(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンの爆発的な普及に伴って、利便性の高いマイクロ波帯の周波数資源が枯渇している。その対策として、第3世代の携帯電話から第4世代の携帯電話への移行や、新しい周波数帯の割り当てが行われている。しかしながら、サービスの提供を望む事業者が多いことから、各事業者に割り当てられる周波数資源は限られている。
【0003】
携帯電話のサービスにおいては、複数のアンテナ素子を利用したマルチアンテナシステムによって、周波数の利用効率の向上を目指すための検討が進められている。既に普及している無線標準規格であるIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)802.11nでは、送信と受信との双方に複数のアンテナ素子を用いるMIMO(Multiple Input Multiple Output;マイモ)伝送技術を用いて空間多重伝送が行われる。これにより、IEEE802.11nでは、伝送容量が高められ、周波数利用効率が向上する。
【0004】
なお、一般的には、「MIMO」とは、送信局側及び受信局側ともに複数のアンテナ素子を備えるシステムのことを指す。一方、送信局側が備えるアンテナ素子が複数であり、受信局側が備えるアンテナ素子が単数であるシステムは、一般的には、「MIMO」ではなく「MISO(Multiple Input Single Output;マイソ)」と呼ばれる。しかしながら、以下の説明においては、送信局側が備えるアンテナ素子が複数であり、受信局側が備えるアンテナ素子が単数であるシステムも含めて、「MIMO」という。
【0005】
また、昨今の通信方式においては、複数の周波数成分(サブキャリア)に分割して周波数軸上で信号処理を行う方式が一般的である。このような方式として、例えば、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing;直交周波数分割多重)変調方式、及びSC−FDE(Single Carrier - Frequency Domain Equalization;シングルキャリア−周波数領域等化)方式等がある。以下の説明においては、OFDMやSC−FDE等の区別は特に行わず、これらの複数の周波数成分(サブキャリア)に分割して周波数軸上で信号処理を行う方式を総称して、「サブキャリア」という。
【0006】
さらに、近年、100素子以上のアンテナ素子を備え、それぞれのアンテナ素子を介して送受信される信号に対して所定の係数を乗算して合成することによって、高い指向性利得と高次の空間多重を実現する、Massive MIMO(大規模MIMO)技術が注目されている。このような多素子アンテナを用いた指向性制御技術として、フェーズドアレーアンテナを用いた技術が知られている。フェーズドアレーアンテナは、見通し波を平面波と捉えた場合、アンテナ素子ごとの経路長差に伴う複素位相の回転量の差を調整し、同位相で合成することによって指向性利得を向上させる。
【0007】
一般的に、Massive MIMOに対しては、指向性利得の確保に加えて、高次の空間多重を行わせることが期待されている。超多素子のアンテナの信号の全てを、A/D(Analog to Digital)変換器及びD/A(Digital to Analog)変換器を用いてデジタル信号処理する場合、演算量が膨大になる。これにより、多くのデバイスが必要になるためコストが高くなり、さらにデバイスの消費電力も大きくなる。
【0008】
上記のようなデバイスに係るコストや消費電力の増大を回避するため、2段階型の信号処理が注目されている。ここでいう2段階型の信号処理とは、まず1段階目のアナログ信号処理として、ある程度の指向性形成処理をアナログ処理により実施し、信号系統数が絞り込まれた後で、次に2段階目のデジタル信号処理として、限定的な系統数のデジタル信号に対してウエイト乗算の信号分離の演算処理を行う信号処理のことである。
【0009】
上記の2段階目のデジタル信号処理では、例えば、N系統の信号系列が空間多重される場合において、送信側が指向性形成による仮想的なN本の送信アンテナで送信し、受信側も指向性形成により仮想的なN本の受信アンテナで受信し、等価的にN×NのMIMOチャネルによって通信する場合の処理と同等な処理が行われる。
【0010】
この際、形成される複数の指向性ビームのメインローブが重ならない場合においては、サイドローブレベルが低減されれば、N×NのMIMOチャネル行列の非対角成分の絶対値が対角成分の絶対値に比べて相対的に小さく設定されることになる。これにより、N系統の信号の直交度が高まることになり、良好な通信特性を示すことになる。一方、サイドローブレベルが高ければ、無視できない干渉が残ることになり、上記の2段階目の信号処理を高効率で実施することが必須となる。
【0011】
ここで、サイドローブレベルを低減させるための技術として、アレーアンテナのアンテナ素子ごとの振幅に、テーラー分布やチェビシェフ分布に従う変化を与える技術が知られている(例えば、非特許文献1)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、本発明に係る無線通信装置及び無線通信方法の説明を容易にするため、従来のフェーズドアレーについて説明する。
図1は、従来技術におけるフェーズドアレーの概要を示す図である。
図1において、符号20−1〜20−4は、アンテナ素子を示す。符号21−1〜21−4は、移相器を示す。符号22は、電波の到来方向を示す矢印である。ここでは、説明を簡単にするため、アンテナ素子間隔dで1次元にアンテナ素子が配置されているリニアアレーの場合について示す。
【0025】
到来方向22(入射角θ)からの電波をアンテナ素子20−1〜20−4で受信する場合、見通し環境を想定して平面波近似を行えば、各アンテナ素子には素子間でdSinθの経路長差が存在する。なお、
図1に示すように、アンテナ素子20−1〜20−4の符号の添え字(「1」〜「4」)の番号が大きいほど経路長はより短くなる。
【0026】
ここで、到来波の波長をλとすれば、上記の経路長差により、各アンテナ素子には素子間で−2π×dSinθ/λの複素位相回転が生じる。例えば、アンテナ素子20−1を基準に考えれば、アンテナ素子20−2には−2π×dSinθ/λ×1の複素位相差、アンテナ素子20−3には−2π×dSinθ/λ×2の複素位相差、・・・、及びアンテナ素子20−kには−2π×dSinθ/λ×(k−1)の複素位相差がそれぞれ発生する。
【0027】
これらの到来波を全て同位相で受信するためには、上記の複素位相差をキャンセルする必要がある。上記の複素位相差をキャンセルするため、アンテナ素子20−1における受信信号に対しては複素位相回転2π×dSinθ/λ×0を、アンテナ素子20−2における受信信号に対しては複素位相回転2π×dSinθ/λ×1を、アンテナ素子20−3における受信信号に対しては複素位相回転2π×dSinθ/λ×2を、・・・、及びアンテナ素子20−kにおける受信信号に対しては複素位相回転2π×dSinθ/λ×(k−1)を、それぞれ付与すれば良い。
【0028】
このような複素位相回転の付与は、一般的に、アナログ回路の移相器を用いて実現することが可能である。したがって、移相器21−1〜21−4に対してそれぞれ上記の位相回転を与える設定を施せば、移相器21−1〜21−4からの出力を合成することで到来方向22への指向性利得を高めることが可能である。素子間隔dと到来方向とが予め既知であるならば、これらの値を事前に設定することで、到来方向への指向性利得を安定的に稼ぐことが可能になる。
【0029】
ここで、フェーズドアレーにおける送受信信号の複素位相回転の実現方法としては、移相器を用いてアナログ信号処理として位相回転を施す方法や、複素数表示のサンプリングされたデジタル信号に対して所定の複素数の係数を乗算して位相回転を施す方法等がある。一般的に、デジタル信号処理のためには、アンテナ素子ごとにA/D変換器及びD/A変換器が必要であるが、これらのデバイスは消費電力も大きいうえにコストも高いため、超多素子のMassive MIMOでは敬遠される傾向がある。
【0030】
次に、この様なフェーズドアレーにより形成される指向性利得パターンの一例を
図2に示す。ここでは説明を簡単にするため、1次元のリニアアレーを想定し、50素子を1/2波長間隔で直線的に配置している。最も簡単な指向性ビーム形成の例としては、正面方向に指向性利得を確保する構成であり、
図2は、全てのアンテナ素子の信号を単純合成(すなわち、アンテナ素子ごとのウエイトが全て1、ないしは位相回転が全てゼロ度に相当)した場合の指向性利得特性を示した図である。
【0031】
ここで、ゼロ度方向の高利得領域はメインローブと呼ばれる。メインローブでは、ターゲットとなる無線局の方位に誤差があったとしても、誤差が所定の角度幅(ターゲットの方位の近傍の方向)であれば、比較的高い指向性利得を確保することができる。一方、角度±3.3度方向の2番目のピーク、及びそれ以降のピークはサイドローブと呼ばれる。サイドローブは、本来はメインローブから外れており指向性利得を確保すべきでない方向でありながら、相対的に他よりも高めの指向性利得が得られている領域となる。
【0032】
一般的なフェーズドアレーアンテナの場合、このサイドローブレベルは、メインローブに対して−13dB程度となることが知られている。そのため、このサイドローブレベルは、微弱ではあるが無視することができない、ターゲット以外の無線局装置への与被干渉となり得る。
【0033】
次に、このようなマルチアンテナによる伝送技術を発展させた技術として、MIMO伝送技術がある。MIMO伝送技術により、複数のアンテナ素子を備えた基地局装置と複数の端末局装置とを具備し、基地局装置と端末局装置とが同一周波数上で同一時刻に空間多重伝送を行うことが可能な無線通信システムを構築することができる。MIMO伝送技術においては、送信局と受信局との間の伝送路情報を把握することで、より効率的な伝送を行うことが可能となる。
【0034】
図3は、MIMO伝送の概要を示す図である。ここでは、ある周波数成分に着目した説明として、サブキャリアないし周波数成分を表す添え字等は省略している。
図3において、符号11は送信局を、及び符号12は受信局を示す。
図3に示す構成例では、送信局11及び受信局12は、それぞれ2本ずつのアンテナ素子を備えている。
【0035】
送信局11の送信アンテナat1と受信局12の受信アンテナar1との間のチャネル情報(振幅、複素位相の回転量を表す情報)をh11、送信局11の送信アンテナat1と受信局12の受信アンテナar2との間のチャネル情報をh21、送信局11の送信アンテナat2と受信局12の受信アンテナat1との間のチャネル情報をh12、及び送信局11の送信アンテナat2と受信局12の受信アンテナar2との間のチャネル情報をh22と表した場合、送信局11の2本の送信アンテナから送信される信号t1、t2と、受信局12の2本の受信アンテナで受信される信号r1、r2との関係は、雑音信号n1、n2を用いて、以下の式(1)で表される。
【0037】
基本的にMIMO伝送では、受信側の受信信号とチャネル行列とに基づいて、送信側の信号が推定される。式(1)の雑音項が十分に小さいならば、以下の式(2)に示すように、両辺にチャネル行列の逆行列を乗算することで、受信信号から送信信号を推定することができる。
【0039】
一般的には、雑音レベルは比較的小さく、受信アンテナ間の相関はある程度小さいことが想定される。結果的に、チャネル行列の複数の固有値の絶対値の最大値と最小値とのギャップが限定的であるならば、チャネル行列の逆行列等を用いて送信信号を推定し、信号検出を行うことが可能になる。
【0040】
この演算処理は言い換えると、式(1)の連立方程式を解くことに相当する。物理的意味としては、送信アンテナat2から送信され受信アンテナar2にて受信された信号に基づいて、送信アンテナat2から送信され受信アンテナar1にて受信された信号を予測する。この予測値を代入して干渉信号をキャンセルすることで、送信アンテナat1から送信され受信アンテナar1にて受信された信号が検出される。
【0041】
次に、
図1に示したアレーアンテナを複数備えたMassive MIMO技術について説明する。
図4は、従来技術におけるMassive MIMO技術の概要を示す図である。
図4において、符号101−1は、第1の送信局を示す。符号101−2は、第2の送信局を示す。符号102は、受信局を示す。符号103−1及び103−2は、各送信局が備えるアレーアンテナを示す。符号104−1及び104−2は、受信局が備えるサブアレーを示す。
【0042】
図4に示す無線通信システムは、複数の端末局装置と複数のアンテナ素子を備えた基地局装置とを具備する。この無線通信システムは、双方向での通信が可能であるが、ここでは説明を簡単にするために、一例として、2台の端末局装置から1台の基地局装置への信号送信の状況を、2台の送信局101−1〜101−2及び受信局102との間の通信として説明する。同様の処理を送信側においても施すことで、送受を逆転させた動作も実現可能である。
【0043】
まず、送信局101−1〜101−2は、アレーアンテナ103−1〜103−2をそれぞれ制御し、受信局の各サブアレー104−1〜104−2に向けた指向性ビームをそれぞれ形成する。同様に受信局102は、サブアレー104−1〜104−2を制御し、
図1と同様に、サブアレー104−1は送信局101−1に、サブアレー104−2は送信局101−2に向けた指向性を形成する。
【0044】
この指向性ビームを用いると、送信局101−1と送信局101−2の方位とが異なる場合には、サブアレー104−1は、送信局101−2からの信号に対する指向性利得が低くなり、干渉信号は相対的に抑圧された状態で受信される。同様に、サブアレー104−2は、送信局101−1からの信号に対する指向性利得が低くなり、干渉信号は相対的に抑圧された状態で受信される。したがって、この指向性ビームのみであっても信号対干渉電力比(SIR:Signal to Interference Ratio)は概ね良好になるが、それでも除去しきれない干渉成分を更に抑圧するために、デジタル処理により干渉分離処理を施すことが可能である。
【0045】
この場合の処理は、あたかもサブアレー104−1及び104−2を単なる受信アンテナと見なせば、サブアレーによる合成後の信号は、単なる2×2のMIMO信号処理と見なすことが可能である。これにより、何らかの手法で2×2の行列のチャネル情報を取得できるならば、デジタル処理により簡易に信号分離を施すことが可能である。
【0046】
図5は、従来技術における無線局装置の構成を示すブロック図である。
図5において、符号102は、受信局を示す。符号104−1〜104−2は、サブアレー(アンテナ)を示す。符号111−1−1〜111−1−N及び符号111−2−1〜111−2−Nは、それぞれアンテナ素子を示す。符号112−1〜112−2は、アナログ信号処理回路を示す。符号113−1〜113−2は、RF回路(高周波回路)を示す。符号114−1〜114−2は、ベースバンド信号処理回路(BB回路)を示す。符号115は、デジタル信号処理回路を示す。符号116は、制御回路を示す。
【0047】
この構成では、信号の送信及び受信の双方向において対称的な信号処理が施されるため、ここでは信号受信時の処理を中心に説明する。サブアレー104−1〜104−2は、それぞれN本のアンテナ素子111−1−1〜111−1−N、111−2−1〜111−2−Nを実装している。一つのサブアレー104−1に着目すれば、アンテナ素子111−1−1〜111−1−Nは、アナログ信号処理回路112−1に接続される。アナログ信号処理回路112−1内にはアンテナ素子111−1−1〜111−1−Nごとに移相器が配置され、アンテナ素子ごとに無線周波数帯にて個別の複素位相回転を施すことが可能である。
【0048】
ここでは、例えば
図1において説明したような手法によって指向性形成が行われる。アナログ信号処理回路112−1内では、このように複素位相回転が施された信号は、分配結合器で合成され、1系統の信号に集約される。アナログ信号処理回路112−1〜112−2でそれぞれ集約された信号は、RF回路113−1〜113−2にて無線周波数とベースバンド帯又は中間周波数帯との周波数変換が施され、デジタル信号処理回路115に入力される。
【0049】
サブアレー104−1〜104−2が形成する指向性により、各サブアレー104−1〜104−2が対応する送信局からの信号は概ね信号分離されているが、若干のクロストーク成分が残留する。デジタル信号処理回路115は、これらのクロストーク成分を抑圧し、高精度の信号分離を行う。
【0050】
デジタル信号処理回路115が行う信号処理は、周波数領域で周波数成分ごとに行われてもよいし、時間領域で行われてもよい。この信号処理によりクロストーク成分が抑圧された信号は、それぞれの送信局との間で1対1での通信が行われている場合と同様の信号として扱うことが可能となる。これにより、各ベースバンド信号処理回路114−1〜114−2は、通常の1対1での通信と同様の機能で信号検出処理を行い、送信局が送信した信号を検出する。
【0051】
逆方向の送信信号処理に関しては、各ベースバンド信号処理回路114−1〜114−2で生成された信号に対して、エア上での干渉成分を抑圧するための信号処理がデジタル信号処理回路115で実施される。その信号処理が施された信号が、RF回路113−1〜113−2に入力される。入力された信号は、RF回路113−1〜113−2にてベースバンド帯と無線周波数との間の周波数変換が施され、それぞれがアナログ信号処理回路112−1〜112−2に入力される。
【0052】
一つのアナログ信号処理回路112−1に着目すれば、入力された信号は分配結合器でN系統の信号に分配され、それぞれ個別の移相器で複素位相回転が施される。これらの信号が、アナログ信号処理回路112−1に接続されるサブアレー104−1の、アンテナ素子111−1−1〜111−1−Nのそれぞれから送信される。送信される信号は、アナログ信号処理回路112−1で形成される指向性方向の受信局と安定的に通信を行うことができる。
【0053】
デジタル信号処理回路115で行われる信号処理は、基本的に式(2)と同様の信号処理でよい。ただし、その他の信号処理を利用することも可能である。また、アナログ信号処理回路112−1〜112−2が各移相器に与える位相情報は、制御回路116が管理する。制御回路116は、事前に行う何らかの手法で指向性利得が最大となる方向に指向性を向けるための位相情報を取得して、制御を行う。
【0054】
図6は、従来技術におけるアナログ信号処理回路の構成を示す図である。
図6において、符号51(51−1,51−2,・・・,51−N)は、アンプ(送信系においてはハイパワーアンプ、受信系においてはローノイズアンプに相当)を示す。符号52(52−1,52−2,・・・,52−N)は、移相器を示す。符号53は、分配合成器を示す。符号111((111−1,111−2,・・・,111−N))は、アンテナ素子を示す。符号104は、サブアレー(アンテナ)を示す。符号112は、アナログ信号処理回路を示す。以下の説明においては、アンテナ素子ごとの処理は共通であるため、各系統の添え字は省略して説明する。
【0055】
まず受信時の処理としては、信号がアンテナ素子111で受信されると、アンプ51で信号が増幅される。増幅された信号は、移相器52で所定の位相回転が施され、分配結合器53で合成されて出力される。この信号は、各アンテナ素子111からの信号が概ね同位相合成となるように、
図1のフェーズドアレー型の処理により位相回転量が決定され、
図5の制御回路116にて指示がなされる。なお、この出力信号は、
図5のRF回路113へ出力される。
【0056】
一方、送信時の処理としては、
図5のRF回路113から入力された信号に対し、分配結合器53で信号が分配される。分配された信号は、各移相器52で所定の複素位相回転が施され、アンプ51で増幅された後に、アンテナ素子111より送信される。このアンテナ素子より送信される信号に対して、通信相手局のアンテナ素子において概ね同位相合成となるように、
図1のフェーズドアレー型の処理により位相回転量が決定され、
図5の制御回路116にて指示がなされる。
【0057】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
上述したように、本来、低サイドローブ化の実現のためには、各アンテナ素子に対して施されるべき振幅が、指向性形成ごとに異なる値となるように調整されることが好ましい。例えば、
図7に示すように、送信局装置のアンテナ開口がXであったとしても、正面から角度θ方向に指向性ビームを向ける場合には、正面方向に比べてアンテナ開口がCosθ倍に縮んで見えることになる。
【0058】
非特許文献1に記載の技術によれば、このアンテナ開口長の変化も考慮されて、アンテナ素子ごとに乗算すべき係数の絶対値(振幅に相当)が可変とされることになるが、このアンテナ開口の縮小はθが大きな場合にのみ顕著となる。そのため、概ね正面方向に限定してサービスが施される場合には、正面方向に指向性ビームを向ける場合におけるアレーアンテナの中心部からの距離に対する振幅値(遠いアンテナ素子ほど所定の割合で振幅が小さくなる)の設定は、固定アッテネータ(減衰器)を用いることで実現される。
【0059】
図8は、本発明第1の実施形態におけるアレーアンテナ装置の構成を示す図である。
図8において、符号50(50−1,50−2,・・・,50−N)は、アンテナ素子を示す。ここで、Nは2以上の整数である。符号51(51−1,51−2,・・・,51−N)は、アンプを示す。符号52(52−1,52−2,・・・,52−N)は、移相器を示す。符号53は、分配結合器(第1の分配結合器)を示す。符号54(54−1,54−2,・・・,54−N)は、固定アッテネータを表す。
図8に示すように、固定アッテネータ54(54−1,54−2,・・・,54−N)は、分配結合器53(第1の分配結合器)と、分配結合器53とそれぞれ接続される複数のアンテナ素子50(50−1,50−2,・・・,50−N)との間に接続される。なお、
図8においては、全てのアンテナ素子50(50−1,50−2,・・・,50−N)に対し、それぞれ固定アッテネータ54(54−1,54−2,・・・,54−N)が接続される構成を一例として示しているが、これに限られるものではない。固定アッテネータ54は、分配結合器53と、分配結合器53とそれぞれ接続される複数のアンテナ素子50(50−1,50−2,・・・,50−N)のうち少なくとも1つとの間に少なくとも1つ接続される。具体的には、アレーアンテナの中心部付近のアンテナ素子は減衰量がゼロで構わないので、この様な素子には固定のアッテネータを配置する必要がない。この意味で、必ずしも全てのアンテナ素子に固定アッテネータを接続する必要はなく、全体のアンテナ素子の中の一部のアンテナ素子において固定アッテネータを接続する構成で構わない。
【0060】
なお、点線で囲まれた符号104の領域は、従来技術のサブアレー104に相当する部分である。また、点線で囲まれた符号112の領域は、従来技術のアナログ信号処理回路112に相当する部分である。上記と同様に、以下の説明においては、アンテナ素子ごとの各系統の添え字を含めて記載すべきだが、共通の処理になるためにここでは省略して説明する。
【0061】
まず、受信時の処理としては、信号がアンテナ素子50で受信されると、アナログ信号処理回路112は、アンプ51で信号を増幅し、増幅した信号に対して移相器52で所定の位相回転を施し、固定アッテネータ54で所定のレベルに振幅を減衰させる。アナログ信号処理回路112は、この信号を分配結合器53で合成して出力する。
【0062】
この信号は、各アンテナ素子50からの信号が概ね同位相合成となるように、
図1のフェーズドアレーによる処理により位相回転量が調整され、その位相回転量は
図5の制御回路116にて指示がなされる。なお、この出力信号は、
図5に示したRF回路113に出力される。
【0063】
一方、送信時の処理としては、
図5のRF回路113から信号が入力されると、アナログ信号処理回路112は、分配結合器53で信号を分配し、分配した信号に対して固定アッテネータ54で所定のレベルに振幅を減衰させ、移相器52で所定の複素位相回転を施す。アナログ信号処理回路112は、この信号をアンプ51で増幅した後にアンテナ素子50を介して送信する。このアンテナ素子より送信される信号に対して、通信相手局のアンテナ素子において概ね同位相合成となるように、
図1のフェーズドアレーによる処理により位相回転量が調整され、その位相回転量は
図5の制御回路116にて指示がなされる。
【0064】
上述した固定アッテネータ54の各減衰量は、非特許文献1に記載のように、アンテナの中心部(ないしは中心部近傍)のアンテナ素子を0dB(実効上、固定アッテネータを省略して対応する)とするように設定され、アンテナ素子の中心部から離れるほど、チェビシェフ分布やテーラー分布、ないしは後述する第2の実施形態で示す複数ビームの合成により得られる減衰量等に基づいて設定されるものとする。
【0065】
この設定量は一意に定まるものではなく、メインローブの幅を狭くしたい場合には、比較的端部の減衰量が抑えられることが好ましい。その場合にはサイドローブの抑圧量は、限定的であり、サイドローブの目標値等に基づいて事前にシミュレーション等の設計段階で定められた値で構わない。
【0066】
以下、アナログ信号処理回路112の動作について説明する。
まず送信時の動作を示す。
図9は、送信時におけるアナログ信号処理回路112の動作を示すフローチャートである。
【0067】
各アンテナ素子50に対し全系統で共通の送信信号が入力されると、分配結合器53で1系統の送信信号をアンテナ素子系統ごとに分岐し(ステップS001)、これを固定アッテネータ54に入力する。固定アッテネータ54では電力を所定の値だけ減衰し(ステップS002)、これを移相器52に入力する。移相器52はアンテナ素子50ごとに個別に設定された位相情報を基に複素位相を回転させる(ステップS003)。移相器52で複素位相を回転させた信号はアンプに入力され、ここで信号を増幅し(ステップS004)、アンテナ素子より信号を送信する(ステップS005)。
【0068】
この固定アッテネータ54の減衰量の設定は、アンテナ素子50ごとに個別に設定される。例えば、リニアアレーであるならば、リニアアレーの中心からの距離を引数として、チェビシェフ分布やテーラー分布、ないしは後述する第2の実施形態で与えられるようなその他の所定の減衰量等に合わせて電力を減衰させる。固定アッテネータ54は、電力を減衰させた受信信号を移相器52に入力する。
【0069】
各アンテナ素子50は、入力された信号を送信する(ステップS005)。
【0070】
次に、受信時の動作を示す。
図10は、受信時におけるアナログ信号処理回路112の動作を示すフローチャートである。
【0071】
各アンテナ素子50にて受信された受信信号は、各アンテナ素子50にそれぞれ接続されたアンプ51に入力され、ここで信号を増幅する(ステップS101)。
【0072】
移相器52では、アンテナ素子50ごとに個別に設定された位相情報を基に複素位相を回転させる(ステップS102)。移相器52、複素位相を回転させた信号を固定アッテネータ54に出力し、ここで電力を所定の値だけ減衰させる(ステップS103)。固定アッテネータ54から出力された全系統の信号は、分配結合器53を介して合成され、1系統の信号に集約される。この固定アッテネータ54の減衰量の設定は、上述の様にアンテナ素子50ごとに個別に設定される。すなわち、送信と受信とで、共通の減衰量で運用される。
上記のような構成をとることで、アナログ信号処理でありながら、疑似的にデジタル信号処理と同様な低サイドローブの指向性パターンを実現することができる。
【0073】
[第2の実施形態]
以下、本発明の第2の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図11は、本発明の第2の実施形態におけるアレーアンテナ装置の構成を示す図である。
図11において、符号50(50−1,50−2,・・・,50−N)は、アンテナ素子を示す。符号51(51−1,51−2,・・・,51−N)は、アンプを示す。符号55(55−1,55−2,・・・,55−N)及び符号56(56−1,56−2,・・・,56−N)は、移相器を示す。符号57(57−1,57−2,・・・,57−N)は、分配結合器(第2の分配結合器)を表す。符号58は、分配結合器(第1の分配結合器)を表す。
【0074】
なお、点線で囲まれた符号104の領域は、従来技術のサブアレー104に相当する部分である。また、点線で囲まれた符号112の領域は、従来技術のアナログ信号処理回路112に相当する部分である。上記と同様に、以下の説明においては、アンテナ素子ごとの各系統の添え字を含めて記載すべきだが、共通の処理になるためにここでは省略して説明する。
【0075】
第1の実施形態では、固定アッテネータ54を用いて振幅情報をアナログ処理により調整していた。しかしながら、固定アッテネータ54の設計において、所望の減衰量を精度良くデバイス上で実現することは容易ではない。そこで、第2の実施形態では、2つの移相器(移相器55及び移相器56)からの信号を合成することで、振幅情報を所望の値に調整する方法を示す。
【0076】
なお、ここでは、2つの移相器(移相器55及び移相器56)からの信号を合成する構成としたが、3つ以上の移相器からの信号を合成する構成であってもよい。すなわち、分配結合器57(第2の分配結合器)と分配結合器58(第1の分配結合器)との間にはM系統(Mは2以上の整数)の移相器が並列に接続される構成である。
【0077】
図11に示すように、第2の実施形態におけるアレーアンテナ装置は、各アンテナ素子50と信号の入出力ポートとの間には、それぞれ2つの移相器のペア(移相器55及び移相器56)が配置されている。以下、説明を簡単にするために、1次元リニアアレーの場合を例にして説明する。
【0078】
このリニアアレーの正面から角度θ方向に指向性ビームを形成する場合には、上述したように、到来する平面波に対し、隣接するアンテナ素子間で生じる経路長差はdSinθとなる。これにより、第1の実施形態におけるアレーアンテナ装置では、2π×dSinθ/λの位相回転を移相器52にて施すことで、θ方向への指向性形成を実現可能であった。
【0079】
これに対し、第2の実施形態におけるアレーアンテナ装置では、事前に定められた角度Δθに対し、2つの移相器群(移相器55及び移相器56)のうちの1つの移相器(例えば、移相器55)にてθ+Δθ方向に指向性形成を行い、他方の移相器(例えば、移相器55)にてθ−Δθ方向に指向性形成を行う。
【0080】
すなわち、アンテナ素子50(50−1、50−2、・・・、50−N)ごとのM系統(ここでは、M=2)の移相器(ここでは、移相器55及び移相器56)のうちの1つの移相器(ここでは、移相器55又は移相器56)をN系統の全てのアンテナ素子50(50−1、50−2、・・・、50−N)について合成した際に形成される指向性ビームの方向が指向性を向けるべきターゲットの方位とは異なるターゲットの近傍の方向を向いており、かつ、M種類の形成される指向性ビームの方向の平均が指向性を向けるべきターゲットの方位となるように設定される。
【0081】
θ±Δθ方向への指向性形成は、アレーアンテナの中心からd離れた素子において2π×dSin(θ±Δθ)/λの位相回転を、移相器55及び移相器56にて施すことで実現することができる。この2π×dSin(θ±Δθ)/λに対して、角度θの周りでテーラー展開による1次近似を行った場合、以下のようになる。
【0083】
式(3)を用いて、2つの移相器(移相器55及び移相器56)によって行われる位相回転を、複素数で表記されたウエイトと見なし、複素数上で合成すると、以下のようになる。
【0085】
すなわち、Δθ=0のときに、e
jAのウエイトが乗算されるのに対し、2つの移相器(移相器55及び移相器56)を経由した信号を合成した後の信号は、複素位相はe
jAのままでありながら、振幅に関しては2Cos(BΔθ)に比例して減衰することになる。ここでのBにはアンテナ素子間隔dが含まれるため、アンテナの中心部近傍を基準とするならば、その中心部近傍から離れるほどBの値の絶対値はより大きくなる。その結果、2Cos(BΔθ)の項は小さくなり、アレーアンテナの端部に行くほど振幅を低下させることができる。
【0086】
以下、シミュレーション結果について、図面参照して説明する。
図12及び
図13は、本発明の第2の実施形態を適用した際の特性を表す図である。シミュレーション条件として、1/2波長間隔に51個のアンテナ素子を1次元に並べたリニアアレーにおいて、θ=0度(正面方向に指向性を向けた状態)、Δθ=0.5度とした。
【0087】
図12では、正面の利得最大の方向の指向性利得に対する相対利得差を縦軸とし、正面方向からの角度差を横軸として、プロットされている。また、
図13では、2つのアナログビームを合成した結果として、リニアアレーの中心からのアンテナ素子の距離(中心から何番目のアンテナ素子であるかを示している)と、その際にそのアンテナ素子から送受信される信号の相対電力値とが示されている。
【0088】
図12に示すように、中心のメインローブの左右のサイドローブの最大相対レベルは−21dB程度である。
図2では、上述したように−13dB程度であったことを考慮すれば、サイドローブレベルが8dBほど抑えられ、不要な輻射を効率的に抑えられていることが分かる。
【0089】
この際、各アンテナ素子50で送受信される信号の相対的な電力差を示したものが
図13である。アンテナポジションの中心からの距離の増大に応じて式(4)の2Cos(BΔθ)のBの値が増大するため、その結果、2Cos(BΔθ)が減少して振幅及び電力が減衰する。
図13に示すように、アンテナ中心部から約15アンテナ素子分以上離れたアンテナ素子では電力が−3dB以下となっており、電力的な視点で見ると最大指向性方向の利得確保には有効に機能させることができない。しかし、
図12に示すように、サイドローブの低減には有効に寄与していることが分かる。
【0090】
この状況は、アンテナ端部の電力減衰は等価的には有効なアンテナ開口が縮小しているのと等価である。そのため、メインローブのビーム幅が実効的には広がって見えることになり、通信相手となる無線局方向に対しては利得最大の方向に対して角度誤差があっても利得差は低めに抑えられるという利点がある。その一方で、その他の無線局装置に対しては不要放射を抑制することが可能となっており、空間多重伝送を行う場合には相互与被干渉のレベルを低減するのに有効である。
【0091】
このΔθの値は、周波数、アンテナ素子数、アンテナ素子間隔(波長で規格化したアンテナ開口)、アンテナ配置等をパラメータとしてシミュレーションにより特性を評価し、所望のメインローブ幅とサイドローブレベルを満たすように設定すればよい。
【0092】
なお、別途行うシステム設計でΔθが定まれば、θに対し2π×dSin(θ±Δθ)/λの値をテーブルとして別途実装し、その値を各移相器群の個別の移相器に設定すれば、それにより所望のビームを形成することが可能である。
【0093】
なお、以上の説明ではリニアアレーを用いる場合を例として説明したが、例えば正方アレーのように指向性ビームの走査可能な方向が水平/垂直の2次元方向とすることも可能である。
【0094】
例えば、指向性ビームを向けるべき方位を水平方向の角度θxと、垂直方向の角度θyの組み合わせにより与える場合、水平方向のアンテナ素子間隔をdx、垂直方向のアンテナ素子間隔をdyとすれば、(θx,θy)に対し、(θx+Δθ,θy+Δθ)、(θx+Δθ,θy−Δθ)、(θx−Δθ,θy+Δθ)、(θx−Δθ,θy−Δθ)の4つの方向に対し個別に指向性形成を行うように、2π×{dxSin(θx±Δθ)+dySin(θy±Δθ)/λ}に対応した位相回転を施す4つの移相器群を実装すればよい。
【0095】
[その他の補足説明]
上記の説明においては、アレーアンテナ装置を送信及び受信で分離する場合の構成を示したが、TDD(Time Division Duplex;時分割複信)−SWを実装し、ハイパワーアンプやローノイズアンプをTDD−SWよりもアンテナから遠い位置に配置する構成とすることも可能である。この場合、
図8及び
図11におけるアンプ51を図面から削除し、アンプを
図5のRF回路113内に実装する構成とすることも可能である。
【0096】
また、本発明の第1の実施形態におけるアンテナ素子50ごとの減衰量の値を、非特許文献1におけるテーラー分布、チェビシェフ分布に基づいて設定するほか、上述の
図13で示した減衰量をアンテナポジションに対応させて設定することも可能である。この場合、本来、減衰量は指向性を向ける方向θに依存するが、アッテネータを固定とする必要があるため、θ=0度の場合の値で代用する。その場合、式(4)における2Cos(BΔθ)のBは2πd/λに置き換えられ、2Cos(2πdΔθ/λ)と書き換えることができる。
【0097】
したがって、アンテナの中心部からの距離がdとなるアンテナ素子の振幅が、所定のΔθに対して2Cos(2πdΔθ/λ)に比例するように設計を行えばよい。但し、2次元の平面アンテナの場合には、アレーアンテナの中心部に対し、水平方向の距離がdx、垂直方向の距離がdyとなる場合、それぞれの減衰量の積として4Cos(2πdxΔθ/λ)×Cos(2πdyΔθ/λ)とすることも可能である。
【0098】
また、本発明は固定的な指向性を形成するシステムであっても、適応的に指向性を任意の方向に形成する場合であっても、利用可能である。適応的に指向性形成を行う場合には、その他の一般的なシステムで用いられる任意の指向性決定手段を合わせて実装し、その取得した指向性を向けるべきターゲットの方向に対し(θx±Δθ,θy±Δθ)に対応した方向への指向性形成のための位相回転を各移相器に設定すれば、対応可能である。
【0099】
また、上記の説明ではリニアアレーや正方アレーを用いる場合を例として説明したが、その他の構成のアンテナにも適応可能である。また、移相器群の数も、典型的な例として、リニア(1次元)アレー時の2、正方(ないしは2次元)アレー時の4について説明したが、リニアアレーでも3とすることも可能であるし、正方アレー時に3以下とすることも可能であり、その他の数を設定することも可能である。
【0100】
以上、本発明の一実施形態について説明した。従来、Massive MIMOにおいて、サイドローブを抑える技術として、デジタル信号処理やアナログ回路である移相器とデジタル信号処理を合わせた制御技術が提案されているが、デジタル信号処理を行うためのA/D変換器及びD/A変換器の使用によりコストや消費電力が増加するという課題があった。これに対し、本発明の一実施形態に係る技術によれば、アッテネータや複数の移相器により、各アンテナ素子に対し入出力信号の位相と振幅とを所望の分布で生成することができる。これにより、本発明の一実施形態に係る技術によれば、サイドローブを低減する指向性ビームの形成が可能となる。
【0101】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明してきたが、上記実施の形態は本発明の例示に過ぎず、本発明が上記実施の形態に限定されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の技術思想及び範囲を逸脱しない範囲で構成要素の追加、省略、置換、その他の変更を行ってもよい。
【0102】
上述した実施形態における無線通信装置をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。