000μm以下、8000μm以下、7000μm以下、6000μm以下、5000μm以下、4000μm以下、3000μm以下、2000μm以下、1000μm以下、900μm以下、800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、400μm以下、300μm以下または200μm以下程度であるか、或いは6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上または10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上、60μm以上、70μm以上、80μm以上、90μm以上または95μm以上程度であってもよい。
【0013】
前記金属多孔体(金属フォーム等)の骨格は、多様な種類の金属や金属合金からなり得、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、銅、リン、モリブデン、亜鉛、マンガン、クロム、インジウム、スズ、銀、白金、金、アルミニウム、ステンレスおよびマグネシウムよりなる群から選ばれる一つ以上の金属または金属合金を含むか、あるいは、前記金属または金属合金からなり得る。
【0014】
このような金属多孔体(金属フォーム等)は、多様に公知となっており、金属多孔体(金属フォーム等)を製造する方法も、多様に公知となっている。本出願では、このような公知の金属多孔体(金属フォーム等)や前記公知の方法により製造した金属多孔体(金属フォーム等)が適用され得る。
【0015】
金属多孔体(金属フォーム等)を製造する方法としては、塩等の気孔形成剤と金属の複合材料を焼結する方法、高分子フォーム等の支持体に金属をコートし、その状態で焼結する方法やスラリー法等が知られている。また、前記金属多孔体(金属フォーム等)は、本出願人の先行出願である韓国出願第2017−0086014号、第2017−0040971号、第2017−0040972号、第2016−0162154号、第2016−0162153号または第2016−0162152号公報等に開示された方法により製造されることもできる。
【0016】
また、前記金属多孔体(金属フォーム等)は、前記先行出願に開示された方法のうち誘導加熱法で製造され得、この場合、金属多孔体(金属フォーム等)は、導電性磁性金属を少なくとも含むことができる。この場合、金属多孔体(金属フォーム等)は、前記導電性磁性金属を、重量を基準として30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上または50重量%以上含むことができる。他の例として、前記金属多孔体(金属フォーム等)内の導電性磁性金属の比率は、約55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上または90重量%以上であってもよい。前記導電性磁性金属の比率の上限は、特に制限されず、例えば、約100重量%未満または95重量%以下であってもよい。
【0017】
本出願において用語「導電性磁性金属」は、所定の比透磁率と電気伝導度を有する金属であって、誘導加熱法により金属の焼結が可能なほどに発熱が可能な金属を意味する。
【0018】
一例として、前記導電性磁性金属としては、比透磁率が90以上である金属を使用することができる。比透磁率μは、当該物質の透磁率μと真空中の透磁率μの比率μ/μである。前記金属は、比透磁率が95以上、100以上、110以上、120以上、130以上、140以上、150以上、160以上、170以上、180以上、190以上、200以上、210以上、220以上、230以上、240以上、250以上、260以上、270以上、280以上、290以上、300以上、310以上、320以上、330以上、340以上、350以上、360以上、370以上、380以上、390以上、400以上、410以上、420以上、430以上、440以上、450以上、460以上、470以上、480以上、490以上、500以上、510以上、520以上、530以上、540以上、550以上、560以上、570以上、580以上または590以上であってもよい。比透磁率が高いほど、後述する誘導加熱のための電磁場の印加時に、さらに高い熱を発生するようになるので、その上限は、特に制限されない。一例として、前記比透磁率の上限は、例えば、約300,000以下であってもよい。
【0019】
前記導電性磁性金属は、20℃での伝導度が、約8MS/m以上、9MS/m以上、10MS/m以上、11MS/m以上、12MS/m以上、13MS/m以上または14.5MS/m以上であってもよい。前記伝導度の上限は、特に制限されず、例えば、前記伝導度は、約30MS/m以下、25MS/m以下または20MS/m以下であってもよい。
【0020】
このような導電性磁性金属の具体例には、ニッケル、鉄またはコバルト等があるが、これらに制限されるものではない。
【0021】
本出願で開示される複合材は、非対称複合材であってもよい。用語「非対称複合材」は、複合材内で金属多孔体(金属フォーム等)と複合化される高分子成分の位置が非対称的な場合を意味する。例えば、前記複合材において金属多孔体(金属フォーム等)の対向する両表面に形成されている高分子成分は、非対称的な構造を有し得る。前記で非対称構造は、前記両表面に存在する高分子成分の比率が異なる場合を意味する。
【0022】
一例として、前記金属多孔体(金属フォーム等)の第1表面に存在する高分子成分の面積比Aと第2表面に存在する高分子成分の面積比Bの比率B/Aは、0〜0.99の範囲内であってもよい。前記比率B/Aが0である場合は、第2表面には、高分子成分が存在しない場合を意味する。また、前記で面積比は、当該金属多孔体(金属フォーム等)の表面の面積対比高分子成分で覆っている面積の百分率である。
【0023】
前記比率B/Aは、他の例として、約0.95以下、0.90以下、0.85以下、0.80以下、0.75以下、0.70以下、0.65以下、0.60以下、0.55以下、0.50以下、0.45または0.40以下であってもよいが、これは、目的とする用途を考慮して調節され得る。
【0024】
前記で第1表面上に存在する高分子成分の面積比Aは、特に制限されないが、例えば、約90%以上、約91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上であるか、あるいは、100%程度であってもよい。また、第2表面上の高分子成分の面積比Bは、0%であるか、すなわち第2表面上には、高分子成分が存在しないか、または0%を超過することができる。また、前記面積比Bは、一例として、約99%以下、約95%以下、約90%以下、約85%以下、約80%以下、約75%以下、約70%以下、約65%以下、約60%以下、約55%以下、約50%以下、約45%以下または約40%以下程度であってもよい。
【0025】
前記例において、第2表面上の高分子成分の面積比Bが0%である場合、すなわち第2表面上には、高分子成分が形成されていない場合には、第1表面から第2表面方向に金属多孔体(金属フォーム等)の内部に高分子成分が存在する部分までの長さPと前記第1表面から第2表面までの長さTの比率P/Tは、0〜1の範囲であってもよい。すなわち、前記場合において金属多孔体(金属フォーム等)内部の高分子成分は、第1表面から第2表面までの全体範囲で存在するか(P/T=1)、あるいは金属多孔体(金属フォーム等)の内部には存在しなくてもよい(P/T=0)。前記比率P/Tは、他の例として、0超過、0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上または0.45以上であるか、あるいは0.95以下、0.9以下、0.85以下、0.8以下、0.75以下、0.7以下、0.65以下、0.6以下または0.55以下であってもよい。
【0026】
前記で第1表面から第2表面方向に測定した金属多孔体(金属フォーム等)の内部に高分子成分が存在する部分までの長さPは、前記第1表面で測定した高分子成分が存在する最も深い地点までの長さ、最も短い地点までの長さまたは高分子成分が存在する長さの平均値であってもよい。
【0027】
図1は、前記複合材のうち一つの表面上にのみ高分子成分が存在する非対称複合材の断面模式図であって、図面のように、本出願の一例によれば、金属多孔体(金属フォーム等)10の上部表面から一部の厚さまでは高分子成分11が存在し、下部表面には高分子成分11が存在せず、下部表面上に孔隙が露出した形状を有し得る。
【0028】
前記で高分子成分は、硬化性組成物の硬化物であってもよい。用語「硬化性組成物」は、光の照射または熱の印加等により硬化して高分子を形成できる物質を意味する。
【0029】
本明細書で光の照射には、マイクロ波(microwaves)、赤外線(IR)、紫外線(UV)、X線およびガンマ線はもちろん、アルファ−粒子線(alpha−particle beam)、プロトンビーム(proton beam)、中性子ビーム(neutron beam)および電子線(electron beam)のような粒子ビーム等の照射も含まれ得る。
【0030】
このような硬化性組成物としては、アクリル系硬化性組成物、エポキシ系硬化性組成物、イソシアネート系硬化性組成物、ウレタン系硬化性組成物、ポリエステル系硬化性組成物、ポリアミック酸系硬化性組成物、ポリアミド系硬化性組成物、フタロニトリル系硬化性組成物またはシリコン系硬化性組成物等を例示することができる。前記各組成物は、それぞれ硬化してアクリル系高分子成分、エポキシ系高分子成分、イソシアネート系高分子成分、ウレタン系高分子成分、ポリエステル系高分子成分、ポリアミック酸系高分子成分、ポリアミド系高分子成分、フタロニトリル樹脂系高分子成分またはシリコン系高分子成分を形成できる組成物であり、このような組成物は、高分子組成物の業界に多様に公知となっており、本出願では、このような公知の成分のうち適切な成分を選択して使用することができ、必要な場合に、前記のうち2種以上の成分を使用して複合高分子を形成することもできる。
【0031】
前記のような組成物は、一般的に光の照射または熱の印加により硬化し得る官能基を有する高分子成分、オリゴマー成分および/または単量体成分を含み、光の照射および/または熱の印加により硬化反応を開始させることができる開始剤、例えば、ラジカル開始剤や、カチオン開始剤等、またはその他硬化剤等を含む。前記で光の照射または熱の印加等により硬化し得る官能基としては、アクリロイル基やメタクリロイル基等のラジカル重合性の二重結合を含む官能基や、グリシジル基、脂環式エポキシ基、オキセタニル基等のカチオン重合性の官能基等、またはケイ素原子に結合した水素原子、ビニル基等のアルケニル基、イソシアネート基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アジリジン基等を例示することができるが、これらに制限されものではない。
【0032】
前記複合材の構造において金属多孔体(金属フォーム等)の第1表面上に存在する高分子成分の厚さは、約1nm〜1cmの範囲内にありえる。しかしながら、前記厚さは、目的に応じて適切に変更され得る。前記厚さは、他の例として、100nm〜100μm程度であってもよい。
【0033】
前記高分子成分の厚さ(P2T)は、0〜1cmの範囲内にありえる。しかしながら、前記厚さも、目的に応じて適切に変更され得る。
【0034】
前記複合材の構造において第2表面上に存在する高分子成分は、柱(pillar)形状で存在し得る。
【0035】
前記で高分子成分の厚さは、当該金属多孔体(金属フォーム等)の表面を開始地点として測定した厚さである。
【0036】
しかしながら、前記に言及された重量比、厚さ比率や厚さまたは高分子成分の形状は、目的とする前記複合材の用途に応じて制御され得るものであって、特に制限されるものではない。
【0037】
本出願の複合材は、断熱素材、放熱素材、防音素材、軽量化素材、構造材または電極素材等に使用することができる。
【0038】
前記のような非対称構造の複合材は、一面が粘着剤層に付着している金属多孔体、すなわち例えば、前記金属多孔体(金属フォーム等)の前記粘着剤層が付着していない面に硬化性組成物を適用する段階を経て製造することができる。
【0039】
例えば、図2に示されたように、金属多孔体(金属フォーム等)10等の一面を粘着剤層14に付着させると、金属多孔体(金属フォーム等)10の多孔性によって粘着剤層14の少なくとも一部が前記金属多孔体(金属フォーム等)10の気孔内に浸透するようになる。その後、粘着剤層14が存在しない金属多孔体(金属フォーム等)10の表面に硬化性組成物13を適用すると、少なくとも前記粘着剤層14が存在する気孔には、硬化性組成物13が浸透しない。もちろん、硬化性組成物13の粘度等を調節すると、気孔への浸透程度を調節して、粘着剤層14のない気孔のうち一部にも硬化性組成物13が浸透しない。このような状態で硬化性組成物13を硬化させて高分子成分を形成させると、図1に示された構造の非対称複合材が形成され得る。図2で参照符号12は、粘着剤層14を支持する基材フィルムである。
【0040】
本出願の前記方法では、粘着剤層の金属多孔体(金属フォーム等)の気孔内部への浸透程度を調節するために、金属多孔体(金属フォーム等)を粘着剤層上に位置させ、前記金属多孔体を加圧して粘着剤層を付着する段階を行うこともできる。すなわち、このような加圧によって、さらに多くの気孔内に粘着剤層が浸透するようにすることができ、それによって、非対称フィルムの構造を調節することができる。
【0041】
また、他の方法により粘着剤層の厚さを制御する方法を用いても粘着剤層の気孔浸透程度を制御し、非対称フィルムの構造を制御することができる。
【0042】
本出願で適用され得る前記粘着剤層の種類は、特に制限されず、公知の一般的な種類の粘着剤層を使用することができる。例えば、一面に前記粘着剤層が形成された粘着シートないし粘着フィルムを使用して前記方法を行うことができる。この際に適用され得る粘着剤は、公知のアクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤、ウレタン系粘着剤またはエポキシ系粘着剤等があり、これらに制限されない。
【0043】
本出願では、前記硬化性組成物の適用後に適用された硬化性組成物を硬化する段階をさらに行うことができ、この過程により高分子成分が形成されることもできる。
【0044】
前記過程で硬化を行う方法は、特に制限されず、適用された硬化性組成物の種類によって適切な光の照射や熱の印加等の方法を適用することができる。必要に応じて、前記硬化後に未硬化の組成物を除去する段階をさらに行うこともできる。
【0045】
前記のような方法によるとき、硬化の条件、例えば、光の照射程度や方向、熱の印加程度等や、粘着剤層の厚さ、硬化性組成物の厚さおよび/または金属多孔体(金属フォーム等)の厚さ、金属多孔体(金属フォーム等)の気孔度や孔隙のサイズを制御するようになると、当該非対称構造の形状も多様に調節することができる。
【0046】
一例として、前記工程では、前記硬化性組成物を多孔性構造体(金属フォーム等)の第1および第2表面のうち少なくとも一つ以上の表面上に約1nm〜2cmの範囲内の厚さで形成することができ、この際、硬化性組成物は、層形状で形成され得るが、これに制限されるものではない。
【0047】
本出願の製造方法では、前記硬化後に未硬化の硬化性組成物を除去する段階をさらに行うことができる。
【0048】
このような工程により前述した非対称構造が形成され得る。前記未硬化の硬化性組成物を除去する段階は、現像(developing)と呼称し得る。このような現像工程は、公知の方法により行うことができ、例えば、前記現像工程は、未硬化の組成物を除去できるものと知られている処理剤等を使用して行うことができるが、前記処理剤としては、エタノール、塩基水、N−メチルピロリドン、メチレンクロリド、クロロホルム、トルエン、エチレングリコールまたはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の現像液等が知られている。前記のような現像液を使用した適切な処理を通じて現像工程が行われ得、例えば、約2bar以上の圧力と20℃〜50℃の温度範囲内でスプレー現像方法により前記現像液を適用して現像工程を行うことができる。
【0049】
本出願の方法では、前記硬化段階後に粘着剤層を除去する段階をさらに行うことができる。粘着剤層の除去方法は、特に制限されない。粘着剤層は、圧力の印加によって被着体に付着され、剥離すると除去される特性を有するので、適用された粘着剤層の種類によって適切な除去方法を選択すればよい。
【0050】
必要に応じて、本出願では、前記段階に引き続いて粘着剤の残余物を洗浄する段階をさらに行うことができ、この段階は、前述した現像段階に準ずる方法により行われ得る。
【0051】
前記過程で適用される金属多孔体の厚さは、例えば、約5μm〜5cmの範囲内であってもよい。前記厚さは、他の例として、4cm以下、3cm以下、2cm以下または1cm以下、9000μm以下、8000μm以下、7000μm以下、6000μm以下、5000μm以下、4000μm以下、3000μm以下、2000μm以下、1000μm以下、900μm以下、800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、400μm以下、300μm以下または200μm以下程度であるか、あるいは6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上または10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上、60μm以上、70μm以上、80μm以上、90μm以上または95μm以上程度であってもよい。前述したように、前記金属多孔体は、フィルムまたはシート形状であってもよく、金属フォーム等であってもよい。
【0052】
前記で前記金属多孔体の厚さT1および粘着剤層の厚さT2の比率T2/T1は、約0.05〜1の範囲内であってもよい。ただし、前記厚さの比率は、目的とする非対称構造によって変更され得る。前記比率T2/T1は、他の例として、約0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下または0.15以下程度であってもよい。
【0053】
また、本出願は、複合材、例えば、前記のような方法により形成された複合材に関する。
【0054】
このような複合材は、前述したように、フィルム形状の金属多孔体(金属フォーム等)と、前記金属多孔体(金属フォーム等)の対向する両表面に存在する高分子成分とを含み、この際、両表面の高分子成分は、前述したような非対称的な構造であってもよい。
【0055】
前記複合材に関する具体的な事項、例えば、前記金属多孔体(金属フォーム等)と高分子成分の種類、厚さ、厚さ比率や重量比、高分子成分の形状等については、前記記述した内容が同一に適用され得る。
【発明の効果】
【0056】
本出願では、金属多孔体(金属フォーム等)と高分子成分を含み、前記高分子成分が前記金属多孔体(金属フォーム等)の両面において非対称的な構造で形成された複合材を製造する方法とそのような方法により製造された複合材を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本出願の複合材の模式的な側面図である。
図2】本出願の複合材の製造方法を説明するための例示図である。
図3】実施例1で形成された複合材の写真である。
図4】実施例3で形成された複合材の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、実施例および比較例により本出願を具体的に説明するが、本出願の範囲が下記実施例に制限されるものではない。
【0059】
実施例1
金属多孔体としては、銅金属フォームであって、厚さが約100μm程度のフィルム形状であり、気孔度が略75%程度である銅金属フォームを使用した。厚さが約10μm程度のアクリル系粘着剤層を有する粘着シートの前記粘着剤層上に前記金属フォームを位置させた後、約3Kgの荷重で加圧した。その後、ポリジメチルシロキサン(PDMS,Sylgard 184)をフィルムアプリケーターを用いて前記加圧された銅フォームの粘着剤層と接触した一面の反対面に約20μmの厚さでコートし、120℃のオーブンで20分間熱硬化を行った。硬化後、粘着シートを除去して、複合材を製造した。前記複合材の露出した金属の部分の走査型電子顕微鏡写真を図3に示した。
【0060】
実施例2
金属多孔体としては、銅金属フォームであって、厚さが約100μm程度のフィルム形状であり、気孔度が略75%程度である銅金属フォームを使用した。厚さが約10μm程度のアクリル系粘着剤層を有する粘着シートの前記粘着剤層上に前記金属フォームを位置させた後、約3Kgの荷重で加圧した。その後、エポキシ樹脂組成物(KUKDO化学社、YD128レジンとG640硬化剤の混合物)をフィルムアプリケーターを用いて前記加圧された銅フォームの粘着剤層と接触した一面の反対面に約20μmの厚さでコートし、80℃のオーブンで60分間熱硬化を行った。次に、粘着シートを除去して、複合材を製造した。
【0061】
実施例3
金属多孔体としては、銅金属フォームであって、厚さが約100μm程度のフィルム形状であり、気孔度が略75%程度である銅金属フォームを使用した。厚さが約20μm程度のアクリル系粘着剤層を有する粘着シートの前記粘着剤層上に前記金属フォームを位置させた後、約3Kgの荷重で加圧した。その後、ポリジメチルシロキサン(PDMS,Sylgard 184)をフィルムアプリケーターを用いて前記加圧された銅フォームの粘着剤層と接触した一面の反対面に約20μmの厚さでコートし、120℃のオーブンで20分間熱硬化を行った。硬化後、粘着シートを除去して、複合材を製造した。前記複合材の露出した金属部分の走査型電子顕微鏡写真を図4に示した。
【0062】
実施例4
金属多孔体としては、銅金属フォームであって、厚さが約100μm程度のフィルム形状であり、気孔度が略75%程度である銅金属フォームを使用した。厚さが約20μm程度のアクリル系粘着剤層を有する粘着シートの前記粘着剤層上に前記金属フォームを位置させた後、約3Kgの荷重で加圧した。その後、エポキシ樹脂組成物(KUKDO化学社、YD128レジンとG640硬化剤の混合物)をフィルムアプリケーターを用いて前記加圧された銅フォームの粘着剤層と接触した一面の反対面に約20μmの厚さでコートし、80℃のオーブンで60分間熱硬化を行った。次に、粘着シートを除去して、複合材を製造した。
【符号の説明】
【0063】
10 金属多孔体
11 高分子成分
12 基材フィルム
13 硬化性組成物
14 粘着剤層
図1
図2
図3
図4