(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記樹脂粒子の含有量が、非浸透媒体印刷用前処理液の全質量に対し、5質量%〜25質量%である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の非浸透媒体印刷用前処理液。
前記樹脂粒子と前記凝集剤の含有量の質量比が、前記樹脂粒子:前記凝集剤=10:1〜1:1である、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の非浸透媒体印刷用前処理液。
溶解パラメータが13以下の水溶性有機溶剤を含まないか、又は、溶解パラメータが13以下の水溶性有機溶剤の含有量が、非浸透媒体印刷用前処理液の全質量に対し、0質量%を超え10質量%未満である、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の非浸透媒体印刷用前処理液。
ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、又は、ポリエチレンを含む非浸透媒体の印刷に用いられる、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の非浸透媒体印刷用前処理液。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
本開示において、「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味する。
本開示において、「印刷」とは、インクにより、文字、図柄等の画像を描くことを意味し、「画像記録」又は「画像の記録」とは、前処理液(又は印刷前処理液の固形分を含む処理層)及びインクを用い、非浸透媒体上に画像を描き、描いた画像を定着させることを意味する。
本開示において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0014】
(非浸透媒体印刷用前処理液)
本開示に係る非浸透媒体印刷用前処理液(以下、単に「前処理液」ともいう。)は、ガラス転移温度が30℃以上であり、かつ、水接触角が20°以上である樹脂を含む樹脂粒子と、多価金属化合物、有機酸又はその塩、及び、金属錯体よりなる群から選ばれた少なくとも一種の凝集剤と、水と、を含む。
【0015】
本開示に係る非浸透媒体印刷用前処理液によれば、非浸透媒体に付与した際に、印刷面からの前処理液に含まれる成分の転写が抑制され、かつ、印刷物の画質に優れる印刷用基材が得られる。
上記効果が得られる理由は明確ではないが、以下のように推測される。
凝集剤を含む非浸透媒体印刷用前処理液を用いることにより、印刷物の画質に優れる印刷用基材が得られる。
また、前処理液に含まれる樹脂粒子に含まれる樹脂のガラス転移温度が30℃以上であることにより、樹脂粒子による膜の硬さが向上し、前処理液に含まれる凝集剤等の成分の転写が抑制されると考えられる。
更に、上記樹脂粒子に含まれる樹脂の水接触角が20°以上である(すなわち、樹脂粒子に含まれる樹脂が疎水的である)ことにより、樹脂粒子と凝集剤との親和性が向上するため、特に印刷面からの凝集剤の漏れ出しが抑制され、前処理液に含まれる成分の転写が抑制されると考えられる。
加えて、上記樹脂粒子に含まれる樹脂の水接触角が20°以上であることにより、非浸透媒体と上記樹脂粒子との密着性も向上しやすく、印刷物の印刷面における画像部の剥離も抑制されやすいと推測される。
以下、本開示に係る非浸透媒体印刷用前処理液について詳細を説明する。
【0016】
<非浸透媒体>
本開示に係る非浸透媒体印刷用前処理液は、非浸透媒体に付与することにより用いられる。
本開示において非浸透媒体とは、ブリストー法による、接触時間900ms(ミリ秒)における水の吸収量(「900ms吸水量」ともいう。)が4mL/m
2未満である媒体をいう。
非浸透媒体は、紙を含まない媒体であり、樹脂基材であることが好ましい。
また、非浸透媒体の上記前処理液が付与される面には、公知の易接着層が形成されていてもよい。
【0017】
〔樹脂基材〕
非浸透媒体として使用される樹脂基材としては、特に限定されないが、例えば熱可塑性樹脂からなる基材が挙げられる。
樹脂基材としては、例えば、上記熱可塑性樹脂をシート状に成形した基材が挙げられる。
上記樹脂基材は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエチレン、ポリイミド又はポリ塩化ビニルを含むことが好ましく、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエチレンを含むことがより好ましい。
樹脂基材は、透明な樹脂基材であっても、着色された樹脂基材であってもよいし、少なくとも一部に金属蒸着処理等がなされていてもよい。
本開示に係る樹脂基材の形状は、特に限定されないが、シート状の樹脂基材であることが好ましく、印刷物の生産性の観点から、シート状の樹脂基材を巻き取ることによりロールが形成可能な樹脂基材であることがより好ましい。
また、本開示に係る前処理液は、前処理液に含まれる成分の転写が抑制される等の観点から、特に、軟包装用の樹脂基材に対する印刷において好適に使用可能である。
【0018】
上記樹脂基材は、表面処理がなされていてもよい。
表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、熱処理、摩耗処理、光照射処理(UV処理)、火炎処理等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、前処理液が付与される前に、予め樹脂基材の表面にコロナ処理を施すと、樹脂基材の表面エネルギーが増大し、樹脂基材の表面の湿潤及び樹脂基材への前処理層、インクの接着が促進される。コロナ処理は、例えば、コロナマスター(信光電気計社製、PS−10S)等を用いて行なうことができる。コロナ処理の条件は、樹脂基材の種類、前処理液の組成、インクの組成等、場合に応じて適宜選択すればよい。例えば、下記の処理条件としてもよい。
・処理電圧:10kV〜15.6kV
・処理速度:30mm/s〜100mm/s
【0019】
樹脂基材の前処理液が付与される面の水接触角は、10°〜150°であることが好ましく、30°〜100°であることがより好ましい。
樹脂基材の前処理液が付与される面の表面自由エネルギーは、10mNm
−1以上であることが好ましく、30mNm
−1以上であることがより好ましい。
【0020】
<ガラス転移温度が30℃以上であり、かつ、水接触角が20°以上である樹脂を含む樹脂粒子>
本開示における前処理液は、ガラス転移温度が30℃以上であり、かつ、水接触角が20°以上である樹脂(「特定樹脂」ともいう。)を含む樹脂粒子(「特定樹脂を含む粒子」ともいう。)を含む。
本開示において、特定樹脂を含む粒子は、樹脂を含む粒子であり、樹脂からなる粒子であることが好ましい。
特定樹脂を含む粒子は樹脂として、1種類の樹脂のみを含んでもよいし、複数の樹脂を含んでもよい。
また、特定樹脂を含む粒子に含まれる樹脂は水不溶性であることが好ましい。
本明細書中において、「水不溶性」とは、25℃の水100gに対する溶解量が1.0g未満(より好ましくは0.5g未満)である性質をいう。
【0021】
〔ガラス転移温度〕
本開示において用いられる特定樹脂を含む粒子は、ガラス転移温度が30℃以上である。ガラス転移温度の上限は特に制限はないが、上限としては120℃が挙げられる。
また、転写抑制と密着性の観点から30℃〜80℃が好ましく。40℃〜60℃であることが好ましく、45〜60℃であることが好ましい。
本開示において、樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定することができる。
具体的な測定方法は、JIS K 7121(1987年)又はJIS K 6240(2011年)に記載の方法に順じて行なう。本明細書におけるガラス転移温度は、補外ガラス転移開始温度(以下、Tigと称することがある)を用いている。
ガラス転移温度の測定方法をより具体的に説明する。
ガラス転移温度を求める場合、予想される樹脂のTgより約50℃低い温度にて装置が安定するまで保持した後、加熱速度:20℃/分で、ガラス転移が終了した温度よりも約30℃高い温度まで加熱し,示差熱分析(DTA)曲線又はDSC曲線を作成する。
補外ガラス転移開始温度(Tig)、すなわち、本明細書におけるガラス転移温度Tgは、DTA曲線又はDSC曲線における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度として求める。
【0022】
〔水接触角〕
本開示において用いられる特定樹脂を含む粒子は、水接触角が20°以上である。水接触角の上限は特に制限はないが、上限としては70°が挙げられる。
また、転写抑制と密着性の観点から20〜60°が好ましく、25°〜45°であることが好ましく20〜40°が更に好ましい。
特定樹脂を含む粒子の水接触角は、下記の方法により測定する。
測定対象である樹脂粒子を用い、下記組成の水接触角測定用溶液を調製する。その後、調製した水接触角測定用溶液をポリエチレンテレフタレート(PET、FE2001 厚み12μm フタムラ化学(株)製)に液体塗布量で1.7μmになるように塗布し、80℃30秒間乾燥し膜を作製する。作製した膜に対し接触角計ドロップマスターDM700(協和界面科学(株)製)を用いて、JIS R3257:1999に記載の静的法に準拠し、1分後の接触角を測定する。液滴量は2μLとする。
【0023】
−水接触角測定用溶液−
・特定樹脂を含む粒子:固形分として15質量%
・界面活性剤:テイカパワーBN2070M(テイカ(株)製) 0.7質量%
・プロピレングリコール:10質量%
・水:残部
また、本開示において、固形分とは、各成分の水、有機溶剤等の溶媒を除いた残部をいう。
樹脂種の異なる2種以上の特定樹脂を含む粒子が前処理液に含有される場合、上記水接触角測定用溶液中の各特定樹脂を含む粒子の含有量は、特定樹脂を含む粒子の全質量が、上述の固形分として15質量%となるように、前処理液中の各特定樹脂を含む粒子の含有質量分率に従って決定される。
例えば、前処理液中の特定樹脂を含む粒子の全質量に対し、第一の特定樹脂が20質量%、第二の特定樹脂が80質量%含まれる場合には、上記水接触角測定用溶液には、第一の特定樹脂を固形分として3質量%、第二の特定樹脂を固形分として12質量%含有させた粒子を用いて測定する。
【0024】
〔特定樹脂を含む粒子の構造〕
本開示において用いられる特定樹脂は、特に限定されないが、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレア樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等が挙げられ、ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂を含むことが好ましく、ポリエステル樹脂を含むことがより好ましい。
【0025】
−脂環式構造又は芳香環式構造−
本開示において用いられる特定樹脂は、ガラス転移温度及び水接触角を向上させる観点から、構造中に脂環式構造又は芳香環式構造を有することが好ましく、芳香環式構造を有することがより好ましい。
上記脂環式構造としては、炭素数5〜10の脂環式炭化水素構造が好ましく、シクロヘキサン環構造、ジシクロペンタニル環構造、ジシクロペンテニル環構造、又は、アダマンタン環構造が好ましい。
上記芳香環式構造としては、ナフタレン環又はベンゼン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
脂環式構造又は芳香環式構造の量としては、特に限定されず、特定樹脂のガラス転移温度及び水接触角が上記範囲内となる量であれば好ましく使用可能であるが、例えば、特定樹脂100gあたり0.01mol〜1.5molであることが好ましく、0.1mol〜1molであることがより好ましい。
【0026】
−イオン性基−
本開示に用いられる特定樹脂は、特定樹脂を含む粒子を後述する水分散性の樹脂粒子とすることが好ましい観点から、構造中にイオン性基を有することが好ましい。
イオン性基としては、アニオン性基であってもカチオン性基であってもよいが、導入の容易性の観点から、アニオン性基が好ましい。
アニオン性基としては、特に限定されないが、カルボキシ基、又は、スルホ基であることが好ましく、スルホ基であることがより好ましい。
イオン性基の量としては、特に限定されず、特定樹脂を含む粒子が水分散性の樹脂粒子となる量であれば好ましく使用可能であるが、例えば特定樹脂を含む粒子に含まれる樹脂100gあたり0.001mol〜1.0molであることが好ましく、0.01mol〜0.5molであることがより好ましい。
【0027】
〔特定樹脂を含む粒子の形態〕
特定樹脂を含む粒子としては、水分散性の樹脂粒子であることが好ましい。
本開示において、水分散性とは、20℃の水に撹拌後、20℃で60分間放置しても沈殿が確認されないことをいう。
【0028】
−体積平均粒径−
特定樹脂を含む粒子の体積平均粒径は、1nm〜300nmであることが好ましく、3nm〜200nmであることがより好ましく、5nm〜150nmであることが更に好ましい。
本開示において、体積平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布計により測定する。測定装置としては、例えば、粒度分布測定装置「マイクロトラックMT−3300II」(日機装(株)製)が挙げられる。
【0029】
〔重量平均分子量〕
特定樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1000〜300000であることが好ましく、2000〜200000であることがより好ましく、5000〜100000であることが更に好ましい。
本開示において、重量平均分子量は、特別な記載がない限り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定される。GPCは、HLC−8020GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgel(登録商標) Super Multipore HZ−H(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、条件としては、試料濃度を0.45質量%、流速を0.35mL/min、サンプル注入量を10μL、測定温度を40℃とし、RI検出器を用いて行う。また、検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
【0030】
〔特定樹脂を含む粒子における特定樹脂の含有量〕
特定樹脂を含む粒子における特定樹脂の含有量は、特定樹脂を含む粒子における全樹脂成分の総質量に対し、30質量%であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。上記含有量の上限は特に限定されず、100質量%以下であればよい。
【0031】
〔具体例〕
特定樹脂を含む粒子の具体例としては、ペスレジンA124GP、ペスレジンA645GH、ペスレジンA615GE、ペスレジンA520(以上、高松油脂(株)製)、Eastek1100、Eastek1200(以上、Eastman Chemical社製)、プラスコートRZ570、プラスコートZ687、プラスコートZ565、プラスコートRZ570、プラスコートZ690(以上、互応化学工業(株)製)、バイロナールMD1200(東洋紡(株)製)、EM57DOC(ダイセルファインケム社製)等が挙げられる。
【0032】
〔含有量〕
本開示において用いられる前処理液は、特定樹脂を含む粒子を、前処理液の全質量に対し、1質量%〜25質量%含有することが好ましく、2質量%〜20質量%含有することがより好ましく、3質量%〜15質量%含有することが更に好ましい。
【0033】
<凝集剤>
本開示に係る前処理液は、多価金属化合物、有機酸又はその塩、及び、金属錯体よりなる群から選ばれた少なくとも一種の凝集剤を含有する。
一般的に、多価金属化合物、有機酸又はその塩、及び、金属錯体といった低分子化合物である凝集剤を用いた場合には、高分子化合物である凝集剤を使用した場合と比較して、印刷面の非画像部からの凝集剤の漏れ出しが発生しやすいと考えられる。
しかし、本開示に係る前処理液を用いた場合には、上記前処理液が特定樹脂を含む粒子を含むことにより、上述した低分子化合物である凝集剤を用いた場合であっても、これらの凝集剤の漏れ出しが抑制されると推測される。
そのため、本開示に係る前処理液を用いて非浸透媒体に対する印刷を行った場合には、前処理液に含まれる成分の転写が抑制されやすいと考えられる。
なお、本開示において、低分子化合物とは、分子量(分子量分布を有する場合は、重量平均分子量)が10,000未満である化合物をいう。
上記凝集剤は、有機酸を含むことが好ましい。
以下、それぞれの化合物の詳細について記載する。
【0034】
〔多価金属化合物〕
上記多価金属化合物としては、周期表の第2属のアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム)、周期表の第3属の遷移金属(例えば、ランタン)、周期表の第13属からのカチオン(例えば、アルミニウム)、ランタニド類(例えば、ネオジム)の塩を挙げることができる。これら金属の塩としては、硝酸塩、塩化物、及びチオシアン酸塩が好適である。中でも、好ましくは、カルボン酸(ギ酸、酢酸、安息香酸塩など)のカルシウム塩又はマグネシウム塩、硝酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びチオシアン酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩である。
なお、多価金属化合物は、前処理液中において、少なくとも一部が多価金属イオンと対イオンとに解離していることが好ましい。
【0035】
〔有機酸又はその塩〕
有機酸としては、酸性基を有する有機化合物が挙げられる。
酸性基としては、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホ基、スルフィン酸基、及びカルボキシ基等を挙げることができる。上記酸性基は、インクの凝集速度の観点から、リン酸基又はカルボキシ基であることが好ましく、カルボキシ基であることがより好ましい。
なお、上記酸性基は、前処理液中において、少なくとも一部が解離していることが好ましい。
【0036】
カルボキシ基を有する有機化合物は、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸(好ましくは、DL−リンゴ酸)、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、フタル酸、4−メチルフタル酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等が好ましい。これらの化合物は、1種類で使用されてもよく、2種類以上併用されてもよい。
【0037】
カルボキシ基を有する有機化合物としては、インクの凝集速度の観点から、2価以上のカルボン酸(以下、多価カルボン酸ともいう。)が好ましく、ジカルボン酸がより好ましい。
ジカルボン酸としては、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、4−メチルフタル酸、又はクエン酸がより好ましく、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、又はクエン酸が好ましい。
【0038】
有機酸は、pKaが低いことが好ましい。
これにより、カルボキシ基等の弱酸性の官能基で分散安定化しているインク中の顔料やポリマー粒子などの粒子の表面電荷を、よりpKaの低い有機酸性化合物と接触させることにより減じ、分散安定性を低下させることができる。
【0039】
前処理液に含まれる有機酸は、pKaが低く、水に対する溶解度が高く、価数が2価以上であることが好ましく、インク中の粒子を分散安定化させている官能基(例えば、カルボキシ基等)のpKaよりも低いpH領域に高い緩衝能を有する2価又は3価の酸性物質であることがより好ましい。
【0040】
〔金属錯体〕
金属錯体としては、様々な金属錯体が市販されており、本開示においては、市販の金属錯体を使用してもよい。また、様々な有機配位子、特に金属キレート触媒を形成し得る様々な多座配位子が市販されている。そのため、市販の有機配位子と金属とを組み合わせて調製した金属錯体を使用してもよい。
【0041】
金属錯体としては、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックスZC−150」)、ジルコニウムモノアセチルアセトネート(例えば、松本製薬工業(株)製「オルガチックスZC−540」)、ジルコニウムビスアセチルアセトネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックスZC−550」)、ジルコニウムモノエチルアセトアセテート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックスZC−560」)、ジルコニウムアセテート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックスZC−115」)、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC−100」)、チタンテトラアセチルアセトネートオルガチックス(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC−401」)、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC−200」)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC−750」)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス ZC−700」)、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス ZC−540」)、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネート ビス(エチルアセトアセテート)(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス ZC−570」))、ジルコニウムジブトキシ ビス(エチルアセトアセテート)(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス ZC−580」)、アルミニウムトリスアセチルアセトネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス AL−80」)、チタンラクテートアンモニウム塩(マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC−300」)、チタンラクテート(マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC−310、315」)、チタントリエタノールアミネート(マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC−400」)、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス ZC−126が上げられ、これらの中でチタンラクテートアンモニウム塩(マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC−300」)、チタンラクテート(マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC−310、315」)、チタントリエタノールアミネート(マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC−400」)、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス ZC−126」が好ましい。
【0042】
〔カチオン性ポリマー〕
本開示に係る前処理液は、凝集剤として、特開2016−188345号公報に記載のカチオン性ポリマーを、多価金属化合物、有機酸又はその塩、及び、金属錯体よりなる群から選ばれた少なくとも一種の凝集剤と併用してもよい。
【0043】
〔含有量〕
凝集剤の含有量は、特に制限はないが、インクの凝集速度の観点から、前処理液の全質量に対し、3質量%〜40質量%であることが好ましく、5質量%〜30質量%であることがより好ましい。
また、上記樹脂粒子と上記凝集剤の含有量の質量比は、上記樹脂粒子:上記凝集剤=10:1〜1:1であることが好ましく、8:1〜1:1であることがより好ましく、5:1〜1:1であることが更に好ましい。
【0044】
<水>
前処理液は、水を含有する。
水の含有量は、前処理液の全質量に対して、好ましくは50質量%〜90質量%であり、より好ましくは60質量%〜80質量%である。
【0045】
<水溶性高分子化合物>
前処理液は、水溶性高分子化合物を含んでもよい。
水溶性高分子化合物としては特に限定はなく、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等の公知の水溶性高分子化合物を用いることができる。
また、水溶性高分子化合物としては、後述する特定高分子化合物や、特開2013−001854号公報の段落0026〜0080に記載された水溶性高分子化合物も好適である。
【0046】
水溶性高分子化合物の重量平均分子量には特に限定はないが、例えば10,000〜100,000とすることができ、好ましくは20,000〜80,000であり、より好ましくは30,000〜80,000である。
【0047】
また、前処理液中における水溶性高分子化合物の含有量には特に限定はないが、前処理液の全量に対し、0.1質量%〜10質量%が好ましく、0.1質量%〜4質量%がより好ましく、0.1質量%〜2質量%が更に好ましく、0.1質量%〜1質量%が更に好ましい。
含有量が0.1質量%以上であれば、インク滴の広がりをより促進でき、含有量が10質量%以下であれば、前処理液の増粘をより抑制できる。また、含有量が10質量%以下であれば、前処理液中の泡に起因する前処理液の塗布ムラをより抑制できる。
【0048】
水溶性高分子化合物としては、イオン性基(好ましくはアニオン性基)を有する親水性の構造単位を含む高分子化合物(以下、「特定高分子化合物」ともいう。)が好ましい。これにより、非浸透媒体に付与されたインク滴の広がりをより促進することができ、画像のざらつきが更に抑制される。
特定高分子化合物におけるイオン性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ボロン酸基、アミノ基、第四級アンモニウム基、又はこれらの塩等が挙げられる。中でも、好ましくは、カルボキシ、スルホン酸基、リン酸基、又はこれらの塩であり、より好ましくは、カルボキシ基、スルホン酸基、又はこれらの塩であり、更に好ましくは、スルホン酸基又はその塩である。
イオン性基(好ましくはアニオン性基)を有する親水性の構造単位としては、イオン性基(好ましくはアニオン性基)を有する(メタ)アクリルアミド化合物に由来する構造単位が好ましい。
水溶性高分子化合物中におけるイオン性基(好ましくはアニオン性基)を有する親水性の構造単位の含有量としては、水溶性高分子化合物の全質量中、例えば10質量%〜100質量%とすることができ、10質量%〜90質量%であることが好ましく、10質量%〜70質量%であることがより好ましく、10質量%〜50質量%であることが更に好ましく、20質量%〜40質量%であることが更に好ましい。
【0049】
特定高分子化合物としては、上述のイオン性基(好ましくはアニオン性基、特に好ましくはスルホン酸基)を有する親水性の構造単位の少なくとも一種と、疎水性の構造単位の少なくとも一種と、を含むことがより好ましい。疎水性の構造単位を含むことにより、特定高分子化合物が前処理液表面に更に存在しやすくなるため、非浸透媒体に付与されたインク滴の広がりがより促進され、画像のざらつきが更に抑制される。
疎水性の構造単位としては、(メタ)アクリル酸エステル(好ましくは、(メタ)アクリル酸の炭素原子数1〜4のアルキルエステル)に由来する構造単位が好ましい。
【0050】
特定高分子化合物における疎水性の構造単位の含有量は、特定高分子化合物の全質量中、例えば10質量%〜90質量%とすることができ、30質量%〜90質量%であることが好ましく、50質量%〜90質量%であることがより好ましく、60質量%〜80質量%であることが更に好ましい。
【0051】
<水溶性溶剤>
前処理液は、水溶性溶剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。
本明細書中において、「水溶性」とは、25℃の水100gに対して5g以上(より好ましくは10g以上)溶解する性質をいう。
水溶性溶剤としては、公知のものを特に制限なく用いることができる。
水溶性溶剤としては、例えば、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類;2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、4−メチル−1,2−ペンタンジオール等のアルカンジオールなどの多価アルコール類;特開2011−42150号公報の段落0116に記載の、糖類や糖アルコール類、ヒアルロン酸類、炭素原子数1〜4のアルキルアルコール類、グリコールエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン;等が挙げられる。
中でも、前処理液に含まれる成分の転写の抑制の観点から、ポリアルキレングリコール又はその誘導体であることが好ましく、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0052】
水溶性溶剤の前処理液における含有量としては、塗布性などの観点から、前処理液全体に対して3質量%〜20質量%であることが好ましく、5質量%〜15質量%であることがより好ましい。
【0053】
また、本開示において用いられる前処理液は、基材との密着性の観点から、溶解パラメータ(SP値)が13以下の水溶性有機溶剤を含まないか、又は、前処理液の全質量に対し、SP値が13以下の水溶性有機溶剤の含有量が0質量%を超え10質量%未満であることが好ましく、SP値が13以下の水溶性有機溶剤を含まないか、又は、前処理液の全質量に対し、SP値が13以下の水溶性有機溶剤の含有量が0質量%を超え5質量%未満であることがより好ましく、SP値が13以下の水溶性有機溶剤を含まないか、又は、前処理液の全質量に対し、SP値が13以下の水溶性有機溶剤の含有量が0質量%を超え2質量%未満であることが更に好ましく、SP値が13以下の水溶性有機溶剤を含まないことが特に好ましい。
本開示におけるSP値は、沖津法(沖津俊直著「日本接着学会誌」29(5)(1993))によって算出するものとする。具体的には、SP値は以下の式で計算されるものである。なお、ΔFは文献記載の値である。
SP値(δ)=ΣΔF(Molar Attraction Constants)/V(モル容積)
また、本開示におけるSP値の単位は(cal/cm
3)
1/2である。
【0054】
水溶性有機溶剤としては、例えば、イソペンチルアルコール(10)、1,3−ブチレングリコールジアセテート(10.1)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(10.2)、1−オクタノール(10.3)、トリエチレングリコール(10.3)、ジプイロピレングリコールモノメチルエーテル(10.4)、シクロペンタノン(10.4)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(10.5)、エチルセルソルブ(10.5)、1−ブチルアルコール(10.6)、N,N−ジメチルアセトアミド(10.8)、1−ペンタノール(10.9)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(10.9)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(10.9)、3−メトキシブタノール(10.9)、プロピレングリコールフェニルエーテル(11.1)、1−ブタノール(11.4)、シクロヘキサノール(11.4)、エチレングリコールモノブチルエーテル(11.5)、イソプロピルアルコール(11.5)、n−プロピルアルコール(11.8)、N,N−ジメチルホルムアミド(11.9)、N−エチルホルムアミド(11.9)、ベンジルアルコール(12.1)、ジエチレングリコール(12.1)、トリオキシプロピレングリコール(12.1)、エタノール(12.7)、ポリオキシプロピテングリセリルエーテル類(10.6〜12.9)、などが挙げられる。なお、各化合物のカッコ内の数値はSP値を表し、単位は(cal/cm
3)
0.5である。
【0055】
<界面活性剤>
前処理液は、界面活性剤を含んでもよい。
界面活性剤は、表面張力調整剤又は消泡剤として用いることができる。表面張力調整剤又は消泡剤としては、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ベタイン界面活性剤等が挙げられる。中でも、インクの凝集速度の観点から、ノニオン性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤が好ましい。
【0056】
界面活性剤としては、特開昭59−157636号公報の第37〜38頁及びリサーチディスクロージャーNo.308119(1989年)に界面活性剤として挙げた化合物も挙げられる。また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載のフッ素(フッ化アルキル系)系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤等も挙げられる。
【0057】
前処理液における界面活性剤の含有量としては特に制限はないが、前処理液の表面張力が50mN/m以下となるような含有量であることが好ましく、20mN/m〜50mN/mとなるような含有量であることがより好ましく、30mN/m〜45mN/mとなるような含有量であることが更に好ましい。
【0058】
<その他の添加剤>
前処理液は、必要に応じ、上記以外のその他の成分を含んでいてもよい。
前処理液に含有され得るその他の成分としては、固体湿潤剤、コロイダルシリカ、無機塩、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、粘度調整剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0059】
<前処理液の物性>
前処理液は、インクの凝集速度の観点から、25℃におけるpHが0.1〜3.5であることが好ましい。
前処理液のpHが0.1以上であると、非浸透媒体のザラツキがより低減され、画像部の密着性がより向上する。
前処理液のpHが3.5以下であると、凝集速度がより向上し、非浸透媒体上におけるインクによるドット(インクドット)の合一がより抑制され、画像のザラツキがより低減される。
前処理液のpH(25℃)は、0.2〜2.0がより好ましい。
【0060】
前処理液の粘度としては、インクの凝集速度の観点から、0.5mPa・s〜10mPa・sの範囲が好ましく、1mPa・s〜5mPa・sの範囲がより好ましい。粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて25℃の条件下で測定されるものである。
【0061】
前処理液の25℃における表面張力としては、60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m〜50mN/mであることがより好ましく、30mN/m〜45mN/mであることが更に好ましい。前処理液の表面張力が範囲内であると、非浸透媒体と前処理液との密着性が向上する。前処理液の表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学(株)製)を用い、プレート法によって測定されるものである。
【0062】
(印刷用基材)
本開示に係る印刷用基材は、非浸透媒体、並びに、樹脂と、多価金属化合物、有機酸又はその塩、及び、金属錯体よりなる群から選ばれた少なくとも一種の凝集剤と、を含み、上記非浸透媒体上に位置する前処理層を備え、上記前処理層のガラス転移温度が30℃以上であり、かつ、上記前処理層の表面の水接触角が20°以上であることが好ましい。
【0063】
上記前処理層と非浸透媒体とは、直接接していることが好ましい。
上記前処理層は、例えば、上記前処理液の乾燥物として得られる。本開示において、ある組成物の乾燥物とは、上記組成物に含まれる揮発性成分(水、有機溶剤等)の少なくとも一部を除去したものをいう。本開示に係る印刷用基材を製造するための製造方法の好適な一例としては、後述する本開示に係る印刷用基材の製造方法が挙げられる。
【0064】
本開示において用いられる前処理層のガラス転移温度は、30℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度の上限は特に制限はないが、上限としては120℃が挙げられる。
また、前処理層に含まれる成分の転写抑制、及び、前処理層と非浸透媒体の密着性の観点から30℃〜80℃であることが好ましく、35℃〜60℃がより好ましい。
本開示において、前処理層のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定することができる。求め方は上述と同じで前処理層そのものを用いてDSC測定を行うことによりガラス転移温度が求められる。
本開示において用いられる前処理層の前処理層の表面の水接触角は、20°以上が好ましい。水接触角の上限は特に制限はないが、上限としては100°が挙げられる。
また、前処理層に含まれる成分の転写抑制と、及び、前処理層と非浸透媒体の密着性の観点から20°〜90°であることが好ましく、30°〜80°がより好ましい。
本開示において、前処理層の表面Cの水接触角は、下記の方法により測定する。
前処理層表面に対し接触角計ドロップマスターDM700(協和界面科学(株)製)を用いて、JIS R3257:1999に記載の静的法に準拠し、1分後の接触角を測定する。液滴量は2μLとする。
本開示に係る印刷用基材おいて、上記前処理層は、上記樹脂として、ガラス転移温度が30℃以上であり、かつ、水接触角が20°以上である樹脂を含むことが好ましい。上記樹脂は、上述の特定樹脂を含む粒子により導入されることが好ましい。
本開示に係る印刷用基材における上記非浸透媒体、並びに、上記前処理層における特定樹脂を含む粒子、及び上記凝集剤は、上述の本開示に係る前処理液における上記非浸透媒体、並びに、上記特定樹脂を含む粒子、及び上記凝集剤と同義であり、好ましい態様も同様である。
また、本開示に係る印刷用基材は、上述の本開示に係る前処理液に含まれる上記水溶性高分子化合物、上記界面活性剤、上記その他の添加剤を、上記前処理層に更に含んでもよい。
「非浸透媒体上に含む」又は、「前処理層に含む」とは、非浸透媒体上又は前処理層の少なくとも一部に含まれていればよく、また、非浸透媒体がシート状の媒体であれば、少なくとも一方の面上に含まれていればよい。
【0065】
本開示に係る印刷用基材における、非浸透媒体上の上記特定樹脂を含む粒子の含有量は、0.01g/m
2〜1.0g/m
2であることが好ましく、0.03g/m
2〜0.5g/m
2であることがより好ましい。
本開示に係る印刷用基材における、非浸透媒体上の上記凝集剤の含有量は、0.01g/m
2〜1.0g/m
2であることが好ましく、0.03g/m
2〜0.5g/m
2であることがより好ましい。
本開示に係る印刷用基材における、非浸透媒体上に上記水溶性高分子化合物を含む場合、その含有量は、0.01g/m
2〜1.0g/m
2であることが好ましく、0.03g/m
2〜0.5g/m
2であることがより好ましい。
本開示に係る印刷用基材における、非浸透媒体上に上記界面活性剤を含む場合、その含有量は、1mg/m
2〜0.3g/m
2であることが好ましく、5mg/m
2〜0.1g/m
2であることがより好ましい。
また、本開示に係る印刷用基材における、非浸透媒体上の上記樹脂粒子と上記凝集剤の含有量の質量比は、上記樹脂粒子:上記凝集剤=10:1〜1:1であることが好ましく、8:1〜1:1であることがより好ましく、5:1〜1:1であることが更に好ましい。
【0066】
(印刷用基材の製造方法)
本開示に係る印刷用基材の製造方法は、非浸透媒体に対し、本開示に係る前処理液を付与する前処理工程を有する。
【0067】
<前処理工程>
〔前処理液の付与方法〕
前処理液の付与は、塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行なうことができる。塗布法としては、バーコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等を用いた公知の塗布方法によって行なうことができる。インクジェット法の詳細については、後述する画像記録工程におけるインクジェット法と同様である。
【0068】
本開示における一実施形態としては、非浸透媒体上に、インクを付与する前に、予めインク中の成分を凝集させるため前処理液を付与しておき、非浸透媒体上に付与された前処理液に接触するようにインクを付与して画像化する態様が挙げられる。これにより、インクジェット記録の高速化、高画質化が達成されやすい。
【0069】
前処理液の付与量としては、インクを凝集可能であれば特に制限はないが、好ましくは、前処理液の乾燥後の付与量が0.05g/m
2以上となる量とすることができる。
中でも、前処理液の乾燥後の付与量が0.05g/m
2〜1.0g/m
2となる量が好ましい。
前処理液の乾燥後の付与量が0.05g/m
2以上であれば、前処理液に含まれる成分の転写が抑制されやすい。また、前処理液の乾燥後の付与量が1.0g/m
2以下であれば、非浸透媒体と特定樹脂との密着性に優れやすく、画像の剥離が起こりにくい。
【0070】
また、前処理工程において、前処理液の付与前に基材を加熱してもよい。
加熱温度としては、基材の種類や前処理液の組成に応じて適宜設定すればよいが、基材の温度を20℃〜50℃とすることが好ましく、25℃〜40℃とすることがより好ましい。
【0071】
<表面処理工程>
本開示に係る印刷用基材の製造方法は、非浸透媒体を表面処理する工程(「表面処理工程」ともいう。)を更に含んでもよい。
表面処理工程としては、上述の樹脂基材に対する表面処理等が挙げられる。
【0072】
(画像記録方法)
本開示に係る画像記録方法の第一の態様は、非浸透媒体に対し、本開示に係る前処理液を付与する前処理工程と、上記前処理液が付与された面に、着色剤及び水を含むインク組成物をインクジェット法により吐出して画像を記録する画像記録工程と、を有する。
本開示に係る画像記録方法の第二の態様は、本開示に係る印刷用基材を用い、上記印刷用基材における、上記樹脂粒子と、上記凝集剤と、を含む面に、着色剤及び水を含むインク組成物をインクジェット法により吐出して画像を記録する画像記録工程を有する。
本開示に係る画像記録方法の第一の態様における前処理工程は、上述の本開示に係る印刷用基材の製造方法における前処理工程と同義であり、好ましい態様も同様である。
本開示に係る画像記録方法の第二の態様における印刷用基材としては、上述の本開示に係る印刷用基材の製造方法により製造した印刷用基材を用いてもよいし、購入等の手段により本開示に係る印刷用基材を入手して用いてもよい。
以下、本開示に係る画像記録方法の第一の態様に含まれる画像記録工程及び第二の態様に含まれる画像記録工程について説明する。
【0073】
<画像記録工程>
本開示に係る画像記録方法の第一の態様は、上記非浸透媒体の上記前処理液が付与された面に、着色剤及び水を含むインク組成物をインクジェット法により吐出して画像を記録する画像記録工程を含む。
画像記録工程は、インク組成物(単に「インク」ともいう。)を非浸透媒体にインクジェット法により付与する工程である。
本工程では、非浸透媒体上に選択的にインクを付与でき、所望の可視画像を形成できる。
【0074】
インクジェット法による画像形成は、エネルギーを供与することにより、所望とする非浸透媒体上にインクを吐出し、着色画像を形成する。なお、本開示に好ましいインクジェット法として、特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105に記載の方法が適用できる。
【0075】
インクジェット法には、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。インクジェット法としては、特に、特開昭54−59936号公報に記載の方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット法を有効に利用することができる。
【0076】
インクジェットヘッドとしては、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを非浸透媒体の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式と、非浸透媒体の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とがある。ライン方式では、記録素子の配列方向と交差する方向に非浸透媒体を走査させることで非浸透媒体の全面に画像記録を行なうことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、キャリッジの移動と非浸透媒体との複雑な走査制御が不要になり、非浸透媒体だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。本開示に係る画像記録方法は、これらのいずれにも適用可能であるが、一般にダミージェットを行なわないライン方式に適用した場合に、吐出精度及び画像の耐擦性の向上効果が大きい。
【0077】
インクジェットヘッドから吐出されるインクの液滴量としては、高精細な画像を得る観点で、1pL(ピコリットル)〜10pLが好ましく、1.5pL〜6pLがより好ましい。また、画像のムラ、連続諧調のつながりを改良する観点で、異なる液適量を組み合わせて吐出することも有効である。
【0078】
〔インク組成物〕
以下、本開示において用いられるインク組成物について説明する。
本開示において用いられるインク組成物は、着色剤及び水を含み、水性インク組成物であることが好ましい。本開示において、水性インク組成物とは、水を、インクの全質量に対し、50質量%以上含むインク組成物をいう。
また、本開示におけるインク組成物は、有機溶剤の含有量が、インク組成物の全質量に対し、50質量%未満であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
更に、本開示におけるインク組成物は、重合性化合物を含まないか、重合性化合物の含有量が0質量%を超え、10質量%以下であることが好ましく、重合性化合物を含まないことがより好ましい。
重合性化合物としては、カチオン性重合性化合物及びラジカル重合性化合物が挙げられる。
【0079】
−着色剤−
着色剤としては、特に限定されず、インクジェット用インクの分野で公知の着色剤が使用可能であるが、有機顔料又は無機顔料が好ましい。
【0080】
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが特に好ましい。
着色剤としては、特開2009−241586号公報の段落0096〜0100に記載の着色剤が好ましく挙げられる。
【0081】
着色剤の含有量としては、インク組成物の全質量に対して、1質量%〜25質量%が好ましく、2質量%〜20質量%がより好ましく、5質量%〜20質量%が更に好ましく、5質量%〜15質量%が特に好ましい。
【0082】
−水−
インク組成物は、水を含有する。
水の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは50質量%〜90質量%であり、より好ましくは60質量%〜80質量%である。
【0083】
−分散剤−
本開示において用いられるインク組成物は、上記着色剤を分散するための分散剤を含有してもよい。分散剤としては、ポリマー分散剤、又は低分子の界面活性剤型分散剤のいずれでもよい。また、ポリマー分散剤は、水溶性の分散剤、又は非水溶性の分散剤のいずれでもよい。
分散剤としては、例えば、特開2016−145312号公報の段落0080〜0096に記載の分散剤が好ましく挙げられる。
【0084】
着色剤(p)と分散剤(s)との混合質量比(p:s)としては、1:0.06〜1:3の範囲が好ましく、1:0.125〜1:2の範囲がより好ましく、更に好ましくは1:0.125〜1:1.5である。
【0085】
−樹脂粒子−
本開示におけるインク組成物は、樹脂粒子の少なくとも1種を含有してもよい。樹脂粒子を含有することにより、主にインク組成物の記録媒体(非浸透媒体)への定着性及び耐擦過性をより向上させることができる。また、樹脂粒子は、既述の凝集剤と接触した際に凝集又は分散不安定化してインク組成物を増粘させることにより、インク組成物、すなわち画像を固定化させる機能を有する。このような樹脂粒子は、水及び含水有機溶媒に分散されているものが好ましい。
樹脂粒子としては、例えば、特開2016−188345号公報の段落0062〜0076に記載の樹脂粒子が好ましく挙げられる。
得られる画像の耐擦性の観点から、インク組成物に含まれる樹脂粒子のTgは、上述の特定樹脂のTgよりも高いことが好ましい。
【0086】
−水溶性有機溶媒−
本開示に用いられるインク組成物は、水溶性有機溶媒の少なくとも1種を含有することが好ましい。水溶性有機溶媒は、乾燥防止又は湿潤の効果を得ることができる。乾燥防止には、噴射ノズルのインク吐出口においてインクが付着乾燥して凝集体ができ、目詰まりするのを防止する乾燥防止剤として用いられ、乾燥防止や湿潤には、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶媒が好ましい。
また、上記水溶性有機溶媒の1気圧(1013.25hPa)における沸点は、80℃〜300℃が好ましく、120℃〜250℃がより好ましい。
【0087】
乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶媒であることが好ましい。このような水溶性有機溶媒の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類が挙げられる。
このうち、乾燥防止剤としては、グリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールが好ましい。
乾燥防止剤は、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。乾燥防止剤の含有量は、インク組成物中に10〜50質量%の範囲とするのが好ましい。
【0088】
水溶性有機溶媒は、上記以外にも粘度の調整のために用いられる。粘度の調整に用いることができる水溶性有機溶媒の具体例としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。この場合も、水溶性有機溶媒は1種単独で用いるほか、2種以上を併用してもよい。
【0089】
−その他の添加剤−
本開示において用いられるインク組成物は、上記成分以外にその他の添加剤を用いて構成することができる。その他の添加剤としては、例えば、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0090】
本開示に係る画像記録方法の第二の態様における画像記録工程は、上記印刷用基材における、上記特定樹脂を含む粒子と、上記凝集剤と、を含む面に、着色剤及び水を含むインク組成物をインクジェット法により吐出して画像を記録する画像記録工程を含む。
本開示に係る画像記録方法の第二の態様における画像記録工程の詳細は、本開示に係る画像記録方法の第一の態様における画像記録工程の詳細と同様である。
【0091】
<乾燥工程>
本開示に係る画像記録方法の第一の態様は、乾燥工程を含んでもよい。
乾燥工程は、前処理工程後画像記録工程前、及び、画像記録工程後のいずれか一方又は両方のタイミングで行うことが可能である。
上記乾燥としては、加熱乾燥が好ましい。
非浸透媒体と前処理液の密着性の観点から、画像の加熱温度は、前処理液に含まれる特定樹脂のTgよりも高い温度であることが好ましい。
インク組成物が樹脂粒子を含む場合、画像の耐擦性の観点から、画像の加熱温度は、樹脂粒子のTgよりも低い温度であることが好ましい。
また、インク組成物が樹脂粒子を含む場合、非浸透媒体と前処理液の密着性と、画像の耐擦性の両立の観点から、画像の加熱温度は、前処理液に含まれる特定樹脂のTgよりも高く、かつ、インク組成物に含まれる樹脂粒子のTgよりも低い温度であることが好ましい。
画像の加熱乾燥を行うための手段としては、ヒータ等の公知の加熱手段、ドライヤ等の公知の送風手段、及び、これらを組み合わせた手段が挙げられる。
画像の加熱乾燥を行うための方法としては、例えば、記録媒体(非浸透媒体)の画像形成面とは反対側からヒータ等で熱を与える方法、記録媒体の画像形成面に温風又は熱風をあてる方法、記録媒体の画像形成面又は画像形成面とは反対側から、赤外線ヒータで熱を与える方法、これらの複数を組み合わせた方法、等が挙げられる。
【0092】
画像の加熱乾燥時の加熱温度は、60℃以上が好ましく、65℃以上がより好ましく、70℃以上が特に好ましい。
加熱温度の上限には特に制限はないが、上限としては、例えば100℃が挙げられ、90℃が好ましい。
画像の加熱乾燥の時間には特に制限はないが、3秒〜60秒が好ましく、5秒〜30秒がより好ましく、5秒〜20秒が特に好ましい。
【0093】
また、本開示に係る画像記録方法の第二の態様は、画像記録工程後に乾燥工程を含んでもよい。上記乾燥工程の詳細は、本開示に係る画像記録方法の第一の態様に含まれる乾燥工程の詳細と同様である。
【0094】
<インクジェット記録装置>
本開示に係る画像記録方法に用いることができる画像形成装置には、特に制限はなく、特開2010−83021号公報、特開2009−234221号公報、特開平10−175315号公報等に記載の公知の画像形成装置を用いることができる。
【0095】
以下、本開示に係る画像記録方法の第一の態様に用いることができる画像形成装置の一例について、
図1を参照して説明する。
図1に記載の装置には、前処理液の付与を行う手段が記載されているが、これらの手段を用いないか、又は、これらの手段が省略された装置を用いることにより、本開示に係る画像記録方法の第二の態様を実施することも可能である。
図1は、インクジェット記録装置全体の構成例を示す概略構成図である。
【0096】
図1に示すように、インクジェット記録装置は、記録媒体(非浸透媒体)の供給部11から搬送方向(図中の矢印方向)に向かって順次、前処理液を塗布するローラ材として、アニロックスローラ20及びこれに当接する塗布ローラ22を備えた前処理液付与部12と、付与された前処理液を乾燥させる加熱手段(不図示)を備えた前処理液乾燥ゾーン13と、各種インクを吐出するインク吐出部14と、吐出されたインクを乾燥させるインク乾燥ゾーン15とが配設されている。
【0097】
このインクジェット記録装置に供給された記録媒体は、記録媒体が装填されたケースから記録媒体を供給する供給部、記録媒体がロール状に巻きつけられたロールから記録媒体を供給する供給部などの供給部11から、搬送ローラ41,42,43,44,45,46によって、前処理液付与部12、前処理液乾燥ゾーン13、インク吐出部14、インク乾燥ゾーン15と順に送られて集積部に集積される。集積部16においては、記録媒体をロール状に巻き取ってもよい。搬送は、搬送ローラによる方法のほか、ドラム状部材を用いたドラム搬送方式やベルト搬送方式、ステージを用いたステージ搬送方式などを採用してもよい。
【0098】
複数配置された搬送ローラ41,42,43,44,45,46のうち、少なくとも1つのローラはモータ(不図示)の動力が伝達された駆動ローラとすることができる。モータで回転する駆動ローラを定速回転することにより、記録媒体は所定の方向に所定の搬送量で搬送されるようになっている。
【0099】
前処理液付与部12には、前処理液が貯留された貯留皿に一部を浸漬させて配されたアニロックスローラ20と、アニロックスローラ20に当接された塗布ローラ22と、が設けられている。アニロックスローラ20は、記録媒体の記録面と対向配置された塗布ローラ22に予め定められた量の前処理液を供給するためのローラ材である。アニロックスローラ20から適量が供給された塗布ローラ22によって記録媒体の上に前処理液が均一に塗布されるようになっている。
塗布ローラ22は、対向ローラ24と対をなして記録媒体を搬送可能に構成されており、記録媒体は、塗布ローラ22と対向ローラ24との間を通って前処理液乾燥ゾーン13に送られる。
【0100】
前処理液付与部12の記録媒体搬送方向の下流側には、前処理液乾燥ゾーン13が配置されている。前処理液乾燥ゾーン13は、ヒータ等の公知の加熱手段やドライヤ等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段を用いて構成することができる。加熱手段は、記録媒体の前処理液付与面とは反対側(例えば、記録媒体を自動搬送する場合は記録媒体を載せて搬送する搬送機構の下方)にヒータ等の発熱体を設置する方法や、記録媒体の前処理液付与面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられ、これらの複数を組み合わせて加熱してもよい。
【0101】
また、記録媒体の種類(材質、厚み等)や環境温度等によって、記録媒体の表面温度は変化するため、記録媒体の表面温度を計測する計測部と計測部で計測された記録媒体の表面温度の値を加熱制御部にフィードバックする制御機構を設けて温度制御しながら前処理液を付与することが好ましい。記録媒体の表面温度を計測する計測部としては、接触又は非接触の温度計が好ましい。
また、溶媒除去ローラ等を用いて溶媒除去を行なってもよい。他の態様として、エアナイフで余剰な溶媒を記録媒体から取り除く方式も用いられる。
【0102】
インク吐出部14は、前処理液乾燥ゾーン13の記録媒体搬送方向下流側に配置されている。インク吐出部14には、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、特色インク(A)、及び特色インク(B)の各色インクを貯留するインク貯留部の各々と繋がる記録用ヘッド(インク吐出用ヘッド)30K、30C、30M、30Y、30A、及び30Bが配置されている。不図示の各インク貯留部には、各色相に対応する顔料と樹脂粒子と水溶性溶剤と水とを含有するインクが貯留されており、画像の記録に際して必要に応じて各インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Y、30A、及び30Bに供給されるようになっている。
上記特色インク(A)、及び特色インク(B)としては、ホワイトインク、オレンジインク、グリーンインク、パープルインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク等が挙げられる。
本開示に係るインクジェット記録装置では、インク吐出用ヘッド30A及び30Bは、省略されていてもよい。また、インク吐出用ヘッド30A及び30Bに加え、その他の特色インク吐出用ヘッドを備えていてもよい。
また、インク吐出用ヘッド30A及び30Bの位置は、
図1中では便宜上イエロー(Y)インク吐出用ヘッド30Yの後に記載してあるが、特に限定されず、特色インクの明度等を考慮して適宜設定すればよい。
例えば、イエローインク吐出用ヘッド30Yとマゼンタインク吐出用ヘッド30Mの間に位置する態様や、マゼンタインク吐出用ヘッド30Mとシアンインク吐出用ヘッド30Cの間に位置する態様等が考えられる。
また、30Bはホワイトインク吐出用ヘッドであることが好ましい。
【0103】
インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Y、30A、及び30Bは、記録媒体の記録面と対向配置された吐出ノズルから、それぞれ画像に対応するインクを吐出する。これにより、記録媒体の記録面上に各色インクが付与され、カラー画像が記録される。
【0104】
インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Y、30A、及び30Bはいずれも、記録媒体上に記録される画像の最大記録幅(最大記録幅)にわたって多数の吐出口(ノズル)が配列されたフルラインヘッドとなっている。記録媒体の幅方向(記録媒体搬送面において搬送方向と直交する方向)に短尺のシャトルヘッドを往復走査しながら記録を行なうシリアル型のものに比べて、記録媒体に高速に画像記録を行なうことができる。本開示においては、シリアル型での記録、又は比較的高速記録が可能な方式、例えば1回の走査で1ラインを形成するシングルパス方式での記録のいずれを採用してもよいが、本開示に係る画像記録方法によればシングルパス方式でも再現性の高い高品位の画像が得られる。
【0105】
ここでは、インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Y、30A、及び30Bは、全て同一構造になっている。
【0106】
前処理液の付与量とインクの付与量とは、必要に応じて調節することが好ましい。例えば、記録媒体に応じて、前処理液とインクとが混合してできる凝集物の粘弾性等の物性を調節する等のために、前処理液の付与量を変えてもよい。
【0107】
インク乾燥ゾーン15は、インク吐出部14の記録媒体搬送方向下流側に配置されている。インク乾燥ゾーン15は、前処理液乾燥ゾーン13と同様に構成することができる。
【0108】
また、インクジェット記録装置には、供給部11から集積部16までの搬送路に、記録媒体に加熱処理を施す加熱手段を配置することもできる。例えば、前処理液乾燥ゾーン13の上流側や、インク吐出部14とインク乾燥ゾーン15との間、などの所望の位置に加熱手段を配置することで、記録媒体を所望の温度に昇温させることにより、乾燥、定着を効果的に行なうようにすることが可能である。
【0109】
(インクセット)
本開示に係るインクセットの第一の態様は、着色剤及び水を含むインク組成物、並びに、本開示に係る非浸透媒体印刷用前処理液を含むインクセットである。
本開示に係るインクセットの第一の態様におけるインク組成物は、上述の本開示に係る画像記録方法において用いられるインク組成物と同義であり、好ましい態様も同様である。
本開示に係るインクセットの第二の態様は、着色剤及び水を含むインク組成物、並びに、ガラス転移温度が30℃以上であり、かつ、水接触角が20°以上である樹脂粒子と、多価金属化合物、有機酸又はその塩、及び、金属錯体よりなる群から選ばれる少なくとも一種の凝集剤と、水と、を含み、溶解パラメータが13以下の水溶性有機溶剤を含まないか、又は、溶解パラメータが13以下の水溶性有機溶剤の含有量が0質量%を超え10質量%未満である前処理液、を含む。
本開示に係るインクセットの第二の態様におけるインク組成物は、上述の本開示に係る画像記録方法において用いられるインク組成物と同義であり、好ましい態様も同様である。
本開示に係るインクセットの第二の態様における前処理液は、溶解パラメータが13以下の水溶性有機溶剤を含まないか、又は、溶解パラメータが13以下の水溶性有機溶剤の含有量が0質量%を超え10質量%未満であり、かつ、非浸透媒体印刷用に用途が限定されない以外は、上述の本開示に係る画像記録方法において用いられる前処理液と同義であり、好ましい態様も同様である。
溶解パラメータが13以下の水溶性有機溶剤の詳細については、本開示に係る画像記録方法において用いられる前処理液における溶解パラメータが13以下の水溶性有機溶剤と同義であり、好ましい態様も同様である。
【実施例】
【0110】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0111】
(前処理液及びインク組成物の準備)
<前処理液の調製>
下記表1に記載の組成に従って各成分を混合し、各実施例又は比較例における前処理液1〜17及び比較用前処理液1〜8を調製した。
表1中、各成分の添加量(質量%)は、各成分の固形分量を表しており、表1に記載の成分以外の成分として、合計量が100質量%となるようにイオン交換水を添加した。
また、各特定樹脂を含む粒子に含まれる特定樹脂について、ガラス転移温度(Tg)及び接触角を上述の方法により測定し、表1に記載した。
表1中の「SP値が13以下の水溶性有機溶剤」の欄の「−」の記載は、該当する溶剤を添加していないことを示す。
また、表1中の質量比(特定樹脂を含む粒子:凝集剤)の欄の記載は、特定樹脂を含む粒子と凝集剤の含有量の質量比(特定樹脂を含む粒子:凝集剤)を表している。
【0112】
【表1】
【0113】
表1に記載の略語の詳細は下記の通りである。
〔特定樹脂を含む粒子〕
・ペスレジンA124GP(高松油脂(株)製、ポリエステル樹脂、体積平均粒径85nm)
・Eastek1100(Eastman Chemical社製、ポリエステル樹脂、体積平均粒径30nm)
・Eastek1200(Eastman Chemical社製、ポリエステル樹脂、体積平均粒径30nm)
・プラスコートZ687(互応化学工業(株)製、ポリエステル樹脂、体積平均粒径30nm)
・プラスコートZ565(互応化学工業(株)製、ポリエステル樹脂、体積平均粒径30nm)
・プラスコートRZ570(互応化学工業(株)製、ポリエステル樹脂、体積平均粒径25nm)
・プラスコートZ690(互応化学工業(株)製、ポリエステル樹脂、体積平均粒径35nm)
・ペスレジンA645GH(高松油脂(株)製、ポリエステル樹脂、体積平均粒径35nm)
・MD1200(バイロナールMD1200、東洋紡(株)製、ポリエステル樹脂、体積平均粒径100nm)
・EM57DOC(ダイセルファインケム社製、アクリル樹脂、体積平均粒径70nm)
・P−1(下記合成方法により得られた樹脂粒子P−1、アクリル樹脂、体積平均粒径60nm)
・プラスコートZ221(互応化学工業(株)製、ポリエステル樹脂、体積平均粒径15nm)
・プラスコートZ446(互応化学工業(株)製、ポリエステル樹脂、体積平均粒径15nm)
・プラスコートZ3310(互応化学工業(株)製、ポリエステル樹脂、体積平均粒径30nm)
・MD1480(バイロナールMD1480、東洋紡(株)製、ポリエステル樹脂、体積平均粒径100nm)
・MD1930(バイロナールMD1930、東洋紡(株)製、ポリエステル樹脂、体積平均粒径100nm)
・P−2(下記合成方法により得られた樹脂粒子P−2、体積平均粒径60nm)
・SF650(スーパーフレックス650、第一工業製薬(株)製、ポリウレタン樹脂、体積平均粒径15nm)
【0114】
(樹脂粒子P−1の合成)
冷却管を備えた2000mLの三口フラスコに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(62質量%水溶液、東京化成工業社製)2gと水586gを加え、窒素雰囲気下で90℃に加熱した。加熱された三口フラスコ中の混合溶液に、水60gにアクリルアミド−2−プロパンスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液(Aldrich社製)40.2gを溶解した溶液Aと、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(東京化成工業社製)43.9g及びスチレン(和光純薬工業社製)118.9g、1−ドデカンチオール(東京化成工業社製)0.84g、を混合した溶液Bと、水55gに過硫酸ナトリウム(和光純薬工業社製)10.1gを溶解した溶液Cと、を6時間かけて同時に滴下した。滴下終了後、さらに3時間反応させることにより、水不溶性樹脂粒子の水分散液(水不溶性樹脂粒子の固形分量:20.2質量%)913gを合成した。
水分散液中の水不溶性樹脂粒子の体積平均粒子径は50nmであった。また、水不溶性樹脂粒子の水不溶性樹脂の重量平均分子量は、38000であった。
【0115】
(樹脂粒子P−2の合成)
撹拌装置、窒素導入管、還流冷却装置、温度計を備えたフラスコに、界面活性剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸 2質量部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.5質量部、及び、イオン交換水 100.0質量部を添加した。
その後、撹拌しながら窒素雰囲気下で90℃まで昇温し、ドデシルベンゼンスルホン酸 2質量部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.5質量部、メタクリル酸メチル 71.0質量部、アクリル酸−2−エチルヘキシル 6.0質量部、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸 18.0質量部、及び、イオン交換水 100質量部を混合した溶液と、過硫酸カリウム1.0質量部をイオン交換水20.0質量部に溶解した液体とを、それぞれ3時間かけて上記フラスコ内に滴下した。その後、2時間撹拌した後、適量のイオン交換水を加え、固形分25.0質量%の樹脂粒子P−2を含む樹脂粒子分散液を得た。
【0116】
〔凝集剤〕
・マロン酸(和光純薬工業(株)製)
・酢酸(和光純薬工業(株)製)
・CaCl
2(和光純薬工業(株)製)
・TC−310:オルガチックスTC−310(マツモトファインケミカル(株)製、チタンラクテート)
【0117】
〔SP値13を超える水溶性有機溶剤〕
・PG:プロピレングリコール(和光純薬工業(株)社製、SP値=17.2(cal/cm
3)
1/2)
【0118】
〔SP値13以下の水溶性有機溶剤〕
・EGB:ジエチレングリコールモノブチルエーテル(東京化成工業(株)製、SP値=10.5(cal/cm
3)
1/2)
【0119】
〔消泡剤〕
・TSA−739:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、TSA−739(15%)、エマルジョン型シリコーン消泡剤
なお、表1中に記載の、上記消泡剤の含有量「0.01%」は、消泡剤の固形分量として0.01質量%を意味している。
【0120】
<インク組成物の調製>
下記「マゼンタインクの組成」に記載の各成分を混合し、マゼンタインクを調製した。
また、下記「シアンインクの組成」に記載の各成分を混合し、シアンインクを調製した。
【0121】
<マゼンタインクの組成>
・Projet Magenta APD1000(FUJIFILM Imaging Colorants社製、マゼンタ顔料分散液、顔料濃度:14%):30質量%
・PG(プロピレングリコール):20.0質量%
・オルフィンE1010(界面活性剤、日信化学工業(株)製):1.0質量%
・下記のポリマー粒子B−01(樹脂粒子):8質量%
・イオン交換水:全体で100質量%としたときの残量
【0122】
<シアンインクの組成>
・Projet Cyan APD1000(FUJIFILM Imaging Colorants社製、シアン顔料分散液、顔料濃度:12%):20質量%
・PG(プロピレングリコール;水溶性溶剤):20.0質量%
・オルフィンE1010(界面活性剤、日信化学工業(株)製):1.0質量%
・下記のポリマー粒子B−01(樹脂粒子)… 8質量%
・イオン交換水:全体で100質量%としたときの残量
【0123】
〔ポリマー粒子B−01の合成〕
ポリマー粒子B−01は、以下のようにして作製した。
撹拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン560.0gを仕込んで87℃まで昇温した。次いで反応容器内の還流状態を保ちながら(以下、反応終了まで還流状態を保った)、反応容器内のメチルエチルケトンに対し、メチルメタクリレート220.4g、イソボルニルメタクリレート301.6g、メタクリル酸58.0g、メチルエチルケトン108g、及び「V−601」(和光純薬工業(株)製の重合開始剤;ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート))2.32gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、1時間撹拌した後に、この1時間撹拌後の溶液に対し、下記工程(1)の操作を行った。
工程(1) … 「V−601」1.16g及びメチルエチルケトン6.4gからなる溶液を加え、2時間撹拌を行った。
【0124】
続いて、上記工程(1)の操作を4回繰り返し、次いで、さらに「V−601」1.16g及びメチルエチルケトン6.4gからなる溶液を加えて3時間撹拌を続けた(ここまでの操作を、「反応」とする)。
反応終了後、溶液の温度を65℃に降温し、イソプロパノール163.0gを加えて放冷することにより、メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸(=38/52/10[質量比])共重合体を含む重合溶液(固形分濃度41.0%)を得た。
上記共重合体は、重量平均分子量(Mw)が63000であり、酸価が65.1(mgKOH/g)であった。
【0125】
次に、得られた重合溶液317.3g(固形分濃度41.0%)を秤量し、ここに、イソプロパノール46.4g、20%無水マレイン酸水溶液1.65g(水溶性酸性化合物、共重合体に対してマレイン酸として0.3%相当)、及び2モル/LのNaOH水溶液40.77gを加え、反応容器内の液体の温度を70℃に昇温した。
次に、70℃に昇温された溶液に対し、蒸留水380gを10mL/分の速度で滴下し、水分散化を行った(分散工程)。
その後、減圧下、反応容器内の液体の温度を70℃で1.5時間保つことにより、イソプロパノール、メチルエチルケトン、及び蒸留水を合計で287.0g留去した(溶剤除去工程)。得られた液体に対し、プロキセルGXL(S)(アーチ・ケミカルズ・ジャパン(株)製)を0.278g(ポリマー固形分に対してベンゾイソチアゾリン−3−オンとして440ppm)添加した。
得られた液体を、1μmのフィルターでろ過し、ろ液を回収することにより、固形分濃度26.5%の自己分散性ポリマー粒子B−01の水性分散物を得た。
【0126】
(評価)
<前処理液に含まれる成分の転写(ブロッキング)の評価>
各実施例又は比較例において、表2に記載の樹脂基材(幅500mm、長さ2000m)を500mm/秒で搬送し、表2に記載の前処理液をワイヤーバーコーターで約1.7g/m
2(液体塗布量)となるように塗布し、80℃の温風で20秒間乾燥後、面圧が50kPaになるようにロール状に巻取り、室温(25℃)で1日間放置した。その後巻取りをほどき、下記切り出したA4サイズのシートにおける転写の有無を目視により確認し、また、下記測定方法に従い転写量を評価した。
具体的には、巻取りの終端部から長さ方向に1000mの位置にA4サイズ(樹脂基材の長さ方向に29.7cm、樹脂基材の幅方向に21cm)の長方形状の領域を切り出し、領域における前処理液に含まれる成分の転写量を下記方法により測定し、転写量の算術平均値を算出した。
長さ方向の切り出し位置は、上記1000mの位置でA4サイズの領域の長さ方向の中心となるようにした。
幅方向の切り出し位置は、切り出したA4サイズの領域の幅方向の中心が、樹脂基材の幅方向の中心となるようにした。
【0127】
〔転写量の測定方法〕
FABES Forschungs社製MigraCell(登録商標) MC150を用いて測定を行った。
具体的には、上述の切り出した長方形状の領域の前処理液塗布面とは逆側の面が抽出面となるようにMC150にセットし、溶媒(メタノール/水=1:1(体積比))を20mL加えて蓋をして1日間放置した。セットした位置は、上記長方形状の領域の中央とMC150における抽出領域の中央とが目視で重なる位置とした。
上記放置の終了後に、溶媒を取り出し乾燥させた溶媒の乾燥物の質量を抽出面積(2.0dm
2)で除算することにより樹脂基材の単位面積当たりの抽出量(転写量、mg/dm
2)を算出した。
【0128】
〔評価基準〕
評価基準は下記1〜5の5段階評価とし、評価結果は表2に記載した。
5:転写は視認できず、転写量が0.01mg/dm
2以下であった
4:転写は視認できず、転写量が0.01mg/dm
2を超え、0.5mg/dm
2以下であった
3:転写は視認できず、転写量が0.5mg/dm
2を超え、5mg/dm
2以下であった
2:部分的に転写物が視認できた
1:全面に転写物が視認できた
【0129】
<密着性の評価>
各実施例又は比較例において、表2に記載の樹脂基材を635mm/秒で搬送し、表2に記載の前処理液をワイヤーバーコーターで約1.7g/m
2となるように塗布し、直後に温風により50℃で2秒間乾燥させた。その後、下記画像記録条件で、調製した上述のシアンインク及び上述のマゼンタインクを用いて、ブルー(シアンインク+マゼンタインク)色のベタ画像を印字した。印字直後、80℃のホットプレート上で30秒乾燥後の画像をセロテープ(登録商標、No.405、ニチバン(株)製、幅12mm)で剥離し、目視により剥離の程度を評価した。(シアン+マゼンタ)色のベタ画像を印字した。印字直後、80℃のホットプレート上で30秒乾燥し、画像を形成した。
得られた画像にセロテープ(登録商標、No.405、ニチバン(株)製、幅12mm、以下、単に「テープ」ともいう。)を貼り付け、テープを画像から剥離することにより、画像の密着性を評価した。密着性の評価結果が優れているほど、画像の剥離が抑制されているといえる。評価結果は表2又は表3に記載した。
テープの貼り付けは、具体的には、下記の方法により行った。
一定の速度でテープを取り出して、約75mmの長さの小片にカットした。
テープを画像に重ね、上記小片であるテープの中央部の幅12mm、25mmの長さの領域を指で貼り付けた。
塗膜に正しく接触させるために,指先でしっかりとテープをこすった。
テープを付着して5分以内に、できるだけ60°に近い角度でテープの端をつかみ,0.5〜1.0秒で確実に引き離すようにした。
【0130】
〔画像記録条件〕
・ヘッド:1,200dpi(dot per inch、1 inchは2.54cm)/20inch幅ピエゾフルラインヘッドを4色分配置したヘッドを用いた。
・吐出液滴量:各2.4pLとした。
・駆動周波数:30kHz(基材搬送速度635mm/秒)とした。
〔評価基準〕
5: テープ側に付着物が認められなかった。
4: テープ側に若干の色付きの付着物が認められたが画像側は剥離が視認できなかった。
3: テープ側に若干の色付きの付着物が認められ、画像側にも若干の剥離が視認された。
2: テープ側に色付きの付着物が視認され、画像側の一部にインクが残っていた
1: テープ側に色付きの付着物が視認され、画像側もほとんどインク画像が剥がれ基材が視認された。
【0131】
<画質の評価>
各実施例又は比較例において、表2に記載の樹脂基材を用い、表2に記載の前処理液をワイヤーバーコーターで約1.7g/m
2となるように塗布し、直後に50℃で2秒間乾燥させた。その後、上記密着性の評価における画像記録条件と同様の画像記録条件により、
図2に記載の文字(unicode:U+9DF9)を2pt、3pt、4pt、5ptにてそれぞれ出力し、下記評価基準により評価した。ptはフォントサイズを表すDTPポイントを意味し、1ptは1/72inchである。評価結果は表2に記載した。
5: 2pt文字が再現可能
4: 3pt文字が再現可能であったが、2ptの文字は再現できなかった。
3: 4pt文字が再現可能であったが、3pt以下の文字は再現できなかった。
2: 5pt文字が再現可能であったが、4pt以下の文字は再現できなかった。
1: 5pt文字が再現できなかった。
なお、上記「再現可能」とは、0.5m離れた場所から確認して、
図2に記載の文字のうち、
図3に記載の11で表された横線と、
図3に記載の12で表された横線とが、それぞれ分離して印刷されていることが確認できることをいう。
【0132】
【表2】
【0133】
表2中の略語の詳細は下記の通りである。
〔樹脂基材〕
・樹脂基材A:FE2001(樹脂基材、ポリエチレンテレフタレート(PET)媒体、フタムラ化学(株)製)25μm
・樹脂基材B:OPP(二軸延伸ポリプロピレン) 東洋紡P6181 25μm
・樹脂基材C:ナイロン ユニチカ エンブレムON−25 25μm
・樹脂基材D:ポリエチレン フタムラ化学(株)製 LL−RP2 30μm
これらの樹脂基材は、本開示における非浸透媒体に該当するものである。
【0134】
表2に記載した結果から、特定樹脂のTgが30℃以上であり、接触角が20°以上であり、多価金属化合物、及び凝集剤を含む前処理液を使用した実施例1〜実施例23においては、比較例1〜比較例5及び比較例7〜比較例9に比して、印刷物における前処理液に含まれる成分の転写が抑制されていることがわかる。
また、上記実施例1〜実施例23においては、比較例6に比して、印刷物の画質に優れていることがわかる。
【0135】
また、実施例1及び2と、実施例3、4、5、7、9及び10との結果から、特定樹脂のTgが40℃〜60℃であれば、より印刷物における密着性に優れ、より剥離しにくい印刷物が得られることがわかる。
実施例1及び2と、実施例6及び9との結果から、特定樹脂の接触角が25°以上45°以下であることにより、印刷物における前処理液に含まれる成分の転写の抑制と密着性の両立により優れることがわかる。
実施例1及び2と、実施例10及び11との比較から、特定樹脂がポリエステル樹脂であれば、より印刷物における密着性に優れ、剥離しにくい画像が得られることがわかる。
実施例2と、実施例15及び16との比較から、特定樹脂を含む粒子の含有量が前処理液の全質量に対し、5質量%〜20質量%含まれることにより、印刷物における前処理液に含まれる成分の転写の抑制と密着性の両立に更に優れることがわかる。
実施例2と、実施例15及び実施例16との比較から、特定樹脂を含む粒子と凝集剤との質量比が、特定樹脂を含む粒子:凝集剤=10:1〜1:1であることにより、印刷物における画質と、前処理液に含まれる成分の転写の抑制及び密着性との両立に更に優れることがわかる。
実施例2と、実施例12〜14との比較から、凝集剤がジカルボン酸であれば、印刷物における画質に更に優れることがわかる。
実施例2と、実施例17との比較から、前処理液がSP値が13以下の水溶性有機溶剤を含まないか、又は、含有量が前処理液の全質量に対して0質量%を超え10質量%未満であることにより、印刷物における前処理液に含まれる成分の転写の抑制と密着性の両立に更に優れることがわかる。
【0136】
2017年6月30日に出願された日本国特許出願第2017−129436号、及び、2017年12月28日に出願された日本国特許出願第2017−254779号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び、技術規格は、個々の文献、特許出願、及び、技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。