(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記架橋剤(B)が、2個以上の架橋性基を有し、かつ、該架橋性基がエポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、シラノール基又は(メタ)アクリロイル基のいずれかであることを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載の粘着シート。
前記画像表示装置構成部材が、タッチパネル、画像表示パネル、表面保護パネル及び偏光フィルムからなる群のうちの何れか、或いは2種類以上の組み合わせからなる積層体であることを特徴とする請求項8に記載の画像表示装置構成用積層体。
前記2つの画像表示装置用構成部材が、タッチパネル、画像表示パネル、表面保護パネル及び偏光フィルムからなる群のうちの何れか、或いは2種類以上の組み合わせからなる積層体であることを特徴とする請求項11に記載の画像表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。但し、本発明が、下記実施形態に限定されるものではない。
【0019】
<本粘着シート>
本実施形態に係る粘着シート(以下、「本粘着シート」と称する。)は、ベースポリマーとして(メタ)アクリル系共重合体(A)を含有し、部分的に光硬化されてなる粘着シートであって、粘着シートの何れかに、ゲル分率が1%未満の軟質部と、ゲル分率が40%以上の硬質部とを有する粘着シートである。
【0020】
ゲル分率の測定方法としては、溶媒による抽出が挙げられる。具体的には、粘着シートを構成するポリマーが架橋されていなかった場合には当該ポリマーを溶解する溶媒(良溶媒)を選択し、次いで、粘着シートを当該溶媒を用いて抽出する。抽出する際の溶媒としては、例えば、酢酸エチル、アセトン、トルエン、キシレン、低級アルコール、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
抽出する際の温度や時間は任意に設定すればよい。抽出操作を行った後に、当該溶媒に溶解しなかった成分(膨潤成分)を回収し、乾燥した後、この重量分率を測定すればよい。具体的な抽出方法としては、ソックスレー抽出や後述する実施例に記載の方法等が挙げられる。
なお、ゲル分率が高い場合は、粘着シートを適宜破砕して抽出に供してもよい。
【0021】
本粘着シートは、例えば
図1又は
図2に示すように、粘着シートのシート面内に、前記軟質部と硬質部を有する形態であってもよいし、また、
図3(A)(B)又は
図5に示すように、粘着シートの少なくとも一側の端面部が前記硬質部を有する形態であってもよい。この際、粘着シートのシート面は軟質部であっても、硬質部であってもよい。また、
図5に示すように、ロール状に巻かれた粘着シートの少なくとも一側の端面部が前記硬質部を有する形態であってもよい。
【0022】
本発明における「ベースポリマー」とは、各層を形成する粘着剤組成物の主成分を為す樹脂の意味である。ベースポリマーの具体的な含有量を規定するものではないが、目安としては、各層を形成する粘着剤組成物に含まれる樹脂の50質量%以上、中でも80質量%以上、その中でも90質量%以上(100質量%を含む)を占める樹脂である。なお、ベースポリマーが2種類以上の場合は、それらの合計量が前記含有量に該当する。
【0023】
上記軟質部のゲル分率は、段差部への追従性、表面平坦性、さらにはシート内の歪みや変形を緩和することができる観点から、1%未満であるのが好ましく、中でも0.8%未満、その中でも0.5%未満であるのが特に好ましい。
他方、上記硬質部のゲル分率は、高い凝集力を発揮して接着性を高め、高温高湿下等の過酷な環境下でも粘着面が粘々しないという観点から、40%以上であるのが好ましく、中でも45%以上、その中でも50%以上であるのが特に好ましい。
【0024】
また、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される上記軟質部のガラス転移温度(Tg[S])は−70〜−10℃であれば、常温域で適度な柔軟性と自着性をもつことから、軟質部のTgは−70〜−10℃であるのが好ましく、中でも−65℃以上或いは−15℃以下、その中でも−60℃以上或いは−20℃以下であるのが特に好ましい。
他方、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される上記硬質部のガラス転移温度(Tg[H])は−60〜+10℃であれば、高い凝集力を得られることから、硬質部のTg
は−60〜+20℃であるのが好ましく、中でも−55℃以上或いは+15℃以下、その中でも−50℃以上或いは+10℃以下であるのが特に好ましい。
また、軟質部のガラス転移温度(Tg[S])と硬質部のガラス転移温度(Tg[H])の差(Tg[H]−Tg[S])は3℃以上であれば、柔軟性と凝集力の背反品質をより高い水準で両立できる結果、貼合時における被着面への追従性と積層体とした後の優れた耐発泡信頼性を両立することができるため好ましい。よって、硬質部のガラス転移温度(Tg[H])の差(Tg[H]−Tg[S])は3℃以上であるのが好ましく、中でも5℃以上、その中でも7℃以上であるのが特に好ましい。
【0025】
(軟質部のアスカー硬度)
本粘着シートにおける軟質部のアスカー硬度(c)が10以上であることによって、裁断加工性や取り回しのし易さに係る適度な硬度が得られるため好ましい。また、前記アスカー硬度(c)が60未満であることによって、適度な柔軟性と、被着体への付着性が得られるため好ましい。
かかる観点から、本粘着シートにおける軟質部のアスカー硬度(c)は、10以上60未満であるのが好ましく、中でも15以上或いは55以下、その中でも20以上或いは50以下であるのが特に好ましい。
【0026】
(硬質部のアスカー硬度)
本粘着シートにおける硬質部のアスカー硬度(d)が40以上であることによって、高い凝集力が得られ、形状安定性や耐発泡信頼性に優れた積層体を得ることができる。また、前記アスカー硬度(d)が90未満であることによって、脆くなり過ぎず、耐衝撃性に優れた積層体が得られるため好ましい。
かかる観点から、本粘着シートにおける硬質部のアスカー硬度(d)は40以上90未満であるのが好ましく、中でも43以上或いは88以下、その中でも45以上或いは85以下であるのが特に好ましい。
【0027】
さらに本粘着シートにおいて、前記(d)−(c)が20以上であることによって、貼合時における被着面への追従性と積層体とした後の優れた耐発泡信頼性を両立することができるため好ましい。
かかる観点から、本粘着シートにおいて、軟質部のアスカー硬度(c)と硬質部のアスカー硬度(d)との差((d)−(c))は20以上であることが好ましく、中でも20以上或いは80以下、その中でも25以上或いは75以下であるのが特に好ましい。
本粘着シートにおいて、軟質部のアスカー硬度(c)及び硬質部のアスカー硬度(d)を調整するには、組成や製法において、架橋剤や光重合開始剤の組成比を調整したり、粘着剤組成物への光照射量を調整したりすればよい。但し、このような方法に限定するものではない。
【0028】
(軟質部の180°剥離力)
本粘着シートにおける軟質部の180°剥離力が3N/cm以上であることによって、常温での被着体への適度な付着性をもち、貼合作業性に優れるため好ましい。
かかる観点から、本粘着シートにおける軟質部の180°剥離力は、3N/cm以上であるのが好ましく、中でも20N/cm以下、その中でも4N/cm以上或いは15N/cm以下であるのが特に好ましい。
【0029】
(硬質部の180°剥離力)
本粘着シートにおける硬質部の180°剥離力が5N/cm以上であることによって、優れた耐発泡・剥離性が得られるため好ましい。
かかる観点から、本粘着シートにおける硬質部の180°剥離力が5N/cm以上であるのが好ましく、中でも25N/cm以下、その中でも6N/cm以上或いは20N/cm以下であるのが特に好ましい。
【0030】
本粘着シートにおいて、軟質部及び硬質部の180°剥離力を調整するには、組成や製法において、架橋剤や光重合開始剤の種類や組成比を調整したり、貼合時の加熱・加圧条件や貼合後の光照射条件を調整したりすればよい。但し、このような方法に限定するものではない。
【0031】
(軟質部の40℃保持力)
本粘着シートにおける軟質部の温度40℃における保持力がズレ長さ10mm未満であることによって、優れた加工性や保管安定性を得ることができる。
かかる観点から、本粘着シートにおける軟質部の温度40℃における保持力が、ズレ長さが10mm未満であることが好ましく、中でも8mm未満、その中でも5mm未満であるのがさらに好ましい。
【0032】
(軟質部の70℃保持力)
また、本粘着シートにおける軟質部の温度70℃における保持力について、10分未満で貼着面がずれて錘が落下するようであれば、貼合時における被着体への優れた密着性や凹凸吸収性が得られるため好ましい。
かかる観点から、本粘着シートにおける軟質部の温度70℃における保持力については、10分未満で貼着面がずれて錘が落下するのが好ましく、中でも8分未満で貼着面がずれて錘が落下するのがさらに好ましく、その中でも6分未満で貼着面がずれて錘が落下するのがさらに好ましい。
【0033】
(硬質部の40℃又は70℃保持力)
本粘着シートにおける硬質部の温度40℃ならびに70℃における保持力はいずれも、ズレ長さが1mm未満であるのが好ましく、0.7mm未満であるのがより好ましく、0.5mm未満であるのがさらに好ましい。
本粘着シートにおける硬質部の温度40℃ならびに70℃における保持力が上記範囲であることによって、高い凝集力が得られ、湿熱環境下での形状安定性や耐発泡信頼性を得ることができる。
【0034】
<本粘着シートの作製方法>
本粘着シートは、次のように作製することができる。
【0035】
(1)光硬化可能な粘着シートに対して、軟質部とする部位を光不透過部材、すなわち光硬化に使用する光を通さない部材で隠蔽しつつ、光を照射すれば、光不透過部材で被覆した部分を軟質部とすることができ、光不透過部材で被覆しなかった部分、すなわち光を照射した部分を光硬化させて硬質部とすることができる。
【0036】
(2)また、粘着シートの端面部に光を照射し、該端面部以外の部分には光を照射しないようにすれば、該端面部を硬質部とし、他の部分を軟質部とすることができる。
例えば、粘着シートの端面部に対して、(シートの表裏を垂直上下方向に配置したとして)垂直方向または水平方向或いは斜め上下方向から光を照射してもよいし、また、粘着シートの表裏一側若しくは両側に、光硬化に使用する光を通さないシートを積層しておき、垂直方向または水平方向或いは斜め上下方向から光を照射するようにしてもよい。このように光照射すれば、粘着シートの端面部を光硬化させることが可能である。この際、光硬化に使用する光を通さない前記シートとして、ポリエチレンテレナフタレートをベースポリマーとする離型シートや、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリオレフィンフィルムの中に紫外線吸収剤を練り込み、若しくは表面に紫外線吸収剤を塗布したフィルムを用いた離型シートなど、光硬化に使用する光を通さない離型シートを使用するのが特に好適である。
なお、光を照射した際に端面部およびその周辺部が硬質部になってもよい。
【0037】
(3)また、それぞれ所望のゲル分率を有する粘着シートを別々に作製しておき、両者を一体化させるようにしても、粘着シート内に軟質部と硬質部を形成することができる。
【0038】
<粘着シートX>
本粘着シートは、次のような粘着シートXを用いて部分的に光硬化させて形成することができる。但し、次の粘着シートXを用いて本粘着シートを形成することに限定するものではない。
【0039】
粘着シートXは、光硬化前の状態ではホットメルト性を発現することができる観点から、光硬化前のゲル分率(a)が1%未満、中でも0.8%未満、その中でも0.5%未満であるのが、特に好ましい。
また、粘着シートXは、光硬化後に高い凝集力を得ることができ、湿熱環境下での耐発泡信頼性が得られる観点から、光硬化後のゲル分率(b)は40%以上であるのが好ましく、中でも45%以上或いは95%以下、その中でも50%以上或いは90%以下であるのが特に好ましい。
【0040】
光硬化前のゲル分率(a)及び光硬化後のゲル分率(b)を上記のように調整するには、組成や製法において、架橋剤や光重合開始剤の組成比を調整したり、加工時の温度や光照射量を調整したりすればよい。但し、このような方法に限定するものではない。
【0041】
<本粘着剤組成物>
上記粘着シートXを形成するのに好適に用いることができる樹脂組成物(以下、「本粘着剤組成物」と称する。)について説明する。ただし、あくまでも一例であって、これに限定されるものではない。
【0042】
本粘着剤組成物としては、光硬化型粘着剤組成物であるのが好ましい。中でも、(メタ)アクリル系共重合体(A)と、架橋剤(B)と、光重合開始剤(C)とを含有する樹脂組成物であるのが好ましい。
但し、上述のように、粘着シート内の部位によって、貼着後におけるゲル分率を異ならせしめることができるものであれば、本粘着シートを形成するための粘着剤組成物の組成を限定するものではない。
【0043】
ここで、本粘着シートは、常態ではシート状を保持することができ、未架橋状態において加熱すると溶融乃至流動するホットメルト性を有しており、且つ、光硬化することができる光硬化性を有する粘着シートであるのが特に好ましい。
常態においてシート状を保持することができれば、液状の接着剤に比べて、取扱いが容易である上、液を充填する作業を省くことができるから、生産性に特に優れている。
さらに、常態、すなわち室温付近において、適度な粘着性、すなわち軽い力で短時間に被着体に接着する性質(“タック性”と称する)を備えていれば、貼着する際の位置決めを行いやすく、作業性に優れる事から、常態、すなわち室温付近においてタック性を備えていることが好ましく、−5℃から20℃の比較的低温域においてもタック性を備えていればより好ましい。
また、加熱すると、溶融乃至流動するホットメルト性を備えていれば、加熱して軟化乃至流動化させることにより、印刷段差などの凹凸部に追随して粘着剤を充填することができるから、発泡などを生じることなく充填することができる。
さらに光硬化性を有していれば、最終的に光硬化させることで、しっかりと接着することができる。
このように、常態ではシート状を保持することができ、未架橋状態において加熱すると溶融乃至流動するホットメルト性を有しており、且つ、光硬化することができる粘着シートを作製するためには、例えば単層の粘着シートであれば、次に説明する粘着剤組成物(I)又は(II)から単層の粘着シートを作製すればよい。他方、多層の粘着シートとする場合には、例えば粘着剤組成物(I)又は(II)からなる粘着層と、他の粘着剤組成物からなる粘着層を積層した2種2層構成や、中間樹脂層を介して表裏に、粘着剤組成物(I)又は(II)からなる粘着層を配した2種3層構成や、粘着剤組成物(I)又は(II)からなる粘着層と、中間樹脂組成物からなる中間層と、他の粘着剤組成物からなる粘着層とをこの順に積層してなる3種3層構成などを挙げることができる。
但し、本粘着シートを形成するための粘着剤組成物が、粘着剤組成物(I)又は(II)に限定されるものではない。
【0044】
<粘着剤組成物(I)>
粘着剤組成物(I)として、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなるアクリル系共重合体(A1)と、架橋剤(B1)と、光重合開始剤(C1)とを含有する樹脂組成物を挙げることができる。
【0045】
(アクリル系共重合体(A1))
ベースポリマーとしてのアクリル系共重合体(A1)は、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体であればよい。
【0046】
(幹成分)
前記アクリル系共重合体(A1)の幹成分は、(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含有する共重合体成分から構成されるのが好ましい。
【0047】
前記アクリル系共重合体(A1)の幹成分を構成する共重合体のガラス転移温度は−70〜0℃であるのが好ましい。
この際、幹成分を構成する共重合体成分のガラス転移温度とは、アクリル系共重合体(A1)の幹成分を組成するモノマー成分のみを共重合して得られるポリマーのガラス転移温度をさす。具体的には、当該共重合体各成分のホモポリマーから得られるポリマーのガラス転移温度と構成比率から、Foxの計算式によって算出される値を意味する。
なお、Foxの計算式とは、以下の式により求められる計算値であり、ポリマーハンドブック〔Polymer HandBook,J.Brandrup,Interscience,1989〕に記載されている値を用いて求めることができる。
1/(273+Tg)=Σ(Wi/(273+Tgi))
[式中、Wiはモノマーiの重量分率、TgiはモノマーiのホモポリマーのTg(℃)を示す。]
【0048】
前記アクリル系共重合体(A1)の幹成分を構成する共重合体成分のガラス転移温度は、室温状態での粘着剤組成物(I)の柔軟性や、被着体への粘着剤組成物(I)の濡れ性、すなわち接着性に影響するため、粘着剤組成物(I)が室温状態で適度な接着性(タック性)を得るためには、当該ガラス転移温度は、−70℃〜0℃であるのが好ましく、中でも−65℃以上或いは−5℃以下、その中でも−60℃以上或いは−10℃以下であるのが特に好ましい。
【0049】
但し、当該共重合体成分のガラス転移温度が同じ温度であったとしても、分子量を調整することにより粘弾性を調整することができる。例えば共重合体成分の分子量を小さくすることにより、より柔軟化させることができる。
【0050】
前記アクリル系共重合体(A1)の幹成分が含有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3,5,5−トリメチルシクロヘキサンアクリレート、p−クミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらに、親水基や有機官能基などをもつヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートや、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル等のエポキシ基含有モノマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するモノマー、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環系塩基性モノマー等を用いることもできる。
また、上記アクリルモノマーやメタクリルモノマーと共重合可能な、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタクリロニトニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルキルビニルモノマー等の各種ビニルモノマーも適宜用いることができる。
【0051】
また、アクリル系共重合体(A1)の幹成分は、疎水性の(メタ)アクリレートモノマーと、親水性の(メタ)アクリレートモノマーとを構成単位として含有するのが好ましい。
アクリル系共重合体(A1)の幹成分が、疎水性モノマーのみから構成されると、湿熱白化する傾向が認められるため、親水性モノマーも幹成分に導入して湿熱白化を防止するのが好ましい。
具体的には、上記アクリル系共重合体(A1)の幹成分として、疎水性の(メタ)アクリレートモノマーと、親水性の(メタ)アクリレートモノマーと、マクロモノマーの末端の重合性官能基とがランダム共重合してなる共重合体成分を挙げることができる。
【0052】
ここで、上記の疎水性の(メタ)アクリレートモノマーとしては、極性基を有さないアルキルエステル(但し、メチルアクリレートを除く)が好ましく、例えばn−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ−ト、メチルメタクリレートを挙げることができる。
また、疎水性のビニルモノマーとしては、例えば酢酸ビニル、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アルキルビニルモノマーなどを挙げることができる。
【0053】
上記の親水性の(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチルアクリレートや極性基を有するエステルが好ましく、例えばメチルアクリレート、(メタ)アクリル酸、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートや、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートや、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル等のエポキシ基含有モノマー、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド等などを挙げることができる。
【0054】
(枝成分:マクロモノマー)
アクリル系共重合体(A1)は、グラフト共重合体の枝成分として、マクロモノマーを導入し、マクロモノマー由来の繰り返し単位を含有することが好ましい。
マクロモノマーとは、末端の重合性官能基と高分子量骨格成分とを有する高分子単量体である。
【0055】
マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は、上記アクリル系共重合体(A1)を構成する共重合体成分のガラス転移温度よりも高いことが好ましい。
具体的には、マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は、粘着剤組成物(I)の加熱溶融温度(ホットメルト温度)に影響するため、マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は30℃〜120℃であるのが好ましく、中でも40℃以上或いは110℃以下、その中でも50℃以上或いは100℃以下であるのがさらに好ましい。
このようなガラス転移温度(Tg)であれば、分子量を調整することにより、優れた加工性や保管安定性を保持できると共に、80℃付近でホットメルトするように調整することができる。
マクロモノマーのガラス転移温度とは、当該マクロモノマー自体のガラス転移温度をさし、示差走査熱量計(DSC)で測定することができる(昇温速度:5℃/分、ベースラインシフトの変曲点よりTgを測定)。
【0056】
また、室温状態では、枝成分同士が引き寄せ合って粘着剤組成物として物理的架橋をしたような状態を維持することができ、しかも、適度な温度に加熱することで前記物理的架橋が解れて流動性を得ることができるようにするためには、マクロモノマーの分子量や含有量を調整することも好ましいことである。
かかる観点から、マクロモノマーは、アクリル系共重合体(A1)中に5質量%〜30質量%の割合で含有することが好ましく、中でも6質量%以上或いは25質量%以下、その中でも8質量%以上或いは20質量%以下であるのが好ましい。
また、マクロモノマーの数平均分子量は500以上8000未満であることが好ましく、中でも800以上或いは7500未満、その中でも1000以上或いは7000未満であるのが好ましい。
マクロモノマーは、一般に製造されているもの(例えば、東亜合成社製マクロモノマーなど)を適宜使用することができる。
【0057】
マクロモノマーの高分子量骨格成分は、アクリル系重合体またはビニル系重合体から構成されるのが好ましい。
前記マクロモノマーの高分子量骨格成分としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3,5,5−トリメチルシクロヘキサンアクリレート、p−クミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N、N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルニトリル、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマーや、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アルキルビニルモノマー、酢酸ビニル、アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル等の各種ビニルモノマーなどを挙げることができ、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
前記マクロモノマーの末端重合性官能基としては、例えば、メタクリロイル基、アクリロイル基、ビニル基などを挙げることができる。
【0059】
(架橋剤(B1))
架橋剤(B1)としては、例えばエポキシ基やイソシアネート基、オキセタン基、シラノール基、(メタ)アクリロイル基などの架橋性基を2個以上有する架橋剤を適宜選択可能である。中でも、反応性や得られる硬化物の強度の点で、(メタ)アクリロイル基を2個以上、中でも3個以上有する多官能(メタ)アクリレートや、エポキシ基やイソシアネート基、シラノール基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
【0060】
画像表示装置構成部材を貼合一体化させた後、架橋剤(B1)を粘着材中で架橋することで、当該シートはホットメルト性を失う代わりに、高温環境下における高い凝集力を発現し、優れた耐発泡信頼性を得ることができる。
【0061】
このような(メタ)アクリレートとしては、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリングリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリアルコキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリアルコキシジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルコキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の紫外線硬化型の多官能モノマー類のほか、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の多官能アクリルオリゴマー類や、イソシアネート(メタ)アクリレート、1,1−(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートグリシジルエーテル、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0062】
上記に挙げた中でも、被着体への密着性や湿熱白化抑制の効果を向上させる観点から、水酸基等の極性官能基を含有する多官能モノマーもしくはオリゴマーが、好ましい。
その中でも、水酸基もしくはカルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステルを用いるのが好ましい。
よって、湿熱白化を防止する観点からは、前記アクリル系共重合体(A1)、すなわちグラフト共重合体の幹成分として、疎水性のアクリレートモノマーと、親水性のアクリレートモノマーとを含有するのが好ましく、さらには、架橋剤(B1)として、水酸基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステルを用いるのが好ましい。
【0063】
架橋剤(B1)の含有量は、特に制限されるものではない。目安としては、アクリル系共重合体(A1)100質量部に対して0.5〜20質量部、中でも1質量部以上或いは15質量部以下、その中でも2質量部以上或いは10質量部以下の割合であるのが好ましい。
架橋剤(B1)を上記範囲で含有することで、未架橋状態における本粘着シートの形状安定性と、架橋後の粘着材における耐発泡信頼性とを両立させることができる。但し、他の要素とのバランスでこの範囲を超えてもよい。
【0064】
(光重合開始剤(C1))
光重合開始剤(C1)は、前述の架橋剤(B1)の架橋反応における反応開始助剤としての機能を果たすものである。
光重合開始剤は、現在公知のものを適宜使用することができる。中でも、波長380nm以下の紫外線に感応する光重合開始剤が、架橋反応の制御のしやすさの観点から好ましい。
一方、波長380nmより長波長の光に感応する光重合開始剤は、感応する光が本粘着シートの深部まで到達しやすい点で好ましい。
【0065】
光重合開始剤は、ラジカル発生機構によって大きく2つに分類され、光重合性開始剤自身の単結合を開裂分解してラジカルを発生させることができる開裂型光重合開始剤と、光励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させることができる水素引抜型光重合開始剤と、に大別される。
【0066】
これらのうちの開裂型光重合開始剤は、光照射によってラジカルを発生する際に分解して別の化合物となり、一度励起されると反応開始剤としての機能をもたなくなる。このため、架橋反応が終了した後の粘着材中に活性種として残存することがなく、粘着材に予期せぬ光劣化等をもたらす可能性がないため、好ましい。
他方、水素引抜型の光重合開始剤は、紫外線などの活性エネルギー線照射によるラジカル発生反応時に、開裂型光重合開始剤のような分解物を生じないので、反応終了後に揮発成分となりにくく、被着体へのダメージを低減させることができる点で有用である。
【0067】
前記開裂型光開始剤としては、例えば2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-[4-{4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)ベンジル}フェニル]-2-メチル-プロパン-1-オン、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、フェニルグリオキシリック酸メチル、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドや、それらの誘導体などを挙げることができる。
【0068】
前記水素引抜型光開始剤としては、例えばベンゾフェノン、4-メチル-ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾイルぎ酸メチル、ビス(2‐フェニル‐2‐オキソ酢酸)オキシビスエチレン、4-(1,3-アクリロイル-1,4,7,10,13-ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、3-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノンやその誘導体などを挙げることができる。
但し、光重合開始剤として前記に挙げた物質に限定するものではない。上記に挙げた開裂型光重合開始剤及び水素引抜型光重合開始剤のうちのいずれか一種を使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0069】
光重合開始剤(C1)の含有量は特に制限されるものではない。目安としては、アクリル系共重合体(A1)100質量部に対して0.1〜10質量部、中でも0.5質量部以上或いは5質量部以下、その中でも1質量部以上或いは3質量部以下の割合で含有するのが好ましい。
光重合開始剤(C1)の含有量を上記範囲とすることで、活性エネルギー線に対する適度な反応感度を得ることができる。
【0070】
(その他の成分)
粘着剤組成物(I)は、上記以外の成分として、通常の粘着剤組成物に配合されている公知の成分を含有してもよい。例えば、必要に応じて、粘着付与樹脂や、酸化防止剤、光安定化剤、金属不活性化剤、老化防止剤、吸湿剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、防錆剤、シランカップリング剤、無機粒子などの各種の添加剤を適宜含有させることが可能である。
また、必要に応じて反応触媒(三級アミン系化合物、四級アンモニウム系化合物、ラウリル酸スズ化合物など)を適宜含有してもよい。
【0071】
<粘着剤組成物(II)>
粘着剤組成物(II)として、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満のモノマーaと、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上80℃未満のモノマーbと、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上のモノマーcとが、a:b:c=10〜40:90〜35:0〜25のモル比率で共重合してなり、重量平均分子量50000〜400000の(メタ)アクリル酸エステル共重合体もしくはビニル共重合体を含有する(メタ)アクリル系共重合体(A2)と、架橋剤(B2)と、光重合開始剤(C2)とを含有する樹脂組成物を挙げることができる。
なお、数平均分子量および重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用し、標準物質としてポリスチレンを用いた換算値を採用する。
【0072】
((メタ)アクリル系共重合体(A2))
ベースポリマーとしての(メタ)アクリル系共重合体(A2)は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体もしくはビニル共重合体であるのが好ましい。
【0073】
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体もしくはビニル共重合体は、室温状態での形状保持性とホットメルト性とを両立させる観点から、重量平均分子量は50000〜400000であるのが好ましく、中でも60000以上或いは350000以下、その中でも70000以上或いは300000以下であるのがさらに好ましい。
【0074】
アクリル酸エステル系共重合体は、これを調整するために用いるアクリルモノマーやメタクリルモノマーの種類、組成比率、さらには重合条件等を適宜選択することによって、ガラス転移温度(Tg)や分子量等の物性を適宜調整することが可能である。
この際、アクリル酸エステル共重合体を構成するアクリルモノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、エチルアクリレート等を主原料として挙げることができる。
これらの他に、凝集力付与や極性付与等の目的に応じて、さまざまな官能基を有する(メタ)アクリルモノマーを上記アクリルモノマーと共重合させてもよい。
当該官能基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、グリシジルアクリレート、N−置換アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、含フッ素アルキルアクリレート、オルガノシロキシ基含有アクリレートなどを挙げることができる。
【0075】
他方、ビニル共重合体としては、上記アクリルモノマーやメタクリルモノマーと共重合可能な酢酸ビニルや、アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル等の各種ビニルモノマーも適宜重合してなるビニル共重合体を挙げることができる。
【0076】
本粘着シートの(メタ)アクリル系共重合体(A2)としては、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満のモノマーaと、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上80℃未満のモノマーbと、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上のモノマーcとが、a:b:c=10〜40:90〜35:0〜25のモル比率で共重合してなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体もしくはビニル共重合体であるのが好ましい。
この際、モノマーa、b及びcの各ガラス転移温度(Tg)は、当該モノマーからポリマーを作製した際(ホモポリマー化)の各ガラス転移温度(Tg)の意味である。
【0077】
前記モノマーaは、例えば炭素数4以上の側鎖を有するアルキル基構造をもつ(メタ)アクリル酸エステルモノマーであるのが好ましい。
この際、炭素数4以上の側鎖は、直鎖からなるものであっても、分岐した炭素鎖からなるものであってもよい。
より具体的には、前記モノマーaは、炭素数4〜10の直鎖アルキル基構造をもつ(メタ)アクリル酸エステルモノマーであるか、或いは、炭素数6〜18の分岐アルキル基構造をもつ(メタ)アクリル酸エステルモノマーであるのが好ましい。
【0078】
ここで、「炭素数4〜10の直鎖アルキル基構造をもつ(メタ)アクリル酸エステルモノマー」としては、n−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、n−デシルアクリレートなどを挙げることができる。
他方、「炭素数6〜18の分岐アルキル基構造をもつ(メタ)アクリル酸エステルモノマー」としては、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−メチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレートなどを挙げることができる。
【0079】
前記モノマーbは、炭素数4以下の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、側鎖に環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー、炭素数4以下のビニルモノマー、又は、側鎖に環状骨格を有するビニルモノマーであるのが好ましい。
中でも、上記モノマーbは、側鎖の炭素数が4以下のビニルモノマーであるのが特に好ましい。
【0080】
ここで、「炭素数4以下の(メタ)アクリル酸エステルモノマー」としては、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリート、t−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレートなどを挙げることができる。
「側鎖に環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー」としては、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノールアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、4−エトキシ化クミルフェノールアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ−ト、ジシクロペンテニルアクリレ−トなどを挙げることができる。
「炭素数4以下のビニルモノマー」としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどを挙げることができる。
「側鎖に環状骨格を有するビニルモノマー」としては、スチレン、シクロヘキシルビニルエーテル、ノルボルニルビニルエーテル、ノルボルネニルビニルエーテルなどを挙げることができる。中でも、側鎖の炭素数が4以下であるビニルモノマー、または側鎖の炭素数が4以下であるアクリル酸エステルモノマーが特に好適である。
【0081】
前記モノマーcは、側鎖の炭素数が1以下である(メタ)アクリル酸エステルモノマー、又は、側鎖に環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーであるのが好ましい。
ここで、「側鎖の炭素数が1以下である(メタ)アクリル酸エステルモノマー」としては、メチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸などを挙げることができる。
「側鎖に環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー」としては、イソボルニルメタクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレ−ト、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレ−トなどを挙げることができる。
【0082】
(メタ)アクリル系共重合体(A2)が、モノマーaと、モノマーbと、モノマーcとが、a:b:c=10〜40:90〜35:0〜25のモル比率で共重合してなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体もしくはビニル共重合体を含んでいれば、Tanδのピークを0〜20℃に調整することができ、通常状態、すなわち、室温状態において、シート状の形状を保持することができる。しかも、剥離可能な程度の接着性(“タック性”と称する)を発現させることができる。また、ホットメルト可能な温度に加熱すると、流動性を発現するようになり、貼合面の段差部に追従して隅々まで充填することができる。
よって、かかる観点から、(メタ)アクリル系共重合体(A2)を構成する(メタ)アクリル酸エステル共重合体もしくはビニル共重合体におけるモノマーaと、モノマーbと、モノマーcとのモル比率は、a:b:c=10〜40:90〜35:0〜25であるのが好ましく、中でも13〜40:87〜35:0〜23、その中でも15〜40:85〜38:2〜20であるのが好ましい。
また、上記と同様の観点から、(メタ)アクリル系共重合体(A2)を構成する(メタ)アクリル酸エステル共重合体もしくはビニル共重合体におけるモノマーaと、モノマーbと、モノマーcとのモル比率は、b>a>cであるのが好ましい。
【0083】
(架橋剤(B2))
本粘着シート中で架橋剤(B2)が架橋することで、本粘着シートは、高温環境下における高い凝集力を発現し、優れた耐発泡信頼性を得ることができる。
【0084】
このような架橋剤(B2)としては、例えばエポキシ基やイソシアネート基、オキセタン基、シラノール基、(メタ)アクリロイル基などの架橋性基を2個以上有する架橋剤を適宜選択可能である。中でも、反応性や得られる硬化物の強度の点で、(メタ)アクリロイル基を2個以上、中でも3個以上有する多官能(メタ)アクリレートや、エポキシ基やイソシアネート基、シラノール基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
【0085】
このような(メタ)アクリレートとしては、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の紫外線硬化型の多官能モノマー類のほか、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の多官能アクリルオリゴマー類や、イソシアネート(メタ)アクリレート、1,1−(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートグリシジルエーテル、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルを挙げることができる。
【0086】
上記に挙げた中でも、被着体への密着性や耐熱性、湿熱白化抑制の効果を向上させる観点から、極性官能基を含有する多官能モノマーもしくはオリゴマーが、好ましい。その中でも、イソシアヌル環骨格を有する多官能(メタ)アクリル酸エステルを用いるのが好ましい。
【0087】
架橋剤(B2)の含有量は、特に制限されるものではない。目安としては、(メタ)アクリル系共重合体(A2)100質量部に対して0.5〜20質量部、中でも1質量部以上或いは15質量部以下、その中でも2質量部以上或いは10質量部以下の割合であるのが好ましい。
架橋剤(B2)を上記範囲で含有することで、未架橋状態における本粘着シートの形状安定性と、架橋後の粘着シートにおける耐発泡信頼性とを両立させることができる。但し、他の要素とのバランスでこの範囲を超えてもよい。
【0088】
(光重合開始剤(C2))
光重合開始剤(C2)は、前述の架橋剤(B2)の架橋反応における反応開始助剤としての機能を果たすものであって、前述の光重合開始剤(C1)に係る記載のものを適宜使用することができる。
【0089】
光重合開始剤(C2)の含有量は特に制限されるものではない。目安としては、(メタ)アクリル系共重合体(A2)100質量部に対して0.1〜10質量部、中でも0.5質量部以上或いは5質量部以下、その中でも1質量部以上或いは3質量部以下の割合で含有するのが好ましい。
光重合開始剤(C2)の含有量を上記範囲とすることで、活性エネルギー線に対する適度な反応感度を得ることができる。
【0090】
(他の成分)
粘着剤組成物(II)は、上記以外の成分として、通常の粘着剤組成物に配合されている公知の成分を含有してもよい。例えば、必要に応じて、粘着付与樹脂や、酸化防止剤、光安定化剤、金属不活性化剤、老化防止剤、吸湿剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、防錆剤、シランカップリング剤、無機粒子などの各種の添加剤を適宜含有させることが可能である。
また、必要に応じて反応触媒(三級アミン系化合物、四級アンモニウム系化合物、ラウリル酸スズ化合物など)を適宜含有してもよい。
【0091】
<粘着シートXの作製方法>
粘着シートXを作製する方法は、公知の方法にて調整した粘着剤組成物(I)、(II)を溶媒に溶かして塗工する溶液塗工法や、該粘着剤組成物を加熱溶融させて塗工するホットメルト塗工法等が挙げられる。但し、目的とする粘着シートを得ることができる限り、特に制限されるものではなく、公知の方法で作製することができる。
なお、上述の粘着剤組成物(I)、(II)において、厚さ50μm以下の薄膜品を成形するときは、厚み制御の容易性から溶液塗工法を採用するのが好ましい。一方、厚さ50μm以上の粘着シートを成形する際は、環境汚染や厚膜成形のしやすさから、ホットメルト塗工法を採用するのが好ましい。
【0092】
<積層構成>
本粘着シートは、単一層からなるシートであっても、2層以上が積層してなる多層シートであってもよい。
【0093】
本粘着シートを多層の透明両面粘着材とする場合、積層構成としては、具体的には、本粘着剤組成物と、他の粘着剤樹脂組成物とを積層した2種2層構成や、中間樹脂層を介して表裏に本粘着剤組成物を配した2種3層構成や、本粘着剤組成物と、中間樹脂組成物と、他の粘着剤樹脂組成物とをこの順に積層してなる3種3層構成などを挙げることができる。中でも、最外層を本粘着剤組成物、例えば上述した粘着剤組成物(I)(II)から形成することが好ましい。
また、本粘着剤組成物と他の粘着剤樹脂組成物とを、それぞれ異なる離型フィルム乃至画像表示装置構成部材上にシート状に成形し、両粘着面を積層して本粘着シートを得るようにしてもよいし、また、本粘着剤組成物と、中間樹脂組成物と、粘着剤樹脂組成物とを、この順に共押出して2種3層の本粘着シートを得るようにしてもよいし、また、中間樹脂層の表裏面に本粘着剤組成物又は他の粘着剤樹脂組成物を積層して本粘着シートを得るようにしてもよい。
また、例えば、本粘着剤組成物から形成してなる粘着層(「本粘着層」と称する)を基材に備えた基材付粘着シートであっても、基材を有さない基材レス粘着シートであってもよい。さらには、上下両側に前記本粘着層を有する両面粘着シートであってもよいし、上下片面側のみに前記本粘着層を有する片面粘着シートであってもよい。
【0094】
<厚み>
本粘着シートの厚みは、画像表示装置の薄肉化を妨げないという観点から、最大厚み部分の厚みが250μm以下であるのが好ましい。言い換えれば、本粘着シートは、厚さが均一なシートであっても、部分的に厚さが異なる不均一なシートであってもよく、厚さが不均一なシートの場合には、最も厚さの大きな部分の厚さが250μm以下であるのが好ましい。
また、被着体との密着力や衝撃吸収性を妨げないという観点から、最大厚み部分の厚さは5μm以上であるのが好ましく、10μm以上がより好ましく、15μm以上であるのがさらに好ましい。
【0095】
<用途>
本粘着シートは、そのままの形態でも使用可能であるが、次のようにしても使用可能である。但し、本粘着シートの利用方法を限定するものではない。
【0096】
(粘着シート積層体)
本粘着シートは、例えば、本粘着シートの一面又は両面に離型フィルムを積層してなる構成を備えた粘着シート積層体として提供することができる。
この際、本粘着シートは、例えば
図1又は
図2に示すように、シート面内に、前記軟質部と硬質部を有する形態であってもよいし、また、
図3(A)(B)に示すように、粘着シートの少なくとも一側の端面部が前記硬質部を有する形態であってもよい。この際、該端面部全面が前記硬質部であってもよいし、該端面部一部が前記硬質部であってもよい。また、端面及び面内に硬質部分があってもよい。
図4(A)(B)に示すように、本粘着シートの端面部が硬質部である形態であれば、例えば高温高湿下等の過酷な環境下でも、露出した端面部が粘々することがないから、好適に保管することができる。
【0097】
(本画像表示装置構成用積層体)
本粘着シートが、シート面内に上記軟質部と上記硬質部とを有する場合、例えば、2つの画像表示装置用構成部材間を、当該本粘着シートを介して積層してなる構成を備えた画像表示装置構成用積層体(以下、「本画像表示装置構成用積層体」と称する。)を作製し、提供することができる。
【0098】
本画像表示装置構成用積層体は、例えば、光不透過部と光透過部とを貼合面に有する画像表示装置用構成部材と、他の画像表示装置用構成部材とを、上記粘着シートXを介して積層し、前者の画像表示装置構成部材を介して前記粘着シートXに光照射して、当該粘着シートを部分的に光硬化させて作製することができる。
【0099】
本画像表示装置構成用積層体の一例として、保護パネル/本粘着シート/偏光フィルムの構成から成る積層体のほか、例えば画像表示パネル/本粘着シート/タッチパネル、画像表示パネル/本粘着シート/保護パネル、画像表示パネル/本粘着シート/タッチパネル/本粘着シート/保護パネル、偏光フィルム/本粘着シート/タッチパネル、偏光フィルム/本粘着シート/タッチパネル/本粘着シート/保護パネルなどの構成例を挙げることができる。
保護パネル及び画像表示パネルは、タッチパネルセンサーを保護パネル若しくは画像表示パネル自体に組み込んだものであってもよい。
【0100】
(本画像表示装置)
本粘着シート或いは上記画像表示装置構成用積層体を用いて画像表示装置(以下、「本画像表示装置」と称する。)を構成することもできる。
【0101】
すなわち、本画像表示装置は、少なくとも対面する2つの画像表示装置用構成部材を備え、少なくとも一方の画像表示装置用構成部材は、貼合面に光不透過部と光透過部を有する画像表示装置において、前記2つの画像表示装置用構成部材の間が粘着シートで充填されてなる構成を備えた画像表示装置であって、前記粘着シートの前記光透過部に接する位置のゲル分率が40%以上であって、かつ、前記光不透過部に接する位置のゲル分率が1%未満であることを特徴とする画像表示装置として構成することができる。
【0102】
上記本画像表示装置構成用積層体及び本画像表示装置において、画面周囲の印刷部分など、光硬化に必要な波長の光を透過しない部分(本発明では「光不透過部」と称する)と、光硬化に必要な波長の光を透過する部分(本発明では「光透過部」と称する)とを、貼合面に有する画像表示装置用構成部材と、他の画像表示装置用構成部材とを貼合する際、前記光不透過部に接する位置のゲル分率を1%未満とし、前記光透過部に接する位置のゲル分率を40%以上とすることにより、光不透過部によって圧迫されて受ける応力を緩和することができ、この部分に生じる歪みを小さくすることができると共に、高い凝集力をもって被着物同士を強固に接着させることもできる。
【0103】
なお、光不透過部に接する位置のゲル分率は1%未満であるのが特に好ましく、その中でも0.8%未満であるのがさらに好ましい。
他方、光透過部に接する位置のゲル分率は40%以上であるのが特に好ましく、その中でも45%以上であるのがさらに好ましい。
【0104】
本画像表示装置の好ましい製法の一例について説明する。
先ず、上記粘着シートXを加熱してホットメルトさせ、印刷部(1)を有する画像表示装置用構成部材1と、画像表示装置用構成部材3とを、上記粘着シートXを介して積層する。この段階では、粘着シートXは適度に柔らかいから、保管安定性を維持しながら段差に十分に追従することができる。
そして次に、画像表示装置用構成部材1の外側から紫外線などの光を照射する。すると、印刷部(1)が光を遮蔽するため、印刷部(1)に接する部分には光は到達しないか、或いは到達する光が顕著に制限される一方、印刷部(1)のない光透過部(3)に接する部分には光が十分に到達し、この部分の架橋反応が進行して光硬化させることができ、優れた耐剥離性及び耐発泡性を実現することができる。
【0105】
前記2つの画像表示装置用構成部材としては、例えばパソコン、モバイル端末(PDA)、ゲーム機、テレビ(TV)、カーナビ、タッチパネル、ペンタブレットなど、LCD、PDP又はELなどの画像表示装置の構成部材を挙げることができる。より具体的には、例えばタッチパネル、画像表示パネル、表面保護パネル及び偏光フィルムからなる群のうちの何れか、或いは2種類以上の組み合わせからなる積層体を挙げることができる。
【0106】
(粘着シートロール)
本粘着シートは、
図5に示すように、ロール状に巻かれた形態であってもよい。例えば粘着シートXをロール状に巻いた後、その端面のみに光照射して光硬化させて作製してもよいし、端面のみ光硬化させた本粘着シートをロール状に巻いて作製してもよい。いずれにしても、ロール状に巻かれた形態の粘着シートの端面が光硬化部となっていれば、例えば高温高湿下等の過酷な環境下でも、露出したロール端面が粘々することがないから、好適に保管することができる。
【0107】
(語句の説明など)
一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、その厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また、画像表示パネル、保護パネル等のように「パネル」と表現する場合、板体、シートおよびフィルム、又はこれらの積層体を包含するものである。
【0108】
本明細書において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
【実施例】
【0109】
以下、実施例でさらに詳しく説明する。但し、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
【0110】
[参考例1]
(メタ)アクリル系共重合体(A)として、ポリメタクリル酸メチル(Tg:105℃)からなる数平均分子量2900のマクロモノマー15質量部(18mol%)と、ブチルアクリレート(Tg:−55℃)81質量部(75mol%)と、アクリル酸(Tg:106℃)4質量部(7mol%)とがランダム共重合してなるアクリル系グラフト共重合体(A−1)(重量平均分子量:23万)1kgと、架橋剤(B)としてのグリセリンジメタクリレート(日油社製、製品名:GMR)(B−1)90gと、光重合開始剤(C)としての2,4,6−トリメチルベンゾフェノンと4−メチルベンゾフェノンの混合物(Lanberti社製、製品名:エザキュアTZT)(C−1)15gとを均一混合し、粘着樹脂組成物1を作製した。
剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムY(三菱樹脂社製、ダイアホイルMRV−V06、厚さ100μm、「離型フィルムY」と称する)と、剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムZ(三菱樹脂社製、ダイアホイルMRQ、厚さ75μm、「離型フィルムZ」と称する)とで、前記組成物1を挟み、ラミネータを用いて厚さ150μmとなるようシート状に賦形し、粘着シートX1(厚さ150μm)を作製した。
黒色シート(LSL−8 イノアック社製 光線透過率0%)の片面に両面テープを貼って50mm×100mmに裁断したものを、前記粘着シートX1の一側に積層された離型フィルムZの表面に貼合して光不透過部を形成し、シート面内に光透過部と光不透過部を有する粘着シート積層体を作製した。
次に、このように作製した粘着シート積層体の黒色シート側から、高圧水銀ランプを用いて、波長365nmの積算光量が2000mJ/cm
2となるように紫外線を照射して粘着シート積層体の光透過部を硬化させ、軟質部と硬質部を有する粘着シート2−1を作製した。(
図2参照)
ここで、軟質部とは黒色シートで遮蔽された粘着シートの部位を意味し、硬質部とは、黒色シートで遮蔽されていない粘着シートの部位を意味する。
【0111】
[実施例2]
(メタ)アクリル系共重合体(A)として、2−エチルヘキシルアクリレート(Tg:−70℃)55質量部(36mol%)と、酢酸ビニル(Tg:32℃)40質量部(56mol%)と、アクリル酸(Tg:106℃)5質量部(8mol%)とがランダム共重合してなるアクリル系共重合体(A−2)(重量平均分子量:17万)1kgに対して、架橋剤(B)として、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレートとイソシアヌル酸EO変性トリアクリレートとの混合物(B−2)(東亜合成社製、製品名:アロニックスM313)70gと、光重合開始剤(C)として、エザキュアKTO46(C−2)(Lanberti社製)5gとを均一混合し、粘着樹脂組成物2を作製した。
上記離型フィルムY、Zで前記組成物2を挟み、ラミネータを用いて厚さ150μmとなるようシート状に賦形し、粘着シートX2(厚さ150μm)を作製した。
粘着シートX2を用いた以外は、参考例1と同様にして粘着シート積層体を作製し、さらに参考例1と同様にして、軟質部と硬質部を有する粘着シート2を作製した。
【0112】
[参考例3]
(メタ)アクリル系共重合体(A)として、数平均分子量1400のポリメタクリル酸メチルマクロモノマー(Tg:105℃)10質量部(17mol%)と2−エチルヘキシルアクリレート(Tg:−70℃)90質量部(83mol%)とがランダム共重合してなるアクリル系グラフト共重合体(A−3)(重量平均分子量:23万)1kgと、架橋剤(B)として、トリシクロデカンジメタクリレート(新中村化学社製、製品名:DCP)(B−3)50gと、光重合開始剤(C)としての2,4,6−トリメチルベンゾフェノンと4−メチルベンゾフェノンの混合物(Lanberti社製、製品名:エザキュアTZT)(C−1)15gを均一混合し、粘着樹脂組成物3を作製した。
上記離型フィルムY、Zで前記組成物3を挟み、ラミネータを用いて厚さ150μmとなるようシート状に賦形し、粘着シートX3(厚さ150μm)を作製した。
粘着シートX3を用いた以外は、参考例1と同様にして粘着シート積層体を作製し、さらに参考例1と同様にして、軟質部と硬質部を有する粘着シート3を作製した。
【0113】
[参考例4]
(メタ)アクリル系共重合体(A)として、数平均分子量2400のポリメタクリル酸メチルマクロモノマー(Tg:105℃)12質量部(19mol%)と2−エチルヘキシルアクリレート(Tg:−70℃)85質量部(74mol%)とアクリル酸(Tg:106℃)3質量部(7mol%)とがランダム共重合してなるアクリル系グラフト共重合体(A−4)(重量平均分子量:8万)1kgと、架橋剤(B)として、グリセリンジメタクリレート(日油社製、製品名:GMR)(B−1)90gと、光重合開始剤(C)としての2,4,6−トリメチルベンゾフェノンと4−メチルベンゾフェノンの混合物(Lanberti社製、製品名:エザキュアTZT)(C−1)15gを均一混合し、粘着樹脂組成物4を作製した。
上記離型フィルムY、Zで前記組成物4を挟み、ラミネータを用いて厚さ150μmとなるようシート状に賦形し、粘着シートX4(厚さ150μm)を作製した。
粘着シートX4を用いた以外は、参考例1と同様にして粘着シート積層体を作製し、さらに参考例1と同様にして、軟質部と硬質部を有する粘着シート4を作製した。
【0114】
[参考例5]
参考例1で用いたアクリル系共重合体(A−1)(重量平均分子量:23万)1kgと、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパントリアクリレート(B−4)70gと、光重合開始剤(C)としての2,4,6−トリメチルベンゾフェノンと4−メチルベンゾフェノンの混合物(Lanberti社製、製品名:エザキュアTZT)(C−1)8gとを均一混合し、粘着樹脂組成物5を作製した。
粘着樹脂組成物5を酢酸エチルで固形分濃度が40%になるよう希釈した溶液を、剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムY(三菱樹脂社製、ダイアホイルMRV−V06、厚さ100μm、「離型フィルムY」と称する)の剥離処理面に、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布、乾燥させた後、塗工した粘着面に、剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムZ(三菱樹脂社製、ダイアホイルMRQ、厚さ75μm、「離型フィルムZ」と称する)を被覆し、粘着シートX5(厚さ25μm)を作製した。
粘着シートX5を用いた以外は、参考例1と同様にして粘着シート積層体を作製し、さらに参考例1と同様にして、軟質部と硬質部を有する粘着シート5を作製した。
【0115】
[比較例1]
2−エチルヘキシルアクリレート(Tg:−70℃)75質量部(57mol%)と酢酸ビニル(Tg:32℃)20質量部(33mol%)とアクリル酸(Tg:106℃)5質量部(10mol%)とをランダム共重合してなる(メタ)アクリル系共重合体(A−5)1kgに、トリメチロールプロパントリアクリレート(B−4)200g及び4−メチルベンゾフェノン(C−3)10gを混合添加して中間層用樹脂組成物を調製した。
前記中間層用樹脂組成物を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(パナック社製、NP75Z01、厚さ75μm/東洋紡績社製、E7006、厚さ38μm)で挟み、厚さ80μmとなるようシート状に賦形し、中間層用シート(α)を作成した。
【0116】
続いて、前記アクリル系共重合体(A−5)1kgに対し、光重合開始剤(C)として、4−メチルベンゾフェノン(C−3)20gを添加混合し、粘着層用樹脂組成物を調整した。
前記粘着層用樹脂組成物を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、ダイアホイルMRA、厚さ75μm/東洋紡績社製、E7006、厚さ38μm)で挟み、厚さ35μmとなるようシート状に賦形し、粘着層用樹脂シート(β)を作製した。
他方、粘着層用樹脂組成物を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、ダイアホイルMRF、厚さ75μm/東洋紡績社製、E7006、厚さ38μm)で挟み、厚さ35μmとなるようシート状に賦形し、粘着層用樹脂シート(β’)を作製した。
【0117】
中間層用シート(α)の両側のPETフィルムを順次剥離除去すると共に、粘着層用樹脂シート(β)及び(β’)の一側のPETフィルムを剥がして、露出した粘着面を中間層用シート(α)の両表面に順次貼合し、(β)/(α)/(β’)からなる3層粘着シートを作製した。
(β)及び(β’)の表面に残るPETフィルムを介して、波長365nmの積算光量が1000mJ/cm
2となるよう高圧水銀ランプにて紫外線を照射し、(α)、(β)及び(β’)を紫外線架橋させて、粘着シートX6(厚さ150μm)を作製した。
黒色シート(LSL−8 イノアック社製 光線透過率0%)の片面に両面テープを貼り、50mm×100mmに裁断したものを、前記粘着シートX6の一方の剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、ダイアホイルMRF)の表面に貼合して光不透過を形成し、シート面内に光透過部と光不透過部を有する粘着シート積層体を作製した。
次に、このように粘着シート作製した粘着シート積層体の黒色シート側から、高圧水銀ランプを用いて、波長365nmの積算光量が2000mJ/cm
2となるように紫外線を照射して積層体の光透過部に接する箇所の粘着材にさらに光照射し、粘着シート6を作製した。
【0118】
[比較例2]
フェノキシ樹脂(A−6)(InChem社製、PKHH、重量平均分子量5.2万)650gと、架橋剤(B)の代替として、カーボネート骨格を有するポリウレタンアクリレート(B−4)(根上工業社製、UN5500、重量平均分子量6.7万)1kg、光重合開始剤(C)として、1−シクロヘキシルフェニルケトン(C−4)(BASF社製、Irgacure184)43gを均一混合してなる粘着樹脂組成物7を作製した。
前記組成物7を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、ダイアホイルMRV−V06、厚さ100μm/三菱樹脂社製、ダイアホイルMRQ、厚さ75μm)で挟み、ラミネータを用いて厚さ150μmとなるようシート状に賦形し、粘着シートX7(厚さ150μm)を作製した。
黒色シート(LSL−8 イノアック社製 光線透過率0%)の片面に両面テープを貼り、50mm×100mmに裁断したものを、前記粘着シートX7の一方の剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、ダイアホイルMRQ)の表面に貼合して光不透過を形成し、シート面内に光透過部と光不透過部を有する粘着シート積層体を作成した。
次に、このように作製した粘着シート積層体の黒色シート側から、高圧水銀ランプを用いて、波長365nmの積算光量が2000mJ/cm
2となるように紫外線を照射して粘着シート積層体の光透過部を硬化させ、粘着シート7を作製した。
【0119】
[比較例3]
市販のアクリル系粘着剤(A−7)(綜研化学社製、商品名「SKダイン1882」)1kgに対して、イソシアネート系硬化剤(綜研化学社製、商品名「L−45」)1.85g及びエポキシ系硬化剤(綜研化学社製、商品名「E−5XM」)0.5gを均一混合して粘着樹脂組成物6を調製した。
前記組成物6を、厚さ50μmの剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「MRF75」:三菱樹脂社製)の離型面に、乾燥後の厚さが75μmとなるように塗布し、加熱により溶剤を乾燥させ、厚さ75μmの粘着シートを作製した。
さらに、前記組成物6を、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、ダイアホイルMRV−V06、厚さ100μm)の離型面に、乾燥後の厚さが75μmとなるように塗布し、加熱により溶剤を乾燥させ、厚さ75μmの粘着シートを作製した。
作製した2枚の粘着シートについて、それぞれの粘着面を貼着して1週間養生して硬化剤を反応させ、粘着シート8(厚さ150μm)を作製した。
【0120】
[評価]
実施例、参考例及び比較例で作製した粘着シート1〜8の各種物性値を次のように測定して評価した。
【0121】
(ゲル分率)
実施例、参考例及び比較例で作製した粘着シート1〜7の光透過部に接する箇所、すなわち硬質部と、光不透過部に接する箇所、すなわち軟質部それぞれを取り出したものについて、下記の測定を行った。
比較例3の粘着シート8については、任意の箇所について下記の測定を行った。
【0122】
1)粘着剤組成物を秤量し(W1)、予め重さを測った200メッシュのSUSメッシュ(W0)に包む。
2)上記SUSメッシュを100mLの酢酸エチルに24時間浸漬する。
3)SUSメッシュを取り出し、75℃で4時間半乾燥する。
4)乾燥後の重量(W2)を求め、下記式より粘着剤組成物のゲル分率を測定する。
ゲル分率(%)=100×(W2−W0)/W1
【0123】
(ガラス転移温度(Tg))
パーキンエルマー社製示差走査熱量測定装置(DSC−8500)を用い、JIS K−7121(ISO3146)に基づいて昇温速度5℃/分で昇温測定を行い、得られたサーモグラムより、粘着シート1〜7の光透過部に接する箇所、すなわち硬質部と、光不透過部に接する箇所、すなわち軟質部それぞれについてガラス転移温度(Tg)を求めた。
比較例3の粘着シート8については、任意の箇所について同様の測定を行った。
【0124】
(アスカー硬度)
実施例、参考例及び比較例で作製した粘着シート1〜7の光不透過部に接する箇所、すなわち軟質部について、シートの剥離フィルムを剥がし、露出した粘着面を順次重ね合せて、複数枚の粘着シートを全厚さが5mm〜7mmの範囲内になるように積層した。これにより測定試料を乗せるステージの硬さの影響を低減することができ、材料特有の押込硬度を比較・測定することができる。そして、積層した粘着シートの露出した粘着面に対してアスカーC2L硬度計の先端端子を荷重1kgにて垂直下方に3mm/分の速度で押し付け、軟質部のC2アスカー硬度(c)を測定した。
【0125】
実施例、参考例及び比較例で作製した粘着シート1〜7の光透過部に接する箇所、すなわち硬質部についても、上記と同様に粘着シートを5mm〜7mmの範囲内になるように積層し、硬質部のC2アスカー硬度(d)を測定した。
比較例3で作製した粘着シート8については、任意の箇所について同測定を行った。
【0126】
(軟質部の180°剥離力)
実施例、参考例及び比較例で作製した粘着シート1〜7の光不透過部に接する箇所、すなわち軟質部を切り出した後、一方の離型フィルムを剥がし、裏打ちフィルムとして50μmのPETフィルム(三菱樹脂社製、ダイアホイルT100、厚さ50μm)を貼合して積層品を準備した。
上記積層品を長さ150mm、巾10mmに裁断した後、残る離型フィルムを剥がして露出した粘着面を、ソーダライムガラスに2kgのロールを1往復させて前記粘着シートをロール圧着した。
この粘着力測定サンプルを、23℃40%RHの環境下にて剥離角180°、剥離速度60mm/分で引き剥がしたときのガラスへの剥離力(N/cm)を測定し、光不透過部に接する箇所、すなわち軟質部の180°剥離力を求めた。
【0127】
(硬質部の180°剥離力)
実施例2、参考例1、3、4及び比較例1、2で作製した光照射前の状態の粘着シートX1〜7について一方の離型フィルムを剥がし、裏打ちフィルムとして50μmのPETフィルム(三菱樹脂社製、ダイアホイルT100、50μm)を貼合して積層品を準備した。
上記積層品を長さ150mm、巾10mmに裁断した後、残る離型フィルムを剥がして露出した粘着面を、2kgのロールを1往復してソーダライムガラスにロール圧着した。貼合品にオートクレーブ処理(80℃,ゲージ圧0.2MPa,20分)を施して仕上げ貼着した後、紫外線を365nmの積算光量が2000mJ/cm
2となるよう照射して粘着シートを硬化し、15時間養生して、剥離力測定試料とした。
上記剥離力測定サンプルを、23℃40%RHの環境下にて、剥離角180°、剥離速度60mm/分で引き剥がしたときのガラスへの剥離力(N/cm)を測定し、光透過部に接する箇所、すなわち硬質部の180°剥離力とした。
比較例3で作成した粘着シート8については、任意の箇所について粘着シートを切り出した後、軟質部の180℃剥離力の手順と同様に測定を行った。
【0128】
(軟質部の保持力)
実施例、参考例及び比較例で作製した粘着シート1〜7の光不透過部に接する箇所、すなわち軟質部を、50mm×100mmに裁断した後、片面の剥離フィルムを剥がし、該粘着シートの片面が、裏打用のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)に重なるようにハンドローラで貼着し、これを巾25mm×長さ100mmの短冊状に裁断して試験片とした。
次に、残る剥離フィルムを剥がして、垂直に立設したSUS板(120mm×5mm×1.5mm)に対して、試験片が20mmの長さだけ重なるようにしてハンドローラで貼着した。この時、透明両面粘着シートとSUS板の貼着面積は25mm×20mmとなる。
その後、試験片を40℃及び70℃の雰囲気下で15分養生させた後、試験片に4.9Nの錘を垂直方向に取り付けて掛けて30分間静置した後、SUSと試験片との貼着位置が下方にズレた長さ(mm)を測定した。貼着面がずれて錘が落下したものについては、錘の落下に要した時間を測定した。
なお、比較例2の粘着シート7は自着性を持たないことから、SUS板に積層した試験片を80℃で5分予熱し、被着体に密着させた後で保持力測定を行った。
【0129】
(硬質部の保持力)
実施例2、参考例1、3〜5及び比較例1、2で作製した光照射前の状態の粘着シートX1〜7について、光硬化前の保持力測定と同様にして、SUSと試験片との積層体を作成した後、波長365nmの紫外線が粘着シートに2000mJ/cm
2に到達するよう、光量計(ウシオ電機社製、UNIMETER UIT250/センサー:UVD−C365)で積算光量を確認しながら裏打用のポリエチレンテレフタレートフィルム側から高圧水銀ランプを用いて紫外線照射し、光透過部に接する箇所、すなわち硬質部に相当する粘着シートを作製した。
その後、試験片を40℃及び70℃の雰囲気下で15分養生させた後、試験片に4.9Nの錘を垂直方向に取り付けて掛けて30分間静置した後、SUSと試験片との貼着位置が下方にズレた長さ(mm)を測定した。
試験片が殆ど動かず、ズレ長さが0.1mm未満のものについては、表2に「<0.1mm」と表記した。
比較例3で作成した粘着シート8については、任意の箇所について粘着シートを切り出した後、軟質部の保持力測定手順と同様に測定を行った。
【0130】
(透明性)
実施例及び比較例で作製した粘着シート1〜7の光透過部に接する箇所、すなわち硬質部について一方の離型フィルムを剥がし、露出した粘着面を、2枚のソーダライムガラス(82mm×53mm×0.5mm厚)をロール貼合した後、オートクレーブ処理(80℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)を施して仕上げ貼着し、光学評価用積層体を作製した。
比較例3で作成した粘着シート8については、任意の箇所について同様にサンプルを作成した。
前記積層体について、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH5000)を用いて、JIS K7136に準じたヘイズ値並びにJIS K7361−1に準じた全光線透過率(%)を求めた。
【0131】
(凹凸吸収性)
実施例2、参考例1、3、4及び比較例1、2で作製した光照射前の状態の粘着シートX1〜4,6,7を、50mm×80mmに裁断し、一方の離型フィルムを剥がして露出した粘着面を、周縁部3mmに厚さ80μmの印刷を施したソーダライムガラス(82mm×53mm×0.5mm厚)の印刷面に、粘着材の4辺が印刷段差にかかるようにして真空プレスを用いてプレス圧着した(絶対圧5kPa、温度80℃、プレス圧0.04MPa)。次いで残る離型フィルムを剥がし、ゼオノアフィルム(日本ゼオン社製、100μm厚)をプレス貼合した後、オートクレーブ処理(80℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)を施して仕上げ貼着した。印刷を施したソーダライムガラス側から、波長365nmの紫外線がシートXに2000mJ/cm
2に到達するよう高圧水銀ランプにて紫外線を照射し、印刷の施されていない開口部、すなわち光透過部に接する箇所のシートを硬化させて、評価用積層体1〜6を作成した。
参考例5で作成した粘着シートX5については、印刷を施したソーダライムガラスの印刷厚みを15μmとしたものを用いて、同様に評価用積層体7を作成した。
比較例3で作成した粘着シート8については、粘着シート7を用いて、前述と同様の手順で印刷を施したソーダライムガラスとゼオノアフィルム(日本ゼオン社製、100μm厚)との積層体を作成した後、オートクレーブ処理(80℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)を施して仕上げ貼着し、評価用積層体8とした。
【0132】
作製した積層体1〜8を目視観察し、印刷段差近傍で粘着材が追従せず気泡が残ったものを「×」、フィルムが段差近傍で屈曲し、歪むことによる凹凸ムラが見えたものを「△」、気泡なく平滑に貼合されたものを「○」と判定した。
【0133】
(対発泡信頼性)
凹凸吸収性評価で作成した評価用積層体1〜8を、85℃85%RHの恒温恒湿槽に投入し、100時間養生した後の外観を観察した。粘着シートに気泡が発生したものを「×」、外観変化がなかったものを「○」と判定した。
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
(考察)
実施例2、参考例1、3〜5で作製した粘着シートは、軟質部のゲル分率が1%未満であることから、加熱により高い流動性を発現する。したがって、貼合時に加熱し溶融させることで、凹凸面への追従性に優れるばかりか、被着体の一方がフィルムのような剛性の低い素材であっても段差近傍で屈曲を生じず、平滑な積層体を得ることができた。さらには、硬質部のゲル分率が40%以上であることから、高温高湿下等の苛酷な環境試験下においても高い凝集力を発現し、剥離や発泡、変形を生じず、高い信頼性をもつ積層体を得ることができた。
【0137】
比較例1の粘着シートは、紫外線照射によって粘着剤樹脂組成物が一部架橋しているため印刷段差付きガラスとフィルムとを積層する際、フィルム側に印刷段差による凹凸が転写し平滑な積層体が得られなかった。また、段差近傍の粘着材の歪みをきっかけに高温高湿試験下で発泡がみられ、保管安定性に劣るものであった。
比較例2は、(メタ)アクリル系共重合体を用いておらず、室温域においてある程度の剛性を備えた粘着性樹脂組成物を用いた、ホットメルトタイプの粘着シートである。
比較例2のシートは実施例の粘着シートと比較して、室温付近でのタック性が非常に低かった。印刷段差付きガラスとシートとを積層する際、加熱時の流動性が低いため、シート側に印刷段差による凹凸がわずかに転写し、実施例の粘着シートと比較して積層体の平滑性に劣る結果となった。また、光不透過箇所におけるアスカー硬度が高いことからもうかがえるように、貼合作業時においてシートの剛性が高く、自着性をもたないことから、貼合せする際に位置決めの段階から被着体を予熱する必要があり、圧着のみで常温貼付可能な粘着シートと比べて、作業が煩雑であるという課題もあった。
比較例3は、粘着シート7の粘着剤樹脂組成物の架橋反応が、既に完了しているため、粘着シート内にゲル分率が1%以下の軟質部が存在せず、フィルム側に印刷段差による凹凸が転写し平滑な積層体が得られないばかりか、印刷段差が交差する角部付近では一部粘着剤が充填しきれず気泡が残る結果となった。
【0138】
以上の実施例の結果並びにこれまで発明者が行ってきた試験結果から、ゲル分率が1%未満の軟質部と、ゲル分率が40%以上の硬質部をもつ、(メタ)アクリル系共重合体を含む光硬化性透明両面粘着シートを用いれば、実施例同様に2つの画像表示装置構成部材を好適に接着させることができるものと考えることができる。
【0139】
また、粘着シート面内の軟質部のゲル分率は1%未満であるのが好ましく、硬質部のゲル分率は40%以上であるのが好ましいと考えることができる。
また、粘着シート面内の軟質部のガラス転移温度(実測Tg)は−70〜−10℃であるのが好ましく、硬質部のガラス転移温度(実測Tg)は−60〜+20℃であり、硬質部のガラス転移温度(Tg[H])と軟質部のガラス転移温度(Tg[S])の差(Tg[H]−Tg[S])が3℃以上であるのが好ましいと考えることができる。
【0140】
[参考例6]
参考例1で作製した粘着シートX1について、幅150mm、長さ100mの長尺の積層シートを、初期の巻取張力70N、テーパー率20%として直径6インチのプラスチック製巻芯に巻き取り、粘着シートロールを作製した。
作製したシートロールの端面部に、高圧水銀ランプを用いて、波長365nmの積算光量が500mJ/cm
2に到達するよう光照射して端面部を光硬化させ、端面部に硬質部をもつ粘着シートロールとした。
【0141】
[比較例4]
光照射しなかった以外は、参考例6と同様にして粘着シートロールを作製した。
【0142】
このようにして作製した、硬質部を有さない軟質部のみの比較例4の粘着シートロールと、端面部に硬質部を有する参考例6の粘着シートロールについて、40℃90%RHの恒温恒湿槽に2週間保管した後に粘着シートロールの端面部を目視観察した。
端面部に硬質部をもつ参考例5の粘着シートロールは、端面部からの糊はみ出しがなく、シートの巻出し作業性が良好であったのに対し、軟質部のみからなる比較例4の粘着シートロールの端面部は糊はみ出しにより端面部が粘々し、巻出し作業に支障を来す結果となった。