特許第6976636号(P6976636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976636
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】ウィンドウフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/023 20190101AFI20211125BHJP
【FI】
   B32B7/023
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-513892(P2020-513892)
(86)(22)【出願日】2018年9月6日
(65)【公表番号】特表2020-532451(P2020-532451A)
(43)【公表日】2020年11月12日
(86)【国際出願番号】KR2018010416
(87)【国際公開番号】WO2019066290
(87)【国際公開日】20190404
【審査請求日】2020年3月6日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0124723
(32)【優先日】2017年9月27日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ヨプ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ウ・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ボム・クォン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】スン・ジン・キム
【審査官】 清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−205277(JP,A)
【文献】 特開2014−117815(JP,A)
【文献】 特開2012−022210(JP,A)
【文献】 特表2009−542478(JP,A)
【文献】 特開平06−278244(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101905549(CN,A)
【文献】 特開2013−007815(JP,A)
【文献】 特開2012−032432(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0263865(US,A1)
【文献】 特開2014−104613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
G02B 5/20−5/28
C03C 15/00−23/00
E06B 3/54−3/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基材層と、
前記透光性基材層上に位置し、金属酸化物層及び金属層を含む赤外線反射層と、
前記赤外線反射層上に位置するオーバーコーティング層と、
前記オーバーコーティング層上に位置し、前記オーバーコーティング層から剥離が可能である保護フィルムと、を含み、
前記金属層は、チタン(Ti)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)、銅(Cu)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、パラジウム(Pd)又はニッケル(Ni)を含み、
前記赤外線反射層は、第1金属酸化物層及び金属層を含む第1積層体;並びに前記第1積層体上に位置し、金属酸化物層を含む第2積層体を含み、
前記金属層は、第1金属層及び第2金属層を含み、
前記第2金属層は、1nm〜15nm範囲の厚さを有し、
前記第2積層体は、屈折率が互いに異なる複数の金属酸化物層を含み、
前記第2積層体に含まれる複数の金属酸化物層のうち可視光屈折率が最も大きい金属酸化物層が第1積層体に隣接して位置することを特徴とする、ウィンドウフィルム。
【請求項2】
前記保護フィルムは、オーバーコーティング層に対して180゜角度及び150mm/分の剥離速度で測定した剥離力が8gf/25mm〜60gf/25mmであることを特徴とする、請求項1に記載のウィンドウフィルム。
【請求項3】
前記保護フィルムは、表面保護基材及び粘着層を含むことを特徴とする、請求項2に記載のウィンドウフィルム。
【請求項4】
第1積層体および第2積層体の金属酸化物層は、アンチモン(Sb)、バリウム(Ba)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ハフニウム(Hf)、インジウム(In)、ランタン(La)、マグネシウム(Mg)、セレン(Se)、ケイ素(Si)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、イットリウム(Y)、亜鉛(Zn)及び/又はスズ(Sn)の酸化物を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のウィンドウフィルム。
【請求項5】
透光性基材層と赤外線反射層との間にハードコーティング層をさらに含むことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のウィンドウフィルム。
【請求項6】
第1金属酸化物層、金属層及び第2積層体を順に含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のウィンドウフィルム。
【請求項7】
記第1金属層の一面と前記第2金属層の一面は、互いに直接接することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のウィンドウフィルム。
【請求項8】
記第1金属層は、5nm〜30nm範囲の厚さを有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のウィンドウフィルム。
【請求項9】
前記第2金属層の熱膨脹係数は、第1金属層の熱膨脹係数より小さいことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のウィンドウフィルム。
【請求項10】
請求項1〜請求項のうちいずれか1項に記載のウィンドウフィルムを含むことを特徴とする、建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2017年09月27日に出願された大韓民国特許出願第10−2017−0124723号に基づく優先権の利益を主張し、該当大韓民国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、ウィンドウフィルムに関する。より詳しくは、本出願は、赤外線反射機能を有するウィンドウフィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
ウィンドウフィルムのうちソーラーコントロールフィルムは、赤外線遮断方式によって吸収型フィルムと反射型フィルムに区別され得る。このうち、反射型ソーラーコントロールフィルムは、金属酸化物層と金属層の交互積層構造を有することが一般的である。このようなウィンドウフィルムが建築物や車両のガラスに付着される場合、熱を遮断するか熱損失を防止してエネルギー消費を節減することができる。
【0004】
このようなウィンドウフィルムは、多層構造を有することが一般的であるため、積層される層の個数ほど多様な原因により層間界面での付着力低下と剥離問題、耐久性の低下問題、そしてフィルムの汚染と変色問題などを有している。また、実際の使用のためにウィンドウフィルムを運搬する過程でウィンドウフィルムの層構成が損傷される場合も多い。特に、ウィンドウフィルムを建築物や車両のガラスに付着する場合には、物理的な力がフィルムに加えられるので、表面スクラッチや層間剥離が発生しやすい。このような問題は大面積ガラスにウィンドウフィルムを用いるときに一層目立つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願の一つの目的は、施工後にも高遮熱、高断熱又は高透過性などのような本然の機能を安定的に発揮することができるウィンドウフィルムを提供することである。
【0006】
本出願の前記目的及びその他の目的は、下記詳しく説明する本出願により全て解決され得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願に関する一つの例示で、本出願は、ウィンドウフィルムに関する。具体的に、本出願は、可視光線に対する透過性を有するが、赤外線に対しては反射又は遮断機能を行うウィンドウフィルムに関する。
【0008】
本出願で特に異に定義しない限り、「可視光線」は、例えば、380nm〜780nmの波長範囲の光、より具体的には、550nmの波長の光を意味し得る。また、本出願で「赤外線」は、前記可視光線より長い波長の光を意味し得、例えば、780nm〜2,500nmの波長範囲の近赤外線と2.5μm〜25μmの波長範囲の遠赤外線を包括する意味で用いられ得る。
【0009】
本出願のウィンドウフィルムは、透光性基材層、赤外線反射層、オーバーコーティング層及び保護フィルムを順に含んでいてもよい。
【0010】
透光性基材層は、ウィンドウフィルムの支持体として役目を果たす構成であって、可視光線に対する透過率が70%以上又は80%以上の層であってもよい。上記のような透過率を満足する限り、透光性基材層に用いられる材料は特に制限されない。例えば、公知のガラス又は樹脂フィルムが用いられ得る。
【0011】
一つの例示で、前記透光性基材層は、可撓性樹脂を含んでいてもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂又はポリフェニレン硫化物系樹脂などが透光性基材層に用いられ得る。
【0012】
特に制限されないが、前記透光性基材層は、例えば、5μm以上、10μm以上、20μm以上又は30μm以上の厚さを有し得、その上限は、200μm又は150μmであってもよい。
【0013】
赤外線反射層は、近赤外線と遠赤外線を反射する構成であって、ウィンドウフィルムに高遮熱及び高断熱機能を付与し得る。本出願で赤外線反射層は、前記透光性基材層上に位置する。本出願で、層間積層位置と関連して用いられる「上」又は「上に」という用語は、ある構成が他の構成の直上に形成される場合だけでなく、これら構成の間に第3の構成が介在される場合まで含むことを意味する。
【0014】
前記赤外線反射層は、金属酸化物層と金属層を含む。
【0015】
一つの例示で、金属酸化物層は、透光性基材層と金属層との間に位置し得る。金属層の一面上に位置した金属酸化物層は、例えば、可視光線に対する透過と赤外線に対する反射のように、光に対する波長選択性をウィンドウフィルムに付与し得る。
【0016】
前記金属酸化物層は、アンチモン(Sb)、バリウム(Ba)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ハフニウム(Hf)、インジウム(In)、ランタン(La)、マグネシウム(Mg)、セレン(Se)、ケイ素(Si)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、イットリウム(Y)、亜鉛(Zn)及び/又はスズ(Sn)の酸化物を含んでいてもよい。一つの例示で、金属酸化物層は、前記金属の酸化物のみからなる層であるか、前記羅列された成分以外に他の成分を含むが金属酸化物を主成分で含む層あってもよい。「主成分」とは、ある層を構成する成分のうちいずれか一つの成分が該当層で占める重量比が85%以上である場合を意味し得る。
【0017】
特に制限されないが、本出願に用いられる金属酸化物層は、5nm〜300nmの範囲の厚さを有していてもよい。上記厚さの範囲内で適切な光透過率と屈折率を確保することができる。
【0018】
金属酸化物層を形成する方法は特に制限されない。公知にされた乾式又は湿式方法が金属酸化物層の形成に用いられ得る。例えば、蒸着により金属酸化物層が形成され得る。
【0019】
金属層は、フィルムの赤外線遮断機能と係わる主な機能を行う層である。
【0020】
一つの例示で、前記金属層は、チタン(Ti)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)、銅(Cu)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、パラジウム(Pd)及び/又はニッケル(Ni)を含んでいてもよい。前記金属層は、金属のみを含む層であってもよく、又は前記羅列された成分以外に他の成分を含むが前記金属を主成分で含む層であってもよい。前記羅列された金属以外の金属成分、例えば、スズ(Sn)を含む場合、フィルムの光学特性だけでなく遮熱又は断熱能が低下されるか耐塩水性が低下されるなど、フィルムの耐久性が悪くなることがある。
【0021】
金属層を形成する方法は特に制限されない。公知の乾式又は湿式方法が金属層形成に用いられ得る。例えば、蒸着により金属層が形成され得る。
【0022】
一つの例示で、前記金属層は、複数の下位金属層を含んでいてもよい。前記下位金属層は、前記羅列されたものと同じ金属成分のうち1以上を含むように構成され得、各下位金属層が有する具体的な金属成分は同一又は相異なっていてもよい。金属層が複数の下位金属層を含む場合、複数の金属層のうち前記透光性基材層に隣接した金属層は、高遮熱及び高断熱機能をウィンドウフィルムに付与し得、その以外の金属層は、ウィンドウフィルムの耐久性の改善に寄与し得る。
【0023】
オーバーコーティング層は、赤外線反射層の損傷を防止するためにウィンドウフィルムに用いられる。ウィンドウフィルムの機能を考慮するとき、オーバーコーティング層は、可視光線に対する透過率が高く、赤外線に対する吸収性が低い性質を有することが好ましい。
【0024】
前記オーバーコーティング層は、ウィンドウフィルムの透光性を阻害しない範囲で選択され得る。例えば、オーバーコーティング層は、単官能又は多官能の光硬化性有機化合物と無機又は有機粒子を含む組成物の硬化物を含んでいてもよい。
【0025】
前記オーバーコーティング層は、100nm以下の厚さを有していてもよい。前記厚さを超過する場合、ウィンドウフィルムの透過度が低下され得、オーバーコーティング層の赤外線の吸収によりウィンドウフィルムの赤外線反射機能が低下され得る。
【0026】
一つの例示で、本出願のウィンドウフィルムは、赤外線反射層の一面と対向する透光性基材層の一面の反対一面上に離型基材を含んでいてもよい。前記離型基材は、粘着剤(層)を媒介として透光性基材層に付着されていてもよい。離型フィルムを除去した後に、離型基材と透光性基材との間に存在した粘着剤(層)はウィンドウフィルムをガラスのような建具に付着し得る。前記離型基材は、ウィンドウフィルムを建具と付着する粘着剤(層)に対する一時的な保護機能を行うものであって、前記機能を行うことができる限り、その基材の種類は特に制限されない。
【0027】
本出願のウィンドウフィルムは、前記オーバーコーティング層上に位置する保護フィルムを含んでいてもよい。前記保護フィルムは、ウィンドウフィルムの取扱い、移動又は施工時に発生する外力や外部環境からウィンドウフィルムを保護し得る。また、前記保護フィルムは、施工時にオーバーコーティング層の損傷なしにウィンドウフィルムの一面から剥離され得る。
【0028】
具体的に、実際使用のためにウィンドウフィルムをガラスのような建具に付着する過程は次の通りである。まず、付着対象であるガラスの表面を洗浄し、離型基材が除去された透光性基材層の粘着剤を媒介としてウィンドウフィルムをガラスの表面に付着する。以後、スキージー(squeegee)のような道具を用いてガラスと透光性基材層の間の水分や気泡などを除去してガラスとウィンドウフィルムを密着(付着)させる。最後に、保護フィルムをウィンドウフィルムから剥離して施工を仕上げることができる。前記保護フィルムは、上記のような一連の施工過程で発生し得るウィンドウフィルムの折れやキズ、スキージーを用いた密着過程で発生できるオーバーコーティング層や赤外線反射層表面のスクラッチなどを防止し得る。
【0029】
本出願で、保護フィルムと被着面との間の剥離力は、所定範囲に調節され得る。具体的に、オーバーコーティング層に対して180゜の角度及び150mm/min(分)の剥離速度で測定した保護フィルムの剥離力は、8gf/25mm〜60gf/25mmであってもよい。剥離力が8gf/25mm未満である場合、ウィンドウフィルムの取り扱いのうち保護フィルムが剥離されることがあり、そしてスキージーを用いた密着過程で保護フィルムが剥離されるかしわになってウィンドウフィルムが損傷されることがある。また、剥離力が60gf/25mmを超過する場合には、施工の終了のために保護フィルムを剥ぎ取る過程でウィンドウフィルム自体がガラスから剥離されるか保護フィルムの粘着剤がオーバーコーティング層に残存することがある。
【0030】
一つの例示で、保護フィルムは、表面保護基材及び粘着層を含んでいてもよい。このとき、表面保護基材としては、関連技術分野で公知にされているポリマーフィルムが用いられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリ(塩化ビニル)フィルム又はポリイミドフィルムのようなプラスチックフィルムが用いられ得る。これらフィルムは、単層で用いてもよく、又は互いに積層されて多層で用いてもよい。特に制限されないが、前記表面保護基材の厚さは、10μm〜100μmの範囲であってもよい。
【0031】
前記保護フィルムの粘着層は、所定の組成物から形成され得、前記粘着層は、上記言及した剥離力を保護フィルムに付与し得る。硬化後に剥離が可能である性質を有する粘着剤(pressure sensitive adhesive、PSA)を形成し得る組成物であれば、その具体的な成分は特に制限されない。例えば、粘着剤としては、アクリル粘着剤、ウレタン粘着剤、シリコン粘着剤又はゴム系粘着剤などが用いられ得る。
【0032】
一つの例示で、組成物は、アクリル系重合体を含むアクリル系粘着剤であってもよい。この場合、前記重合体は、アルキル(メタ)アクリレート単量体と架橋性官能基を有する共重合性単量体を重合された形態で含んでいてもよく、前記組成物は、前記アクリル系重合体外に単官能又は多官能性架橋剤を含んでいてもよい。
【0033】
一つの例示で、前記ウィンドウフィルムは、透光性基材層と赤外線反射層との間にハードコーティング層をさらに含んでいてもよい。より具体的に、前記ウィンドウフィルムは、透光性基材層、ハードコーティング層及び後述する第1積層体の金属酸化物層を順に含んでいてもよい。ウィンドウフィルムの透光性を阻害しない限り、前記ハードコーティング層の構成は特に制限されず、例えば、有機又は無機粒子を含む樹脂を含んでいてもよい。
【0034】
一つの例示で、前記赤外線反射層は、金属酸化物層及び/又は金属層を含む複数の積層体を有していてもよい。より具体的に、本出願の赤外線反射層は、第1積層体及び前記第1積層体上に位置する第2積層体を含んでいてもよい。そして、前記第1積層体は、第1金属酸化物層及び金属層を含み、前記第2積層体は、金属酸化物層を含んでいてもよい。それぞれの金属層と金属酸化物層が含む材料は、上述した通りである。このとき、前記第1積層体は、第2積層体より透光性基材層にさらに近く位置することができる。上記のように金属層と金属酸化物層が積層された構造は、ウィンドウフィルムに高遮熱及び高断熱機能を付与し得る。
【0035】
一つの例示で、前記第1積層体は、第1金属酸化物層上に金属層が位置する積層体であってもよい。この場合、ウィンドウフィルムは、透光性基材層上に第1金属酸化物層及び金属層を順に含んでいてもよい。
【0036】
一つの例示で、前記第1積層体に含まれる金属層は、2個の金属層、すなわち、第1金属層と第2金属層を含んでいてもよい。本出願で、第1金属層は、第2金属層より透光性基材層側にさらに近く位置した金属層を意味し得る。前記第2金属層は、前記第1金属層上に位置し得る。また、前記2個の金属層に含まれる金属成分は、同一であるか又は相異なっていてもよい。
【0037】
また一つの例示で、前記第1金属層の一面と前記第2金属層の一面は、互いに直接接することができる。この場合、本出願のウィンドウフィルムは、透光性基材層上に、第1金属酸化物層、第1金属層及び第2金属層を順に含む構造を有していてもよい。このような積層構造と係わり、例えば、第1積層体の金属酸化物層と第2積層体の金属酸化物層の間に1個の金属層のみが介在されると、このうちいずれか一つの金属層上に金属酸化物層を形成する過程で金属層が酸素に露出しながら酸化され得る。このような金属層の酸化は、金属層本来の機能を失うようにし、層間界面接着力の減少や変色のような耐久性の不良を引き起こすことがある。したがって、本出願のウィンドウフィルムは、前記第1金属層上に第2金属層が直接接して位置し、前記第2金属層上に第2積層体を構成する金属酸化物層が位置する積層構造を有し得る。これを通じて、ウィンドウフィルムに高遮熱、高断熱及び高耐久性を同時に付与し得る。
【0038】
一つの例示で、第2金属層は、第1金属層と熱膨脹係数(Coefficient of Thermal Expansion:CTE)が相異なるように構成され得る。具体的に、第2金属層の熱膨脹係数は、第1金属層の熱膨脹係数より小さい。本出願で「各層が有する熱膨脹係数」とは、各層が有する金属又は金属酸化物のうち主成分の熱膨脹係数と同一の意味で用いられ得る。熱膨脹係数は、熱機械分析器(Thermo Mechanical Analyzer、TMA)により測定され得る。上記のような金属層間の熱膨脹係数の大きさの差は、金属成分を適切に選択して制御され得る。例えば、第1金属層が銀(Ag)を含む場合、第2金属層には、銀(Ag)より低い熱膨脹係数を有する金属、例えば、チタン(Ti)が用いられ得る。上記のように層間熱膨脹係数が調節される場合、熱膨脹によりフィルムに加わるストレスが緩和され且つフィルムの耐久性が改善され得る。
【0039】
前記金属層は、1nm〜50nmの範囲の厚さを有し得る。一つの例示で、金属層が第1及び第2金属層を含む場合、前記第1金属層は、その厚さが5nm〜30nmの範囲であってもよく、第2金属層は、1nm〜15nmの厚さを有していてもよい。前記範囲を満足する場合、第2金属層は、全体フィルムの透過度を阻害しないとともに第1金属層の劣化を防止して優れた層間界面接着力を提供することができる。
【0040】
一つの例示で、前記金属層が有する可視光に対する屈折率は、0.1〜1.5の範囲であってもよい。このとき、各下位金属層が有する屈折率は、互いに同一であるか相異なっていてもよい。前記屈折率を有する金属層と後述する構成の金属酸化物層が用いられる場合、可視光に対する高い透過率と赤外線に対する低い透過率がウィンドウフィルムに付与され得る。一方、屈折率は、金属層の蒸着厚さや層の形成時の結晶化程度などによって変化できる。
【0041】
一つの例示で、前記第2積層体は、屈折率が互いに異なる複数の金属酸化物層を含んでいてもよい。より具体的に、前記第2積層体に含まれる複数の金属酸化物層のうち可視光屈折率が最も大きい金属酸化物層は、第1積層体に隣接して位置し得る。
【0042】
第2積層体に含まれる金属酸化物層の個数は特に制限されず、例えば、前記金属酸化物層は、第2金属酸化物層及び第3金属酸化物層、すなわち、2個の金属酸化物層を含んでいてもよい。一つの例示で、第2金属酸化物層は、ウィンドウフィルムの積層構造のうち第3金属酸化物層より透光性基材層側にさらに近く位置した金属酸化物層を意味し得る。この場合、本出願のウィンドウフィルムは、透光性基材層上に、第1積層体、第2金属酸化物層及び第3金属酸化物層を順に含んでいてもよい。
【0043】
一つの例示で、前記第2金属酸化物層の一面と第3金属酸化物層の一面は、直接接していてもよい。この場合、前記第2金属酸化物層に含まれる金属酸化物と第3金属酸化物層に含まれる金属酸化物の種類が互いに異なっていてもよい。又は、前記金属酸化物層が2以上の成分を含む場合、第2金属酸化物層と第3金属酸化物層は、互いに異なる組成比を有し得る。
【0044】
一つの例示で、前記第1積層体及び第2積層体に含まれる金属酸化物層は、1.5〜3.0の範囲の可視光線屈折率を有し得る。このとき、前記金属酸化物層は、互い異なる可視光線屈折率を有し得る。例えば、第2積層体に含まれた金属酸化物層のうち、第1積層体の金属層と隣接した第2金属酸化物層の屈折率が、第1金属酸化物層や第3金属酸化物層の屈折率よりさらに大きい値を有し得る。上記のような構成を取ることで、フィルムの波長別光選択特性が改善されて高透光性のフィルムが提供され得る。
【0045】
一つの例示で、金属層と金属酸化物層の熱膨脹係数は、互いに異なっていてもよい。金属酸化物層の熱膨脹係数は、該当層が有する金属酸化物成分の熱膨脹係数と同一の意味で用いられ得る。例えば、第1積層体に含まれる金属層は、第1又は第2積層体に含まれる金属酸化物層よりさらに高い熱膨脹係数を有し得る。具体的に、第1積層体に含まれる第2金属層は、第2積層体に含まれる金属酸化物層より大きい値の熱膨脹係数を有し得る。このような場合にも、第2金属層の熱膨脹係数は、第1金属層の熱膨脹係数より低い値を有し得る。上記のように、隣接する層間熱膨脹係数が制御される場合、外部光や温度などのような環境変化による界面ストレスが緩和されてフィルムの耐久性が改善され得る。
【0046】
一つの例示で、本出願のウィンドウフィルムは、第1積層体と第2積層体との間に金属酸化物層と金属層の積層体を1個以上さらに含んでいてもよい。前記追加される積層体は、前記第1積層体と同様に、1以上の金属酸化物層と1以上の金属層が互いに積層された構成を有し得る。金属層又は金属酸化物層が有する物理的特性や組成は、上記言及した内容と同一である。また、追加される積層体に含まれる金属酸化物層の屈折率は、第2積層体に含まれる金属酸化物層のうち第1積層体に最も隣接するように形成された金属酸化物層の屈折率より低い値を有するように調節され得る。
【0047】
本出願ウィンドウフィルムの用途は特に制限されない。例えば、本出願に関する他の一例で、本出願は、前記ウィンドウフィルムが付着された建具(fittings)であってもよい。「建具」とは、建物内部を外部と遮断するために壁や出入口などの開口部に設置される各種の窓(window)や門(door)を意味し得、建具の具体的な構成は特に制限されない。
【発明の効果】
【0048】
本出願の一例によると、施工後にも物理的な損傷なしに高機能を具現することができるウィンドウフィルム及びこれを含む建具が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、実施例及び比較例を通じて本出願のウィンドウフィルムを詳しく説明する。しかし、本出願の範囲は、下記提示された実施例によって制限されるものではない。
【0050】
保護フィルムによるウィンドウフィルムの耐久性の比較
<測定及び評価方法>
*剥離力:保護フィルムの粘着層をウィンドウフィルムのオーバーコーティング層と5kgの荷重で1回往復して接着させ、試片を幅25mm、長さ150mmに切断した。30分後に万能試験器(UTM)を用いて150mm/分の速度で保護フィルムとオーバーコーティング層との間を180゜に剥離したときの荷重値(gf/25mm)を測定した。
【0051】
*耐スクラッチ性:下記手順で評価を進行した。
1)12cm×3cmでカットしたウィンドウフィルムから離型フィルムを剥離してアルミニウム板に付着する。
2)Rubbingテスト器を用いて両面帆布で1000gの荷重で加えながらウィンドウフィルムの10cm長さの範囲を所定の回数で往復して擦る。
3)所定回数が経過した後に保護フィルムを剥離し、オーバーコーティング層に発生したスクラッチの有無を確認する。
【0052】
*耐塩水性(1):下記手順で評価を進行した。
1)10cm×10cmガラスに実施例及び比較例のウィンドウフィルムをスキージーを用いて付着する。実施例の場合、保護フィルムを剥離する。
2)上のサンプルを10重量%の塩化ナトリウム水溶液に浸漬し、50℃の乾燥器に5日間保管した後に外観変化を確認した。(×:スキージーで擦りながら発生したスクラッチとダメージにより外観変化(discolor)発生、〇:外観異常なし)
【0053】
<実施例1>
粘着剤を媒介として付着された離型フィルムと50μm厚さのPET基材の積層体のうちPET基材上に、2μm厚さのハードコーティング層を形成し、その上に第1金属酸化物層を形成した。ハードコーティング層は、多官能(メタ)アクリレート単量体にSilica無機粒子を含む組成物をバーコーターで塗布した後80℃で乾燥し、窒素雰囲気下で超高圧水銀ランプを用いて積算光量600mJ/cmで紫外線硬化して準備した有機−無機ハイブリッド層である。第1金属酸化物層は、DCスパッタ方式を用いて1.5W/cm及び3mTorrの条件で15nm厚さのZnO層に形成された。前記第1金属酸化物層上にDCスパッタ方式を用いて1.5W/cm及び3mTorrの条件でAg金属層を14nmの厚さで蒸着した。前記Ag層上に、DCスパッタ方式を用いて1.5W/cm及び3mTorrの条件でTi金属層を5nmの厚さで蒸着した。その後、1.5W/cm及び3mTorrの条件で第2金属酸化物層としてのNbOx層を10nmの厚さで形成した。最後に、第2金属酸化物層上に、50nm厚さのオーバーコーティング層を形成して光学フィルムを製造した。オーバーコーティング層は、多官能(メタ)アクリレート単量体とSilica無機粒子を含む固形分100重量部にリン酸エステル化合物(MIWON、商品名:MIRAMER SC1400)0.5重量部を添加して製造されたオーバーコーティング溶液を、バーコーターで塗布した後80℃に乾燥し、窒素雰囲気下で超高圧水銀ランプを用いて積算光量400mJ/cmで紫外線硬化して準備した有機−無機ハイブリッド層である。
【0054】
前記オーバーコーティング層に対して保護フィルムを合紙した。前記保護フィルムは、オーバーコーティング層に対する剥離力が下記表1に記載した数値を満足するように構成し、18μm厚さのアクリル系PSAと38μm厚さの保護基材(PET)を含むものを用いた。
【0055】
製造されたフィルムに対して、上記言及した方法で物性を測定し、その結果を表1に記載した。
【0056】
<実施例2>
下記表1のように、保護フィルムの剥離力を実施例1と異なるものとこと以外は、同一の方法でウィンドウフィルムを製造した。
【0057】
<比較例1>
保護フィルムが省略されたこと以外は、同一の方法でウィンドウフィルムを製造した。
【0058】
【表1】
【0059】
前記表1から、所定の剥離力を有する表面保護フィルムをウィンドウフィルムが有する場合、施工後にも高機能性を維持し得ることが分かる。
【0060】
下記構成のウィンドウフィルムが具現する機能も、上記のように所定の剥離力を有する保護フィルムを適用することで、施工後にも維持されると判断される。
【0061】
ウィンドウフィルムの機能性の比較
<測定及び評価方法>
*熱貫流率:KS L 2016規格によって測定した。
*遮蔽係数:KS L 2016規格によって測定した。
*透過度:KS L 2016/KS L 2514規格によって測定した。
*塩水浸漬後の放射率の変化:KS L 2514規格によって測定した。
*耐塩水性(2):NaCl 10%溶液に下記製造されたフィルムを7日間浸漬した後、変色放射率の変化及び/又は剥離発性の有無を確認し、下記基準によってその程度を区分した。放射率値の増加は、塩水により金属層などが損傷されたことを意味する。
【0062】
−変色及び放射率変化がない場合:〇
−変色は大きくないが放射率変化が0.2以上の場合:△
−変色及び剥離が起きた場合:×
【0063】
<実施例3>
50μm厚さのPET基材上に、2μm厚さのハードコーティング層を形成し、その上に第1金属酸化物層を形成した。ハードコーティング層は、多官能(メタ)アクリレート単量体にSilica無機粒子を含む組成物をバーコーターで塗布した後80℃に乾燥し、窒素雰囲気下で超高圧水銀ランプを用いて積算光量600mJ/cmで紫外線硬化して準備した有機−無機ハイブリッド層である。第1金属酸化物層は、DCスパッタ方式を用いて1.5W/cm及び3mTorrの条件で30nm厚さのZnO層に形成された。前記第1金属酸化物層上にDCスパッタ方式を用いて1.5W/cm及び3mTorrの条件でAg金属層を15nmの厚さで蒸着し、前記金属層上には、第2金属層としてTi層が2nmの厚さで形成された。前記第2金属層もDCスパッタ方式を用いて1.5W/cm及び3mTorrの条件で蒸着された。その後、1.5W/cm及び3mTorrの条件で第2金属酸化物層としてのNbOx層を10nmの厚さで第2金属層上に形成し、同一条件のDCスパッタ方式を通じて前記第2金属酸化物層上に第3金属酸化物層であるZnO層を20nmの厚さで蒸着した。最後に、第2金属酸化物層上に、50nm厚さのオーバーコーティング層を形成して光学フィルムを製造した。オーバーコーティング層は、多官能(メタ)アクリレート単量体とSilica無機粒子を含む固形分100重量部に第2金属酸化物層との付着力の向上のためのリン酸エステル化合物(MIWON、商品名:MIRAMER SC1400)0.5重量部を添加して製造されたオーバーコーティング溶液を、バーコーターで塗布した後80℃に乾燥し、窒素雰囲気下で超高圧水銀ランプを用いて積算光量400mJ/cmで紫外線硬化して準備した有機−無機ハイブリッド層である。
【0064】
一方、製造されたフィルムで、エリプソメータ(Ellipsometer)により各層別に測定された可視光屈折率は、第2金属酸化物層が2.5、第3金属酸化物層が1.7であった。一方、第1金属層、第2金属層及び第2金属酸化物層の順に熱膨脹係数が減少するように形成されたことを確認した。
【0065】
製造されたフィルムに対して、前記言及した方法で物性を測定し、その結果を表2に記載した。
【0066】
<比較例2>
第2金属層がSnを含むように構成されたこと以外は、実施例3と同一の方法と構成でウィンドウフィルムを製造した。
【0067】
<比較例3>
第2金属層の厚さを0.5nmに形成したこと以外は、実施例3と同一の方法と構成でウィンドウフィルムを製造した。
【0068】
<比較例4>
第2金属酸化物層と第3金属酸化物層の積層位置が互いに変更されたこと以外は、実施例3と同一の方法と構成でウィンドウフィルムを製造した。
【0069】
【表2】
【0070】
前記表2から、本出願の実施例3のウィンドウフィルムのみが70%以上の可視光透過度を確保しつつ熱貫流率、遮蔽係数のような耐久性関連因子に優れることが分かる。また、本出願のフィルムは、界面接着力に優れるため、放射率変化が少なく且つ耐塩水性に優れることが確認できる。一方、本出願と相異なっている金属が第2金属層に用いられた比較例2では、透過度と耐塩水性が全て低下されたことが確認できる。また、第2金属層の厚さがとても薄く選択された比較例3では、耐塩水の改善効果がないことが確認できる。一方、本出願の第2積層体の構成を満足しない比較例4も低い透過度を示した。