特許第6976672号(P6976672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976672
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】制汗剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/63 20060101AFI20211125BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20211125BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20211125BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20211125BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20211125BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   A61K8/63
   A61Q15/00
   A61K31/56
   A61K31/704
   A61K31/19
   A61P17/00
【請求項の数】1
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-510691(P2020-510691)
(86)(22)【出願日】2019年3月18日
(86)【国際出願番号】JP2019011137
(87)【国際公開番号】WO2019188486
(87)【国際公開日】20191003
【審査請求日】2020年3月4日
(31)【優先権主張番号】特願2018-62833(P2018-62833)
(32)【優先日】2018年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】中島 輝恵
(72)【発明者】
【氏名】倉田 隆一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤田 郁尚
(72)【発明者】
【氏名】岡田 文裕
【審査官】 松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−105221(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02541895(FR,A1)
【文献】 特開平07−149787(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第106821854(CN,A)
【文献】 特開平09−067253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/63
A61Q 15/00
A61K 31/56
A61K 31/704
A61K 31/19
A61P 17/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汗の分泌を抑制するための制汗剤であって、カルベノキソロン、カルベノキソロン2ナトリウム、α−アミリンおよびβ−アミリンからなる群より選ばれた少なくとも1種の五環式化合物を汗の分泌を抑制するための有効成分として含有することを特徴とする制汗剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制汗剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、化粧用途に用いられる制汗剤、医療用途に用いられる制汗剤などに有用な制汗剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの汗腺は、汗を分泌することにより、体温の調節および老廃物の排泄に関与していると考えられている。また、過度の汗の分泌は、肌のベタつきを招くことがある。そこで、汗腺の汗孔を閉塞させて汗の分泌を物理的に阻害する制汗剤が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、汗腺の汗孔を閉塞すると、汗の分泌が必要以上に阻害されることがある。近年の消費者における安全志向の高まりから、汗孔を閉塞させなくても、汗腺に作用して汗の分泌を制御することができる新たな制汗剤が待ち望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、汗孔を閉塞させなくても、汗腺に作用して汗の分泌を制御することができる制汗剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、汗腺による汗の分泌を制御するための制汗剤であって、式(I):
【0007】
【化1】
【0008】
〔式中、R1は式(II):
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、R2は水素原子、水酸基、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルカノイル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルカノイルオキシ基または置換基を有していてもよいグルコピラヌロノシルオキシ基を示す)
で表わされる基または式(III):
【0011】
【化3】
【0012】
で表わされる基、R3は水素原子または水酸基、R4は前記式(III)で表わされる基または式(IV):
【0013】
【化4】
【0014】
(式中、R5は水素原子、ハロゲン原子、水酸基または炭素数1〜6のアルキル基を示す)
で表わされる基、R6は前記式(III)で表わされる基または式(V):
【0015】
【化5】
【0016】
(式中、R7は水素原子、水酸基または炭素数1〜6のアルキル基を示す)
で表わされる基、R8およびR9はそれぞれ独立して水素原子、水酸基または炭素数1〜6のアルキル基、R10は炭素数1〜6のアルキル基またはカルボキシル基、R11は水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基またはカルボキシル基、R12は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基またはカルボキシル基、R13は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基、R14は前記式(III)で表わされる基または式(VI):
【0017】
【化6】
【0018】
で表わされる基を示す〕
で表わされる化合物、前記式(I)で表わされる化合物の誘導体、式(VII):
【0019】
【化7】
【0020】
(式中、R1、R6、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は前記と同じ、R15は水素原子、ハロゲン原子または水酸基を示す)
で表わされる化合物および前記式(VII)で表わされる化合物の誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の五環式化合物を汗腺による汗の分泌を制御するための有効成分として含有することを特徴とする制汗剤に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、汗孔を閉塞させなくても、汗腺に作用して汗の分泌を制御することができる制汗剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(A)は試験例1において、実施例1で得られた制汗剤および製造例3で得られた汗腺刺激剤の双方と接触させた後の全汗腺の一部分のタイムラプス撮影画像の図面代用写真、(B)は(A)における枠囲み部分に含まれる細胞の核の動きを観察した結果を示す図面代用写真である。
図2】(A)は試験例1において、実施例1で得られた制汗剤と全汗腺とを接触させたときの汗腺の細胞の核の移動距離の平均値の経時的変化を調べた結果を示すグラフ、(B)は比較例1の対照試料と全汗腺とを接触させたときの汗腺の細胞の核の移動距離の平均値の経時的変化を調べた結果を示すグラフである。
図3】試験例2において、実施例2で得られた制汗剤と全汗腺とを接触させたときの汗腺の分泌管の細胞の核の移動距離の平均値の経時的変化を調べた結果を示すグラフである。
図4】試験例2において、実施例3で得られた制汗剤と全汗腺とを接触させたときの汗腺の分泌管の細胞の核の移動距離の平均値の経時的変化を調べた結果を示すグラフである。
図5】試験例2において、実施例4で得られた制汗剤と全汗腺とを接触させたときの汗腺の分泌管の細胞の核の移動距離の平均値の経時的変化を調べた結果を示すグラフである。
図6】試験例2において、実施例5で得られた制汗剤と全汗腺とを接触させたときの汗腺の分泌管の細胞の核の移動距離の平均値の経時的変化を調べた結果を示すグラフである。
図7】試験例2において、実施例6で得られた制汗剤と全汗腺とを接触させたときの汗腺の分泌管の細胞の核の移動距離の平均値の経時的変化を調べた結果を示すグラフである。
図8】試験例2において、実施例7で得られた制汗剤と全汗腺とを接触させたときの汗腺の分泌管の細胞の核の移動距離の平均値の経時的変化を調べた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の制汗剤は、汗の分泌を制御するための制汗剤であって、式(I):
【0024】
【化8】
【0025】
〔式中、R1は式(II):
【0026】
【化9】
【0027】
(式中、R2は水素原子、水酸基、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルカノイル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルカノイルオキシ基または置換基を有していてもよいグルコピラヌロノシルオキシ基を示す)
で表わされる基または式(III):
【0028】
【化10】
【0029】
で表わされる基、R3は水素原子または水酸基、R4は式(III)で表わされる基または式(IV):
【0030】
【化11】
【0031】
(式中、R5は水素原子、ハロゲン原子、水酸基または炭素数1〜6のアルキル基を示す)
で表わされる基、R6は式(III)で表わされる基または式(V):
【0032】
【化12】
【0033】
(式中、R7は水素原子、水酸基または炭素数1〜6のアルキル基を示す)
で表わされる基、R8およびR9はそれぞれ独立して水素原子、水酸基または炭素数1〜6のアルキル基、R10は炭素数1〜6のアルキル基またはカルボキシル基、R11は水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基またはカルボキシル基、R12は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基またはカルボキシル基、R13は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基、R14は式(III)で表わされる基または式(VI):
【0034】
【化13】
【0035】
で表わされる基を示す〕
で表わされる化合物、式(I)で表わされる化合物の誘導体、式(VII):
【0036】
【化14】
【0037】
(式中、R1、R6、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は前記と同じ、R15は水素原子、ハロゲン原子または水酸基を示す)
で表わされる化合物および式(VII)で表わされる化合物の誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の五環式化合物を汗腺による汗の分泌を制御するための有効成分として含有することを特徴とする。
【0038】
式(I)で表わされる化合物、式(I)で表わされる化合物の誘導体、式(VII)で表わされる化合物および式(VII)で表わされる化合物の誘導体は、ヒトの汗腺の分泌管に作用して汗の分泌の際の汗腺の分泌管の動きを制御する。したがって、本発明の制汗剤によれば、汗孔を閉塞させなくても、汗腺に作用して汗の分泌を制御することができる。
【0039】
式(I)で表わされる化合物において、R1は、式(II)で表わされる基または式(III)で表わされる基である。
【0040】
式(II)で表わされる基において、R2は、水素原子、水酸基、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルカノイル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルカノイルオキシ基または置換基を有していてもよいグルコピラヌロノシルオキシ基である。
【0041】
炭素数1〜12のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、シクロプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、シクロブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロオクチルオキシ基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。炭素数1〜12のアルコキシ基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜6のアルキル基;水酸基;アミノ基;カルボキシル基;シアノ基;ニトロ基;チオール基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0042】
炭素数1〜12のアルカノイル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、n−プロピオニル基、n−ブチリル基、イソブチリル基、n−ペンタノイル基、tert−ブチルカルボニル基、n−ヘキサノイル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。炭素数1〜12のアルカノイル基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、チオール基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。アルカノイル基が有していてもよい置換基に用いられる炭素数1〜6のアルキル基は、炭素数1〜12のアルコキシ基が有していてもよい置換基に用いられる炭素数1〜6のアルキル基と同様である。
【0043】
炭素数1〜12のアルカノイルオキシ基としては、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、n−プロピオニルオキシ基、n−ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、n−ペンタノイルオキシ基、tert−ブチルカルボニルオキシ基、n−ヘキサノイルオキシ基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。炭素数1〜12のアルカノイルオキシ基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、チオール基、置換基を有していてもよい複素環基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。アルカノイルオキシ基が有していてもよい置換基に用いられる炭素数1〜6のアルキル基は、炭素数1〜12のアルコキシ基が有していてもよい置換基に用いられる炭素数1〜6のアルキル基と同様である。複素環基としては、例えば、フリル基、ピリジル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。複素環基が有していてもよい置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、水酸基、ニトロ基、シアノ基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。複素環基が有していてもよい置換基に用いられる炭素数1〜6のアルキル基は、炭素数1〜12のアルコキシ基が有していてもよい置換基に用いられる炭素数1〜6のアルキル基と同様である。
【0044】
グルコピラヌロノシルオキシ基が有していてもよい置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、水酸基、ニトロ基、シアノ基、グルコピラヌロノシル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。グルコピラヌロノシルオキシ基が有していてもよい置換基に用いられる炭素数1〜6のアルキル基は、炭素数1〜12のアルコキシ基が有していてもよい置換基に用いられる炭素数1〜6のアルキル基と同様である。
【0045】
1のなかでは、制汗作用を向上させる観点から、式(II)で表わされる基が好ましい。この場合、式(II)のR2は、制汗作用を向上させる観点から、水酸基、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルカノイルオキシ基または置換基を有していてもよいグルコピラヌロノシルオキシ基であることが好ましく、水酸基、置換基としてカルボキシル基を有する炭素数1〜12のアルカノイルオキシ基または置換基としてグルコピラヌロノシル基を有するグルコピラヌロノシルオキシ基であることがより好ましい。
【0046】
3は、水素原子または水酸基である。R3のなかでは、制汗作用を向上させる観点から、水素原子が好ましい。
【0047】
4は、式(III)で表わされる基または式(IV)で表わされる基である。式(IV)で表わされる基において、R5は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基または炭素数1〜6のアルキル基である。R5に用いられる炭素数1〜6のアルキル基は、炭素数1〜12のアルコキシ基が有していてもよい置換基に用いられる炭素数1〜6のアルキル基と同様である。R4のなかでは、制汗作用を向上させる観点から、式(IV)で表わされる基が好ましい。この場合、式(IV)のR5は、水素原子であることが好ましい。
【0048】
6は、式(III)で表わされる基または式(V)で表わされる基である。式(V)で表わされる基において、R7は、水素原子、水酸基または炭素数1〜6のアルキル基である。R7に用いられる炭素数1〜6のアルキル基は、炭素数1〜12のアルコキシ基が有していてもよい置換基に用いられる炭素数1〜6のアルキル基と同様である。R6は、制汗作用を向上させる観点から、好ましくは式(V)で表わされる基が好ましい。この場合、式(V)のR7は、水素原子であることが好ましい。
【0049】
8およびR9は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基または炭素数1〜6のアルキル基である。R8およびR9に用いられる炭素数1〜6のアルキル基は、炭素数1〜12のアルコキシ基が有していてもよい置換基に用いられる炭素数1〜6のアルキル基と同様である。R8は、制汗作用を向上させる観点から、好ましくは水素原子および炭素数1〜6のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。R9は制汗作用を向上させる観点から、好ましくは水素原子および炭素数1〜6のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。
【0050】
10は、炭素数1〜6のアルキル基またはカルボキシル基である。R10に用いられる炭素数1〜6のアルキル基は、炭素数1〜12のアルコキシ基が有していてもよい置換基に用いられる炭素数1〜6のアルキル基と同様である。R10は、制汗作用を向上させる観点から、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、好ましくはメチル基である。
【0051】
11は、水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基またはカルボキシル基である。R11に用いられる炭素数1〜6のアルキル基は、炭素数1〜12のアルコキシ基が有していてもよい置換基に用いられる炭素数1〜6のアルキル基と同様である。R11は、制汗作用を向上させる観点から、好ましくは水素原子または水酸基、より好ましくは水素原子である。
【0052】
12は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基またはカルボキシル基である。R12に用いられる炭素数1〜6のアルキル基は、炭素数1〜12のアルコキシ基が有していてもよい置換基に用いられる炭素数1〜6のアルキル基と同様である。R12は、制汗作用を向上させる観点から、好ましくはカルボキシル基である。
【0053】
13は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。R13に用いられる炭素数1〜6のアルキル基は、炭素数1〜12のアルコキシ基が有していてもよい置換基に用いられる炭素数1〜6のアルキル基と同様である。R13は、制汗作用を向上させる観点から、好ましくは水素原子である。
【0054】
14は、式(III)で表わされる基または式(VI)で表わされる基である。R14は、制汗作用を向上させる観点から、好ましくは式(III)で表わされる基である。
【0055】
式(I)で表わされる化合物の誘導体としては、例えば、式(I)で表わされる化合物の金属塩、式(I)で表わされる化合物の無機塩基塩、式(I)で表わされる化合物の有機アミン塩、式(I)で表わされる化合物のエステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。無機塩基塩としては、例えば、アンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。有機アミン塩としては、例えば、トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。式(I)で表わされる化合物のエステルとしては、例えば、式(I)で表わされる化合物と炭素数1〜24のアルコールとのエステル、式(I)で表わされる化合物とピリドキシンとのエステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。炭素数1〜24のアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、ブチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコール;ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコールの高級アルコール、グリセロールなどの多価アルコールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0056】
式(I)で表わされる化合物およびその誘導体として、商業的に容易に入手可能な化合物を用いることができる。商業的に容易に入手可能な化合物としては、例えば、カルベノキソロン、カルベノキソロン2ナトリウム、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、INI−0602、ウルソール酸、オレアノール酸、オレアノン酸、α−アミリン、β−アミリンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。また、式(I)で表わされる化合物およびその誘導体は、容易に合成することができる。グリチルレチン酸は、18α−グリチルレチン酸であってもよく、18β−グリチルレチン酸であってもよい。
【0057】
式(VII)で表わされる化合物において、R1、R6、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、式(I)で表わされる化合物におけるR1、R6、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14と同じである。R15は、水素原子、ハロゲン原子または水酸基である。
【0058】
式(VII)で表わされる化合物の誘導体としては、例えば、式(VII)で表わされる化合物の金属塩、式(VII)で表わされる化合物の無機塩基塩、式(VII)で表わされる化合物の有機アミン塩、式(VII)で表わされる化合物のエステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。無機塩基塩としては、例えば、アンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。有機アミン塩としては、例えば、トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。式(VII)で表わされる化合物のエステルとしては、例えば、式(VII)で表わされる化合物と炭素数1〜24のアルコールとのエステル、式(VII)で表わされる化合物とピリドキシンとのエステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。炭素数1〜24のアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、ブチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコール;ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコールの高級アルコール、グリセロールなどの多価アルコールが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0059】
式(VII)で表わされる化合物およびその誘導体として、商業的に容易に入手可能な化合物を用いることができる。また、式(VII)で表わされる化合物およびその誘導体は、容易に合成することができる。
【0060】
五環式化合物は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。五環式化合物のなかでは、制汗作用を向上させる観点から、式(I)で表わされる化合物およびその誘導体が好ましく、式(I)において、R1が式(II)で表わされる基、R3が水素原子、R4が式(IV)で表わされる基、R6が式(V)で表わされる基、R8およびR9が炭素数1〜6のアルキル基、R10がメチル基、R11が水素原子または水酸基、R12がカルボキシル基、R13が水素原子、R14が式(III)で表わされる基である化合物およびその誘導体がより好ましく、式(VIII):
【0061】
【化15】
【0062】
で表わされる化合物、式(VIII)で表わされる化合物のアルカリ金属塩、式(IX):
【0063】
【化16】
【0064】
で表わされる化合物、式(IX)で表わされる化合物のアルカリ金属塩、式(IX)で表わされる化合物と炭素数1〜24のアルコールとのエステル、式(IX)で表わされる化合物とピリドキシンとのエステル、式(X):
【0065】
【化17】
【0066】
で表わされる化合物、式(X)で表わされる化合物のアルカリ金属塩および式(X)で表わされる化合物のアンモニウム塩がさらに好ましく、式(VIII)で表わされる化合物および式(VIII)で表わされる化合物のアルカリ金属塩がより一層好ましい。
【0067】
本発明の制汗剤における五環式化合物の含有率は、制汗作用を十分に発現させる観点から、好ましくは0.0000001質量%以上、より好ましくは0.0001質量%以上であり、使用者に対する負荷を低減する観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは0.6質量%以下である。
【0068】
本発明の制汗剤には、本発明の目的を妨げない範囲内で、助剤を配合することができる。助剤としては、例えば、界面活性剤、アルコール、清涼剤、植物抽出物、香料、金属封鎖剤、酸化防止剤、防腐剤、増粘剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0069】
以上説明したように、本発明の制汗剤によれば、前述の五環式化合物を汗腺による汗の分泌を制御するための有効成分として含有しているので、汗腺の分泌管に作用して汗の分泌の際の汗腺の分泌管の動きを制御することができる。このことから、本発明の制汗剤によれば、汗孔を閉塞させなくても、汗腺に作用して汗の分泌を制御することができる。したがって、本発明の制汗剤は、例えば、化粧用途に用いられる制汗剤、医療用途に用いられる制汗剤などに用いられることが期待される。また、本発明の制汗剤は、汗の分泌を完全に阻害するための制汗剤、汗の分泌を緩和するための制汗剤などの使用者の要求に応じた制汗剤として用いられることが期待される。
【実施例】
【0070】
以下に実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例などにおいて、略語の意味は、以下のとおりである。
<略語の説明>
HEPES:2−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル]エタンスルホン酸
PBS:リン酸緩衝化生理食塩水
5×PBS:5倍濃度のリン酸緩衝化生理食塩水
【0071】
製造例1
PBS500μLに細胞骨格染色試薬〔サイトケラチン(Cytoskelton)社製、商品名:Acti−stain 488、Acti−stain 488の濃度:14μM〕3.5μLと、細胞膜染色試薬〔サーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)社製、商品名:CellMask〕4μLと、核染色試薬〔Hoechst33342〕1μLとを添加し、染色試薬混合液を得た。
【0072】
製造例2
コラーゲン タイプI−A液(コラーゲン タイプI−Aの含有率:3質量%)〔新田ゼラチン(株)製〕700μLと、5×PBS〔組成:685mM塩化ナトリウム、13.5mM塩化カリウム、50mMリン酸水素二ナトリウム十二水和物および9mMリン酸二水素カリウム、pH7.4〕200μLと、コラーゲン再構成緩衝液〔組成:50mM水酸化ナトリウム、260mM HEPESおよび200mM炭酸水素ナトリウム、pH10.0〕100μLとを混合することにより、コラーゲン含有液を得た。
【0073】
製造例3
汗腺収縮誘導試薬であるピロカルピンをその濃度が100mMとなるようにPBSに添加し、汗腺刺激剤を得た。
【0074】
実施例1
式(VIII)で表わされる化合物をその濃度が100mMとなるようにPBSに添加し、制汗剤を得た。
【0075】
比較例1
以下において、PBSを比較例1の対照試料として用いた。
【0076】
試験例1
(1)全汗腺の単離
皮膚組織として、生体から摘出後すぐに冷蔵され、4℃で15時間保存された皮膚組織を用いた。皮膚組織を10μM染色剤〔ニュートラルレッド(Neutral Red)〕含有PBSに浸すことにより、当該皮膚組織中の汗腺に染色剤を取り込ませた。つぎに、染色剤を取り込んだ皮膚組織の真皮部分を細かく裁断し、真皮細片を得た。光学顕微鏡下にピンセットを用い、真皮細片から全汗腺を採取した。
【0077】
(2)染色
試験例1(1)で得られた全汗腺を製造例1で得られた染色試薬混合液中に室温(24℃)で30分間浸漬させることにより、全汗腺を染色した。染色された全汗腺をPBSで洗浄した。
【0078】
(3)支持体上への染色された全汗腺の位置固定
実体顕微鏡〔ライカ(Leica)社製、商品名:M125〕下において、試験例1(2)で得られた洗浄後の全汗腺をガラスボトムディッシュに静置した。ガラスボトムディッシュに静置された全汗腺に、製造例2で得られたコラーゲン含有液Aを滴下した。つぎに、前記ガラスボトムディッシュを37℃で5分間インキュベーションすることにより、前記全汗腺にコラーゲン含有液に含まれるコラーゲン タイプI−Aをゲル化させた。その後、全汗腺が乾燥しないように、前記全汗腺上にPBS300μLを添加した。これにより、全汗腺が位置ずれしないように、コラーゲン タイプI−Aによって前記全汗腺を支持体であるガラスボトムディッシュに保持させて観察試料を得た。
【0079】
(4)観察
観察試料において、ゲル化したコラーゲン タイプI−Aによって全汗腺がガラスボトムディッシュに接着していることを実体顕微鏡下で確認しながら、ダルベッコリン酸緩衝液〔ギブコ(Gibco)社製、カタログ番号:14190−144〕適量を支持体であるガラスボトムディッシュに添加した。
【0080】
実施例1で得られた制汗剤3μLと、観察試料におけるガラスボトムディッシュ上の全汗腺とを接触させ、生物用共焦点レーザー走査型顕微鏡〔オリンパス(株)製の商品名:FV1200を搭載した倒立顕微鏡(オリンパス(株)製、商品名:IX−83)〕を用いて、ガラスボトムディッシュ上の全汗腺のタイムラプス撮影による観察を開始した。このとき、核に結合した核染色試薬に由来する蛍光と、細胞骨格に結合した細胞骨格染色試薬に由来する蛍光とを検出することにより、全汗腺を視覚化した。観察開始時から600秒間経過時に、製造例3で得られた汗腺刺激剤30μLと、観察試料におけるガラスボトムディッシュ上の全汗腺とを接触させ、全汗腺のタイムラプス撮影による観察を続けた。タイムラプス撮影の条件は、以下のとおりである。
【0081】
<タイムラプス撮影条件>
X:634.662μm
Y:634.662μm
Z:30μm
Zインターバル:1.5μm
Z枚数:21枚
タイムインターバル:30秒間
全フレーム数:61フレーム
全観察時間:1800秒間
【0082】
つぎに、全汗腺のタイムラプス撮影画像中の分泌管の管腔内の細胞群と分泌管の外縁部の細胞群とから各5個の細胞を選択し、画像解析ソフトウェア〔アメリカ国立衛生研究所(NIH)製、商品名:ImageJ〕を用い、各細胞の核の移動距離の経時的変化を調べた。細胞の核の移動距離を求めるために、まず、各細胞の核のx座標およびy座標を用い、連続するフレーム間での座標の変化(差)を、式(XI)および(XII):
n+1-X (XI)
(式中、nは1〜61の整数を示す)
n+1-Y (XII)
(式中、nは前記と同じ)
にしたがって求めた。つぎに、三平方の定理(a+b=c)にしたがい、式(XIII):
(Xn+1−X2+(Yn+1−Y2 (XIII)
(式中、nは前記と同じ)
の平方根を算出することにより、連続するフレーム間毎の細胞の核の間の移動値を求めた。さらに、実際の移動距離を求めるため、取得画像の大きさ〔634.662μm×634.662μm〕とピクセル(512×512)から、座標1あたりの単位(μm/ピクセル)を求めた。移動値と座標1あたりの大きさを乗じて実際の細胞の核の移動距離(μm)を算出した。つぎに、各細胞の核の移動距離を用いて分泌管の管腔内の細胞の核の移動距離の平均値および分泌管の外縁部の細胞の核の移動距離の平均値を調べた。
【0083】
また、前記において、実施例1で得られた制汗剤を用いる代わりに比較例1の対照試料を用いたことを除き、前記と同様の操作を行ない、分泌管の管腔内の細胞の核の移動距離の平均値および分泌管の外縁部の細胞の核の移動距離の平均値を調べた。
【0084】
試験例1において、実施例1で得られた制汗剤および製造例3で得られた汗腺刺激剤の双方と接触させた後の全汗腺の一部分のタイムラプス撮影画像を図1(A)、図1(A)における枠囲み部分に含まれる細胞の核の動きを観察した結果を図1(B)に示す。図1(A)中のスケールバーは50μm、図1(B)中のスケールバーは50μmを示す。図中、1は筋上皮細胞の代表例、2は管腔細胞の代表例を示す。
【0085】
また、試験例1において、実施例1で得られた制汗剤と全汗腺とを接触させたときの汗腺の細胞の核の移動距離の平均値の経時的変化を調べた結果を図2(A)、比較例1の対照試料と全汗腺とを接触させたときの汗腺の細胞の核の移動距離の平均値の経時的変化を調べた結果を図2(B)に示す。図中、白三角は汗腺の分泌管の外縁部の細胞の移動距離の平均値の経時的変化、白丸は汗腺の分泌管の管腔内の細胞の核の移動距離の平均値の経時的変化を示す。また、図中、「核の移動距離の平均値」は、汗腺の分泌管の細胞の核の移動距離の平均値を示す。
【0086】
図1および図2(A)に示された結果から、実施例1で得られた制汗剤と全汗腺とを予め接触させた場合、汗腺の分泌管の管腔内の細胞の核〔図2(A)中、白丸〕および汗腺の分泌管の外縁部の細胞の核〔図2(A)中、白三角〕は、製造例3で得られた汗腺刺激剤と全汗腺とを接触後であっても、ほとんど移動していないことがわかる。
【0087】
これに対し、図2(B)に示された結果から、比較例1の対照試料と全汗腺とを接触させた場合、汗腺の分泌管の管腔内の細胞の核〔図2(B)中、白丸〕および汗腺の分泌管の外縁部の細胞の核〔図2(B)中、白三角〕の双方が、製造例3で得られた汗腺刺激剤と全汗腺との接触後に移動していることがわかる。
【0088】
また、タイムラプス撮影画像中の汗腺の分泌管の観察結果から、実施例1で得られた制汗剤と全汗腺とを接触させることにより、汗腺の分泌管の動きが抑制されていることが確認された。
【0089】
これらの結果から、実施例1で得られた制汗剤は、汗腺の分泌管に作用し、当該分泌管の細胞の動きを抑制することにより、当該分泌管の動きを抑制していることがわかる。したがって、実施例1で得られた制汗剤は、汗腺の動きを制御して汗の分泌を制御することがわかる。
【0090】
なお、実施例1で得られた制汗剤の代わりに、式(IX)で表わされる化合物、式(X)で表わされる化合物その他の式(I)で表わされる化合物、式(I)で表わされる化合物の誘導体、式(VII)で表わされる化合物、または式(VII)で表わされる化合物の誘導体を含有する制汗剤を用いた場合にも、実施例1で得られた制汗剤を用いたときと同様の傾向が見られる。
【0091】
以上の結果から、本発明の制汗剤は、汗腺の分泌管に作用して汗の分泌の際の汗腺の分泌管の動きを制御することができる。したがって、本発明の制汗剤は、汗孔を閉塞させなくても、汗腺の動きを制御して汗の分泌を制御することがわかる。
【0092】
実施例2
18α−グリチルレチン酸をその濃度が10mMとなるようにPBSに添加し、制汗剤を得た。
【0093】
実施例3
18β−グリチルレチン酸をその濃度が10mMとなるようにPBSに添加し、制汗剤を得た。
【0094】
実施例4
ウルソール酸をその濃度が10mMとなるようにPBSに添加し、制汗剤を得た。
【0095】
実施例5
オレアノール酸をその濃度が100μMとなるようにPBSに添加し、制汗剤を得た。
【0096】
実施例6
α―アミリンをその濃度が2mMとなるようにPBSに添加し、制汗剤を得た。
【0097】
実施例7
β−アミリンをその濃度が2mMとなるようにPBSに添加し、制汗剤を得た。
【0098】
製造例4
ピロカルピンをその濃度が10mMとなるようにPBSに添加し、汗腺刺激剤を得た。
【0099】
試験例2
試験例1において、実施例1で得られた制汗剤を用いる代わりに実施例2〜7で得られた各制汗剤を用いたこと、製造例3で得られた汗腺刺激剤を用いる代わりに製造例4で得られた汗腺刺激剤を用いたことおよび全汗腺のタイムラプス撮影画像中の分泌管の管腔内の細胞群と分泌管の外縁部の細胞群とから各5個の細胞を選択する代わりに全汗腺のタイムラプス撮影画像中の分泌管の細胞群から5個の細胞を選択したことを除き、試験例1と同様の操作を行ない、実施例2〜7で得られた各制汗剤と全汗腺とを接触させたときの汗腺の分泌管の細胞の核の移動距離の平均値の経時的変化を調べた。
【0100】
試験例2において、実施例2で得られた制汗剤と全汗腺とを接触させたときの汗腺の分泌管の細胞の核の移動距離の平均値の経時的変化を調べた結果を図3、実施例3で得られた制汗剤と全汗腺とを接触させたときの汗腺の分泌管の細胞の核の移動距離の平均値の経時的変化を調べた結果を図4、実施例4で得られた制汗剤と全汗腺とを接触させたときの汗腺の分泌管の細胞の核の移動距離の平均値の経時的変化を調べた結果を図5、実施例5で得られた制汗剤と全汗腺とを接触させたときの汗腺の分泌管の細胞の核の移動距離の平均値の経時的変化を調べた結果を図6、実施例6で得られた制汗剤と全汗腺とを接触させたときの汗腺の分泌管の細胞の核の移動距離の平均値の経時的変化を調べた結果を図7、実施例7で得られた制汗剤と全汗腺とを接触させたときの汗腺の分泌管の細胞の核の移動距離の平均値の経時的変化を調べた結果を図8に示す。また、図中、「核の移動距離の平均値」は、汗腺の分泌管の細胞の核の移動距離の平均値を示す。
【0101】
図3〜8に示された結果および以下の評価基準に基づき、汗腺の分泌管の細胞の核が移動しているかどうかを判断した。
<<評価基準>>
汗腺の分泌管の細胞の核の移動距離の平均値の最大値が1μm以下:汗腺の分泌管の細胞の核が移動していない。
汗腺の分泌管の細胞の核の移動距離の平均値の最大値が1μmを超える:汗腺の分泌管の細胞の核が移動している。
【0102】
その結果、18α−グリチルレチン酸(実施例2)、18β−グリチルレチン酸(実施例3)、ウルソール酸(実施例4)、オレアノール酸(実施例5)、α―アミリン(実施例6)またはβ−アミリン(実施例7)を含有する制汗剤と全汗腺とを接触させた場合、汗腺の分泌管の細胞の核がほとんど移動していなかった。これらの結果から、実施例2〜7で得られた制汗剤は、汗腺の分泌管に作用し、当該分泌管の細胞の動きを抑制することにより、分泌管の動きを抑制していることがわかる。したがって、実施例2〜7で得られた制汗剤は、汗腺の動きを制御して汗の分泌を制御することがわかる。
【0103】
試験例3
評価技能の習熟度が同じである専門パネラー10名それぞれの脇下に実施例1で得られた制汗剤を塗布した後、専門パネラーに軽い運動を行なわせる。その後、専門パネラーに、以下の評価基準に基づいて発汗の度合いの得点をつけさせる。また、前記において、実施例1で得られた制汗剤を用いる代わりに比較例1の対照試料を用いることを除き、前記と同様に、専門パネラーに、発汗の度合いの得点をつけさせる。専門パネラーによってつけられた得点の平均値を求める。
<評価基準>
0点:大量の汗をかいている。
1点:汗をかいている。
2点:わずかに汗をかいている。
3点:ほとんど汗をかいていない。
4点:汗をかいていない。
【0104】
その結果、実施例1で得られた制汗剤を用いたときの得点の平均値は、比較例1の対照試料を用いたときの得点の平均値よりも高い傾向が見られる。なお、実施例1で得られた制汗剤の代わりに、式(IX)で表わされる化合物、式(X)で表わされる化合物その他の式(I)で表わされる化合物、式(I)で表わされる化合物の誘導体、式(VII)で表わされる化合物、または式(VII)で表わされる化合物の誘導体を含有する制汗剤を用いた場合にも、実施例1で得られた制汗剤を用いたときと同様の傾向が見られる。したがって、本発明の制汗剤は、汗腺の動きを制御して汗の分泌を制御することがわかる。
【0105】
以上説明したように、本発明の制汗剤によれば、前述の五環式化合物を汗腺による汗の分泌を制御するための有効成分として含有しているので、汗腺の分泌管に作用して汗の分泌の際の汗腺の分泌管の動きを制御することができる。このことから、本発明の制汗剤によれば、汗孔を閉塞させなくても、汗腺に作用して汗の分泌を制御することができる。したがって、本発明の制汗剤は、例えば、化粧用途に用いられる制汗剤、医療用途に用いられる制汗剤などに用いられることが期待される。また、本発明の制汗剤は、例えば、汗の分泌を完全に阻害するための制汗剤、汗の分泌を緩和するための制汗剤などの使用者の要求に応じた制汗剤として用いられることが期待される。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8