(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガス昇圧装置が備える吸着塔であって吸着剤が充填された複数の吸着剤充填管を有する前記吸着塔にガス導入流路から原料ガスを導入するとともに、前記吸着塔に一体的に設けられている熱交換部内に冷媒を流すことで前記吸着剤を冷却して、前記原料ガスを前記吸着剤に吸着させる吸着工程と、
前記熱交換部に熱媒を供給して前記吸着剤を加熱し、前記吸着剤から前記原料ガスを脱着させることによって、前記原料ガスを前記吸着塔内で昇圧する昇圧工程と、
昇圧された前記原料ガスを、前記吸着塔から第1ガス放出流路に放出し、前記第1ガス放出流路に配設された第1背圧弁の第1設定圧力まで前記吸着塔内の圧力を放圧する第1放圧工程と、
前記第1放圧工程の後、前記吸着塔内の前記原料ガスを、前記吸着塔から第2ガス放出流路に放出し、前記第2ガス放出流路に設けられた第2背圧弁に設定されており前記第1設定圧力より低い第2設定圧力まで前記吸着塔内の圧力を放圧する第2放圧工程と、
を備える、
ガス昇圧方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の方法では吸着剤の充填容器を液化ガス冷媒中に浸漬するため、大量の吸着剤の熱交換を処理するためには大量の冷媒を必要とするために冷媒のコストが高くなるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、コストを低減しながらガスを昇圧可能なガス昇圧方法及びガス昇圧装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係るガス昇圧方法は、ガス昇圧装置が備える吸着塔であって吸着剤が充填された複数の吸着剤充填管を有する上記吸着塔にガス導入流路から原料ガスを導入するとともに、上記吸着塔に一体的に設けられている熱交換部内に冷媒を流すことで上記吸着剤を冷却して、上記原料ガスを上記吸着剤に吸着させる吸着工程と、上記熱交換部に熱媒を供給して上記吸着剤を加熱し、上記吸着剤から上記原料ガスを脱着させることによって、上記原料ガスを上記吸着塔内で昇圧する昇圧工程と、昇圧された上記原料ガスを、上記吸着塔から第1ガス放出流路に放出し、上記第1ガス放出流路に配設された第1背圧弁の第1設定圧力まで上記吸着塔内の圧力を放圧する第1放圧工程と、上記第1放圧工程の後、上記吸着塔内の上記原料ガスを、上記吸着塔から第2ガス放出流路に放出し、上記第2ガス放出流路に設けられた第2背圧弁に設定されており上記第1設定圧力より低い第2設定圧力まで上記吸着塔内の圧力を放圧する第2放圧工程と、を備える。
【0010】
上記方法では、吸着工程で吸着剤を冷却することで原料ガスを吸着させた後、昇圧工程において、吸着剤を加熱して吸着剤から原料ガスを脱着する。吸着工程と昇圧工程における吸着剤の温度の違いによって吸着剤の吸着容量に違いが生じることから、昇圧工程で原料ガスを昇圧可能である。すなわち、上記ガス昇圧方法は、温度変動吸着法を利用した昇圧方法である。昇圧工程の後に、第1放圧工程を実施するので、昇圧工程で昇圧された原料ガスを取り出しながら、吸着塔内の圧力を下げられる。更に、第1放圧工程の後に、第2放圧工程を実施することで、例えば吸着工程、昇圧工程、第1放圧工程及び第2放圧工程を順に繰り返す場合、あるサイクルの第2放圧工程の後に次のサイクルの吸着工程に移行し易い。上記方法では、吸着塔に一体的に設けられた熱交換部に冷媒を流すことで吸着剤の冷却を行っている。そのため、少ない冷媒で吸着剤を効率的に冷却できる。その結果、原料ガスを昇圧するためのコストが低減できる。
【0011】
一実施形態に係るガス昇圧方法において、上記ガス昇圧装置は、複数の上記吸着塔を備えており、各上記吸着塔を用いて、上記吸着工程、上記昇圧工程、上記第1放圧工程及び上記第2放圧工程を順に実施し、複数の上記吸着塔のうち少なくとも2つの上記吸着塔に対しては、上記吸着工程、上記昇圧工程、上記第1放圧工程及び上記第2放圧工程を異なるタイミングで実施してもよい。この場合、上記ガス昇圧方法によって、効率的に、昇圧された原料ガス(高圧ガス)を製造可能である。
【0012】
一実施形態に係るガス昇圧方法において、上記ガス昇圧装置は、4つの上記吸着塔を備えており、4つの上記吸着塔を第1吸着塔、第2吸着塔、第3吸着塔及び第4吸着塔と称した場合、上記第1吸着塔、上記第2吸着塔、上記第3吸着塔及び上記第4吸着塔それぞれにおいて、上記吸着工程、上記昇圧工程、上記第1放圧工程及び上記第2放圧工程を含むサイクルを繰り返し実施し、上記第1吸着塔において上記吸着工程を実施している間に、上記第2吸着塔において上記昇圧工程が実施され、上記第3吸着塔において上記第1放圧工程が実施され、及び上記第4吸着塔において上記第2放圧工程が実施されるように、上記第1〜第4吸着塔において、上記吸着工程、上記昇圧工程、上記第1放圧工程及び上記第2放圧工程を異なるタイミングで実施してもよい。
してもよい。
【0013】
この場合、第1〜第4吸着塔がそれぞれ吸着工程、昇圧工程、第1放圧工程及び第2放圧工程を含むサイクルを繰り返すことで、第1〜第4吸着塔の何れかにおいて第1放圧工程が実施される。そのため、昇圧された原料ガスを連続的に第1ガス放出流路から取り出し得る。
【0014】
上記第1放圧工程では、上記熱交換部内に上記熱媒を流し、 上記第2放圧工程では、上記熱交換部内に上記冷媒を流してもよい。この場合、第1放圧工程において、所望の圧力の原料ガスを安定して第1ガス放出流路に放出でき、第2放圧工程の時間を短縮可能である。
【0015】
上記第2設定圧力は、上記原料ガスの上記吸着塔への導入時の上記吸着塔内の圧力であり得る。この場合、上記吸着工程、上記昇圧工程、上記第1放圧工程及び上記第2放圧工程を順次実施した後、続けて吸着工程を実施し易い。
【0016】
上記熱媒は、上記吸着塔の周囲の空気雰囲気からの自然入熱であり、上記冷媒は、液化ガス気化設備で排熱された冷熱であってもよい。この場合、熱媒及び冷媒のコストが低減されるので、原料ガスの昇圧に要するコストを更に低減できる。
【0017】
上記第2放圧工程で放出された上記原料ガスを、上記第2ガス放出流路を介して上記ガス導入流路に戻してもよい。この場合、原料ガスを有効活用できる。
【0018】
上記吸着剤の例は、カーボンモレキュラーシーブ、ゼオライト及び活性炭である。
【0019】
上記原料ガスの例は、窒素ガス、酸素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、アルゴンガス、または水素ガスである。
【0020】
本発明の他の側面に係るガス昇圧装置は、温度変動吸着法によって原料ガスを昇圧するガス昇圧装置であり、吸着剤が充填された複数の吸着剤充填管を有する吸着塔と、上記吸着塔に一体的に設けられる熱交換部であって、上記熱交換部内に冷媒及び熱媒が流される上記熱交換部と、上記吸着塔内に上記原料ガスを導入するためのガス導入流路と、上記ガス導入流路に配設される第1開閉弁と、上記吸着塔から放出された上記吸着塔内の上記原料ガスの一部を流す第1ガス放出流路と、上記吸着塔から放出された上記吸着塔内の上記原料ガスの少なくとも一部を上記ガス導入流路に戻す第2ガス放出流路と、上記第1ガス放出流路に配設される第1背圧弁と、上記第1ガス放出流路において上記第1背圧弁と上記吸着塔の間に配設される第2開閉弁と、上記第2ガス放出流路に配設される第2背圧弁と、上記第2ガス放出流路において上記第2背圧弁と上記吸着塔の間に配設される第3開閉弁と、を備える。
【0021】
上記ガス昇圧装置では、吸着塔に一体的に設けられた熱交換部によって吸着剤充填管内の吸着剤を冷却したり、加熱したりできる。そのため、温度変動吸着法を適用して原料ガスを昇圧可能である。よって、上記ガス昇圧装置を用いて、上述したガス昇圧方法を好適に実施可能であることから、原料ガスの昇圧に要するコストを低減できる。
【0022】
一実施形態に係るガス昇圧装置は、並列に配置された複数の上記吸着塔を備え、上記ガス導入流路は、複数の上記吸着塔が共有する第1配管を有し、上記第1ガス放出流路は、複数の上記吸着塔が共有する第2配管を有し、上記第2ガス放出流路は、複数の上記吸着塔が共有する第3配管を有し、複数の上記吸着塔は、上記第1配管、上記第2配管及び上記第3配管に接続されていてもよい。この場合、昇圧された原料ガスを効率的に製造可能である。
【0023】
一実施形態に係るガス昇圧装置は、並列に配置された4つの上記吸着塔を備えてもよい。この場合、昇圧された原料ガスを連続的に取り出し可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、コストを低減しながらガスを昇圧可能なガス昇圧方法及びガス昇圧装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係るガスの昇圧方法を実施するのに使用可能なガス昇圧装置1の概略構成を表す。ガス昇圧装置1は、原料ガスを昇圧することによって高圧ガス(製品ガス)を製造する装置である。原料ガスの例は、窒素ガス、酸素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、アルゴンガス、または水素ガスである。ガス昇圧装置1は、4つの吸着塔10と、4つの熱交換部20と、ガス導入流路30と、混合器40と、第1ガス放出流路50と、第2ガス放出流路55と、を備える。
【0028】
4つの吸着塔10は、ガス導入流路30に接続され並列配置されている。吸着塔10は、温度変動吸着法によって、ガス導入流路30から吸着塔10内に導入された原料ガスを昇圧し、高圧ガスを製造するための塔である。本実施形態において高圧ガスは、吸着塔10に原料ガスを導入する時の吸着塔10内の圧力より高い圧力であればよい。高圧ガスの圧力の例は、2〜20MPaである。
【0029】
各吸着塔10の入口10aはガス導入流路30に接続されている。ガス導入流路30は、主配管(第1配管)31と、主配管31から分岐しており各吸着塔10の入口10aに接続する分岐管32とを有する。この場合、主配管31は、4つの吸着塔10に共有されている。分岐管32には、吸着塔10に原料ガスを導入する場合と、原料ガスの吸着塔10への導入を遮断する場合とを切り替える切替バルブ(第1開閉弁)V1が配設されている。
【0030】
吸着塔10の出口10bは第1ガス放出流路50に接続されているとともに、第2ガス放出流路55に接続されている。
【0031】
第1ガス放出流路50は、主配管(第2配管)51と、主配管51から分岐しており各吸着塔10の出口10bに接続する分岐管52とを有する。この場合、主配管51は、4つの吸着塔10に共有されている。分岐管52には、吸着塔10からガスを第1ガス放出流路50(具体的には主配管51)に流す場合とガスを遮断する場合とを切り替える切替バルブ(第2開閉弁)V2が配設されている。
【0032】
第2ガス放出流路55は、主配管(第3配管)56と、主配管56から分岐しており各吸着塔10の出口10bに接続する分岐管57とを有する。この場合、主配管56は、4つの吸着塔10に共有されている。分岐管57には、吸着塔10からガスを第2ガス放出流路55(具体的には主配管56)に流す場合と、ガスを遮断する場合とを切り替える切替バルブ(第3開閉弁)V3が配設されている。
【0033】
分岐管52と分岐管57とは、切替バルブV2及び切替バルブV3より吸着塔10側で合流して出口10bに接続されている。
【0034】
第1ガス放出流路50は、吸着塔10内で昇圧されたガス(以下、「高圧ガス」とも奏す)をガス昇圧装置1の系外に取り出すためのガス流路である。第1ガス放出流路50が有する主配管51には、第1背圧弁V4が配設されている。これにより、吸着塔10内の圧力が第1背圧弁V4の第1設定圧力になるまで吸着塔10内のガスを取り出すことが可能である。
【0035】
第2ガス放出流路55は、吸着塔10内の高圧ガスを取り出し、ガス導入流路30が有する主配管31上に配置された混合器40を介して上記高圧ガスをガス導入流路30に戻すためのガス流路である。第2ガス放出流路55を介してガス導入流路30に戻される高圧ガスを「循環ガス」と称す場合もある。第2ガス放出流路55には、第2背圧弁V5が配設されている。これにより、吸着塔10内の圧力が第2背圧弁V5の第2設定圧力になるまで吸着塔10内の高圧ガスを取り出すことが可能である。第2設定圧力は、第1設定圧力より小さい。第2設定圧力は、通常、吸着塔10への原料ガスの導入時の吸着塔10内の圧力である。
【0036】
吸着塔10は、吸着剤が充填された複数の吸着剤充填管11を備える。複数の吸着剤充填管11は、吸着塔10の入口10aから出口10bに向けて延在しており、互いに平行に配置されている。吸着剤は、原料ガスの吸着に適したものであればよい。吸着剤の例は、カーボンモレキュラーシーブ、ゼオライト、または活性炭である。吸着塔10は、入口10aから導入された原料ガスが、各吸着剤充填管11内を流れるように構成されている。
【0037】
4つの熱交換部20と4つの吸着塔10は、一対一に対応しており、各熱交換部20は、対応する吸着塔10に一体的に設けられている。一実施形態において、熱交換部20は吸着塔10を覆っている。一実施形態において、熱交換部20は多管式であってもよい。
【0038】
熱交換部20は、熱交換槽21を備えており、熱交換槽21内に、吸着塔10が備える複数の吸着剤充填管11が配置されている。よって、熱交換槽21は複数の吸着剤充填管11を囲んでいる。熱交換部20は、熱交換槽21において冷媒を流して複数の吸着剤充填管11内の吸着剤を冷却するとともに、熱交換槽21において熱媒を流して複数の吸着剤充填管11内の吸着剤を加熱するように構成されていればよい。本実施形態では、熱交換部20は、断らない限り、熱交換槽21と、冷媒供給排出管22と、冷媒用ラジエタ23と、熱媒供給排出管24と、熱媒用ラジエタ25とを有する。
【0039】
冷媒供給排出管22は、熱交換槽21に接続されており、冷媒を熱交換槽21に供給するとともに、熱交換槽21内の冷媒を排出するための冷媒の流路である。冷媒は、吸着剤を所望の温度(例えば、−70℃〜−80℃)まで冷却可能なものであれば限定されない。冷媒の例は、液化ガス気化設備で捨てられる冷熱である。このような冷熱を冷媒に使用する際には、冷媒供給排出管22は、例えば液化ガス気化設備で捨てられる冷熱を流す配管に接続されていればよい。冷媒として、例えば液化アルゴン、液化ヘリウム、液化ネオン、液化酸素、液化窒素といった液化ガスを使用する場合、又はその他の冷媒、例えば冷熱を大気中に排熱するガス、または不凍液等を使用する場合には、それらを貯留したボンベ等の冷媒供給源に冷媒供給排出管22を接続すればよい。冷媒供給排出管22には、冷媒供給排出管22に冷媒を流す場合と、冷媒を遮断する場合とを切り替える切替バルブV6が配設されている。
【0040】
冷媒用ラジエタ23は、冷媒供給排出管22と、冷媒供給排出管22から分岐した分岐管22aとによって熱交換槽21に接続されている。冷媒用ラジエタ23は、冷媒供給排出管22によって熱交換槽21に供給された冷媒を熱交換槽21内で循環させるためのものである。分岐管22aには、冷媒を循環させる場合と、その循環を停止する場合とを切り替える切替バルブV7が配置されている。
【0041】
熱媒供給排出管24は、熱交換槽21に接続されており、熱媒を熱交換槽21に供給するとともに、熱交換槽21内の熱媒を排出するための熱媒の流路である。熱媒は、吸着剤を、昇圧に適した温度(例えば、15〜25℃)まで加熱可能であればよい。熱媒の例は、吸着塔10周囲の空気雰囲気からの自然入熱である。このような自然入熱を熱媒に使用する際には、熱媒供給排出管24の一端(熱交換槽21層と反対側の端)を解放しておけばよい。熱媒の他の例は、空気、窒素のようなガス、または不凍液であり、その場合は、それらの熱媒供給源に熱媒供給排出管24を接続すればよい。熱媒供給排出管24には、熱媒供給排出管24に熱媒を流す場合と、遮断する場合とを切り替える切替バルブV8が配設されている。
【0042】
熱媒用ラジエタ25は、熱媒供給排出管24と熱媒供給排出管24から分岐した分岐管24aとによって熱交換槽21に接続されている。熱媒用ラジエタ25は、熱媒供給排出管24によって熱交換槽21に供給された熱媒を熱交換槽21内で循環させるためのものである。分岐管24aには、熱媒を循環させる場合と、循環を停止する場合とを切り替える切替バルブV9が配設されている。
【0043】
混合器40は、ガス導入流路30の主配管31上に配置されており、混合器40には、第2ガス放出流路55が有する主配管56が接続されている。よって、混合器40は、切替バルブV1を介して各吸着塔10の入口10aと接続され、切替バルブV3を介して各吸着塔10の出口10bに接続されている。混合器40は、第2ガス放出流路55によって流れてきた吸着塔10からの高圧ガス(循環ガス)を、ガス導入流路30を流れる原料ガスと混合し、その混合ガスを原料ガスとして各吸着塔10に供給する。
【0044】
ガス昇圧装置1は、ガス昇圧装置1の動作を制御する制御部(不図示)を更に備えてもよい。制御部は、例えば、各吸着塔10に対応して設けられた切替バルブV1〜V3,V6〜V9に電気的に接続されており、切替バルブV1〜V3,V6〜V9の開閉を制御する。切替バルブV1〜V3,V6〜V9を制御することによって、制御部は、ガス昇圧装置1において本実施形態に係るガス昇圧方法を実施する。制御部は、ガス昇圧装置1に対して専用に設けられた制御装置でもよいし、又は、切替バルブV1〜V3,V6〜V9の開閉制御プログラムがインストールされたパーソナルコンピュータであってもよい。
【0045】
次に、ガス昇圧装置1を利用したガス昇圧方法であって、本実施形態に係るガス昇圧方法の一例を説明する。以下、説明の便宜のため、4つの吸着塔10を第1〜第4吸着塔10と称す。
【0046】
ガス昇圧方法は、低温吸着工程(吸着工程)、昇温昇圧工程(昇圧工程)、高温放圧工程(第1放圧工程)及び降温放圧工程(第2放圧工程)を備え、これらの工程は、低温吸着工程、昇温昇圧工程、高温放圧工程及び降温放圧工程の順に実施される。ガス昇圧方法では、低温吸着工程、昇温昇圧工程、高温放圧工程及び降温放圧工程を一つのサイクルとし、第1〜第4吸着塔10においてタイミングをずらして、第1〜第4吸着塔10それぞれにおいて上記サイクルを繰り返す。各工程を第1吸着塔10に対して実施する場合を例にして、各工程を説明する。
【0047】
[低温吸着工程]
低温吸着工程では、切替バルブV1を開いて、ガス導入流路30から原料ガスを第1吸着塔10内に導入する。この際、切替バルブV2及び切替バルブV3は閉状態とする。低温吸着工程では、熱交換部20の切替バルブV6及び切替バルブV7を開状態に切り替えて冷媒を熱交換部20内で循環させることによって、吸着剤充填管11内の吸着剤を低温(例えば−80℃〜−70℃)状態にする。これにより、吸着塔10内に導入された原料ガスが吸着剤充填管11内の吸着剤に吸着する。低温吸着工程の実施時間は、原料ガスの導入量、吸着剤の吸着性能及び吸着剤の量などに応じて適宜設定すればよい。上記冷媒の循環は、低温吸着工程の終了時まで実施する。低温吸着工程では、切替バルブV8は開状態とし、切替バルブV9は閉状態とする。切替バルブV8は閉状態でもよい。
【0048】
[昇温昇圧工程]
低温吸着工程の終了後、第1吸着塔10の切替バルブV1を開状態から閉状態に切り替える。昇温昇圧工程においても切替バルブV3及び切替バルブV2は閉状態を維持する。昇温昇圧工程においては、熱交換部20の切替バルブV7を開状態から閉状態に切り替えて冷媒の循環を停止させるとともに、切替バルブV6の開状態を維持して、熱交換槽21から冷媒を冷媒供給排出管22を介して抜き出す。一方、熱交換部20の切替バルブV8の開状態を維持しながら切替バルブV9を閉状態から開状態に切り替えて、熱媒を熱交換槽21内で循環させて、吸着剤充填管11内の吸着剤を加熱する。これにより、吸着剤に吸着していた原料ガスが脱着し、吸着塔10内部で、高圧ガス(昇圧された原料ガス)が製造される。昇温昇圧工程の実施時間は、原料ガスの導入量、吸着剤の吸着性能及び吸着剤の量などに応じて適宜設定すればよい。上記熱媒の循環は、次の高温放圧工程の終了時まで実施する。すなわち、切替バルブV6、切替バルブV7、切替バルブV8及び切替バルブV9の状態は、高温放圧工程の終了時まで継続する。
【0049】
[高温放圧工程]
高温放圧工程では、切替バルブV1及び切替バルブV3は閉状態を維持する一方、切替バルブV2を閉状態から開状態に切り替える。これにより、第1吸着塔10内で昇圧された原料ガスである高圧ガスの一部が第1ガス放出流路50に放出され、第1背圧弁V4を介して、ガス昇圧装置1の系外に取り出される。このように取り出された高圧ガスは、製品ガスとして例えば高圧ガス供給先に供給される。上記高圧ガスの放出に伴って、第1背圧弁V4の第1設定圧力まで第1吸着塔10の圧力が低下する。
【0050】
[降温放圧工程]
降温放圧工程では、切替バルブV1は閉状態を維持しながら切替バルブV2を開状態から閉状態に切り替えるとともに、切替バルブV3を閉状態から開状態に切り替える。これにより、第1吸着塔10内の高圧ガスの少なくとも一部は、第2ガス放出流路55に放出され、第2背圧弁V5を介して混合器40に流れ込む。それに伴って、第2背圧弁V5の第2設定圧力まで第1吸着塔10内の圧力が低下する。通常、第2設定圧力は、低温吸着工程で原料ガスを吸着塔10内に導入する時の圧力である。
【0051】
降温放圧工程では、熱交換部20の切替バルブV9を閉状態に切り替えて熱媒の循環を停止させるとともに、切替バルブV8の開状態を維持して、熱媒を熱交換槽21から抜き出す。一方、切替バルブV6の開状態を維持しながら切替バルブV7を閉状態から開状態に切り替えて、熱交換槽21内に冷媒を循環させる。吸着塔10では、この冷媒の循環状態は、次の低温吸着工程の終了まで継続する。
【0052】
降温放圧工程で、第2背圧弁V5を介して放出された高圧ガスは、混合器40に流入し、混合器40によってガス導入流路30に流れる原料ガスと混合され、その混合ガスが、次の低温吸着工程において原料ガスとして吸着塔10に導入される。
【0053】
第2〜第4吸着塔10において実施される低温吸着工程、昇温昇圧工程、高温放圧工程及び降温放圧工程も第1吸着塔10に着目して説明した場合と同様である。
【0054】
本実施形態のガス昇圧方法では、高圧ガスが連続して第1ガス放出流路50から取り出されるように、第1〜第4吸着塔10それぞれにおいてタイミングをずらしながら、上記4つの工程を含むサイクルが順次繰り返される。具体的には、第1吸着塔10において低温吸着工程が行われている間に、第2吸着塔10において昇温昇圧工程が、第3吸着塔10において高温放圧工程が、第4吸着塔10において降温放圧工程が、第1吸着塔10における場合と同様に進行される。
【0055】
本実施形態に係るガス昇圧装置1及びガス昇圧方法では、温度変動吸着法を利用して原料ガスを昇圧する。この場合、吸着剤を冷却して原料ガスを吸着剤に吸着させる必要がある(低温吸着工程)。吸着剤の冷却は、熱交換部20に冷媒を流すことで実施される。そのため、例えば、特許文献2のように、吸着剤の充填容器を液化ガス冷媒中に浸漬する場合に比べて使用する冷媒の量を低減できる。熱交換部20に冷媒を流すことで吸着剤充填管11(及び吸着剤)を効率的に冷却できるので、この点でも冷媒の量を低減可能である。その結果、原料ガスの昇圧(換言すれば、高圧ガスの製造)のためのコストを低減可能である。
【0056】
吸着塔10に熱交換部20が一体的に設けられているので、例えば吸着塔を液化ガス冷媒中に浸漬するために、液化ガス冷媒の貯留槽又は吸着塔を移動させるための設備も不要であり、設備コストも低減する。その結果、高圧ガスの製造のためのコストを低減可能である。
【0057】
冷媒として液化ガス気化設備で捨てられる冷熱を利用するとともに、熱媒として自然入熱を利用した形態(特に、冷媒として液化ガス気化設備で捨てられる冷熱を利用する場合)では、冷媒及び熱媒のコストを低減できる。その結果、高圧ガス製造のためのコストを更に低減可能である。
【0058】
吸着塔10に一体的に設けられた熱交換部20内に冷媒及び熱媒を流すことで、吸着剤の冷却及び加熱を行うことから、吸着剤の温度変動を管理又は調整し易い。そのため、高圧ガスの供給先からの高圧ガスの供給量、高圧ガスの種類(原料ガスの種類)の変更などの要望に対応し易い。
【0059】
吸着塔は複数の吸着剤充填管11を備えているので、熱交換部20(具体的には、熱交換槽21)内において、冷媒と熱媒とを交換することで吸着剤の温度変化を迅速にすることができる。その結果、ガス昇圧装置1及びそれを用いたガス昇圧方法では、効率的に高圧ガスを製造可能である。
【0060】
本実施形態で説明したように、4つの吸着塔10、すなわち、第1〜第4吸着塔10を利用する場合、第1吸着塔10において低温吸着工程が行われている間に、第2吸着塔10において昇温昇圧工程を実施し、第3吸着塔10において高温放圧工程を実施し、第4吸着塔10において降温放圧工程を実施可能である。そのため、第1〜第4吸着塔10において、低温吸着工程、昇温昇圧工程、高温放圧工程及び降温放圧工程を含むサイクルを繰り返していれば、第1〜第4吸着塔10の何れかは高温放圧工程を実施していることになる。その結果、第1ガス放出流路50を介して高圧ガスを連続的にガス昇圧装置1から取り出し、例えば高圧ガスの供給先に供給可能である。
【0061】
上述したように、高温放圧工程において熱交換部20内に熱媒を流している場合には、高温放圧工程において所望の圧力の原料ガスを安定して第1ガス放出流路50に放出できる。上述したように、降温放圧工程において熱交換部20内に冷媒を流している形態では、降温放圧工程の時間を短縮可能である。
【0062】
第2背圧弁V5の第2設定圧力が原料ガスの上記吸着塔10への導入時の吸着塔10内の圧力である場合には、低温吸着工程、昇温昇圧工程、高温放圧工程及び降温放圧工程を順次実施した後、続けて低温吸着工程を実施し易い。
【0063】
次に、原料ガスを窒素ガスとした場合及び原料ガスを酸素ガスとした場合のガス昇圧装置1(及びそれを用いたガス昇圧方法)の具体的な形態の性能の例を説明する。以下、数値を挙げてガス昇圧装置1及びそれを用いてガス昇圧方法を実施する場合の設計例を具体的に説明するが、本発明は以下の設計例に限定されない。
【0064】
〔設計例1〕
設計例1では、原料ガスに窒素ガスを用いて、吸着剤の温度変化によるガス吸着特性を利用したガス昇圧装置1及びそれを利用したガス昇圧方法の設計例を示す。ガス昇圧装置1は、
図1に示したように4つの吸着塔10を備える。吸着塔10は、内径300mm、塔高さ2mの吸着塔10である。設計例1では、低温吸着工程において混合器40から22.0m
3/hの窒素ガスを、塔内圧力が0.4MPaの吸着塔10に供給した場合に、2.0MPa、10.0m
3/hの高圧窒素ガスを高圧ガス供給先へ供給する場合を想定した。
【0065】
低温(冷媒の温度)を-79℃とし、高温(熱媒の温度)を25℃とし、原料ガスを窒素ガスとし、吸着剤として例えばCaX型ゼオライトを充填して運用した場合、低温吸着工程での吸着剤の吸着容量は95L/kgであり、昇温昇圧工程での吸着剤の吸着容量は46L/kgである。この吸着容量差を利用した温度変動吸着法によって、低温吸着工程及び高温昇圧工程を実施することで、内径300mm、塔高さ2mの吸着塔10では、3.5MPaの高圧窒素ガスが製造される。
【0066】
10.0m
3/hの高圧窒素ガスを吸着塔10から高圧ガス供給先へ供給する場合、高温放圧工程では、第1背圧弁V4の第1設定圧力を2.0MPaとし、吸着塔10の圧力を2.0MPaまで下げる。
【0067】
降温放圧工程では、第2背圧弁V5の第2設定圧力を原料ガス導入時の圧力である0.4MPaとした場合、第2背圧弁V5を介して吸着塔10から混合器40へ12.0m
3/hの窒素ガスを戻し、吸着塔10の圧力を0.4MPaまで下げる。そして、混合器40で混合された10.0m
3/hの原料ガスと循環ガスが吸着塔10に補充される低温吸着工程へと移行して順次サイクルが進行する。
【0068】
以上から、設計例1のガス昇圧装置1及びガス昇圧方法は、2.0MPa、10.0m
3/hの高圧窒素ガスを高圧ガス供給先へ供給可能とする性能を有する。更に、4つの吸着塔10を備えていることで、各吸着塔10での低温吸着工程、昇温昇圧工程、高温放圧工程及び降温放圧工程のサイクルを異なるタイミングで実施することで、上記2.0MPa、10.0m
3/hの高圧窒素ガスを高圧ガス供給先へ連続して供給可能である。
【0069】
〔設計例2〕
設計例2では、原料ガスに酸素ガスを用いて、吸着剤の温度変化によるガス吸着特性を利用したガス昇圧装置1でガス昇圧方法を実施して酸素ガスを昇圧する場合の設計例を示す。ガス昇圧装置1は、
図1に示したように4つの吸着塔10を備える。吸着塔10は、内径300mm、塔高さ2mの吸着塔10である。設計例2では、低温吸着工程において混合器40から47.0m
3/hの酸素ガスを、塔内圧力が0.9MPaの吸着塔10に供給した場合に、5.8MPa、10.0m
3/hの高圧酸素ガスを高圧ガス供給先へ供給する場合を想定した。
【0070】
低温(冷媒の温度)を-75℃、高温(熱媒の温度)を25℃、原料ガスとして酸素ガスを、吸着剤として例えばCaX型ゼオライトを充填して運用した場合、低温吸着工程での吸着剤の吸着容量は173L/kgであり、昇温昇圧工程での吸着剤の吸着容量は73L/kgである。この吸着容量差を利用した温度変動吸着法によって、内径300mm、塔高さ2mの吸着塔10では、7.3MPaの高圧酸素ガスが製造される。
【0071】
10.0m
3/hの高圧窒素ガスを吸着塔10から高圧ガス供給先へ供給する場合、高温放圧工程では、第1背圧弁V4の第1設定圧力を5.8MPaとし、吸着塔10の圧力を5.8MPaまで下げる。
【0072】
降温放圧工程では、第2背圧弁V5の第2設定圧力を原料ガス導入時の圧力である0.9MPaとした場合、第2背圧弁V5を介して吸着塔10から混合器40へ37.0m
3/hの酸素ガス(循環ガス)を戻し、吸着塔10の圧力を0.9MPaまで下げる。そして、混合器40で混合された10.0m
3/hの原料ガスと循環ガスが吸着塔10に補充される低温吸着工程へと移行して順次サイクルが進行する。
【0073】
以上から、設計例2のガス昇圧装置1及びガス昇圧方法では、5.8MPa、10.0m
3/hの高圧酸素ガスを高圧ガス供給先へ供給可能とする性能を有する。更に、4つの吸着塔10を備えていることで、各吸着塔10での低温吸着工程、昇温昇圧工程、高温放圧工程及び降温放圧工程のサイクルを異なるタイミングで実施することで、上記2.0MPa、10.0m
3/hの高圧窒素ガスを高圧ガス供給先へ連続して供給可能である。
【0074】
以上、本発明の種々の実施形態及び設計例を説明した。しかしながら、本発明は、例示した種々の実施形態及び設計例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0075】
例えば、ガス昇圧装置は一つの吸着塔を備えていればよい。その場合でも、液化ガス冷媒に吸着塔を浸漬する必要がないので、前述したように、原料ガスを昇圧する(換言すれば高圧ガスを製造する)ためのコストが低減可能である。ガス昇圧装置は吸着塔を複数備えてもよい。ガス昇圧装置が複数の吸着塔を備える場合、例えば、複数の吸着塔のうち少なくとも2つの吸着塔を用いて、異なるタイミングで、吸着工程、昇圧工程、第1放圧工程及び第2放圧工程を実施可能である。この場合、昇圧された原料ガス(高圧ガス)を製造可能である。ガス昇圧装置が吸着塔を3つ以上備えることで、3つの吸着塔のうちの何れかで高温放圧工程(第1放圧工程)が行うことが可能出る。そのため、例えば高圧ガスの供給先に、高圧ガスを連続して供給可能である。よって、吸着塔は3つ以上が好ましく、4つ以上であることが更に好ましい。
【0076】
第1放圧工程では熱媒を熱交換部内で流さなくてもよく、第2放圧工程では、冷媒を熱交換部内で流さなくてもよい。ただし、第1放圧工程において、熱媒を熱交換部内に流すことで、放出される高圧ガスの圧力を均一化し易い。第2放圧工程において、冷媒を熱交換部内で流すことで、第2放圧工程の時間を短縮できる。
【0077】
第2背圧弁の第2設定圧力は、原料ガスの吸着塔への導入時の吸着塔内の圧力と異なっていてもよい。