特許第6976843号(P6976843)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976843
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】皮膚状態改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20211125BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20211125BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20211125BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20211125BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20211125BHJP
   A61K 8/99 20170101ALN20211125BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALN20211125BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALN20211125BHJP
【FI】
   A61K35/747
   C12N1/20 E
   A23L33/135
   A61P17/00
   A61P17/16
   !A61K8/99
   !A61Q19/00
   !A61Q19/08
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-253491(P2017-253491)
(22)【出願日】2017年12月28日
(65)【公開番号】特開2019-119689(P2019-119689A)
(43)【公開日】2019年7月22日
【審査請求日】2020年7月1日
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-02287
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上原 和也
(72)【発明者】
【氏名】砂田 洋介
(72)【発明者】
【氏名】谷井 勇介
(72)【発明者】
【氏名】李 慈英
【審査官】 原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0128675(KR,A)
【文献】 特開2015−047120(JP,A)
【文献】 特開2018−007645(JP,A)
【文献】 特表2008−503563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/747
C12N 1/20
A23L 33/135
A61P 17/00
A61P 17/16
A61K 8/99
A61Q 19/00
A61Q 19/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス属ガセリ種の乳酸菌、及び前記乳酸菌の発酵物を有効成分と前記乳酸菌は、ラクトバチルス・ガセリN320株(NITE BP-02287)である、経口投与可能な皮膚状態改善剤。
【請求項2】
前記皮膚状態の改善は、皮膚の乾燥状態の改善、低下した皮膚のつやの改善、および洗顔後における皮膚のつっぱり感の改善を含む、請求項1記載の皮膚状態改善剤。
【請求項3】
請求項1〜に記載の皮膚状態改善剤を有効成分として含むことを特徴とする皮膚状態改善用医薬品。
【請求項4】
請求項1〜に記載の皮膚状態改善剤を有効成分として含むことを特徴とする皮膚状態改善用飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いヒアルロン酸産生促進能力を有する乳児腸内由来のラクトバチルス属ガセリ種の乳酸菌及びその発酵物を有効成分として含有する皮膚状態改善剤、当該皮膚状態改善剤を有効成分として含む皮膚状態改善用医薬品、および皮膚状態改善用飲食品を提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、皮膚の老化防止に関する研究が広く行われている。皮膚老化の原因は、加齢が重要な因子であるが、それに加えて乾燥、酸化、紫外線等による影響も皮膚老化に関わる直接的な因子として挙げられる。皮膚老化の具体的な現象としては、ヒアルロン酸をはじめとするムコ多糖類の減少、コラーゲンの架橋反応、紫外線による細胞の損傷などが知られている。
【0003】
その中でもヒアルロン酸は生体内では皮膚、関節、靭帯、硝子体、脳、肺、腎臓など種々の臓器・組織に広く存在しており、特に皮膚には、体全体の50%を占める量のヒアルロン酸が存在している(非特許文献1)。その保湿性の高さから皮膚の潤いを保つ重要な因子として知られている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】T. C. Laurent and J. R. Fraser, “Hyaluronan,”FASEB J, Vol.6, pp.2397-2402, 1992
【非特許文献2】Papakonstantinou E.,:Hyaluronic acid:A Key molecule in skin aging,Dermatoendocrinol,4(3),253-8,2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高いヒアルロン酸産生促進能力を有する乳児腸内由来のラクトバチルス属ガセリ種の乳酸菌及びその発酵物を有効成分として含有する皮膚状態改善剤、当該皮膚状態改善剤を有効成分として含む皮膚状態改善医薬品、および皮膚状態改善飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、肌の保湿力向上にはヒアルロン酸が必要不可欠である点に着目し、多数の乳酸菌についてスクリーニングを行った結果、乳児腸内由来のラクトバチルス属ガセリ種の乳酸菌、特にラクトバチルス・ガセリN320株(NITE BP-02287)には高いヒアルロン酸産生促進能力があり、例えば、乾燥による、皮膚の水分量の低下、頬や背中、頸の乾燥状態の悪化、洗顔後のつっぱり感、皮膚のつやの低下を含む、皮膚状態の改善に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本願第一の発明は、ラクトバチルス属ガセリ種の乳酸菌及び当該乳酸菌の発酵物を有効成分とする、経口投与可能な皮膚状態改善剤であり、本願第二の発明は、皮膚状態の改善は、皮膚の乾燥状態の改善、低下した皮膚のつやの改善、および洗顔後における皮膚のつっぱり感の改善を含む本願第一の発明に記載の皮膚状態改善剤であり、本願第三の発明は、乳酸菌が、ラクトバチルス・ガセリN320株(NITE BP-02287)である、本願第一の発明または本願第二の発明に記載の皮膚状態改善剤である。さらに、本出願人は、当該ラクトバチルス属ガセリ種の乳酸菌を含む皮膚状態を改善するための皮膚状態改善用医薬品、または皮膚状態改善用飲食品も意図している。
【0008】
本発明において皮膚状態の改善とは、乾燥による皮膚の水分量低下を改善し、客観的にも主観的にも皮膚状態の改善されたことをいう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、日常的に経口摂取して皮膚の乾燥を改善することが可能な皮膚状態改善剤、医薬品、または飲食品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の菌株と比較菌株のヒアルロン酸産生促進能力を比較した図である。
図2図2は、本発明の菌株と比較菌株のスキムミルク培地増殖性を比較した図である。
図3図3は、被験食品とプラセボについて、頬部の皮膚水分量の摂取前検査からの変化量の相対値を比較した図である。
図4図4は、被験食品とプラセボについて、皮膚科医による医師の所見スコア(頬部の乾燥)の摂取前検査からの変化量を比較した図である。
図5図5は、被験食品とプラセボについて、皮膚科医による医師の所見スコア(上背部の乾燥)の摂取前検査からの変化量を比較した図である。
図6図6は、被験食品とプラセボについて、皮膚科医による医師の所見スコア(頸部の乾燥)の摂取前検査からの変化量を比較した図である。
図7図7は、被験食品とプラセボについて、皮膚のアンケート(洗顔後のつっぱり感)スコアの摂取前検査からの変化量を比較した図である。
図8図8は、被験食品とプラセボについて、皮膚のアンケート(顔の肌のつや)スコアの摂取前検査からの変化量を比較した図である。
図9図9は、被験食品とプラセボについて、皮膚のアンケート(メイクのノリの悪さ)スコアの摂取前検査からの変化量を比較した図である。
図10図10は、被験食品とプラセボについて、皮膚のアンケート(顔のかさつき)スコアの摂取前検査からの変化量を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.ラクトバチルス・ガセリN320株(NITE BP-02287)
本発明の乳酸菌は、ラクトバチルス・ガセリ(lactobacillus gasseri)である。特にラクトバチルス・ガセリに属する乳酸菌のうち、ラクトバチルス・ガセリN320株(NITE BP-02287)である。本発明にいうN320の記号は日清食品ホールディングス株式会社で独自に菌株に付与した番号であり、本ラクトバチルス・ガセリN320株は本発明者によって初めて分離されたものである。
【0012】
本発明のラクトバチルス・ガセリN320株は、下記条件で寄託されている。
(1)寄託機関名:独立行政法人製品技術基盤機構 特許微生物寄託センター
(2)連絡先:〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 122号室
(3)受託番号:NITE BP−02287
(4)識別のための表示:N320
(5)原寄託日:2016年6月14日
(6)ブダペスト条約に基づく寄託への移管日:2017年4月10日
本発明のラクトバチルス・ガセリN320株の菌学的性質は、以下の表1及び2に示す通りである。本菌学的性質は、Bergey’s manual of systematic bacteriology Vol.2(1986)に記載の方法による。表1は本菌株に関する形状等を、表2はアピ50CH及びアピCHL(ビオメリュー製)により、糖資化性を試験した結果を示す。表2において、「+」は発酵性あり、「−」は発酵性なしを示す。
【0013】
【表1】























【0014】
【表2】
【0015】
2.ヒアルロン酸産生促進能試験
本発明のラクトバチルス・ガセリN320株は、後述する実験例に示すように、高いヒアルロン酸産生促進能を有する。ヒアルロン酸産生促進能の確認については以下の試験方法によって行った。
【0016】
<ヒアルロン酸産生促進能評価に用いた被験体(培養液)の調製>
ヒアルロン酸産生促進能評価に用いた被験体(培養液)は、乳酸菌を表3に示すMRS培地(Difco Lactobacilli MRS Broth)で37℃ ・24時間培養し95℃20分加熱殺菌後、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH7.0にすることにより得た。
【0017】
【表3】
【0018】
<ヒアルロン酸産生促進能評価>
上記で得た試料のヒアルロン酸産生促進作用を評価した。すなわち、24ウェルプレートに、5.0×104個/ウェルの濃度で正常ヒト成人表皮角化細胞を播種し、コンフルエント状態にしたところで、各試料群(最終濃度1%量)を含む500μLのHuMedia-KG2培養液を添加した。添加後、72時間培養した後、ELISA法にてヒアルロン酸産生量を測定した。ヒアルロン酸産生量の測定単位はng/mlとし、測定にはHyaluronan assay kit(生化学バイオビジネス社製)を使用した。なお、対照例(コントロール)として乳酸菌増殖培地(MRS)を使用した。
【0019】
3.スキムミルク培地での増殖性試験
<スキムミルク培地増殖性試験>
前培養液を10%SM(スキムミルク)培地に接種し、これを37℃ ・24時間培養した上で、乳酸菌数によってミルク培地での増殖性を評価した。
【0020】
4.飲食品
本発明の乳酸菌は飲食品に含有せしめて使用することができる。本発明の乳酸菌は特に乳製品に好適に用いることができるが、例えば、乳酸菌入り発酵乳及び乳酸菌入り乳酸菌飲料が考えられる。現行の乳及び乳製品の成分規格等に関する省令では、成分規格として乳酸菌数は特に規定はされていないが、発酵乳(無脂乳固形分8.0%以上のもの)や乳酸菌飲料(無脂乳固形分3.0%以上のもの)であれば1.0×10cfu/ml以上、乳酸菌飲料(無脂乳固形分3.0%未満のもの)であれば1.0×10cfu/ml以上が好ましく、乳などの発酵液中で増殖させたり、最終製品の形態で増殖させたりすることによって上記の菌数を実現することができる。また、乳酸菌入り発酵乳及び乳酸菌入り乳酸菌飲料以外にも、バター等の乳製品、マヨネーズ等の卵加工品、バターケーキ等の菓子パン類等にも利用することができる。また、即席麺やクッキー等の加工食品にも好適に利用することができる。上記の他、本発明の食品は、前記乳酸菌と共に、必要に応じて適当な担体及び添加剤を添加して製剤化された形態(例えば、粉末、顆粒、カプセル、錠剤等)であってもよい。
【0021】
本発明の乳酸菌は、一般の飲料や食品以外にも特定保健用食品、栄養補助食品等に含有させることも有用である。
【0022】
また、本発明の乳酸菌は、食品以外にも化粧水等の化粧品分野、整腸剤等の医薬品分野、歯磨き粉等の日用品分野、サイレージ、動物用餌、植物液体肥料等の動物飼料・植物肥料分野においても応用可能である。
【0023】
5.医薬品
本発明の乳酸菌は、発酵後に濃縮や分離等でエキス化及び粉末化した上で医薬品として使用することができる。例えば、エキス化したものを瓶等に詰めたものや、発酵液乾燥粉末を賦形剤なども用いて顆粒やカプセル化、打錠し錠剤の形態として提供が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の乳酸菌(ラクトバチルス・ガセリN320株)は高いヒアルロン酸産生促進能力を有するため、当該乳酸菌及びその発酵物を有効成分として含有する錠剤、医薬品、または飲食品を日常的に摂取することで、例えば、皮膚の乾燥状態(特に、頬、背中、頸など)、洗顔後のつっぱり感、皮膚のつやの低下を改善することができる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<試験例1>ヒアルロン酸産生促進能力評価
本発明のラクトバチルス・ガセリN320株と、自社保有の3つのラクトバチルス・ガセリ比較菌株(N219、N220、N313)についてヒアルロン酸産生促進能評価を実施した。


【0026】
ヒアルロン酸産生促進能力評価は次の手順により行った。本発明の菌株と比較菌株のそれぞれについて、表3に示すMRS培地(Difco Lactobacilli MRS Broth)で37℃ ・24時間培養し95℃20分加熱殺菌後、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH7.0にすることにより被験体(培養液)を得た。
【0027】
別途、24ウェルプレートに、5.0×104個/ウェルの濃度で正常ヒト成人表皮角化細胞を播種し、コンフルエント状態にしたところで、各試料群(最終濃度1%量)を含む500μLのHuMedia -KG2培養液を添加した。添加後、72時間培養した後、ELISA法にてヒアルロン酸産生量を測定した。なお対照例(コントロール)としては、乳酸菌増殖培地(MRS)を用いた。測定にはHyaluronan assay kit(生化学バイオビジネス社製)を用いた。測定値の単位はヒアルロン酸産生量(ng/ml)を示す。
【0028】
【表4】
【0029】
表4及び図1からも明らかなように、本発明の乳酸菌(ラクトバチルス・ガセリN320株)のヒアルロン酸産生促進能力は非常に強く、他の自社保有の乳酸菌と比べても高いヒアルロン酸産生促進能力を有していることが確認された。
【0030】
<試験例2>スキムミルク培地増殖性試験
本発明のラクトバチルス・ガセリN320株と、自社保有の3つのラクトバチルス・ガセリ比較菌株(N219、N220、N313)について、スキムミルク培地増殖性試験を実施した。
【0031】
10%SM(スキムミルク)培地に各菌株を植菌し、これを37℃ ・24時間培養した上で、乳酸菌数によってスキムミルク培地での増殖性を評価した。
【0032】
結果を表5及び図2に示す。
【0033】
【表5】
【0034】
本発明の菌株(ラクトバチルス・ガセリN320株)の菌数は22×107cfu/mlであり、他の比較菌株と比べて増殖性が高く、乳酸菌入り発酵乳及び乳酸菌入り乳酸菌飲料を生産する上で問題のないレベルであった。
【0035】
<試験例3>ヒト被験者に対する効果試験
被験者として年齢35歳以上59歳以下の男性22名、女性21名の合計43名を選択し効果試験を行った。被験者の割り付け方法は下記の通りである。
・スクリーニング時に測定した被験者右頬部の皮膚水分蒸散量の平均値が各群できるだけ同一になるように割り付けた。
・被験者の年齢に関しては、平均値が各群で、できるだけ同一になるように割り付けを行った。また、その際に各群の男女比が選抜時の男女比とできるだけ同一になるよう割り付けを行った。
【0036】
<試験食品の作製>
試験食品として、表6に示すlactobacillus gasseri N320株の発酵食品である被験食品及びプラセボを作製した。被験食品が含有する本菌株は死菌体である。
【0037】
【表6】
【0038】
<試験方法>
上記被験者を対象にプラセボ対照二重盲検試験を実施した。まず、被験者43名を、乱数を用いた割付表により被験食品摂取群22名、プラセボ摂取群21名に振り分け、各被験者には、1日に1回、各試験食品1本(100ml)を8週間(56日間)摂取させた。被験者の管理事項として、
(1)試験期間中は、日常使用している基礎化粧品の変更および追加は禁止した。
(2)観察前2週間以内の被験部位のむだ毛処理は禁止した。
(3)試験期間中の入浴剤等の使用は禁止した。
(4)観察日前日と観察日当日はボディーローションの使用は禁止した。
(5)試験期間中は、医薬品、新指定医薬部外品および漢方薬の使用は原則として禁止した。
(6)試験期間中は、新たに肌によい効果が明記された加工食品の摂取は原則として禁止した。
(7)試験期間中は、現在日常的に摂取している健康食品および保健機能食品(特定保健用食品及び食品機能性表示該当食品)以外の新規の健康食品、保健機能食品(特定保健用食品)の摂取は禁止した。
(8)試験期間中は、日常の摂取範囲を超えた過剰なアルコールの摂取は禁止した。また、観察日前日のアルコールの摂取は禁止した。
(9)試験期間中は、野外でのスポーツ、人工紫外線照射等、日焼けを起こすような行為は禁止した。日常生活でも屋内外で被験部位が紫外線に直接さらされないように注意した。具体的には、帽子、衣類、通常使用しているサンスクリーン等でケアした。
(10)観察日前3日間の温泉への入浴は禁止した。
(11)試験期間中は、ボディエステや岩盤浴等、肌状態を改善する目的の行為は禁止した。
(12)観察日当日の測定が終わるまでの激しい運動は禁止した。
(13)試験期間中は、海外旅行および海外出張は禁止した。
(14)観察日当日は辛いものなどの刺激性のある食品(カレー、唐辛子、タバスコ等)の摂取は禁止した。
(15)試験期間中は、遠赤外など特殊な効果により保湿効果を示す「暖かい下着等」の使用を禁止した。
(16)観察日前日は必ず就寝前に入浴し、観察日当日の測定前の入浴は禁止した。
(17)試験期間中は、測定部位(右頬)の剃毛・脱毛・除毛は禁止したが、髭処理についてはその限りではない。
【0039】
なお、上記被験者管理事項については遵守することを原則とするが、医療上の必要、その他生命身体の安全に危険を及ぼす場合はこの限りではないものとした。被験者管理事項に反する事項が生じた場合には、被験者は試験実施機関へ直ちに連絡をすることとした。被験者は、観察時期摂取前、摂取4週後、摂取8週後に、皮膚水分量測定、皮膚科医による医師所見、アンケート調査を実施した。
【0040】
皮膚水分量は、恒温恒湿ルームにおいて被験者の測定部位をCORNEOMETER CM 825((株)インテグラル)を用いて、5ミリずつずらして3箇所測定した。そして、摂取前の水分量測定値(μS)の平均値を100%として、摂取8週後の変化量を評価した。
【0041】
皮膚科医による医師所見は、被験者の頬部、上背部、頸部の計3部位を対象とし、乾燥状態を「なし (症状がみられない)」:0、「軽度 (少し症状が見られる)」:1、「中程度 (明らかな症状が見られる)」:2、「重度 (著しい症状が見られる)」:3の4段階で評価した。
【0042】
アンケート調査は、被験者の「いま現在、気になっているあなたのお肌状態(トラブル)についてお伺い致します」として、メイクのノリの悪さについて、顔のかさつきについて、顔の肌のつやについて、洗顔後のつっぱり感について、1.非常に気になる、2.少し気になる、3.どちらとも言えない、4.あまり気にならない、5.まったく気にならない、の5段階として評価した。
【0043】
<結果>
被験者の頬部の皮膚水分量を摂取前と摂取後8週間後に測定したところ、図3に示すように、被験食品を摂取した被験者の皮膚水分量(相対値)は、プラセボを摂取した被験者の値と比べて有意に増加した。なお、図3に示す被験食品とプラセボそれぞれの皮膚水分量(相対値)は、解析対象除外基準への抵触が疑われる被験者、検査前に長期間の有害事象が見られた被験者のデータを除外した、プラセボ摂取群の被験者21名、被験食品摂取群の被験者22名の平均値である。
【0044】
また、図4図5に示すように、頬部の乾燥、上背部の乾燥に関する皮膚科医による医師の所見評価では、被験食品群のスコアは、摂取8週間でプラセボのスコアと比較して有意に改善した。頸部の乾燥については、図6に示すように被験食品群のスコアはプラセボと比較して摂取8週間で改善傾向が確認された。
【0045】
女性についてアンケート結果を解析したところ、図7図10に示すように、被験食品群のスコアは、洗顔後のつっぱり感と顔の肌のつやについて摂取8週間でプラセボと比べて有意に改善した。また、メイクのノリの悪さと顔のかさつきについても被験食品群のスコアはプラセボと比べて改善する傾向が認められた。
【0046】
乾燥肌の自覚のある者、肌のたるみを感じる者、肌荒れを自覚している者を対象としたプラセボ対照二重盲検の結果、ラクトバチルス属ガセリ種の乳酸菌及びその発酵物を主成分とする皮膚状態改善組成物には、乾燥による、皮膚の水分量の低下、頬や背中、頸の乾燥状態の悪化、洗顔後のつっぱり感、皮膚のつやの低下を含む、皮膚状態の改善に効果があることが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10