(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
正極、請求項3に記載の非水電解液二次電池用多孔質層、または、請求項4に記載の非水電解液二次電池用セパレータ、および負極がこの順で配置されている、非水電解液二次電池用部材。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に関して以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態に関しても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0012】
[実施形態1:水系塗料、非水電解液二次電池用多孔質層]
<水系塗料>
本発明の実施形態1に係る水系塗料は、アラミドフィラー、及びバインダ樹脂を含むことを特徴としている。本実施形態に係る水系塗料は、塗工工程を含む物品の製造に使用され得るが、特に、非水電解液二次電池の製造、好ましくは、非水電解液二次電池用積層セパレータにおける非水電解液二次電池用多孔質層(以下、単に「多孔質層」とも称する)の製造に使用される。以下では、本実施形態に係る水系塗料が、非水電解液二次電池用積層セパレータにおける多孔質層の製造に使用される場合について、説明する。
【0013】
本実施形態に係る水系塗料に含まれるバインダ樹脂は、電池の電解液に不溶であり、また、その電池の使用範囲において電気化学的に安定であることが好ましい。前記樹脂としては、具体的には、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリクロロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フッ化ビニル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、及びエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等の含フッ素樹脂;前記含フッ素樹脂の中でもガラス転移温度が23℃以下である含フッ素ゴム;スチレン−ブタジエン共重合体およびその水素化物、メタクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリ酢酸ビニル等のゴム類;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸等の水溶性ポリマー等が挙げられる。
【0014】
本実施形態に係る水系塗料に含まれるバインダ樹脂としては、非水溶性ポリマーをも好適に用いることができる。言い換えると、例えば本実施形態に係る多孔質層を製造する際に、非水溶性ポリマー(例えば、アクリレート系樹脂)を水系溶媒に分散させたエマルジョンを使用して、前記バインダ樹脂として前記非水溶性ポリマーを含む、本実施形態に係る多孔質層を製造することも好ましい。
【0015】
ここで、非水溶性ポリマーとは、水系溶媒には溶解せず、粒状の液体または固体の状態で水系溶媒に分散することができるポリマーである。特に本明細書における「非水溶性ポリマー」とは、25℃において、当該ポリマー0.5gを水100gと混合した際に、不溶分が90重量%以上となるポリマーのことをいう。一方、「水溶性ポリマー」とは、25℃において、当該ポリマー0.5gを水100gと混合した際に、不溶分が0.5重量%未満となるポリマーのことをいう。前記非水溶性ポリマーの粒子の形状は特に限定されるものではないが、球状であることが望ましい。
【0016】
非水溶性ポリマーは、例えば、後述する単量体を含む単量体組成物を水系溶媒中で重合し、重合物の粒子とすることにより製造される。
【0017】
前記非水溶性ポリマーの単量体としては、スチレン、ビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。有機フィラー間の接着性の観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリレート系単量体の単独重合体、若しくは、2種類以上の単量体の共重合体であることが好ましい。
【0018】
これらの中でも、バインダ樹脂は、接着性の観点から、アクリレート系樹脂のエマルジョンであることが好ましい。
【0019】
水系溶媒は、水を含み、前記非水溶性ポリマー粒子の分散が可能なものであれば格別限定されない。
【0020】
水系溶媒は、水へ任意の割合で溶解し得るメタノール、エタノール、イソプロビルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、N−メチルピロリドンなどの有機溶媒を含んでもよい。また、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩などの分散剤等を含んでもよい。前記溶媒や界面活性剤等の添加剤を用いる場合には、単独又は2種以上を混合して用いることができ、有機溶媒の水に対する重量比率は0.1重量%以上から50重量%未満であり、好ましくは0.1〜45重量%であり、さらに好ましくは0.1〜40重量%である。
【0021】
なお、本実施形態に係る水系塗料に含まれるバインダ樹脂は、1種類でもよく、2種類以上の樹脂の混合物でもよい。
【0022】
また、ガラス転移温度が23℃以下である含フッ素ゴムとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリクロロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フッ化ビニル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、又はエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等の含フッ素樹脂を含む含フッ素ゴムが挙げられる。
【0023】
前記水溶性ポリマーは、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウムがさらに好ましく、セルロースエーテルが特に好ましい。
【0024】
セルロースエーテルとしては、具体的には、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、シアンエチルセルロース、オキシエチルセルロース等が挙げられ、長時間にわたる使用における劣化が少なく、化学的な安定性に優れているCMCおよびHECがより好ましく、CMCが特に好ましい。
【0025】
本実施形態に係る水系塗料に含まれるアラミドフィラー(「アラミド粒子」ともいう)は、本実施形態に係る多孔質層の製造に用いる場合、多孔質層の有機フィラーとなる成分である。アラミドフィラーを構成する樹脂は、全芳香族ポリアミド(アラミド樹脂)である。全芳香族ポリアミドとしては、例えば、パラアラミド、メタアラミドが挙げられるが、パラアラミドであることがより好ましい。また、アラミドフィラーを構成する樹脂は、1種類の重合体であってもよく、2種類以上の重合体の混合物であってもよい。
【0026】
アラミドフィラーの平均粒子径(D50(体積基準))は、0.01μm〜20μmである。アラミドフィラーの平均粒子径(D50(体積基準))が0.01μmよりも小さいと、アラミドフィラーが多孔質フィルムの孔を埋めてしまい、電池のイオン透過性が低下する虞がある。一方、アラミドフィラーの平均粒子径(D50(体積基準))が20μmよりも大きいと、アラミドフィラーが多孔質フィルム内に偏在し、その結果、多孔質フィルムの耐熱性が低下する虞がある。アラミドフィラーの平均粒子径(D50(体積基準))は、株式会社島津製作所製のレーザ回折式粒度分布測定装置(SALD―2200)を用いて測定することが可能である。
【0027】
アラミドフィラーの形状は、任意であり、特に限定されない。アラミドフィラーフィラーの形状は、粒子状であり得、例えば、球形状;楕円形状;板状;棒状;不定形状;ピーナッツ状またはテトラポット状のように球状や柱状の粒子が結合した形状;およびこれらの形状の一次粒子が凝集した二次粒子の何れでもよい。電池の短絡防止の観点から、アラミドフィラーは、不定形状、および、凝集していない一次粒子であることが好ましく、イオン透過の観点からは、最密充填され難く、粒子間に空隙が形成され易い、瘤、へこみ、くびれ、隆起もしくは膨らみを有する、樹枝状、珊瑚状、もしくは房(ふさ)状などの不定形状;ピーナッツ状またはテトラポット状のように粒子が結合した形状;が好ましい。
【0028】
アラミドフィラーのアスペクト比は、特に限定されないが、1〜100が好ましい。アラミドフィラーのアスペクト比が100を超えると、アラミドフィラー同士の間の空隙が小さくなり、多孔質フィルムの透気度が上昇する虞がある。アラミドフィラーのアスペクト比は、例えば、以下の方法によって算出することができる。まず、アラミドフィラーを含む溶液をガラス板上で乾燥させ、日本電子製 電界放出形走査電子顕微鏡JSM−7600Fを用い、加速電圧0.5kVでSEM表面観察(反射電子像)を行い、10000倍の電子顕微鏡写真(SEM画像)または粒径の平均が50ピクセルとなるSEM画像を得る。次いで、得られたSEM画像をコンピュータに取り込み、アメリカ国立衛生研究所(NIH:National Institues of Health)が発行する画像解析のフリーソフトIMAGEJを用いて、アラミドフィラーが検出できる輝度で分離し、検出されたアラミドフィラー内が全てアラミドフィラー面積として検出できるように、アラミドフィラー内にある輝度の穴を埋める。検出された全てのアラミドの各々の長軸径および短軸径を計測する。具体的には、アラミドフィラー1個ずつを楕円形に近似させ、長軸径と短軸径とを算出し、長軸径を短軸径で除した値を、フィラー1個当たりのアスペクト比とし、これらのアスペクト比の平均値を、アラミドフィラーのアスペクト比とすればよい。
【0029】
本実施形態に係る水系塗料におけるバインダ樹脂の含有量の下限値は、水系塗料に含まれる全固形分の重量に対して、1重量%以上であることが好ましく、2重量%以上であることがより好ましい。一方、本実施形態に係る水系塗料におけるバインダ樹脂の含有量の上限値は、水系塗料に含まれる全固形分の重量に対して30重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。前記バインダ樹脂の含有量が1重量%以上であることは、アラミドフィラー間の密着性を向上させる観点、すなわち本実施形態の水系塗料から得られる前記多孔質層からのアラミドフィラーの脱落防止の観点から好ましく、前記バインダ樹脂の含有量が30重量%以下であることは、本実施形態の水系塗料から得られる前記多孔質層のイオン透過性および耐熱性の観点から好ましい。
【0030】
本実施形態に係る水系塗料におけるアラミドフィラーの含有量の下限値は、前記アラミドフィラーと、バインダ樹脂との総重量に対して、50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましい。一方、本実施形態に係る水系塗料におけるアラミドフィラーの含有量の上限値は、前記アラミドフィラーと、バインダ樹脂との総重量に対して、99重量%以下であることが好ましく、98重量%以下であることがより好ましい。前記アラミドフィラーの含有量が、50重量%以上であることが本実施形態の水系塗料から得られる多孔質層の耐熱性の観点から好ましく、前記有機フィラーの含有量が、99重量%以下であることがアラミドフィラー間の密着性の観点から好ましい。
【0031】
また、本実施形態に係る水系塗料は、アラミドフィラー以外のフィラーを含んでもよい。
【0032】
上記アラミドフィラー以外のフィラーは、有機粉末、無機粉末、または、これらの混合物であってもよい。
【0033】
有機粉末としては、例えば、スチレン、ビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチル等の単独あるいは2種類以上の共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、4フッ化エチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド等のフッ素系樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;ポリオレフィン;ポリメタクリレート等の有機物からなる粉末が挙げられる。該有機粉末は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いることもできる。これらの有機粉末の中でも、化学的安定性の点で、ポリテトラフルオロエチレン粉末が好ましい。
【0034】
無機粉末としては、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、炭酸塩、硫酸塩等の無機物からなる粉末が挙げられ、具体的に例示すると、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、または炭酸カルシウム等からなる粉末が挙げられる。該無機粉末は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いることもできる。これらの無機粉末の中でも、化学的安定性の点で、アルミナ粉末が好ましい。
【0035】
また、本実施形態に係る水系塗料は、上述のフィラーおよびバインダ樹脂、以外のその他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分としては、例えば、界面活性剤やワックス、などを挙げることができる。また、前記その他の成分の含有量は、水系塗料に含まれる全固形分の重量に対して、0重量%〜50重量%であることが好ましい。
【0036】
<多孔質層>
本実施形態に係る多孔質層は、本実施形態に係る水系塗料から得られる。それゆえ、本実施形態に係る多孔質層は、アラミドフィラー、上述のバインダ樹脂、および、その他の水系塗料に含まれる固形分を含む。
【0037】
本実施形態に係る多孔質層における平均膜厚は、電極との接着性および高エネルギー密度を確保する観点から、0.5μm〜10μmの範囲であることが好ましく、1μm〜5μmの範囲であることがより好ましい。
【0038】
本実施形態に係る多孔質層は、イオン透過性の観点から十分に多孔化された構造であることが好ましい。具体的には、空孔率が30%〜60%の範囲であることが好ましい。また、本発明に係る多孔質層は、平均孔径が20nm〜100nmの範囲であることが好ましい。
【0039】
<多孔質層の製造方法>
本実施形態に係る多孔質層の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、本実施形態に係る水系塗料を基材上に塗工し、前記水系塗料中の溶媒(分散媒)を乾燥除去する方法が挙げられる。前記基材は、特に限定されないが、例えば、後述する多孔質フィルム、および電極シートなどを挙げることができる。
【0040】
多孔質層の塗工量(目付)は、電極(電極シート)との接着性およびイオン透過性の観点から、通常、固形分で0.5〜20g/m
2であることが好ましく、0.5〜10g/m
2であることがより好ましく、0.5g/m
2〜7g/m
2の範囲であることが好ましい。すなわち、得られる多孔質層の塗工量(目付)が上述の範囲となるように、前記基材上に塗布する前記水系塗料の量を調節することが好ましい。
【0041】
[実施形態2:非水電解液二次電池用セパレータ]
本発明の実施形態2に係る非水電解液二次電池用セパレータは、ポリオレフィン多孔質フィルムの片面または両面に、本発明の実施形態1に係る非水電解液二次電池用多孔質層を積層している。なお、以下において、本発明の実施形態2に係る非水電解液二次電池用セパレータは、「非水電解液二次電池用積層セパレータ」とも称する。
【0042】
<多孔質フィルム>
本発明の一実施形態における多孔質フィルムは、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータの基材となり得、ポリオレフィン系樹脂を主成分とし、その内部に連結した細孔を多数有しており、一方の面から他方の面に気体や液体を通過させることが可能となっている。前記多孔質フィルムは、1つの層から形成されるものであってもよいし、複数の層が積層されて形成されるものであってもよい。
【0043】
「ポリオレフィン系樹脂を主成分とする」とは、前記多孔質フィルムに占めるポリオレフィン系樹脂の割合が、前記多孔質フィルム全体の50体積%以上、好ましくは90体積%以上であり、より好ましくは95体積%以上であることを意味する。また、前記ポリオレフィン系樹脂には、重量平均分子量が3×10
5〜15×10
6の高分子量成分が含まれていることがより好ましい。特に、ポリオレフィンに重量平均分子量が100万以上の高分子量成分が含まれていると、当該多孔質フィルムの片面または両面に、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用多孔質層を積層してなる積層体である本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータの強度が向上するのでより好ましい。
【0044】
前記多孔質フィルムの主成分であるポリオレフィン系樹脂は、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂である、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン等の単量体が(共)重合されてなる単独重合体(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン)または共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体)が挙げられる。このうち、過大電流が流れることをより低温で阻止(シャットダウン)することができるため、ポリエチレンがより好ましい。当該ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン(エチレン−α−オレフィン共重合体)、重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレン等が挙げられ、このうち、重量平均分子量が30万から100万の高分子量のポリエチレンまたは重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレンがさらに好ましい。また、前記ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、重量平均分子量が100万以上のポリオレフィンと、重量平均分子量が1万未満の低分子量ポリオレフィンとの混合物からなるポリオレフィン系樹脂を挙げることができる。
【0045】
前記多孔質フィルムの膜厚は、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータである積層体の膜厚を考慮して適宜決定すればよいものの、4〜40μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。
【0046】
前記多孔質フィルムの膜厚が4μm以上であることが、当該多孔質フィルムを用いた非水電解液二次電池用積層セパレータを備える非水電解液二次電池において、非水電解液二次電池の破損等による内部短絡を充分に防止することができる面において好ましい。一方、前記多孔質フィルムの膜厚が40μm以下であることが、当該多孔質フィルムを用いた非水電解液二次電池用積層セパレータ全域におけるリチウムイオンの透過抵抗の増加を抑制し、当該非水電解液二次電池用積層セパレータを備える非水電解液二次電池において、充放電サイクルを繰り返すことによる正極の劣化、レート特性やサイクル特性の低下を防ぐことができ、また、正極および負極間の距離の増加に伴う当該非水電解液二次電池自体の大型化を防ぐことができる面において好ましい。
【0047】
前記多孔質フィルムの単位面積当たりの目付は、当該多孔質フィルムを備える非水電解液二次電池用積層セパレータの強度、膜厚、質量、およびハンドリング性を考慮して適宜決定すればよい。具体的には、前記非水電解液二次電池用積層セパレータを備える当該電池の、重量エネルギー密度や体積エネルギー密度を高くすることができるように、通常、4〜20g/m
2であることが好ましく、5〜12g/m
2であることがより好ましい。
【0048】
前記多孔質フィルムの透気度は、ガーレ値で30〜500sec/100mLであることが好ましく、50〜300sec/100mLであることがより好ましい。
【0049】
前記多孔質フィルムの空隙率は、電解液の保持量を高めると共に、過大電流が流れることをより低温で確実に阻止(シャットダウン)する機能を得ることができるように、20体積%〜80体積%であることが好ましく、30〜75体積%であることがより好ましい。前記多孔質フィルムの空隙率が20体積%以上であることが、当該多孔質フィルムの抵抗を抑えることができる面において好ましい。また、前記多孔質フィルムの空隙率が80体積%以下であることが、当該多孔質フィルムの機械的強度の面において好ましい。
【0050】
前記多孔質フィルムが有する細孔の孔径は、当該多孔質フィルムを備える非水電解液二次電池用積層セパレータが、充分なイオン透過性を得ることができ、かつ、正極や負極への粒子の入り込みを防止することができるように、0.3μm以下であることが好ましく、0.14μm以下であることがより好ましい。
【0051】
非水電解液二次電池用積層セパレータは、必要に応じて、前記多孔質フィルムおよび本発明の実施形態1に係る多孔質層の他に、別の多孔質層を含んでいてもよい。当該別の多孔質層としては、耐熱層や接着層、保護層等の公知の多孔質層が挙げられる。具体的な別の多孔質層としては、本発明の実施形態1に係る多孔質層と同じ組成の多孔質層が挙げられる。
【0052】
[多孔質フィルムの製造方法]
前記多孔質フィルムの製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、ポリオレフィン等の樹脂に孔形成剤を加えてフィルム(膜状)に成形した後、孔形成剤を適当な溶媒で除去する方法が挙げられる。
【0053】
具体的には、例えば、超高分子量ポリエチレンと、重量平均分子量が1万以下の低分子量ポリオレフィンとを含むポリオレフィン樹脂を用いて前記多孔質フィルムを製造する場合には、製造コストの観点から、以下に示す方法によって当該多孔質フィルムを製造することが好ましい。
(1)超高分子量ポリエチレン100質量部と、重量平均分子量が1万以下の低分子量ポリオレフィン5〜200質量部と、孔形成剤100〜400質量部とを混練してポリオレフィン樹脂組成物を得る工程、
(2)前記ポリオレフィン樹脂組成物を圧延することにより、圧延シートを成形する工程、
次いで、
(3)工程(2)で得られた圧延シートから孔形成剤を除去する工程、
(4)工程(3)で孔形成剤を除去したシートを延伸する工程、
(5)工程(4)にて延伸されたシートに対して、100℃以上、150℃以下の熱固定温度にて熱固定を行い、多孔質フィルムを得る工程。
或いは、
(3’)工程(2)で得られた圧延シートを延伸する工程、
(4’)工程(3’)にて延伸されたシートから孔形成剤を除去する工程、
(5’)工程(4’)にて得られたシートに対して、100℃以上、150℃以下の熱固定温度にて熱固定を行い、多孔質フィルムを得る工程。
【0054】
前記孔形成剤としては、無機充填剤および可塑剤等が挙げられる。
【0055】
前記無機充填剤としては、特に限定されるものではなく、無機フィラー等が挙げられる。前記可塑剤としては、特に限定されるものではなく、流動パラフィン等の低分子量の炭化水素が挙げられる。
【0056】
<非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法>
本発明に係る非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法としては、例えば、上述の「多孔質層の製造方法」において、前記水系塗料を塗布する基材として、上述の多孔質フィルムを使用する方法を挙げることができる。
【0057】
[実施形態3:非水電解液二次電池用部材、実施形態4:非水電解液二次電池]
本発明の実施形態3に係る非水電解液二次電池用部材は、正極、本発明の実施形態1に係る多孔質層、または、本発明の実施形態2に係る非水電解液二次電池用積層セパレータ、および負極がこの順で配置されてなることを特徴とする。
【0058】
本発明の実施形態4に係る非水電解液二次電池は、本発明の実施形態1に係る多孔質層、または、本発明の実施形態2に係る非水電解液二次電池用積層セパレータを含むことを特徴とする。
【0059】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池は、例えば、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池であって、正極と、本発明に係る多孔質層と、多孔質フィルムと、負極とがこの順で積層されてなる非水電解液二次電池部材、すなわち、正極と、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータと、負極とがこの順で積層されてなる非水電解液二次電池部材を備えるリチウムイオン二次電池である。なお、多孔質層以外の非水電解液二次電池の構成要素は、下記説明の構成要素に限定されるものではない。
【0060】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池は、通常、負極と正極とが、本発明の一実施形態に係る多孔質層または本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータを介して対向した構造体に電解液が含浸された電池要素が、外装材内に封入された構造を有する。本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池は、非水電解質二次電池、特にはリチウムイオン二次電池であることが好ましい。なお、ドープとは、吸蔵、担持、吸着、または挿入を意味し、正極等の電極の活物質にリチウムイオンが入る現象を意味する。
【0061】
本発明の一実施形態に係るに係る非水電解液二次電池部材は、本発明の一実施形態に係る多孔質層を備えていることから、非水電解液二次電池に組み込まれた際に、イオン透過性に優れた非水電解液二次電池を実現できるという効果を奏する。本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池は、本発明の一実施形態に係る多孔質層を備えていることから、イオン透過性に優れるという効果を奏する。
【0062】
<正極>
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池部材および非水電解液二次電池における正極としては、一般に非水電解液二次電池の正極として使用されるものであれば、特に限定されないが、例えば、正極活物質およびバインダ樹脂を含む活物質層が集電体上に成形された構造を備える正極シートを使用することができる。なお、前記活物質層は、更に導電剤を含んでもよい。
【0063】
前記正極活物質としては、例えば、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料が挙げられる。当該材料としては、具体的には、例えば、V、Mn、Fe、Co、Ni等の遷移金属を少なくとも1種類含んでいるリチウム複合酸化物が挙げられる。前記リチウム複合酸化物のうち、平均放電電位が高いことから、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム等のα−NaFeO
2型構造を有するリチウム複合酸化物、リチウムマンガンスピネル等のスピネル型構造を有するリチウム複合酸化物がより好ましい。当該リチウム複合酸化物は、種々の金属元素を含んでいてもよく、複合ニッケル酸リチウムがさらに好ましい。
【0064】
さらに、Ti、Zr、Ce、Y、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Ag、Mg、Al、Ga、InおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素のモル数とニッケル酸リチウム中のNiのモル数との和に対して、前記少なくとも1種の金属元素の割合が0.1〜20モル%となるように当該金属元素を含む複合ニッケル酸リチウムを用いると、高容量での使用におけるサイクル特性に優れるのでさらにより好ましい。中でもAlまたはMnを含み、かつ、Ni比率が85%以上、さらに好ましくは90%以上である活物質が、当該活物質を含む正極を備える非水電解液二次電池の高容量での使用におけるサイクル特性に優れることから、特に好ましい。
【0065】
前記導電剤としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維、有機高分子化合物焼成体等の炭素質材料等が挙げられる。前記導電材は、1種類のみを用いてもよく、例えば人造黒鉛とカーボンブラックとを混合して用いる等、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
前記結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデン−トリクロロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデン−フッ化ビニルの共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレンの共重合体、熱可塑性ポリイミド、ポリエチレン、およびポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、アクリル樹脂、並びに、スチレンブタジエンゴムが挙げられる。尚、結着剤は、増粘剤としての機能も有している。
【0067】
正極合剤を得る方法としては、例えば、正極活物質、導電材および結着剤を正極集電体上で加圧して正極合剤を得る方法;適当な有機溶剤を用いて正極活物質、導電材および結着剤をペースト状にして正極合剤を得る方法;等が挙げられる。
【0068】
前記正極集電体としては、例えば、Al、Ni、ステンレス等の導電体が挙げられ、薄膜に加工し易く、安価であることから、Alがより好ましい。
【0069】
シート状の正極の製造方法、即ち、正極集電体に正極合剤を担持させる方法としては、例えば、正極合剤となる正極活物質、導電材および結着剤を正極集電体上で加圧成型する方法;適当な有機溶剤を用いて正極活物質、導電材および結着剤をペースト状にして正極合剤を得た後、当該正極合剤を正極集電体に塗工し、乾燥して得られたシート状の正極合剤を加圧して正極集電体に固着する方法;等が挙げられる。
【0070】
<負極>
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池部材および非水電解液二次電池における負極としては、一般に非水電解液二次電池の負極として使用されるものであれば、特に限定されないが、例えば、負極活物質およびバインダ樹脂を含む活物質層が集電体上に成形された構造を備える負極シートを使用することができる。なお、前記活物質層は、更に導電剤を含んでもよい。
【0071】
前記負極活物質としては、例えば、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料、リチウム金属またはリチウム合金等が挙げられる。当該材料としては、具体的には、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維、有機高分子化合物焼成体等の炭素質材料;正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープ・脱ドープを行う酸化物、硫化物等のカルコゲン化合物;アルカリ金属と合金化するアルミニウム(Al)、鉛(Pb)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、シリコン(Si)などの金属、アルカリ金属を格子間に挿入可能な立方晶系の金属間化合物(AlSb、Mg
2Si、NiSi
2)、リチウム窒素化合物(Li
3-xM
xN(M:遷移金属))等が挙げられる。前記負極活物質のうち、電位平坦性が高く、また平均放電電位が低いために正極と組み合わせた場合に大きなエネルギー密度が得られることから、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛材料を主成分とする炭素質材料がより好ましい。また、黒鉛とシリコンの混合物であってもよく、その黒鉛を構成する炭素(C)に対するSiの比率が5%以上である負極活物質が好ましく、10%以上である負極活物質がより好ましい。
【0072】
負極合剤を得る方法としては、例えば、負極活物質を負極集電体上で加圧して負極合剤を得る方法;適当な有機溶剤を用いて負極活物質をペースト状にして負極合剤を得る方法;等が挙げられる。
【0073】
前記負極集電体としては、例えば、Cu、Ni、ステンレス等が挙げられ、特にリチウムイオン二次電池においてはリチウムと合金を作り難く、かつ薄膜に加工し易いことから、Cuがより好ましい。
【0074】
シート状の負極の製造方法、即ち、負極集電体に負極合剤を担持させる方法としては、例えば、負極合剤となる負極活物質を負極集電体上で加圧成型する方法;適当な有機溶剤を用いて負極活物質をペースト状にして負極合剤を得た後、当該負極合剤を負極集電体に塗工し、乾燥して得られたシート状の負極合剤を加圧して負極集電体に固着する方法;等が挙げられる。前記ペーストには、好ましくは前記導電剤、および、前記結着剤が含まれる。
【0075】
<非水電解液>
本発明に係る非水電解液二次電池における非水電解液は、一般に非水電解液二次電池に使用される非水電解液であり、特に限定されないが、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解してなる非水電解液を用いることができる。リチウム塩としては、例えば、LiClO
4、LiPF
6、LiAsF
6、LiSbF
6、LiBF
4、LiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiC(CF
3SO
2)
3、Li
2B
10Cl
10、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩、LiAlCl
4等が挙げられる。前記リチウム塩は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。前記リチウム塩のうち、LiPF
6、LiAsF
6、LiSbF
6、LiBF
4、LiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、およびLiC(CF
3SO
2)
3からなる群から選択される少なくとも1種のフッ素含有リチウム塩がより好ましい。
【0076】
本発明における非水電解液を構成する有機溶媒としては、具体的には、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタン等のカーボネート類;1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;3−メチル−2−オキサゾリドン等のカーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−プロパンサルトン等の含硫黄化合物;並びに、前記有機溶媒にフッ素基が導入されてなる含フッ素有機溶媒;等が挙げられる。前記有機溶媒は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。前記有機溶媒のうち、カーボネート類がより好ましく、環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒、または、環状カーボネートとエーテル類との混合溶媒がさらに好ましい。環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒としては、作動温度範囲が広く、かつ、負極活物質として天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛材料を用いた場合においても難分解性を示すことから、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートを含む混合溶媒がさらに好ましい。
【0077】
<非水電解液二次電池用部材および非水電解液二次電池の製造方法>
本発明に係る非水電解液二次電池用部材の製造方法としては、例えば、前記正極、本発明の一実施形態に係る多孔質層または本発明に係る非水電解液二次電池用積層セパレータ、および負極をこの順で配置する方法が挙げられる。
【0078】
また、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池の製造方法としては、例えば、前記方法にて非水電解液二次電池用部材を形成した後、非水電解液二次電池の筐体となる容器に当該非水電解液二次電池用部材を入れ、次いで、当該容器内を非水電解液で満たした後、減圧しつつ密閉することにより、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池を製造することができる。
【0079】
非水電解液二次電池の形状は、特に限定されるものではなく、薄板(ペーパー)型、円盤型、円筒型、直方体等の角柱型等のどのような形状であってもよい。尚、非水電解液二次電池用部材および非水電解液二次電池の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の製造方法を採用することができる。
【0080】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0082】
[物性等の測定方法]
(1)平均粒子径(D50(体積基準))(単位:μm)
スクリュー管内にて、少量のアラミドフィラーとヘキサメタリン酸ナトリウム0.2%水溶液とを混合し、超音波を2分当てることによって分散液を作製した。
【0083】
レーザ回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製のSALD―2200)の測定用石英セル内に前記ヘキサメタリン酸ナトリウム0.2%水溶液を入れ、撹拌を行いながらベース測定を実施後、前記分散液をピペットにより前記セル内に添加し、アラミドフィラーの体積基準の粒度分布D50(体積粒度分布におけるD50)を測定した。
【0084】
(2)ガーレ法による透気度(秒/100cc)
積層多孔質フィルムの透気度は、JIS P 8117に基づいて、株式会社安田精機製作所製のデジタルタイマー式ガーレ式デンソメータで測定した。
【0085】
[実施例1]
[アラミドフィラーを含む水系塗料(塗工液)の製造例]
<アラミド重合液の調製>
攪拌翼、温度計、窒素流入管及び粉体添加口を有する、500ミリリットルのセパラブルフラスコを使用して、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の製造を行った。
【0086】
セパラブルフラスコを充分乾燥し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)440gを仕込み、200℃にて2時間真空乾燥した塩化カルシウム粉末30.2gを添加し、100℃に昇温して完全に溶解させた。その後、当該フラスコ内の温度を室温に戻して、パラフェニレンジアミン13.2gを添加し、パラフェニレンジアミンを完全に溶解させ、溶液を得た。この溶液を20℃±2℃に保ったまま、当該溶液に対して、テレフタル酸ジクロライド23.47gを4分割して約10分間おきに添加した。その後、得られた溶液を150rpmで攪拌しながら20℃±2℃に保ったまま当該溶液を1時間熟成させることによって、アラミド重合液を得た。
【0087】
<アラミドフィラーを含む溶液の作製>
得られたアラミド重合液を、40℃で1時間、300rpmで攪拌し、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)を析出させることで、アラミドフィラーを含む溶液を得た。
【0088】
<水系塗料の調製>
得られたアラミドフィラーを含む溶液をろ過し、乾燥させることによって、アラミドフィラーを取り出した。取り出されたアラミドフィラーの平均粒子径(D50(体積基準))を上記の方法で測定した。取り出されたアラミドフィラー100質量部と、カルボキシメチルセルロース(ダイセルファインケム製、品番1110)3質量部と、水とを水中の固形分濃度が29重量%となるように混合した。得られた混合物を、自転・公転ミキサー「あわとり練太郎」(株式会社シンキー製;登録商標)により、室温下、2000rpm、30秒の条件で2回攪拌・混合した。さらに、撹拌された混合物に対して、イソプロピルアルコール14質量部を加え、固形分濃度が28重量%のスラリーとして水性塗料(1)を得た。
【0089】
[実施例2]
実施例1で得られた水性塗料(1)を、コロナ処理20W/(m
2/分)を施したポリエチレンからなる多孔質フィルム(厚さ12μm、空隙率41%)上に、ドクターブレード法により塗布した。得られた塗布物である積層体を65℃で5分間乾燥させて、水性塗料から形成された多孔質層と、ポリエチレンからなる多孔質フィルムと、が積層された積層多孔質フィルム(1)を得た。積層多孔質フィルム(1)における多孔質膜の目付は3.7g/m
2であった。積層多孔質フィルム(1)の物性を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
表1の記載から、本発明の一実施形態に係る水系塗料を用いて製造した積層多孔質フィルム(1)は、優れた透気度を示すことが分かった。