特許第6977102号(P6977102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6977102制御された孔隙率を有する印刷された化学機械研磨パッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6977102
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】制御された孔隙率を有する印刷された化学機械研磨パッド
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/26 20120101AFI20211125BHJP
   B24B 37/22 20120101ALI20211125BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20211125BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20211125BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20211125BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20211125BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20211125BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20211125BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20211125BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20211125BHJP
   C08J 5/14 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   B24B37/26
   B24B37/22
   H01L21/304 622F
   B29C64/112
   B29C64/209
   B29C64/264
   B29C64/393
   B33Y10/00
   B33Y30/00
   B33Y50/02
   C08J5/14CER
   C08J5/14CEZ
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-75244(P2020-75244)
(22)【出願日】2020年4月21日
(62)【分割の表示】特願2018-203950(P2018-203950)の分割
【原出願日】2014年11月24日
(65)【公開番号】特開2020-128004(P2020-128004A)
(43)【公開日】2020年8月27日
【審査請求日】2020年5月19日
(31)【優先権主張番号】61/919,578
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ムルゲシュ, ラックスマン
(72)【発明者】
【氏名】ナレンドラナス, カドサラ ラマヤ
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/162856(WO,A1)
【文献】 特表2001−507997(JP,A)
【文献】 特開2002−028849(JP,A)
【文献】 特表2008−546167(JP,A)
【文献】 特表2008−507417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00 − 37/34
B24D 11/00
H01L 21/304
B29C 64/112
B29C 64/209
B29C 64/264
B29C 64/393
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B33Y 50/02
C08J 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッドを製造する方法であって、
前記研磨パッドの研磨層のポリマーマトリクス内に導入すべきポアの所望の分布を示すデータ、及び前記研磨パッドの前記研磨層の表面上に形成されるべき溝の所望の輪郭を示すデータを受信することと、
積層造形を用いて前記研磨層を形成するために、連続的に複数の層を堆積することと、
を含み、
前記複数の層を堆積することは、
前記複数の層の各層として、ポリマーマトリクス前駆体の液滴を下側の支持層又は前に固化された層の上に放出し、前記層を提供する固化されたポリマーマトリクスを形成するために前記ポリマーマトリクス前駆体を固化すること、
前記データによりポアを有すると示される層として、下側の層の上の複数の第1の場所に前記ポリマーマトリクス前駆体の液滴を放出し、前記ポアの所望の分布に対応する複数の第2の場所に前記ポリマーマトリクス前駆体の液滴を放出しないこと、
前記データによりポアを有すると示される層に続いて堆積される層として、前記続いて堆積される層の固化により前記複数の第1の場所において前記ポアが包囲されるように、前記複数の第2の場所を覆うように前記ポリマーマトリクス前駆体の液滴を放出すること、
前記データにより溝を有すると示される各層として、下側の層の上の複数の第3の場所に前記ポリマーマトリクス前駆体の液滴を放出し、前記溝の所望の輪郭に対応する複数の第4の場所に前記ポリマーマトリクス前駆体の液滴を放出しないこと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記データによりポアを有すると示される各層として、前記複数の第2の場所に流体を放出し、前記データによりポアを有すると示される層に続いて堆積される各層として、前記流体を覆うように前記ポリマーマトリクス前駆体の液滴を放出すること、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記流体は、前記ポリマーマトリクス前駆体とは混和性ではない、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマーマトリクス前駆体の液滴を放出することは、印刷システムの第1のノズルから液滴を放出することを含み、前記流体の液滴を放出することは、前記印刷システムの第2のノズルから液滴を放出することを含み、前記研磨パッドの支持体に対して前記第1のノズルを平行移動することを含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマーマトリクス前駆体を固化することは、前記ポリマーマトリクスを硬化することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマーマトリクスを硬化することは、紫外線(UV)硬化することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記溝は、同心円、直線、斜交平行、又は螺旋である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記溝は螺旋溝を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
研磨パッドを製造するためのシステムであって、
支持体と、
ポリマーマトリクス前駆体を前記支持体に向けて放出するための第1のノズルを有する3Dプリンタと、
前記研磨パッドの研磨層のポリマーマトリクス内に導入すべきポアの所望の分布を示すデータ、及び前記研磨パッドの前記研磨層の表面上に形成されるべき溝の所望の輪郭を示すデータを受信するように構成され、更に、前記3Dプリンタに連続的に複数の層を堆積させるように構成されたコンピュータと、
を備え、
前記複数の層を堆積することは、
前記複数の層の各層として、前記ポリマーマトリクス前駆体の液滴を下側の支持層又は前に固化された層の上に放出し、前記層を提供する固化されたポリマーマトリクスを形成するために前記ポリマーマトリクス前駆体を固化すること、
前記データによりポアを有すると示される層として、下側の層の上の複数の第1の場所に前記ポリマーマトリクス前駆体の液滴を放出し、前記ポアの所望の分布に対応する複数の第2の場所に前記ポリマーマトリクス前駆体の液滴を放出しないこと、
前記データによりポアを有すると示される層に続いて堆積される層として、前記続いて堆積される層の固化により前記複数の第1の場所において前記ポアが包囲されるように、前記複数の第2の場所を覆うように前記ポリマーマトリクス前駆体の液滴を放出すること、
前記データにより溝を有すると示される各層として、下側の層の上の複数の第3の場所に前記ポリマーマトリクス前駆体の液滴を放出し、前記溝の所望の輪郭に対応する複数の第4の場所に前記ポリマーマトリクス前駆体の液滴を放出しないこと、
を含む、システム。
【請求項10】
エネルギー源は光源を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記エネルギー源はUV光源を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記3Dプリンタは、前記支持体に向けて流体を放出する第2のノズルを有し、前記コントローラは、前記データによりポアを有すると示される各層として、前記3Dプリンタに前記複数の第2の場所に前記流体を放出させ、前記データによりポアを有すると示される層に続いて堆積される各層として、前記流体を覆うように前記ポリマーマトリクス前駆体の液滴を放出させる、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記3Dプリンタは、ある層において前記ポリマーマトリクス前駆体が分配された後、新規ポリマーマトリクス前駆体が同層における次の位置に堆積される前に、前記ポリマーマトリクス前駆体を硬化するように構成されている、請求項9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学機械研磨に使用される研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路は通常、シリコンウェハに導電層、半導電層、又は絶縁層を連続的に堆積させることによって基板に形成される。様々な製造プロセスにおいて、基板の層の平坦化が求められる。例えば、特定の用途、例えば、金属層を研磨してパターン層のトレンチにビア、プラグ、及びラインを形成する場合に、パターン層の上面が露出するまで上位層が平坦化される。他の用途、例えば、フォトリソグラフィにおいて誘電体層が平坦化される場合に、下位層の上に所望の厚みが残るまで上位層が研磨される。
【0003】
化学機械研磨(CMP)は、1つの認められた研磨方法である。この平坦化の方法では通常、基板がキャリアヘッドに取り付けられることが必要である。基板の露出面は通常、回転している研磨パッドに当接して置かれる。キャリアヘッドが、基板に制御可能な負荷をかけ、基板を研磨パッドに押し付ける。研磨粒子を有するスラリ等の研磨液が通常、研磨層の表面に供給される。
【0004】
化学機械研磨プロセスの1つの目的は、研磨均一性である。基板の異なるエリアが異なるレートで研磨された場合、基板の幾つかのエリアから材料が過剰に除去される(「過剰研磨」)又は材料の除去が少なすぎる(「研磨不足」)可能性がある。
【0005】
従来の研磨パッドは、「標準」パッドと、固定研磨パッドを含む。標準パッドは、耐久性のある粗面を有するポリウレタン製研磨層を有し、圧縮性バッキング層も含みうる。対照的に、固定研磨パッドは、格納媒体に保持された研磨粒子を有し、概して非圧縮性のバッキング層上に支持されうる。
【0006】
研磨パッドは通常、ポリウレタン材料を型成形、鋳造、又は焼結することによって作られる。型成形の場合、研磨パッドは、例えば射出成形によって1つずつ作製されうる。鋳造の場合、液状前駆体が鋳込みされ、固形物に硬化され、次に個々のパッド片にスライスされる。これらのパッド片を次に加工して、最終的な厚さにすることができる。複数の溝を研磨面に加工作製することができる、又は射出成形プロセスの一部として形成することができる。
【0007】
平坦化に加えて、研磨パッドはバフ仕上げ等の仕上げ工程に使用することができる。
【発明の概要】
【0008】
研磨パッドの材料特性は、研磨に影響を与える。研磨層のバルクの孔隙率は、その圧縮率に影響を及ぼし、研磨層の表面の孔隙率は、スラリの分布に寄与しうる。孔隙率は、材料内のボイドの体積割合として測定されうる。
【0009】
通常、研磨層の孔隙率は、パッド材料とは異なる材料を研磨パッドに含むことによって導入される。しかしながら、パッド材料と異なる材料との間の界面において、2つの材料の硬度の違いにより、研磨されている基板に二次的なひっかき傷ができる可能性がある。
【0010】
幾つかの研磨層では、気泡が液状前駆体に注入されて、ボイドが形成される。気泡の局部分布の均一性を達成することは困難であり、気泡の局部分布により、研磨層の異なる領域全体の硬度に違いが生じうる。パッドの硬度の変化は、研磨された基板のウエハ内均一性に影響を与えうる。従来、パッドの研磨面に沿ってスラリを搬送しやすくするために、研磨層に溝が加工作製される。しかしながら、研磨層の溝の輪郭は、フライス加工、旋盤加工、又は加工プロセスにおいて制限される。加えて、研磨層材料の繊維は、フライス加工後に溝の側面に残りうる。これらの加工繊維は、スラリの流れの局部抵抗の原因となりうる。
【0011】
3D印刷により、研磨層におけるポアの分布をより良く制御することが可能になる。代替として、又は加えて、3D印刷を使用して、特定の輪郭の溝を作製する、及び/又は研磨層の従来加工により生じる溝内の繊維を減らす(例えば取り除く)ことができる。
【0012】
一態様では、研磨パッドを製造する方法は、研磨パッドの研磨層のポリマーマトリクス内に導入すべきボイドの所望の分布を決定することと、3Dプリンタによって読み取られるように構成された電子制御信号を生成することとを含む。制御信号は、ポリマーマトリクス前駆体が堆積されるべき複数の第1の場所を指定し、材料が堆積されるべきでないボイドの所望の分布に対応する複数の第2の場所を指定する。3Dプリンタで、複数の第1の場所に対応するポリマーマトリクスの複数の層が連続的に堆積され、ポリマーマトリクスの複数の層の各層は、ノズルからポリマーマトリクス前駆体を放出することによって堆積される。ポリマーマトリクス前駆体が固化されて、ボイドの所望の分布を有する固化されたポリマーマトリクスが形成される。
【0013】
実装態様は一又は複数の下記の特徴を含みうる。
【0014】
ボイドの所望の分布を決定することは、ボイドのサイズ、及びポリマーマトリクス内のボイドの空間的場所から成るグループから選択される一又は複数のパラメータを決定することを含みうる。
【0015】
一又は複数のパラメータを選択して、回転している研磨プラテン上の研磨パッドの異なる直線速度を補正することができる。
【0016】
研磨層の選択領域に印刷することは、研磨層の上面に複数の溝を形成するために実施することができ、複数の溝は、ポリマーマトリクス前駆体が堆積されない領域を含む。
【0017】
複数の溝は、研磨層の上面全体で異なる深さを有しうる。
【0018】
複数の溝により、第1のパターンに分布されたボイドが接続されて、スラリを搬送するように構成されたチャネルネットワークが形成されうる。
【0019】
ポリマーマトリクス前駆体を固化することは、3Dプリンタからポリマーマトリクス前駆体が分注された後、ポリマーマトリクス前駆体が層の隣接位置に堆積される前に、インシトゥでポリマーマトリクス前駆体を硬化させることを含みうる。
【0020】
ポリマーマトリクス前駆体を硬化させることは、紫外線(UV)又は赤外線(IR)硬化を含みうる。
【0021】
ポリマーマトリクス前駆体は、ウレタンモノマーを含みうる。
【0022】
固化したポリマーマトリクスは、ポリウレタンを含みうる。
【0023】
研磨パッドのバッキング層のポリマーマトリクス内に導入すべきボイドの第2の所望の分布が決定されうる。
【0024】
バッキング層のポリマーマトリクスのボイドの第2の所望の分布は、研磨パッドの研磨層のボイドの所望の分布とは異なっていてよい。
【0025】
バッキング層のポリマーマトリクスのボイドの第2の所望の分布は、バッキング層が研磨層よりも圧縮性になるように、高い密度のボイドを有しうる。
【0026】
研磨層のポリマーマトリクスの材料は、バッキング層のポリマーマトリクスの材料とは異なっていてよい。
【0027】
バッキング層を形成するために、3Dプリンタで第2の複数の層が連続的に堆積される。
【0028】
研磨層がバッキング層に直接接着されるように、中間接着層を使用せずに、3Dプリンタによって研磨層がバッキング層に直接印刷されうる。
【0029】
ボイドは、30〜50ミクロンの寸法を有しうる。
【0030】
別の態様では、研磨パッドを製造する方法は、3Dプリンタで複数の層を連続的に堆積させることを含み、複数の研磨層の各層は、研磨材料部分と、ウインドウ部分とを含み、研磨材料部分は、第1のノズルから研磨材料前駆体を放出し、研磨材料前駆体を固化して固化された研磨材料を形成することによって堆積され、ウインドウ部分は、第2のノズルからウインドウ前駆体を放出し、ウインドウ前駆体を固化して、固化されたウインドウを形成することによって堆積される。
【0031】
実装態様は一又は複数の下記の特徴を含みうる。
【0032】
研磨材料前駆体及びウインドウ前駆体を硬化させることで、同じ組成を有する複数のポリマーマトリクスが形成されうる。
【0033】
研磨材料前駆体は不透明性誘発添加物を含むことができ、ウインドウ前駆体は上記添加物を含まなくてよい。
【0034】
本発明の一又は複数の実施形態の詳細を、添付の図面および以下の記述で説明する。本発明の他の特徴、目的及び利点は、これらの記述および図面から、並びに特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】1Aは例示の研磨パッドの概略断面図であり、1Bは別の例示の研磨パッドの概略断面図であり、1Cは更に別の例示の研磨パッドの概略断面図である。
図2】化学機械研磨ステーションの部分的断面である概略側面図である。
図3A】研磨パッドを製造するのに使用される例示の3Dプリンタを示す概略断面図である。
図3B】3D印刷によって形成されたポアを有する研磨層を示す概略断面図である。
図3C】インシトゥ硬化用光源を有する、例示の3Dプリンタの概略断面図である。
図3D】例示の研磨層の溝の概略断面図である。
図3E】例示の研磨パッドの機械加工繊維を有する溝の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
様々な図面における同じ参照符号は同じ要素を示す。
【0037】
図1A〜1Cを参照すると、研磨パッド18は研磨層22を含む。図1Aに示すように、研磨パッドは、研磨層22から成る単一層でありうる、又は図1Cに示すように、研磨パッドは、研磨層22と、少なくとも1つのバッキング層20を含む複数層のパッドでありうる。
【0038】
研磨層22は、研磨プロセスにおいて不活性材料でありうる。研磨層22の材料は、プラスチック、例えばポリウレタンでありうる。幾つかの実装態様では、研磨層22は比較的強く、硬い材料である。例えば、研磨層22は、ショアDスケールの約40〜80、例えば50〜65の硬度を有しうる。
【0039】
図1Aに示すように、研磨層22は、均質組成の層でありうる、又は図1Bに示すように、研磨層22は、例えばポリウレタン等のプラスチック材料のマトリクス29に保持された研磨粒子28を含みうる。研磨粒子28は、マトリクス29の材料よりも硬いものであってよい。研磨粒子28は、研磨層の0.05〜75重量%であってよい。例えば、研磨粒子28は、研磨層22の1重量%未満、例えば0.1重量%未満であってよい。あるいは、研磨粒子28は、研磨層22の10重量%を超えうる、例えば50重量%を超えうる。研磨粒子の材料は、セリア、アルミナ、シリカ、又はこれらの組み合わせ等の金属酸化物であってよい。
【0040】
幾つかの実装態様では、研磨層は、ポア、例えば小さなボイドを含む。ポアは、50〜100ミクロンの幅であってよい。
【0041】
研磨層18は、80ミル以下、例えば50ミル以下、例えば25ミル以下の厚さD1を有しうる。調整プロセスによりカバー層がすり減りやすいため、研磨層22の厚さは、研磨パッド18に例えば3000回の研磨及び調整サイクルの有用な寿命が提供されるように選択されうる。
【0042】
顕微鏡スケールでは、研磨層22の研磨面24は、例えば2〜4ミクロンrmsの粗い質感の表面を有しうる。例えば、研磨層22に研削プロセス又は調整プロセスを施して、粗い質感の表面を生成することができる。加えて、3D印刷により、例えば30ミクロンまでの小さい均一特徴部が提供されうる。
【0043】
研磨面24では顕微鏡スケールでは粗くなっていて良いが、研磨層22は研磨パッド自体の巨視的スケールの厚さ均一性が良好でありうる(この均一性は、研磨層の底面に対する研磨面24の高さのグローバル変動を指し、研磨層に意図的に形成されたいかなる肉眼的溝又は貫通孔をも含むものではない)。例えば、厚さの非均一性は1ミル未満でありうる。
【0044】
オプションとして、研磨面24の少なくとも一部が、スラリを搬送するために研磨面に形成された複数の溝26を含みうる。溝26は、例えば同心円、直線、斜交平行、螺旋等のほぼいかなるパターンのものであってもよい。溝があると仮定すると、研磨面24、すなわち溝26間のプラトーは、すなわち研磨パッド22の水平表面積全体の約25〜90%でありうる。従って、溝26は、研磨パッド18の水平表面積全体の10〜75%を占めうる。溝26間のプラトーは、約0.1〜2.5mmの横幅を有しうる。
【0045】
幾つかの実装態様では、例えばバッキング層20がある場合、溝26は研磨層22を完全に貫通して延在しうる。幾つかの実装態様では、溝26は、研磨層22の厚さの約20〜80%、例えば40%を貫通して延在しうる。溝26の深さは0.25〜1mmであってよい。例えば、50ミルの厚さの研磨層22を有する研磨パッド18では、溝26は約20ミルの深さD2でありうる。
【0046】
バッキング層20は、研磨層22よりも柔軟で、より圧縮性でありうる。バッキング層20は、ショアAスケールで80以下の硬度、例えば約60ショアAの硬度を有しうる。バッキング層20は、研磨層22よりも厚い、又は薄い、又は同じ厚さであってよい。
【0047】
例えば、バッキング層は、ボイドを有するポリウレタン又はポリシリコン等のオープンセル又はクローズセル発泡体であってよく、これにより加圧下でセルがつぶれ、バッキング層が圧縮される。適切なバッキング層の材料は、コネクチカット州ロジャースのロジャース社のPORON4701−30、又はRohm&Haas社のSUBA−IVである。バッキング層の硬度は、層材料と孔隙率を選択することによって調節可能である。あるいは、バッキング層20は、同じ前駆体から形成され、研磨層と同じ孔隙率を有するが、異なる硬化度を有することで異なる硬度を有するようになる。
【0048】
ここで図2を参照すると、CMP装置の研磨ステーション10において、一又は複数の基板14が研磨されうる。適切な研磨装置の説明は、参照することによって発明全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5738574号明細書で見ることができる。
【0049】
研磨ステーション10は、研磨パッド18がその上に配置される回転可能なプラテン16を含みうる。研磨ステップの間、研磨液30、例えば研磨スラリは、スラリ供給ポート又は結合したスラリ/リンスアーム32によって研磨パッド18の表面に供給されうる。研磨液30は、研磨粒子、pH調節剤、又は化学活性成分を含みうる。
【0050】
基板14は、キャリアヘッド34によって研磨パッド18に当接して保持される。キャリアヘッド34は支持構造、例えば回転台から吊るされ、キャリアドライブシャフト36によってキャリアヘッドの回転モータに接続されており、これによりキャリアヘッドが軸38を中心として回転することができる。研磨液30の存在下での研磨パッド18と基板14の相対的な動きにより、基板14が研磨される。
【0051】
研磨層のパッド硬度、及びその他の材料の特性は、研磨工程に影響をもたらす。パッド硬度は、研磨層を製造するのに使用される材料、研磨層の孔隙率の範囲及び分布、及びポリマーマトリクス前駆体を硬化させるのに使用される硬化度によって決定される。
【0052】
孔隙率の範囲及び分布を制御することにより、パッド硬度が局部的に制御される。例えば、研磨面全体で、空間的に研磨層を製造するために使用される(異なる硬度を有する)材料を効率的に変化させることは困難でありうる。同様に、研磨層全体において、良好な解像度でパッド前駆体の硬化度を制御することは困難となり得る。しかしながら、後に記載するように、ポアの場所及び密度を3D印刷プロセスにおいて制御することが可能である。
【0053】
通常、研磨層22の孔隙率は、研磨層にポリマーマトリクス前駆体とは異なる材料を含むことによって導入される。幾つかの研磨パッドでは、研磨層にポア含有(例えば空洞の)粒子を含むことによって、孔隙率が導入される。例えば、既知のサイズの空洞のミクロスフェアを液状前駆体と混合し、その後硬化させて、研磨層の材料を形成することができる。しかしながら、パッド材料と粒子との間の界面における2つの材料の硬度の差により、研磨されている基板に二次的なひっかき傷ができる可能性がある。
【0054】
幾つかの研磨層では、ボイドを作製するために粒子の代わりに気泡が使われる。この方法では、孔隙率を生成するために、研磨層の粒子とは異なる材料でできた粒子を使用する必要がなくなる。全体的な孔隙率を制御することは可能であるが、気泡が使われる場合、ポアのサイズとポアの分布を制御することは困難である。気泡のサイズと場所がややランダムであるため、ポアの分布及び局部孔隙率を制御することは困難であり、研磨層の異なる領域にわたって硬度に差が生じる可能性がある。例えば、直径は局部表面張力の関数であるため、泡の直径を効率的に制御することができない。加えて、気泡の局部分布を制御することは困難であり、このため研磨層の異なる領域にわたり硬度に違いが生じる可能性があり、パッドの硬度が変わる原因となり、最終的なウエハの研磨に影響を及ぼしうる。
【0055】
幾つかの実装態様では、研磨パッドは、均一に分布されたポアを有するように製造される。
【0056】
幾つかの実装態様では、研磨パッドは、研磨層の硬度に差が生じるため、研磨パッドの中央部分に比べて研磨パッドの(円周近くの)エッジにおいて大きい、研磨パッドの直線速度の差を補正するのに使用される、分布したポアを有するように製造される。これを補正しないと、研磨パッドの半径全体の研磨速度のこの差により、基板が研磨層の異なる半径位置において研磨されるため、基板の研磨に差が生じる可能性がある。
【0057】
幾つかの実装態様では、研磨パッドは、研磨層の硬度に差が生じるため、研磨速度の非均一性の他の原因を補正する、分布したポアを有するように製造される。
【0058】
研磨層の硬度を効率的に制御するために、最初にコンピュータによるシミュレーションを使用して、研磨層の異なる場所において、研磨層の所望の硬度を決定することができる。上記シミュレーションにより、例えば研磨パッドが回転している時に研磨パッドの直線速度の差を補正するのに使用できる、研磨層の硬度プロファイルが作成される。選択された硬度プロファイルに基づいて、次に選択されたプロファイルを達成するために孔隙率が適切に分布される。ポアのサイズ、ポアの密度と空間的分布が、選択された硬度プロファイルと整合されうる。
【0059】
3D印刷は、コンピュータシミュレーションによって決定された孔隙率を得るのに便利で、高度に制御可能なプロセスを提供する。図3Aを参照すると、図1A〜1Cに示す研磨パッド18の少なくとも研磨層22は、3D印刷プロセスを使用して製造される。1A-1C is manufactured using a 3D printing process.製造プロセスでは、薄い材料の層が徐々に堆積され、溶融される。例えば、パッド前駆体材料の液滴52を、液滴噴出プリンタ55のノズル54から噴出させて、層50を形成することができる。液滴噴出プリンタはインクジェットプリンタと似ているが、インクの代わりにパッド前駆体材料を使用する。ノズル54は、(矢印Aで示すように)支持体51全体を平行移動する。
【0060】
堆積させた第1の層50aにおいて、ノズル54は支持体51上に噴出しうる。その次に堆積させた層50bにおいては、ノズル54はすでに固化した材料56上に噴出しうる。各層50が固化した後、3次元研磨層22が完全に製造されるまで、前に堆積させた層の上に新たな層を堆積させる。各層は、ノズル54によって、コンピュータ60で実行される3D描画コンピュータプログラムに記憶されたパターンで適用される。
【0061】
支持体51は堅い基部であってよい、又は例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の層等の柔軟性フィルムであってよい。支持体51がフィルムである場合、支持体51は研磨パッド18の一部を形成しうる。例えば、支持体51はバッキング層20であってよい、又はバッキング層20と研磨層22との間の層であってよい。あるいは、研磨層22を支持体51からなくすことができる。
【0062】
所望の分布によって指定される特定の場所にパッド前駆体材料を堆積させないようにするだけで、研磨層22にポアの所望の分布を組み込むことができる。つまり、その特定の場所にパッド前駆体材料を分配しないだけで、特定の場所にポアを形成することができる。
【0063】
3D印刷では、所望の堆積パターンをCAD適合ファイルで指定し、その後、プリンタを制御する電子コントローラ(例えばコンピュータ)によって読み取ることができる。電子制御信号を次にプリンタへ送って、ノズル54がCAD適合ファイルによって指定された位置まで平行移動した時にのみ、パッド前駆体材料が分配される。こうすれば研磨層22の実際のポアのサイズを測定する必要はなく、材料を3D印刷するのに使用されるCADファイルに含まれる命令に、研磨層22に組み込まれるべき孔隙率の実際の場所及びサイズが記録される。
【0064】
図3Bに、3D印刷印刷によって形成されたポア325の詳細図を示す。ノズル54は、ノズル54を含むプリンタの解像度で堆積された一連のパッド前駆体部分311でできた第1の層310を堆積させる。部分311は、長方形形状に概略的にのみ示されている。例えば600ドット/インチ(dpi)の解像度を有する典型的な高速プリンタでは、各部分311(例えば各ピクセル)の幅は30〜50ミクロンでありうる。
【0065】
連続的に第1の層310を堆積させた後に、ノズル54を使用して第2の層320を堆積させる。第2の層320は、ポリマーマトリクス前駆体をノズル54が堆積させないボイド325を含む。30〜50ミクロンのポアは、単にこれらの場所に材料を堆積させないことによって、第2の層320に形成されうる。
【0066】
ボイドを有する部分のすぐ上の層には、第2の層320のボイド325のすぐ上のオーバーハング332が生じうる。オーバーハング332は、堆積されたポリマーマトリクス前駆体部分331の表面張力によって横方向に保持されるため、オーバーハング332がボイド325の中に落ちることが防止される。ノズル54はそして、ボイド325の上に延在するオーバーハング334を含むポリマーマトリクス前駆体部分333の堆積を継続する。オーバーハング332と同様に、堆積されたポリマーマトリクス前駆体部分333の表面張力により、オーバーハング332がボイド325の中に落ちることが防止される。
【0067】
印刷された各層310〜330の厚さは、30〜50ミクロンであってよい。図3Bに、長方形の形状のボイドを示したが、一般に研磨層のポアは、球状であってよい、又は例えば立方体又はピラミッド形等のその他の形状寸法を有しうる。ボイドの最小限のサイズは、プリンタの解像度によって決定される。
【0068】
あるいは、研磨プロセス中に磨滅するポア表面を有するパッドの研磨面近くのポアにおいては、研磨プロセスに適合する流体(例えば水)を、例えば第2のノズルによってボイドの中に堆積させうる。ボイドの上に堆積されるパッド前駆体材料は流体とは混和性ではなく、流体の存在によってボイドの中に落ちることが防止される。研磨プロセス中に、ポア表面の一部が磨滅したら、研磨プロセス中に使用される流体がポアから流れ出て、ポアは、空のポアの圧縮性を有するようになる。
【0069】
紫外線(UV)又は赤外線(IR)硬化性ポリマーをパッド前駆体材料として使用して、研磨層を製造することができ、射出成形を使用して研磨パッドを製造する時に要求されるオーブンは必要なくなる。研磨パッドの製造プロセスを業者側から移して、顧客側で使用されるように顧客に直接認可を与えて、実際に必要とされる数のパッドを顧客が製造できるようにすることができる。
【0070】
堆積されたパッド前駆体材料の固化は、ポリメリゼーションによって達成されうる。例えば、パッド前駆体材料の層50はモノマーであってよく、モノマーは、UV硬化によってインシトゥで重合させることができる。例えば、UV又はIR光源360を、図3Cに示すように、ノズル54にかなり接近させて位置決めすることができる。この場合、インシトゥでの硬化は、堆積される材料が研磨層の所望の場所に堆積された時に固化するように、パッド前駆体材料がノズル54から分配された直後に行うことができる。さらに、UV又はIR光源の強度は、インシトゥでの硬化が、堆積されたパッド前駆体材料に十分な構造剛性を付与する程度に起こるように調節可能である。あるいは、パッド前駆体材料の全層50を堆積させた後に、全層50を同時に硬化させることができる。
【0071】
硬化可能なパッド前駆体材料の使用に加えて、液滴52は、冷えると固化するポリマー溶解物であってよい。あるいは、プリンタにより、粉の層を散らして、粉の層の上にバインダー材料の液滴を噴出させることによって、研磨層22が作製される。この場合、粉は例えば研磨粒子22等の添加物を含みうる。
【0072】

従来は、研磨面24内にスラリを運ぶために、研磨面24に形成される溝26が、通常機械加工される。しかしながら、上記溝のプロファイルは、フライス加工、旋盤又は加工プロセスによって限定される。
【0073】
3D印刷を使用することによって、幅広い種類の断面形状を有する溝を作製することが可能である。例えば、溝の底部よりも上部の方が狭い溝を作製することが可能でありうる。例えば、図3Dに示すように、鳩尾形のプロファイル370の溝を達成することは困難である。
【0074】
図3Cに示すように、フライス加工後にパッド材料の繊維380が溝24の側面に残りうる。これらの機械加工繊維は、スラリの流れに対する局部抵抗の原因となりうる。3D印刷により、これらの繊維を減らす(又は除去する)ことができる。
【0075】
加えて、スラリを搬送しやすくするために、ポアを所望のパターンで溝と相互接続させることができる。異なる深さの溝を、研磨層に製造することも可能である。
【0076】
従来のパッドは、感圧接着剤(PSA)によってやわらかいサブパッド(例えばバッキング層20)に固定される硬質のカバー層(例えば研磨層22)を含む。3D印刷を使用して、接着剤層、例えばPSAを使用せずに、複数層の研磨パッドを一回のプリント工程で作製することができる。異なる前駆体ポリマーを印刷することによって、及び/又は同じパッド前駆体ポリマーを使用するが、印刷された構造の孔隙率を上げてバッキング層20が研磨層22よりも柔らかくなるようにすることによって、バッキング層20を作製しうる。更に、異なる硬化量、例えば異なるUV放射線強度を使用することによって、研磨層22とは硬度がことなるバッキング層20を提供することができる。
【0077】
透明なウインドウを研磨層内に埋め込むことができる。光学モニタシステムは、透明なウインドウを通して、研磨されている基板の層へ光線を送り、また層から光線を受けて、基板研磨の終点をより正確に決定することができる。
【0078】
透明なウインドウを別々に製造した後に、接着剤又はその他の技法を用いてウインドウを研磨層に形成された対応する開孔に固定する代わりに、3D印刷により、透明なウインドウが研磨層に直接堆積させることが可能になる。例えば、透明なウインドウを製造するのに使用される光学的に透明な材料(例えば空洞のミクロスフェア等の不透明性誘発添加物なしの透明なポリマー前駆体)を分配するために第2のノズルが使用され、特定の場所にボイドを有するパッド前駆体材料を分配して所望の孔隙率を達成するために、第1のノズルが使用される。透明なウインドウ材料と、パッド前駆体との間の界面は、印刷プロセス中に直接結合され、添加物は必要ない。ウインドウは、例えば孔隙率なしで、均一な固体として印刷されうる。
【0079】
3D印刷法により、層ごとに印刷することで厳しい許容値を達成することが可能になる。また、(プリンタ55とコンピュータ60とを有する)一つの印刷システムを使用して、3D描画コンピュータプログラムに保存されたパターンを単に変えることによって、研磨層に所望分布の異なる孔隙率を有する様々な異なる研磨パッドを製造することができる。
【0080】
CMPに使われる研磨パッドの孔隙率の分布を調整することの他に、本明細書に記載された方法及び装置を使用して、衝撃吸収、防音、及び部品の熱管理用に孔隙率のサイズ及び孔隙率の分布を制御することも可能である。
【0081】
幾つかの実装態様が説明されてきた。このような次第であるが、様々な修正を行うことができることを理解すべきである。例えば、研磨パッド若しくはキャリアヘッドのいずれか、又はこれらの両方が移動して、研磨面と基板との間の相対運動を起こすことができる。研磨パッドは、円形または何か他の形状のパッドとすることができる。接着剤層を研磨パッドの底面に適用して、パッドをプラテンに固定することができ、研磨パッドをプラテン上に配置する前に、接着剤層を取り外し可能なライナーでカバーすることができる。加えて、垂直方向の位置決め用語が使用されているが、研磨面及び基板は、上下逆さまに、垂直の配向に、又は他の何らかの配向に保持されうることを理解すべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E