(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
石炭は世界の広い地域に存在し、可採埋蔵量が多く、価格が安定しているため、供給安定性が高く発熱量あたりの価格が低廉である。石炭からガス化ガス(石炭ガス化ガス)を得て、石炭ガス化ガスを燃料として用いることで発電を行う石炭ガス化発電設備が実用化されてきている。
【0003】
石炭ガス化発電設備としては、石炭ガス化ガスを燃焼器で燃焼させてガスタービンを駆動して電力を得ると共に、ガスタービンの排気熱を回収して蒸気を発生させ、発生した蒸気により蒸気タービンを駆動して電力を得る石炭ガス化発電設備(IGCC)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、石炭ガス化発電設備として、石炭ガス化ガスを燃料電池の燃料として用い、燃料電池で発電を行うと共に、燃料電池の排気ガスでガスタービンを駆動して電力を得ると共に、ガスタービンの排気熱を回収して蒸気を発生させ、発生した蒸気により蒸気タービンを駆動して電力を得る石炭ガス化発電設備(IGFC)が知られている。
【0005】
一方、化石燃料を使用しない再生可能エネルギーを用いた再生可能エネルギー発電設備が導入されつつある。再生可能エネルギー発電設備は、石炭ガス化発電設備等の発電設備と同時に用いて電力需要に追従させている。このため、再生可能エネルギー発電設備の出力が増加した場合、石炭ガス化ガスの生成量を調整することで石炭ガス化発電設備等の出力を調整して電力需要に対応している。即ち、出力の変動の要求があった場合、石炭ガス化発電設備等の負荷変動運転を実施したり、最低負荷を低減する運転を実施したりしている。
【0006】
このような状況から、再生可能エネルギー発電設備の出力の増減により(出力の変動の要求により)、石炭ガス化発電設備等での発電量を変動させる必要があり、石炭ガス化発電設備の稼働率(石炭ガス化ガスの生成量、即ち、石炭の処理量)が安定していないのが現状であった。このため、再生可能エネルギー発電設備の出力が増減しても、即ち、出力の変動の要求があっても、石炭ガス化発電設備の稼働率を維持する(例えば、石炭の処理量を維持して安定させる)ことが望まれているのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、出力の変動の要求があった場合でも、設備の稼働率を維持することができる石炭ガス化発電設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の石炭ガス化発電設備は、石炭をガス化して石炭ガス化ガスを得る石炭ガス化ガス製造手段と、前記石炭ガス化ガス製造手段で得られた前記石炭ガス化ガスが送られて高温・高圧ガスを得る膨張ガス生成手段(燃焼器、燃料電池)と、前記膨張ガス生成手段で得られた前記高温・高圧ガスを膨張させて発電動力を得る膨張タービンと、電力供給の状況に基づいて、前記膨張ガス生成手段に送る前記石炭ガス化ガスの一部を分離することで、前記膨張ガス生成手段に送る前記石炭ガス化ガスの量を調節し、前記石炭ガス化ガス製造手段の稼働率を維持するガス化ガス量調節手段とを備え、
前記ガス化ガス量調節手段は、前記電力供給の状況を判断する制御手段と、前記制御手段の判断に基づいて、前記膨張ガス生成手段に送る前記石炭ガス化ガスの一部を分離して系外の設備に供給することで、前記膨張ガス生成手段に送る前記石炭ガス化ガスの量を調節する分離供給手段とを有し、前記分離供給手段で分離された前記石炭ガス化ガスが供給される系外の設備は、天然ガスパイプラインであり、前記天然ガスパイプラインの組成情報を検出する組成検出手段と、前記ガス化ガス量調節手段、及び、前記天然ガスパイプラインの間に備えられ、分離された前記石炭ガス化ガスの一部を貯留する貯槽と、前記貯槽、及び、前記天然ガスパイプラインの間に備えられ、前記貯槽に貯留された前記石炭ガス化ガスの前記天然ガスパイプラインへの投入が調整される組成調整弁と、前記組成検出手段の検出情報に基づいて前記組成調整弁の開閉を制御し、前記天然ガスパイプラインの天然ガスの組成が所望状態に維持されるようにする組成制御手段とを有していることを特徴とする。
そして、請求項2に係る本発明の石炭ガス化発電設備は、請求項1に記載の石炭ガス化発電設備において、前記天然ガスパイプラインの天然ガスの需要地は、天然ガスを燃料として発電を行う発電需要設備であることを特徴とする。
【0010】
請求項1に係る本発明では、石炭ガス化ガス製造手段で得られた石炭ガス化ガスが膨張
ガス生成手段(例えば、燃焼器、燃料電池の後燃焼器)で高温・高圧ガス(燃焼ガス)と
され、高温・高圧ガスを膨張タービンで膨張させることで発電電力を得る。電力供給の変
動の要求があった場合、即ち、出力の変動の要求があった場合、石炭ガス化ガス製造手段
の稼動状態はそのままにして、膨張ガス生成手段に送る石炭ガス化ガスの一部を分離して
膨張ガス生成手段に送られる石炭ガス化ガスの量を調節し、石炭ガス化ガス製造手段の稼
働率を維持した状態で出力の変動を吸収する。分離された石炭ガス化ガスは、他の需要地
で燃料として(燃料の一部として)使用することができる。
また、制御手段により電力供給の状況が判断され、制御手段の判断に基づいて、分離供給手段により膨張ガス生成手段に送る石炭ガス化ガスの一部を分離して系外の設備に供給し、膨張ガス生成手段に送る前記ガス化ガスの量が調節される。
また、分離供給手段により分離された石炭ガス化ガスの一部が天然ガスパイプラインに送られる。このため、石炭ガス化ガスの運搬に伴うコストをかけずに、しかも容易に、石炭ガス化ガスを遠方に運ぶことができる。
請求項2に係る本発明では、複数の発電所が接続されている天然ガスパイプラインに石炭ガス化ガスを供給するため、電圧低下、周波数変動が生じにくい設備環境に石炭ガス化ガスを投入することができる。
【0011】
この結果、出力の変動の要求があった場合でも、石炭ガス化ガス製造手段の稼働率を低下させずに設備の稼働率を維持することが可能になる。
【0012】
そして、
請求項3に係る本発明の石炭ガス化発電設備は、請求項1
もしくは請求項2に記載の石炭ガス化発電設備において、前記膨張タービンの排気ガスが熱回収されて蒸気を発生させる排熱回収ボイラと、前記排熱回収ボイラで発生した蒸気により駆動されて発電動力を得る蒸気タービンとを更に備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る本発明では、膨張タービンと蒸気タービンの駆動により発電を行う複合発電設備で、出力の変動の要求があった場合でも、石炭ガス化ガス製造手段の稼働率を低下させずに設備の稼働率を維持することが可能になる。
【0014】
また、
請求項4に係る本発明の石炭ガス化発電設備は、
請求項3に記載の石炭ガス化発電設備において、前記膨張ガス生成手段にO
2含有ガスを供給する酸化剤供給手段と、前記排熱回収ボイラで熱回収された排気ガスを前記膨張ガス生成手段に供給する循環手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る本発明では、酸化剤供給手段からO
2含有ガスを膨張ガス生成手段に供給し、循環手段により排熱回収ボイラで熱回収された排気ガスを膨張ガス生成手段に供給することにより、CO
2を循環させる閉サイクルの設備を構築することができる。酸化剤供給手段としては、例えば、空気からN
2を分離することでO
2を製造する酸素製造設備を適用することができる。そして、余剰となったCO
2は回収することができる。
【0022】
また、
請求項5に係る本発明の石炭ガス化発電設備は、請求項1から
請求項4のいずれか一項に記載の石炭ガス化発電設備において、前記膨張ガス生成手段は、前記ガス化ガスを燃焼し前記高温・高圧ガスとして燃焼ガスを前記膨張タービンに送る燃焼器であることを特徴とする。
【0023】
請求項5に係る本発明では、石炭ガス化ガス製造手段で得られた石炭ガス化ガスを燃焼器で燃焼して燃焼ガスとし、高温・高圧の燃焼ガスを膨張タービンで膨張させることで発電電力を得ることができる。
【0024】
また、
請求項6に係る本発明の石炭ガス化発電設備は、請求項1から
請求項4のいずれか一項に記載の石炭ガス化発電設備において、前記膨張ガス生成手段は、前記石炭ガス化ガスが燃料極に送られ、空気極に酸化剤が送られて電気化学反応により発電を行うと共に、反応後のガスを前記高温・高圧ガスとして前記膨張タービンに送る燃料電池であることを特徴とする。
【0025】
請求項6に係る本発明では、石炭ガス化ガス製造手段で得られた石炭ガス化ガスを燃料電池の燃料極に供給し、酸化剤を空気極に供給して電気化学反応により発電を行い、反応後のガスを高温・高圧ガスとして膨張タービンで膨張させることで発電電力を得ることができる。
【0026】
また、
請求項7に係る本発明の石炭ガス化発電設備は、請求項1から
請求項6のいずれか一項に記載の石炭ガス化発電設備において、前記膨張タービンで発電された電力が送られる電力系統と、前記電力系統に接続される再生可能エネルギー発電設備とを更に備え、前記ガス化ガス量調節手段は、前記再生可能エネルギー発電設備の出力の変動に応じて前記電力供給の状況を判断し、前記膨張ガス生成手段に送る前記石炭ガス化ガスの量を調節することを特徴とする。
【0027】
請求項7に係る本発明では、再生可能エネルギー発電設備の出力の変動に応じて電力供給の状況を判断し、膨張ガス生成手段に送る石炭ガス化ガスの量を調節することで、再生可能エネルギー発電設備の出力の変動があっても、石炭ガス化ガス製造手段の稼働率を低下させずに設備の稼働率を維持する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の石炭ガス化発電設備は、出力の変動の要求があった場合でも、石炭ガス化ガス製造手段の稼働率を低下させずに設備の稼働率を維持することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
石炭ガス化発電設備としてのIGCCは、石炭ガス化ガスを燃焼器で燃焼させて膨張タービン(ガスタービン)を駆動して電力を得ると共に、ガスタービンの排気熱を回収して蒸気を発生させ、発生した蒸気により蒸気タービンを駆動して電力を得る石炭ガス化発電設備である。
【0031】
また、石炭ガス化発電設備としてのIGFCは、石炭ガス化ガスを燃料電池の燃料極に供給されるアノード(燃料)として用い、酸化剤を空気極に供給して電気化学反応により発電を行うと同時に、燃料電池の排気ガスでガスタービンを駆動して電力を得ると共に、ガスタービンの排気熱を回収して蒸気を発生させ、発生した蒸気により蒸気タービンを駆動して電力を得る石炭ガス化発電設備である。
【0032】
図1には、本発明の実施例に係る石炭ガス化発電設備(IGCC、及び、IGFC)を備え、再生可能エネルギー発電設備、火力発電設備、原子力発電設備等と共に、需要地に電力及び天然ガスを供給する系統の全体の概略を示してある。
【0033】
図に示すように、天然ガス(液化天然ガス:LNG)の貯蔵設備1から、需要地2の間には、LNGを需要地2に運搬する天然ガスパイプライン(パイプライン)3(都市ガス導管)が構築されている。また、需要地2には、送配電設備4(電力系統)を介して各種の発電需要設備が接続され、電力が供給される。
【0034】
送配電設備4には、発電設備として、再生可能エネルギー発電設備5からの電力が供給される。再生可能エネルギー発電設備5は、例えば、太陽光発電、風力発電、水力発電、バイオマス発電が適用される。また、送配電設備4には、発電設備としてLNG火力発電設備6、微粉炭火力発電設備7、原子力発電設備8からの電力が供給される。
【0035】
そして、送配電設備4には、膨張ガス生成手段としての燃焼器を備えた石炭ガス化発電設備11(IGCC)、及び、膨張ガス生成手段としての燃料電池を備えた石炭ガス化発電設備12(IGFC)が接続され、需要地2に電力が供給されるようになっている。再生可能エネルギー発電設備5は、自然環境により出力が大きく変化し、需要地2の電力の需要が変化することになる。安定した電力需要(要求負荷)に対応するため、石炭ガス化発電設備11、12の出力を変動させる必要がある。
【0036】
このため、本発明では、電力供給の状況に基づいて、石炭ガス化発電設備11、12で生成された石炭ガス化ガスの一部を分離して、膨張ガス生成手段(燃焼器、燃料電池)に送られる石炭ガス化ガスの量を調節し(ガス化ガス量調節手段)、石炭ガス化発電設備11、12の出力を調節している。そして、分離された石炭ガス化ガスの一部を石炭ガス化発電設備11、12の系外のパイプライン3に供給している(分岐手段)。
【0037】
これにより、石炭ガス化発電設備11、12の石炭ガス化ガス製造手段(後述する石炭ガス化設備)の稼働率を維持した状態で、石炭ガス化発電設備11、12の出力の変動を吸収することができる。従って、石炭ガス化ガス製造手段(後述する石炭ガス化設備)の稼働率を低下させずに石炭ガス化発電設備11、12の稼働率を維持することが可能になる。
【0038】
図2に基づいて、石炭ガス化発電設備11(IGCC)の
参考例を具体的に説明する。
図2には本発明の
参考例に係る石炭ガス化発電設備の全体の構成を説明する系統状況を示してある。
参考例は、膨張ガス生成手段として燃焼器を備えた石炭ガス化発電設備11(IGCC)の具体例で、酸化剤として空気を石炭ガス化設備に投入する例を示してある。
【0039】
図2に示すように、石炭ガス化発電設備11Aは、ガスタービン(圧縮機、燃焼器、膨張タービン)15、及び、蒸気タービン16で発電機17、18が駆動される複合発電設備により構築されている。
【0040】
複合発電設備のガスタービン15は、圧縮機21、及び、膨張タービン22を備え、圧縮機21で圧縮された空気が膨張ガス生成手段としての燃焼器23に送られる。燃焼器23には、石炭ガス化ガス製造手段としての石炭ガス化設備24からガス精製設備25を介して石炭ガス化ガス(CO、H
2)が供給される。石炭ガス化設備24には、酸化剤として空気、O
2が供給される。膨張タービン22では燃焼器23からの燃焼ガス(高温・高圧ガス)が膨張されては動力(発電動力)が回収され、発電機17が駆動される。
【0041】
膨張タービン22で仕事を終えた排気ガスの熱回収を行う排熱回収ボイラ26が備えられ、排熱回収ボイラ26で発生した蒸気は蒸気タービン16に送られて動力が回収され、発電機18が駆動される。排熱回収ボイラ26で熱回収された排気ガスは排煙処理されて大気に放出される。
【0042】
一方、石炭ガス化設備24からガス精製設備25を介して燃焼器23に送られる石炭ガス化ガスは、一部が分離供給手段(ガス化ガス量調整手段)としての分岐路28に分岐されてパイプライン3に送られる。分岐路28には分離供給手段(ガス化ガス量調整手段)としての調整弁29が備えられ、調整弁29は、発電機17からの電力供給の状況に応じて制御される。
【0043】
尚、分岐路28に分離された一部の石炭ガス化ガスは、パイプライン3に送るようにしているが、貯蔵施設に貯蔵し、必要に応じて使用することも可能である。また、分岐路28に分離された一部の石炭ガス化ガスを輸送機器(ローリ車や搬送船)で使用場所まで個別に輸送することも可能である。
【0044】
調整弁29が電力供給の状況に応じて制御されることで、燃焼器23に送られる石炭ガス化ガスの量が調節され、石炭ガス化設備24の稼働率を維持した状態で(稼働状況を変化させずに)、電力供給の状況の変化(発電設備の出力の変動)が吸収される。例えば、電力供給を抑制する状況の場合、燃焼器23に送られる石炭ガス化ガスの量を絞り、石炭ガス化設備24の稼動状況を変化させずに燃焼ガスの量を減らし、膨張タービン22の出力を低下させる。
【0045】
従って、石炭ガス化設備24の稼働率を低下させずに石炭ガス化発電設備11Aの全体の稼働率を維持することが可能になる。
【0046】
調整弁29は、電力供給の状況を判断する制御手段31(ガス化ガス量調整手段)の指令に基づいて制御される。制御手段31には再生可能エネルギー発電設備5の発電情報、即ち、再生可能エネルギー発電設備5の出力の情報が入力される。また、制御手段31には膨張タービン22で駆動される(燃焼ガスを動力として駆動される)発電機17の出力状況が入力される。
【0047】
制御手段31で、再生可能エネルギー発電設備5の出力が変動(増加)したことが判断されると、調整弁29が制御されて燃焼器23に送られる石炭ガス化ガスの量が絞られ(分岐路28への石炭ガス化ガス量が増加され)、燃焼ガスの量が減らされて膨張タービン22の出力を低下させる。分岐路28に送られた石炭ガス化ガスはパイプライン3に投入される。
【0048】
従って、再生可能エネルギー発電設備5の出力の変動に応じて、制御手段31で電力供給の状況が判断され、燃焼器23に送る石炭ガス化ガスの量が調節される。このため、再生可能エネルギー発電設備5の出力の変動があっても、石炭ガス化設備24の稼働率を低下させることなく、石炭ガス化発電設備11Aの全体の稼働率が維持される。
【0049】
この結果、石炭ガス化発電設備11Aに出力の変動の要求があった場合でも、石炭ガス化設備24の稼働率を低下させずに(稼働率を高い状態のまま維持して)、石炭ガス化発電設備11Aの稼働率を維持することが可能になる。つまり、石炭ガス化設備24での石炭ガス化ガスの生成量(石炭の処理量)を安定させて石炭ガス化発電設備11Aを運用することが可能になる。
【0050】
図3に基づいて、石炭ガス化発電設備11(IGCC)の
他の参考例を説明する。
図3には本発明の
参考例に係る石炭ガス化発電設備の全体の構成を説明する系統状況を示してある。
【0051】
図3に示した参考例は、図2に示した参考例に対し、燃焼器23に酸化剤としてO
2が供給されると共に、排熱回収ボイラ26で熱回収された排気ガス(CO
2)が圧縮機21に送られる構成となっている。このため、
図2に示した部材と同一部材には同一符号を付して重複する説明は省略してある。
【0052】
図に示すように、石炭ガス化発電設備11Bは、空気からN
2を分離してO
2を製造するための酸素製造設備35が備えられ、酸素製造設備35で製造されたO
2が燃焼器23に送られる(酸化剤供給手段)。酸素製造設備35で製造されたO
2は石炭ガス化設備24にも酸化剤として送られる。
【0053】
排熱回収ボイラ26で熱回収された排気ガス(CO
2+H
2O)を圧縮機21に送る循環経路36(循環手段)が備えられ、排熱回収ボイラ26で熱回収された排気ガス(CO
2+H
2O)は圧縮機21に送られる。循環経路36には、CO
2回収装置37が分岐して備えられ、CO
2回収装置37では排気ガスからH
2Oが分離されてCO
2が回収される。排熱回収ボイラ26で熱回収された排気ガス(CO
2+H
2O)は圧縮機21に送られる。
【0054】
図3に示した参考例の石炭ガス化発電設備11Bは、酸素製造設備35からO
2含有ガスを燃焼器23に供給し、排熱回収ボイラ26で熱回収された排気ガスを(CO
2+H
2O)を圧縮機21から燃焼器23に供給することにより、CO
2を循環させる閉サイクルの設備を構築することができる。CO
2回収装置37により、余剰となったCO
2は回収することができる。
【0055】
そして、
図2に示した参考例と同様に、制御手段31で、再生可能エネルギー発電設備5の出力が変動(増加)したことが判断されると、調整弁29が制御されて燃焼器23に送られる石炭ガス化ガスの量が絞られ(分岐路28への石炭ガス化ガス量が増加され)、燃焼器23に送る石炭ガス化ガスの量が調節される。このため、再生可能エネルギー発電設備5の出力の変動があっても、石炭ガス化設備24の稼働率を低下させることなく、石炭ガス化発電設備11Bの全体の稼働率が維持される。
【0056】
図4に基づいて、石炭ガス化発電設備12(IGFC)の
他の参考例を説明する。
図4には本発明の
参考例に係る石炭ガス化発電設備の全体の構成を説明する系統状況を示してある。
【0057】
図4に示した参考例は、図2に示した参考例に対し、燃焼器23に代えて膨張ガス精製手段として燃料電池を備えた構成となっている。このため、
図2に示した部材と同一部材には同一符号を付して重複する説明は省略してある。
【0058】
図に示すように、石炭ガス化発電設備12は、圧縮機21で圧縮された空気が送られる膨張ガス生成手段としての燃料電池41を備えている。また、燃料電池41には、石炭ガス化設備24からガス精製設備25を介して石炭ガス化ガス(CO、H
2)が供給される。即ち、圧縮機21で圧縮された圧縮空気が燃料電池41のカソード極に送られ、石炭ガス化設備24からの石炭ガス化ガスが燃料電池41のアノード極に送られ、反応により発電が実施される。
【0059】
燃料電池41での反応後のカソードガス、及び、アノードガスは、後燃焼器42で燃焼されて燃焼ガス(高温・高圧ガス)とされる。燃焼ガスは、膨張タービン22に送られ膨張され、発電機17が駆動される。
【0060】
図4に示した参考例の石炭ガス化発電設備12は、石炭ガス化設備24で得られた石炭ガス化ガスを燃料電池41の燃料極に供給されるアノードとして使用し、酸化剤を空気極に供給して電気化学反応により発電を行い、反応後のガスを高温・高圧ガスとして膨張タービンで膨張させることで発電電力を得ることができる。
【0061】
そして、
図2に示した参考例と同様に、制御手段31で、再生可能エネルギー発電設備5の出力が変動(増加)したことが判断されると、調整弁29が制御されて燃料電池41に送られる石炭ガス化ガスの量が絞られ(分岐路28への石炭ガス化ガス量が増加され)、燃料電池41に送る石炭ガス化ガスの量が調節される。このため、再生可能エネルギー発電設備5の出力の変動があっても、石炭ガス化設備24の稼働率を低下させることなく、石炭ガス化発電設備12の全体の稼働率が維持される。
【0062】
図5に基づいて、石炭ガス化発電設備11(IGCC)の
実施例を説明する。
図5には本発明の
一実施例に係る石炭ガス化発電設備の全体の構成を説明する系統状況を示してある。
【0063】
本実施例は、図2に示した参考例に対し、パイプライン3の天然ガスの組成情報に基づいて、石炭ガス化ガスの投入量を制御する構成となっている。
図2に示した部材と同一部材には同一符号を付して重複する説明は省略してある。
【0064】
図に示すように、石炭ガス化発電設備11Cは、パイプライン3には天然ガスの組成情報を検出する組成検出手段45が備えられ、組成検出手段45で検出された情報は、組成制御手段46に入力される。調整弁29の下流側の分岐路28には貯槽47が備えられ、貯槽47とパイプライン3の間には組成調整弁48が備えられている。組成調整弁48は組成制御手段46の指令に基づいて開閉制御される。
【0065】
分岐路28に送られた石炭ガス化ガスは貯槽47に貯められる。組成検出手段45によりパイプライン3の組成情報が検出され、組成の情報に応じて、パイプライン3の天然ガスの組成が所望の状態(例えば、露点、燃焼速度、熱量、天然ガスとの成分比率)に維持されるように、組成調整弁48が組成制御手段46により開閉制御される。
【0066】
本実施例の石炭ガス化発電設備11Cは、石炭ガス化ガスを投入しても、パイプライン3の天然ガスの組成状態を維持することができる。
【0067】
そして、
図2に示した参考例と同様に、制御手段31で、再生可能エネルギー発電設備5の出力が変動(増加)したことが判断されると、調整弁29が制御されて燃焼器23に送られる石炭ガス化ガスの量が絞られ(分岐路28への石炭ガス化ガス量が増加され)、燃焼器23に送る石炭ガス化ガスの量が調節される。このため、再生可能エネルギー発電設備5の出力の変動があっても、石炭ガス化設備24の稼働率を低下させることなく、石炭ガス化発電設備11Cの全体の稼働率が維持される。
【0068】
図6に基づいて、石炭ガス化発電設備11(IGCC)の
他の参考例を説明する。
図6には本発明の
参考例に係る石炭ガス化発電設備の全体の構成を説明する系統状況を示してある。
【0069】
図6に示した参考例は、図2に示した参考例に対し、石炭ガス化ガスを化学製品に変換してパイプライン3に送る構成となっている。
図2に示した部材と同一部材には同一符号を付して重複する説明は省略してある。
【0070】
図に示すように、石炭ガス化発電設備11Dは、分岐路28には石炭ガス化ガスから化学製品(炭化水素、NH
3等)が合成される化学製品合成設備51が備えられている。化学製品合成設備51には、例えば、H
2O、CO
2が供給され、石炭ガス化ガスが炭化水素であるCH
4(もしくは、メタノール、DME)に合成される。合成されたCH
4はパイプライン3に送られる。
【0071】
化学製品合成設備51にN
2を供給することで、NH
3を合成することができ、パイプライン3にNH
3を送ることができる。
【0072】
図6に示した参考例の石炭ガス化発電設備11Dは、石炭ガス化ガスを燃料成分としての化学製品(炭化水素、NH
3等)に変換してパイプライン3に送ることができる。このため、天然ガスの組成を所望の状態に制御することが容易になる。
【0073】
そして、
図2に示した参考例と同様に、制御手段31で、再生可能エネルギー発電設備5の出力が変動(増加)したことが判断されると、調整弁29が制御されて燃焼器23に送られる石炭ガス化ガスの量が絞られ(分岐路28への石炭ガス化ガス量が増加され)、燃焼器23に送る石炭ガス化ガスの量が調節される。このため、再生可能エネルギー発電設備5の出力の変動があっても、石炭ガス化設備24の稼働率を低下させることなく、石炭ガス化発電設備11Dの全体の稼働率が維持される。
【0074】
上述した石炭ガス化発電設備11、12は、要求出力の変動(電力供給の状況)により石炭ガス化ガスの一部をパイプライン3に送り、石炭ガス化設備24の稼働率を維持した状態で、石炭ガス化発電設備11、12の出力の変動(要求出力の変動)を吸収することができる。従って、石炭ガス化設備24の稼働率が低下することがなく、石炭ガス化発電設備11、12の全体の稼働率を大きく低下させることなく稼働率を維持することが可能になる。
【0075】
尚、
実施例の構成と参考例の構成を適宜組み合わせて石炭ガス化発電設備を構築することが可能である
。