特許第6977061号(P6977061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6977061骨付き肉の全長測定装置及び骨付き肉の全長測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6977061
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】骨付き肉の全長測定装置及び骨付き肉の全長測定方法
(51)【国際特許分類】
   A22C 21/00 20060101AFI20211125BHJP
【FI】
   A22C21/00 Z
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-561558(P2019-561558)
(86)(22)【出願日】2018年12月19日
(86)【国際出願番号】JP2018046678
(87)【国際公開番号】WO2019131357
(87)【国際公開日】20190704
【審査請求日】2020年5月25日
(31)【優先権主張番号】特願2017-247367(P2017-247367)
(32)【優先日】2017年12月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】木藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】豊田 直紀
(72)【発明者】
【氏名】桜山 浩之
(72)【発明者】
【氏名】赤羽根 元
【審査官】 西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/056793(WO,A1)
【文献】 特表2013−507101(JP,A)
【文献】 特開平05−236868(JP,A)
【文献】 特開平03−117451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 5/00−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨付き肉を把持し、前記骨付き肉の搬送経路に沿って水平方向へ移動可能なクランプ具と、
前記骨付き肉の搬送経路に設けられる接触子と、
前記接触子を前記骨付き肉に押し付け可能な押付部と、
前記接触子の上下位置を検出可能な位置センサと、
前記接触子の動作を制御可能な制御部であって、前記クランプ具の搬送と共に移動する移動座標系において、基準位置から、前記位置センサが前記骨付き肉の搬送方向下流側末端を検出した末端検出位置までの距離を前記骨付き肉の搬送中に前記骨付き肉の全長として求める演算部を含む制御部と、
を備えることを特徴とする骨付き肉の全長測定装置。
【請求項2】
前記基準位置は、全長が既知の複数本の骨付き肉について得られた前記末端検出位置から演算されることを特徴とする請求項1に記載の骨付き肉の全長測定装置。
【請求項3】
骨付き肉を把持し水平方向へ移動可能なクランプ具と、
前記骨付き肉の搬送経路に設けられる接触子と、
前記接触子を前記骨付き肉に押し付け可能な押付部と、
前記接触子の上下位置を検出可能な位置センサと、
前記接触子の動作を制御可能な制御部であって、前記クランプ具の搬送と共に移動する移動座標系において、基準位置から、前記位置センサが前記骨付き肉の搬送方向下流側末端を検出した末端検出位置までの距離を前記骨付き肉の全長として求める演算部を含む制御部と、
を備え、
前記骨付き肉の筋入れを行うための筋入れ刃を備え、
前記制御部は、前記筋入れ刃による筋入れ時に前記接触子を前記骨付き肉の押えとして動作させるように構成されることを特徴とする骨付き肉の全長測定装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記移動座標系において、前記位置センサにより前記骨付き肉の関節部が検出される関節検出位置(C点)よりも上流側の位置において前記骨付き肉に対して前記接触子が接触するように動作するように構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の骨付き肉の全長測定装置。
【請求項5】
前記基準位置は、前記搬送経路上で前記クランプ具が前記接触子に到達した時の前記クランプ具の位置とし、
前記制御部は、前記クランプ具が前記基準位置に到達した時を起点として前記押付部を作動させ、前記接触子を前記骨付き肉に接触させるように構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の骨付き肉の全長測定装置。
【請求項6】
骨付き肉を把持し水平方向へ移動可能なクランプ具と、
前記骨付き肉の搬送経路に設けられる接触子と、
前記接触子を前記骨付き肉に押し付け可能な押付部と、
前記接触子の上下位置を検出可能な位置センサと、
前記接触子の動作を制御可能な制御部であって、前記クランプ具の搬送と共に移動する移動座標系において、基準位置から、前記位置センサが前記骨付き肉の搬送方向下流側末端を検出した末端検出位置までの距離を前記骨付き肉の全長として求める演算部を含む制御部と、
を備え、
前記演算部は、前記接触子が前記骨付き肉に接触した後から前記末端検出位置までの間で選択された選択位置における前記位置センサの検出値が閾値外であるとき、前記骨付き肉が前記クランプ具に把持されていないと判定するように構成されることを特徴とする骨付き肉の全長測定装置。
【請求項7】
前記押付部はエアシリンダで構成されることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の骨付き肉の全長測定装置。
【請求項8】
骨付き肉を把持し水平方向へ移動可能なクランプ具と、
前記骨付き肉の搬送経路に設けられる接触子と、
前記接触子を前記骨付き肉に押し付け可能な押付部と、
前記接触子の上下位置を検出可能な位置センサと、
前記接触子の動作を制御可能な制御部であって、前記クランプ具の搬送と共に移動する移動座標系において、基準位置から、前記位置センサが前記骨付き肉の搬送方向下流側末端を検出した末端検出位置までの距離を前記骨付き肉の全長として求める演算部を含む制御部と、
を備え、
前記位置センサの検出値を第1座標軸とし、第2座標軸として前記骨付き肉の搬送方向位置とした移動座標軸からなる2次元移動座標で、少なくとも前記基準位置から前記末端検出位置までの前記接触子の軌跡を表示した表示部を備えることを特徴とする骨付き肉の全長測定装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の全長穂測定装置を用いて骨付き肉の全長を測定する方法であって、
骨付き肉を水平方向に沿って搬送する搬送ステップと、
前記搬送ステップで搬送される前記骨付き肉に前記接触子を押し付け、該接触子の上下位置を前記位置センサにより検出する検出ステップと、
検出された前記接触子の上下位置から前記接触子が前記骨付き肉の搬送方向下流側末端位置に達したと判定する判定ステップと、
前記制御部の前記演算部により、前記骨付き肉の搬送と共に移動する移動座標系において、基準位置から、前記判定ステップで判定した前記骨付き肉の前記搬送方向下流側末端位置までの距離を前記骨付き肉の全長として求める演算ステップと、
を備えることを特徴とする骨付き肉の全長測定方法。
【請求項10】
前記移動座標系で前記基準位置から前記搬送方向下流側末端位置までの距離は、前記基準位置から前記接触子が前記骨付き肉の前記搬送方向下流側末端位置に達した時までの時間差と、前記骨付き肉の搬送速度との積で求めることを特徴とする請求項9に記載の骨付き肉の全長測定方法。
【請求項11】
骨付き肉を水平方向に沿って搬送する搬送ステップと、
前記搬送ステップで搬送される前記骨付き肉に接触子を押し付け、該接触子の上下位置を検出する検出ステップと、
検出された前記接触子の上下位置から前記接触子が前記骨付き肉の搬送方向下流側末端位置に達したと判定する判定ステップと、
前記骨付き肉の搬送と共に移動する移動座標系において、基準位置から、前記判定ステップで判定した前記骨付き肉の前記搬送方向下流側末端位置までの距離を前記骨付き肉の全長として求める演算ステップと、
を備え、
前記搬送ステップにおいて前記骨付き肉を搬送しながら、搬送される前記骨付き肉の骨部の下部に筋入れ刃を挿入して前記骨付き肉の前記骨部と肉部との間に切れ目を形成する筋入れステップを備え、
前記筋入れステップにおいて、前記接触子を前記骨付き肉に接触させ前記骨付き肉を支持させることを特徴とする骨付き肉の全長測定方法。
【請求項12】
前記搬送ステップにおいて、前記骨付き肉をクランプ具で把持し、前記骨付き肉の骨部が水平方向に沿う横向きで前記骨付き肉を搬送することを特徴とする請求項9乃至11の何れか一項に記載の骨付き肉の全長測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、骨付き肉の全長測定装置及び骨付き肉の全長測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食用鳥獣の屠体の解体処理は、省力化のため人手による作業に代って機械による自動化処理が進められている。
自動化処理装置の例として、特許文献1には、骨付きモモ肉の脱骨処理を行う自動脱骨装置が開示されている。この装置は、骨付きモモ肉をクランプ具に吊架しながら複数の処理ステーション間を断続搬送し、各ステーションで骨付きモモ肉の筋入れや骨肉分離等のステップを順々に行うことで、自動脱骨を可能にしている。
特許文献2には、コンベアで搬送される骨付きモモ肉を多軸多関節アームで把持してハンガに吊架させる動作を自動化した装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2013−507101号公報
【特許文献2】国際公開第2009/139031号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に開示された自動脱骨装置において、切断刃を骨付きモモ肉の決められた位置に位置決めするためには、骨付きモモ肉の全長に個体差があるので、各骨付きモモ肉の全長を測定し、その測定値に基づいて切断刃を位置決めする必要がある。
しかし、特許文献1及び2に開示された全長測定装置は、クランプ具によって搬送される骨付きモモ肉を測定のため一旦停止する必要があるため、複数の骨付きモモ肉の全長を測定する場合、骨付きモモ肉の搬送及び停止を連続的に繰り返す必要があり、処理効率が低下する。
【0005】
一実施形態は、骨付き肉の全長を測定する場合に、骨付き肉の動きを停止させることなく移動させながら測定可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)一実施形態に係る骨付き肉の全長測定装置は、
骨付き肉を把持し水平方向へ移動可能なクランプ具と、
前記骨付き肉の搬送経路に設けられる接触子と、
前記接触子を前記骨付き肉に押し付け可能な押付部と、
前記接触子の上下位置を検出可能な位置センサと、
前記接触子の動作を制御可能な制御部であって、前記クランプ具の搬送と共に移動する移動座標系において、基準位置から、前記位置センサが前記骨付き肉の搬送方向下流側末端を検出した末端検出位置までの距離を前記骨付き肉の全長として求める演算部を含む制御部と、
を備える。
ここで、「移動座標系」とは、クランプ具と共に移動する観測者から視たときの座標系である。
【0007】
上記(1)の構成において、上記クランプ具によって把持された骨付き肉が搬送経路上を移動するとき、接触子が骨付き肉に接触する。骨付き肉に接触した接触子の上下位置を位置センサで検出する。上記演算部は、移動座標系において、既知の基準位置から位置センサが検出した骨付き肉の搬送方向下流側末端までの距離を骨付き肉の全長として求める。このように、移動座標系で、既知の基準位置から検出した骨付き肉の下流側末端までの距離を求めるだけで、骨付き肉の全長を容易に求めることができる。また、搬送される骨付き肉を停止させずに全長測定が可能になり、測定効率を向上できる。
【0008】
(2)一実施形態では、前記(1)の構成において、
前記基準位置は、全長が既知の複数本の骨付き肉について得られた前記末端検出位置から演算される。
上記(2)の構成によれば、基準位置は今まで得た骨付き肉の実測値から適宜設定できる。この基準位置から上記移動座標系で検出した末端検出位置までの距離を求めるだけで骨付き肉の全長を容易に求めることができる。
【0009】
(3)一実施形態では、前記(1)又は(2)の構成において、
前記骨付き肉の筋入れを行うための筋入れ刃を備え、
前記制御部は、前記筋入れ刃による筋入れ時に前記接触子を前記骨付き肉の押えとして動作させるように構成される。
上記(3)の構成によれば、上記筋入れ刃を備えることで、骨付き肉の全長測定と共に、骨付き肉の筋入れを行うことができる。そして、筋入れ時に接触子を骨付き肉の押えとして利用できるので、筋入れ時に骨付き肉のぐらつきを抑制できる。これによって、筋入れを正確に行うことができる。
【0010】
(4)一実施形態では、前記(1)又は(2)の構成において、
前記制御部は、前記移動座標系において、前記位置センサにより前記骨付き肉の関節部が検出される関節検出位置(C点)よりも上流側の位置において前記骨付き肉に対して前記接触子が接触するように動作するように構成される。
上記(4)の構成によれば、筋入れ時に複雑な形状を有する骨付き肉の関節部を接触子で支持できるので、該関節部を正確に筋入れできる。
【0011】
(5)一実施形態では、前記(1)又は(2)の構成において、
前記基準位置は、前記搬送経路上で前記クランプ具が前記接触子に到達した時の前記クランプ具の位置とし、
前記制御部は、前記クランプ具が前記基準位置に到達した時を起点として前記押付部を作動させ、前記接触子を前記骨付き肉に接触させるように構成される。
上記(5)の構成によれば、前記クランプ具が上記基準位置に来た時を起点として押付部を作動させ、接触子を動作させるので、クランプ具にぶつかることなく、クランプ具の搬送方向下流側でかつ骨付き肉の搬送方向上流側部位で接触子を骨付き肉にタイミング良く接触できる。
【0012】
(6)一実施形態では、前記(1)〜(5)の何れかの構成において、
前記演算部は、前記接触子が前記骨付き肉に接触した後から前記末端検出位置までの間で選択された選択位置における前記位置センサの検出値が閾値外であるとき、前記骨付き肉が前記クランプ具に把持されていないと判定するように構成される。
上記(6)の構成によれば、位置センサの検出値からクランプ具に骨付き肉が把持されていない場合を検出できる。これによって、全長測定装置の誤検出を防止できる。
【0013】
(7)一実施形態では、前記(1)〜(6)の何れかの構成において、
前記押付部はエアシリンダで構成される。
上記(7)の構成によれば、押付部がエアシリンダで構成されることで、接触子を骨付き肉の表面に弾性力をもって押圧できる。これによって、骨付き肉を傷付けることなく、かつ接触子が骨付き肉から離れることなく、接触子を骨付き肉の表面に倣わせることができる。
【0014】
(8)一実施形態では、前記(1)〜(7)の何れかの構成において、
前記位置センサの検出値を第1座標軸とし、第2座標軸として前記骨付き肉の搬送方向位置とした移動座標軸からなる2次元移動座標で、少なくとも前記基準位置から前記末端検出位置までの前記接触子の軌跡を表示した表示部を備える。
上記(8)の構成によれば、接触子の位置を上記2次元座標上に表すことで、接触子の軌跡をビジュアルに表すことができ、骨付き肉の全長をビジュアルに表すことができる。
【0015】
(9)一実施形態に係る骨付き肉の全長測定方法は、
骨付き肉を水平方向に沿って搬送する搬送ステップと、
前記搬送ステップで搬送される前記骨付き肉に接触子を押し付け、該接触子の上下位置を検出する検出ステップと、
検出された前記接触子の上下位置から前記接触子が前記骨付き肉の搬送方向下流側末端位置に達したと判定する判定ステップと、
前記骨付き肉の搬送と共に移動する移動座標系において、基準位置から、前記判定ステップで判定した前記骨付き肉の前記搬送方向下流側末端位置までの距離を前記骨付き肉の全長として求める演算ステップと、
を備える。
【0016】
上記(9)の方法によれば、上記演算ステップにおいて、移動座標系で、既知の基準位置から検出した骨付き肉の搬送方向下流側末端位置までの距離を求めるだけで、骨付き肉の全長を容易に求めることができる。また、搬送される骨付き肉を停止させずに全長測定が可能になり、測定効率を向上できる。
【0017】
(10)一実施形態では、前記(9)の方法において、
前記移動座標系で前記基準位置から前記搬送方向下流側末端位置までの距離は、前記基準位置から前記接触子が前記骨付き肉の前記搬送方向下流側末端位置に達した時までの時間差と、前記骨付き肉の搬送速度との積で求める。
上記(10)の方法によれば、上記基準位置と接触子が骨付き肉が搬送方向下流側末端位置に達した時との時間差と骨付き肉の搬送速度との積から骨付き肉の全長を容易に求めることができる。
【0018】
(11)一実施形態では、前記(9)又は(10)の方法において、
前記搬送ステップにおいて前記骨付き肉を搬送しながら、搬送される前記骨付き肉の骨部の下部に筋入れ刃を挿入して前記骨付き肉の前記骨部と肉部との間に切れ目を形成する筋入れステップを備え、
前記筋入れステップにおいて、前記接触子を前記骨付き肉に接触させ前記骨付き肉を支持させる。
上記(11)の方法によれば、筋入れ時に接触子を骨付き肉の押えとして利用できるので、筋入れ時に骨付き肉のぐらつきを抑制できる。これによって、筋入れを正確に行うことができる。
【0019】
(12)一実施形態では、前記(9)〜(11)の何れかの方法において、
前記搬送ステップにおいて、前記骨付き肉をクランプ具で把持し、前記骨付き肉の骨部が水平方向に沿う横向きで前記骨付き肉を搬送する。
上記(12)の方法によれば、骨付き肉をクランプ具で把持し、骨付き肉の骨部が水平方向に沿う横向きで骨付き肉を搬送するために、骨付き肉を搬送しながら停止させることなく接触子による全長測定が可能になる。
【発明の効果】
【0020】
一実施形態によれば、骨付き肉の動きを停止させることなく移動させながら骨付き肉の全長を容易に測定できる。これによって、測定効率を向上できると共に、骨付き肉の搬送方向下流側末端位置を検出するだけで容易に骨付き肉の全長を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】一実施形態に係る骨付き肉の全長測定装置を示す斜視図である。
図1B】一実施形態に係る骨付き肉の全長測定装置を示す斜視図である。
図1C】一実施形態に係る骨付き肉の全長測定装置を示す斜視図である。
図1D】一実施形態に係る骨付き肉の全長測定装置を示す斜視図である。
図2】一実施形態に係る骨付き肉の全長測定装置の2次元座標を示す線図である。
図3】一実施形態に係る骨付き肉の全長測定装置の2次元座標を示す線図である。
図4】骨付き肉の一例として骨付きモモ肉を示す斜視図である。
図5】一実施形態に係る骨付き肉の全長測定方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0023】
図1A図1Dは、一実施形態に係る骨付き肉の全長測定装置10を時系列順に示す斜視図である。クランプ具12は骨付き肉Mbを把持し水平方向(矢印a方向)へ移動可能に構成されている。クランプ具12によって骨付き肉Mbは一定の搬送経路に沿って搬送される。骨付き肉Mbの搬送経路22に接触子14が設けられ、接触子14は押付部16によって搬送中の骨付き肉Mbに押し付けられる。位置センサ18によって接触子14の上下位置が検出され、位置センサ18の検出値は制御部24内の演算部20に入力される。制御部24は押付部16の作動を制御することで接触子14上下位置を制御する。
【0024】
図2及び図3は、クランプ具12と共に移動する観測者から視た移動座標を示す。即ち、縦軸(第1座標軸)は、位置センサ18の上下位置の検出値を表す静止座標軸であり、横軸(第2座標軸)は、観測者が骨付き肉Mbと共に移動するとき、観測者から視た接触子14の上下位置を示す移動座標軸である。演算部20は、基準位置から、位置センサ18が骨付き肉Mbの搬送方向下流側末端を検出した末端検出位置までの距離を骨付き肉Mbの全長として求める。基準位置とは、全長が既知の複数本の骨付き肉Mbについて得られた末端検出位置から演算される。
【0025】
上記構成によれば、演算部20は、図2及び図3に示す移動座標系において、既知の基準位置から位置センサ18が検出した骨付き肉Mbの搬送方向下流側末端(図2中のD点)までの距離を骨付き肉Mbの全長として求める。このように、移動座標系で、既知の基準位置から検出した骨付き肉Mbの下流側末端までの距離を求めるだけで、骨付き肉Mbの全長を容易に求めることができる。また、搬送される骨付き肉Mbを停止させずに全長測定が可能になり、測定効率を向上できる。
【0026】
図2に示すように、接触子14が骨付き肉Mbの搬送方向下流側末端に達した時、接触子14の位置は急激に下降するので、位置センサ18の検出値によって骨付き肉Mbの搬送方向下流側末端位置の検出は容易である。
一実施形態では、図2中のS点は、骨付き肉Mbが挿入されるクランプ具12の凹部12aが搬送路上で接触子14の先端部の真下を通過した時に設定された基準位置である。
一実施形態では、経験値に基づいて接触子14の上下位置に閾値を設定し、この閾値に達したときを骨付き肉Mbの搬送方向下流側末端位置であると定めてもよい。
【0027】
一実施形態では、図1Aに示すように、搬送経路22は水平方向に延在する搬送路で構成される。骨付き肉Mbは該搬送路上を搬送される。例えば、該搬送路はU字形の横断面を有し、骨付き肉Mbは該搬送路の内部に挿入され、クランプ具12で搬送路に沿って搬送される。一実施形態では、搬送路は水平方向に沿って延在する直線状の搬送経路を形成する。
【0028】
図1A図2中のA点の状態を示し、図1B図2中のB点の状態を示し、図1C図2中のC点の状態を示し、図1D図2中のD点の状態を示している。
【0029】
一実施形態では、位置センサ18はエンコーダで構成される。
一実施形態では、クランプ具12の搬送始点からの搬送距離を測定する距離センサ(例えばエンコーダ)26が設けられる。
一実施形態では、複数のクランプ具12が所定間隔でチェーン28に取り付けられ、チェーン28は移動方向末端で駆動スプロケット30に巻回される。駆動スプロケット30はモータ32で回転され、距離センサ26は駆動スプロケット30の回転数を計測して各クランプ具12の搬送始点からの搬送距離を測定する。
【0030】
図4は、骨付き肉Mbの一例として鶏屠体の骨付きモモ肉を示す。図4では、表皮wの領域が少ない内モモ面Sinが上方に向けられている。足首部fから骨部bが連なり、骨部bの周囲を肉部mが取り巻いている。ひざ部nの内側にひざ関節部Nが存在する。図4中のB点、C点及びD点は図2中のB点、C点及びD点に対応する。
【0031】
一実施形態では、骨付き肉Mbは食用鳥獣の骨付きモモ肉であり、図1に示すように、骨部bが水平方向に沿う横向きでかつ内モモ面及び外モモ面が上下方向に沿った状態で搬送経路22に配置され、足首部fがクランプ具12で把持される。接触子14は、内モモ面と外モモ面間の起伏に富んだ骨付きモモ肉の輪郭をなぞるために、位置センサ18による末端の検出が容易になる。例えば、ひざ部nを含む起伏に富んだ骨付きモモ肉の輪郭をなぞることができる。
【0032】
一実施形態では、クランプ具12は上方に開口し骨付き肉Mbが遊嵌される凹部12aを有する。骨付き肉Mbは凹部12aに遊嵌され固く把持されないので、凹部12aを起点として上下方向へ回動可能である。そのため、骨付き肉Mbは搬送経路22を構成する搬送路の底面に接した状態で搬送できる。凹部12aは上方に開口しているので、骨付き肉Mbが凹部12aに遊嵌されていても凹部12aから外れない。
【0033】
一実施形態では、図1に示すように、接触子14は先端部に骨付き肉Mbの搬送方向と直交する方向でかつ水平方向に延在する接触バー14aを備える。接触バー14aを備えることで、接触子14が骨付き肉Mbの表面から脱落するのを抑制できる。接触バー14aは骨付き肉Mbの表面に安定して接触しながら骨付き肉Mbの表面に沿って滑ることができる。
【0034】
一実施形態では、図1Cに示すように、骨付き肉Mbの筋入れを行うための筋入れ刃34を備える。制御部24は、筋入れ刃34による筋入れ時に接触子14を骨付き肉Mbの押えとして動作させる。
この実施形態によれば、筋入れ刃34を備えることで、骨付き肉Mbの全長測定と共に、骨付き肉Mbの筋入れを行うことができる。そして、筋入れ時に接触子14を骨付き肉Mbの押えとして利用できるので、筋入れ時に骨付き肉Mbのぐらつきを抑制できる。これによって、筋入れを正確に行うことができる。
一実施形態では、図1Cに示すように、接触子14の先端部の下方位置に筋入れ刃34を進入可能に配置する。これによって、筋入れ時に接触子14を骨付き肉Mbの押えとして有効に利用できる。
【0035】
一実施形態では、図2に示す移動座標において、制御部24は、位置センサ18により骨付き肉Mbのひざ関節部Nが検出される関節検出位置(C点)よりも上流側の位置において骨付き肉Mbに対して接触子14が接触するように動作させる。
この実施形態によれば、筋入れ時に複雑な形状を有するひざ関節部Nを接触子14で支持できるので、ひざ関節部Nを正確に筋入れできる。
【0036】
一実施形態では、図2に示す移動座標において、基準位置Sは、クランプ具12が搬送経路22上を接触子14の真下に到達した時のクランプ具12の位置とする。制御部24は、クランプ具12が上記基準位置Sに到達した時を起点として押付部16を作動させ、接触子14を骨付き肉Mbに接触させる。
この実施形態によれば、クランプ具12の搬送方向下流側でかつ骨付き肉Mbの搬送方向上流側部位で接触子14を骨付き肉Mbにタイミング良く接触できる。従って、接触子14はクランプ具12にぶつからず、かつ動作が遅れずに骨付き肉Mbをクランプ具12に近い部位から接触できる。
【0037】
一実施形態では、図1Aに示す押付部16はエアシリンダで構成される。これによって、接触子14を骨付き肉Mbの表面に弾性力をもって押圧できるため、骨付き肉Mbを傷付けることなく、かつ接触子14が骨付き肉Mbから離れることなく、接触子14を骨付き肉Mbの表面に倣わせることができる。
一実施形態では、押付部16はバネ部材(不図示)を有し、該バネ部材によって接触子14を骨付き肉Mbの表面に弾性力をもって押圧させるようにしてもよい。
【0038】
一実施形態では、図2及び図3において、演算部20は、接触子14が骨付き肉Mbに接触した時点(図2中のB点)から末端検出位置(図2中のD点)までの間で選択された選択位置における位置センサ18の検出値が閾値外であるとき、骨付き肉Mbがクランプ具12に把持されていないと判定する。
この実施形態によれば、位置センサ18の検出値からクランプ具12に骨付き肉Mbが把持されていない場合を検出できる。これによって、全長測定装置10の誤検出を防止できる。
【0039】
一実施形態では、図2及び図3に示す2次元移動座標上で、少なくとも基準位置Sから末端検出位置Dまでの接触子14の軌跡を表示した表示部を備える。
この実施形態によれば、接触子14の位置を2次元座標上に表すことで、接触子14の軌跡をビジュアルに表すことができ、骨付き肉Mbの全長をビジュアルに表すことができる。
なお、図2及び図3に示す2次元座標では、縦軸は接触子14の下降量を示し、接触子14の下降量が大きいほど、縦軸上で接触子14は上方に位置する。
【0040】
図2は、クランプ具12に骨付き肉Mbが把持されているときの接触子14の上下位置を示し、図3は、クランプ具12に骨付き肉Mbが把持されていないときの接触子14の上下位置を示す。
図2において、測定開始設定位置Aから基準位置Sまでの距離Lは既知であり、A点とD点との距離から距離Lを差し引くことで、骨付き肉Mbの全長Lを求めることができる。
【0041】
図2及び図3において、Pzは接触子14が骨付き肉Mbに押し付けられた後から測定終了設定位置までの間で選択された位置を示す。例えば、図2では、B点からD点までの間が選択位置となる。
図2に示すように、選択位置Pzにおける位置センサ18の検出値Hが閾値Hth1≦H≦閾値Hth2であるとき、クランプ具12が骨付き肉Mbを把持していると判定する。
図3に示すように、時間帯Tzにおける位置センサ18の検出値HがH<Hth1又はHth2<Hであるとき、クランプ具12が骨付き肉Mbを把持していないと判定する。
閾値Hth1及びHth2は骨付き肉Mbの大きさ及び形状等に基づいて予め設定される。
このように、図2及び図3から、クランプ具12が骨付き肉Mbを把持しているか否かを明瞭に把握できる。
【0042】
一実施形態では、全長測定装置10は骨付き肉Mbを解体処理して骨部と肉部とを分離する処理装置(不図示)に設けられる。例えば、全長測定装置10は、骨付き肉Mbを筋入れする筋入れ装置に設けられる。筋入れ装置では、骨付き肉Mbの骨部bと肉部mとの間に切れ目が形成され、その後、骨付き肉Mbは骨部bと肉部mとを分離される。
上記処理装置に全長測定装置10を設けることで、骨付き肉Mbを搬送しながら停止させずに解体処理を行うことが可能になり、解体処理に要する時間を短縮できる。また、全長測定装置10で求めた骨付き肉Mbの全長の個体差に基づいて解体処理することで、骨部bと肉部mとの分離を確実にかつ歩留まり良く行うことができる。
【0043】
図5に示すように、一実施形態に係る骨付き肉Mbの全長測定方法は、まず、骨付き肉Mbを水平方向に沿って搬送する(搬送ステップS10)。次に、搬送ステップS10で搬送される骨付き肉Mbに接触子14を押し付け、接触子14の上下位置を検出する(検出ステップS12)。そして、検出された接触子14の上下位置から接触子14が骨付き肉Mbの搬送方向下流側末端位置(図2中D点)に達したかどうかを判定する(判定ステップS14)。次に、図2及び図3に示す移動座標において、基準位置(例えば図2中のS点)から、位置センサ18が骨付き肉Mbの搬送方向下流側末端位置までの距離を骨付き肉Mbの全長として求める(演算ステップS16)。
【0044】
この実施形態によれば、演算ステップS16において、既知の基準位置からこの末端検出位置までの距離を骨付き肉Mbの全長として容易に求めることができる。また、骨付き肉Mbを停止させずに搬送しながら全長測定が可能になり、測定効率を向上できる。
【0045】
一実施形態では、基準位置から搬送方向下流側末端位置までの距離は、基準位置から接触子14が骨付き肉Mbの搬送方向下流側末端位置に達した時までの時間差と、骨付き肉Mbの搬送速度との積で求めることができる。これによって、骨付き肉Mbを停止させずに搬送しながら全長測定が可能になり、測定時間を短縮でき測定効率を向上できる。
【0046】
一実施形態では、搬送ステップS10において骨付き肉Mbを搬送しながら、搬送される骨付き肉Mbの骨部bの下部に筋入れ刃34を挿入して骨付き肉Mbの骨部bと肉部mとの間に切れ目を形成する(筋入れステップS18)。筋入れステップS18において、接触子14を骨付き肉Mbに接触させ、骨付き肉Mbを支持させる。
この実施形態によれば、筋入れ時に接触子14を骨付き肉Mbの押えとして利用できるので、筋入れ時に骨付き肉Mbのぐらつきを抑制できる。これによって、筋入れを正確に行うことができる。
【0047】
一実施形態では、搬送ステップS10において、骨付き肉Mbをクランプ具12で把持し、骨付き肉Mbの骨部bが水平方向に沿う横向きで骨付き肉Mbを搬送する。
この実施形態によれば、骨付き肉Mbの骨部bが水平方向に沿う横向きで搬送されるために、骨付き肉Mbを搬送しながら停止させることなく接触子14による全長測定が可能になる。
【0048】
一実施形態では、図2に示すA点とD点との時間差と骨付き肉Mbの搬送速度との積から固定値である距離Lを減ずることで、Lが実際の骨付き肉Mbの全長として求められる。
【0049】
一実施形態では、骨付き肉Mbが、図4に示すように食鳥屠体などの骨付きモモ肉であり、この骨付きモモ肉を骨部bが水平方向に沿う横向きでかつ内モモ面及び外モモ面が上下方向に沿う姿勢で、足首部fがクランプ具12で把持される。接触子14は、内モモ面と外モモ面間の起伏に富んだ骨付きモモ肉の輪郭をなぞるために、位置センサ18による骨付き肉Mbの末端の検出が容易になる。
また、骨付き肉Mbは骨付き肢肉(食鳥屠体及び家畜屠体の前肢及び後肢を含む。)であってもよい。骨付きモモ肉は骨付き肢肉に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
一実施形態によれば、骨付き肉の全長を容易に測定できると共に、骨付き肉の動きを停止させることなく骨付き肉を移動させたまま測定できる。従って、骨付き肉の解体処理工程などに適用される場合、解体処理時間を短縮でき解体処理効率を向上できる。
【符号の説明】
【0051】
10 全長測定装置
12 クランプ具
12a 凹部
14 接触子
14a 接触バー
16 押付部
18 位置センサ
20 演算部
22 搬送経路
24 制御部
26 エンコーダ
28 チェーン
30 駆動スプロケット
32 モータ
34 筋入れ刃
D 搬送方向下流側末端位置
Hth1、Hth2 閾値
L 全長
Mb 骨付き肉
N ひざ関節部
Pz 選択位置
S 基準位置
Sin 内モモ面
b 骨部
f 足首部
m 肉部
n ひざ部
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5