特許第6977065号(P6977065)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6977065平版印刷版原版、及び、平版印刷版の作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6977065
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】平版印刷版原版、及び、平版印刷版の作製方法
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/14 20060101AFI20211125BHJP
   G03F 7/00 20060101ALI20211125BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20211125BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20211125BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   B41N1/14
   G03F7/00 503
   G03F7/004 501
   G03F7/004 505
   G03F7/004 507
   G03F7/031
   G03F7/038 501
【請求項の数】14
【全頁数】63
(21)【出願番号】特願2019-569202(P2019-569202)
(86)(22)【出願日】2019年1月30日
(86)【国際出願番号】JP2019003268
(87)【国際公開番号】WO2019151361
(87)【国際公開日】20190808
【審査請求日】2020年4月8日
(31)【優先権主張番号】特願2018-14900(P2018-14900)
(32)【優先日】2018年1月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 和朗
(72)【発明者】
【氏名】荒木 健次郎
【審査官】 四垂 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−069452(JP,A)
【文献】 特開2009−236942(JP,A)
【文献】 特開2012−150447(JP,A)
【文献】 特開2017−019206(JP,A)
【文献】 特開2016−179592(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/186556(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N1/14
G03F7/00−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
前記支持体上に形成された画像記録層と、を有し、
前記画像記録層が、エチレン性不飽和基を有する構成単位A1を含む重合体Aを含有し、
前記重合体Aの重量平均分子量が2,500〜35,000であり、
前記重合体Aにおける前記構成単位A1の含有量が15mol%以上であり、
前記重合体Aの全質量に対する硫黄元素含有率が、0.7質量%〜2.4質量%である、
平版印刷版原版。
【請求項2】
前記重合体Aの重量平均分子量が2,500〜20,000であり、前記重合体Aにおける前記構成単位A1の含有量が30mol%以上である、請求項1に記載の平版印刷版原版。
【請求項3】
前記重合体Aの全質量に対する硫黄元素含有率が、0.8質量%〜2.4質量%である、請求項1又は請求項2に記載の平版印刷版原版。
【請求項4】
前記重合体Aが、3官能以上10官能以下の多官能チオール化合物に由来する構成単位を含む星型ポリマーである、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項5】
前記重合体Aにおけるエチレン性不飽和基が(メタ)アクリロキシ基である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項6】
前記重合体Aが、親水性基を有する構成単位B1として、エーテル結合を含む構成単位を含む、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項7】
前記画像記録層が、重合性化合物、及び、電子受容型重合開始剤を更に含む、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項8】
前記画像記録層が、赤外線吸収剤を更に含む、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項9】
前記画像記録層が、酸発色剤を更に含む、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項10】
前記画像記録層が、ポリマー粒子を更に含む、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項11】
機上現像用平版印刷版原版である、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項12】
前記重合体Aの重量平均分子量が5,000〜18,000である、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項13】
請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の平版印刷版原版を画像露光する工程、及び、
印刷インキ及び湿し水の少なくとも一方により、前記画像記録層の未露光部分を除去する工程を含む
平版印刷版の作製方法。
【請求項14】
請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の平版印刷版原版を画像様に露光し、露光部と未露光部とを形成する露光工程、及び、
pHが2以上11以下の現像液を供給して前記未露光部を除去する工程を含む
平版印刷版の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、平版印刷版原版、及び、平版印刷版の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルムなどの原画を通した露光を行った後、画像記録層の画像部となる部分を残存させ、それ以外の不要な画像記録層をアルカリ性現像液又は有機溶剤によって溶解除去し、親水性の支持体表面を露出させて非画像部を形成する方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
【0003】
また、地球環境への関心の高まりから、現像処理などの湿式処理に伴う廃液に関する環境課題がクローズアップされている。
上記の環境課題に対して、現像あるいは製版の簡易化、無処理化が指向されている。簡易な作製方法の一つとしては、「機上現像」と呼ばれる方法が行われている。すなわち、平版印刷版原版を露光後、従来の現像は行わず、そのまま印刷機に装着して、画像記録層の不要部分の除去を通常の印刷工程の初期段階で行う方法である。
従来の平版印刷版原版又は平版印刷版原版を用いた印刷方法としては、例えば、特開2012−148555号公報又は特開2017−154318号公報に記載されたものが挙げられる。
【0004】
特開2012−148555号公報には、支持体上に、バインダー、ラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤を含有する画像記録層を有する平版印刷版原版であって、上記バインダーが、6官能以上10官能以下の多官能チオールを核として、この核に対しスルフィド結合により結合したポリマー鎖を有し、上記ポリマー鎖が重合性基を有することを特徴とする平版印刷版原版が記載されている。
特開2017−154318号公報には、印刷機の同一の版胴上に取り付けられた、アルミニウム支持体上に少なくとも一層の構成層を有し、上記構成層の少なくとも一層に低分子親水性化合物を含有する機上現像型平版印刷版ダミー版、及び、アルミニウム支持体上に有機ホウ素含有アニオンを含む重合開始剤を含有する画像記録層を有する機上現像型平版印刷版原版を機上現像する工程を含む印刷方法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
平版印刷版においては、版の印刷可能な枚数(以下、「耐刷性」ともいう。)に優れた平版印刷版が求められている。
本発明者らは、本開示に係る平版印刷版原版によれば、特開2012−148555号公報又は特開2017−154318号公報に記載の平版印刷版原版よりも、更に耐刷性を向上させることが可能であることを見出した。
【0006】
本開示の実施形態が解決しようとする課題は、耐刷性に優れた平版印刷版原版、及び、上記平版印刷版原版を用いた平版印刷版の製版方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 支持体と、上記支持体上に形成された画像記録層と、を有し、上記画像記録層が、エチレン性不飽和基を有する構成単位A1を含む重合体Aを含有し、上記重合体Aの重量平均分子量が2,500〜35,000であり、上記重合体Aにおける上記構成単位A1の含有量が15mol%以上である、平版印刷版原版。
<2> 上記重合体Aの重量平均分子量が2,500〜20,000であり、上記重合体Aにおける上記構成単位A1の含有量が30mol%以上である、上記<1>に記載の平版印刷版原版。
<3> 上記重合体Aの全質量に対する硫黄元素含有率が、0.5質量%〜10質量%である、上記<1>又は<2>に記載の平版印刷版原版。
<4> 上記重合体Aが、3官能以上10官能以下の多官能チオール化合物に由来する構成単位を含む星型ポリマーである、上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<5> 上記重合体Aにおけるエチレン性不飽和基が(メタ)アクリロキシ基である、上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<6>上記重合体Aが、親水性基を有する構成単位B1として、エーテル結合を含む構成単位を含む、上記<1>〜<5>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<7> 上記画像記録層が、重合性化合物、及び、電子受容型重合開始剤を更に含む、上記<1>〜<6>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<8> 上記画像記録層が、赤外線吸収剤を更に含む、上記<1>〜<7>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<9> 上記画像記録層が、酸発色剤を更に含む、上記<1>〜<8>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<10> 上記画像記録層が、ポリマー粒子を更に含む、上記<1>〜<9>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<11> 機上現像用平版印刷版原版である、上記<1>〜<10>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<12> 上記<1>〜<11>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版を画像露光する工程、及び、印刷インキ及び湿し水の少なくとも一方により、上記画像記録層の未露光部分を除去する工程を含む平版印刷版の作製方法。
<13> 上記<1>〜<11>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版を画像様に露光し、露光部と未露光部とを形成する露光工程、及び、pHが2以上11以下の現像液を供給して上記未露光部を除去する工程を含む平版印刷版の作製方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示の実施形態によれば、耐刷性に優れた平版印刷版原版、及び、上記平版印刷版原版を用いた平版印刷版の製版方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、数値範囲を示す「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を包含する概念として用いられる語である。
また、本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。 また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
本開示において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
本開示において、「平版印刷版原版」の用語は、平版印刷版原版だけでなく、捨て版原版を包含する。また、「平版印刷版」の用語は、平版印刷版原版を、必要により、露光、現像などの操作を経て作製された平版印刷版だけでなく、捨て版を包含する。捨て版原版の場合には、必ずしも、露光、現像の操作は必要ない。なお、捨て版とは、例えばカラーの新聞印刷において一部の紙面を単色又は2色で印刷を行う場合に、使用しない版胴に取り付けるための平版印刷版原版である。
また、本開示において、化学構造式における「*」は、他の構造との結合位置を表す。
以下、本開示を詳細に説明する。
【0010】
(平版印刷版原版)
本開示に係る平版印刷版原版は、支持体と、上記支持体上に形成された画像記録層と、を有し、上記画像記録層が、エチレン性不飽和基を有する構成単位A1を含む重合体Aを含有し、上記重合体Aの重量平均分子量が2,500〜35,000であり、上記重合体Aにおける上記構成単位A1の含有量が15mol%以上である。
また、本開示に係る平版印刷版原版は、機上現像用平版印刷版原版として好適に用いることができる。
【0011】
本発明者が鋭意検討した結果、上記構成を採用することにより、耐刷性に優れた平版印刷版原版を提供することができることを見出した。
上記効果が得られる詳細なメカニズムは不明であるが、以下のように推測される。
特開2012−148555号公報又は特開2017−154318号公報に記載の平版印刷版原版において、更に耐刷性を向上するためには、画像記録層に含まれる重合体(バインダーポリマー)の架橋性基量を増加させることが考えられる。しかし、本発明者らの検討によれば、単に架橋性基量を増加させるのみでは、耐刷性は大きく向上しなかった。
そこで本発明者らは鋭意検討した結果、本開示において用いられる重合体Aにおける架橋性基量を増加させ、かつ、重合体Aの重量平均分子量を小さくすることにより、耐刷性が大きく向上することを見出した。
これは、重合体Aの分子量を小さくすることにより、画像記録層中に添加されている重合性化合物等の他の成分と重合体Aとの相溶性が向上し、架橋性基量が増えたことによる架橋構造の緻密化の影響が表れやすくなるためであると推測される。
また、重合体Aの分子量を小さくすることにより、重合体Aにおける硫黄元素の含有量が相対的に増加し、S(硫黄原子)−O(酸素原子)間の相互作用等の原子間相互作用の影響が大きくなるため、耐刷性が向上するという機序も関与していると考えられる。
【0012】
また、近年においては、印刷におけるインキとして、紫外線(UV)の照射により硬化するインキ(「紫外線硬化型インキ」ともいう。)が用いられる場合がある。
紫外線硬化型インキは、瞬間乾燥可能なため生産性が高い、一般に溶剤の含有量が少ない、又は、無溶剤であるため環境汚染が低減されやすい、熱による乾燥を行わないか、又は、熱による乾燥を短時間として画像を形成できるため、印刷対象などの応用範囲が広がる等の利点を有している。
そのため、紫外線硬化型インキを用いた場合の耐刷性(以下、「UV耐刷性」ともいう)に優れる平版印刷版を提供することができる平版印刷版は、産業上非常に有用であると考えられる。
本開示において、紫外線硬化型インキではない通常の油性インキを用いた場合の耐刷性については、単に「耐刷性」と記載するか、又は「油性耐刷性」と記載する。
本発明者らは、本開示に係る平版印刷版原版においては、UV耐刷性が向上しやすいことを見出した。上記効果が得られる詳細なメカニズムは不明であるが、上述の耐刷性の向上と同様に、架橋構造の緻密化の影響が表れやすくなること、及び、S−O相互作用等の原子間相互作用の影響が大きくなることによるものであると推測される。
【0013】
更に、平版印刷版原版においては、特に機上現像を行った場合において、現像後の平版印刷版を用いて得られる印刷物に、ドット形状、リング状等の小面積(例えば、直径20μm〜2,000μmなど)の印刷汚れ(以下、「ポツ状汚れ(Spot Scumming)」ともいう。)が発生する場合がある。
上記ポツ状汚れは、例えば、アルミニウム支持体において、局所的な腐食が発生し、上記腐食部において重合体が形成されてしまう等の理由により、現像による画像記録層の除去が不十分となる(局所的な残膜が発生する)ために引き起こされると推測される。
本発明者らは、鋭意検討した結果、本開示に係る平版印刷版原版においては、現像後の上記ポツ状汚れの発生が抑制されやすいことを見出した。
これは、重合体Aが低分子量であることにより、上述の形成されてしまう重合体の分子量も相対的に小さくなるため、現像による残膜の除去性が高くなるためであると推測される。
【0014】
また、本発明者らは鋭意検討した結果、本開示に係る平版印刷版原版は、機上現像性が向上しやすいことを見出した。
これは、重合体Aが低分子量であることにより、機上現像により非画像部が除去されやすくなるためであると推測される。
以下、本開示に係る平版印刷版原版における各構成要件の詳細について説明する。
【0015】
<支持体>
本開示に係る平版印刷版原版は、支持体を有する。
支持体としては、親水性表面を有する支持体(「親水性支持体」ともいう。)が好ましい。親水性表面としては、水との接触角が10°より小さいものが好ましく、5°より小さいものがより好ましい。
本開示に係る平版印刷版原版の支持体は、公知の平版印刷版原版用支持体から適宜選択して用いることができる。支持体としては、公知の方法で粗面化処理され、陽極酸化処理されたアルミニウム板が好ましい。
アルミニウム板は更に必要に応じて、特開2001−253181号公報及び特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケートによる表面親水化処理、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号及び同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸などによる表面親水化処理を適宜選択して行ってもよい。
支持体は、中心線平均粗さが0.10μm〜1.2μmであることが好ましい。
【0016】
支持体は、必要に応じて、画像記録層とは反対側の面に、特開平5−45885号公報に記載の有機高分子化合物又は特開平6−35174号公報に記載のケイ素のアルコキシ化合物等を含むバックコート層を有していてもよい。
【0017】
<画像記録層>
本開示に係る平版印刷版原版は、支持体上に形成された画像記録層を有する。
本開示に用いられる画像記録層は、ネガ型画像記録層であることが好ましく、水溶性又は水分散性のネガ型画像記録層であることがより好ましい。
本開示に用いられる画像記録層は、耐刷性、及び、感光性の観点から、電子受容型重合開始剤、及び、重合性化合物を更に含むことが好ましい。
本開示に用いられる画像記録層は、露光感度の観点から、赤外線吸収剤を更に含むことが好ましい。
本開示に用いられる画像記録層は、露光部を現像前に確認するために、酸発色剤を更に含むことが好ましい。
本開示に係る平版印刷版原版は、機上現像性の観点から、画像記録層の未露光部が湿し水及び印刷インキの少なくともいずれかにより除去可能であることが好ましい。
以下、画像記録層に含まれる各成分の詳細について説明する。
【0018】
〔エチレン性不飽和基を有する構成単位A1を含む重合体A〕
本開示に用いられる画像記録層は、エチレン性不飽和基を有する構成単位A1を含む重合体A(以下、単に「重合体A」ともいう。)を含有する。
重合体Aは、重量平均分子量(Mw)が2,500〜35,000であり、耐刷性、機上現像性、及び、UV耐刷性を向上し、ポツ状汚れの発生を抑制する観点から、2,500〜20,000であることが好ましく、5,000〜18,000であることがより好ましい。
また、重合体Aにおける、エチレン性不飽和基を有する構成単位A1(以下、単に「構成単位A1」ともいう。)の含有量は、耐刷性及びUV耐刷性を向上する観点から、15mol%以上であり、30mol%以上であることが好ましく、40mol%以上であることがより好ましい。
重合体Aは、構成単位A1を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
重合体Aにおける、構成単位A1の含有量は、機上現像性を向上し、ポツ状汚れの発生を抑制する観点から、80mol%以下であることが好ましく、60mol%以下であることがより好ましい。
本開示において、重合体における構成単位のモル含有量(mol%)は、構成単位をモノマー単位として換算した値である。具体的には、重合体における特定の構成単位のモル含有量(mol%)とは、重合体に含まれる全てのモノマー単位の含有量に対する、特定のモノマー単位の含有量(%)を表す。
【0019】
−構成単位A1−
構成単位A1は、エチレン性不飽和基を有する構成単位である。エチレン性不飽和基としては、特に限定されないが、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリルアミド基、又は、(メタ)アクリロキシ基等が挙げられ、反応性の観点から、(メタ)アクリロキシ基であることが好ましい。
構成単位A1は、高分子反応又は共重合により導入することができる。具体的には、例えば、メタクリル酸等のカルボキシ基を有する構成単位を導入した重合体に対し、エポキシ基及びエチレン性不飽和基を有する化合物(例えば、グリシジルメタクリレートなど)を反応させる方法、ヒドロキシ基等の活性水素を有する基を有する構成単位を導入した重合体に対し、イソシアネート基及びエチレン性不飽和基を有する化合物(例えば、2−イソシアナトエチルメタクリレートなど)を反応させる方法等により導入することができる。
また、構成単位A1は、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する構成単位を導入した重合体に対し、カルボキシ基及びエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させる等の方法により導入されてもよい。
更に、構成単位A1は、例えば下記式a1又は下記式a2により表される部分構造を含む単量体を用いることにより重合体A中に導入されてもよい。具体的には、例えば、上記単量体を少なくとも用いた重合後に、下記式a1又は下記式a2により表される部分構造に対し、塩基化合物を用いた脱離反応によってエチレン性不飽和基を形成することにより、構成単位A1が重合体A中に導入される。
【0020】

【0021】
式a1及び式a2中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Aはハロゲン原子を表し、Xは−O−又は−NR−を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す
式a1及び式a2中、Rは水素原子又はメチル基であることが好ましい。
式a1及び式a2中、Aは塩素原子、臭素原子、又は、ヨウ素原子であることが好ましい。
式a1及び式a2中、Xは−O−であることが好ましい。Xが−NR−を表す場合、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0022】
構成単位A1としては、例えば、下記式A−1により表される構成単位が挙げられる。
【0023】
【化1】

【0024】
式A−1中、Lは単結合又は二価の連結基を表し、Lはm+1価の連結基を表し、X及びXはそれぞれ独立に、−O−又は−NR−を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、mは1以上の整数を表す。
【0025】
式A−1中、Lは単結合であることが好ましい。Lが二価の連結基を表す場合、アルキレン基、アリーレン基又はこれらの結合により表される二価の基が好ましく、炭素数2〜10のアルキレン基又はフェニレン基が好ましい。
式A−1中、Lは下記式A−2〜下記式A−6のいずれかにより表される基が好ましい。
式A−1中、X及びXはいずれも−O−であることが好ましい。また、X及びXの少なくとも一つが−NR−を表す場合、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
式A−1中、Rはメチル基であることが好ましい。
式A−1中、m個のRのうち少なくとも1つはメチル基であることが好ましい。
式A−1中、mは1〜4の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
【0026】
【化2】

【0027】
式A−2〜式A−6中、L〜Lは2価の連結基を表し、LとLは異なっていてもよく、*は式A−1中のXとの結合部位を表し、波線部は式A−1中のXとの結合部位を表す。
【0028】
式A−3中、Lはアルキレン基、アリーレン基、又はこれらの結合により表される基であることが好ましく、炭素数1〜10のアルキレン基、フェニレン基又はこれらの結合により表される基であることがより好ましい。
式A−4中、Lはアルキレン基、アリーレン基、又はこれらの結合により表される基であることが好ましく、炭素数1〜10のアルキレン基、フェニレン基又はこれらの結合により表される基であることがより好ましい。
式A−5中、Lはアルキレン基、アリーレン基、又はこれらの結合により表される基であることが好ましく、炭素数1〜10のアルキレン基、フェニレン基又はこれらの結合により表される基であることがより好ましい。
式A−5中、Lはアルキレン基、アリーレン基、又はこれらの結合により表される基であることが好ましく、炭素数1〜10のアルキレン基、フェニレン基又はこれらの結合により表される基であることがより好ましい。
式A−6中、Lはアルキレン基、アリーレン基、又はこれらの結合により表される基であることが好ましく、炭素数1〜10のアルキレン基、フェニレン基又はこれらの結合により表される基であることがより好ましい。
【0029】
構成単位A1の具体例としては、後述する重合体Aの具体例である重合体P−1〜P−13に含まれる構成単位A1が挙げられるが、これに限定されない。
【0030】
−構成単位B1−
重合体Aは、現像性の観点から、親水性基を有する構成単位B1(単に「構成単位B1」ともいう。)を有することが好ましい。
親水性基及びエチレン性不飽和基を有する構成単位は、構成単位B1には該当せず、構成単位A1に該当するものとする。
構成単位B1における親水性基としては、−SO、−OH、−CN、−CONR、−NRCOR(Mは水素原子、金属イオン、アンモニウムイオン、又は、ホスホニウムイオンを表し、R、Rはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基を表す。RとRは結合して環を形成してもよい。)、−NR、−N(R〜Rは、それぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基を表し、Xはカウンターアニオンを表す)、下記式POにより表される基等が挙げられる。
また、構成単位B1はN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のN−ビニルラクタム化合物に由来する構成単位であってもよく、これらのN−ビニルラクタム化合物を重合反応に用いた場合の残基も親水性基に該当する。
これら親水性基の中でも、−CONR又は式POにより表される基が好ましく、式POにより表される基がより好ましい。
【0031】

【0032】
式PO中、Lはそれぞれ独立に、アルキレン基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、nは1〜100の整数を表す。
式PO中、Lはそれぞれ独立に、エチレン基、1−メチルエチレン基又は2−メチルエチレン基であることが好ましく、エチレン基であることがより好ましい。
式PO中、Rは水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であることがより好ましく、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが更に好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
式PO中、nは1〜10の整数が好ましく、1〜4の整数がより好ましい。
【0033】
また、重合体Aは、耐刷性及びUV耐刷性を向上する観点から、構成単位B1として、エーテル結合を含む構成単位を含むことが好ましい。重合体Aが硫黄原子を含む場合には、上記エーテル結合における酸素原子と、硫黄原子とのS−O相互作用により、耐刷性及びUV耐刷性が向上しやすいと考えられる。
上記エーテル結合を含む構成単位としては、式POにより表される基を含む構成単位が挙げられる。
【0034】
構成単位B1は、下記式B−1により表される構成単位であることが好ましい。
【0035】
【化3】

【0036】
式B−1中、Xは−O−又は−NR−を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表し、RB1は親水性基を表し、RB2は水素原子又はアルキル基を表す。
式B−1中、Xは−O−であることが好ましい。Xが−NR−である場合、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
式B−1中、Lは単結合であることが好ましい。Lが2価の連結基である場合、Lはアルキレン基、アリーレン基、又はこれらの結合により表される基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基、フェニレン基又はこれらの結合により表される基であることが好ましい。
式B−1中、RB1は上述の構成単位B1における親水性基であることが好ましく、−CONR又は式POにより表される基がより好ましく、式POにより表される基が更に好ましい。
式B−1中、RB2は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましい。
【0037】
重合体Aは、構成単位B1を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
重合体Aにおける構成単位B1の含有量は、機上現像性とインキの着肉性を両立する観点から、0mol%〜80mol%であることが好ましく、5mol%〜60mol%であることがより好ましい。
【0038】
構成単位B1の具体例としては、後述する重合体Aの具体例である重合体P−1〜P−11及びP−13に含まれる構成単位B1が挙げられるが、これに限定されない。
【0039】
−構成単位C1−
重合体Aは、インキ着肉性の観点から、疎水性基を含む構成単位C1を含有することが好ましい。
構成単位C1における疎水性基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
上記アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ジシクロペンタニル基等が挙げられる。
上記アリール基としては、フェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
上記アラルキル基としては、アルキル基の炭素数が1〜10であり、アリール基の炭素数が6〜20のアラルキル基が好ましく、アルキル基の炭素数が1〜10であり、アリール基がフェニル基であるアラルキル基がより好ましく、ベンジル基が更に好ましい。
【0040】
構成単位C1は、下記式C−1又は式C−2により表される構成単位であることが好ましい。
【0041】
【化4】

【0042】
式C−1中、Xは−O−又は−NR−を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、RC1は疎水性基を表し、RC2は水素原子又はアルキル基を表す。
式C−1中、Xは−O−であることが好ましい。Xが−NR−である場合、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
式C−1中、RC1は上述の構成単位C1における疎水性基であることが好ましく、アルキル基又はアラルキル基が好ましく、炭素数が1〜10のアルキル基、又は、アルキル基の炭素数が1〜10であり、アリール基がフェニル基であるアラルキル基がより好ましい。
式C−1中、RC2は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましい。
【0043】
式C−2中、RC3は一価の置換基を表し、RC4は水素原子又はアルキル基を表し、nは0〜5の整数を表す。
式C−2中、RC3はアルキル基、アリール基又はアラルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜21のアラルキル基がより好ましい。
式C−2中、RC4は水素原子又はメチル基が好ましい。
式C−2中、nは0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0又は1が更に好ましく、0が特に好ましい。
【0044】
重合体Aは、構成単位C1を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
重合体Aにおける構成単位C1の含有量は、機上現像性とインキの着肉性を両立する観点から、1mol%〜80mol%であることが好ましく、3mol%〜40mol%であることがより好ましい。
【0045】
構成単位C1の具体例としては、後述する重合体Aの具体例である重合体P−1〜P−13に含まれる構成単位C1が挙げられるが、これに限定されない。
【0046】
−多官能チオール化合物に由来する構成単位−
重合体Aは、3官能以上10官能以下の多官能チオール化合物に由来する構成単位を含む星型ポリマーであることが好ましい。
星型ポリマーとするため、重合体Aは、3官能以上10官能以下の多官能チオール化合物に由来する構成単位を1つのみ有することが好ましい。
重合体Aが星型高分子である場合、n−星型高分子(n-star macromolecule)であり、かつ、nは3〜10の整数であることが好ましい。
重合体Aは規則性星型高分子(regular star macromolecule)であってもよいし、混合鎖星型高分子(variegated star macromolecule)であってもよい。
上記星型ポリマーは、例えば、3官能以上10官能以下の多官能チオール化合物の存在下で、上記構成単位A1を構成するモノマーと、上記構成単位B1を構成するモノマーと、上記構成単位C1を構成するモノマーとを共重合する方法等の公知の方法により製造することができる。上記星型ポリマー及び上記多官能チオール化合物の製造方法の詳細としては、特開2012−148555号公報の記載を参考にすることができる。
本開示における重合体Aである上記星型ポリマーは、特開2012−148555号公報に記載の星型ポリマーとは重量平均分子量及び構成単位A1の含有量が異なる。この重量平均分子量及び構成単位A1の含有量は、例えば、特開2012−148555号公報に記載の星型ポリマーの製造方法において、多官能チオール化合物の使用量、モノマーを共重合する際の重合開始剤の使用量等を調整することにより、制御することが可能である。
【0047】
本開示において用いられる3官能以上10官能以下の多官能チオール化合物としては、特に限定されないが、3官能以上8官能以下の多官能チオール化合物であることが好ましく、3官能以上6官能以下の多官能チオール化合物であることがより好ましい。
また、本開示において用いられる3官能以上10官能以下の多官能チオール化合物としては、下記式S−1により表される化合物であることが好ましい。
【0048】
【化5】

【0049】
式S−1中、Lはエーテル結合を含んでもよいns価の炭化水素基を表し、Rはチオール基を置換基として有する1価の炭化水素基を表し、nsは3〜10の整数を表す。
式S−1中、Lはエーテル結合を含んでもよいns価の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、エーテル結合を含んでもよいns価の不飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。
の具体例としては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、デュルシトール、イノシトール等の多価アルコール化合物から、化合物内に含まれる全てのヒドロキシ基を除いた構造が挙げられるが、これに限定されるものではない。
式S−1中、Rはチオール基を置換基として有する1価の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、チオール基を置換基として有する1価の不飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。
の具体例としては、メルカプトメチル基、2−メルカプトエチル基、2−メルカプトプロピル基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
式S−1中、nsは3〜10の整数を表し、3〜8の整数であることが好ましく、3〜6の整数であることがより好ましい。
【0050】
その他、多官能チオール化合物としては、特開2012−148555号公報に記載の化合物A〜化合物Fも好適に使用することができる。
【0051】
−その他の構成単位−
本開示に係る重合体Aは、その他の構成単位を更に含んでいてもよい。
その他の構成単位としては、単官能チオール化合物に由来する構成単位、2官能チオール化合物に由来する構成単位等が挙げられる。
【0052】
−硫黄元素含有率−
重合体Aの全質量に対する硫黄元素含有率は、耐刷性及びUV耐刷性を向上する観点から、0.5質量%〜10質量%であることが好ましく、1質量%〜5質量%であることがより好ましい。
硫黄元素の含有率が上述の範囲内であることにより、上述のS−O相互作用の影響により、耐刷性及びUV耐刷性が向上しやすいと考えられる。
硫黄元素は、例えば、上述の単官能チオール化合物又は2官能チオール化合物に由来する構成単位含まれる元素、又は、後述する3官能以上10官能以下の多官能チオール化合物に由来する構成単位に含まれる元素として重合体A中に導入される。
【0053】
重合体Aの具体例を下記表に示すが、本開示において用いられる重合体Aはこれに限定されるものではない。
【0054】
【表1】

【0055】
上記表中、構成単位A1〜構成単位C1の欄のmol%の記載は、重合体Aにおける各構成単位の含有量(mol%)を示している。例えばP−1においては、構成単位A1の含有量が25mol%、構成単位B1の含有量が55mol%、構成単位C1の含有量が16mol%であり、多官能チオール化合物に由来する構成単位SH1の含有量が4mol%となる。
また、重合体P−11における、構成単位C1のmol%の欄における「33(5:5)」の記載は、2つの構成単位C−1が、モル比で5:5の割合で含有されており、その合計含有量が33mol%であることを意味している。
表中の多官能チオール化合物に由来する構成単位であるSH1〜SH5の詳細を下記に示す。
【0056】
【化6】

【0057】
重合体P−1は単官能チオール化合物SH1に由来する構成単位を含む重合体Aであり、構成単位A1〜構成単位C1により形成された分子鎖とSH1とが、SH1中のチオール結合に由来するスルフィド結合により結合した化合物である。
重合体P−2は2官能チオール化合物SH2に由来する構成単位を含む重合体Aであり、構成単位A1〜構成単位C1により形成された分子鎖とSH2とが、SH2中のチオール結合に由来するスルフィド結合によりそれぞれ結合した化合物である。すなわち、重合体P−2はスルフィド結合を2つ有すると考えられる。
重合体P−3は4官能チオール化合物SH3に由来する構成単位を含む重合体Aであり、構成単位A1〜構成単位C1により形成された分子鎖とSH3とが、SH3中のチオール結合に由来するスルフィド結合によりそれぞれ結合した化合物である。すなわち、重合体P−3はスルフィド結合を4つ有すると考えられる。
重合体P−4は4官能チオール化合物SH4に由来する構成単位を含む重合体Aであり、構成単位A1〜構成単位C1により形成された分子鎖とSH4とが、SH4中のチオール結合に由来するスルフィド結合によりそれぞれ結合した化合物である。すなわち、重合体P−4はスルフィド結合を4つ有すると考えられる。
重合体P−5〜P−12は6官能チオール化合物SH5に由来する構成単位を含む重合体Aであり、構成単位A1〜構成単位C1により形成された分子鎖とSH5とが、SH5中のチオール結合に由来するスルフィド結合によりそれぞれ結合した化合物である。すなわち、重合体P−5はスルフィド結合を6つ有すると考えられる。
【0058】
画像記録層は、重合体Aを1種単独で含有してもよいし、2種以上を併用してもよい。
画像記録層の全質量に対する重合体Aの含有量は、5質量%以上95質量%以下であることが好ましく、7質量%以上60質量%以下がより好ましく、10質量%以上30質量%以下がより好ましい。
【0059】
〔電子受容型重合開始剤〕
上記画像記録層は、電子受容型重合開始剤を含むことが好ましい。
本開示に用いられる電子受容型重合開始剤は、光、熱あるいはその両方のエネルギーによりラジカル、カチオン等の重合開始種を発生する化合物であって、公知の熱重合開始剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを適宜選択して用いることができる。
電子受容型重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、オニウム塩化合物がより好ましい。
また、電子受容型重合開始剤としては、赤外線感光性重合開始剤であることが好ましい。
電子受容型重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、(a)有機ハロゲン化物、(b)カルボニル化合物、(c)アゾ化合物、(d)有機過酸化物、(e)メタロセン化合物、(f)アジド化合物、(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(i)ジスルホン化合物、(j)オキシムエステル化合物、(k)オニウム塩化合物が挙げられる。
【0060】
(a)有機ハロゲン化物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0022〜0023に記載の化合物が好ましい。
(b)カルボニル化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0024に記載の化合物が好ましい。
(c)アゾ化合物としては、例えば、特開平8−108621号公報に記載のアゾ化合物等を使用することができる。
(d)有機過酸化物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0025に記載の化合物が好ましい。
(e)メタロセン化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0026に記載の化合物が好ましい。
(f)アジド化合物としては、例えば、2,6−ビス(4−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン等の化合物を挙げることができる。
(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0027に記載の化合物が好ましい。
(i)ジスルホン化合物としては、例えば、特開昭61−166544号、特開2002−328465号の各公報に記載の化合物が挙げられる。
(j)オキシムエステル化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0028〜0030に記載の化合物が好ましい。
【0061】
上記電子受容型重合開始剤の中でも好ましいものとして、硬化性の観点から、オキシムエステル化合物及びオニウム塩化合物が挙げられる。中でも、耐刷性の観点から、ヨードニウム塩化合物、スルホニウム塩化合物又はアジニウム塩化合物が好ましく、ヨードニウム塩化合物又はスルホニウム塩化合物がより好ましく、ヨードニウム塩化合物が特に好ましい。
これら化合物の具体例を以下に示すが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0062】
ヨードニウム塩化合物の例としては、ジアリールヨードニウム塩化合物が好ましく、特に電子供与性基、例えば、アルキル基又はアルコキシル基で置換されたジフェニルヨードニウム塩化合物がより好ましく、また、非対称のジフェニルヨードニウム塩化合物が好ましい。具体例としては、ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−メトキシフェニル−4−(2−メチルプロピル)フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−(2−メチルプロピル)フェニル−p−トリルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4−ジエトキシフェニルヨードニウム=テトラフルオロボラート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=1−ペルフルオロブタンスルホナート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0063】
スルホニウム塩化合物の例としては、トリアリールスルホニウム塩化合物が好ましく、特に電子求引性基、例えば、芳香環上の基の少なくとも一部がハロゲン原子で置換されたトリアリールスルホニウム塩化合物が好ましく、芳香環上のハロゲン原子の総置換数が4以上であるトリアリールスルホニウム塩化合物が更に好ましい。具体例としては、トリフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)フェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)−4−メチルフェニルスルホニウム=テトラフルオロボラート、トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム=3,5−ビス(メトキシカルボニル)ベンゼンスルホナート、トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリス(2,4−ジクロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0064】
また、ヨードニウム塩化合物及びスルホニウム塩化合物の対アニオンとしては、スルホンアミドアニオン又はスルホンイミドアニオンが好ましく、スルホンイミドアニオンがより好ましい。
スルホンアミドアニオンとしては、アリールスルホンアミドアニオンが好ましい。
また、スルホンイミドアニオンとしては、ビスアリールスルホンイミドアニオンが好ましい。
スルホンアミドアニオン又はスルホンイミドアニオンの具体例を以下に示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。下記具体例中、Phはフェニル基を、Meはメチル基を、Etはエチル基を、それぞれ表す。
【0065】
【化7】
【0066】
電子受容型重合開始剤の含有量は、画像記録層の全質量に対して、0.1質量%〜50質量%であることが好ましく、0.5質量%〜30質量%であることがより好ましく、0.8質量%〜20質量%であることが特に好ましい。
【0067】
〔重合性化合物〕
本開示における画像記録層は、重合性化合物を含むことが好ましい。
本開示において、重合性を有する化合物であっても、上述の重合体Aに該当する化合物は、重合性化合物には該当しないものとする。
重合性化合物の分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)は、50以上2,500未満であることが好ましく、50以上2,000以下であることがより好ましい。
本開示に用いられる重合性化合物は、例えば、ラジカル重合性化合物であっても、カチオン重合性化合物であってもよいが、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する付加重合性化合物(エチレン性不飽和化合物)であることが好ましい。エチレン性不飽和化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個有する化合物であることが好ましく、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であることがより好ましい。重合性化合物は、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体若しくはオリゴマー、又は、それらの混合物などの化学的形態をもつ。
【0068】
モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル類、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物、及び単官能もしくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン原子、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸を、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。これらは、特表2006−508380号公報、特開2002−287344号公報、特開2008−256850号公報、特開2001−342222号公報、特開平9−179296号公報、特開平9−179297号公報、特開平9−179298号公報、特開2004−294935号公報、特開2006−243493号公報、特開2002−275129号公報、特開2003−64130号公報、特開2003−280187号公報、特開平10−333321号公報等に記載されている。
【0069】
多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド(EO)変性トリアクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。メタクリル酸エステルとして、テトラメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。また、多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0070】
また、イソシアネートとヒドロキシ基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、その具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記式(M)で表されるヒドロキシ基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH=C(RM4)COOCHCH(RM5)OH (M)
式(M)中、RM4及びRM5はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
【0071】
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報、特開2003−344997号公報、特開2006−65210号公報に記載のウレタンアクリレート類、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報、特開2000−250211号公報、特開2007−94138号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類、米国特許第7153632号明細書、特表平8−505958号公報、特開2007−293221号公報、特開2007−293223号公報に記載の親水基を有するウレタン化合物類も好適である。
【0072】
重合性化合物の構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、任意に設定できる。
重合性化合物の含有量は、画像記録層の全質量に対して、5質量%〜75質量%であることが好ましく、10質量%〜70質量%であることがより好ましく、15質量%〜60質量%であることが特に好ましい。
【0073】
〔赤外線吸収剤〕
上記画像記録層は、赤外線吸収剤を含むことが好ましい
赤外線吸収剤としては、顔料及び染料が挙げられる。
赤外線吸収剤として用いられる染料としては、市販の染料及び例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が挙げられる。中でも、シアニン色素が特に好ましい。
【0074】
シアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落0017〜0019に記載の化合物、特開2002−023360号公報の段落0016〜0021、特開2002−040638号公報の段落0012〜0037に記載の化合物、好ましくは特開2002−278057号公報の段落0034〜0041、特開2008−195018号公報の段落0080〜0086に記載の化合物、特に好ましくは特開2007−90850号公報の段落0035〜0043に記載の化合物、特開2012−206495号公報の段落0105〜0113に記載の化合物が挙げられる。
また、特開平5−5005号公報の段落0008〜0009、特開2001−222101号公報の段落0022〜0025に記載の化合物も好ましく使用することができる。
顔料としては、特開2008−195018号公報の段落0072〜0076に記載の化合物が好ましい。
【0075】
赤外線吸収剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、赤外線吸収剤として顔料と染料とを併用してもよい。
上記画像記録層中の赤外線吸収剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.1質量%〜10.0質量%が好ましく、0.5質量%〜5.0質量%がより好ましい。
【0076】
〔酸発色剤〕
本開示において用いられる画像記録層は、酸発色剤を含むことが好ましい。
本開示で用いられる「酸発色剤」とは、電子受容性化合物(例えば酸等のプロトン)を受容した状態で加熱することにより、発色する性質を有する化合物を意味する。酸発色剤としては、特に、ラクトン、ラクタム、サルトン、スピロピラン、エステル、アミド等の部分骨格を有し、電子受容性化合物と接触した時に、速やかにこれらの部分骨格が開環若しくは開裂する無色の化合物が好ましい。
【0077】
このような酸発色剤の例としては、3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(”クリスタルバイオレットラクトン”と称される)、3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−メチルピロール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、
【0078】
3,3−ビス〔1,1−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3,3−ビス〔1,1−ビス(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラブロモフタリド、3,3−ビス〔1−(4−ジメチルアミノフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3,3−ビス〔1−(4−ピロリジノフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−〔1,1−ジ(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)エチレン−2−イル〕−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド、3−〔1,1−ジ(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)エチレン−2−イル〕−3−(4−N−エチル−N−フェニルアミノフェニル)フタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−フタリド、3,3−ビス(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−フタリド、3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−フタリド等のフタリド類、
【0079】
4,4−ビス−ジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N−ハロフェニル−ロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン、ローダミン−B−アニリノラクタム、ローダミン−(4−ニトロアニリノ)ラクタム、ローダミン−B−(4−クロロアニリノ)ラクタム、3,7−ビス(ジエチルアミノ)−10−ベンゾイルフェノオキサジン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、4ーニトロベンゾイルメチレンブルー、
【0080】
3,6−ジメトキシフルオラン、3−ジメチルアミノ−7−メトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6,7−ジメチルフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−n−ブチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジ−n−ヘキシルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2’−フルオロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2’−クロロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3’−クロロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2’,3’−ジクロロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3’−トリフルオロメチルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(2’−フルオロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(2’−クロロフェニルアミノ)フルオラン、3−N−イソペンチル−N−エチルアミノ−7−(2’−クロロフェニルアミノ)フルオラン、
【0081】
3−N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ−7−(2’−クロロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メトキシ−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−エトキシ−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−モルホリノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−プロピル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−プロピル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−ブチル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−ブチル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−イソブチル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−イソブチル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−イソペンチル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−ヘキシル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−n−プロピルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−n−ヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−n−オクチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、
【0082】
3−N−(2’−メトキシエチル)−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2’−メトキシエチル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2’−メトキシエチル)−N−イソブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2’−エトキシエチル)−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2’−エトキシエチル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(3’−メトキシプロピル)−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(3’−メトキシプロピル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(3’−エトキシプロピル)−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(3’−エトキシプロピル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2’−テトラヒドロフルフリル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(4’−メチルフェニル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−エチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3’−メチルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2’,6’−ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−(2’,6’−ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(2’,6’−ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、2,2−ビス〔4’−(3−N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ−6−メチルフルオラン)−7−イルアミノフェニル〕プロパン、3−〔4’−(4−フェニルアミノフェニル)アミノフェニル〕アミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−〔4’−(ジメチルアミノフェニル)〕アミノ−5,7−ジメチルフルオラン等のフルオラン類、
【0083】
3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−n−プロポキシカルボニルアミノ−4−ジ−n−プロピルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−メチルアミノ−4−ジ−n−プロピルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−メチル−4−ジn−ヘキシルアミノフェニル)−3−(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,7−ジアザフタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4又は7−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4又は7−アザフタリド、3−(2−ヘキシルオキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4又は7−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−フェニルインドール−3−イル)−4又は7−アザフタリド、3−(2−ブトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−フェニルインドール−3−イル)−4又は7−アザフタリド3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン、3−フェニル−スピロ−ジナフトピラン、3−ベンジル−スピロ−ジナフトピラン、3−メチル−ナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピラン、3−プロピル−スピロ−ジベンゾピラン−3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3’−(6’−ジメチルアミノ)フタリド、3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3’−(6’−ジメチルアミノ)フタリド等のフタリド類、
【0084】
その他、2’−アニリノ−6’−(N−エチル−N−イソペンチル)アミノ−3’−メチルスピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン−3−オン、2’−アニリノ−6’−(N−エチル−N−(4−メチルフェニル))アミノ−3’−メチルスピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン]−3−オン、3’−N,N−ジベンジルアミノ−6’−N,N−ジエチルアミノスピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン]−3−オン、2’−(N−メチル−N−フェニル)アミノ−6’−(N−エチル−N−(4−メチルフェニル))アミノスピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン]−3−オンなどが挙げられる。
【0085】
中でも、本開示に用いられる酸発色剤は、発色性の観点から、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、スピロラクトン化合物、及び、スピロラクタム化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
発色後の色素の色相としては、可視性の観点から、緑、青又は黒であることが好ましい。
【0086】
酸発色剤としては上市されている製品を使用することも可能であり、ETAC、RED500、RED520、CVL、S−205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H−7001、GREEN300、NIRBLACK78、BLUE220、H−3035、BLUE203、ATP、H−1046、H−2114(以上、福井山田化学工業(株)製)、ORANGE−DCF、Vermilion−DCF、PINK−DCF、RED−DCF、BLMB、CVL、GREEN−DCF、TH−107(以上、保土ヶ谷化学(株)製)、ODB、ODB−2、ODB−4、ODB−250、ODB−BlackXV、Blue−63、Blue−502、GN−169、GN−2、Green−118、Red−40、Red−8(以上、山本化成(株)製)、クリスタルバイオレットラクトン(東京化成品工業(株)製)等が挙げられる。これらの市販品の中でも、ETAC、S−205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H−7001、GREEN300、NIRBLACK78、H−3035、ATP、H−1046、H−2114、GREEN−DCF、Blue−63、GN−169、クリスタルバイオレットラクトンが、形成される膜の可視光吸収率が良好のため好ましい。
【0087】
これらの酸発色剤は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上の成分を組み合わせて使用することもできる。
酸発色剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.5質量%〜10質量%であることが好ましく、1質量%〜5質量%であることがより好ましい。
【0088】
〔ポリマー粒子〕
上記画像記録層は、ポリマー粒子を含むことが好ましい。
ポリマー粒子は、熱可塑性ポリマー粒子、熱反応性ポリマー粒子、重合性基を有するポリマー粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、及び、ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)よりなる群から選ばれることが好ましい。中でも、重合性基を有するポリマー粒子又はミクロゲルが好ましい。特に好ましい実施形態では、ポリマー粒子は少なくとも1つのエチレン性不飽和重合性基を含む。このようなポリマー粒子の存在により、露光部の耐刷性及び未露光部の機上現像性を高める効果が得られる。
また、ポリマー粒子は、熱可塑性ポリマー粒子であることが好ましい。
【0089】
熱可塑性ポリマー粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9−123387号公報、同9−131850号公報、同9−171249号公報、同9−171250号公報及び欧州特許第931647号明細書などに記載の熱可塑性ポリマー粒子が好ましい。
熱可塑性ポリマー粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、ポリアルキレン構造を有するアクリレート又はメタクリレートなどのモノマーのホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの混合物を挙げることができる。好ましくは、ポリスチレン、スチレン及びアクリロニトリルを含む共重合体、又は、ポリメタクリル酸メチルを挙げることができる。熱可塑性ポリマー粒子の平均粒径は0.01μm〜3.0μmが好ましい。
【0090】
熱反応性ポリマー粒子としては、熱反応性基を有するポリマー粒子が挙げられる。熱反応性ポリマー粒子は熱反応による架橋及びその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
【0091】
熱反応性基を有するポリマー粒子における熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよいが、重合性基であることが好ましく、その例として、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基など)、付加反応を行うイソシアナート基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基及び反応相手であるヒドロキシ基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシ基などが好ましく挙げられる。
【0092】
マイクロカプセルとしては、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分の少なくとも一部をマイクロカプセルに内包させたものである。画像記録層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。マイクロカプセルを含有する画像記録層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有する構成が好ましい態様である。
【0093】
ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)は、その表面又は内部の少なくとも一方に、画像記録層の構成成分の一部を含有することができる。特に、ラジカル重合性基をその表面に有する反応性ミクロゲルは、画像形成感度や耐刷性の観点から好ましい。
【0094】
画像記録層の構成成分をマイクロカプセル化又はミクロゲル化するには、公知の方法が適用できる。
【0095】
また、ポリマー粒子としては、耐刷性、耐汚れ性及び保存安定性の観点から、分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール化合物とイソホロンジイソシアネートとの付加物である多価イソシアネート化合物、及び、活性水素を有する化合物の反応により得られるものが好ましい。
上記多価フェノール化合物としては、フェノール性ヒドロキシ基を有するベンゼン環を複数有している化合物が好ましい。
上記活性水素を有する化合物としては、ポリオール化合物、又は、ポリアミン化合物が好ましく、ポリオール化合物がより好ましく、プロピレングリコール、グリセリン及びトリメチロールプロパンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が更に好ましい。
分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール化合物とイソホロンジイソシアネートとの付加物である多価イソシアネート化合物、及び、活性水素を有する化合物の反応により得られる樹脂の粒子としては、特開2012−206495号公報の段落0032〜0095に記載のポリマー粒子が好ましく挙げられる。
【0096】
更に、ポリマー粒子としては、耐刷性及び耐溶剤性の観点から、疎水性主鎖を有し、i)上記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び、ii)親水性ポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含むことが好ましい。
上記疎水性主鎖としては、アクリル樹脂鎖が好ましく挙げられる。
上記ペンダントシアノ基の例としては、−[CHCH(C≡N)−]又は−[CHC(CH)(C≡N)−]が好ましく挙げられる。
また、上記ペンダントシアノ基を有する構成ユニットは、エチレン系不飽和型モノマー、例えば、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルから、又は、これらの組み合わせから容易に誘導することができる。
また、上記親水性ポリアルキレンオキシドセグメントにおけるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドが好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。
上記親水性ポリアルキレンオキシドセグメントにおけるアルキレンオキシド構造の繰り返し数は、10〜100であることが好ましく、25〜75であることがより好ましく、40〜50であることが更に好ましい。
疎水性主鎖を有し、i)上記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び、ii)親水性ポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含む樹脂の粒子としては、特表2008−503365号公報の段落0039〜0068に記載のものが好ましく挙げられる。
【0097】
ポリマー粒子の平均粒径は、0.01μm〜3.0μmが好ましく、0.03μm〜2.0μmがより好ましく、0.10μm〜1.0μmが更に好ましい。この範囲で良好な解像度と経時安定性が得られる。
本開示における上記各粒子の平均一次粒径は、光散乱法により測定するか、又は、粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、写真上で粒子の粒径を総計で5,000個測定し、平均値を算出するものとする。なお、非球形粒子については写真上の粒子面積と同一の粒子面積を持つ球形粒子の粒径値を粒径とする。
また、本開示における平均粒径は、特に断りのない限り、体積平均粒径であるものとする。
ポリマー粒子の含有量は、画像記録層の全質量に対し、5質量%〜90質量%が好ましい。
【0098】
〔電子供与型重合開始剤〕
本開示において用いられる画像記録層は、電子供与型重合開始剤を含有することが好ましい。電子供与型重合開始剤は、平版印刷版における耐刷性の向上に寄与する。電子供与型重合開始剤としては、例えば、以下の5種類が挙げられる。
(i)アルキル又はアリールアート錯体:酸化的に炭素−ヘテロ結合が解裂し、活性ラジカルを生成すると考えられる。具体的には、ボレート化合物等が挙げられる。
(ii)アミノ酢酸化合物:酸化により窒素に隣接した炭素上のC−X結合が解裂し、活性ラジカルを生成するものと考えられる。Xとしては、水素原子、カルボキシ基、トリメチルシリル基又はベンジル基が好ましい。具体的には、N−フェニルグリシン類(フェニル基に置換基を有していてもよい。)、N−フェニルイミノジ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもよい。)等が挙げられる。
(iii)含硫黄化合物:上述のアミノ酢酸化合物の窒素原子を硫黄原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。具体的には、フェニルチオ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもよい。)等が挙げられる。
(iv)含錫化合物:上述のアミノ酢酸化合物の窒素原子を錫原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。
(v)スルフィン酸塩類:酸化により活性ラジカルを生成し得る。具体的は、アリールスルフィン駿ナトリウム等が挙げられる。
【0099】
これら電子供与型重合開始剤の中でも、画像記録層は、ボレート化合物を含有することが好ましい。ボレート化合物としては、テトラアリールボレート化合物又はモノアルキルトリアリールボレート化合物が好ましく、化合物の安定性の観点から、テトラアリールボレート化合物がより好ましく、テトラフェニルボレート化合物が特に好ましい。
ボレート化合物が有する対カチオンとしては、特に制限はないが、アルカリ金属イオン、又は、テトラアルキルアンモニウムイオンであることが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又は、テトラブチルアンモニウムイオンであることがより好ましい。
【0100】
ボレート化合物として具体的には、ナトリウムテトラフェニルボレートが好ましく挙げられる。
【0101】
以下に電子供与型重合開始剤の好ましい具体例として、B−1〜B−9を示すが、これらに限定されないことは、言うまでもない。また、下記化学式において、Phはフェニル基を表し、Buはn−ブチル基を表す。
【0102】
【化8】

【0103】
電子供与型重合開始剤は、1種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。
電子供与型重合開始剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.01質量%〜30質量%が好ましく、0.05質量%〜25質量%がより好ましく、0.1質量%〜20質量%が更に好ましい。
【0104】
〔バインダーポリマー〕
画像記録層は、重合体A以外のバインダーポリマーを含んでもよい。
上記重合体Aに該当するポリマーは、バインダーポリマーに該当しない。すなわち、本開示に係るバインダーポリマーは、下記(1)及び(2)に記載の条件の1つ又は2つを満たす重合体である。
(1)重量平均分子量が35,000を超える
(2)エチレン性不飽和基を含む構成単位A1の含有量が15mol%未満である
バインダーポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、又は、ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0105】
中でも、バインダーポリマーは平版印刷版原版の画像記録層に用いられる公知のバインダーポリマーを好適に使用することができる。一例として、機上現像型の平版印刷版原版に用いられるバインダーポリマー(以下、機上現像用バインダーポリマーともいう)について、詳細に記載する。
機上現像用バインダーポリマーとしては、アルキレンオキシド鎖を有するバインダーポリマーが好ましい。アルキレンオキシド鎖を有するバインダーポリマーは、ポリ(アルキレンオキシド)部位を主鎖に有していても側鎖に有していてもよい。また、ポリ(アルキレンオキシド)を側鎖に有するグラフトポリマーでも、ポリ(アルキレンオキシド)含有構成単位で構成されるブロックとポリ(アルキレンオキシド)非含有構成単位で構成されるブロックとのブロックコポリマーでもよい。
ポリ(アルキレンオキシド)部位を主鎖に有する場合は、ポリウレタン樹脂が好ましい。ポリ(アルキレンオキシド)部位を側鎖に有する場合の主鎖のポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられ、特に(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
【0106】
また、バインダーポリマーの他の好ましい例として、6官能以上10官能以下の多官能チオールを核として、この核に対しスルフィド結合により結合したポリマー鎖を有し、上記ポリマー鎖が重合性基を有する高分子化合物(以下、星型高分子化合物ともいう。)が挙げられる。星型高分子化合物としては、例えば、特開2012−148555号公報に記載の化合物を好ましく用いることができる。
【0107】
星型高分子化合物は、特開2008−195018号公報に記載のような画像部の皮膜強度を向上するためのエチレン性不飽和結合等の重合性基を、主鎖又は側鎖、好ましくは側鎖に有しているものが挙げられる。重合性基によってポリマー分子間に架橋が形成され、硬化が促進する。
重合性基としては、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基、スチリル基などのエチレン性不飽和基やエポキシ基等が好ましく、(メタ)アクリル基、ビニル基、スチリル基が重合反応性の観点でより好ましく、(メタ)アクリル基が特に好ましい。これらの基は高分子反応や共重合によってポリマーに導入することができる。例えば、カルボキシ基を側鎖に有するポリマーとグリシジルメタクリレートとの反応、あるいはエポキシ基を有するポリマーとメタクリル酸などのエチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応を利用できる。これらの基は併用してもよい。
【0108】
バインダーポリマーの分子量は、GPC法によるポリスチレン換算値として重量平均分子量(Mw)が、2,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、10,000〜300,000であることが更に好ましい。
【0109】
必要に応じて、特開2008−195018号公報に記載のポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなどの親水性ポリマーを併用することができる。また、親油的なポリマーと親水的なポリマーとを併用することもできる。
【0110】
本開示において用いられる画像記録層においては、バインダーポリマーを1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
バインダーポリマーは、画像記録層中に任意な量で含有させることができるが、バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全質量に対して、1質量%〜90質量%であることが好ましく、5質量%〜80質量%であることがより好ましい。
また、本開示における画像記録層における、上述の重合体Aとバインダーポリマーとの合計質量に対するバインダーポリマーの含有量は、0質量%〜99質量%であることが好ましく、20質量%〜95質量%であることがより好ましく、40質量%〜90質量%であることが更に好ましい。
【0111】
〔連鎖移動剤〕
本開示において用いられる画像記録層は、連鎖移動剤を含有してもよい。連鎖移動剤は、平版印刷版における耐刷性の向上に寄与する。
連鎖移動剤としては、チオール化合物が好ましく、沸点(揮発し難さ)の観点で炭素数7以上のチオール化合物がより好ましく、芳香環上にメルカプト基を有する化合物(芳香族チオール化合物)が更に好ましい。上記チオール化合物は単官能チオール化合物であることが好ましい。
【0112】
連鎖移動剤として具体的には、下記の化合物が挙げられる。
【0113】
【化9】

【0114】
【化10】

【0115】
【化11】

【0116】
【化12】

【0117】
連鎖移動剤は、1種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。
連鎖移動剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.05質量%〜40質量%がより好ましく、0.1質量%〜30質量%が更に好ましい。
【0118】
〔低分子親水性化合物〕
画像記録層は、耐刷性の低下を抑制させつつ機上現像性を向上させるために、低分子親水性化合物を含有してもよい。低分子親水性化合物は、分子量1,000未満の化合物が好ましく、分子量800未満の化合物がより好ましく、分子量500未満の化合物が更に好ましい。
低分子親水性化合物としては、例えば、水溶性有機化合物が挙げられる。水溶性有機化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテル又はエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のポリオール類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等の有機アミン類及びその塩、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類及びその塩、アルキルスルファミン酸等の有機スルファミン酸類及びその塩、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等の有機硫酸類及びその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類及びその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類及びその塩、ベタイン類等が挙げられる。
【0119】
低分子親水性化合物としては、ポリオール類、有機硫酸塩類、有機スルホン酸塩類及びベタイン類から選ばれる少なくとも1つを含有させることが好ましい。
【0120】
有機スルホン酸塩類の具体例としては、n−ブチルスルホン酸ナトリウム、n−ヘキシルスルホン酸ナトリウム、2−エチルヘキシルスルホン酸ナトリウム、シクロヘキシルスルホン酸ナトリウム、n−オクチルスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸塩;5,8,11−トリオキサペンタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、5,8,11−トリオキサヘプタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、13−エチル−5,8,11−トリオキサヘプタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、5,8,11,14−テトラオキサテトラコサン−1−スルホン酸ナトリウムなどのエチレンオキシド鎖を含むアルキルスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム、1−ナフチルスルホン酸ナトリウム、4−ヒドロキシナフチルスルホン酸ナトリウム、1,5−ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸トリナトリウムなどのアリールスルホン酸塩、特開2007−276454号公報の段落0026〜0031及び特開2009−154525号公報の段落0020〜0047に記載の化合物等が挙げられる。塩は、カリウム塩、リチウム塩でもよい。
【0121】
有機硫酸塩類としては、ポリエチレンオキシドのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又は複素環モノエーテルの硫酸塩が挙げられる。エチレンオキシド単位の数は1〜4が好ましく、塩はナトリウム塩、カリウム塩又はリチウム塩が好ましい。具体例としては、特開2007−276454号公報の段落0034〜0038に記載の化合物が挙げられる。
【0122】
ベタイン類としては、窒素原子への炭化水素置換基の炭素数が1〜5である化合物が好ましく、具体例としては、トリメチルアンモニウムアセタート、ジメチルプロピルアンモニウムアセタート、3−ヒドロキシ−4−トリメチルアンモニオブチラート、4−(1−ピリジニオ)ブチラート、1−ヒドロキシエチル−1−イミダゾリオアセタート、トリメチルアンモニウムメタンスルホナート、ジメチルプロピルアンモニウムメタンスルホナート、3−トリメチルアンモニオ−1−プロパンスルホナート、3−(1−ピリジニオ)−1−プロパンスルホナート等が挙げられる。
【0123】
低分子親水性化合物は疎水性部分の構造が小さくて界面活性作用がほとんどないため、湿し水が画像記録層露光部(画像部)へ浸透して画像部の疎水性や皮膜強度を低下させることがなく、画像記録層のインキ受容性や耐刷性を良好に維持することができる。
【0124】
低分子親水性化合物の含有量は、画像記録層の全質量に対して、0.5質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜15質量%がより好ましく、2質量%〜10質量%が更に好ましい。この範囲で良好な機上現像性と耐刷性が得られる。
低分子親水性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0125】
〔感脂化剤〕
画像記録層は、着肉性を向上させるために、ホスホニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマー等の感脂化剤を含有してもよい。特に、保護層に無機層状化合物を含有させる場合、これらの化合物は、無機層状化合物の表面被覆剤として機能し、無機層状化合物による印刷途中の着肉性低下を抑制することができる。
感脂化剤としては、ホスホニウム化合物と、含窒素低分子化合物と、アンモニウム基含有ポリマーとを併用することが好ましく、ホスホニウム化合物と、第四級アンモニウム塩類と、アンモニウム基含有ポリマーとを併用することがより好ましい。
【0126】
ホスホニウム化合物としては、特開2006−297907号公報及び特開2007−50660号公報に記載のホスホニウム化合物が挙げられる。具体例としては、テトラブチルホスホニウムヨージド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、1,4−ビス(トリフェニルホスホニオ)ブタン=ジ(ヘキサフルオロホスファート)、1,7−ビス(トリフェニルホスホニオ)ヘプタン=スルファート、1,9−ビス(トリフェニルホスホニオ)ノナン=ナフタレン−2,7−ジスルホナート等が挙げられる。
【0127】
含窒素低分子化合物としては、アミン塩類、第四級アンモニウム塩類が挙げられる。また、イミダゾリニウム塩類、ベンゾイミダゾリニウム塩類、ピリジニウム塩類、キノリニウム塩類も挙げられる。中でも、第四級アンモニウム塩類及びピリジニウム塩類が好ましい。具体例としては、テトラメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、テトラブチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ドデシルトリメチルアンモニウム=p−トルエンスルホナート、ベンジルトリエチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルオクチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、特開2008−284858号公報の段落0021〜0037、特開2009−90645号公報の段落0030〜0057に記載の化合物等が挙げられる。
【0128】
アンモニウム基含有ポリマーとしては、その構造中にアンモニウム基を有すればよく、側鎖にアンモニウム基を有する(メタ)アクリレートを共重合成分として5mol%〜80mol%含有するポリマーが好ましい。具体例としては、特開2009−208458号公報の段落0089〜0105に記載のポリマーが挙げられる。
【0129】
アンモニウム塩含有ポリマーは、特開2009−208458号公報に記載の測定方法に従って求められる還元比粘度(単位:ml/g)の値が、5〜120の範囲のものが好ましく、10〜110の範囲のものがより好ましく、15〜100の範囲のものが特に好ましい。上記還元比粘度を重量平均分子量(Mw)に換算した場合、10,000〜150,0000が好ましく、17,000〜140,000がより好ましく、20,000〜130,000が特に好ましい。
【0130】
以下に、アンモニウム基含有ポリマーの具体例を示す。
(1)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p−トルエンスルホナート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比10/90、Mw4.5万)
(2)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.0万)
(3)2−(エチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p−トルエンスルホナート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比30/70、Mw4.5万)
(4)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/2−エチルヘキシルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.0万)
(5)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=メチルスルファート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比40/60、Mw7.0万)
(6)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比25/75、Mw6.5万)
(7)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルアクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.5万)
(8)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=13−エチル−5,8,11−トリオキサ−1−ヘプタデカンスルホナート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw7.5万)
(9)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート/2−ヒドロキシ−3−メタクロイルオキシプロピルメタクリレート共重合体(モル比15/80/5、Mw6.5万)
【0131】
感脂化剤の含有量は、画像記録層の全質量に対して、0.01質量%〜30.0質量%が好ましく、0.1質量%〜15.0質量%がより好ましく、1質量%〜10質量%が更に好ましい。
【0132】
〔その他の成分〕
画像記録層には、その他の成分として、界面活性剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機粒子、無機層状化合物等を含有することができる。具体的には、特開2008−284817号公報の段落0114〜0159の記載を参照することができる。
【0133】
〔画像記録層の形成〕
本開示に係る平版印刷版原版における画像記録層は、例えば、特開2008−195018号公報の段落0142〜0143に記載のように、必要な上記各成分を公知の溶剤に分散又は溶解して塗布液を調製し、塗布液を支持体上にバーコーター塗布など公知の方法で塗布し、乾燥することにより形成することができる。塗布、乾燥後における画像記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、0.3g/m〜3.0g/mが好ましい。この範囲で、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性が得られる。
溶剤としては、公知の溶剤を用いることができる。具体的には、例えば、水、アセトン、メチルエチルケトン(2−ブタノン)、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメーチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−1−プロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。溶剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。塗布液中の固形分濃度は1〜50質量%程度であることが好ましい。
塗布、乾燥後における画像記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性を得る観点から、0.3〜3.0g/m程度が好ましい。
【0134】
<下塗り層>
本開示に係る平版印刷版原版は、画像記録層と支持体との間に下塗り層(中間層と呼ばれることもある。)を有することが好ましい。下塗り層は、露光部においては支持体と画像記録層との密着を強化し、未露光部においては画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性を損なわずに現像性を向上させることに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合に、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散して感度が低下するのを防ぐ効果も有する。
【0135】
下塗り層に用いられる化合物としては、支持体表面に吸着可能な吸着性基及び親水性基を有するポリマーが挙げられる。画像記録層との密着性を向上させるために吸着性基及び親水性基を有し、更に架橋性基を有するポリマーが好ましい。下塗り層に用いられる化合物は、低分子化合物でもポリマーであってもよい。下塗り層に用いられる化合物は、必要に応じて、2種以上を混合して使用してもよい。
【0136】
下塗り層に用いられる化合物がポリマーである場合、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー及び架橋性基を有するモノマーの共重合体が好ましい。
支持体表面に吸着可能な吸着性基としては、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、−PO、−OPO、−CONHSO−、−SONHSO−、−COCHCOCHが好ましい。親水性基としては、スルホ基又はその塩、カルボキシ基の塩が好ましい。架橋性基としては、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アリル基などが好ましい。
ポリマーは、ポリマーの極性置換基と、上記極性置換基と対荷電を有する置換基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物との塩形成で導入された架橋性基を有してもよいし、上記以外のモノマー、好ましくは親水性モノマーが更に共重合されていてもよい。
【0137】
具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物が好適に挙げられる。特開2005−238816号、特開2005−125749号、特開2006−239867号、特開2006−215263号の各公報に記載の架橋性基(好ましくは、エチレン性不飽和結合基)、支持体表面と相互作用する官能基及び親水性基を有する低分子又は高分子化合物も好ましく用いられる。
より好ましいものとして、特開2005−125749号及び特開2006−188038号公報に記載の支持体表面に吸着可能な吸着性基、親水性基及び架橋性基を有する高分子ポリマーが挙げられる。
【0138】
下塗り層に用いられるポリマー中のエチレン性不飽和結合基の含有量は、ポリマー1g当たり、好ましくは0.1mmol〜10.0mmol、より好ましくは0.2mmol〜5.5mmolである。
下塗り層に用いられるポリマーの重量平均分子量(Mw)は、5,000以上が好ましく、1万〜30万がより好ましい。
【0139】
下塗り層は、上記下塗り層用化合物の他に、経時による汚れ防止のため、キレート剤、第二級又は第三級アミン、重合禁止剤、アミノ基又は重合禁止能を有する官能基と支持体表面に対して相互作用する基とを有する化合物(例えば、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、2,3,5,6−テトラヒドロキシ−p−キノン、クロラニル、スルホフタル酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸など)等を含有してもよい。
【0140】
下塗り層は、公知の方法で塗布される。下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1mg/m〜100mg/mが好ましく、1mg/m〜30mg/mがより好ましい。
【0141】
<保護層>
本開示に係る平版印刷版原版は、画像記録層の上に保護層(オーバーコート層と呼ばれることもある。)を有することが好ましい。保護層は酸素遮断により画像形成阻害反応を抑制する機能の他、画像記録層における傷の発生防止及び高照度レーザー露光時のアブレーション防止の機能を有する。
【0142】
このような特性の保護層については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特公昭55−49729号公報に記載されている。保護層に用いられる酸素低透過性のポリマーとしては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができ、必要に応じて2種類以上を混合して使用することもできる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース誘導体、ポリ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
変性ポリビニルアルコールとしてはカルボキシ基又はスルホ基を有する酸変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。具体的には、特開2005−250216号公報及び特開2006−259137号公報に記載の変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0143】
保護層は、酸素遮断性を高めるために無機層状化合物を含有することが好ましい。無機層状化合物は、薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、天然雲母、合成雲母等の雲母群、式:3MgO・4SiO・HOで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウム等が挙げられる。
好ましく用いられる無機層状化合物は雲母化合物である。雲母化合物としては、例えば、式:A(B,C)2−510(OH,F,O)〔ただし、Aは、K、Na、Caのいずれか、B及びCは、Fe(II)、Fe(III)、Mn、Al、Mg、Vのいずれかであり、Dは、Si又はAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群が挙げられる。
【0144】
雲母群においては、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。合成雲母としてはフッ素金雲母KMg(AlSi10)F、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si10)F等の非膨潤性雲母、及び、NaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si10)F、Na又はLiテニオライト(Na,Li)MgLi(Si10)F、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si10)F等の膨潤性雲母等が挙げられる。更に合成スメクタイトも有用である。
【0145】
上記の雲母化合物の中でも、フッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。すなわち、膨潤性合成雲母は、10Å〜15Å(1Å=0.1nm)程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘土鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にLi、Na、Ca2+、Mg2+等の陽イオンを吸着している。これらの層間に介在している陽イオンは交換性陽イオンと呼ばれ、いろいろな陽イオンと交換し得る。特に、層間の陽イオンがLi、Naの場合、イオン半径が小さいため層状結晶格子間の結合が弱く、水により大きく膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、特に好ましく用いられる。
【0146】
雲母化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きい程よい。従って、アスペクト比は、好ましくは20以上であり、より好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。アスペクト比は粒子の厚さに対する長径の比であり、例えば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。アスペクト比の上限値は、制限されず、例えば、1000以下とすることができる。
【0147】
雲母化合物の粒子径は、その平均長径が、好ましくは0.3μm〜20μm、より好ましくは0.5μm〜10μm、特に好ましくは1μm〜5μmである。粒子の平均の厚さは、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.01μm以下である。具体的には、例えば、代表的化合物である膨潤性合成雲母の場合、好ましい態様としては、厚さが1nm〜50nm程度、面サイズ(長径)が1μm〜20μm程度である。
【0148】
無機層状化合物の含有量は、保護層の全固形分に対して、1質量%〜60質量%が好ましく、3質量%〜50質量%がより好ましい。複数種の無機層状化合物を併用する場合でも、無機層状化合物の合計量が上記の含有量であることが好ましい。上記範囲で酸素遮断性が向上し、良好な感度が得られる。また、着肉性の低下を防止できる。
【0149】
保護層は可撓性付与のための可塑剤、塗布性を向上させための界面活性剤、表面の滑り性を制御するための無機粒子など公知の添加物を含有してもよい。また、画像記録層において記載した感脂化剤を保護層に含有させてもよい。
【0150】
保護層は公知の方法で塗布される。保護層の塗布量(固形分)は、0.01g/m〜10g/mが好ましく、0.02g/m〜3g/mがより好ましく、0.02g/m〜1g/mが特に好ましい。
【0151】
(平版印刷版の作製方法)
本開示に係る平版印刷版原版を画像露光して現像処理を行うことで平版印刷版を作製することができる。
本開示に係る平版印刷版の作製方法は、本開示に係る平版印刷版原版を画像様に露光し、露光部と未露光部とを形成する工程(以下、「露光工程」ともいう。)、及び、印刷インキ及び湿し水の少なくとも一方を供給して上記未露光部を除去する工程(以下、「機上現像工程」ともいう。)を含むことが好ましい。
また、本開示に係る平版印刷版の作製方法の他の一実施態様は、本開示に係る平版印刷版原版を画像様に露光し、露光部と未露光部とを形成する露光工程、及び、pHが2以上11以下の現像液を供給して上記未露光部を除去する工程(以下、「現像工程」ともいう。)をこの順で含むことが好ましい。
以下、本開示に係る平版印刷版の作製方法、及び、本開示に係る平版印刷方法について、各工程の好ましい態様を順に説明する。なお、本開示に係る平版印刷版原版は、現像液によっても現像可能である。
【0152】
<露光工程>
本開示に係る平版印刷版の作製方法は、本開示に係る平版印刷版原版を画像様に露光し、露光部と未露光部とを形成する露光工程を含むことが好ましい。本開示に係る平版印刷版原版は、線画像、網点画像等を有する透明原画を通してレーザー露光するかデジタルデータによるレーザー光走査等で画像様に露光されることが好ましい。
光源の波長は750nm〜1,400nmが好ましく用いられる。750nm〜1,400nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。赤外線レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20マイクロ秒以内であるのが好ましく、また照射エネルギー量は10mJ/cm〜300mJ/cmであるのが好ましい。また、露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いることが好ましい。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、及びフラットベッド方式等のいずれでもよい。
画像露光は、プレートセッターなどを用いて常法により行うことができる。機上現像の場合には、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光を行ってもよい。
【0153】
<機上現像工程>
本開示に係る平版印刷版の作製方法は、印刷インキ及び湿し水の少なくとも一方を供給して上記未露光部を除去する機上現像工程を含むことが好ましい。
また、本開示に係る平版印刷版の作製方法は、現像液にて現像する方法(現像液処理方式)で行ってもよい。
以下に、機上現像方式について説明する。
【0154】
〔機上現像方式〕
機上現像方式においては、画像露光された平版印刷版原版は、印刷機上で油性インキと水性成分とを供給し、非画像部の画像記録層が除去されて平版印刷版が作製されることが好ましい。
すなわち、平版印刷版原版を画像露光後、何らの現像処理を施すことなくそのまま印刷機に装着するか、あるいは、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光し、ついで、油性インキと水性成分とを供給して印刷すると、印刷途上の初期の段階で、非画像部においては、供給された油性インキ及び水性成分のいずれか又は両方によって、未硬化の画像記録層が溶解又は分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。一方、露光部においては、露光により硬化した画像記録層が、親油性表面を有する油性インキ受容部を形成する。最初に版面に供給されるのは、油性インキでもよく、水性成分でもよいが、水性成分が除去された画像記録層の成分によって汚染されることを防止する点で、最初に油性インキを供給することが好ましい。このようにして、平版印刷版原版は印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。油性インキ及び水性成分としては、通常の平版印刷用の印刷インキ及び湿し水が好適に用いられる。
【0155】
上記本開示に係る平版印刷版原版を画像露光するレーザーとしては、光源の波長は300nm〜450nm又は750nm〜1,400nmが好ましく用いられる。300nm〜450nmの光源の場合は、この波長領域に吸収極大を有する増感色素を画像記録層に含有する平版印刷版原版が好ましく用いられ、750〜1,400nmの光源は上述したものが好ましく用いられる。300nm〜450nmの光源としては、半導体レーザーが好適である。
【0156】
〔現像液処理方式〕
本開示に係る平版印刷版原版は、画像記録層の構成成分である重合体A、バインダーポリマー等を適宜選択することにより、現像液を用いる現像処理によっても平版印刷版を作製することができる。現像液を用いる現像処理は、界面活性剤及び水溶性高分子化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含有してもよいpH2〜11の現像液を用いる態様(簡易現像処理ともいう)を含む。
【0157】
現像液中に、必要に応じて、水溶性高分子化合物を含有させる等の方法により、現像及びガム液処理工程を同時に行うこともできる。
従って後水洗工程は特に必要とせず、1液1工程で現像とガム液処理を行ったのち、乾燥工程を行うこともできる。それ故、現像液を用いる現像処理としては、画像露光後の平版印刷版原版をpHが2〜11の現像液により現像処理する工程を含む平版印刷版の作製方法が好ましい。現像処理の後、スクイズローラーを用いて余剰の現像液を除去してから乾燥を行うことが好ましい。
【0158】
すなわち、本開示に係る平版印刷版の作製方法の現像工程においては、1液1工程で現像処理とガム液処理とを行うことが好ましい。
1液1工程で現像とガム液処理を行うとは、現像処理と、ガム液処理とを別々の工程として行うのではなく、1液により、現像処理とガム液処理とを1工程において行うことを意味する。
【0159】
現像処理は、現像液の供給手段及び擦り部材を備えた自動現像処理機により好適に実施することができる。擦り部材として、回転ブラシロールを用いる自動現像処理機が特に好ましい。
回転ブラシロールは2本以上が好ましい。更に自動現像処理機は現像処理手段の後に、スクイズローラー等の余剰の現像液を除去する手段、温風装置等の乾燥手段を備えていることが好ましい。また、自動現像処理機は現像処理手段の前に、画像露光後の平版印刷版原版を加熱処理するための前加熱手段を備えていてもよい。
このような自動現像処理機での処理は、いわゆる機上現像処理の場合に生ずる画像記録層(及び、平版印刷版原版が保護層を有する場合には保護層)に由来の現像カスへの対応から開放されるという利点がある。
【0160】
現像工程において、手処理の場合、現像処理方法としては、例えば、スポンジ、脱脂綿等に水溶液を含ませ、版面全体を擦りながら処理し、処理終了後に乾燥する方法が好適に挙げられる。浸漬処理の場合は、例えば、平版印刷版原版を水溶液の入ったバット、深タンク等に約60秒浸して撹拌した後、脱脂綿、スポンジなどで擦りながら乾燥する方法が好適に挙げられる。
【0161】
現像処理には、構造の簡素化、工程を簡略化した装置が用いられることが好ましい。
例えば、アルカリ現像処理においては、前水洗工程により保護層を除去し、次いで高pHのアルカリ性現像液により現像を行い、その後、後水洗工程でアルカリを除去し、ガム引き工程でガム処理を行い、乾燥工程で乾燥する。簡易現像処理においては、現像及びガム引きを1液で同時に行うことができる。従って、後水洗工程及びガム処理工程は省略することが可能となり、1液で現像とガム引き(ガム液処理)とを行った後、必要に応じて乾燥工程を行うことが好ましい。
更に、前水洗工程も行うことなく、保護層の除去、現像及びガム引きを1液で同時に行うことが好ましい。また、現像及びガム引きの後に、スクイズローラーを用いて余剰の現像液を除去した後、乾燥を行うことが好ましい。
【0162】
上記現像工程においては、平版印刷版原版を現像液に1回浸漬する方法であってもよいし、2回以上浸漬する方法であってもよい。中でも、平版印刷版原版を上記現像液に1回又は2回浸漬する方法が好ましい。
浸漬は、現像液が溜まった現像液槽中に露光済みの平版印刷版原版をくぐらせてもよいし、露光済みの平版印刷版原版の版面上にスプレーなどから現像液を吹き付けてもよい。
なお、現像液に2回以上浸漬する場合であっても、同じ現像液、又は、現像液と現像処理により画像記録層の成分の溶解又は分散した現像液(疲労液)とを用いて2回以上浸漬する場合は、1液での現像処理(1液処理)という。
【0163】
現像処理では、擦り部材を用いることが好ましく、画像記録層の非画像部を除去する現像浴には、ブラシ等の擦り部材が設置されることが好ましい。
現像処理は、常法に従って、好ましくは0℃〜60℃、より好ましくは15℃〜40℃の温度で、例えば、露光処理した平版印刷版原版を現像液に浸漬してブラシで擦る、又は、外部のタンクに仕込んだ処理液をポンプで汲み上げてスプレーノズルから吹き付けてブラシで擦る等により行うことができる。これらの現像処理は、複数回続けて行うこともできる。例えば、外部のタンクに仕込んだ現像液をポンプで汲み上げてスプレーノズルから吹き付けてブラシで擦った後に、再度スプレーノズルから現像液を吹き付けてブラシで擦る等により行うことができる。自動現像機を用いて現像処理を行う場合、処理量の増大により現像液が疲労してくるので、補充液又は新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させることが好ましい。
【0164】
現像処理には、従来、PS版(Presensitized Plate)及びCTP(Computer to Plate)用に知られているガムコーター、自動現像機も用いることができる。自動現像機を用いる場合、例えば、現像槽に仕込んだ現像液、又は、外部のタンクに仕込んだ現像液をポンプで汲み上げてスプレーノズルから吹き付けて処理する方式、現像液が満たされた槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて処理する方式、実質的に未使用の現像液を一版毎に必要な分だけ供給して処理するいわゆる使い捨て処理方式のいずれの方式も適用できる。いずれの方式においても、ブラシ、モルトンなどによるこすり機構があるものがより好ましい。例えば、市販の自動現像機(例えば、Clean Out Unit C85/C125、Clean−Out Unit+ C85/120、FCF 85V、FCF 125V、FCF News(Glunz & Jensen社製)、Azura CX85、Azura CX125、Azura CX150(AGFA GRAPHICS社製)を利用することができる。また、レーザー露光部と自動現像機部分とが一体に組み込まれた装置を利用することもできる。
【0165】
現像工程において用いられる現像液の成分等の詳細を以下に説明する。
【0166】
−pH−
現像液のpHは、2〜11が好ましく、5〜9がより好ましく、7〜9が更に好ましい。現像性及び画像記録層の分散性の観点から言えば、pHの値を高めに設定するほうが有利であるが、印刷性、とりわけ汚れの抑制に関しては、pHの値を低めに設定するほうが有効である。
ここで、pHはpHメーター(型番:HM−31、東亜ディーケーケー(株)製)を用いて25℃で測定される値である。
【0167】
−界面活性剤−
現像液には、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などの界面活性剤を含有することができる。
上記現像液は、ブラン汚れ性の観点から、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
また、上記現像液は、ノニオン性界面活性剤を含むことが好ましく、ノニオン性界面活性剤と、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種と、を含むことがより好ましい。
【0168】
アニオン性界面活性剤として、下記式(I)で表される化合物が好ましく挙げられる。
−Y−X (I)
式(I)中、Rは置換基を有していてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基を表す。
アルキル基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、ステアリル基等を好ましく挙げることができる。
シクロアルキル基としては、単環型でもよく、多環型でもよい。単環型としては、炭素数3〜8の単環型シクロアルキル基であることが好ましく、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はシクロオクチル基であることがより好ましい。多環型としては例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α−ピネル基、トリシクロデカニル基等を好ましく挙げることができる。
アルケニル基としては、例えば、炭素数2〜20のアルケニル基であることが好ましく、具体的には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基等を好ましく挙げることができる。
アラルキル基としては、例えば、炭素数7〜12のアラルキル基であることが好ましく、具体的には、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等を好ましく挙げることができる。
アリール基としては、例えば、炭素数6〜15のアリール基であることが好ましく、具体的には、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、9,10−ジメトキシアントリル基等を好ましく挙げることができる。
【0169】
置換基としては、水素原子を除く一価の非金属原子団が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br又はI)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミド基、エステル基、アシロキシ基、カルボキシ基、カルボン酸アニオン基、スルホン酸アニオン基等が挙げられる。
【0170】
置換基におけるアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ステアリルオキシ基、メトキシエトキシ基、ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等の好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜20のものが挙げられる。アリールオキシ基としては、フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、メシチルオキシ基、クメニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、エトキシフェニルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、ブロモフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6〜18のものが挙げられる。アシル基としては、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等の炭素数2〜24のものが挙げられる。アミド基としては、アセトアミド基、プロピオン酸アミド基、ドデカン酸アミド基、パルチミン酸アミド基、ステアリン酸アミド基、安息香酸アミド基、ナフトイック酸アミド基等の炭素数2〜24のものが挙げられる。アシロキシ基としては、アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ナフトイルオキシ基等の炭素数2〜20のものが挙げられる。エステル基としては、メチルエステル基、エチルエステル基、プロピルエステル基、ヘキシルエステル基、オクチルエステル基、ドデシルエステル基、ステアリルエステル基等の炭素数1〜24のものが挙げられる。置換基は、上記置換基の2以上の組み合わせからなるものであってもよい。
【0171】
は、スルホン酸塩基、硫酸モノエステル塩基、カルボン酸塩基又は燐酸塩基を表す。
は、単結合、−C2n−、−Cn−m2(n−m)OC2m−、−O−(CHCHO)−、−O−(CHCHCHO)−、−CO−NH−、又は、これらの2以上の組み合わせからなる2価の連結基を表し、n≧1及びn≧m≧0を満たす。
【0172】
式(I)で表される化合物の中で、下記式(I−A)又は式(I−B)で表される化合物が、耐キズ汚れ性の観点から、好ましい。
【0173】
【化13】

【0174】
式(I−A)及び式(I−B)中、RA1〜RA10はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、nAは1〜3の整数を表し、XA1及びXA2はそれぞれ独立に、スルホン酸塩基、硫酸モノエステル塩基、カルボン酸塩基又は燐酸塩基を表し、YA1及びYA2はそれぞれ独立に、単結合、−C2n−、−Cn−m2(n−m)OC2m−、−O−(CHCHO)−、−O−(CHCHCHO)−、−CO−NH−、又は、これらを2以上組み合わせた2価の連結基を表し、n≧1及びn≧m≧0を満たし、RA1〜RA5又はRA6〜RA10中、及び、YA1又はYA2中の炭素数の総和は3以上である。
【0175】
上記式(I−A)又は式(I−B)で表される化合物における、RA1〜RA5及びY1A、又は、RA6〜RA10及びYA2の総炭素数は、25以下であることが好ましく、4〜20であることがより好ましい。上述したアルキル基の構造は、直鎖であってもよく、分枝であってもよい。
式(I−A)又は式(I−B)で表される化合物におけるXA1及びXA2は、スルホン酸塩基、又は、カルボン酸塩基であることが好ましい。また、XA1及びXA2における塩構造は、アルカリ金属塩が特に水系溶媒への溶解性が良好であり好ましい。中でも、ナトリウム塩、又は、カリウム塩が特に好ましい。
上記式(I−A)又は式(I−B)で表される化合物としては、特開2007−206348号公報の段落0019〜0037の記載を参照することができる。
アニオン性界面活性剤としては、特開2006−65321号公報の段落0023〜0028に記載の化合物も好適に用いることができる。
【0176】
現像液に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されないが、アルキルジメチルアミンオキシドなどのアミンオキシド系、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキルイミダゾールなどのベタイン系、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウムなどのアミノ酸系が挙げられる。
【0177】
特に、置換基を有してもよいアルキルジメチルアミンオキシド、置換基を有してもよいアルキルカルボキシベタイン、置換基を有してもよいアルキルスルホベタインが好ましく用いられる。これらの具体例としては、特開2008−203359号公報の段落0256の式(2)で示される化合物、特開2008−276166号公報の段落0028の式(I)、式(II)、式(VI)で示される化合物、特開2009−47927号公報の段落0022〜0029に記載の化合物を挙げることができる。
【0178】
現像液に用いられる両性界面活性剤としては、下記式(1)で表される化合物又は式(2)で表される化合物が好ましい。
【0179】
【化14】

【0180】
式(1)及び(2)中、R及びR11はそれぞれ独立に、炭素数8〜20のアルキル基又は総炭素数8〜20の連結基を有するアルキル基を表す。
、R、R12及びR13はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はエチレンオキサイド構造を含有する基を表す。
及びR14はそれぞれ独立に、単結合又はアルキレン基を表す。
また、R、R、R及びRのうち2つの基は互いに結合して環構造を形成してもよく、R11、R12、R13及びR14のうち2つの基は互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0181】
上記式(1)で表される化合物又は式(2)で表される化合物において、総炭素数値が大きくなると疎水部分が大きくなり、水系の現像液への溶解性が低下する。この場合、溶解を助けるアルコール等の有機溶剤を、溶解助剤として水に混合することにより、溶解性は良化するが、総炭素数値が大きくなりすぎた場合、適正混合範囲内で界面活性剤を溶解することはできない。従って、R〜R又はR11〜R14の炭素数の総和は好ましくは10〜40、より好ましくは12〜30である。
【0182】
又はR11で表される連結基を有するアルキル基は、アルキル基の間に連結基を有する構造を表す。すなわち、連結基が1つの場合は、「−アルキレン基−連結基−アルキル基」で表すことができる。連結基としては、例えば、エステル結合、カルボニル結合、アミド結合が挙げられる。連結基は2以上あってもよいが、1つであることが好ましく、アミド結合が特に好ましい。連結基と結合するアルキレン基の総炭素数は1〜5であることが好ましい。このアルキレン基は直鎖であっても分岐であってもよいが、直鎖アルキレン基が好ましい。連結基と結合するアルキル基は炭素数が3〜19であることが好ましく、直鎖であっても分岐であってもよいが、直鎖アルキルであることが好ましい。
【0183】
又はR12がアルキル基である場合、炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜3であることが特に好ましい。直鎖、分岐のいずれでもよいが、直鎖アルキル基であることが好ましい。
【0184】
又はR13がアルキル基である場合、炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜3であることが特に好ましい。直鎖、分岐のいずれでもよいが、直鎖アルキル基であることが好ましい。
又はR13で表されるエチレンオキサイド構造を含有する基としては、−R(CHCHO)で表される基を挙げることができる。ここで、Rは単結合、酸素原子又は2価の有機基(好ましくは炭素数10以下)を表し、Rは水素原子又は有機基(好ましくは炭素数10以下)を表し、nは1〜10の整数を表す。
【0185】
及びR14がアルキレン基である場合、炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜3であることが特に好ましい。直鎖、分岐のいずれでもよいが、直鎖アルキレン基であることが好ましい。
式(1)で表される化合物又は式(2)で表される化合物は、アミド結合を有することが好ましく、R又はR11の連結基としてアミド結合を有することがより好ましい。
式(1)で表される化合物又は式(2)で表される化合物の代表的な例を以下に示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0186】
【化15】

【0187】
【化16】

【0188】
【化17】

【0189】
式(1)又は(2)で表される化合物は公知の方法に従って合成することができる。また、市販されているものを用いることも可能である。市販品として、式(1)で表される化合物は川研ファインケミカル(株)製のソフタゾリンLPB、ソフタゾリンLPB−R、ビスタMAP、竹本油脂(株)製のタケサーフC−157L等が挙げられる。式(2)で表される化合物は川研ファインケミカル(株)製のソフタゾリンLAO、第一工業製薬(株)製のアモーゲンAOL等があげられる。
両性界面活性剤は現像液中に、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0190】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンジグリセリン類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等が挙げられる。
また、アセチレングリコール系とアセチレンアルコール系のオキシエチレン付加物、フッ素系等の界面活性剤も同様に使用することができる。これら界面活性剤は2種以上併用することもできる。
【0191】
ノニオン性界面活性剤として特に好ましくは、下記式(N1)で示されるノニオン性芳香族エーテル系界面活性剤が挙げられる。
−Y−O−(AnB−(AmB−H (N1)
式中、Xは置換基を有していてもよい芳香族基を表し、Yは単結合又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し、A及びAは互いに異なる基であって、−CH2CH2O−又は−CH2CH(CH3)O−のいずれかを表し、nB及びmBはそれぞれ独立に、0〜100の整数を表し、ただし、nBとmBとは同時に0ではなく、また、nB及びmBのいずれかが0である場合には、nB及びmBは1ではない。
式中、Xの芳香族基としてフェニル基、ナフチル基、アントラニル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素数1〜100の有機基が挙げられる。なお、式中、A及びBがともに存在するとき、ランダムでもブロックの共重合体でもよい。
【0192】
上記炭素数1〜100の有機基の具体例としては、飽和でも不飽和でよく直鎖でも分岐鎖でもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基など、その他に、アルコキシ基、アリーロキシ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、ポリオキシアルキレン鎖、ポリオキシアルキレン鎖が結合している上記の有機基などが挙げられる。上記アルキル基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。
また、ノニオン性界面活性剤としては、特開2006−65321号公報の段落0030〜0040に記載された化合物も好適に用いることができる。
【0193】
カチオン性界面活性剤としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、アルキルイミダゾリニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体等が挙げられる。
【0194】
界面活性剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の含有量は、現像液の全質量に対し、1質量%〜25質量%が好ましく、2質量%〜20質量%がより好ましく、3質量%〜15質量%が更に好ましく、5質量%〜10質量%が特に好ましい。上記範囲であると、耐キズ汚れ性により優れ、現像カスの分散性に優れ、また、得られる平版印刷版のインキ着肉性に優れる。
【0195】
−水溶性高分子化合物−
現像液は、現像液の粘度調整及び得られる平版印刷版の版面の保護の観点から、水溶性高分子化合物を含むことができる。
水溶性高分子化合物としては、大豆多糖類、変性澱粉、アラビアガム、デキストリン、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース等)及びその変性体、プルラン、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及びアクリルアミド共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体などの水溶性高分子化合物を含有することができる。
【0196】
上記大豆多糖類としては、従来知られているものが使用でき、例えば市販品として商品名ソヤファイブ(不二製油(株)製)があり、各種グレードのものを使用することができる。好ましく使用できるものは、10質量%水溶液の粘度が10mPa・s〜100mPa・sの範囲にあるものである。
【0197】
上記変性澱粉としては、下記式(III)で表される澱粉が好ましい。式(III)で表される澱粉としては、トウモロコシ、じゃがいも、タピオカ、米、小麦等のいずれの澱粉も使用できる。これらの澱粉の変性は、酸又は酵素等で1分子当たりグルコース残基数5〜30の範囲で分解し、更にアルカリ中でオキシプロピレンを付加する方法等で行うことができる。
【0198】
【化18】

【0199】
式中、エーテル化度(置換度)はグルコース単位当たり0.05〜1.2の範囲であり、nは3〜30の整数を表し、mは1〜3の整数を表す。
【0200】
水溶性高分子化合物の中でも特に好ましいものとしては、大豆多糖類、変性澱粉、アラビアガム、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0201】
水溶性高分子化合物は、2種以上を併用することができる。
現像液が水溶性高分子化合物を含む場合、水溶性高分子化合物の含有量は、現像液の全質量に対し、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。上記態様であると、現像液の粘度が適度であり、自動現像機のローラー部材に現像カス等が堆積することを抑制することができる。
【0202】
−その他の添加剤−
本開示に用いられる現像液は、上記の他に、湿潤剤、防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機酸、有機溶剤、無機酸、無機塩などを含有することができる。
【0203】
湿潤剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン等が好適に用いられる。湿潤剤は単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。湿潤剤の含有量は、現像液の全質量に対し、0.1質量%〜5質量%であることが好ましい。
【0204】
防腐剤としては、フェノール又はその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、ベンズトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、第四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン、グアニジン等の誘導体、ダイアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール、オキサジン誘導体、ニトロブロモアルコール系の2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−エタノール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−プロパノール等が好ましく使用できる。
防腐剤の添加量は、細菌、カビ、酵母等に対して、安定に効力を発揮する量であって、細菌、カビ、酵母の種類によっても異なるが、現像液の全質量に対し、0.01質量%〜4質量%の範囲が好ましい。また、種々のカビ、殺菌に対して効力のあるように2種以上の防腐剤を併用することが好ましい。
【0205】
キレート化合物としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類を挙げることができる。キレート剤のナトリウム塩、カリウム塩の代りに有機アミンの塩も有効である。
キレート剤は、処理液組成中に安定に存在し、印刷性を阻害しないものであることが好ましい。キレート剤の含有量は、現像液の全質量に対し、0.001質量%〜1.0質量%であることが好ましい。
【0206】
消泡剤としては、一般的なシリコーン系の自己乳化タイプ、乳化タイプ、ノニオン系のHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)が5以下等の化合物を使用することができる。シリコーン消泡剤が好ましい。
なお、シリコーン系界面活性剤は、消泡剤と見なすものとする。
消泡剤の含有量は、現像液の全質量に対し、0.001質量%〜1.0質量%の範囲が好適である。
【0207】
有機酸としては、クエン酸、酢酸、蓚酸、マロン酸、サリチル酸、カプリル酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、レブリン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸などが挙げられる。有機酸は、そのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩の形で用いることもできる。有機酸の含有量は、現像液の全質量に対し、0.01質量%〜0.5質量%が好ましい。
【0208】
有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、“アイソパーE、H、G”(エッソ化学(株)製)等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭化水素(メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、トリクレン、モノクロロベンゼン等)、極性溶剤等が挙げられる。
【0209】
極性溶剤としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n−アミルアルコール、メチルアミルアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、エチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ベンジル、乳酸メチル、乳酸ブチル、エチレングリコールモノブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアセテート、ジエチルフタレート、レブリン酸ブチル等)、その他(トリエチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン等)等が挙げられる。
【0210】
上記有機溶剤が水に不溶な場合は、界面活性剤等を用いて水に可溶化して使用することも可能であり、現像液に、有機溶剤を含有する場合は、安全性、引火性の観点から、現像液における溶剤の濃度は、40質量%未満が好ましい。
【0211】
無機酸及び無機塩としては、リン酸、メタリン酸、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ニッケルなどが挙げられる。無機塩の含有量は、現像液の全質量に対し、0.01質量%〜0.5質量%の量が好ましい。
【0212】
現像液は、必要に応じて、上記各成分を水に溶解又は分散することによって調製される。現像液の固形分濃度は、2質量%〜25質量%であることが好ましい。現像液としては、濃縮液を作製しておき、使用時に水で希釈して用いることもできる。
現像液は、水性の現像液であることが好ましい。
【0213】
現像液は、現像カスの分散性の観点から、アルコール化合物を含有することが好ましい。
アルコール化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。中でも、ベンジルアルコールが好ましい。
アルコール化合物の含有量は、現像カスの分散性の観点から、現像液の全質量に対し、0.01質量%〜5質量%が好ましく、0.1質量%〜2質量%がより好ましく、0.2質量%〜1質量%が特に好ましい。
【0214】
(平版印刷方法)
<印刷工程>
本開示に係る平版印刷方法は、平版印刷版に印刷インキを供給して記録媒体を印刷する印刷工程を含む。
印刷インキとしては、特に制限はなく、所望に応じ、種々の公知のインキを用いることができる。また、印刷インキとしては、油性インキ又は紫外線硬化型インキ(UVインキ)が好ましく挙げられ、UVインキがより好ましく挙げられる。
また、上記印刷工程においては、必要に応じ、湿し水を供給してもよい。
また、上記印刷工程は、印刷機を停止することなく、上記機上現像工程に連続して行われてもよい。
記録媒体としては、特に制限はなく、所望に応じ、公知の記録媒体を用いることができる。
【0215】
本開示に係る平版印刷版原版からの平版印刷版の作製方法、及び、本開示に係る平版印刷方法においては、必要に応じて、露光前、露光中、露光から現像までの間に、平版印刷版原版の全面を加熱してもよい。このような加熱により、画像記録層中の画像形成反応が促進され、感度や耐刷性の向上や感度の安定化等の利点が生じ得る。現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行うことが好ましい。上記態様であると、非画像部が硬化してしまう等の問題を防ぐことができる。現像後の加熱には非常に強い条件を利用することが好ましく、100℃〜500℃の範囲であることが好ましい。上記範囲であると、十分な画像強化作用が得られまた、支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を抑制することができる。
【実施例】
【0216】
以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例において、「%」、「部」とは、特に断りのない限り、それぞれ「質量%」、「質量部」を意味する。なお、高分子化合物において、特別に規定したもの以外は、分子量は重量平均分子量(Mw)であり、構成繰り返し単位の比率はモル百分率である。また、重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算値として測定した値である。
また、実施例における重合体P−1〜P−12は、上述の重合体Aの具体例である重合体P−1〜P−12と同一である。
【0217】
<重合体P−6の合成>
三口フラスコに、1−メトキシ−2−プロパノール:78.00gを秤取り、窒素気流下、70℃に加熱した。この反応容器に、ブレンマーPME−100(メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート、日本油脂(株)製):52.8g、メチルメタクリレート:2.8g、メタクリル酸:25.0g、ヘキサキス(3−メルカプトプロピオン酸)ジペンタエリスリトール:6.4g、V−601(2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、和光純薬工業(株)製):1.1g、及び1−メトキシ−2−プロパノール:55gからなる混合溶液を2時間30分かけて滴下した。滴下終了後、更に2時間反応を続けた。2時間後、V−601:0.11g、1−メトキシ−2−プロパノール:1gから成る混合溶液を加え、90℃に昇温して2.5時間反応を続けた。反応終了後、室温まで反応液を冷却した。
上記の反応溶液に1−メトキシ−2−プロパノール:177.2g、4−ヒドロキシテトラメチルピペリジン−N−オキシド:0.28g、グリシジルメタクリレート:46.0g、及びテトラブチルアンモニウムブロミド:3.4gを加えてよく撹拌した後、90℃にて加熱した。
18時間後、室温(25℃)まで反応溶液を冷却した後、反応溶液に1−メトキシ−2−プロパノール:114.5gを加えて希釈した。
こうして得られた重合体P−6は、固形分濃度:23質量%、GPCで測定したポリスチレン換算重量平均分子量は1.5万であった。
上記重合体P−1の合成方法と同様の方法を用い、モノマーの種類及び量を適宜調整することにより、重合体P−1〜P−5、P−7〜P−8、P−11及び下記表に記載の重合体Q−1〜Q−3を合成した。
【0218】
【表2】

【0219】
上記表中、構成単位A1〜構成単位C1の欄のmol%の記載は、重合体における各構成単位の含有量(mol%)を示している。
ここで、Q−1においては、構成単位A1の含有量が10mol%、構成単位B1の含有量が40mol%、構成単位C1の含有量が50mol%であり、多官能チオール化合物に由来する構成単位SH5の含有量は0.25mol%である。なお、上記表中、多官能チオール化合物に由来する構成単位は、上述の重合体Aの具体例に記載したSH5と同一である。
Q−3においても、同様に構成単位SH5の含有量は0.25mol%であり、Q−2においては、構成単位SH5の含有量は2mol%である。
【0220】
<重合体P−9の合成>
三口フラスコに、メチルエチルケトン:92.3gを秤取り、窒素気流下、70℃に加熱した。この反応容器に、ブレンマーPME−100(メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート、日本油脂(株)製):32.9g、メタクリル酸tert−ブチル:14.9g、ヒドロキシエチルメタクリレート:54.7g、ヘキサキス(3−メルカプトプロピオン酸)ジペンタエリスリトール:6.6g、V−65(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、和光純薬工業(株)製):2.5g、及びメチルエチルケトン:61.5gからなる混合溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に2時間反応を続けた。2時間後、V−65:0.3g、メチルエチルケトン:2gから成る混合溶液を加え、75℃に昇温して2時間反応を続けた。反応終了後、室温まで反応液を冷却した。
上記の反応溶液にメチルエチルケトン:204.7g、4−ヒドロキシテトラメチルピペリジン−N−オキシド:0.34g、及びアクリル酸2−イソシアナトエチル:58.1gを加えて良く撹拌した後、60℃に昇温した。温度が安定したことを確認し、ネオスタンU−600、日東化成(株)製:0.35g、及びメチルエチルケトン:2gからなる混合溶液を加え、その後10時間反応させた。
こうして得られた重合体P−9は、固形分濃度:29質量%、GPCで測定したポリスチレン換算平均分子量は2.0万であった。
上記重合体P−9の合成方法と同様の方法を用い、モノマーの種類及び量を適宜調整することにより、重合体P−12を合成した。
【0221】
<重合体P−10の合成>
三口フラスコに、メチルエチルケトン:111.2gを秤取り、窒素気流下、70℃に加熱した。この反応容器に、ブレンマーPME−100(メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート、日本油脂(株)製):79.1g、FA−513AS(ジシクロペンタニルアクリレート、日立化成(株)):7.2g、メタクリル酸:21.1g、ヘキサキス(3−メルカプトプロピオン酸)ジペンタエリスリトール:15.4g、V−65(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、和光純薬工業(株)製):2.9g、及びメチルエチルケトン:77.3gからなる混合溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に2時間反応を続けた。2時間後、V−65:0.3g、メチルエチルケトン:2gから成る混合溶液を加え、75℃に昇温して2時間反応を続けた。反応終了後、室温まで反応液を冷却した。
上記の反応溶液にメチルエチルケトン:186.7g、4−ヒドロキシテトラメチルピペリジン−N−オキシド:0.33g、グリシジルメタクリレート:36.6g、及びテトラブチルアンモニウムブロミド 4.2gを加え、良く撹拌した後、75℃に昇温した。
24時間後、室温まで冷却し、反応溶液にアクリル酸2−イソシアナトエチル:34.6g、及びメチルエチルケトン226.2gを加えて良く撹拌した後、60℃に昇温した。温度が安定したことを確認し、ネオスタンU−600、日東化成(株)製:0.35g、メチルエチルケトン:2gからなる混合溶液を加え、その後10時間反応させた。
こうして得られた重合体P−10は、固形分濃度:25質量%、GPCで測定したポリスチレン換算平均分子量は9000であった。
【0222】
(実施例1〜14及び比較例1〜3)
<支持体の作製>
厚さ0.3mmの材質1Sのアルミニウム合金板に対し、特開2012−158022号公報の段落0126に記載の(A−a)機械的粗面化処理(ブラシグレイン法)から段落0134に記載の(A−i)酸性水溶液中でのデスマット処理を実施した。
次に、特開2012−158022号公報の段落0135に記載の(A−j)第1段階の陽極酸化処理から段落0138に記載の(A−m)第3段階の陽極酸化処理の各処理条件を適宜調整して、平均径35nm、深さ100nmの大径孔部と、平均径10nm、深さ1000nmの小径孔部を有し、大径孔部の平均径に対する大径孔部の深さの比が2.9である陽極酸化皮膜を形成し、アルミニウム支持体Aを得た。
なお、全ての処理工程の間には水洗処理を施し、水洗処理の後にはニップローラーで液切りを行った。
【0223】
<下塗り層の形成>
上記支持体A上に、下記組成の下塗り層塗布液(1)を乾燥塗布量が20mg/mになるよう塗布して下塗り層を形成した。
【0224】
<下塗り層塗布液(1)>
・ポリマー(U−1)〔下記構造〕:0.18質量部
・ヒドロキシエチルイミノ二酢酸:0.10質量部
・水:61.4質量部
【0225】
【化19】

【0226】
<画像記録層の形成>
下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(1)をバー塗布し、100℃で60秒間オーブン乾燥して乾燥塗布量1.0g/mの画像記録層を形成した。
画像記録層塗布液(1)は下記感光液(1)及びミクロゲル液を塗布直前に混合し撹拌することにより調製した。
【0227】
〔感光液(1)〕
・表3に記載の重合体A:表3に記載の量
・赤外線吸収剤(D−1)〔下記構造の化合物〕:0.024質量部
・電子受容型重合開始剤(E−1)〔下記構造の化合物〕:0.245質量部
・重合性化合物(トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(NKエステル A−9300、新中村化学(株)製)):0.192質量部
・ボレート化合物(電子供与型重合開始剤):テトラフェニルボレート(TPB) 〔下記構造の化合物〕:0.020質量部
・低分子親水性化合物(トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート):0.062質量部
・フッ素系界面活性剤(1)〔下記〕:0.008質量部
・酸発色剤:S−205(福井山田化学工業(株)製):0.030質量部
・2−ブタノン:1.091質量部
・1−メトキシ−2−プロパノール:8.609質量部
【0228】
〔ミクロゲル液〕
・ミクロゲル(1):2.640質量部
・蒸留水:2.425質量部
【0229】
上記感光液(1)に用いた赤外線吸収剤(D−1)、電子受容型重合開始剤(E−1)、フッ素系界面活性剤(1)の構造を以下に示す。
フッ素系界面活性剤(1)の構造中、各構成単位を示す括弧の添え字は各構成単位の含有比(モル比)を表しており、エチレンオキサイド構造又はプロピレンオキサイド構造を示す括弧の添え字は、各構造の繰り返し数を表している。
【0230】
【化20】

【0231】
上記ミクロゲル液に用いたミクロゲル(1)の調製法を以下に示す。
【0232】
〔多価イソシアネート化合物(1)の調製〕
イソホロンジイソシアネート17.78g(80mmol)と下記多価フェノール化合物(1)7.35g(20mmol)との酢酸エチル(25.31g)懸濁溶液に、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)(ネオスタン U−600、日東化成(株)製)43mgを加えて撹拌した。発熱が収まった時点で反応温度を50℃に設定し、3時間撹拌して多価イソシアネート化合物(1)の酢酸エチル溶液(50質量%)を得た。
【0233】
【化21】

【0234】
〔ミクロゲル(1)の調製〕
下記油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を45℃で4時間撹拌後、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン−オクチル酸塩(U−CAT SA102、サンアプロ(株)製)の10質量%水溶液5.20gを加え、室温で30分撹拌し、45℃で24時間静置した。蒸留水で、固形分濃度を20質量%になるように調整し、ミクロゲル(1)の水分散液を得た。動的光散乱式粒径分布測定装置 LB−500((株)堀場製作所製)を用いて、光散乱法により体積平均粒径を測定したところ、0.28μmであった。
【0235】
−油相成分−
・(成分1)酢酸エチル:12.0質量部
・(成分2)トリメチロールプロパン(6モル)とキシレンジイソシアネート(18モル)を付加させ、これにメチル片末端ポリオキシエチレン(1モル、オキシエチレン単位の繰返し数:90)を付加させた付加体(50質量%酢酸エチル溶液、三井化学(株)製):3.76質量部
・(成分3)多価イソシアネート化合物(1)(50質量%酢酸エチル溶液として):15.0質量部
・(成分4)ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(SR−399、サートマー社製)の65質量%酢酸エチル溶液:11.54質量部
・(成分5)スルホン酸塩型界面活性剤(パイオニンA−41−C、竹本油脂(株)製)の10%酢酸エチル溶液:4.42質量部
【0236】
−水相成分−
・蒸留水:46.87質量部
【0237】
<保護層の形成>
画像記録層上に、下記組成の保護層塗布液をバー塗布し、120℃で60秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量が0.15g/mの保護層を形成した。
【0238】
<保護層塗布液>
・無機層状化合物分散液(1)〔下記〕:1.5質量部
・ポリビニルアルコール(CKS50、日本合成化学工業(株)製、スルホン酸変性、けん化度99mol%以上、重合度300)6質量%水溶液:0.55質量部
・ポリビニルアルコール(PVA−405、(株)クラレ製、けん化度81.5mol%、重合度500)6質量%水溶液:0.03質量部
・界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、エマレックス710、日本エマルジョン(株)製)1質量%水溶液:0.86質量部
・イオン交換水:6.0質量部
【0239】
無機層状化合物分散液(1)の調製法を以下に記載する。
〔無機層状化合物分散液(1)の調製〕
イオン交換水193.6gに合成雲母(ソマシフME−100、コープケミカル(株)製)6.4gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
【0240】
<平版印刷版原版の評価>
上記各平版印刷版原版について、機上現像性、及び油性耐刷性を以下の評価方法により評価した。評価結果は表3に記載した。
【0241】
〔機上現像性〕
平版印刷版原版を赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxel PLATESETTER T−6000IIIにより、外面ドラム回転数1,000rpm、レーザー出力70%、解像度2,400dpi(dot per inch、1inchは2.54cm)の条件で露光した。露光画像にはベタ画像及び20μmドットFMスクリーン(Frequency Modulation Screen)の50%網点チャートを含むようにした。
露光された平版印刷版原版を現像処理することなく、(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity−2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とValues−G(N)墨インキ(DICグラフィックス(株)製)とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給し、毎時10,000枚の印刷速度で、特菱アート紙(76.5kg)(三菱製紙(株)製)に100枚印刷を行った。
印刷機上で画像記録層の未露光部の機上現像が完了し、非画像部にインキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数を計測し、機上現像性として評価した。枚数が少ない程、機上現像性が良好である。
【0242】
〔油性耐刷性〕
上記機上現像性の評価を行った後、さらに印刷を続けた。印刷枚数の増加に伴い徐々に画像記録層が磨耗するため印刷物上のインキ濃度が低下した。印刷物におけるFMスクリーン50%網点の網点面積率をグレタグ濃度計で測定した値が印刷100枚目の測定値よりも5%低下するまでの印刷枚数を計測した。耐刷性は、下記式に示すように、印刷枚数が5万枚の場合を100とする相対耐刷性により評価した。数値が大きい程、油性耐刷性(耐刷性)が良好である。
相対耐刷性=(対象平版印刷版原版の印刷枚数)/50,000 × 100
【0243】
〔ポツ状汚れ〕
得られた平版印刷版原版を、25℃、70%RHの環境下で1時間、合紙と共に調湿し、アルミクラフト紙で包装した後、60℃に設定したオーブンで5日間加熱を行った。その後、室温まで温度を下げてから、上記同様の印刷機及び手法で機上現像したのち、印刷を500枚行った。500枚目の印刷物を目視により確認し、100cm当たりの、20μm以上の印刷汚れの個数を算出した。
ポツ状汚れ個数が、100cm当たり、50個未満のものをA、50個以上100個未満のものをB、100個以上のものをCとした。Aが最もポツ状汚れの抑制に優れ、Cが最もポツ状汚れの抑制に劣るといえる。
【0244】
〔UV耐刷性〕
上記のようにして作製した平版印刷版原版を、赤外線半導体レーザー搭載のKodak社製Magnus800 Quantumにて、出力27W、外面ドラム回転数450rpm、解像度2,400dpiの条件で露光(照射エネルギー110mJ/cm相当)した。露光画像にはベタ画像、及び、AMスクリーン(Amplitude Modulation Screen)3%網点のチャートを含むようにした。
得られた露光済み原版を現像処理することなく、菊判サイズ(636mm×939mm)のハイデルベルグ社製印刷機SX−74のシリンダーに取り付けた。本印刷機には、不織布フィルターと温度制御装置を内蔵する容量100Lの湿し水循環タンクを接続した。湿し水S−Z1(富士フイルム(株)製)2.0%の湿し水80Lを循環装置内に仕込み、印刷インキとしてT&K UV OFS K−HS墨GE−M((株)T&K TOKA製)を用い、標準の自動印刷スタート方法で湿し水とインキを供給した後、毎時10,000枚の印刷速度で特菱アート(76.5kg)紙に印刷を行った。
印刷枚数を増やしていくと徐々に画像部が磨耗するため印刷物上のインキ濃度が低下した。印刷物におけるAMスクリーン3%網点の網点面積率をグレタグ濃度計(GretagMacbeth社製)で計測した値が、印刷500枚目の計測値よりも1%低下したときの印刷部数を刷了枚数として耐刷性を評価した。印刷枚数が5万枚の場合を100とする相対耐刷性により評価した。数値が大きいほど、UV耐刷性が良好である。
相対耐刷性=(対象平版印刷版原版の印刷枚数)/50,000×100
【0245】
【表3】
【0246】
表3中、重合体Aの欄の記載は、使用した重合体Aの種類と、感光液(1)における使用量(質量部)をそれぞれ示している。実施例13における「P−6,Q−1(0.050),(0.130)」の記載は、重合体P−6を0.050質量部、重合体Q−1を0.130質量部使用したことを示している。
【0247】
(実施例15〜18及び比較例4〜6)
支持体として、支持体Aの替わりに下記支持体Cを用い、上記画像記録層塗布液(1)の替わりに、下記組成の画像記録層塗布液(2)をバー塗布し、70℃で60秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量0.6g/mの画像記録層を形成して、平版印刷版原版を作製した。下塗り層及び保護層の形成は行わなかった。
【0248】
<支持体Cの作製>
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A 1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm)を用いアルミニウム板表面を砂目立てし、水でよく洗浄した。アルミニウム板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20質量%硝酸水溶液に20秒間浸漬し、水洗した。砂目立て表面のエッチング量は約3g/mであった。
【0249】
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。電解液は硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温は50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8ms、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0250】
続いて、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dmの条件で、硝酸電解と同様の方法で電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
次に、アルミニウム板に22質量%リン酸水溶液を電解液として電流密度15A/dmで2.5g/mの直流陽極酸化皮膜を形成した後、水洗、乾燥して支持体Bを作製した。陽極酸化皮膜の表層における平均ポア径(表面平均ポア径)は25nmであった。
陽極酸化皮膜の表層におけるポア径の測定は、超高分解能型SEM(日立S-900)を使用し、12Vという比較的低加速電圧で、導電性を付与する蒸着処理等を施すこと無しに、表面を15万倍の倍率で観察し、50個のポアを無作為抽出して平均値を求める方法で行った。標準偏差は±10%以下であった。
【0251】
その後、非画像部の親水性を確保するため、支持体Bに2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて60℃で10秒間シリケート処理を施した後、水洗して支持体Cを作製した。Siの付着量は10mg/mであった。支持体Cの中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
【0252】
<画像記録層塗布液(2)>
・表4に記載の重合体A:表4に記載の量
・赤外線吸収剤(D−2)〔下記構造の化合物〕:0.018質量部
・電子受容型重合開始剤(I−2)〔下記構造の化合物〕:0.050質量部
・ボレート化合物 TPB〔上記構造の化合物〕:0.010質量部
・ポリマー粒子水分散液(1)(22質量%)〔下記構造の化合物〕:10.0質量部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、A−DPH、新中村化学工業(株)製:0.20質量部
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート ヘキサメチレンジイソシアネート ウレタンプレポリマー、UA−510H、共栄社化学(株)製:0.20質量部
・エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ATM−4E、新中村化学工業(株)製:0.20質量部
・酸発色剤:Black−XV(山本化成(株)製)0.050質量部
・メルカプト−3−トリアゾール:0.2質量部
・Byk 336(Byk Chemie社製):0.4質量部
・Klucel M(Hercules社製):4.8質量部
・ELVACITE 4026(Ineos Acrylics社製):2.5質量部
・n−プロパノール:55.0質量部
・2−ブタノン:17.0質量部
【0253】
上記画像記録層塗布液(2)に用いた赤外線吸収剤(D−2)、電子受容型重合開始剤(I−2)、及び商品名で記載の化合物は下記の通りである。
【0254】
【化22】

【0255】
・SR−399:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート
・Byk 336:変性ジメチルポリシロキサン共重合体(25質量%キシレン/メトキシプロピルアセテート溶液)
・Klucel M:ヒドロキシプロピルセルロース(2質量%水溶液)
・ELVACITE 4026:高分岐ポリメチルメタクリレート(10質量%2−ブタノン溶液)
【0256】
上記画像記録層塗布液(2)に用いたポリマー粒子水分散液(1)の調製法を以下に示す。
〔ポリマー粒子水分散液(1)の調製〕
4つ口フラスコに撹拌機、温度計、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を施し、窒素ガスを導入して脱酸素を行いつつ、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMA、エチレングリコールの平均繰返し単位数:50)10g、蒸留水200g及びn−プロパノール200gを加えて内温が70℃となるまで加熱した。次に、予め混合されたスチレン(St)10g、アクリロニトリル(AN)80g及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.8gの混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後5時間そのまま反応を続けた後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4gを添加し、内温を80℃まで上昇させた。続いて、0.5gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを6時間かけて添加した。合計で20時間反応させた段階でポリマー化はモル基準で98%以上進行しており、質量比でPEGMA/St/AN=10/10/80のポリマー粒子水分散液(1)を調製した。ポリマー粒子の粒径分布は、粒径150nmに極大値を有していた。
【0257】
粒径分布は、ポリマー粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、写真上で粒子の粒径を総計で5,000個測定し、得られた粒径測定値の最大値から0の間を対数目盛で50分割して各粒径の出現頻度をプロットして求めた。なお非球形粒子については写真上の粒子面積と同一の粒子面積を持つ球形粒子の粒径値を粒径とした。
【0258】
<平版印刷版原版の評価>
機上現像性、油性耐刷性、ポツ状汚れ及びUV耐刷性を、それぞれ実施例1と同様の方法により評価した。評価結果は表4に記載した。
【0259】
【表4】
【0260】
(実施例19〜21、比較例7〜9)
実施例1における感光液(1)に含まれる「表3に記載の重合体A」の種類及び添加量を、下記表5に記載のように変更した以外は、実施例1と同様の方法により平版印刷版原版を作製した。
【0261】
<現像処理>
露光後の平版印刷版は、Glunz&Jensen社製のClean Out Unit+ C85を使用し、25℃にて現像処理を施した。
ここで、「現像処理」とは、画像記録層の現像の他に、保護層の除去、ガム引き及び乾燥よりなる群から選ばれた1以上の処理をも含む複合処理を意味するものとする。現像処理に用いた処理液としては、下記組成の現像液を使用した。本現像処理においては、水洗処理を行わなかった。
【0262】
〔現像液〕
・ペレックスNBL(アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、花王(株)製アニオン界面活性剤):7.8質量部
・ニューコールB13(ポリオキシエチレンアリールエーテル、日本乳化剤(株)製ノニオン界面活性剤):2.00質量部
・サーフィノール2502(Air Products社製):0.6質量部
・ベンジルアルコール(和光純薬工業(株)製):0.8質量部
・グルコン酸ソーダ(扶桑化学工業(株)製):3.0質量部
・リン酸一水素二ナトリウム(和光純薬工業(株)製):0.3質量部
・炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業(株)製):0.3質量部
・消泡剤(Bluester Silicones社製SILCOLAPSE432):0.01質量部
・水:85.49質量部
【0263】
<平版印刷版原版の評価>
〔油性耐刷性〕
現像した平版印刷版を(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity−2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とValues−G(N)墨インキ(DICグラフィックス(株)製)とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給し、毎時10,000枚の印刷速度で、特菱アート紙(連量:76.5kg)(三菱製紙(株)製)に印刷を行った。印刷枚数の増加に伴い徐々に画像記録層が磨耗するため、印刷物上のインキ濃度が低下した。印刷物におけるFMスクリーン50%網点の網点面積率をグレタグ濃度計で測定した値が印刷100枚目の測定値よりも5%低下するまでの印刷枚数を計測した。耐刷性は、下記式に示すように、印刷枚数が5万枚の場合を100とする相対耐刷性により評価した。数値が大きい程、油性耐刷性(耐刷性)が良好である。
相対耐刷性=((対象平版印刷版原版の印刷枚数)/50,000) × 100
【0264】
〔UV耐刷性〕
現像した平版印刷版をハイデルベルグ社製印刷機SX−74のシリンダーに取り付けた。本印刷機には、不織布フィルターと温度制御装置を内蔵する容量100Lの湿し水循環タンクを接続した。湿し水S−Z1(富士フイルム(株)製)2.0%の湿し水80Lを循環装置内に仕込み、印刷インキとしてT&K UV OFS K−HS墨GE−M((株)T&K TOKA製)を用い、標準の自動印刷スタート方法で湿し水とインキを供給した後、毎時10,000枚の印刷速度で特菱アート(連量:76.5kg)紙に印刷を行った。
印刷枚数を増やしていくと徐々に画像部が磨耗するため印刷物上のインキ濃度が低下した。印刷物におけるAMスクリーン3%網点の網点面積率をグレタグ濃度計(GretagMacbeth社製)で計測した値が、印刷500枚目の計測値よりも1%低下したときの印刷部数を刷了枚数として耐刷性を評価した。印刷枚数が5万枚の場合を100とする相対耐刷性により評価した。数値が大きいほど、UV耐刷性が良好である。
相対耐刷性=(対象平版印刷版原版の印刷枚数)/50,000×100
【0265】
【表5】
【0266】
表3〜表4に記載した結果から、本開示に係る平版印刷版原版によれば、耐刷性に優れた平版印刷版が得られることがわかる。
また、表3〜表4に記載した結果から、本開示の実施例に係る平版印刷版原版によれば、UV耐刷性及びポツ状汚れの抑制に優れた平版印刷版が得られることがわかる。
更に、表3〜表4に記載した結果から、本開示の実施例に係る平版印刷版原版は、機上現像性に優れることがわかる。
表5に記載した結果から、本開示に係る平版印刷版原版は、現像液を用いた現像処理を行った場合であっても、得られる平版印刷版の耐刷性に優れることがわかる。
また、表5に記載した結果から、本開示の実施例に係る平版印刷版原版は、現像液を用いた現像処理を行った場合であっても、得られる平版印刷版のUV耐刷性に優れることがわかる。
【0267】
2018年1月31日に出願された日本国特許出願2018−014900号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。