特許第6978237号(P6978237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6978237
(24)【登録日】2021年11月15日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】ウェーハの分割方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20211125BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20211125BHJP
【FI】
   H01L21/78 Q
   H01L21/78 V
   H01L21/78 B
   B23K26/53
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-131892(P2017-131892)
(22)【出願日】2017年7月5日
(65)【公開番号】特開2019-16663(P2019-16663A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 晃司
【審査官】 杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−059766(JP,A)
【文献】 特開2015−041695(JP,A)
【文献】 特開2005−123642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に形成された複数の分割予定ラインによって区画された各領域にデバイスが形成されたウェーハを該分割予定ラインに沿って分割するウェーハの分割方法であって、
該分割予定ラインに沿ってウェーハの裏面側からウェーハに対して透過性を有する波長のレーザ光線の集光点をウェーハの内部に位置付けて照射することにより、ウェーハの内部に改質層と該改質層からウェーハの表面及び裏面に向かうクラックを形成する改質層形成工程と、
エキスパンドテープをウェーハの裏面に貼るエキスパンドテープ貼着工程と、
該エキスパンドテープを拡張して該デバイスの間隔を広げる拡張工程と、
該拡張工程の実施後に、該エキスパンドテープと該デバイスとの接着性を高めるために該エキスパンドテープと該デバイスとを温める加熱工程と、
該ウェーハの表面側からプラズマエッチングガスを供給し、該デバイスの側面に残存する改質層を除去するプラズマエッチング工程と、
を有し、
該加熱工程では、加熱された保持テーブルにおいて該ウェーハの表面側を吸引保持し、該表面側から加熱する
ことを特徴とするウェーハの分割方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハをデバイスに分割するウェーハの分割方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光線をウェーハの内部に集光させて照射することにより、ウェーハの内部に分割予定ラインに沿った改質層を形成した後、ウェーハの裏面にエキスパンドテープを貼着し、そのエキスパンドテープを拡張してウェーハをデバイスに分割する分割方法が知られている。この場合においては、分割後のデバイスの側面に改質層が残存しているため、残存した改質層をプラズマエッチングにより除去する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−111147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、エキスパンドテープを拡張してウェーハをデバイスに分割すると、デバイスがエキスパンドテープから浮いてしまうことがある。そして、デバイスがエキスパンドテープから浮いた状態のままプラズマエッチングが実施されると、デバイスの底面及び底面側の角部がエッチングされてしまい、デバイスの品質低下を招くことになる。
【0005】
本発明は、このような問題にかんがみなされたもので、エキスパンドテープを拡張してウェーハをデバイスに分割した後のプラズマエッチングによってデバイスの底面及び底面側の角部がエッチングされないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
表面に形成された複数の分割予定ラインによって区画された各領域にデバイスが形成されたウェーハを該分割予定ラインに沿って分割するウェーハの分割方法であって、該分割予定ラインに沿ってウェーハの裏面側からウェーハに対して透過性を有する波長のレーザ光線の集光点をウェーハの内部に位置付けて照射することにより、ウェーハの内部に改質層と該改質層からウェーハの表面及び裏面に向かうクラックを形成する改質層形成工程と、エキスパンドテープをウェーハの裏面に貼るエキスパンドテープ貼着工程と、該エキスパンドテープを拡張して該デバイスの間隔を広げる拡張工程と、該拡張工程の実施後に、該エキスパンドテープと該デバイスとの接着性を高めるために該エキスパンドテープと該デバイスとを温める加熱工程と、該ウェーハの表面側からプラズマエッチングガスを供給し、該デバイスの側面に残存する改質層を除去するプラズマエッチング工程と、を有し、該加熱工程では、加熱された保持テーブルにおいて該ウェーハの表面側を吸引保持し、該表面側から加熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、ウェーハの裏面に貼られたエキスパンドテープを拡張工程で拡張してウェーハをデバイスに分割した後、加熱工程でエキスパンドテープとデバイスとを温めることにより、エキスパンドテープが柔らかくなりデバイスに倣いやすくなるので、エキスパンドテープとデバイスとの接着性を向上させることができる。したがって、プラズマエッチング工程においてデバイスの底面及び底面側の角部がエッチングされるのを防ぐことができる。
加熱された保持テーブルにウェーハを吸引保持しながら加熱工程を実施すると、エキスパンドテープとデバイスとに確実に熱を伝えることができ、エキスパンドテープとデバイスDの底面との接着性を確実に高めることができる。
ウェーハの表面側を保持テーブルに吸引保持しながら加熱工程を実施する場合において、加熱された保持テーブルを使用すると、あたたかい空気が上昇してエキスパンドテープとデバイスの底面との間に入り込みやすいため、エキスパンドテープとデバイスDの底面との接着性をより確実に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ウェーハの例を示す斜視図である。
図2】表面に保護膜が被覆されたウェーハを示す断面図である。
図3】改質層形成工程を示す断面図である。
図4】改質層形成工程実施後のウェーハを示す断面図である。
図5】エキスパンドテープ貼着工程を示す断面図である。
図6】拡張工程を示す断面図である。
図7】拡張工程実施後のウェーハを示す断面図である。
図8】加熱工程を示す断面図である。
図9】加熱工程実施後のウェーハを示す断面図である。
図10】プラズマエッチング工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示すように、加工対象のウェーハWは、その表面Wa上に交差する複数の分割予定ラインLを有し、分割予定ラインLによって区画された各領域にそれぞれデバイスDが形成されている。
【0010】
図2に示すように、ウェーハWの表面Waには保護膜Pが被覆されている。この保護膜Pは、例えば水溶性樹脂からなり、後に実施されるプラズマエッチング工程においてデバイスDを保護する役割を有している。水溶性樹脂としては、例えば株式会社ディスコが提供するHogomaxを使用することができる。この保護膜Pは、紫外線照射によって硬化した状態となっている。
【0011】
(1)改質層形成工程
図3(a)に示すように、ウェーハWの表面Wa側の保護膜Pに保護テープT1を貼着する。そして、保護テープT1側がレーザ加工装置1のチャックテーブル11に保持される。チャックテーブル11は、X軸方向及びX軸に対して平面方向に直交するY軸方向に移動可能となっている。
【0012】
レーザ加工装置1には、レーザ光線をウェーハWに対して照射する照射ヘッド12を備えている。図1に示した分割予定ラインLの一端の上方に照射ヘッド12が位置付けられ、チャックテーブル2を例えば+X方向に移動させながら、照射ヘッド12からウェーハWに対して透過性を有する波長のレーザ光線LBをウェーハWの裏面Wb側に照射する。このときのレーザ光線LBの集光点は、ウェーハWの内部に位置付けられる。図3(b)に示すように、レーザ光線LBが分割予定ラインLの一端から他端まで照射されることにより、ウェーハWの内部には分割予定ラインLに沿って改質層Rが形成される。
【0013】
チャックテーブル11をY軸方向にインデックス送りしつつ同様のレーザ光線LBの照射を同方向のすべての分割予定ラインLについて行い、さらにチャックテーブル11を90度回転させてから同様にレーザ光線LBの照射を行うことにより、すべての分割予定ラインLに沿って縦横に改質層Rが形成される。ウェーハWの内部に改質層Rが形成されると、図4に示すように、改質層Rから表面Wa及び裏面Wbに向かうクラックCa、Cbがそれぞれ形成される。なお、クラックCa、Cbは、ウェーハWの改質層Sから表面Wa及び裏面Wbに向かって延びていればよく、表面Wa及び裏面Wbに達していなくてもよい。
【0014】
なお。改質層形成工程の前には、ウェーハWの裏面Wbを研削して所定の厚さに研削する裏面研削工程が実施される。裏面研削工程では、ウェーハWの表面Waに保護テープを貼着するため、この保護テープを改質層形成工程においてもそのまま使用することができる。
【0015】
(2)エキスパンドテープ貼着工程
改質層形成工程の後、図5に示すように、ウェーハWの裏面WbにエキスパンドテープT2を貼着するとともに、表面Waから保護テープT1を剥離する。エキスパンドテープT2は、ウェーハWよりも大径に形成されている。また、エキスパンドテープT2の外周部には、リング状のフレームを貼着してもよい。
【0016】
(3)拡張工程
エキスパンドテープ貼着工程の後、図6に示すように、エキスパンドテープT2をその面方向外側に向かう方向であるA方向に放射状に拡張することにより、隣り合うデバイスD間の間隔を広げる。ウェーハWの内部には、分割予定ラインLに沿って改質層R及びクラックCa、Cbが形成されているため、エキスパンドテープT2が拡張されることにより、ウェーハWを個々のデバイスDに容易に分割することができる。また、保護膜Pは硬化しているため、デバイスDと一緒に保護膜Pも分割される。
クラックCa、CbがそれぞれウェーハWの表面Wa、裏面Wbに到達していなくても、エキスパンドテープT2が伸びることにより、エキスパンドテープT2が伸びる方向と同方向の力がクラックCa、Cbに加わるため、ウェーハWを個々のデバイスDに分割することができる。
【0017】
本工程を実施すると、図7に示すように、デバイスDの底面Dbの一部からエキスパンドテープT2が剥離し、デバイスDの底面Db及び底面Db側の角部DcがエキスパンドテープT2から浮いてしまうことがある。このままの状態で後のプラズマエッチング工程を実施すると、当該底面Db及び角部Dcがエッチングされてしまう。そこで、拡張工程の後、プラズマエッチング工程の前に、以下に示す加熱工程を実施することにより、エキスパンドテープT2とデバイスDの底面Dbとの接着状態を確実なものとする。
【0018】
(4)加熱工程
本工程では、図8に示すように、分割後のウェーハWを保持テーブル21において吸引保持する。この例では、ウェーハWの表面Wa側が吸引保持されている。保持テーブル21には、吸引保持したウェーハW及びエキスパンドテープT2を加熱するためのヒータ22が内蔵されている。
【0019】
保持テーブル21において分割されたウェーハWを表面Wa側から吸引保持した状態で、ヒータ22によってウェーハW及びエキスパンドテープT2を加熱すると、図9に示すように、拡張工程においてエキスパンドテープT2から浮いてしまったデバイスDの底面Dbに、加温によって柔らかくなったエキスパンドテープT2を倣わせて接着することができる。また、デバイスDの底面DbにエキスパンドテープT2が接着されることにより、デバイスDの角部Dcが浮いてしまった状態も解消される。
【0020】
なお、本工程において用いる保持テーブル21は、加熱工程用の専用のものであってもよいし、拡張工程において用いるエキスパンド装置に備えるものでもよい。
【0021】
本工程では、保持テーブル21においてエキスパンドテープT2側を保持して加熱してもよいが、ウェーハWの表面Wa側を保持テーブル21において保持して保持テーブル21に内蔵したヒータ22によってウェーハW及びエキスパンドテープT2を加熱すると、あたたかい空気22aが上昇してエキスパンドテープT2とデバイスDの底面Dbとの間に入り込みやすいため、エキスパンドテープT2とデバイスDの底面Dbとの接着性をより確実に高めることができる。例えば、保持テーブル21を80℃として3分間加熱すると、エキスパンドテープT2からのデバイスDの浮きが解消されることが確認された。
また、本工程では、ヒータを内蔵した保持テーブル21を用いずに、温風を上方から吹き付けるなどしてエキスパンドテープT2を加温するようにしてもよい。
【0022】
(5)プラズマエッチング工程
加熱工程の後、図10に示すように、プラズマエッチング装置のチャンバ内においてエキスパンドテープT2を保持し、保護膜P側を露出させる。そして、保護膜P側にプラズマ3を供給する。このプラズマ3は、チャンバ内に導入したエッチングガスをチャンバ内でプラズマ化させたものでもよいし、チャンバ外で発生させたプラズマをチャンバ内に導入したリモートプラズマでもよい。
【0023】
こうして保護膜P側にプラズマが供給されると、各デバイスDの上面Daには保護膜Pが被覆されており、デバイスDの底面DbにはエキスパンドテープT2が貼着されているため、デバイスDの側面Ddのみがエッチングされ、残存する改質層Rが除去される。また、加熱工程においてエキスパンドテープT2がデバイスDの底面Dbに接着されており、エキスパンドテープT2とデバイスDの底面Dbとの間にプラズマが侵入しないため、デバイスDの底面Dbや底面Db側の角部Dcがエッチングされない。
【0024】
(6)洗浄工程
プラズマエッチング工程の後、デバイスDに洗浄水をふきかける。保護膜Pが水溶性であるため、洗浄水を吹きかけることによって保護膜Pが除去される。保護膜Pが水溶性でないレジスト膜等である場合は、アッシング装置等を用いて保護膜Pを除去する。
【0025】
以上説明したように、拡張工程においてエキスパンドテープT2を拡張してウェーハWをデバイスDに分割した後、加熱工程においてエキスパンドテープT2とデバイスDとを温めることにより、エキスパンドテープT2が柔らかくなりデバイスDの庭園Dbに倣いやすくなるため、エキスパンドテープT2とデバイスDの底面Dbとの接着性が向上し、プラズマエッチング工程においてデバイスDの底面Db及び底面Db側の角部Dcがエッチングされるのを防ぐことができる。
【0026】
なお、上記実施形態では、拡張工程の前に、ウェーハWの裏面WbにエキスパンドテープT2を貼るとともに表面Waから保護テープT1を剥離したが、保護テープT1を面方向に拡張させることができるものであれば、ウェーハWをエキスパンドテープT2に貼り替えなくてもよい。
【符号の説明】
【0027】
W:ウェーハ
Wa:表面 L:分割予定ライン Wb:裏面
D:デバイス Da:上面 Db:底面 Dc:角部
R:改質層 Ca,Cb:クラック
P:保護膜 T1:保護テープ T2:エキスパンドテープ
1:レーザ加工装置 11:チャックテーブル 12:照射ヘッド
21:保持テーブル 22:ヒータ
3:プラズマ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10