特許第6976637号(P6976637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許6976637-プラスチック基板の製造方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976637
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】プラスチック基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/02 20060101AFI20211125BHJP
   B29C 43/36 20060101ALI20211125BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20211125BHJP
   B29L 11/00 20060101ALN20211125BHJP
【FI】
   B29C43/02
   B29C43/36
   B29L7:00
   B29L11:00
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-523770(P2020-523770)
(86)(22)【出願日】2018年11月2日
(65)【公表番号】特表2021-500255(P2021-500255A)
(43)【公表日】2021年1月7日
(86)【国際出願番号】KR2018013263
(87)【国際公開番号】WO2019088764
(87)【国際公開日】20190509
【審査請求日】2020年4月27日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0145903
(32)【優先日】2017年11月3日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・スク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・ミン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ブ・キョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・レ・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・テ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヨン・キム
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−193653(JP,A)
【文献】 特開2011−245830(JP,A)
【文献】 特開昭58−224724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00−43/58,
B29L 7/00,11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状下部基板、平板状上部基板、および前記平板状下部基板と前記平板状上部基板との間に緩衝型スペーサを含み、前記緩衝型スペーサによってモールディング空間が区画されるモールド装置を用意するステップと、
前記モールディング空間に硬化性組成物を充填するステップと、
前記平板状上部基板の荷重で前記硬化性組成物を圧縮し、前記硬化性組成物を硬化するステップと、
前記平板状上部基板および前記平板状下部基板を除去してプラスチック基板を得るステップと、を含み、
前記硬化性組成物を硬化するステップは、下記式1を満足するものであるプラスチック基板の製造方法:
[式1]
{(平板状上部基板の荷重+硬化性組成物の硬化収縮力)×0.95}≦緩衝型スペーサの圧縮応力≦{(平板状上部基板の荷重+硬化性組成物の硬化収縮力)×1.05}。
【請求項2】
前記平板状下部基板および前記平板状上部基板の屈曲弾性率はそれぞれ、3GPa以上である、請求項1に記載のプラスチック基板の製造方法。
【請求項3】
前記平板状下部基板および前記平板状上部基板の表面平坦度はそれぞれ、5μm以下である、請求項1または2に記載のプラスチック基板の製造方法。
【請求項4】
前記緩衝型スペーサの圧縮弾性係数は、0.1MPa以上10MPa以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載のプラスチック基板の製造方法。
【請求項5】
前記緩衝型スペーサは、非弾性層と弾性層とが積層された構造、非弾性層の間に弾性層が備えられた構造、または弾性層の間に非弾性層が備えられた構造である、請求項1から4のいずれか一項に記載のプラスチック基板の製造方法。
【請求項6】
前記硬化性組成物の硬化収縮率は、15%以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載のプラスチック基板の製造方法。
【請求項7】
前記プラスチック基板の厚さは、400μm以上2,000μm以下であり、
前記プラスチック基板の厚さ偏差は、1%以内である、請求項1から6のいずれか一項に記載のプラスチック基板の製造方法。
【請求項8】
前記平板状下部基板および前記平板状上部基板の表面はそれぞれ、離型剤で表面処理されたものである、請求項1から7のいずれか一項に記載のプラスチック基板の製造方法。
【請求項9】
前記プラスチック基板は、ウェアラブルデバイスの回折導光レンズ基材用である、請求項1から8のいずれか一項に記載のプラスチック基板の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、2017年11月3日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2017−0145903号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本発明に組み込まれる。
【0002】
本発明は、プラスチック基板の製造方法およびこれにより製造されたプラスチック基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、仮想現実デバイス(Virtual Reality Device)および拡張現実デバイス(Augmented Reality Device)などを用いて、使用者に3次元の画像を提供する装置の開発が行われている。
【0004】
仮想現実デバイスまたは拡張現実デバイスは、一般的なメガネのようなレンズに回折導光パターンを形成して所望のイメージを使用者に見えるようにできる。一般的に、仮想現実デバイスまたは拡張現実デバイス用途のレンズは屈折率の高いガラス基材を用いるが、ガラス基材は、高い屈折率および光透過度を有するという利点があるものの、破損時に使用者の眼球に致命的な損傷を加えることがあり、重量が重くて長時間着用に不便さが存在する。
【0005】
従って、仮想現実デバイスまたは拡張現実デバイス用途に使用できるように、高い光透過度、高い屈折率を有し、さらに、軽くて破損時に相対的に安全なレンズ基材に関する研究が必要である。
【0006】
ガラス基材を代替するためのプラスチック基材の場合、表面平坦度および厚さ均一度のような物性が既存のガラス基材に大きく及ばない問題点があるので、その改善のための研究が必要なのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開公報:KR10−2015−0060562A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、プラスチック基板の製造方法を提供する。具体的には、本発明は、厚さ均一度に優れたプラスチック基板の製造方法を提供する。
【0009】
ただし、本発明が解決しようとする課題は上述した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は下記の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施態様は、平板状下部基板、平板状上部基板、および前記平板状下部基板と前記平板状上部基板との間に緩衝型スペーサを含み、前記緩衝型スペーサによってモールディング空間が区画されるモールド装置を用意するステップと、
前記モールディング空間に硬化性組成物を充填するステップと、
前記平板状上部基板の荷重で前記硬化性組成物を圧縮し、前記硬化性組成物を硬化するステップと、
前記平板状上部基板および前記平板状下部基板を除去してプラスチック基板を得るステップと、を含み、
前記硬化性組成物を硬化するステップは、下記式1を満足するものであるプラスチック基板の製造方法を提供する。
[式1]
{(平板状上部基板の荷重+硬化性組成物の硬化収縮力)×0.95}≦緩衝型スペーサの圧縮応力≦{(平板状上部基板の荷重+硬化性組成物の硬化収縮力)×1.05}
本発明の一実施態様は、前記プラスチック基板の製造方法により製造されたプラスチック基板を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施態様に係るプラスチック基板の製造方法によれば、表面平坦度および厚さ均一度に優れたプラスチック基板を製造することができる。
【0012】
本発明の一実施態様に係るプラスチック基板の製造方法によれば、簡単な方法で優れた厚さ均一度および厚さ平坦度を有するプラスチック基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施態様に係る硬化性組成物を硬化するステップにおける断面を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0015】
本明細書において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているとする時、これは、ある部材が他の部材に接している場合のみならず、2つの部材の間にさらに他の部材が存在する場合も含む。
【0016】
本明細書において、「〜(する)ステップ」または「〜のステップ」との表現は、「〜のためのステップ」を意味しない。
【0017】
本発明者らは、硬化性組成物をモールドに注入した後、硬化してプラスチック基板を製造する場合、硬化性組成物の硬化収縮によって硬化途中にモールド基板から剥離されて、製造されるプラスチック基板の表面に剥離痕が残り、厚さ均一度が大きく損なわれる問題点があることを認識し、本発明を開発するに至った。
【0018】
以下、本明細書についてさらに詳細に説明する。
【0019】
本発明の一実施態様は、平板状下部基板、平板状上部基板、および前記平板状下部基板と前記平板状上部基板との間に緩衝型スペーサを含み、前記緩衝型スペーサによってモールディング空間が区画されるモールド装置を用意するステップと、
前記モールディング空間に硬化性組成物を充填するステップと、
前記平板状上部基板の荷重で前記硬化性組成物を圧縮し、前記硬化性組成物を硬化するステップと、
前記平板状上部基板および前記平板状下部基板を除去してプラスチック基板を得るステップと、を含み、
前記硬化性組成物を硬化するステップは、下記式1を満足するものであるプラスチック基板の製造方法を提供する。
[式1]
{(平板状上部基板の荷重+硬化性組成物の硬化収縮力)×0.95}≦緩衝型スペーサの圧縮応力≦{(平板状上部基板の荷重+硬化性組成物の硬化収縮力)×1.05}
【0020】
本発明の一実施態様に係るプラスチック基板の製造方法は、緩衝型スペーサを用いて、硬化性組成物の硬化時、収縮によるモールド装置の基板から剥離される現象を最小化して、表面平坦度および厚さ均一度が非常に優れたプラスチック基板を製造できるという利点がある。
【0021】
本発明の一実施態様によれば、前記緩衝型スペーサの圧縮応力は、前記式1を満足する。前記緩衝型スペーサの圧縮応力は、前記平板状上部基板の荷重と前記硬化性組成物の硬化収縮力との合計の5%以内の差を有しているので、前記硬化性組成物を硬化するステップにおいて、前記硬化性組成物の硬化時、収縮によって前記平板状上部基板が前記硬化性組成物に密着する。これによって、製造されるプラスチック基板は、優れた表面平坦度を示し、さらに、厚さ均一度も優れて実現できる。一方、前記緩衝型スペーサの圧縮応力が{(平板状上部基板の荷重+硬化性組成物の硬化収縮力)×0.95}より小さい場合、平衡に到達する前に硬化が完了してプラスチック基板の厚さの不均一が発生することがある。そして、前記緩衝型スペーサの圧縮応力が{(平板状上部基板の荷重+硬化性組成物の硬化収縮力)×1.05}より大きい場合、硬化時、収縮の不均一が発生してプラスチック基板の外観特性が不良になりうる。
【0022】
具体的には、本発明の一実施態様によれば、前記式1は、下記式1−1、式1−2、または式1−3を満足することができる。
【0023】
[式1−1]
{(平板状上部基板の荷重+硬化性組成物の硬化収縮力)×0.97}≦緩衝型スペーサの圧縮応力≦{(平板状上部基板の荷重+硬化性組成物の硬化収縮力)×1.03}
【0024】
[式1−2]
{(平板状上部基板の荷重+硬化性組成物の硬化収縮力)×0.98}≦緩衝型スペーサの圧縮応力≦{(平板状上部基板の荷重+硬化性組成物の硬化収縮力)×1.02}
【0025】
[式1−3]
{(平板状上部基板の荷重+硬化性組成物の硬化収縮力)×0.99}≦緩衝型スペーサの圧縮応力≦{(平板状上部基板の荷重+硬化性組成物の硬化収縮力)×1.01}
【0026】
具体的には、前記緩衝型スペーサの圧縮応力は、前記平板状上部基板の荷重と前記硬化性組成物の硬化収縮力との合計の3%以内、2%以内、または1%以内の差を有することができ、これにより製造されるプラスチック基板は、より優れた表面平坦度を示し、厚さ均一度もより優れて実現できる。
【0027】
本発明において、前記平板状上部基板の荷重、前記硬化収縮力および前記圧縮応力の単位は、kgfまたはNであってよい。
【0028】
前記緩衝型スペーサは、前記硬化性組成物の硬化による収縮によって前記硬化性組成物が前記平板状上部基板と剥離されるのを防止する役割をする。具体的には、前記緩衝型スペーサは、前記硬化性組成物の硬化に伴って収縮する程度および前記平板状上部基板の荷重を考慮した圧縮応力を有するので、前記硬化性組成物の収縮によって前記平板状上部基板の荷重によって圧縮されて、前記硬化性組成物を硬化するステップにおいて、前記硬化性組成物と前記平板状上部基板とが密着した状態を維持する役割を果たすことができる。
【0029】
本発明の一実施態様によれば、前記平板状上部基板の荷重は、3.4N以上34N以下であってもよい。具体的には、前記平板状上部基板の荷重は、5.9N以上27N以下であってもよい。
【0030】
前記平板状上部基板の荷重が前記範囲内の場合、前記硬化性組成物の硬化時、硬化収縮による変形を最小化することができる。また、前記平板状上部基板の荷重が前記範囲内の場合、前記硬化性組成物の光硬化時、透過率の低下を最小化することができ、かつ、前記硬化性組成物の熱硬化時、反応熱の排出不均一を最小化して、前記硬化性組成物の均一な硬化を誘導することができる。
【0031】
本明細書において、硬化性組成物の硬化収縮力は、下記の方法で測定できる。具体的には、25℃および50RH%の雰囲気下、TA社のTexure Analyzer装置を用いて、下部ジグ上に一定量の硬化性組成物を塗布後、上部ジグを下降して硬化性組成物と接触させて力の初期値を記録する。そして、温度を90℃に上昇させて5時間維持した後、力の最終値を記録して、力の最終値と初期値との間の差から得られた値で測定できる。
【0032】
本明細書において、緩衝型スペーサの圧縮応力は、25℃および50RH%の雰囲気下、TA社のTexture Analyzerを用いて、試験片の面積5×5mm、圧縮速度1mm/minで圧縮時、試験片の変形((初期の厚さ−変形後の厚さ)/初期の厚さ)に到達した瞬間の力の測定値であってよい。
【0033】
本発明の一実施態様によれば、前記モールディング空間は、前記緩衝型スペーサによって区画される、前記平板状下部基板と前記平板状上部基板との間に備えられる空き空間を意味することができる。
【0034】
本発明の一実施態様によれば、前記硬化性組成物を充填するステップは、前記モールディング空間に前記硬化性組成物を注入して、前記硬化性組成物が前記平板状下部基板および前記平板状上部基板と密着するように十分に詰め込むことを意味することができる。具体的には、前記硬化性組成物を充填するステップは、前記モールディング空間に前記硬化性組成物を95vol%以上、97vol%以上、99vol%以上、好ましくは100vol%注入することを意味することができる。
【0035】
本発明の一実施態様によれば、前記硬化性組成物を充填するステップは、前記緩衝型スペーサが備えられた平板状下部基板のモールディング空間に前記硬化性組成物を注入し、前記平板状上部基板を積層する方法、または前記モールド装置に注入口を備えて前記硬化性組成物を注入する方法などの多様な方法を利用することができる。
【0036】
図1は、前記硬化性組成物を硬化するステップにおける断面を示すものである。具体的には、図1は、平板状下部基板101と平板状上部基板102との間に備えられる緩衝型スペーサ201、202を含むモールド装置のモールディング空間に硬化性組成物300を注入して充填されたことを示すものである。このように、硬化性組成物が充填された後、光硬化および/または熱硬化をしてプラスチック基板を製造することができる。
【0037】
本発明の一実施態様によれば、前記熱硬化をするために前記硬化性組成物に熱処理時、昇温速度は、2℃/min以下であってもよい。具体的には、前記昇温速度は、1℃/min以下であってもよい。前記昇温速度が前記範囲内の場合、前記硬化性組成物に伝達される熱の位置間の偏差を最小化し、反応熱の排出不均一を最小化して前記硬化性組成物の均一な硬化を誘導することができる。
【0038】
本発明の一実施態様によれば、前記熱硬化時の最終温度は、85℃以上100℃以下であってもよいし、前記最終温度到達前に最終温度より低い温度で等温保持区間を3回以上置くことで、前記硬化性組成物に伝達される熱の位置間の偏差を最小化することができる。前記等温保持区間の間の温度差は、10℃以上20℃以下であってもよいし、前記等温保持区間の維持時間はそれぞれ、1時間以上5時間以下であってもよい。例えば、前記硬化性組成物を常温(25℃)で2時間放置した後、45℃で2時間、60℃で2時間、75℃で2時間、90℃で4時間熱硬化してプラスチック基板を製造することができる。
【0039】
本発明の一実施態様によれば、前記平板状下部基板および前記平板状上部基板の屈曲弾性率はそれぞれ、3GPa以上であってもよい。具体的には、前記平板状下部基板および前記平板状上部基板の屈曲弾性率はそれぞれ、10GPa以上、20GPa以上、40GPa以上であってもよい。
【0040】
前記平板状下部基板および前記平板状上部基板の屈曲弾性率が前記範囲内の場合、前記平板状上部基板のボーイング(bowing)現象を最小化することができるので、製造されるプラスチック基板の厚さ均一度を大きく増加させることができるという利点がある。
【0041】
本発明の一実施態様によれば、前記平板状下部基板および前記平板状上部基板の表面平坦度はそれぞれ、5μm以下であってもよい。具体的には、前記平板状下部基板および前記平板状上部基板の表面平坦度はそれぞれ、2μm以下、または1μm以下であってもよい。
【0042】
前記平板状下部基板および前記平板状上部基板の表面平坦度が前記範囲内の場合、製造されるプラスチック基板の表面平坦度も、一般的なプラスチック基板より非常に向上できる。
【0043】
本明細書において、前記表面平坦度は、25℃および50RH%の雰囲気下、QED社のASI(aspheric stitching interferometry)装置により、直径200mm領域で0.16×0.16mmあたりの一点を測定するか、またはDUKIN社の3次元形状測定器装置を用いて、直径200mm領域で任意の原点を基準として、半径5mmおよび11.25度の間隔で測定された高さの最高値と最低値との間の差を意味することができる。
【0044】
本発明の一実施態様によれば、前記緩衝型スペーサの圧縮弾性係数は、0.1MPa以上10MPa以下であってもよい。具体的には、前記緩衝型スペーサの圧縮弾性係数は、0.1MPa以上5MPa以下、0.1MPa以上3MPa以下、または0.1MPa以上2MPa以下であってもよい。
【0045】
前記緩衝型スペーサの圧縮弾性係数が前記範囲内の場合、前記平板状上部基板の接触時、均一に前記硬化性組成物に荷重を伝達して、前記プラスチック基板の厚さ均一度を高めることができる。
【0046】
本発明において、緩衝型スペーサの圧縮弾性係数は、25℃および50RH%の雰囲気下、TA社のTexture Analyzerを用いて、試験片の面積5×5mm、圧縮速度1mm/minで圧縮時、測定される力の試験片の変形((初期の厚さ−変形後の厚さ)/初期の厚さ)に対する勾配を意味することができる。また、緩衝型スペーサが2以上の異なる層で構成される場合の緩衝型スペーサの圧縮弾性係数は、積層された試験片を面積5×5mmで用意して圧縮速度1mm/minで圧縮時、測定される力の試験片の変形((初期の厚さ−変形後の厚さ)/初期の厚さ)に対する勾配を意味することができる。
【0047】
本発明の一実施態様によれば、前記緩衝型スペーサは、非弾性層と弾性層とが積層された構造、非弾性層の間に弾性層が備えられた構造、または弾性層の間に非弾性層が備えられた構造であってもよい。一方、前記緩衝型スペーサが非弾性層と弾性層とが積層された構造、非弾性層の間に弾性層が備えられた構造、または弾性層の間に非弾性層が備えられた構造の場合、前記緩衝型スペーサの圧縮弾性係数は、弾性層の圧縮弾性係数を意味するものであってもよい。
【0048】
前記緩衝型スペーサは、前記硬化性組成物の収縮程度を考慮して設計できるので、前記非弾性層で支持の役割を果たし、前記弾性層で前記硬化性組成物の収縮による高さの変化を調節する役割を果たすことができる。
【0049】
本発明の一実施態様によれば、前記硬化性組成物の硬化収縮率は、15%以下であってもよい。具体的には、前記硬化性組成物の硬化収縮率は、1%以上15%以下、1%以上12%以下、または1%以上10%以下であってもよい。
【0050】
前記硬化性組成物の硬化収縮率は、下記一般式1のように導出できる。
[一般式1]
硬化収縮率(%)={(硬化前の体積−完全硬化後の体積)/硬化前の体積}×100
【0051】
本発明の一実施態様によれば、前記プラスチック基板の厚さは、400μm以上2,000μm以下であり、前記プラスチック基板の厚さ偏差は、1%以内であってもよい。
【0052】
具体的には、前記プラスチック基板の厚さ偏差が低いほど、前記プラスチック基板の厚さ均一度は高くなる。すなわち、本発明の一実施態様により製造されるプラスチック基板は、厚さ偏差が1%以内であって、非常に優れた厚さ均一度を有することができる。
【0053】
前記プラスチック基板の厚さは、前記平板状下部基板および前記平板状上部基板の離隔距離および前記硬化性組成物の硬化収縮率に応じて調節可能である。さらに、前記プラスチック基板の用途に応じて前記範囲内で前記プラスチック基板の厚さを調節することができる。
【0054】
また、前記プラスチック基板の厚さ偏差は、下記一般式2のように導出できる。
[一般式2]
厚さ偏差(%)=(最大偏差/平均厚さ)×100
【0055】
本明細書において、部材の厚さは、25℃および50RH%の雰囲気下、Mitsutoyo社のDigimatic Thick 547−401装置を用いた接触式測定方法を利用して、最大厚さまたは最小厚さを測定することができる。また、本明細書において、部材の厚さは、25℃および50RH%下、Micro−Epsilon社のIFS−2405−1またはIFC−2451−MP装置を用いた非接触式測定方法を利用して、最大厚さまたは最小厚さを測定することができる。
【0056】
本明細書において、部材の平均厚さは、25℃および50RH%の雰囲気下、Mitsutoyo社のDigimatic Thick 547−401装置を用いた接触式測定方法を利用して、任意に配置された試験片の任意の点を原点として、半径10mmおよび22.5度の間隔で測定された厚さの平均値であってよい。また、本明細書において、部材の平均厚さは、25℃および50RH%の雰囲気下、FIBERPRO社のOWTM(Optical Waper Thickness Measurement system)装置を用いた非接触式測定方法を利用して、任意に配置された試験片の任意の点を原点として、横および縦それぞれに対して1mm間隔で測定された厚さの平均値であってよい。
【0057】
本発明の一実施態様によれば、前記硬化性組成物は、光硬化性組成物または熱硬化性組成物であってもよい。具体的には、前記硬化性組成物は、熱硬化性組成物であってもよい。
【0058】
本発明の一実施態様によれば、前記平板状下部基板および前記平板状上部基板はそれぞれ、透明基板であってもよい。具体的には、前記平板状下部基板および前記平板状上部基板はそれぞれ、有機基板であってもよいし、これは優れた透光性によって効果的に前記硬化性組成物の光硬化を行うことができる。
【0059】
本発明の一実施態様は、前記平板状上部基板および前記平板状下部基板を除去してプラスチック基板を得るステップを含む。前記平板状上部基板および前記平板状下部基板を除去することは、前記硬化性組成物の硬化が完了した後、前記平板状上部基板と前記平板状下部基板を、前記硬化性組成物の硬化物であるプラスチック基板から分離することを意味することができる。
【0060】
本発明の一実施態様によれば、前記平板状下部基板および前記平板状上部基板の表面はそれぞれ、離型剤で表面処理されたものであってもよい。前記離型剤は、当業界で一般的に使用されるものであれば制限なく適用可能である。一例として、前記離型剤で表面処理したものは、フッ素系シランカップリング剤を用いて表面コーティングされたものであってもよい。
【0061】
前記離型剤を用いて表面コーティングされた場合、前記プラスチック基板を得るステップにおいて、前記プラスチック基板の表面の損傷を最小化し、前記平板状下部基板および前記平板状上部基板を除去することができる。
【0062】
本発明の一実施態様によれば、前記硬化性組成物は、プラスチック基板を製造するためのものであれば制限なく適用可能である。具体的には、前記硬化性組成物は、モールドキャスティングを利用してプラスチック基板を製造できるものであれば制限なく適用可能である。
【0063】
本発明の一実施態様は、前記プラスチック基板の製造方法により製造されたプラスチック基板を提供する。
【0064】
本発明の一実施態様によれば、前記プラスチック基板は、下記の物性を満足させることができる。
【0065】
本発明の一実施態様によれば、前記プラスチック基板の532nm波長における光屈折率は、1.65以上であってもよい。
【0066】
一般的なガラス基材の場合、光屈折率が532nm波長で1.65以上である。本発明の一実施態様に係るプラスチック基板は、プラスチック材質であるにもかかわらず、ガラス基材と同等な水準の光屈折率を実現できるので、ガラス基材を代替できるという利点がある。
【0067】
本発明の一実施態様によれば、前記プラスチック基板のガラス転移温度は、40℃以上であってもよい。
【0068】
ウェアラブルデバイスの場合、持続的な映像の伝送および出力が行われ、これによってレンズ基材の温度が上昇しうる。本発明の一実施態様に係るプラスチック基板は、ガラス転移温度が40℃以上に実現できるので、ウェアラブルデバイスのレンズ基材として用いても、温度による物性の変化を最小化できるという利点がある。
【0069】
本発明の一実施態様によれば、前記プラスチック基板は、ウェアラブルデバイスの回折導光レンズ基材用であってもよい。
【0070】
本発明の一実施態様は、前記プラスチック基板を含むウェアラブルデバイスを提供する。具体的には、前記ウェアラブルデバイスは、拡張現実デバイスまたは仮想現実デバイスであってもよい。前記プラスチック基板は、前記ウェアラブルデバイスのレンズ基材に含まれていてもよいし、前記プラスチック基板は、一面上に回折導光パターン部を含むことで、入力された光情報の入力、移動および送出をする基材として適用可能である。
【0071】
本発明の一実施態様に係るプラスチック基板は高い光屈折率を有するので、ウェアラブルデバイスのレンズ基材として用いられる場合、光損失を最小化し、光情報の移動を図ることができる。さらに、前記プラスチック基板は高いガラス転移温度を有するので、ウェアラブルデバイスの作動に伴う熱による物性の変化を最小化して高い耐久性を実現することができる。
【0072】
[実施例]
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本発明の範囲が以下に述べる実施例に限定されると解釈されない。本明細書の実施例は当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0073】
[製造例]−硬化性組成物の製造
ビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィド(Bis(2,3−epithiopropyl)disulfide)88.5重量部、2,2’−チオジエタンチオール(2,2’−Thiodiethanethiol)6.5重量部、イソホロンジイソシアネート(Isophorone diisocyanate)5.0重量部、およびテトラブチルホスホニウムブロミド(Tetrabutylphosphonium bromide)0.07重量部を含む硬化性組成物を製造した。
【0074】
製造された硬化性組成物の硬化収縮力は、前述した硬化収縮力の測定方法で測定した結果、2.00×10−4N/mmであった。
【0075】
[実施例1]
下部基板として屈曲弾性率70GPa、表面平坦度が0.5μm、厚さが30mm、直径が200mmであるガラス基板を用い、圧縮弾性係数が1.0MPa、高さが427μm、断面積が10×10mmであるシリコン材質の緩衝型スペーサを前記下部基板の円周に接するように120゜の間隔で備えてモールディング空間を形成した後、前記製造例により製造された硬化性組成物をモールディング空間に注入した後、上部基板として屈曲弾性率70GPa、荷重が8.2N、直径が200mm、表面平坦度が0.5μmであるガラス基板を用いて前記硬化性組成物をモールディング空間に充填させた。
【0076】
さらに、前記硬化性組成物をJEIO TECH社の対流オーブンに入れて、常温で2時間放置した後、昇温速度を1℃/minに設定した後、45℃で2時間、60℃で2時間、75℃で2時間、90℃で4時間熱硬化してプラスチック基板を製造した。
【0077】
[実施例2]
スペーサの高さを1,007μmに調節したことを除き、実施例1と同様の方法でプラスチック基板を製造した。
【0078】
[実施例3]
圧縮弾性係数が0.16MPaである紫外線架橋ポリオレフィン系弾性層および圧縮弾性係数が70GPaであるガラス材質の非弾性層を用いて、スペーサの構造を弾性層(171μm)/非弾性層(829μm)の構造に変更したことを除けば、実施例1と同様の方法でプラスチック基板を製造した。
【0079】
[実施例4]
圧縮弾性係数が0.16MPaである紫外線架橋ポリオレフィン系弾性層および圧縮弾性係数が70GPaであるガラス材質の非弾性層を用いて、スペーサの構造を非弾性層(198μm)/弾性層(164μm)/非弾性層(198μm)の構造に変更したことを除けば、実施例1と同様の方法でプラスチック基板を製造した。
【0080】
[実施例5]
圧縮弾性係数が1.0MPaであるシリコン材質の弾性層および圧縮弾性係数が70MPaであるガラス材質の非弾性層を用いて、スペーサの構造を弾性層(430μm)/非弾性層(500μm)の構造に変更したことを除けば、実施例1と同様の方法でプラスチック基板を製造した。
【0081】
[比較例1]
圧縮弾性係数が2GPa、高さ502μmであるポリカーボネート系スペーサを用いたことを除けば、実施例1と同様の方法でプラスチック基板を製造した。
【0082】
[比較例2]
圧縮弾性係数が0.16MPaである紫外線架橋ポリオレフィン系弾性層および圧縮弾性係数が70GPaであるガラス材質の非弾性層を用いて、スペーサの構造を弾性層(160μm)/非弾性層(829μm)の構造に変更したことを除けば、実施例1と同様の方法でプラスチック基板を製造した。
【0083】
[比較例3]
熱硬化条件を昇温速度3℃/minに設定して、60℃で2時間、90℃で4時間に変更したことを除けば、実施例2と同様の方法でプラスチック基板を製造した。
【0084】
実施例1〜実施例5および比較例1〜比較例3による具体的な事項および製造されたプラスチック基板の物性は、下記表1の通りである。
【0085】
【表1】
【0086】
前記表1のプラスチック基板の外観に対する評価は、肉眼でプラスチック基板の脈理現象があるか否かで判断した。肉眼で脈理現象が発見されない場合に良好、肉眼で脈理現象が発見された場合に不良と評価した。
【0087】
さらに、前記表1のスペーサの圧縮弾性係数、スペーサの圧縮応力、硬化性組成物の収縮、および厚さ偏差などは、前述のように測定した。
【0088】
前記表1によれば、実施例により製造されたプラスチック基板は非常に低い厚さ偏差を示すので、高い厚さ均一度を有することが分かる。一方、比較例1および2の場合、スペーサの圧縮応力が高すぎて、実施例のように、硬化性組成物の硬化による収縮時、上部基板との密着力を維持できず、非常に不良な厚さ偏差を示すので、低い厚さ均一度を有することを確認することができる。さらに、比較例1および2により製造されたプラスチック基板は、硬化時、上部基板との離隔によって表面に脈理現象が現れて外観特性も不良であることを確認することができる。また、比較例3の場合、スペーサの圧縮応力が低くて、非常に不良な厚さ偏差を示すことを確認することができる。
【0089】
したがって、本発明に係るプラスチック基板の製造方法は、厚さ均一度に優れ、外観特性に優れたプラスチック基板を実現できることが分かる。
【符号の説明】
【0090】
101:平板状下部基板
102:平板状上部基板
201、202:緩衝型スペーサ
300:硬化性組成物
図1