【実施例】
【0065】
以下、実施例により本実施形態を更に詳しく説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
なお、以下において、実施例1〜2、参考例1〜2、及び比較例1〜2が第1の実施形態に対応し、実施例3〜5が第2の実施形態に対応する。
【0066】
[実施例1]
(a)(1A)の工程
粉砕して、目開き100μmの篩にかけたメタホウ酸ナトリウム粉末を室温から600℃のTG測定を行った。水分による重量減少率は5.3%であった。この水分を含むメタホウ酸ナトリウム1.962gと、その質量のメタホウ酸ナトリウムと等モルのアルミニウムに対して5.5%増加させた平均粒径30μmのアルミニウム1.133gとを混合した後、常温下で、
図3に示す密閉容器内に装入した。次いで、密閉容器内を真空ポンプに接続して脱気した後、水素ガス(非酸化性ガス)で満たした。
【0067】
(b)(2A)の工程
密閉容器内を300℃に加熱し、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分と、メタホウ酸ナトリウムの水和水とを放出させ気化した。このときの加熱時間は40分であった。
【0068】
(c)(3A)の工程
密閉容器内を300℃に加熱するとともに、密閉容器内の撹拌棒を回転させ、粉砕媒体として直径5mmのアルミナ製ボールを用い、撹拌回転速度:1150rpmで圧延粉砕をして、密閉容器内の残留水分をアルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換することで残留水分を除去した。なお、本工程の終了は密閉容器内の圧力上昇が生じなくなった時点で撹拌を終了させ、冷却した。撹拌時間は63分であった。
【0069】
(d)(4A)の工程
水素ガスバルブを開状態として密閉容器内を水素ガスで満たし、310℃に加熱しつつ、粉砕媒体により5時間圧延粉砕した。このときの初期の水素ガス圧は0.81MPaであった。
以上のようにして、水素化ホウ素ナトリウムを得た。
【0070】
(4A)の工程終了後、反応率を水素ガス圧の減少から計算した。減少量は最大ガス圧から、反応条件での最少圧力との差を算出し、水素ガス体積(モル量)に換算して算出した。その結果、反応率は35%であった。また、以下に示すようにして、反応生成物中の水素化ホウ素ナトリウムの含有率をヨウ素滴定法により求めたところ34%であった。
【0071】
〜ヨウ素滴定法〜
(1)試料(反応生成物)50mgを0.1mgの桁まで量り取り、秤量瓶に採取した。
(2)(1)で採取した試料を200ml共栓付三角フラスコに移した。この共栓付三角フラスコに濃度20g/LのNaOH溶液40mlを加え、水浴上で加温して未反応のアルミニウム粉末を完全に分解した。
(3)室温まで冷却後、0.05Mヨウ素溶液20.0mlをホールピペットで加え,栓をして暗所で15分間放置した。
(4)塩酸3mlを加えてよく振り混ぜた後、0.1Mチオ硫酸ナトリウムで滴定を行った。
(5)滴定の終了はヨウ素の紫色が無色に変化した時点とした。
(6)試料を添加しないで空試験を行い,水素化ホウ素ナトリウム含有率を計算により求めた。含有率の計算に用いた式を以下に示す。
〈水素化ホウ素ナトリウム含有率を求める計算式〉
NaBH
4 (質量%) = {(A−B)×0.1×f×37.83/8}/C×100
上記式中の変数及び定数は以下の通りである。
A :空試験の0.1M チオ硫酸ナトリウム溶液滴定値(ml)
B :試料液の0.1M チオ硫酸ナトリウム溶液滴定値(ml)
f :0.1Mチオ硫酸ナトリウム溶液のファクター
C :試料採取量(mg)
37.83:水素化ホウ素ナトリウムの分子量(g/mol)
8 :1mol/L水素化ホウ素ナトリウム溶液の規定度(N)
【0072】
[実施例2]
(a)(1A)の工程
粉砕して、目開き100μmの篩にかけたメタホウ酸ナトリウム粉末を室温から600℃のTG測定を行った。水分による重量減少率は5.3%であった。この水分を含むメタホウ酸ナトリウム1.970gと、その質量のメタホウ酸ナトリウムと等モルのアルミニウムに対して4.4%増加させた平均粒径10μmのアルミニウム1.125gとを混合した後、常温下で、
図3に示す密閉容器内に装入した。密閉容器を閉めて、密閉容器内を真空ポンプに繋ぎ脱気した。次いで、密閉容器内を水素ガスで満たし、0.5MPaとした。
【0073】
(b)(2A)の工程
密閉容器内を500℃に加熱し、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分と、メタホウ酸ナトリウムの水和水とを放出させ気化した。
【0074】
(c)(3A)の工程
密閉容器内を500℃に加熱するとともに、密閉容器内の撹拌棒を回転させ、粉砕媒体として直径5mmのアルミナ製ボールを用い、撹拌回転速度:250rpmで圧延粉砕をして、密閉容器内の残留水分をアルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換することで残留水分を除去した。なお、本工程の終了は密閉容器内の圧力上昇が生じなくなった時点で撹拌を終了させた。撹拌時間は48分であった。
【0075】
(d)(4A)の工程
密閉容器内を水素ガスで満たし、510℃に加熱しつつ、撹拌回転速度300rpmで粉砕媒体により70分圧延粉砕した。(4A)の工程の反応初期の水素ガス圧は0.97MPaであった。
以上のようにして、水素化ホウ素ナトリウムを得た。なお、本実施例の(2A)〜(4A)の工程は、
図4に示す一連の工程に相当する。
【0076】
(4A)の工程終了後、反応率を水素ガス圧の減少から計算した。減少量は最大ガス圧から、反応条件での最少圧力との差を算出し、水素ガス体積(モル量)に換算して算出した。その結果、反応率は32%であった。また、反応生成物中の水素化ホウ素ナトリウムの含有率を実施例1と同様にして求めたところ33%であった
【0077】
[実施例3]
(a)(1B)の工程
粉砕して、目開き100μmの篩にかけたメタホウ酸ナトリウム粉末を室温から600℃のTG測定を行った。水分による重量減少率は4.2%であった。この水分を含むメタホウ酸ナトリウム1.980gと、その質量のメタホウ酸ナトリウムと等モルのアルミニウムに対して4.3%増加させた平均粒径30μmのアルミニウム1.980gを混合した後、常温下で、
図3に示す密閉容器内に装入した。次いで、密閉容器内を真空ポンプに接続して真空にした後、0.1MpaのArで満たした、次いで、再度、1torr>の真空ポンプに接続して真空にした。
【0078】
(b)(2B)の工程
密閉容器内を395℃に加熱し、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分と、メタホウ酸ナトリウムの水和水とを放出させ気化させ、真空脱気した。脱気後冷却した。
【0079】
(c)(3B)の工程
水素ガスバルブを開状態として密閉容器内を水素ガスで満たし、310℃に加熱するとともに、5mmφのSUS304ステンレススチールボールを粉砕媒体として用い密閉容器内の撹拌棒を1150rpmで回転させ、圧延粉砕し、残留水分をアルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換することで残留水分を除去した。なお、本工程の終了は密閉容器内の圧力上昇が生じなくなった時点で撹拌を終了させた。撹拌時間は1分であった。
【0080】
(d)(4B)の工程
(3B)の工程に引き続き310℃に加熱しつつ、撹拌回転速度1150rpmで粉砕媒体により約5時間圧延粉砕した。このときの反応初期の水素ガス圧は0.75MPaであった。
以上のようにして、水素化ホウ素ナトリウムを得た。
【0081】
(4B)の工程終了後、反応率を水素ガス圧の減少から計算した。減少量は最大ガス圧から、反応条件での最少圧力との差を算出し、水素ガス体積(モル量)に換算して算出した。その結果、反応率は37%であった。
【0082】
[実施例4]
(a)(1B)の工程
粉砕して、目開き100μmの篩にかけたメタホウ酸ナトリウム粉末を室温から600℃のTG測定を行った。水分による重量減少率は7.8%であった。この水分を含むメタホウ酸ナトリウム1.971gと、その質量のメタホウ酸ナトリウムと等モルのアルミニウムに対して0.1%増加させた平均粒径30μmのアルミニウム1.079gを混合した後、常温下で、
図3に示す密閉容器内に装入した。次いで、密閉容器内を真空ポンプに接続して真空にした後、0.1MpaのArで満たした。次いで、再度、1torr>の真空ポンプに接続して真空にした。
【0083】
(b)(2B)の工程
密閉容器内を302℃に加熱し、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分と、メタホウ酸ナトリウムの水和水とを放出させ気化させ、真空脱気した。加熱脱気時間は40分であった。脱気後冷却した。
【0084】
(c)(3B)の工程
水素ガスバルブを開状態として密閉容器内を水素ガスで満たし、310℃に加熱するとともに、実施例1と同じ粉砕媒体を用い密閉容器内の撹拌棒を600rpmで回転させ、圧延粉砕し、残留水分をアルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換することで残留水分を除去した。なお、本工程の終了は密閉容器内の圧力上昇が生じなくなった時点で撹拌を終了させた。撹拌時間は8分であった。
【0085】
(d)(4B)の工程
(3B)の工程に引き続き310℃に加熱しつつ、撹拌回転速度1150rpmで粉砕媒体により約5時間圧延粉砕した。このときの反応初期の水素ガス圧は0.806MPaであった。水素ガス圧の減少は2段となった。2段目の反応速度の増加は密閉反応容器の壁に層状に付着した未反応層が脱落して圧延粉砕の反応が再度加速したことによる。
以上のようにして、水素化ホウ素ナトリウムを得た。
【0086】
(4B)の工程終了後、反応率を水素ガス圧の減少から計算した。減少量は最大ガス圧から、反応条件での最少圧力との差を算出し、水素ガス体積(モル量)に換算して算出した。その結果、反応率は43%であった。なお、本実施例の(2B)〜(4B)の工程は、
図5に示す一連の工程に相当する。
【0087】
[実施例5]
(a)(1B)の工程
粉砕して、目開き100μmの篩にかけたメタホウ酸ナトリウム粉末を室温から600℃のTG測定を行った。水分による重量減少率は4.2%であった。この水分を含むメタホウ酸ナトリウム0.760gと、その質量のメタホウ酸ナトリウムと等モルのアルミニウムに対して1.0%増加させた平均粒径30μmのアルミニウム0.42gを混合した後、常温下で、
図3に示す密閉容器内に装入した。次いで、密閉容器内を1torr>の真空ポンプに接続して真空にした。
【0088】
(b)(2B)の工程
密閉容器内を230℃に加熱し、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分と、メタホウ酸ナトリウムの水和水とを放出させ気化させ、真空脱気した。脱気後冷却した。
【0089】
(c)(3B)の工程
水素ガスバルブを開状態として密閉容器内を水素ガスで満たし、280℃に加熱するとともに、5mmφのSUS304ステンレススチールボールを粉砕媒体として用い密閉容器内の撹拌棒を1150rpmで回転させ、圧延粉砕し、残留水分をアルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換することで残留水分を除去した。なお、本工程の終了は密閉容器内の圧力上昇が生じなくなった時点で撹拌を終了させた。撹拌時間は3.5分であった。
【0090】
(d)(4B)の工程
(3B)の工程に引き続き238℃に加熱しつつ、撹拌回転速度1150rpmで粉砕媒体により約7時間圧延粉砕した。このときの反応初期の水素ガス圧は0.65MPaであった。
以上のようにして、水素化ホウ素ナトリウムを得た。
【0091】
(4B)の工程終了後、反応率を水素ガス圧の減少から計算した。減少量は最大ガス圧から、反応条件での最少圧力との差を算出し、水素ガス体積(モル量)に換算して算出した。その結果、反応率は38%であった。
【0092】
以上の実施例1〜5より、水分を含むメタホウ酸ナトリウムを原料として使用しても、十分な生成効率で水素化ホウ素ナトリウムを生成することができたことが分かる。
【0093】
[参考例1]
(a)(1A)の工程
粉砕して、目開き100μmの篩にかけたメタホウ酸ナトリウム粉末を室温から600℃のTG測定を行った。水分による重量減少率は5.3%であった。この水分を含むメタホウ酸ナトリウム1.963gと、無水メタホウ酸ナトリウムとしたときの等モルの平均粒径30μmのアルミニウム1.020gとを混合した後、常温下で、
図3に示す密閉容器内に装入した。次いで、密閉容器内を真空ポンプに接続して脱気した後、水素ガス(非酸化性ガス)で満たした。
【0094】
(b)(2A)の工程
密閉容器内を300℃に加熱し、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分と、メタホウ酸ナトリウムの水和水とを放出させ気化した。このときの加熱時間は40分であった。
【0095】
(c)(3A)の工程
密閉容器内を310℃に加熱するとともに、密閉容器内の撹拌棒を回転させ、粉砕媒体として直径5mmのアルミナ製ボールを用い、撹拌回転速度:1150rpmで圧延粉砕をして、密閉容器内の残留水分をアルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換することで残留水分を除去した。なお、本工程の終了は密閉容器内の圧力上昇が生じなくなった時点で撹拌を終了させ、冷却した。撹拌時間は76分であった。
【0096】
(d)(4A)の工程
水素ガスバルブを開状態として密閉容器内を水素ガスで満たし、310℃に加熱しつつ、粉砕媒体により5時間圧延粉砕した。このときの初期の水素ガス圧は0.801MPaであった。
以上のようにして、水素化ホウ素ナトリウムを得た。
【0097】
(4A)の工程終了後、反応率を水素ガス圧の減少から計算した。減少量は最大ガス圧から、反応条件での最少圧力との差を算出し、水素ガス体積(モル量)に換算して算出した。その結果、反応率は22%であった。また、反応生成物中の水素化ホウ素ナトリウムの含有率を実施例1と同様にして求めたところ23%であった。参考例1においては、原料のアルミニウムの量が、実施例1〜5と比較して少ないため、反応率が低かったと考えられる。
【0098】
[参考例2]
(a)(1A)の工程
粉砕して、目開き100μmの篩にかけたメタホウ酸ナトリウム粉末を室温から600℃のTG測定を行った。水分による重量減少率は7.8%であった。この水分を含むメタホウ酸ナトリウム1.980gと、その質量のメタホウ酸ナトリウムと等モルのアルミニウムに対して0.3%減少させた平均粒径30μmのアルミニウム1.080gとを混合した後、常温下で、
図3に示す密閉容器内に装入した。次いで、密閉容器内を真空ポンプに接続して脱気した後、水素ガス(非酸化性ガス)で満たした。
【0099】
(b)(2A)の工程
密閉容器内を500℃に加熱し、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分と、メタホウ酸ナトリウムの水和水とを放出させ気化した。このときの加熱時間は60分であった。
【0100】
(c)(3A)の工程
密閉容器内を500℃に加熱するとともに、密閉容器内の撹拌棒を回転させ、粉砕媒体として直径5mmのアルミナ製ボールを用い、撹拌回転速度:300rpmで圧延粉砕をして、密閉容器内の残留水分をアルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換することで残留水分を除去した。なお、本工程の終了は密閉容器内の圧力上昇が生じなくなった時点で撹拌を終了させ、冷却した。撹拌時間は65分であった。
【0101】
(d)(4A)の工程
水素ガスバルブを開状態として密閉容器内を水素ガスで満たし、510℃に加熱しつつ、粉砕媒体により1時間圧延粉砕した。このときの初期の水素ガス圧は1.05MPaであった。
以上のようにして、水素化ホウ素ナトリウムを得た。
【0102】
(4A)の工程終了後、反応率を水素ガス圧の減少から計算した。減少量は最大ガス圧から、反応条件での最少圧力との差を算出し、水素ガス体積(モル量)に換算して算出した。その結果、反応率は16%であった。参考例2においては、原料のアルミニウムの量が、参考例1よりもさらに少ないため、反応率が低かったと考えられる。
【0103】
なお、参考例1及び2は、第1の実施形態における(1A)〜(3A)の工程を含むにもかかわらず反応率が低かったのは、上記の通り原料のアルミニウムが少ないためである。原料が少ないと反応率が低くなるのは当然のことであり、本実施形態の(1A)〜(3A)の工程による効果を否定するものではない。なお、参考例1において、(1A)の工程で用いるアルミニウムの量を増やすか、又は(3A)の工程の直後にアルミニウムの不足分を追加することで反応率を高くすることができる。
【0104】
[比較例1]
(a)(1A)の工程
粗く粉砕して目開き100μmの篩にかけ、篩上のメタホウ酸ナトリウムを室温から600℃のTG測定を行った。水分による重量減少率は3.7%であった。この水分を含むメタホウ酸ナトリウム1.942gと、その質量のメタホウ酸ナトリウムと等モルのアルミニウム重量に対して3.2%増加させた平均粒径30μmのアルミニウム1.096gを混合した後、常温下で、
図3に示す密閉容器内に装入した。次いで、密閉容器内を真空ポンプに接続して脱気した。
【0105】
(b)(2A)の工程
水素ガスバルブを開状態として密閉容器内を水素ガスで満たし、密閉容器内を308℃に加熱し、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分と、メタホウ酸ナトリウムの水和水とを放出させ気化させた。
【0106】
(c)(3A)の工程
308℃に加熱するとともに、5mmφのアルミナ製ボールを粉砕媒体として用い密閉容器内の撹拌棒を1150rpmで回転させ、圧延粉砕し、残留水分をアルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換することで残留水分を除去した。なお、本工程の終了は密閉容器内の圧力上昇が生じなくなった時点で撹拌を終了させた。撹拌時間は57分であった。
【0107】
(d)(4A)の工程
(3A)の工程に引き続き310℃に加熱しつつ、撹拌回転速度300rpmで粉砕媒体により約5時間圧延粉砕した。このときの反応初期の水素ガス圧は0.795MPaであった。
以上のようにして、水素化ホウ素ナトリウムを得た。
【0108】
(4A)の工程終了後、反応率を水素ガス圧の減少から計算した。減少量は最大ガス圧から、反応条件での最少圧力との差を算出し、水素ガス体積(モル量)に換算して算出した。その結果、反応率は3.7%であった。比較例1においては、粒径100μm超のメタホウ酸ナトリウムを原料としているため反応率が低かったと考えられる。
【0109】
[比較例2]
(a)(1A)の工程
粉砕して、目開き100μmの篩にかけたメタホウ酸ナトリウム粉末を室温から600℃のTG測定を行った。水分による重量減少率は5.3%であった。この水分を含むメタホウ酸ナトリウム1.979gと、その質量のメタホウ酸ナトリウムと等モルのアルミニウムに対して2.2%少ない平均粒径30μmのアルミニウム1.059gを混合しないで、常温下で、
図3に示す密閉容器内に装入した。次いで、密閉容器内を真空ポンプに接続して脱気した後、水素ガス(非酸化性ガス)で満たした。
【0110】
(b)(2A)の工程
密閉容器内を230℃に加熱し、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分と、メタホウ酸ナトリウムの水和水とを放出させ気化した。このときの加熱時間は40分であった。
【0111】
(c)(3A)の工程
密閉容器内を230℃に加熱するとともに、密閉容器内の撹拌棒を回転させ、粉砕媒体として直径5mmのアルミナ製ボールを用い、撹拌回転速度:300rpmで圧延粉砕をして、密閉容器内の残留水分をアルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換することで残留水分を除去した。なお、本工程の終了は密閉容器内の圧力上昇が生じなくなった時点で撹拌を終了させ、冷却した。撹拌時間は168分であった。
【0112】
(d)(4A)の工程
水素ガスバルブを開状態として密閉容器内を水素ガスで満たし、230℃に加熱しつつ、粉砕媒体により17時間圧延粉砕した。このときの初期の水素ガス圧は0.66MPaであった。
以上のようにして、水素化ホウ素ナトリウムを得た。
【0113】
(4A)の工程終了後、反応率を水素ガス圧の減少から計算した。減少量は最大ガス圧から、反応条件での最少圧力との差を算出し、水素ガス体積(モル量)に換算して算出した。その結果、反応率は13%であった。比較例2においては、(3A)の工程における加熱温度が低温(230℃)であるため反応率が低かったと考えられる
【0114】
以上の実施例から水分を含むメタホウ酸ナトリウム粉末から水分を脱水に要する時間は、加熱温度を高くするほど、また撹拌速度を高速にするほど、反応開始までのタイムラグが短くなることが分かる。また、同じ容器内で加熱真空脱気するとさらに短くなることが分かる。
【0115】
次いで、
図4及び
図5を参照して、本実施形態の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法と、従来の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法とにおいて、製造に要する時間を比較する。
図4は、本実施形態の製造方法における工程((2A)〜(4A)の工程)の過程を示し、
図5は反応容器内で事前に加熱脱気する工程が踏まれている。
図4及び
図5において、横軸は時間を示し、縦軸はグラフによって異なり、水素ガス圧力(MPa)、容器内温度(℃)又は撹拌回転数(rpm)を示す。
【0116】
図4においては、開始から500℃までの昇温期間の約1時間までが(2A)の工程であり、その後、圧延粉砕の250rpmの撹拌を開始してから最高圧力0.97Mpaに達するまでの48分間が(3A)の工程であり、さらにその後、撹拌回転数を300rpmとして水素ガス圧力が低下し始めてから約1時間が(4A)の工程である。すなわち、密閉容器への原料投入から水素化ホウ素ナトリウムの生成終了まで約3時間であることが分かる。
【0117】
一方、
図4においては、グラフの時間軸数値0.0より前が、メタホウ酸ナトリウムの付着水及び水和水を加熱脱気する工程である。そして、その後、水素ガスを満たし、加熱し、圧延粉砕して原料粉末に残る水分を脱水している。
図5の(2A)の加熱脱気工程は長くなるが、(3B)の圧延粉砕脱水工程は
図4の(3A)の工程に比べて大幅に短くなっておりトータルの工程時間は大きく変わらない。その後、圧延粉砕して原料混合物を反応させて水素化ホウ素ナトリウムを生成している。