(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ホスト化合物と、該ホスト化合物の構造内部に生じるキャビティに包接されるゲスト分子とから構成される包接体であって、
前記ホスト化合物は、式[1]
【化1】
〔式[1]中、
Aは、
以下の式(A−1)乃至式(A−14)で表される4価の基(該式(A−1)乃至式(A−14)で表される4価の基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい。)からなる群から選択される4価の基を表し、
【化2】
(上記式中、*は結合手を表す。)
Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいフェニレン基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいナフタレンジイル基を表し、
X
1及びX
2は、それぞれ独立して、−CR
1R
2−(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基又はフェニル基を表す。)、−C(=O)−、−NR
3−(式中、R
3は、水素原子又は炭素原子数1乃至6のアルキル基を表す。)、−O−、−SiR
4R
5−(式中、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基又はフェニル基を表す。)及び−SO
2−からなる群から選択される2価の基を表し、
Ar
3及びAr
4は、それぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいフェニル基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいナフチル基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいアントラセニル基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいピレニル基を表す。〕で表される化合物であり、
前記ゲスト分子は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、炭素原子数1乃至6のハロアルキル基、炭素原子数1乃至6のハロアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン及びピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、包接体。
前記Aは、式(A−1)及び式(A−2)で表される4価の基(該式(A−1)及び式(A−2)で表される4価の基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい。)からなる群から選択される請求項2記載の包接体。
前記ゲスト分子は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、炭素原子数1乃至6のハロアルキル基、炭素原子数1乃至6のハロアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、ベンゼン及びナフタレンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の包接体。
前記ゲスト分子は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、ベンゼン及びナフタレンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項9記載の包接体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、共有結合のみで形成される通常の有機分子であるホスト化合物と、これに包接されるゲスト分子とから構成される固体発光材料を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、電子が不足したπ共役分子である芳香族ジイミド化合物に電子が不足した特定の構造を有する嵩高い置換基を導入すると、得られた化合物は電子供与性の高い芳香族化合物をゲスト分子として包接して結晶化することができ、そして、得られた包接結晶(包接体)は発光し得ること及び結果として、固体発光材料が提供できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち本発明は、第1観点として、ホスト化合物と、該ホスト化合物の構造内部に生じるキャビティに包接されるゲスト分子とから構成される包接体であって、
前記ホスト化合物は、式[1]
【化1】
〔式[1]中、
Aは、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至20の4価の芳香族炭化水素基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至10の芳香環2環が、単結合又はアセチレン−1,2−ジイル基で連結している炭化水素から誘導される4価の炭化水素基を表し、
Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいフェニレン基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいナフタレンジイル基を表し、
X
1及びX
2は、それぞれ独立して、−CR
1R
2−(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基又はフェニル基を表す。)、−C(=O)−、−NR
3−(式中、R
3は、水素原子又は炭素原子数1乃至6のアルキル基を表す。)、−O−、−SiR
4R
5−(式中、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基又はフェニル基を表す。)及び−SO
2−からなる群から選択される2価の基を表し、
Ar
3及びAr
4は、それぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいフェニル基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいナフチル基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいアントラセニル基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいピレニル基を表す。〕で表される化合物であり、
前記ゲスト分子は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、炭素原子数1乃至6のハロアルキル基、炭素原子数1乃至6のハロアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン及びピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、包接体に関する。
第2観点として、前記Aは、以下の式(A−1)乃至式(A−17)で表される4価の基(該式(A−1)乃至式(A−17)で表される4価の基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい。)からなる群から選択される第1観点記載の包接体に関する。
【化2】
(上記式中、*は結合手を表す。)
第3観点として、前記Aは、式(A−1)、式(A−2)、式(A−3)、式(A−5)、式(A−15)、式(A−16)及び式(A−17)で表される4価の基(該式(A−1)、式(A−2)、式(A−3)、式(A−5)、式(A−15)、式(A−16)及び式(A−17)で表される4価の基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい。)からなる群から選択される第2観点記載の包接体に関する。
第4観点として、前記Aは、式(A−1)及び式(A−2)で表される4価の基(該式(A−1)及び式(A−2)で表される4価の基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい。)からなる群から選択される第3観点記載の包接体に関する。
第5観点として、前記Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して、o−フェニレン基、1,2−ナフタレンジイル基又は2,3−ナフタレンジイル基(該o−フェニレン基、1,2−ナフタレンジイル基及び2,3−ナフタレンジイル基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい。)を表す、第1観点乃至第4観点のいずれか一つに記載の包接体に関する。
第6観点として、前記Ar
1及びAr
2は、o−フェニレン基を表す、第5観点記載の包接体に関する。
第7観点として、前記X
1及びX
2は、−C(=O)−を表す、第1観点乃至第6観点のいずれか一つに記載の包接体に関する。
第8観点として、前記Ar
3及びAr
4は、それぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいフェニル基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいナフチル基を表す、第1観点乃至第7観点のいずれか一つに記載の包接体に関する。
第9観点として、前記Ar
3及びAr
4は、それぞれ独立して、フェニル基又はナフチル
基を表す、第8観点記載の包接体に関する。
第10観点として、前記ゲスト分子は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、炭素原子数1乃至6のハロアルキル基、炭素原子数1乃至6のハロアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、ベンゼン及びナフタレンからなる群から選ばれる少なくとも1種である第1観点乃至第9観点のいずれか一つに記載の包接体に関する。
第11観点として、前記ゲスト分子は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、ベンゼン及びナフタレンからなる群から選ばれる少なくとも1種である第10観点記載の包接体に関する。
第12観点として、前記ゲスト分子は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいベンゼンである第11観点記載の包接体に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の包接体は、共有結合のみで形成される通常の有機分子であるホスト化合物と、これに包接されるゲスト分子とから構成される固体発光材料として使用し得る。
また本発明の包接体は、環境負荷の高い重金属などを使用することなく、包接体を構成する成分である各化合物を混合し、加熱・冷却という簡便な操作により得ることができる。
本発明の包接体は、共有結合のみで形成される通常の有機分子をホスト化合物として使用するため、熱安定性に優れ、また、それにより取り扱いが容易であるため、種々の異なる環境下で使用可能な固体発光材料として期待される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の包接体は、ホスト化合物と、該ホスト化合物の構造内部に生じるキャビティに包接されるゲスト分子とから構成される包接体である。
本発明の包接体は、前記ホスト化合物と前記ゲスト分子とがモル比で実質的に1:1の割合で構成される。
そして、本発明の包接体において、前記ホスト化合物は、下記式[1]で表される化合物であり、前記ゲスト分子は、後述する特定の置換基で置換されてもよい、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン及びピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の分子である。
【0012】
[ホスト化合物]
本発明の包接体を構成するホスト化合物は、下記式[1]で表される化合物である。
【化3】
上記式[1]中、Aは、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至20の4価の芳香族炭化水素基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至10の芳香環2環が、単結合又はアセチレン−1,2−ジイル基で連結している炭化水素から誘導される4価の炭化水素基を表す。
【0013】
上記式[1]中、Aが表す炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至20の4価の芳香族炭化水素基における、炭素原子数6乃至20の4価の芳香族炭化水素基としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、クリセン、ピレン、ペリレン等の芳香環から4つの水素原子を取り除いた置換基が挙げられる。具体的には例えば以下に示す式(A−1)乃至式(A−14)で表される4価の基が挙げられる。なお下記式中、*はそれぞれ結合手であることを示す。
【化4】
【0014】
また、上記式[1]中、Aが表す炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6乃至10の芳香環2環が、単結合又はアセチレン−1,2−ジイル基で連結している炭化水素から誘導される4価の炭化水素基における、炭素原子数6乃至10の芳香環2環が、単
結合又はアセチレン−1,2−ジイル基で連結している炭化水素から誘導される4価の炭化水素基としては、例えば以下に示す式(A−15)乃至式(A−17)で表される4価の基が挙げられる。なお下記式中、*はそれぞれ結合手であることを示す。
【化5】
【0015】
好ましいAとしては、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、式(A−1)、式(A−2)、式(A−3)、式(A−5)、式(A−15)、式(A−16)及び式(A−17)で表される4価の基が挙げられ、より好ましくは、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、式(A−1)及び式(A−2)で表される4価の基が挙げられる。
【0016】
上記式[1]中、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいフェニレン基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいナフタレンジイル基を表す。
【0017】
好ましいAr
1及びAr
2としては、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、o−フェニレン基、1,2−ナフタレンジイル基及び2,3−ナフタレンジイル基が挙げられ、より好ましくは、o−フェニレン基が挙げられる。
【0018】
上記式[1]中、X
1及びX
2は、それぞれ独立して、−CR
1R
2−(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基又はフェニル基を表す。)、−C(=O)−、−NR
3−(式中、R
3は、水素原子又は炭素原子数1乃至6のアルキル基を表す。)、−O−、−SiR
4R
5−(式中、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基又はフェニル基を表す。)及び−SO
2−からなる群から選択される2価の基を表す。
【0019】
好ましいX
1及びX
2としては、−C(=O)−が挙げられる。
【0020】
上記式[1]中、Ar
3及びAr
4は、それぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいフェニル基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいナフチル基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいアントラセニル基を表すか、又は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいピレニル基を表す。
【0021】
好ましいAr
3及びAr
4としては、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、フェニル基及びナフチル基が挙げられ、より好ましくは、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
【0022】
上記置換基としての炭素原子数1乃至6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
上記置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0023】
[ゲスト分子]
本発明の超分子の包接体を構成するゲスト分子は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン及びピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の分子であり、これらは、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、炭素原子数1乃至6のハロアルキル基、炭素原子数1乃至6のハロアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい。
中でも前記ゲスト分子は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、炭素原子数1乃至6のハロアルキル基、炭素原子数1乃至6のハロアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、ベンゼン及びナフタレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の分子であることが好ましい。
また、前記ゲスト分子は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい、ベンゼン及びナフタレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の分子であることが好ましい。
また、前記ゲスト分子は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよいベンゼンであることが好ましい。
【0024】
上記置換基としての炭素原子数1乃至6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
上記置換基としての炭素原子数1乃至6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、4−メチルペンチルオキシ基などが挙げられる。
上記置換基としての炭素原子数1乃至6のハロアルキル基としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、ヨードメチル基、ジヨードメチル基、トリヨードメチル基、フルオロエチル基、クロロエチル基、ブロモエチル基、ヨードエチル基などが挙げられる。
上記置換基としての炭素原子数1乃至6のハロアルコキシ基としては、上記炭素原子数1乃至6のハロアルキル基として挙げた基が酸素原子を介して結合する基が挙げられる。
上記置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0025】
上記ゲスト分子の具体例としては、ベンゼン;トルエン、o−フルオロトルエン、m−フルオロトルエン、p−フルオロトルエン等のトルエン類;o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン等のキシレン類;アニソール、o−メチルアニソール、m−メチルアニソール、p−メチルアニソール、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、1,4−ジメトキシベンゼン等のアニソール類;1,3,5−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン等のトリアルキルベンゼン類;ナフタレン、1−メチル
ナフタレン、2−メチルナフタレン、1−フルオロナフタレン、2−フルオロナフタレン等のナフタレン類などが挙げられる。
好ましくは、ゲスト分子として、トルエン類(特にトルエン、p−フルオロトルエン、p−キシレン)及びナフタレン類(特にナフタレン、1−メチルナフタレン、1−フルオロナフタレン)を用いることが望ましく、特に、トルエン類(特にトルエン、p−フルオロトルエン、p−キシレン)を用いることが望ましい。
【0026】
[包接体]
上述のように、本発明の包接体は、ホスト化合物と、該ホスト化合物の構造内部に生じるキャビティに包接されるゲスト分子とから構成される包接体であり、前記ホスト化合物と前記ゲスト分子とがモル比で実質的に1:1の割合で構成される包接結晶体の構造を有するものである。
本発明の包接体は、前述したように、前記の式[1]で表される、共有結合のみで形成される通常の有機分子であるホスト化合物と前記ゲスト分子とを混合し、該混合物をゲスト分子の沸点付近まで或いは100℃程度にまで加熱後、室温(25℃)付近で冷却・静置させることにより、粉末状の結晶の形態にて得られる。ここで、加熱後の冷却方法により、得られる包接体(結晶)の大きさを適宜調整し得、例えば加熱後、超音波水浴下で急速に冷却し、そのまま室温(約25℃)にて数分間、例えば3〜10分間程度静置すると、最大径10μm程度の比較的小さい包接体(結晶)を形成できることを確認している。あるいは加熱後、室温まで徐冷することにより、最大径200μm程度の比較的大きい包接体(結晶)を形成できることを確認している。
【0027】
想定される包接結晶の形成機構の概略を
図1を用いて説明する。
図1中、ホスト化合物1(ホスト)は、Z型の形状として示されるナフタレンジイミド誘導体であり、ゲスト分子(ゲスト)は、長方形の形状として示される芳香族化合物であり、そして、これらを混合して結晶化すると、電荷移動(CT)相互作用及び包接現象のような共同的な分子間相互作用の補助により、ゲスト分子(ゲスト)がホスト化合物1(ホスト)で構成される結晶格子中に包接されて包接結晶(1・ゲスト)が形成されるものと考えられる。該包接結晶(1・ゲスト)は、電子不足なナフタレンジイミドと電子豊富な芳香族ゲスト分子との間の基底状態のCT錯体に基づくと考えられる、強いゲスト依存的な固体発光を示す。
【0028】
本発明の包接体は、共有結合のみで形成される通常の有機分子をホスト化合物として使用するため、熱安定性に優れ、また、それにより取り扱いが容易であるため、種々の異なる環境下で使用可能な固体発光材料として期待される。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
【0030】
(1)マイクロ波合成装置
装置:Anton Paar社製 Monowave 400
(2)定温乾燥器
装置:アズワン(株)製 ETTAS ONW−300S
(3)
1H NMRスペクトル
装置:BRUKER社製 AVANCE(登録商標)500
基準:テトラメチルシラン(δ0.00ppm)
(4)熱重量分析
装置:(株)日立ハイテクサイエンス製 示差熱熱重量同時測定装置 TG/DTA7300
(5)粉末X線構造解析
装置:(株)リガク製 全自動水平型多目的X線回折装置 SmartLab(登録商標)
(6)単結晶X線構造解析
装置:Bruker AXS社製 CCD搭載単結晶自動X線構造解析装置 SMART APEX
(7)拡散反射スペクトル
装置:日本分光(株)製 紫外可視近赤外分光光度計 V−670
(8)蛍光スペクトル
装置:(株)日立ハイテクサイエンス製 分光蛍光光度計 F−7000
(9)絶対発光量子収率測定
装置:浜松ホトニクス(株)製 絶対PL量子収率測定装置 C9920−03
(10)発光寿命測定
装置:浜松ホトニクス(株)製 小型蛍光寿命測定装置 Quantaurus−Tau C11367−25
【0031】
また、略記号は以下の意味を表す。
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
4FT:4−フルオロトルエン
pXy:p−キシレン
Tol:トルエン
【0032】
[製造例1]ホスト化合物1の製造
【化6】
30mL耐圧ガラスチューブに、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物1.00g(3.73mmol)、2−アミノベンゾフェノン1.50g(7.60mmol)、及びDMF14gを仕込み密封した。この混合物を、マイクロ波合成装置を用い、80℃で10分間、さらに140℃で40分間加熱した。反応溶液を室温(およそ23℃)まで冷却後、DMFで再結晶した。ろ取した結晶を、140℃のバキュームオーブンで真空下10時間乾燥させることで、ホスト化合物1 0.79gを淡黄色の粉末として得た。(収率33.8%)。
1H NMR(500MHz,CDCl
3):8.71(s,2H),7.66−7.79(m,4H),7.58−7.63(t,1H),7.47−7.52(m,2H),7.35−7.41(m,2H).
元素分析:計算値:C 76.67;H 3.54;N 4.47%.(C
40H
22N
2O
6)
実測値:C 76.84;H 3.55;N 4.48%.
【0033】
[実施例1]包接体A(1・Tol)
化合物1 50mg及びトルエン40gをサンプル管に仕込み、ホットプレートでトルエンの沸点付近まで加熱し均一溶液とした。この溶液を、20℃に設定した定温乾燥器内に4日間静置し、生じた結晶をろ取することで、包接体A(1・Tol)の結晶26mgを得た。
得られた結晶の、元素分析結果を表1に、熱重量分析結果を
図2に、粉末X線構造解析結果を
図3(e)に、拡散反射スペクトルを
図4(a)に、発光スペクトル(励起波長:370nm)を
図4(b)に、紫外光(370nm)照射下における極大発光波長及び絶対発光量子収率、並びに紫外光(365nm)照射下における平均発光寿命を表3に、それぞれ示す。
【0034】
[実施例2]包接体B(1・4FT)
化合物1 150mg及び4−フルオロトルエン120gをサンプル管に仕込み、ホットプレートで4−フルオロトルエンの沸点付近まで加熱し均一溶液とした。この溶液を、60℃に設定した定温乾燥器内に4日間静置し、生じた結晶をろ取することで、包接体B(1・4FT)の結晶84mgを得た。
得られた結晶の、元素分析結果を表1に、熱重量分析結果を
図2に、粉末X線構造解析結果を
図3(e)に、拡散反射スペクトルを
図4(a)に、発光スペクトル(励起波長:370nm)を
図4(b)に、紫外光(370nm)照射下における極大発光波長及び絶対発光量子収率、並びに紫外光(365nm)照射下における平均発光寿命を表3に、それぞれ示す。
【0035】
[実施例3]包接体C(1・pXy)
化合物1 150mg及びp−キシレン120gをサンプル管に仕込み、ホットプレートでp−キシレンの沸点付近まで加熱し均一溶液とした。この溶液を、60℃に設定した定温乾燥器内に4日間静置し、生じた結晶をろ取することで、包接体C(1・pXy)の結晶127mgを得た。
得られた結晶の、元素分析結果を表1に、熱重量分析結果を
図2に、単結晶X線構造解析結果を
図3(a)〜(d)及び表2に、粉末X線構造解析結果を
図3(e)に、拡散反射スペクトルを
図4(a)に、発光スペクトル(励起波長:370nm)を
図4(b)に、紫外光(370nm)照射下における極大発光波長及び絶対発光量子収率、並びに紫外光(365nm)照射下における平均発光寿命を表3に、それぞれ示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1及び
図2に示すように、包接体A〜Cは何れも、ホスト化合物1:ゲスト分子(Tol,4FT,pXy)=1:1のモル比で構成されていることが示唆された。また熱重量分析の結果から、ゲスト分子の脱離温度はそれぞれの沸点と比べて30〜40℃高い値であることが確認された。この結果は、包接体結晶中にゲスト分子が強く取り込まれていることを示唆するものである。また、400〜500℃における重量減少は、骨格であるホスト化合物1の構造破壊に由来するものと考えられる。
【0038】
【表2】
【0039】
表2及び
図3(a)〜(d)に示すように、包接体C(1・pXy)は、ホスト化合物1のベンゾフェノン部位の嵩高さを補償するかのようにp−キシレンが包接された結晶であることが確認された。また、ホスト化合物1のナフタレンジイミド部位とp−キシレンとの距離が約3.5Åで配列し、1次元カラム構造を形成していた。
さらに、
図3(e)に示す粉末X線構造解析より、包接体A(1・Tol)及び包接体B(1・4FT)に関しても同様の結晶構造であることが示唆された。
【0040】
図4(a)に示すように、包接体A〜Cは何れも、400〜500nmの可視光領域に強い吸収が観測された。一方でホスト化合物1は約370nmに極大吸収を持ち、400nm以上の可視光領域に強い吸収は示さない。ゲスト分子単独では可視光に吸収を持たないことから、これらの可視光領域の吸収は、電子不足なホスト化合物1と電子豊富なゲスト分子との間で形成される電荷移動吸収(CT吸収)に起因するものである。よって最も電子供与性の強い(電子豊富な)p−キシレンをゲスト分子として用いた包接体C(1・pXy)が、最も長波長の吸収を示したと考えられる。
また、
図4(b)に示すように、各包接体は紫外光照射下にて、青緑色(包接体A(1・Tol)、包接体B(1・4FT))、又は黄緑色(包接体C(1・pXy))に強く発光した。一方でホスト化合物1は殆ど発光を示さない。このことから、包接体の発光は、ホスト化合物1がゲスト分子を包接することによって生じたCT吸収からの発光であると考えられる。
【0041】
【表3】
【0042】
表3に示すように、包接体A(1・Tol)は、27.1%と有機固体発光材料としては比較的高い発光量子収率を示すことが確認された。