(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、野菜や果物などの可食性植物の粉砕物を含む粉末または顆粒状の乾燥組成物、及びその製造方法を提供することを目的とする。より詳細には、本発明は、野菜や果物などの可食性植物の粉砕物を、不可逆的に凝集または塊状化することが抑制された状態で含む粉末または顆粒状の乾燥組成物、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねたところ、野菜等の可食性植物を乾燥後、粉砕する際にシリカを共存させておくことで、糖度の高い野菜等であってもベタツキの発生が有意に抑制され、効率的に細かく粉砕することができること、しかも得られた粉砕物(粉末)及びその造粒物(顆粒)は凝集が抑制され、さらさらとした性状であることを確認した。また本発明者らは、可食性植物を粉砕する際にシリカとともに多糖類を共存させておくと、上記効果に加えて、得られた粉砕物(粉末)及びその造粒物(顆粒)の経時的安定性が向上し、経時的に生じ得る不可逆的な凝集化及び塊状化が有意に抑制でき、長期にわたってさらさらとした性状を有することを確認した。また、これらの粉砕物等は、凝集または塊状化が生じても、撹拌または篩過することで容易にさらさらとした性状が復元できることを確認した。
【0009】
本発明は、これらの知見に基づいて、さらなる検討によって完成したものであり、下記の実施形態を包含する。
【0010】
(I)粉末または顆粒状の可食性植物乾燥組成物
(I−1)(A)BRIX値が14以上の可食性植物の粉砕物、及び(B)シリカを含有することを特徴とする粉末または顆粒状の乾燥組成物。
(I−2)(B)シリカの含有量が少なくとも1重量%である、(I−1)に記載する乾燥組成物。
(I−3)1gあたりの菌数が3000個以下である、(I−1)または(I−2)のいずれかに記載する乾燥組成物。
(I−4)上記粉末または顆粒状の乾燥組成物が150μm以下の粒径を有するものである、(I−1)〜(I−3)のいずれかに記載する乾燥組成物。
(I−5)さらに(C)多糖類を含有する(I−1)〜(I−4)のいずれかに記載する乾燥組成物。
(I−6)(C)多糖類の含有量が少なくとも10重量%である、(I−5)に記載する乾燥組成物。
(I−7)可食性植物が、野菜及び果物からなる群から選択される少なくとも1種である(I−1)〜(I−6)のいずれかに記載する乾燥組成物。
【0011】
(II)粉末または顆粒状の可食性植物乾燥組成物の製造方法
(II−1)下記の工程を有する(I−1)〜(I−4)のいずれかに記載する乾燥組成物の製造方法:
(1)BRIX値が14以上の可食性植物を乾燥する工程、
(2)上記(1)工程で得られた乾燥可食性植物を加熱殺菌する工程、
(3)上記(2)工程で得られた加熱殺菌乾燥可食性植物をシリカの存在下で粉砕する工程。
(II−2)さらに下記(4)または/および(5)の工程を有する(II−1)に記載する製造方法:
(4)(3)工程で得られた粉砕物を整粒する工程、
(5)(3)工程で得られた粉砕物または上記(4)工程で得られた整粒物を造粒する工程。
(II−3)上記(3)の粉砕工程を、さらに(C)多糖類の共存下で行う、(II−1)または(II−2)に記載の製造方法。当該製造方法は、前述する(I−5)又は(I−6)に記載する乾燥組成物を製造する方法として好適に使用することができる。
(II−4)上記(3)工程で、最終の乾燥組成物100重量%中のシリカの含有量が少なくとも1重量%になるようにシリカを配合することを特徴とする(II−1)〜(II−3)のいずれかに記載する製造方法。
(II−5)上記(3)工程で、最終の乾燥組成物100重量%中の多糖類の含有量が少なくとも10重量%になるように多糖類を配合することを特徴とする、(II−3)または(II−4)に記載する製造方法。
(II−6)上記(4)または(5)の工程が、最終の乾燥組成物の粒径が150μm以下となるように整粒または造粒する工程である、(II−2)〜(II−5)のいずれかに記載する製造方法。
【0012】
(III)可食性植物乾燥組成物を含有するカプセル剤及び錠剤
(III−1)(I−1)〜(I−7)のいずれかに記載する粉末または顆粒状の乾燥組成物を内部に含むカプセル剤。
(III−2)(I−1)〜(I−7)のいずれかに記載する乾燥組成物を可食性油脂とともに内部に含むソフトカプセルである、(III−1)に記載するカプセル剤。
(III−3)(I−1)〜(I−7)のいずれかに記載する顆粒状の乾燥組成物を打錠して成型される錠剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、野菜等の可食性植物を乾燥後、粉砕する際にシリカを共存させておくことで、糖度の高い野菜であってもベタツキの発生が有意に抑制され、効率的に細かく粉砕することができる。また得られた粉砕物(粉末)及びその造粒物(顆粒)は凝集が抑制され、さらさらとした性状を有する。さらに、可食性植物を粉砕する際にシリカとともに多糖類を共存させておくと、上記効果に加えて、得られた粉砕物(粉末)及びその造粒物(顆粒)の経時的安定性が向上し、経時的に生じ得る不可逆的な凝集化及び塊状化が有意に抑制でき、長期にわたってさらさらとした性状を有することができる。また、本発明で得られる組成物は、凝集または塊状化が生じても、撹拌または篩過することで容易にさらさらとした性状を復元することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(I)粉末または顆粒状の可食性植物乾燥組成物、及びその製造方法
本発明の乾燥組成物は、(A)BRIX値が14以上の可食性植物の粉砕物、及び(B)シリカを含有することを特徴とする。当該乾燥組成物は、好ましくはさらに(C)多糖類を含有することができる。
【0015】
以下、これらの成分、その製造方法、及び用法用量等について説明する。
【0016】
(A)可食性植物
本発明が対象とする可食性植物としては、野菜、果物、及び生薬原料となる薬用植物を挙げることができる。より詳細には、本発明が対象とする可食性植物は、野菜、果物、薬用植物の可食部である。好ましくは本発明が対象とする可食性植物は糖度が比較的高いものである。糖度が高い可食性植物は、糖分が吸湿してべたつきを生じやすいため、乾燥粉砕して細粒物を得ることが難しく、また乾燥粉砕ができても得られた乾燥粉末が経時的に吸湿して凝集し、固化(塊状化)しやすい。このため、本発明の効果を享受する利益がより高いものである。この観点から、本発明が対象とする可食性植物は糖度がBRIX値で14以上であるものである。好ましくはBRIX値が14〜25程度、より好ましくは14〜20程度である。
【0017】
植物のBRIX値は、対象とする植物の可食部をジューサーミキサー等で破砕し、得られた破砕汁の糖度を屈折計にて測定することで求めることができる。なお、屈折計の目盛の値はショ糖水溶液の濃度(w/w%)を刻んでいるので、当該目盛りをもとに測定される植物の糖度は、植物の破砕汁に含まれる糖濃度をショ糖水溶液の濃度として測定したものである。
【0018】
BRIX値14以上の植物としては、栽培条件(栽培場所、栽培方法、収穫時期など)やその種類によっても異なり、何ら制限されるものではない。また、複数の植物を組み合わせることにより14以上の所望のBRIX値に調整することができる。例えば、かぼちゃ、にんじん、とうもろこし、玉葱、にんにく、大麦若葉、キャベツ等の野菜;りんご、なし、パイナップル、ブドウ、柿等の果物;並びにカンゾウ、ウコン、ケイヒ、ショウガ等の生薬を単独又は組み合わせて用いることができる。
【0019】
これらの可食性植物は、本発明の乾燥組成物中に乾燥粉砕物の状態で含まれている。粉砕物の調製方法およびその大きさなどについては、下記の製造方法の欄で説明する。
【0020】
本発明の乾燥組成物における可食性植物(乾燥粉砕物)の割合は、制限されないものの、通常68〜99重量%の範囲で選択することができる。好ましくは78〜98重量%、より好ましくは78〜88重量%である。
【0021】
(B)シリカ
シリカとは、二酸化ケイ素(SiO
2)、または二酸化ケイ素によって構成される物質の総称である。本発明では、可食性であればよく、特に制限されないが、通常、食品添加物として使用されている二酸化ケイ素、微粒二酸化ケイ素、及び無水ケイ酸からなる群から選択される少なくとも一つを用いることができる。これらは1種単独で使用しても、また2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0022】
これらのシリカは、本発明の乾燥組成物中に乾燥粉末の状態で含まれている。その調製方法およびその大きさなどについては、下記の製造方法の欄で説明する。
【0023】
本発明の乾燥組成物におけるシリカ(乾燥粉末)の割合は、制限されないものの、少なくとも1重量%の割合を挙げることができる。好ましくは1〜10重量%の範囲から選択することができる。より好ましくは1〜5重量%、特に好ましくは1〜2重量%である。また、本発明の乾燥組成物に含まれる可食性植物の粉砕物100重量部に対するシリカの割合としては、本発明の効果を発揮する割合であれば制限されないものの、通常1〜15重量部の範囲から設定することができ、好ましくは1〜7.5重量部、より好ましくは1〜3重量部である。この割合でシリカを配合することで(または後述するように、この割合で配合した状態で可食性植物を粉砕することで)、可食性植物の粉砕効率を向上し、乾燥組成物の吸湿性をより一層抑制し、不可逆的な凝集及び固化(塊状化)を抑制することができる。
【0024】
(C)多糖類
本発明の乾燥組成物には、上記(A)及び(B)成分に加えて、多糖類を配合することもできる。
【0025】
後述する試験例で示すように、上記(B)シリカとともに、(C)多糖類を配合した状態で可食性植物を粉砕することで、調製された粉末状の乾燥組成物は、経時的な凝集及び固化(塊状化)(不可逆的な凝集及び固化(塊状化))が有意に抑制され、保存安定性が飛躍的に向上する。従って、(C)多糖類は、(A)可食性植物の粉砕物、及び(B)シリカに加えて、好適な配合成分である。
【0026】
本発明で使用される多糖類は、可食性のものであればよいが、粉末製剤、顆粒製剤、又は錠剤などの固形製剤の調製に際して、結合剤または増粘剤として使用されるものを広く用いることができる。
【0027】
制限されないが、例えば、デキストリン(難消化性デキストリンを含む)、ポリデキストロース、デンプン、加工デンプン、セルロース類、ガム類、海草多糖類、大豆多糖類、ペクチン、リグニン、キチン、マンナン類を挙げることができる。
【0028】
ここで、加工デンプンとしては、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、及びリン酸モノエステル化リン酸架橋デンプンを挙げることができる。またセルロース類としては、セルロース、ヘミセルロース、α−セルロース、結晶セルロース、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが含まれる。
【0029】
またガム類には、グアガム、キサンタンガム、タマリンドガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、プルラン、ジェランガム(脱アシル化型、アシル化型)、及びカードラン等のガム類を挙げることができる。また海草多糖類としては、寒天、アルギン酸及びその塩、アルギン酸エステル、カラギーナン、フコイダンなどを挙げることができる。
【0030】
これらは一種単独で、上記(A)及び(B)成分と組み合わせて使用することもできるし、また二種以上を任意に組み合わせて用いることもできる。好ましい多糖類としては、デキストリン(難消化性デキストリンを含む)、ポリデキストロース、デンプン、加工デンプン、セルロース類、及びガム類、海草多糖類からなる群から選択される多糖類であり、より好ましくはデキストリン(難消化性デキストリンを含む)、ポリデキストロース、デンプン、加工デンプン、セルロース類、及びガム類からなる群から選択される多糖類である。特に好ましくはデキストリン(難消化性デキストリンを含む)、ポリデキストロース、デンプン、加工デンプン、セルロース類である。
【0031】
これらの多糖類も、本発明の乾燥組成物中に乾燥粉末の状態で含まれている。その調製方法およびその大きさなどについては、下記の製造方法の欄で説明する。
【0032】
本発明の乾燥組成物における多糖類(乾燥粉末)の割合は、制限されないものの、少なくとも10重量%の割合を挙げることができる。好ましくは10〜20重量%の範囲から選択することができる。また、本発明の乾燥組成物に含まれる可食性植物の粉砕物100重量部に対する多糖類の割合としては、本発明の効果を発揮する割合であれば制限されないものの、通常11〜40重量部の範囲から設定することができ、好ましくは11〜30重量部である。この割合で多糖類を配合することで(または後述するように、この割合で配合した状態で可食性植物を粉砕することで)、可食性植物の乾燥粉砕物の吸湿性をより一層抑制し、経時的に生じ得る不可逆的な凝集及び固化(塊状化)を有意に抑制することができる。
【0033】
(D)その他の成分
本発明の乾燥組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を配合することができる。他の成分としては、粉末または顆粒状の乾燥組成物を製造するために当業界で通常使用される製剤成分を挙げることができ、例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、増粘剤、香料、着色剤、抗酸化剤、保存剤などを挙げることができる。これらは製剤の形態や摂取者の嗜好などに応じて、適宜選択することができる。
【0034】
また本発明の乾燥組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、可食性植物以外に、別途、生理活性成分や薬理活性成分を配合することもできる。かかる成分としてば、ビタミン類、アミノ酸やその重合物(ペプチド、蛋白質)、ポリフェノール、コンドロイチン硫酸及びその塩、グルコサミン、植物エキス、たんぱく質、セラミド、エラスチンなどを例示することができる。
【0035】
(E)乾燥組成物の製造方法
本発明の乾燥組成物は、下記の(1)〜(3)の工程を有する方法によって製造することができる。
(1)BRIX値が14以上の可食性植物を乾燥する工程、
(2)上記(1)工程で得られた乾燥可食性植物を加熱殺菌する工程、
(3)上記(2)工程で得られた加熱殺菌乾燥可食性植物をシリカの存在下で粉砕する工程。
【0036】
また必要に応じて、上記(3)工程で得られた粉砕物をさらに(4)整粒工程に供してもよいし、また(3)工程で得られた粉砕物またはその後(4)整粒工程に供して得られた整粒物を(5)造粒工程に供して顆粒状に成型してもよい。
【0037】
(1)乾燥工程
乾燥に供する可食性植物は、前述する通りであり、糖度がBRIX値で14以上の植物の可食部(野菜、果物、薬用植物)である。
【0038】
当該可食性植物は、そのままの状態で乾燥に供することもできるが、乾燥効率の点から、乾燥に際して適当な大きさにカットしておくことが好ましい。大きさは特に制限されないが、一辺が約5mm以下になるように、細切もしくは粗く粉砕して置くことが好ましい。
【0039】
乾燥は、特に制限されず、一般に食品の乾燥に使用される方法を広く用いることができる。具体的には、陰干しや天日干しなどの自然乾燥;熱風乾燥、流動層乾燥、ドラム乾燥、低温乾燥、凍結乾燥、及び加圧乾燥などの人工乾燥を挙げることができる。
【0040】
乾燥効率の点から、好ましくは人工乾燥であり、より好ましくは熱風乾燥である。熱風乾燥は、熱風を対象とする可食性植物に吹き付けて乾燥する方法である。採用する熱風温度としては、制限されないが、通常55〜75℃、より好ましくは60〜70℃を挙げることができる。
【0041】
乾燥処理は、対象とする可食性植物が、水分量が8%以下となる程度まで行うことが好ましく、可食性植物の種類によっても異なるが、例えば500kgの可食性植物を65℃の熱風で熱風乾燥する場合、通常、6〜8時間で当該所望の乾燥した可食性植物を得ることができる。
【0042】
なお、可食性植物を乾燥工程に供する前、当該可食性植物を予めブランチング処理しておいてもよい。かかるブランチング処理により可食性植物に含まれる酵素や微生物などを失活させることで、乾燥中または乾燥後の褐変や品質劣化を防止することができる。ブランチング処理としては、熱湯浸漬や高温蒸気の照射による短時間加熱、及びマイクロ波照射など、食品業界で採用されているブランチング処理を広く採用することができる。
【0043】
(2)加熱殺菌工程
当該工程は、上記(1)工程で得られた乾燥可食性植物を加熱殺菌する工程である。当該加熱殺菌することで、可食性植物に含まれる細菌や酵素などを失活させることができる。
【0044】
加熱殺菌条件としては、オートクレーブを用いて、50〜130℃で30〜120分間、処理する方法を例示することができる。温度条件としては、好ましくは60〜130℃、より好ましくは85〜130℃を挙げることができ、処理時間としては、好ましくは45〜120分間、より好ましくは60〜120分間を例示することができる。かかる加熱殺菌は、可食性植物として、通常生で摂取される果物、及び野菜の中でも根菜類、果菜類に対して好適に適用することができる。
【0045】
(3)粉砕工程
当該工程は、上記(2)工程で得られた加熱殺菌乾燥可食性植物を、シリカの存在下で粉砕する工程である。
【0046】
可食性植物(乾燥粉砕物)に対して配合するシリカの種類及びその量は、前述した通りである。
【0047】
粉砕方法は、室温で行う乾式の粉砕方法であって、最終的にほぼ全量が100メッシュの篩いをパスする粒径、つまり150μm以下の粒径を有する粉砕物(可食性植物とシリカの混合物)が得られる方法であればよい。この限りにおいて、食品の粉砕に使用される粉砕方式(擂る、たたく、刻む、砕く、おろす、つぶす等)、及び粉砕機(乳鉢、ボールミル、ビーズミル、製粉ミル、ハンマーミル、ペレットミル、ローラーミル等)を広く用いることができる。
【0048】
なお、粉砕は、シリカとともに、前述する多糖類の共存状態で行うことが好ましい。可食性植物(乾燥粉砕物)に対して配合する多糖類の種類及びその量は、前述した通りである。またシリカと多糖類との配合順は特に制限されない。
【0049】
(4)整粒工程
当該工程は、上記(3)工程で得られた粉砕物を所定の粒度になるように解砕整粒する工程である。
【0050】
通常、当該整粒は、定法に従って、篩いまたは整粒装置(乾式)を用いて行うことができる。その条件も特に制限されず、通常室温で実施される。
【0051】
本発明においては、当該工程により、(3)工程で得られた粉砕物(可食性植物とシリカの混合物)のほぼ全量が100メッシュの篩をパスする粒径、つまり150μm以下、好ましくは1〜150μmの粒径を有するように解砕整粒される。好ましい粒径としては、制限はされないが、1〜100μmである。
【0052】
得られる乾燥組成物の粒径が150μmを超えると、後述するソフトカプセルを製造する際に、それがカプセル皮膜に混入した場合に、皮膜の穴形成の原因となる可能性が高くなり、穴の形成により内容物が流出するという問題がある。これに対して、粒径が150μm以下の乾燥組成物によれば、万一、それがカプセル皮膜に混入した場合でも皮膜形成は妨げられず、内容物流出という欠陥品発生による製造ロスを回避することができる。
【0053】
(5)造粒工程
当該工程は、上記(3)工程で得られた粉砕物、またはその後(4)整粒工程に供して得られた整粒物を造粒して顆粒状に成型する工程である。
【0054】
当該造粒工程は、(3)工程において、可食性植物がシリカとともに多糖類の存在下で粉砕され調製された粉砕物(可食性植物、シリカ及び多糖類の混合物)に対して好適に適用することができる。なお、(3)工程が多糖類の存在下で行われなかった場合の粉砕物(可食性植物及びシリカの混合物)については、当該造粒時に、結合剤または増粘剤に相当する前述する多糖類を配合することもできる。
【0055】
造粒は当業界の慣用方法に従って行うことができる。例えば、破砕造粒法を用いた乾式造粒;並びに押し出し造粒法、撹拌造粒法、流動層造粒法、転動造粒法、及び噴霧造粒法等の湿式造粒の中から適宜選択して用いることができる。
【0056】
造粒によって調製される顆粒剤の粒径は、特に制限されないが、100メッシュパスの顆粒剤が全体の90%以上を占めるように調製することが好ましい。
【0057】
なお、顆粒剤を後述するソフトカプセルの内容物として使用する場合は、(4)で説明するように、100メッシュの篩いをパスする粒径、つまり150μm以下、好ましくは1〜150μmの粒径を有するように調製し、整粒することが好ましい。
【0058】
斯くして調製される本発明の粉末または顆粒状の乾燥組成物は、上記するように製造に際して加熱殺菌工程(2)を経て製造されるので、可食性植物に含まれている細菌が失活しており、菌数(生菌数)が少ないことを特徴とする。
【0059】
本発明の粉末または顆粒状の乾燥組成物1gあたりの菌数としては、通常3000個以下、好ましくは1000個未満を挙げることができる。なお、乾燥組成物1gに含まれる菌数の求め方としては、標準寒天培地を用いた一般生菌数の測定方法を挙げることができる。
【0060】
(F)粉末または顆粒状の乾燥組成物の用法など
斯くして調製される本発明の粉末または顆粒状の乾燥組成物は、さまざまな生理機能を有する可食性植物をそのまま粉砕し、粉末または顆粒状に成型したものであり、経時的に不可逆的に凝集若しくは固化(塊状化)することが有意に抑制されていることを特徴とする。
【0061】
当該乾燥組成物は、可食性植物の種類やその生理(薬理)機能に応じて、そのまま若しくは用時飲料と混ぜて服用するサプリメント(健康補助食品)、または経口医薬品等として用いることができるし、食材の一つとして、調理に際して、他の食材に混ぜて使用することもできる。なお、サプリメント(健康補助食品)または経口医薬品として使用する場合、その用量は、可食性植物の種類やその生理(薬理)機能によっても異なり、それに応じて、また服用する人の年齢、体重、性別、摂取の目的などを考慮して適宜選択することができる。
【0062】
サプリメント(健康補助食品)または経口医薬品は、粉末または顆粒状の形態であってもよいし、また後述するように、カプセル剤(ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤)、または錠剤の形態であってもよい。つまり、本発明の粉末または顆粒状の乾燥組成物は、後述するカプセル剤の内容物として使用することができるし、また顆粒状の乾燥組成物については、これをさらに打錠工程に付することで、錠剤形態に調製することもできる。
【0063】
(II)可食性植物乾燥組成物を含有する製剤(カプセル、錠剤)
(1)カプセル剤
前述するように、本発明の粉末または顆粒状の乾燥組成物は、カプセル剤(ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤)として調製することができる。
【0064】
特に粒径が150μm以下の粒径を有する細粒物は、前述するように、ソフトカプセル剤の製造に際して皮膜に混入しても皮膜形成に悪影響を与えないので、ソフトカプセル剤の内容成分として好適に使用することができる乾燥組成物である。
【0065】
ハードカプセル剤及びソフトカプセル剤は定法に従って製造することができる。
【0066】
(1−1)ソフトカプセル剤
本発明の粉末または顆粒状の乾燥組成物をソフトカプセルの内容物とする場合、可食性油脂を混合した状態で用いることが好ましい。ここで可食性油脂としては、中鎖脂肪酸トリグリセリド;大豆油、小麦胚芽油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、ゴマ油、サフラワー油、落花生油、ナタネ油、ヒマワリ油、及びパセリ油等の植物油;魚油等を挙げることができる。なお、可食性油脂には、その他、ビタミンA類及び誘導体、ビタミンD類、ビタミンE類及び誘導体、ビタミンK類、γ−オリザノール、リノレン酸、カロチン類などの脂溶性成分を配合してもよく、また、甘味料などの呈味料、色素や顔料等の着色料、安定剤、保存剤等の各種添加剤を配合することもできる。なお、ここで香料として、例えばレモンオイル、オレンジオイル、グレープフルーツオイル、ライムオイル、ペパーミント、スペアミント、ハッカ等の精油を挙げることができる。
【0067】
ソフトカプセルの皮膜を構成する基材としては、可食性であればよく、例えば従来公知のゼラチンを主成分とするゼラチン皮膜用基材;寒天を主成分とする寒天皮膜用基材;ジェランガムを主成分とするジェランガム皮膜用基材;アルギニン酸またはアルギン酸の塩を主成分とするカプセル皮膜用基材;ペクチン、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アラビアガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タラガム、プルラン等の各種のハイドロコロイドを主成分とするハイドロコロイド皮膜用基材などを挙げることができる。好ましくはゼラチン、寒天、ジェランガムを主成分とする基材であり、より好ましくはゼラチンを主成分とする基材である。
【0068】
ここで用いられるゼラチンには、ゼラチン、酸性ゼラチン、アルカリ性ゼラチン、ペプタイドゼラチン、低分子ゼラチン、ゼラチン誘導体等がいずれも包含される。
【0069】
通常ゼラチン皮膜用基材は、ゼラチン、可塑剤及び水を含むゼラチン皮膜液から調製される。
【0070】
ここで可塑剤としては、グリセリン;プロピレングルコールやポリエチレングリコール等のグリコール類;コーンシロップ、スクロース、フルクトース、ソルビトール、マンニトール等の液状糖類;結晶セルロース、デンプン類、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロースなどの水不溶性セルロース等を挙げることができる。なお、これらの可塑剤は1種単独で使用しても、また2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。好ましくは濃グリセリン、グリセリンであり、とりわけグリセリンが好ましい。
【0071】
通常ゼラチンに配合する可塑剤の割合としては、ゼラチン100重量%に対して可塑剤10〜50重量%、好ましくは20〜50重量%の範囲を挙げることができる。
【0072】
本発明のソフトカプセルは、従来公知のソフトカプセルの製造法、例えば平板法またはロータリーダイ法に準じて調製することができる。
【0073】
またソフトカプセルの形状は、特に制限されずオーバール(フットボール)型、オブロング(長楕円)型、及びラウンド(球状)型等の一般的な形状のほか、涙型、三角形などの変形(異形)型を採用することもできる。カプセルの大きさも特に制限されないが、直径30mm以下であると服用しやすく、食感も好ましい。具体的には直径1〜10mmの範囲のものを挙げることができる。
【0074】
(1−2)ハードカプセル剤
本発明の粉末または顆粒状の乾燥組成物をそのままハードカプセルの内容物とすることができる。
【0075】
ハードカプセルの皮膜を構成する基材としては、可食性であればよく、例えば従来公知のゼラチンを主成分とするゼラチン皮膜用基材;ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を主成分とするHPMC皮膜用基材;プルランを主成分とするプルラン皮膜用基材などを挙げることができる。当該皮膜用基材には、本発明の効果を損なわないことを限度に、必要に応じて、乳化剤、可塑剤、着色剤、防腐剤、崩壊剤、界面活性剤、矯味剤、矯臭剤、甘味料、香料、有機酸等を配合することができる。なお、本発明においては、市販のハードカプセル(外皮)、例えば、小林カプセル株式会社製「日本薬局方カプセル」「健康食品用カプセル」などを使用することができる。本発明のハードカプセル剤の調製に使用されるハードカプセル(外皮)は、内容量0.1〜1ml、全長10〜30mmの範囲のものを挙げることができる。
【0076】
本発明のハードカプセル剤は、ハードカプセル(外皮)に本発明の粉末または顆粒状の乾燥組成物を充填することで製造することができる。
【0077】
(2)錠剤
前述するように、本発明の顆粒状の乾燥組成物は、これをさらに打錠工程に付することで、錠剤形態に調製することもできる。本発明は、斯くして調製される可食性植物を有効成分とする錠剤を提供するものである。
【実施例】
【0078】
以下、試験例及び処方例により、本発明の構成及び効果をより詳細に説明する。但し、本発明はかかる試験例及び処方例によって何ら制限されるものではない。
【0079】
試験例1 野菜含有乾燥粉末の調製、及びその評価
(1)野菜含有乾燥粉末の調製
表1に記載する組成に従って、下記の工程に沿って、各種の野菜を含む粉末状の乾燥組成物(野菜含有乾燥粉末)(実施例1〜8、比較例1〜
5、参考例6、参考例1)を調製した。
【0080】
(a)表1に記載する生の野菜(玉葱、ミックス野菜(にんじん、かぼちゃ、キャベツ、トマト、にんにく、サツマイモ、モロヘイヤ、大麦若葉))を各々約5mm角になるようにカットする。
(b)上記で調製したカット野菜を、温風乾燥機(平型乾燥機、川西工業(株)製)を用いて、60℃で6〜8時間かけて乾燥する。
(c)上記で調製した乾燥カット野菜を、オートクレーブ(高圧蒸気滅菌器、三浦工業(株)製)を用いて、100℃で1.5時間かけて加熱する。
(d)上記で調製した加熱乾燥カット野菜を、ボールミル(水冷式ボールミル、(株)マキノ製)を用いて、表1に記載する他の成分(シリカ、またはシリカと多糖類)と混合し、粉砕する。
(e)粉砕後、または粉砕しながら、振動篩機を用いて篩過して、100メッシュの篩いを通過する粒径(150μm以下)を有する粉末(野菜含有乾燥粉末)を回収する。
【0081】
なお、使用した野菜のBRIX値は、対象とする野菜(玉葱、ミックス野菜)をジューサーにかけて破砕し、得られた液汁を屈折計(アタゴ(株)製)に供して、その目盛の値から求めた。
【0082】
また製造した野菜含有乾燥粉末の菌数を標準寒天培地を用いた一般生菌の測定方法を用いて測定したところ、1gあたり3000個以下であった。
【0083】
(2)評価試験
(2−1)試験方法
(1)で調製した野菜含有乾燥粉末(実施例1〜
5、7および8、
参考例6、比較例1〜6、参考例1)をそれぞれ目視にてその性状を確認した。次いで、それらをアルミチャック袋に包装し、各々温度25℃、相対湿度60%の暗室条件で、1週間放置し、その後、目視にて再びその性状を確認し、下記の基準に従って性状安定性(保存安定性)を評価した。
【0084】
[性状安定性の評価]
◎:さらさらした、均一な粉末または顆粒である。
○:粉末(または顆粒)と小さな塊状物(直径5mm程度)との混合物であるが、塊状物は容易に粉砕できる。
△:粉末(または顆粒)と大きな塊状物(直径10mm程度またはそれ以上)との混合物であるが、塊状物は容易に粉砕できる。
×:粉砕不能な塊状物が形成されている。
【0085】
(2−2)試験結果
結果を表1及び2に併せて示す。
【0086】
BRIX値が13であるミックス野菜を用いた野菜含有乾燥粉末においては、粉砕時に多糖類を存在させることで「さらさらした、均一な粉末または顆粒である」性状を保つことができた(参考例1)。一方、BRIX値が18である玉葱を用いた場合に関しては、同様に粉砕時に多糖類を共存させていても、調製直後はさらさらしていた性状が、その後の保存により粉砕不能な塊状物が生じ、上記のような性状安定性は得られなかった(比較例2〜6)。また、玉葱単独の場合でも同様であった(比較例1)。しかしながら、玉葱粉砕時にシリカ(二酸化ケイ素、微粒二酸化ケイ素、無水ケイ酸)を共存させることにより、可逆的に解砕し得る性状安定性の良好な粉体組成物が得られた(実施例1〜3)。さらに粉砕時にシリカとともに多糖類を共存させることにより、より一層凝集の程度を抑えることができ、また可逆的解砕性の程度を向上することができた(実施例4〜
5、7および8
、参考例6)。特に、多糖類としてデキストリンまたは結晶セルロースを用いることで「さらさらした、均一な粉末または顆粒である」性状を保つことができた(実施例4〜
5、参考例6)。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
試験例2 野菜含有乾燥粉末を含むソフトカプセルの調製、及びその評価
試験例1で調製し、温度25℃、相対湿度60%の暗室条件で1週間放置した後の野菜含有乾燥粉末(参考例6、比較例1)を用いて、表2に記載する組成を有するソフトカプセル(
参考例9、比較例7)を調製し、内容液の液漏れの有無を評価した。なお、実施例6及び比較例1の野菜含有乾燥粉末(1週間放置後)の粒径をレーザー回析・散乱式粒度分布測定器を用いて測定したところ、
参考例6の野菜含有乾燥粉末はすべて粒径130μm以下であり、一方、比較例1の野菜含有乾燥粉末は粒径200〜300μmの範囲にあることが確認された。
【0090】
(1)ソフトカプセルの調製
表3に記載する組成(内容液、皮膜)に従って、加熱、混合により内溶液を作成し、定法を用いて皮膜で当該内溶液を包むことにより、内容物として、野菜含有乾燥粉末(実施例、比較例)及び可食性油脂を含むソフトカプセル(
参考例9、比較例7)を調製した。
【0091】
【表3】
【0092】
(2)評価試験
(2−1)試験方法
目視で液漏れの有無を確認した。
(2−2)試験結果
比較例1の野菜含有乾燥粉末(200〜300μm)を使用してソフトカプセルを調製すると、製造したソフトカプセル5000粒のうち、3粒について液漏れが発生した(評価:×)。一方、実施例6の野菜含有乾燥粉末(130μm以下)を使用してソフトカプセルを調製すると、製造したソフトカプセル70000粒はいずれも液漏れが認められなかった(評価:○)。
【0093】
実施例10〜24
表4に記載する処方からなる野菜含有乾燥粉末(粒径150μm以下)を調製する。具体的には、野菜として玉葱(BRIX値:18)、または玉葱とにんにく(BRIX値:25)、または玉葱と大麦若葉(BRIX値:14)、もしくは玉葱、大麦若葉とにんにく(BRIX値:20)を用い、シリカとして二酸化ケイ素または/及び無水ケイ酸を用い、また多糖類として難消化デキストリン、または難消化デキストリン、結晶セルロース及びトウモロコシデンプンを用い、賦形剤としてタルクを用いる以外は、試験例1に記載する方法と同様の方法によって野菜含有乾燥粉末を調製する。これらは、「さらさらした、均一な粉末または顆粒である」性状を保つことができた。
【0094】
【表4】