(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、精密塗装分野において、インクジェットヘッドを用いて、必要な場所にだけ塗装する、塗装されずに無駄に飛び散る塗料の量を抑えるなどの試みが行われている。
インクジェットヘッドはスプレーノズルに比べて上記のような利点があるが、塗装に用いる塗料では、高揮発性の溶剤や様々な微粒子が分散された機能性塗料が用いられる場合が多い。そのため、スプレーノズルに比べてノズル数が多いことや、ノズル径が小さく、上記のような塗料を使った場合にノズルの目詰まりが起きやすいことから、不吐出や吐出異常が発生しやすい。
そこで、上記問題を解決するための従来技術として、以下のようなものがある。
【0003】
特許文献1は、複数の突起部を有するインク受け取り部材でノズル面のインクを拭き取った後に、ローラー状のワイプ部材が回転しながらノズル面を拭き取るというものである。
しかし、特許文献1では、複数の突起部を有するインク受け取り部材でノズル面を拭き取っているが、高硬度の微粒子を含有するような吐出液が大量に浸み出している状態でヘッド面を拭き取った場合、繰り返し擦ることによってノズル孔周辺部が付着した微粒子によって傷付き、ヘッド寿命が短くなるという不具合が発生する。
また、ローラー部材で回転させながら拭き取っても、ノズル面に付着した吐出液の溶質(樹脂や微粒子)を完全には除去できないため、不吐出や吐出曲がりなどの不安定吐出を引き起こしやすい。
【0004】
特許文献2は、洗浄液を均一に塗布したワイピングシートをロール機構を使って送りながらヘッドを液滴吐出ヘッドを払拭するというものである。
しかし、特許文献2では、ワイピングシートでヘッド面を擦りながら清浄化するが、高硬度の微粒子を含有するような吐出液が大量に浸み出している状態でヘッド面を拭き取った場合、繰り返し擦ることによってノズル孔周辺部が付着した微粒子によって傷付き、ヘッド寿命が短くなるという不具合が発生する。
また、染み出した多量の吐出液を薄いワイピングシートで完全に拭き取るためには、シートを多く送りながら拭き取る必要があり、多量のワイピングシートを消費することになり、コストがかかってしまう。
【0005】
特許文献3は、吐出停止中は、耐溶剤性材料からなる板状またはチューブ状のキャップを、溶媒に浸してからヘッドに完全密着させ、ノズルを外気から遮断して液滴材料の蒸発、目詰まりの発生を防ぎ、安定吐出を実現するというものである。
しかし、特許文献3では、キャップは液を吸収する機能のないフッ素樹脂系素材を使用しているため、その素材がノズル面に直接密着すると、特に高い揮発性溶剤を溶媒にした吐出液の場合、溶媒の揮発によってノズル孔周辺に吐出液中の溶質(樹脂や微粒子)がこびりつき、不吐出や吐出曲がりなどの不安定吐出を引き起こしやすい。
また、ヘッドがキャップから離れた後、特にワイプなどを行わずに吐出しているが、微粒子を含有するような吐出液の場合、ヘッドがキャップから離れたときには、微粒子がノズル孔周辺部に大量に付着しており、これらが吐出液の吐出安定性を阻害し、不吐出や不安定吐出を引き起こす恐れがある。
【0006】
特許文献4は、ワイピング部材の表面に積層したフェルトに溶剤槽から溶剤を供給、含浸し、ヘッドのノズル面に付着増粘、又は固着したレジスト等の材料を再溶解した後、突起部にて掻き落とす。また、ブラシにてワイピング部材を溶剤中にて、こすり洗いしノズル面の再汚染を防ぐというものである。
しかし、特許文献4では、ヘッド面を擦りながら清浄化するため、特許文献1、2と同様にヘッド寿命が短くなるという不具合が発生する。
【0007】
特許文献5は、密閉手段が覆うノズル列の列方向の長さを変えることで、吸引の必要なノズルのみにインク吸引動作行うことができるため、インク消費を抑制でき、ランニングコストを低減し、短時間の吸引が可能となる。
しかし、特許文献5では、高揮発性の溶媒でかつ微粒子を含有するような吐出液の場合、吸引のみでは微粒子がノズル孔周辺部に多量に付着しており、これらが吐出液の吐出安定性を阻害し、不吐出や不安定吐出を引き起こす恐れがある。
また、吸引後にワイパーブレードによるワイプを行っているが、吸引動作後の時間が経った状態でワイプすると、溶媒が揮発して増粘し微粒子が大量に残った状態でノズル面を擦るため、特許文献1、2と同様にヘッド寿命が短くなるという不具合が発生する。
【0008】
以上のように上記の先行技術では、高揮発性溶媒でかつ高硬度の微粒子を含有した吐出液に対しては十分に対応できておらず、インクジェットヘッドから安定吐出を行うことが難しく、ヘッド寿命が極端に短くなるという問題を解決できない。
【0009】
また、上記の特許文献1〜4では、ヘッドノズル面のワイプを行う前には、ノズル孔内の増粘した塗料や気泡を排出するために、パージによって塗料を多量に排出する必要がある。そのため、高価な機能性塗料を多量に廃棄することになり、コスト高となってしまう。また、ブレードワイプなので、きれいには払拭できないという問題もある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る液体を吐出する装置及び液体吐出方法について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0015】
本発明の液体を吐出する装置は、溶媒を含む液体をノズル面から吐出する液体吐出ヘッドを備える液体を吐出する装置であって、前記液体吐出ヘッドのノズル面をキャップするキャッピング部材と、前記液体吐出ヘッドのノズル面を払拭するワイピング部材と、を備え、前記キャッピング部材は、内部及び/又は表面に前記溶媒を保持可能であり、前記溶媒を保持した状態で前記ノズル面をキャップし、前記ワイピング部材は、内部及び/又は表面に前記溶媒を保持可能であり、前記溶媒を保持した状態で前記ノズル面を払拭することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の液体吐出方法は、溶媒を含む液体をノズル面から吐出する液体吐出ヘッドにより吐出を行う液体吐出方法であって、前記液体を吐出する吐出工程と、キャッピング部材により前記液体吐出ヘッドのノズル面をキャップするキャッピング工程と、ワイピング部材により前記液体吐出ヘッドのノズル面を払拭する払拭工程と、を有し、前記キャッピング部材は、内部及び/又は表面に前記溶媒を保持可能であり、前記溶媒を保持した状態で前記ノズル面をキャップし、前記ワイピング部材は、内部及び/又は表面に前記溶媒を保持可能であり、前記溶媒を保持した状態で前記ノズル面を払拭することを特徴とする。
【0017】
<液体>
前記液体吐出ヘッドにより吐出される液体(吐出液、インクなどとも称する)は、溶媒を含み、必要に応じてその他の成分を含む。
溶媒としては、適宜変更することが可能であるが、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、シクロヘキサノン(アノン)、シクロペンタノン等が挙げられる。これらは1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0018】
その他の成分としては例えば、樹脂、微粒子等が挙げられる。
樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、アクリルモノマー等が挙げられる。
【0019】
液体吐出ヘッドが吐出する液体には、吐出後に塗膜の耐久性を高める等の目的で微粒子、特に高硬度の微粒子が適宜含まれることがある。
微粒子としては、例えば、セラミック系の微粒子が挙げられる。
セラミック系の微粒子としては、例えば、アルミナ、ジルコニア等が挙げられる。
【0020】
また、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、三次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0021】
<キャッピング部材>
次に、液体吐出ヘッドのノズル面をキャップするキャッピング部材について説明する。
本実施形態のキャッピング部材は、内部及び/又は表面に前記溶媒を保持可能であり、前記溶媒を保持した状態で前記ノズル面をキャップする。キャッピング部材は内部及び表面に前記溶媒を保持可能であることが好ましい。
なお、キャップする際には、キャッピング部材の内部と表面のうち少なくとも一方、乃至その一部が溶媒を保持していればよい。
【0022】
本実施形態において、キャッピング部材が保持する溶媒は、専用の洗浄液を使用するのではなく、吐出液に含まれる溶媒と同じ成分である。吐出液は溶媒と必要に応じて粒子などのその他の成分を含むが、キャッピング部材は吐出液に含まれる溶媒を保持するものである。そのため、本発明において、キャッピング部材が保持する溶媒は、洗浄液等の別の液体に含まれる溶媒とは異なるものである。
また、吐出液に含まれる溶媒に変更があればそれにあわせて、キャッピング部材に保持させる溶媒を変更することが可能である。
【0023】
キャッピング部材の形状としては、特に制限されるものではないが、例えば、ブロック状が挙げられる。大きさとしては、ノズル面をキャップできるものであればよく、特に制限されるものではない。
キャッピング部材がノズル面をキャップする際には、ノズル面に密接していることが好ましいが、一部が密接するものであってもよく、密接せず近接するものも前記キャッピング部材に含まれる。
【0024】
キャッピング部材の材質としては、用いる溶媒等によっても適宜変更され、特に制限されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、フッ素樹脂等が挙げられる。
また、キャッピング部材としては、多孔質で吸液性のあるスポンジ状であることが好ましく、この場合、溶媒を保持しやすくなる。
なお、ウレタンやオレフィンなどの場合、例えば極性溶媒を用いる場合など、溶媒によって溶解することがあるため注意が必要である。
【0025】
キャッピング部材のメッシュ径の平均値は、30〜100μmであることが好ましい。上記範囲の場合、目詰まりなく、速やかな液の吸収が可能という利点がある。
また、吐出液に高硬度微粒子が含まれる場合、キャッピング部材のメッシュ径の平均値は、高硬度微粒子の粒子径よりも大きいことが好ましい。この場合、ノズル面に高硬度微粒子が付着している場合にキャッピング部材側に移行しやすくなり、ノズル面をより清浄な状態にすることができる。
【0026】
<ワイピング部材>
次に、液体吐出ヘッドのノズル面を払拭するワイピング部材について説明する。
本実施形態のワイピング部材は、内部及び/又は表面に前記溶媒を保持可能であり、前記溶媒を保持した状態で前記ノズル面を払拭する(ワイピングなどとも称する)。ワイピング部材は内部及び表面に前記溶媒を保持可能であることが好ましい。
なお、払拭する際には、ワイピング部材の内部と表面のうち少なくとも一方、乃至その一部が溶媒を保持していればよい。
【0027】
本実施形態において、ワイピング部材が保持する溶媒は、専用の洗浄液を使用するのではなく、前記液体に含まれる溶媒と同じ成分である。前記液体は溶媒と必要に応じて粒子などのその他の成分を含むが、ワイピング部材は前記液体に含まれる溶媒を保持するものである。そのため、本発明において、ワイピング部材が保持する溶媒は、洗浄液等の別の液体に含まれる溶媒とは異なるものである。
また、前記液体に含まれる溶媒に変更があればそれにあわせて、ワイピング部材に保持させる溶媒を変更することが可能である。
【0028】
ワイピング部材の形状としては、特に制限されるものではないが、例えば、ローラー状、ブロック状などが挙げられる。大きさとしては、ノズル面を払拭できるものであればよく、特に制限されるものではない。
【0029】
ワイピング部材の材質としては、用いる溶媒等によっても適宜変更され、特に制限されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、フッ素樹脂等が挙げられる。
また、ワイピング部材としては、多孔質で吸液性のあるスポンジ状であることが好ましく、この場合、溶媒を保持しやすくなる。
なお、ウレタンやオレフィンなどの場合、例えば極性溶媒を用いる場合など、溶媒によって溶解することがあるため注意が必要である。
【0030】
ワイピング部材のメッシュ径の平均値は、10〜100μmであることが好ましい。大きすぎると材質の目が粗くなり十分なワイピングがしにくくなり、小さすぎると吐出液や吐出液中の硬質微粒子の取り込み速度が遅くなり、十分なワイピングがしにくくなる。
【0031】
<作用効果の説明>
上記構成により本発明の効果が得られる仕組みについて説明する。
吐出液を吐出する前の待機中はキャッピング部材を液体吐出ヘッドのノズル面にキャッピングさせておくことでノズル面の乾燥防止を行うことができる。これに加えて、吐出液に含まれる溶媒を保持するキャッピング部材を用いることで、浸透作用によりノズル面から浸み出す液体(吐出液)を適度にキャッピング部材に浸透させることができるため、ノズル面やノズル孔周辺部に増粘した吐出液が付着することを防止できる。
【0032】
吐出液に高硬度微粒子が含まれる場合でもノズル面やノズル孔周辺部に付着する高硬度微粒子の粒子数を減らすことができ、ワイピング部材によって払拭する際に高硬度微粒子によってノズル面が損傷することを抑制することができる。これにより、長期にわたってノズル面を良好な状態に保つことができ、長期にわたって良好な吐出状態を維持することができる。
【0033】
また、キャッピング部材から液体吐出ヘッドが離れると、ノズル孔内における吐出液の毛管現象により、ノズル面に少量の吐出液が浸み出した状態となる。本実施形態では、溶媒を保持するワイピング部材によりノズル面をワイプするため、ノズル面に僅かに浸み出した吐出液を吸い取ると同時に拭き取ることとなる。このため、ノズル面を容易に清浄化できる。
【0034】
また、ノズル面に付着した少量の高硬度微粒子がワイピング部材側に移行しやすくなり、ノズル面に付着した高硬度微粒子の量を更に減らすことができるため、ワイプ時に高硬度微粒子によりノズル面が損傷することを更に抑制することができ、長期にわたって良好な吐出性を維持することができる。
【0035】
上述のように、ノズル孔内やノズル孔周辺部で吐出液が増粘、乾燥することを防ぎ、ノズル面を清浄に保つことができるため、ノズル孔内の増粘した吐出液を排出するためのパージを行わずに、ノズル孔の目詰まりを抑制することができる。このように本実施形態によればパージを行うことなく良好な吐出性が得られる。
更に、パージが不要であることから、高価な吐出液の消費を大幅に抑えることが可能となり、コスト面で有利となる。
【0036】
また、パージしたときと比べて、ノズル面に付着する吐出液の量が極少量となるため、吐出液に高硬度微粒子が含まれている場合、ノズル面に付着する高硬度微粒子の量も極僅かとなる。このため、ワイプ時にノズル面が損傷することを防止でき、長期にわたって良好な吐出性を維持することが可能となる。
【0037】
<溶媒の保持量調節>
本実施形態の液体を吐出する装置は、前記キャッピング部材又は前記ワイピング部材が保持する前記溶媒の保持量を調節する保持量調節部を備えることが好ましい。
本実施形態の保持量調節部は、前記キャッピング部材又は前記ワイピング部材に前記溶媒を供給する溶媒供給部と、前記キャッピング部材又は前記ワイピング部材を押圧する押圧部と、を有する。
押圧部でキャッピング部材又はワイピング部材を押圧することにより、キャッピング部材又はワイピング部材が保持する吐出液や溶媒を絞り出すことができる。
本実施形態の保持量調節部について、図を参照しつつ説明する。
【0038】
<<キャッピング部材の実施形態>>
まず、キャッピング部材の場合の例について
図1を用いて説明する。
図1では、ブロック状のキャッピング部材32、押圧部として絞りブロック34、液排出穴36やパンチ穴37を有する固定台38が図示されている。
【0039】
本実施形態では、液体吐出ヘッドがキャッピング部材32から離れたときに、溶媒供給部によりキャッピング部材32に対して溶媒を滴下し、絞りブロック34により押圧することにより、浸み込んだ吐出液を溶媒と一緒に絞り出すことができる。この絞り出しの操作を定期的に行うことにより、長期にわたってキャッピング部材32を清浄化した状態に保つことができる。
【0040】
また、溶媒供給部により溶媒を供給するとともに、絞りブロック34で余分な溶媒を絞り出すことにより、キャッピング部材32の保持する溶媒の量を所望の範囲内にすることができる。キャッピング部材が保持する溶媒の量が多いと、溶媒が液体吐出ヘッドのノズル内に侵入して吐出に悪影響を起こすことが懸念される。一方、キャッピング部材が保持する溶媒の量が少ないと、吐出液の増粘、乾燥を防げないことがある。
【0041】
本実施形態では、底部がメッシュ状となっている固定台38にキャッピング部材32を設置しており、メッシュ状の底部が液排出穴36として機能するため、絞り出された溶媒は適宜、パンチ穴37を通過し、液排出穴36から排出される。
【0042】
絞りブロック34の材質としては、特に制限されるものではないが、キャッピング部材32よりも硬いことが好ましく、例えば、金属からなるものが挙げられる。
【0043】
溶媒供給部は、特に制限されるものではなく、適宜変更することが可能である。本実施形態では、キャッピング部材が液体吐出ヘッドから離れたときに、溶媒をキャッピング部材32に滴下する方法としているが、これに限られるものではない。例えば、キャッピング部材32が液体吐出ヘッドに密着している状態で溶媒を供給してもよい。
【0044】
キャッピング部材に保持させる溶媒の量としては、液体吐出ヘッドやインクの構成、キャッピング部材の種類、溶媒の種類等によっても変更されるため、一概にはいえないが、例えば0.3〜3mlとすることができる。
【0045】
<<ワイピング部材の実施形態(1)>>
次に、ワイピング部材の場合の例について
図2、
図3を用いて説明する。
図2では、ローラー状のワイピング部材42、絞りローラー44、液排出穴46を有する溶媒プール48が図示されている。
溶媒プール48には吐出液に含まれる溶媒と同じものが溜められており、ワイピング部材48の下部が溶媒プール48中の溶媒に浸かるように設置されている。
【0046】
本実施形態において、ローラー状のワイピング部材42は、ワイピング部材42を回転乃至固定するモーター41が接続された回転軸に設置され、適宜回転、固定するようになっている。また、絞りローラー44はローラー状のワイピング部材42に押し付けられて設置されており、ワイピング部材42の回転によって連れ回りするようになっている。
【0047】
上記モーター41を回してワイピング部材42を回転させることで、ワイピング部材42の溶媒の浸み込んだ部分が絞り用ローラー44に押し付けられ、余分な溶媒を絞り出すことができる。これにより、特にローラー状の周方向におけるワイピング部材42が保持する溶媒の量を一定に保つことができ、払拭時にノズル面に浸み出した吐出液の除去性を向上させることができる。また、ワイピング部材42に多量の溶媒が浸み込んだままでワイピングを行うと、溶媒が液体吐出ヘッドのノズル内に侵入して吐出に悪影響を起こすことが懸念されるが、これを防止することができる。
【0048】
更に、本実施形態によれば、上述のようにワイピング部材42が保持する溶媒の量を一定に保つことに加え、ワイピングによってワイピング部材42で拭き取った吐出液を洗浄することにもなる。これにより、長期にわたって、清浄な状態でワイピングを行うことができる。
【0049】
なお、ワイピング部材に保持させる溶媒の量としては、液体吐出ヘッドやインクの構成、ワイピング部材の種類、溶媒の種類等によっても変更されるため、一概にはいえないが、例えば、0.3〜3mlとすることができる。
【0050】
絞りローラー44によって絞り出された溶媒は、溶媒プール48に移動し、必要に応じて液排出穴46から排出される。また、溶媒プール48における溶媒の量は適宜調節することが可能である。
【0051】
絞りローラー44の材質としては、特に制限されるものではないが、ワイピング部材42よりも硬いことが好ましく、例えば、金属からなるものが挙げられる。
絞りローラー44の大きさとしては、特に制限されるものではなく、適宜変更することが可能である。
【0052】
次に、
図2におけるワイピングの一例について説明する図を
図3に示す。
図3では、
図2に加えて、液体吐出ヘッド60が図示されている。図中の矢印は拭き取り方向を示すものであり、ワイピング部材が矢印の方向に進行することでノズル面が払拭される。
【0053】
本実施形態では、
図2において、ワイピング部材42を回転させ、溶媒が絞られた部分がワイピング部材42の頂点に来たところで、モーター41の回転を停止すると同時にロックし、ワイピング部材42が回らなくなるようにする。そして、ワイピング部材42の回転をロックした状態で液体吐出ヘッドを払拭する。
【0054】
このように、ロックした状態で液体吐出ヘッドのノズル面を払拭することにより、ワイピング部材42が保持する溶媒の量が適度に調節された部分で払拭することができ、溶媒が多くてノズル孔の内部に浸透してしまうことや、溶媒が少なくて払拭が十分に行えないことを防止することができる。また、ワイピング部材42の回転を固定することで、ノズル面に浸み出した吐出液の除去性を安定化させることができる。
【0055】
更に、ワイピング部材42が洗浄された部分でノズル面を払拭することとなり、吐出液の除去性を更に向上させることができる。
また、本実施形態によれば、長期にわたってワイピング部材42が保持する溶媒の量を一定に保つこと、ワイピング部材42を洗浄することができるため、ワイピング部材を使い捨てにすることなく使い回しが可能となるので、コスト面でも有利となる。
【0056】
また、ワイピング部材42がローラー状であるため、ローラーがノズル面に対して線的にワイプするので、ヘッドコンタクトがより確実になるという利点もある。
【0057】
<<ワイピング部材の実施形態(2)>>
次に、ワイピング部材の場合のその他の例について
図4、
図5を用いて説明する。
図4では、ブロック状のワイピング部材52、絞りブロック54、液排出穴56を有する固定台58が図示されている。
【0058】
本実施形態において、ブロック状のワイピング部材52は固定台58に設置されており、押圧部としての絞りブロック54がワイピング部材52に押し当てられるようになっている。
本実施形態では、液体吐出ヘッドを払拭する前に、溶媒供給部によりワイピング部材52に溶媒を滴下し、絞りブロック54をワイピング部材52に押し当てて溶媒を絞ることにより、ワイピング部材52が保持する溶媒の量を一定に保つことができる。このため、溶媒の保持量が一定に保たれた面で払拭することで、ノズル面に浸み出した吐出液の除去性を安定化させることができる。ワイピング部材52が多量の溶媒を保持した状態で払拭を行うと、ワイピング部材に保持された溶媒がノズル孔内に侵入して吐出に悪影響を起こすことが懸念されるが、これを防止することができる。
【0059】
本実施形態では、溶媒をワイピング部材52に滴下し、絞りブロック54を押し当てることで、ワイピングによりワイピング部材52が拭き取った吐出液を溶媒と一緒に絞り出すことが可能である。そのため、ワイピング部材52の洗浄を行うことができ、清浄な状態でノズル面のワイピングを行うことができる。また、定期的に行うことで長期にわたってワイピング部材52を清浄化した状態で保つことができ、長期にわたってノズル面を清浄な状態で保つことができる。
【0060】
また、絞りブロック54がワイピング部材52に押し当てられると、ワイピング部材52は液溜まり59との間に設けられたメッシュ57に押し当てられることとなり、吐出液や溶媒が液溜まり59に移動する。そして、必要に応じて適宜、液排出穴56から排出される。
【0061】
次に、
図4におけるワイピングの一例について説明する図を
図5に示す。
図5では、
図4に加えて、液体吐出ヘッド60が図示されている。図中の矢印は拭き取り方向を示すものであり、ワイピング部材が矢印の方向に進行することでノズル面が払拭される。
【0062】
上記により、保持する溶媒の量が適度に調節され、清浄化されたワイピング部材52で払拭することで、安定して吐出液の除去を行うことができ、溶媒が多くてノズル孔の内部に浸透してしまうことや、溶媒が少なくて払拭が十分に行えないことを防止することができる。
【0063】
本実施形態によれば、長期にわたってワイピング部材52が保持する溶媒の量を一定に保つこと、ワイピング部材52を洗浄することができるため、ワイピング部材を使い捨てにすることなく使い回しが可能となるので、コスト面でも有利となる。
【0064】
また、ワイピング部材52がブロック状であるため、ノズル面と広い面でコンタクトすることが可能であるという利点もある。
【0065】
<<その他の実施形態>>
次に、その他の実施形態について説明する。
上記実施形態における保持量調節部は、溶媒供給部と押圧部を有するものであったが、本発明においてはこれに限られるものではない。例えば、溶媒供給部によりキャッピング部材やワイピング部材に溶媒を供給した後、吸引したり、乾燥させたりすることにより保持する溶媒の量を調節することも可能である。
【0066】
また、上記実施形態ではキャッピング部材とワイピング部材をそれぞれ別の部材としているが、キャッピングとワイピングを両方とも行える1つの部材としての構成も可能である。例えば、
図1に示されるブロック状のキャッピング部材により液体吐出ヘッドのワイピングを行うことも可能である。
【0067】
<液体を吐出する装置の基本構成>
次に、本発明の液体を吐出する装置の基本構成について
図6及び
図7を参照して説明する。
図6は本実施形態の液体を吐出する装置の要部平面概略図、
図7は同装置の要部側面概略図である。
本実施形態の装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0068】
このキャリッジ403には、液体吐出ヘッド404及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド404は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド404は、複数のノズル411からなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0069】
液体吐出ヘッド404の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド404に供給するための供給機構494により、ヘッドタンク441には、液体カートリッジ450に貯留されている液体が供給される。
【0070】
供給機構494は、液体カートリッジ450を装着する充填部であるカートリッジホルダ451、チューブ456、送液ポンプを含む送液ユニット452等で構成される。液体カートリッジ450はカートリッジホルダ451に着脱可能に装着される。ヘッドタンク441には、チューブ456を介して送液ユニット452によって、液体カートリッジ450から液体が送液される。
【0071】
この装置は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0072】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド404に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0073】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0074】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド404の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0075】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド404のノズル面(ノズル411が形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0076】
主走査移動機構493、供給機構494、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0077】
このように構成したこの装置においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0078】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド404を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
【0079】
このように、この装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0080】
次に、前記液体吐出ユニットの他の例について
図8を参照して説明する。
図8は同ユニットの要部平面説明図である。
【0081】
この液体吐出ユニットは、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド404で構成されている。
【0082】
なお、この液体吐出ユニットの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420、及び供給機構494の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0083】
次に、前記液体吐出ユニットの更に他の例について
図9を参照して説明する。
図9は同ユニットの正面説明図である。
【0084】
この液体吐出ユニットは、流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド404と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0085】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド404と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0086】
本願において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0087】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0088】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0089】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0090】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0091】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、壁紙や床材などの建材、衣料用のテキスタイルなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0092】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0093】
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0094】
その他にも、例えば電子写真方式における感光体ドラム表面の保護層の塗装や帯電ローラー誘電体の塗装等の用途に適用することができる。
【0095】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0096】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0097】
例えば、液体吐出ユニットとして、
図7で示した液体吐出ユニット440のように、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0098】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0099】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、
図8で示したように、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0100】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0101】
また、液体吐出ユニットとして、
図9で示したように、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。
【0102】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0103】
また、「液体吐出ヘッド」は、使用する圧力発生手段が限定されるものではない。例えば、上記実施形態で説明したような圧電アクチュエータ(積層型圧電素子を使用するものでもよい。)以外にも、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものでもよい。
【0104】
また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0105】
図10は、液体を吐出する装置における循環機構を模式的に説明するための図である。なお、ここでは液体吐出ヘッドとしてインクジェットヘッドを用いた場合の例について説明するが、本発明においてはこれに限られるものではない。
【0106】
インクジェットヘッドから吐出される吐出液を撹拌せずに静置すると、インクに含まれる例えばアルミナ微粒子などの粒子が沈殿するため、本実施形態では、タンク下部にスターラー76を設置し、タンク内で攪拌子75を回転させ、吐出液を常に撹拌させている。循環構成は液送タンク73と液受タンク74に差圧を設け、その差圧によって液を循環させている。差圧を設けるには、圧力センサ77により圧力を測定し、所定の圧力となるように吸引ポンプ72により調整を行う。
【0107】
循環経路は液送タンク73、インクジェットヘッド70、液受タンク74の順で吐出液が循環するようにしており、図中矢印は循環の方向を示している。液受タンク74から液送タンク73への液送は、本実施形態ではダイヤフラムポンプ71を使用して液送している。
【0108】
このようにして液送タンク73、インクジェットヘッド70、液受タンク74間を吐出液が循環している。また、液送タンク73と液受タンク74はチューブポンプによるエア吸引して負圧をかけており、インクジェットヘッド70内のノズル穴から吐出液が浸み出さないように、インクジェットヘッド70内の吐出液にも適切な負圧がかかるようにエア吸引圧を調整している。
【実施例】
【0109】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0110】
(実施例1)
<液体を吐出する装置>
液体を吐出する装置としては、
図6、
図7に示される構成のものを用いた。本実施例では、インクジェット装置を用いた。
【0111】
<吐出液>
吐出液として以下の材料を用いた。
・ポリカーボネート系樹脂
・高硬度微粒子としてアルミナ微粒子(体積平均粒径:300nm)
・溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)とシクロヘキサノン(アノン)
【0112】
<液循環機構>
図10に示される液循環機構を用いた。本実施例では、タンク下部にスターラー76を設置し、タンク内で攪拌子75を回転させ、吐出液を常に撹拌させた。また、液送タンク73、インクジェットヘッド70、液受タンク74の順で吐出液が循環するようにした。
【0113】
<キャッピング部材>
本実施例のキャッピング部材は
図1に示される構成とした。本実施例のキャッピング部材としては、ポリビニルアルコール(PVA)製のスポンジブロックを用いた。また、キャッピング部材は多孔質で吸液性のある構成とし、大きさはノズル面を十分にカバーできる大きさとした。用いたキャップ部材のメッシュ径の平均値は80μmであった。
【0114】
インクジェットヘッドがキャッピング部材から離れたときに溶媒(テトラヒドロフランとシクロヘキサノン)を適量滴下し、絞りブロックをキャッピング部材に押し当て、キャッピング部材に浸み込んだ吐出液を溶媒と一緒に絞り出す。この絞り出しの操作は、定期的に行い、本実施例では、インクジェットヘッドがキャッピング部材から離れるたびに行った。
【0115】
本実施例では金属ブロックを絞りブロックとして用いた。
キャッピング部材は、底部がメッシュ状となっている固定台に設置し、絞り出しの操作によって絞り出された吐出液及び溶媒は液排出穴から排出した。
【0116】
キャップ時は、キャッピング部材に溶媒を適量滴下し、次いで、インクジェットヘッドのノズル面をキャッピング部材に押し付けてキャッピングを行った。
キャピング後、インクジェットヘッドがキャップから離れたときには、ヘッド面から僅かに吐出液が染み出した状態になっていた。
【0117】
<ワイピング部材>
本実施例のワイピング部材は
図2、
図3に示される構成とした。
ワイピング部材としては、ポリビニルアルコール(PVA)製のスポンジローラー(アイオン社製シグナスローラー)を用いた。ワイピング部材のメッシュ径の平均値は80μmであった。
ローラー状のワイピング部材を回転乃至固定するためのモーターに接続し、ローラー状のワイピング部材の下部が溶媒(テトラヒドロフランとシクロヘキサノン)の満たされた溶媒プールに浸かるように設置した。
【0118】
また、金属ローラーを絞りローラーとして用い、ローラー状のワイピング部材に押し付けるようにして設置した。絞り用ローラーは、ローラー状のワイピング部材の回転によって連れ回りするようにし、モーターを回してワイピング部材を回転させることで、ワイピング部材の溶媒を浸み込んだ部分が絞り用ローラーに押し付けられ、余分な溶媒を絞り出す構成とした。これにより、ワイピング部材が保持する溶媒の量が所望の範囲になるようにした。
【0119】
ワイプ時はワイピング部材が回転しないように固定した状態で、インクジェットヘッドのノズル面をワイピング部材に押し当て、押し当てながらヘッド面に対して平行に移動させることで払拭を行う構成とした。
【0120】
(実施例2)
実施例1において、液体を吐出する装置全体、吐出液と液循環機構、キャッピング部材は実施例1と同様にし、ワイピング部材としてフッ素樹脂製のスポンジローラー(アイオン社製フローラスローラー)に変更した。
【0121】
(実施例3)
実施例1において、液体を吐出する装置全体、吐出液と液循環機構、キャッピング部材は実施例1と同様にし、ワイピング部材として以下のように変更した。
【0122】
本実施例のワイピング部材としては、
図4、
図5に示されるような構成とした。ワイピング部材としてポリビニルアルコール(PVA)製のスポンジブロック(アイオン社製ベルイーター)を用いた。本実施例のワイピング部材は吸液性のあるスポンジ材である。ワイピング部材のメッシュ径の平均値は80μmであった。
【0123】
図4に示されるように、ブロック状のワイピング部材を底部がメッシュ状の固定台に設置した。ワイプ前にワイピング部材に溶媒(テトラヒドロフランとシクロヘキサノン)を滴下し、下記絞り機構によって浸み込んだ吐出液を溶媒と一緒に絞り出す。これにより、余分な溶媒を絞り出して、ワイピング部材が適量の溶媒を保持するようにした。
【0124】
また、金属ブロックを絞りブロックとして用い、ブロック状のワイピング部材に押し付けることで、余分な吐出液を絞り出す構成とした。
図5に示されるように、ワイプ時は、上記状態のワイピング部材をインクジェットヘッドのノズル面に押し当て、押し当てながらヘッド面に対して平行に移動させてワイプを行う構成とした。
【0125】
(比較例1)
実施例1において、液体を吐出する装置全体、吐出液と液循環機構は実施例1と同様にし、キャッピング部材、ワイピング部材を以下のように変更した。
比較例1におけるキャッピング部材の構成を
図11(a)に示す。
図11(a)に示されるキャップ方法は、フッ素樹脂系のキャッピング部材82でインクジェットヘッド80のノズル面94を密閉するものである。比較例1におけるキャッピング部材は吐出液の溶媒は保持しない構成である。吐出停止中は、上記キャッピング部材を密着させ、外気に触れないようにし、ノズル孔及びノズル周辺部が乾燥しないようにした。
【0126】
図12に比較例1におけるパージ、ワイピング、吐出の動作を説明するための模式図を示す。
図12(a)に示されるように、吐出を行うためインクジェットヘッド80がキャッピング部材82から離れた後、インクジェットヘッド82がキャッピング部材から液受け部88に移動し、インクジェットヘッド80内の液室に陽圧をかけてノズルから吐出液87を数cc程度排出する。排出された吐出液87は液受け部88で受けた後、廃棄される。このように、比較例1ではノズル孔内にある増粘した吐出液や気泡を排出するためにパージ動作を行う。なお、吐出液の流れを模式的に矢印で示している。
このとき、
図12(b)に示されるように、パージを行うことでインクジェットヘッド80のノズル面に液だれ86が付着する。そのため、比較例1では、ワイピング部材91としてフッ素樹脂系のブレードを使用し、
図12(c)に示されるように、ブレードを移動させてノズル面をワイピングする。なお、比較例1におけるワイピング部材91に吐出液の溶媒は供給していない。その後、
図12(d)に示されるように吐出を行う。
【0127】
(比較例2)
比較例1において、ブレードのワイピング部材をローラーのワイピング部材に変更した以外は、比較例1と同様にした。すなわち、
図12(c)に示されるワイピングの構成を
図13に示されるワイピングの構成とした。
比較例2では、フッ素樹脂系のスポンジ材質のローラー(ワイピング部材92)を使用した。また、ローラーの材質は、吸液性がある多孔質のものを用いているが、ワイピング部材に吐出液の溶媒は供給していない。
図13に示されるように、ローラーを回転させてノズル面をワイピングする。その後、
図12(d)に示されるように吐出を行う。
【0128】
(評価)
上記実施例、比較例の装置において、40秒間の連続吐出を繰り返して行い、吐出液の吐出状態を観測した結果を
図14に示す。
図14は、吐出直後と経時におけるノズル面94の状態、及び吐出液87の吐出状態を写真撮影したものである。
実施例1〜3では、繰り返し吐出を500回行っても、ノズル面に液だれは発生せず、液体の吐出も、不吐出や異常吐出は観測されず、良好な吐出状態が得られている。
比較例1では、1回目の吐出直後からノズル面に液だれが発生し出し、徐々に不吐出のノズルが増えていき、約20秒で全ノズルダウンしてしまった。また、2回目以降の吐出でも同様で、40秒間の連続吐出は実施できなかった。
比較例2では、開始から10回くらいまでは良好な吐出状態が得られていたが、10回を超えた辺りから徐々に液だれが発生して不吐出ノズルが出始め、15回以降は全ノズルの内約3割のノズルがダウンした状態の吐出となってしまった。
【0129】
(実施例4)
実施例1において、ブロック状のキャッピング部材をポリビニルアルコール製からフッ素樹脂製に変更した以外は、実施例1と同様の評価を行った。実施例1〜3と同様に繰り返し吐出を500回行っても、ノズル面に液だれは発生せず、液体の吐出も、不吐出や異常吐出は観測されず、良好な吐出状態が得られている。
【0130】
(比較例3)
比較例1において、キャッピング部材を
図11(a)に示されるものから
図11(b)に示されるものに変更した以外は比較例1と同様にした。
図11(b)はフッ素ゴム系のシール材でヘッドのノズル面を密封する方式である。吐出停止中は、ノズル孔及びノズル周辺部が乾燥しないように、外気に触れないようにした。
他の実施例、比較例と同様の評価を行ったところ、比較例1と同様に吐出直後から液だれが発生し、吐出を続けると液だれがよりひどくなった。
【0131】
(比較例4)
比較例1において、キャッピング部材を
図11(a)に示されるものから
図11(c)に示されるものに変更した以外は比較例1と同様にした。
図11(c)は、
図11(b)と同様にフッ素ゴム系のシール材でヘッドのノズル面を密封する方式であるが、キャッピング部材の形状とシール材の位置が異なっている。
他の実施例、比較例と同様の評価を行ったところ、比較例1と同様に吐出直後から液だれが発生し、吐出を続けると液だれがよりひどくなった。