(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主面を有し、シリコーン樹脂を含む硬化後の樹脂体の前記主面を、遮光領域および透過領域を有するフォトマスクを介してインコヒーレントな紫外線で照射することにより、前記主面のうち前記フォトマスクの前記遮光領域に対応する第1領域の高さと、前記主面のうち前記フォトマスクの前記透過領域に対応する第2領域の高さとを互いに異ならせる工程を含み、
前記工程は、紫外線の照射により、前記樹脂体のうち前記第2領域のある部分の厚さを、紫外線の照射前よりも増加させる工程を含む、透光性部材の形成方法。
前記シリコーン樹脂は、2つのメチル基がケイ素原子に結合したDユニットを有する有機ポリシロキサンを含有する、請求項1から4のいずれかに記載の透光性部材の形成方法。
上面を有する発光素子と、主面を有し、未硬化のシリコーン樹脂原料を硬化させることによって形成された透光性の樹脂体であって、前記発光素子の前記上面を少なくとも覆う樹脂体とを有する発光体を準備する工程(a)と、
表面に凹凸のパターンを有し、前記発光素子の前記上面を少なくとも覆う透光性部材を形成する工程(b)と
を含み、
前記工程(b)は、前記樹脂体の前記主面を、遮光領域および透過領域を有するフォトマスクを介してインコヒーレントな紫外線で照射することにより、前記主面のうち前記フォトマスクの前記遮光領域に対応する第1領域の高さと、前記主面のうち前記フォトマスクの前記透過領域に対応する第2領域の高さとを互いに異ならせる工程(b1)を含み、
前記工程(b1)は、紫外線の照射により、前記樹脂体のうち前記第2領域のある部分の厚さを、紫外線の照射前よりも増加させる工程を含む、発光装置の製造方法。
前記工程(a)と前記工程(b)との間に、前記発光素子の側面を少なくとも覆う光反射性部材を形成する工程(c)をさらに含む、請求項6から8のいずれかに記載の発光装置の製造方法。
前記透光性部材は、2つのメチル基がケイ素原子に結合したDユニットを有する有機ポリシロキサンを含有する、請求項13から15のいずれかに記載の発光装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を詳細に説明する。以下の実施形態は、例示であり、本開示による透光性部材の形成方法および発光装置の製造方法は、以下の実施形態に限られない。例えば、以下の実施形態で示される数値、形状、材料、ステップ、そのステップの順序などは、あくまでも一例であり、技術的に矛盾が生じない限りにおいて種々の改変が可能である。
【0015】
図面が示す構成要素の寸法、形状等は、わかり易さのために誇張されている場合があり、実際の透光性部材、発光装置、および、製造装置における、寸法、形状および構成要素間の大小関係を反映していない場合がある。また、図面が過度に複雑になることを避けるために、一部の要素の図示を省略することがある。
【0016】
以下の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素は共通の参照符号で示し、説明を省略することがある。以下の説明では、特定の方向または位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」およびそれらの用語を含む別の用語)を用いる場合がある。しかしながら、それらの用語は、参照した図面における相対的な方向または位置をわかり易さのために用いているに過ぎない。参照した図面における「上」、「下」等の用語による相対的な方向または位置の関係が同一であれば、本開示以外の図面、実際の製品、製造装置等において、参照した図面と同一の配置でなくてもよい。本開示において「平行」とは、特に他の言及がない限り、2つの直線、辺、面等が0°から±5°程度の範囲にある場合を含む。また、本開示において「垂直」または「直交」とは、特に他の言及がない限り、2つの直線、辺、面等が90°から±5°程度の範囲にある場合を含む。
【0017】
(第1の実施形態)
図1および
図2は、本開示の第1の実施形態による透光性部材の製造方法の概要を示すフローチャートである。
図1に例示された透光性部材の製造方法は、概略的には、シリコーン樹脂を含む樹脂体の主面を、遮光領域および透過領域を有するフォトマスクを介して紫外線で照射する工程(ステップS11)を含む。後述するように、シリコーン樹脂を含む樹脂体の主面の一部に選択的に紫外線を照射することにより、主面のうち紫外線で照射された領域の高さと、主面のうち紫外線が当たらなかった領域の高さとを互いに異ならせ得る。すなわち、樹脂体の主面に基本的に非接触で凹凸を形成することが可能である。
【0018】
ここで、紫外線の照射の対象である樹脂体は、基本的には硬化された状態であり、本硬化(Cステージあるいは全硬化とも呼ばれる)状態の樹脂を指す。ただし、後述の実施形態において説明するように、紫外線の照射の対象である樹脂体として、予備硬化(Bステージあるいは半硬化とも呼ばれる)状態の樹脂を用いることも可能である。
図1は、本硬化後の樹脂体を用いる例のフローを示し、紫外線照射後にさらなる硬化工程を有しない。樹脂体を一旦半硬化状態としてから本硬化を行い、その後に紫外線を照射してもよい。他方、
図2は、半硬化後の樹脂体を用いる例を示し、
図1の例と比較して、紫外線照射後に樹脂体を硬化させる工程(ステップS12)をさらに有する。
図2に示すように、予備硬化状態の樹脂体を用いる場合には、樹脂体の主面を紫外線で照射する工程に続くその後の工程において硬化工程を実行する。本硬化状態の樹脂体を用いる場合は、その後の工程において、更なる硬化工程は必須ではない。特に断りがない限り、本明細書において単に「硬化」と記載されている場合、「硬化」とは本硬化のことを指す。
【0019】
以下、図面を参照しながら、透光性部材の製造方法の実施形態を詳細に説明する。
【0020】
まず、
図3に示すように、樹脂体140Xを準備する。
図3に示す例において、樹脂体140Xは、全体として板状であり、平面状の主面140aを有する。ここでは、樹脂体140Xは、板状の部材である。なお、樹脂体140Xの形状は、板状に限らず任意の形状とすることができる。
図3において樹脂体140Xの上面に相当する、主面140aの形状は、平面でもよく、あるいは曲面でもよい。樹脂体140Xは、例えば、10μm以上500μm以下程度の厚さを有し得る。
【0021】
樹脂体140Xは、透光性を有し、凹凸が付与された後、例えば、保護部材、光拡散部材等の光学部材として、発光素子、発光装置等の光出射側に配置され得る。なお、本明細書における「透光性」および「透光」の用語は、入射した光に対して拡散性を示すことをも包含するように解釈され、「透明」であることに限定されない。
【0022】
樹脂体140Xは、シリコーン樹脂を含む部材である。樹脂体140X中のシリコーン樹脂は、少なくとも1つのフェニル基を分子中に有する有機ポリシロキサンを含有する。あるいは、樹脂体140X中のシリコーン樹脂は、2つのメチル基がケイ素原子に結合したDユニットを有する有機ポリシロキサンを含有する。樹脂体140Xは、これら2種の有機ポリシロキサンの両方を含んでいてもよい。樹脂体140X中のシリコーン樹脂は、例えば、フェニル基を有し、かつ、Dユニットを有する有機ポリシロキサンを含有していてもよい。樹脂体140Xを構成するシリコーン樹脂組成物は、メチル基およびフェニル基以外の基が導入された変性シリコーンを含んでいてもよい。
【0023】
樹脂体140Xは、実質的にシリコーン樹脂からなる部材に限定されず、シリコーン樹脂以外の材料を含む複合部材であり得る。例えば、樹脂体140Xは、シリコーン樹脂を含む樹脂材料を母材とし、光散乱性のフィラーが分散された部材等であってもよい。光散乱性のフィラーとしては、母材よりも高い屈折率を有する無機材料もしくは有機材料の粒子を用いることができる。光散乱性のフィラーの例は、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、チタン酸カリウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライト、酸化ニオブ、硫酸バリウム、酸化ケイ素、各種希土類酸化物(例えば、酸化イットリウム、酸化ガドリニウム)等の粒子である。なお、樹脂体140Xを構成する母材は、シリコーン樹脂以外の樹脂を含んでいてもかまわない。
【0024】
樹脂体140Xは、樹脂中に分散された波長変換部材を含んでいてもよい。樹脂体140Xが波長変換部材を含むことにより、樹脂体140Xは、入射した光の少なくとも一部を吸収し、入射した光の波長とは異なる波長の光を発することができる。波長変換部材の典型例は、蛍光体等の粒子である。蛍光体には、公知の材料を適用することができる。蛍光体の例は、YAG系蛍光体、KSF系蛍光体等のフッ化物系蛍光体およびCASN等の窒化物系蛍光体、βサイアロン蛍光体等である。YAG系蛍光体は、青色光を黄色光に変換する波長変換物質の例であり、KSF系蛍光体およびCASNは、青色光を赤色光に変換する波長変換物質の例であり、βサイアロン蛍光体は、青色光を緑色光に変換する波長変換物質の例である。蛍光体は、量子ドット蛍光体であってもよい。
【0025】
樹脂体140Xは、購入または作製によって準備することができる。支持体上に付与したシリコーン樹脂原料を硬化させることにより樹脂体140Xを得てもよい。例えば、板状等の所定の形状に成形されたシリコーン樹脂原料を例えば150℃の温度下に4時間おくことにより、硬化後の樹脂体が得られる。樹脂体140Xの形成にトランスファー成形、圧縮成形法等を適用してもよい。硬化状態の樹脂体を得るためのシリコーン樹脂原料の加熱温度の範囲は、好ましくは、100℃以上200℃以下であり、より好ましくは、120℃以上180℃以下である。加熱時間の範囲は、好ましくは、60分以上480分以下であり、より好ましくは、120分以上300分以下である。なお、これらの加熱条件は、未硬化のシリコーン樹脂原料を用いて本硬化状態の樹脂体を得る場合も、予備硬化後のシリコーン樹脂を用いて本硬化状態の樹脂体を得る場合も同じである。
【0026】
樹脂体140X中のシリコーン樹脂は、予備硬化の状態であってもよい。例えば、シリコーン樹脂を含むシリコーン樹脂原料をスプレー法、キャスト法、ポッティング法等の塗布法あるいはスクリーン印刷法によって基板等の支持体上に付与した後、例えば150℃の温度下に0.5時間おくことにより、予備硬化後の樹脂体が得られる。予備硬化状態の樹脂体を得るためのシリコーン樹脂原料の加熱温度の範囲は、好ましくは、80℃以上200℃以下であり、より好ましくは、120℃以上180℃以下である。加熱時間の範囲は、好ましくは、0.1分以上120分以下であり、より好ましくは、15分以上45分以下である。
【0027】
次に、
図4に模式的に示すように、紫外線照射装置500により、フォトマスクを介して樹脂体140Xの主面140aを紫外線で照射する(
図1のステップS11および
図2のステップS11)。このとき、
図4に示すように、遮光領域200sおよび透過領域200tを有するフォトマスク200を用いる。
図4において、フォトマスク200のうちハッチングが付された領域は、フォトマスク200の遮光領域200sを示している。また、
図4において、フォトマスク200のうち白い領域は、フォトマスク200の透過領域200tを示している。なお、この例では、フォトマスク200が樹脂体140Xの主面140a上に配置された状態で紫外線の照射が実行されている。つまり、
図4では、フォトマスク200と樹脂体140Xとが直接に接触している場合を例示している。しかしながら、フォトマスク200と樹脂体140Xとが接していることは必須ではない。つまり、フォトマスク200と樹脂体140Xとは離間していてもよく、あるいは、別の透光性の部材がこれらの間に介在していてもよい。
【0028】
図5は、フォトマスク200の一例を示す。この例では、フォトマスク200は、円形状の複数の遮光領域200sを有する。
図5に例示する構成において、複数の遮光領域200sは、各領域の中心が三角格子の格子点上に位置する二次元の配置を有する。フォトマスク200は、半導体プロセスに用いられる公知のレチクル(またはフォトマスク)と同様にして作製することが可能である。例えば、ガラス(典型的には石英ガラス)シート、高分子フィルム等の表面にクロム膜等の遮光膜を形成した後、例えばフォトリソグラフィによって遮光膜をパターニングし、遮光領域200sを形成することによりフォトマスク200を得ることができる。つまり、透過領域200tは、支持体としてのガラスシート、高分子フィルム等のうち、クロム等による遮光層が形成されていない領域であり、紫外線を透過させるように構成された領域である。
【0029】
図5に例示する遮光領域200sの配置ピッチ、つまり、互いに隣接する2つの遮光領域200sの中心間距離は、例えば、0.1μm以上3000μm以下の範囲であり、好ましくは2μm以上100μm以下、さらに好ましくは3μm以上30μm以下である。また、遮光領域200sの半径は、例えば、0.05μm以上1000μm以下の範囲であり、好ましくは1μm以上50μm以下、さらに好ましくは2μm以上10μm以下である。もちろん、遮光領域200sの配置および遮光領域200sの各々の形状は、
図5に示す例に限定されず、任意の配置および形状を採用し得る。互いに隣接する2つの遮光領域200sの中心間距離は、フォトマスク200の全体にわたって一定とすることができる。あるいは、求める配光特性等に応じて遮光領域200sの中心間距離を任意に変更してもよい。また、複数の遮光領域200sの間でこれらの形状は、全てに共通して同じ形状であってもよいし、複数の遮光領域200sに、形状または大きさの異なる遮光領域が混在されていてもよい。複数の遮光領域200sの形状は、求める配光特性等に応じて任意の形状、大きさとすることができる。
【0030】
なお、
図5では、フォトマスク200は、長方形状の外形を有している。ただし、フォトマスク200の外形は、この例に限定されず、例えば、正方形状であってもよい。また、フォトマスク200の寸法は、樹脂体140Xの寸法に整合させることができる。ただし、これに限らず、フォトマスク200は、樹脂体140Xの主面140aよりも大きな面積を有していてもよいし、主面140aよりも小さな面積を有していてもよい。前者の場合、単一のフォトマスク200を介して、複数の樹脂体140Xに対して一括して紫外線を照射し得る。後者の場合、ステップアンドリピート法により、主面140aに対して複数回の照射を実行してもよい。
【0031】
紫外線の照射の工程における照射量は、例えば20J/cm
2以上である。照射される紫外線の波長に特に限定はなく、例えば、UVA(400〜315nm)〜UVC(280〜140nm)の波長範囲にわたるスペクトルを有する紫外線を発する紫外線照射装置を用いることができる。ここでは、発光の主ピーク波長が365nmの光源を用いる。
【0032】
紫外線の照射により、
図6に模式的に示すように、主面140aのうち遮光領域200sに対応する第1領域R1の高さと、主面140aのうち透過領域200tに対応する第2領域R2の高さとを互いに異ならせ、主面140aに複数の凹部140dを有する透光性部材140を得ることが可能である。第1領域R1は、主面140aのうち遮光領域200sに覆われることによって紫外線の照射から遮蔽されていた領域である。第2領域R2は、主面140aのうち透過領域200tを介して紫外線が照射された領域である。樹脂体140Xが予備硬化状態のシリコーン樹脂を含む場合には、紫外線の照射の工程の実行後に、加熱によって樹脂体140Xを硬化させることにより(
図2のステップS12)、複数の凹部140dを有する透光性部材140が得られる。なお、
図6では、説明の便宜のために凹部140dを誇張して大きく描いている。
【0033】
ここで、フォトマスク200を介した紫外線の照射によって形成された凹部140dは、樹脂体140Xのうち第1領域R1にある部分の厚さが減少することによって形成される構造である。または、樹脂体140Xのうち第2領域R2にある部分の厚さが増大した結果、高さが相対的に小さくなることにより形成される構造である。注目すべきは、紫外線の照射を受けた領域と、紫外線が照射されなかった領域との間で高さの差が生じる(凹凸が形成される)点である。後に実施例を参照しながら説明するように、主面140aの法線方向に沿った、第1領域R1と第2領域R2との間の高さの差dは、0.1μm以上であり得る。高さの差dは、例えば10μm未満である。
【0034】
図7は、透光性部材140の一例を模式的に示す。
図7に示すように、この例では、フォトマスク200の遮光領域200sが、三角格子の格子点上にそれぞれの中心が位置する配置を有することに対応して、凹部140dも、三角格子の格子点上にそれぞれの中心が位置する配置を有する。なお、
図7では、
図6と同様に、説明の便宜のために凹部140dを誇張して大きく描いている。本開示の他の図面においても、説明の便宜のために凹部140dを誇張して大きく描くことがある。
【0035】
透光性部材140の主面140a側または主面140aの反対側の主面140b(この例では下面)に配置され得るLED等の発光素子または発光装置の発光ピーク波長の光に対する、透光性部材140の透過率は、例えば60%以上である。上述の発光ピーク波長の光に対する、透光性部材140の透過率が70%以上であると有益であり、80%以上であるとより有益である。透光性部材140は、50%以上のヘーズ値を有し得る。ヘーズ値は、JIS K7136:2000に準拠した測定方法によって測定することができる。
【0036】
このように、本開示の実施形態によれば、金型のような成形型を用いることなく、樹脂体140Xの主面140aに基本的に非接触で凹凸パターン等の形状を付与することが可能である。本開示の実施形態によれば、一般的なインプリント法と異なり、形状の付与の対象に型を押し付ける必要がないので、形状の付与の対象への物理的な接触によるダメージの発生を回避できる。また、形状の付与にエッチングが要求されないので、エッチングによるダメージの発生もない。なお、透光性部材140中のシリコーン樹脂は、基本的に硬化後(本硬化後)の状態である。そのため、透光性部材140を例えば300℃前後の高温の環境にさらした場合であっても、主面140aに形成された凹部140dの形状を維持させることが可能である。したがって、透光性部材140を得た後に、高温を伴うプロセスに透光性部材140を投入することが可能である。
【0037】
(第2の実施形態)
図8は、本開示の第2の実施形態による発光装置の製造方法によって得られる例示的な発光装置の断面を模式的に示す。
図8に示す発光装置100Aは、発光素子110Aと、波長変換部材120Aと、導光部材130Aと、透光性部材140Aと、光反射性部材150Aとを有する。
【0038】
発光素子110Aは、例えばLEDであり、この例では、発光素子110Aは、素子本体111と、発光素子110Aの下面側に位置する正極112Aおよび負極114Aとを有する。
図8に例示する構成では、発光素子110Aの上面は、素子本体111の上面111aに一致し、正極112Aおよび負極114Aは、発光素子110Aの上面とは反対側の、素子本体111の下面111b上に配置されている。
【0039】
素子本体111は、例えば、サファイアまたは窒化ガリウム等の支持基板と、支持基板上の半導体積層構造とを含む。半導体積層構造は、活性層と、活性層を挟むn型半導体層およびp型半導体層とを含む。半導体積層構造は、紫外〜可視域の発光が可能な窒化物半導体(In
xAl
yGa
1-x-yN、0≦x、0≦y、x+y≦1)を含んでいてもよい。上述の正極112Aおよび負極114Aは、半導体積層構造に所定の電流を供給する機能を有する。
図8に示すように、正極112Aの下面および負極114Aの下面は、発光装置100Aの下面100bから露出されており、したがって、発光装置100Aは、フリップチップ接続による実装に適合した構成を有するといえる。
【0040】
図8に例示する構成において、発光装置100Aは、素子本体111の上面111aの上方に、波長変換部材120Aおよび透光性部材140Aの積層構造を含む。波長変換部材120Aは、上面120aと下面120bとの間に位置する側面120cを有し、透光性部材140Aは、上面140aと下面140bとの間に位置する側面140cを有する。図示するように、この例では、波長変換部材120Aの側面120cおよび透光性部材140Aの側面140cは、光反射性部材150Aによって覆われている。導光部材130Aは、波長変換部材120Aの下面120bと素子本体111の上面111aとの間に位置する部分を有し、導光部材130Aの他の一部は、素子本体111の上面111aと下面111bとの間に位置する、素子本体111の側面111cの少なくとも一部を覆う。
【0041】
ここでは、透光性部材140Aは、第1の実施形態の透光性部材140と同様の板状の構造であり、
図8に模式的に示すように、例えば、発光素子110Aの上面の上方に位置する上面140aは、複数の凹部140dを有している。透光性部材140Aの厚さは、例えば5μm以上100μm以下の範囲であり、凹部140dの深さは、例えば0.1μm以上である。後述するように、複数の凹部140dは、第1の実施形態とほぼ同様の方法によって透光性部材140Aに形成され得る。後に実施例により説明するように、後述のプローブ法に基づいて得られる、透光性部材140の瞬間接着力は、意図的な紫外線の照射がなされていないシリコーン樹脂の表面の瞬間接着力の例えば50%以下の範囲内である。
【0042】
発光素子110Aの発光ピーク波長の光に対する、透光性部材140Aの透過率は、典型的には、60%以上である。光を有効に利用する観点から、発光素子110Aの発光ピーク波長における透光性部材140Aの透過率が70%以上であると有益であり、80%以上であるとより有益である。
【0043】
波長変換部材120Aは、ここでは、透光性部材140Aと同様に板状の形状を有する。波長変換部材120Aは、例えば、シリコーン樹脂等の母材と、蛍光体等の波長変換部材とを含有し、発光素子110Aからの光の少なくとも一部を吸収し、入射した光の波長とは異なる波長の光を発する。
【0044】
光反射性部材150Aは、波長変換部材120A、透光性部材140Aおよび導光部材130Aを取り囲む形状を有し、素子本体111のうち、側面111cを少なくとも覆う。また、図示する例において、光反射性部材150Aの一部は、素子本体111の下面111bのうち、正極112Aおよび負極114Aを除く領域を覆う。なお、本明細書における「覆う」は、被覆される部材と、被覆する部材とが直接に接している態様だけでなく、例えばこれらの部材の間にさらに他の部材が介在することにより、これらが直接に接していない部分を含むような態様をも包含するように解釈される。本明細書において、「光反射性」とは、発光素子の発光ピーク波長における反射率が60%以上であることを指す。光反射性部材150Aの、発光素子110Aの発光ピーク波長における反射率が70%以上であるとより有益であり、80%以上であるとさらに有益である。また、光反射性部材150Aが白色を有すると有益である。
【0045】
図9は、本開示の第2の実施形態による発光装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図9に例示された発光装置の製造方法は、概略的には、発光素子および透光性の樹脂体を有する発光体を準備する工程(ステップS21)と、表面に凹凸のパターンを有し、発光素子の上面を少なくとも覆う透光性部材を形成する工程(ステップS22)とを含む。ここで説明する例では、透光性部材を形成する工程は、遮光領域および透過領域を有するフォトマスクを介して樹脂体の主面を紫外線で照射する工程(ステップS221)を含む。紫外線の照射の対象となる樹脂体は、シリコーン樹脂原料を硬化させることによって形成された例えば樹脂シートまたはシリコーン樹脂原料が予備硬化状態の樹脂シートである。必要に応じて、紫外線の照射後、
図10に例示するように、樹脂体を硬化させる工程(ステップS222)が実行される。以下、図面を参照しながら、
図8に示す発光装置100Aの例示的な製造方法の詳細を説明する。
【0046】
[発光体の準備の工程]
まず、発光素子および透光性の樹脂体を有する発光体を準備する(
図9のステップS21)。ここでは、
図11に例示するような、発光素子110Aの上面の上方に配置されたシート状の樹脂体140Uを含む発光体100Uを準備する。
図11は、発光体100Uを発光体100Uの上面100Uaに垂直に切断したときの断面を模式的に示している。
【0047】
図11に示す発光体100Uは、発光素子110Aおよび樹脂体140Uに加えて、波長変換部材120A、導光部材130Aおよび光反射性部材150Aをさらに有する。
図11に示すように、発光体100Uは、波長変換部材120Aおよび樹脂体140Uの積層構造をその一部に含み、光反射性部材150Aは、樹脂体140Uの側面140cおよび波長変換部材120Aの側面120cを覆っている。発光体100Uは、購入によって準備されてもよいし、製作によって準備されてもよい。
図11に示す発光体100Uは、例えば、以下のようにして得られる。
【0048】
図12は、発光体100Uの例示的な製造方法を説明するためのフローチャートである。発光体100Uの準備の工程は、例えば、上面を有する発光素子を準備する工程(ステップS211)と、発光素子の上面に未硬化の透光性樹脂材料を付与する工程(ステップS212)と、透光性樹脂材料を硬化させることにより、発光素子の上面の上方に樹脂体を配置する工程(ステップS213)とを含む。
【0049】
まず、上面を有し、上面とは反対側に位置する下面111b側に正極112Aおよび負極114Aを有する発光素子110Aを準備する(
図12のステップS211)。発光素子110Aは、購入によって準備されてもよい。
【0050】
次に、耐熱性の粘着シートまたは基板等の支持体50を準備し、正極112Aおよび負極114Aを支持体50に向けて発光素子110Aを支持体50上に配置する。ここでは、
図13に示すように、支持体50の上面50aに複数の発光素子110Aを一時的に固定する。簡単のために、
図13では、紙面の左右方向に沿って配置された3つの発光素子110Aを示しているが、上面50a上に発光素子110Aが二次元に配置されてももちろんかまわない。
【0051】
次に、
図14に示すように、発光素子110Aの上面である上面111aにディスペンサ等によって透光性の第1樹脂材料130rを付与する(
図12のステップS212)。第1樹脂材料130rは、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、トリメチルペンテン樹脂もしくはポリノルボルネン樹脂、または、これらの2種以上を含む材料を母材として含むことができる。
【0052】
次に、
図15に模式的に示すように、波長変換部材120Aおよび樹脂体140Uを第1樹脂材料130r上に配置し、第1樹脂材料130rを硬化させる。ここでは、波長変換部材120Aおよび樹脂体140Uの積層シートを準備し、所定の大きさの積層シート片LBに切り出した後、積層シート片LBを各発光素子110Aの第1樹脂材料130r上に配置する。積層シート片LBの配置後、第1樹脂材料130rを硬化させることにより、
図16に示すように、導光部材130Aを形成して、発光素子110Aの上面の上方に樹脂体140Uを配置することができる(
図12のステップS213)。第1樹脂材料130rの硬化後に、ダイシング装置等を利用して波長変換部材120Aの側面120cおよび樹脂体140Uの側面140cをトリミングしてもよい。これにより、それぞれが、発光素子110Aの上面を少なくとも覆う樹脂体140Uを有する複数の発光体が得られる。
【0053】
なお、積層シート片LBは、例えば、蛍光体の粒子が分散された樹脂材料中の樹脂をBステージの状態とした蛍光体シートと、透光性の樹脂シートとを準備し、これらを熱によって貼り合わせ、超音波カッタ等により所定の寸法の切断片を得ることによって準備することができる。蛍光体シートは、蛍光体、シリコーン樹脂等の樹脂材料、フィラー粒子および溶媒を含有する第2樹脂材料から形成することができる。蛍光体としては、上述のYAG系蛍光体、KSF系蛍光体、CASNおよびβサイアロン蛍光体等の公知の蛍光体を用い得る。
【0054】
透光性の樹脂シートは、例えば、シリコーン樹脂を母材として含む未硬化のシリコーン樹脂原料を予備硬化させたBステージの状態とすることによって得ることができる。透光性の樹脂シートは、未硬化のシリコーン樹脂原料を本硬化させることによって形成されたシートであってもよい。シリコーン樹脂原料は、付加的に、光散乱性のフィラー等を含んでいてもよい。母材としてのシリコーン樹脂は、典型的には、少なくとも1つのフェニル基を分子中に有する有機ポリシロキサン、および/または、Dユニットを有する有機ポリシロキサンを含有する。上述の第2樹脂材料をスプレー法、キャスト法、ポッティング法等の塗布法によって透光シートの主面上に付与し、第2樹脂材料を硬化させることによっても蛍光体シートおよび透光性の樹脂シートの積層シートを得ることができる。あるいは、購入によって積層シートまたは積層シート片LBを準備してもよい。購入によって蛍光体シートおよび/または透光シートを準備してもよい。なお、第1樹脂材料130rを硬化させる過程で透光性の樹脂シート中のシリコーン樹脂が硬化されてもかまわない。
【0055】
導光部材130Aの形成後に、発光素子110Aの側面に相当する素子本体111の側面111cを覆う光反射性部材を形成する。例えば、
図17に示すように、支持体50上の構造を光反射性樹脂層150Tで覆う。
【0056】
光反射性樹脂層150Tは、例えば光反射性のフィラーが分散された第3樹脂材料を支持体50の上面50aに付与した後、第3樹脂材料を硬化させることによって形成することができる。第3樹脂材料としては、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、BTレジン、ポリフタルアミド(PPA)等を母材として含む材料を用いることができる。光反射性のフィラーとしては、二酸化チタンの粒子に代表される上述の光散乱粒子を用いることができる。光反射性樹脂層150Tの形成には、例えばトランスファー成形を適用できる。
図17に示す状態では、樹脂体140Uの上面140aは、光反射性樹脂層150Tによって覆われている。積層シート片LBを構成する透光性の樹脂シートがBステージの状態である場合、光反射性樹脂層150Tの形成の過程で透光性の樹脂シート中のシリコーン樹脂が本硬化されてもかまわない。
【0057】
次に、
図18に示すように、研削加工等を適用して光反射性樹脂層150Tの上面側から光反射性樹脂層150Tの一部を除去することによって樹脂体140Uの上面140aを露出させる。研削加工の実行により、
図11に示す発光体100Uと同様の構成を有する複数の構造が支持体50の上面50aに得られる。なお、このとき、光反射性樹脂層150Tの一部とともに樹脂体140Uの一部が研削によって除去されてもよい。この場合、研削によって露出された上面140aは、厳密には、研削の実行前の上面140aとは異なる面であるといえるが、このように新たに形成された面も、実施形態における上面140aに含まれると解釈される。
【0058】
[透光性部材の形成の工程]
発光体100Uの準備後、表面に凹凸のパターンを有し、発光素子110Aの上面を覆う透光性部材を形成する(
図9のステップS22)。本実施形態では、フォトマスクを介した紫外線の照射により、樹脂体の表面、ここでは、樹脂体140Uの上面140aに複数の凹部を形成する。
【0059】
例えば、
図19に示すように、樹脂体140Uの上面140a側にフォトマスク200を配置した状態で、紫外線照射装置500により、フォトマスク200を介して樹脂体140Uの上面140a(例えば樹脂体140Xの主面140aに相当)を紫外線で照射する(
図10のステップS221)。樹脂体の表面への凹部形成の工程は、
図4〜
図6を参照して説明した、紫外線の部分的な照射による樹脂体140Xの主面140aへの複数の凹部140dの形成の例と同様にして実行することができる。
【0060】
図4に示す例と同様に、フォトマスク200は、遮光領域200sおよび透過領域200tを有する。フォトマスク200を介した紫外線の照射により、
図6に示す例と同様に、上面140aのうち遮光領域200sで覆われていた第1領域R1の高さと、透過領域200tの直下に位置していた第2領域R2の高さとを互いに異ならせ得る。換言すれば、紫外線の部分的な照射により、樹脂体140Uの上面140aに、フォトマスク200の遮光領域200sに対応した位置に複数の凹部140dを形成することができる。既に説明したように、フォトマスク200が樹脂体140Uの上面140aに接触していてもよく、接触していなくてもよい。
【0061】
紫外線の照射により、
図20に示すように、樹脂体の表面、ここでは、樹脂体140Uの上面140aに複数の凹部が形成された複数の構造の集合体を形成する。すなわち、複数の凹部140dを有し、発光素子110Aの上面を覆う透光性部材140Aが得られる。なお、樹脂体140Uが予備硬化の状態である場合には、例えば紫外線の照射後に、加熱により樹脂体140Uを硬化させる(
図10のステップS222)。例えば、支持体50上に得られた構造を150℃の温度下に4時間おくことにより、樹脂体140U中のシリコーン樹脂を本硬化状態とすることができる。支持体50上に得られた構造の加熱は、必要に応じて実行されればよく、
図10に示すステップS222は、省略され得る。
【0062】
さらに、ダイシング装置等によって支持体50上の構造を所望の形状に切り出す。例えば、
図21に示すように、互いに隣接する2つの発光素子110Aの位置で、光反射性樹脂層150Tを切断する。光反射性樹脂層150Tの研削および切断の工程により、
図21に示すように、光反射性部材150Aを形成することができる。その後、支持体50上の構造を支持体50から分離することにより、
図8に示す発光装置100Aが得られる。
【0063】
上述の例では、それぞれが発光素子110Aおよび樹脂体140Uを含む構造の集合体に対して紫外線を照射した後に個片化しているが、以下のように、構造の集合体を個片化して発光体100Uを得た後に紫外線を照射してもよい。
【0064】
図18を参照して説明したように例えば研削によって光反射性樹脂層150Tから樹脂体140Uの上面140aを露出させた後、支持体50上にある構造の集合体をダイシング装置等によって所望の形状に切り出す。例えば、互いに隣接する2つの発光素子110Aの位置で研削後の光反射性樹脂層150Tを切断することにより、
図22に示すように、光反射性部材150Aを形成することができる。その後、支持体50上の構造を支持体50から分離することにより、
図11に示す発光体100Uが得られる。
【0065】
個片化された発光体100Uを得た後、発光素子110Aの上面を覆う透光性部材を形成する(のステップS22)。例えば、
図23に模式的に示すように、粘着シートまたは基板等の支持体60上に発光体100Uを配置し、上面100Uaにフォトマスク200を配置した状態で、紫外線照射装置500により、フォトマスク200を介して樹脂体140Uの上面140a(例えば樹脂体140Xの主面140aに相当)を紫外線で照射する(
図10のステップS221)。この例でもやはり、フォトマスク200が樹脂体140Uの上面140aに接触していることは必須ではない。紫外線の照射は、
図23に例示するように、複数の発光体100Uの樹脂体140Uに対して一括して実行されてもよいし、複数の発光体100Uのそれぞれに対して個別に実行されてもよい。
【0066】
フォトマスク200を介した紫外線の照射により、樹脂体140Uの上面140aに複数の凹部140dが形成され、発光素子110Aの上面を覆う透光性部材140Aが得られる。樹脂体140Uが予備硬化の状態である場合には、加熱により、樹脂体140Uを硬化させる(
図10のステップS222)。以上の工程により、
図24に示すように、複数の発光装置100Aが支持体60上に得られる。
【0067】
本開示の第2の実施形態によれば、発光素子を覆う透光性の部材の表面に微細な凹凸を付与して光の取り出し効率を向上させ得る。上述の発光装置100Aのように、発光素子110Aの光出射側に透光性の部材を配置する場合、発光素子110Aからの光による劣化を考慮して、透光性の部材の材料として熱硬化性樹脂を用いることが有益である。本開示の実施形態によれば、基本的に非接触で熱硬化性樹脂の表面に凹凸のパターンを形成することが可能になるので、光の取り出し効率の向上に有利である。しかも、実質的に発光装置として使用可能な構造(例えば発光体100U)の表面に事後的に凹凸パターンを形成することが可能である。特許文献2には、発光素子を樹脂材料で覆い、さらに、予備硬化の状態または硬化後の樹脂の表面に凹凸パターンを形成するという着眼点はない。
【0068】
上述の例では、発光素子110Aの上面に付与された第1樹脂材料130r上に積層シート片LBを配置後、第1樹脂材料130rを硬化させ、積層シート片LBを発光素子110Aの上方に接合している。このとき、第1樹脂材料130rから導光部材130Aを形成することができる。導光部材130Aは、発光素子110Aの側面である素子本体111の側面111cから出射された光を発光装置100Aの上方に向けて反射させる機能を有する。したがって、導光部材130Aの形成により、光の利用効率を向上させることが可能になる。
【0069】
さらに、上述の例では、導光部材130Aを取り囲み、かつ、素子本体111の下面111bのうち正極112Aおよび負極114Aを除く領域を覆う光反射性部材150Aを発光装置100Aに設けている。そのため、発光装置100Aの側面または下面100bからの光の漏れを抑制して、光の利用効率をより向上させ得る。
【0070】
注目すべきは、光反射性樹脂層150Tの内部に一旦樹脂体140Uを埋設してから樹脂体140Uの上面140aを光反射性樹脂層150Tから露出させ、上面140aに凹凸を形成している点である。従来、光反射性樹脂層150Tの内部に樹脂体140Uのような透光性の部材を埋設するような製造方法では、研削面に現れる、透光性の部材の表面に事後的に凹凸を付与することは困難であった。これに対し、本開示の実施形態によれば、予備硬化の状態または硬化後の樹脂体140Uの表面に形状を付与することが可能である。そのため、製品として使用可能な発光装置を得た後に、透光性の部材に事後的に形状を付与することが可能になり、発光装置からの光の取出し効率向上の効果が期待できる。
【0071】
図8を参照して説明したように、ここでは、正極112Aおよび負極114Aが発光装置100Aの下面100bから露出されており、発光装置100Aは、例えばリフローによって配線基板等に実装され得る。本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、透光性部材140Aが高温の環境にさらされた場合であっても、凹部140dの形状を維持させることが可能である。つまり、本開示の実施形態は、リフロー等の高温を伴うプロセスの適用に有利である。例えば、発光装置100Aを300℃の温度下で40分間加熱したときの、加熱の前後における凹部140dの深さの変化は、25%以下の範囲内であり得る。ここで、凹部140dの深さの変化は、加熱を実行する前における任意の10箇所の凹部140dの深さの平均値をDp、加熱を実行した後における任意の10箇所の凹部140dの深さの平均値をDqとしたとき、|Dq−Dp|/Dpにより定義することができる。
【0072】
なお、上述の支持体50に代えて、
図25に例示するような、基板410Aと、基板410A上に設けられた第1導電部411Aおよび第2導電部412Aとを有する複合基板400Aを用いてもよい。
図25は、複合基板400Aを上面400a側から見たときの外観の一例を示している。基板410Aは、
図25に模式的に示すように、貫通孔414を有する。
図25には表れていないが、第1導電部411Aの一部および第2導電部412Aの一部は、貫通孔414を介して上面400aとは反対側の下面まで延びている。
【0073】
基板410Aを用いる場合、支持体50への複数の発光素子110Aの一時的な固定(
図13参照)に代えて、例えば、フリップチップ接続により複数の発光素子110Aが複合基板400Aの上面400a側に固定される。このとき、はんだ等の接合部材により、各発光素子110Aの正極112Aおよび負極114Aが複合基板400Aの第1導電部411Aおよび第2導電部412Aにそれぞれ接続される。なお、
図25中に細い破線で描かれた矩形は、発光素子110Aが配置される位置を示している。導光部材130Aの形成および透光性の樹脂体140Uの配置の後、
図17を参照して説明した工程と同様に、複合基板400Aの上面400a上の構造を光反射性樹脂層150Tによって覆う。
【0074】
研削等によって樹脂体140Uの上面140aを光反射性樹脂層150Tから露出させた後、
図19を参照して説明した例と同様にして上面140aに複数の凹部140dを形成する。その後、
図25に太い破線CTで示す位置でダイシング装置等によって光反射性樹脂層150Tおよび複合基板400Aを一括して切断することにより、複数の発光装置100Bが得られる。
【0075】
図26は、発光装置100Bの外観の一例を示す。
図27は、発光装置100Bを発光装置100Bの中央付近の位置で
図26中のYZ面に平行に切断したときの断面を模式的に示す。
図26および
図27に示すように、発光装置100Bは、透光性部材140Aの側面140cを覆う光反射性部材150Bと、複合基板400Bとを含む。複合基板400Bは、基板410Bと、第1導電部411Bと、第2導電部412Bとを含み、
図27に示すように、第1導電部411Bおよび第2導電部412Bは、接合部材420によって発光素子110Aの正極112Aおよび負極114Aにそれぞれ電気的に接続されている。
図27に例示する構成において、光反射性部材150Bは、複合基板400Bにまで達し、接合部材420をも覆っている。
【0076】
ここで、基板410B、第1導電部411Bおよび第2導電部412Bは、それぞれ、
図25に示す基板410A、第1導電部411Aおよび第2導電部412Aの一部である。
図26および
図27に例示する構成において、発光装置100Bは、図のX軸方向に対してY軸方向に長い形状を有し、いわゆるサイドビュータイプの発光装置として用いられる。
【0077】
図8に示す発光装置100Aは、以下のようにして得ることもできる。
図28は、本開示の第2の実施形態による発光装置の製造方法のさらに他の一例を示すフローチャートである。
図28に例示された発光装置の製造方法は、概略的には、発光素子を準備する工程(ステップS23)と、表面に凹凸のパターンを有し、発光素子の上面を少なくとも覆う透光性部材を形成する工程(ステップS24)とを含む。この例において、透光性部材を形成する工程(
図28のステップS24)は、
図29に例示されるように、透光性の樹脂体の表面を、遮光領域および透過領域を有するフォトマスクを介して紫外線で照射する工程(ステップS241)を含む。フォトマスクを介した紫外線の照射の対象となる樹脂体は、シリコーン樹脂原料を例えば硬化させることによって形成された透光性の部分をその一部に含む樹脂シートである。紫外線の照射の工程の実行後、必要に応じて、樹脂体を硬化させる工程(ステップS242)がさらに実行され得る。
【0078】
まず、
図30に示すように、透光部172を有する第1の樹脂層170を準備する。樹脂層170は、2以上の透光部172を有し得る。
図30に例示する構成において、樹脂層170は、光反射性樹脂部174を有し、各透光部172は、光反射性樹脂部174によって互いに分離されている。なお、この例では、各透光部172は、透光層140Lおよび波長変換層120Lを含む。樹脂層170は、例えば以下のようにして得ることができる。
【0079】
まず、光反射性の樹脂シートを準備する。光反射性の樹脂シートの材料としては、上述の第3樹脂材料を用いることができる。例えば、光反射性の樹脂シートは、シリコーン樹脂に二酸化チタンおよび酸化ケイ素の粒子が60重量%程度分散された樹脂シートであり得る。光反射性の樹脂シートの形成には、圧縮成形、トランスファー成形もしくは射出成形、または、印刷法もしくはスプレー法を適用した成形を用い得る。
【0080】
次に、パンチング等によって樹脂シートに貫通孔を設ける。上面視における貫通孔の形状は、例えば矩形状である。貫通孔の形成後、ポッティング法、印刷法、スプレー法等により、未硬化のシリコーン樹脂を母材として含む、例えば上述の第2樹脂材料で貫通孔の内部を充填する。このとき、貫通孔の内部に充填された第2樹脂材料において蛍光体の粒子を沈降させて第2樹脂材料を硬化させることにより、厚さ方向において蛍光体の濃度差を有する透光部を形成することが可能である。例えば、蛍光体の粒子が下面側に多く分布する透光部を形成することができる。あるいは、貫通孔の内部に透明な樹脂材料を配置して硬化させた後、透明な樹脂材料上に第2樹脂材料を付与して貫通孔をこれらの材料で充填してもよい。
【0081】
蛍光体の粒子を沈降させ、第2樹脂材料の硬化後に上下を反転させれば、
図30に示すような、光反射性樹脂部174および複数の透光部172を有する樹脂層170が得られる。
図30に例示する構成において、透光層140Lは、透光部172中、蛍光体の粒子の濃度が相対的に低い層である。なお、
図30では、波長変換層120Lと透光層140Lとの間に境界が存在するかのようにこれらの層を図示しているが、これらの層の間の境界を明確に認識できないこともある。透光部172中のシリコーン樹脂は、予備硬化の状態であってもかまわない。
【0082】
次に、樹脂層170のうち透光部172が配置された領域上にディスペンサ等によって透光性の第1樹脂材料130rを付与する。さらに、発光素子110Aを準備し(
図28のステップS23)、
図31に示すように、正極112Aおよび負極114Aを樹脂層170とは反対側に向けて、発光素子110Aを第1樹脂材料130r上に配置する。これにより、素子本体111の側面111cの少なくとも一部の上に第1樹脂材料130rを配置することができる。第1樹脂材料130rを硬化させることにより、第1樹脂材料130rから導光部材130Aを形成することができる。
【0083】
次に、
図32に示すように、樹脂層170上の構造を覆う第2の樹脂層としての光反射性樹脂層150Tを形成する。光反射性樹脂層の材料には、上述の光反射性の樹脂シートの材料、すなわち、樹脂層170の光反射性樹脂部174の材料と同様に上述の第3樹脂材料を用いることができる。光反射性樹脂層150Tの形成には、例えばトランスファー成形を適用できる。
【0084】
次に、研削加工等を適用して光反射性樹脂層150Tの上面側から光反射性樹脂層150Tの一部を除去することにより、
図33に示すように、各発光素子110Aの正極112Aおよび負極114Aを研削面から露出させる。
【0085】
その後、ダイシング装置等によって樹脂層170および光反射性樹脂層150Tを互いに隣接する2つの発光素子110Aの位置で切断することにより、光反射性樹脂部174および光反射性樹脂層150Tから光反射性部材150Aを形成して、
図34に示すように、各々が、
図11に示す発光体100Uと同様の構成を有する複数の発光体が得られる。この例において、樹脂層170の透光部172の透光層140Lおよび波長変換層120Lが、透光性の樹脂体140Uおよび波長変換部材120Aに対応する。
【0086】
次に、樹脂体140Uから、発光素子110Aの上面を少なくとも覆う透光性部材140Aを形成する。透光性部材140Aの形成の工程は、例えば
図23および
図24を参照して説明した例と同様にして実行することができる。
【0087】
例えば、まず、
図23に示すように、支持体60上に発光体100Uを配置し、上面100Uaにフォトマスク200を配置する。さらに、樹脂体140Uの上面140aを、フォトマスク200を介して紫外線で照射する(
図29のステップS241)。この工程も、
図6を参照して説明した、樹脂体140Xの主面140aへの紫外線の照射の例と同様にして実行することができる。紫外線の照射により、上面140aに複数の凹部140dを形成することができ、その結果、表面に凹凸のパターンを有し、発光素子110Aの上面を覆う透光性部材140Aが得られる(
図28のステップS24)。
【0088】
なお、透光部172を有する樹脂層170の段階で、
図4〜
図6を参照した例と同様の方法により、透光部172の表面に複数の凹部140dを形成してもよい。樹脂体140U中のシリコーン樹脂がBステージの状態にある場合には、凹部140dの形成後、例えば加熱によって樹脂体140Uを硬化させることにより(
図29のステップS242)、透光性部材140Aを有する発光装置100Aが得られる。
【0089】
個片化の前の段階、換言すれば、各々が発光体100Uと同様の構成を有する複数の発光体の集合体の段階で、紫外線の照射の工程が実行されてもよい。
図33に示すように、正極112Aおよび負極114Aを光反射性樹脂層150Tから露出させた後であって光反射性樹脂層150Tを切断する前の状態、すなわち、複数の発光体が光反射性樹脂層150Tによって一体的に保持された状態で、紫外線を照射する工程を行い、その後、光反射性樹脂層150Tを切断して複数の発光装置100Aを得てもよい。
【0090】
(第2の実施形態の変形例)
図35は、第2の実施形態による発光装置の製造方法によって得られる発光装置のさらに他の一例を示す。
図35に示す発光装置100Cは、
図8を参照して説明した例と同様に、発光素子110A、波長変換部材120A、導光部材130A、透光性部材140Aおよび光反射性部材150Cを有する。光反射性部材150Cが、発光素子110Aの側面を取り囲み、かつ、素子本体111の下面111bのうち、正極112Aおよび負極114Aの配置された領域以外の領域を覆う点は、
図8に示す発光装置100Aの光反射性部材150Aと同様である。ただし、この例では、光反射性部材150Cは、波長変換部材120Aの側面120cおよび透光性部材140Aの側面140cを覆っていない。
【0091】
図35に示す発光装置100Cは、概略的には、
図30〜
図34を参照しながら説明した例と同様に、
図28に示すフローと同様の工程に従って製造することができる。ただし、ここでは、透光性部材の形成の工程は、
図36に示すように、透光シートの主面を、遮光領域および透過領域を有するフォトマスクを介して紫外線で照射する工程(ステップS243)と、紫外線で照射された透光シートを発光素子の上面側に配置する工程(ステップS244)とを含む。フォトマスクを介した紫外線の照射の対象となる透光シートは、典型的には、未硬化のシリコーン樹脂原料を硬化させることによって形成されたシートである。以下、図面を参照しながら、発光装置100Cの例示的な製造方法の詳細を説明する。
【0092】
まず、発光素子を準備する(
図28のステップS23)。さらに、発光素子110Aの上面を少なくとも覆う透光性部材を形成する(
図28のステップS24)。ここでは、透光性部材の形成に際し、まず、
図37に示すような、波長変換層120Vおよび透光層140Vを有する積層シート片170Vを準備する。この例では、透光層140Vは、主面140Vaおよび主面140Vbを有し、主面140Vbは、波長変換層120Vの一方の主面120Vaに対向している。
図37に模式的に示すように、透光層140Vは、主面140Vaに複数の凹部140dを有している。積層シート片170Vは、例えば、上述の積層シート片LBと同様にして作製することができる。
【0093】
まず、主面を有する透光性の樹脂シート(以下、簡単のために、単に「透光シート」と呼ぶことがある。)を準備する。透光シートは、例えば、未硬化のシリコーン樹脂原料を硬化させることによって得ることができる。上述の樹脂体140Xは、透光シートの一例である。透光シートは、Bステージの状態であってもよい。
【0094】
透光シートの準備後、透光シートの主面上にフォトマスク200を配置し、例えば紫外線照射装置500を用いてフォトマスク200を介して透光シートの主面を紫外線で照射する(
図36のステップS243)。フォトマスク200を介した紫外線の照射により、透光シートの主面のうちフォトマスク200の遮光領域200sに対応する第1領域R1の高さと、透光シートの主面のうちフォトマスク200の透過領域200tに対応する第2領域R2の高さとを互いに異ならせて、透光シートの主面に複数の凹部140dを形成することができる。透光シートの主面への凹部形成の工程は、
図4〜
図6を参照して説明した、樹脂体140Xの主面140aへの複数の凹部140dの形成の例と同様にして実行することができる。
【0095】
以上の工程により、
図7に示す透光性部材140と同様の、主面140aに複数の凹部140dを有する透光シートが得られる。必要に応じて、紫外線の照射後の透光シートを所定の寸法に切断する。ここでは、透光シートは、上面視において例えば矩形状の外形を有する。さらに、透光シートの主面140aとは反対側の主面上に波長変換層120Vを形成する。波長変換層120Vの形成により、上述の透光シートを透光層140Vとして含む積層シート片170Vが得られる。
【0096】
波長変換層120Vの形成には、上述の積層シート片LBの形成の例と同様の手法を適用できる。例えば、蛍光体の粒子が分散された樹脂材料中の樹脂をBステージの状態とした蛍光体シートを透光シートの主面140aとは反対側の主面上に配置し、熱によってこれらのシートを貼り合わせることにより、積層シート片170Vが得られる。あるいは、透光シートの主面140aとは反対側の主面上に上述の第2樹脂材料を付与した後、第2樹脂材料を硬化させることによって波長変換層120Vを形成してもよい。購入によって積層シート片170Vを準備してもよい。なお、複数の凹部140dの形成は、透光層140Vの一方の主面上に波長変換層120Vを配置した後に実行されてもかまわない。例えば、透光層140Vの一方の主面上に波長変換層120Vを形成した後に、透光シートの波長変換層120Vとは反対側の主面に複数の凹部140dを形成してもかまわない。
【0097】
その後、紫外線で照射された透光シートを発光素子の上面側に配置する(
図36のステップS244)。ここでは、
図37に模式的に示すように、波長変換層120V上に第1樹脂材料130rを付与し、第1樹脂材料130r上に発光素子110Aを配置する。このとき、素子本体111の上面111aを積層シート片170Vに向けて第1樹脂材料130r上に発光素子110Aを配置する。これにより、素子本体111の側面111cの少なくとも一部の上に第1樹脂材料130rを配置することができる。第1樹脂材料130rを硬化させることにより、
図38に示すように、導光部材130Aを形成して、上述の透光シートを透光層140Vの形で発光素子110Aの上面側に配置することができる。なお、
図37および
図38では、1つの発光素子110Aを図示しているが、
図31を参照して説明した、樹脂層170上に複数の発光素子110Aを配置する例のように、積層シート片170V上に複数の発光素子110Aを配置してよいことはいうまでもない。
【0098】
次に、積層シート片170Vに例えば上述の第3樹脂材料を付与し、積層シート片170V上の構造を第3樹脂材料によって覆い、第3樹脂材料を硬化させる。第3樹脂材料を硬化させることにより、
図39に示すように、発光素子110Aおよび導光部材130Aを覆う光反射性樹脂層150Tを形成することができる。光反射性樹脂層150Tの形成には、例えばトランスファー成形を適用できる。透光層140V中のシリコーン樹脂がBステージの状態である場合には、この光反射性樹脂層150Tの形成の工程において透光層140V中のシリコーン樹脂が硬化され得る。
【0099】
その後、研削加工等によって正極112Aおよび負極114Aを研削面から露出させ、
図40に示すように、ダイシング装置等を用いて積層シート片170Vおよび光反射性樹脂層150Tを所望の形状に切り出す。以上の工程により、積層シート片170Vから透光性部材140Aおよび波長変換部材120Aを形成し、光反射性樹脂層150Tから光反射性部材150Cを形成して、
図35に示す発光装置100Cが得られる。なお、ここでは、積層シート片170Vの波長変換層120Vおよび透光層140Vのうちの透光層140Vに、複数の凹部140dが形成された透光シートを用いている。ただし、この例に限定されず、
図4〜
図6を参照して説明した手法と同様の手法を適用することによって複数の凹部が形成された蛍光体シートを波長変換層120Vとして用いてもよい。このとき、透光層140Vを省略して、発光素子110Aの上面の上方に位置する透光性部材を波長変換層120Vから形成してもよい。
【0100】
本実施形態においては、凹部140dを有する主面140aが発光装置の上面(表面)を構成する例を挙げて図示している。ただし、凹部140dは、発光装置の表面に配置されてなくてもよい。例えば、凹部140dが形成された主面140aを発光素子または発光体の上面に対向させてもよい。あるいは、主面140aおよび主面140aとは反対側の主面140bの両方に凹凸のパターンを形成してもよい。凹部140dの内部は、空気によって満たされていてもよいし、透光性部材140Aを構成する材料とは異なる屈折率を有する材料で充填されてもよい。いずれにせよ、透光性部材140Aの表面に凹凸のパターンが形成されている点は、上述の各例の間で共通している。
【0101】
(第3の実施形態)
図41および
図42は、第3の実施形態による発光装置の製造方法によって得られる発光装置の一例を示す。
図41は、発光装置を上面側から見た例示的な外観を示し、
図42は、
図41のXLII−XLII断面を示す。
【0102】
図41および
図42に示す発光装置100Eは、概略的には、発光素子110Bと、発光素子110Bを取り囲む基台350と、一対のリード361、362を有するパッケージ300とを含む。パッケージ300の基台350の中央には、素子載置凹部350eが設けられており、発光素子110Bは、素子載置凹部350eの内側に配置されている。基台350は、上述の光反射性部材150A〜150Cと同様に、例えば、光反射性のフィラーが分散された第3樹脂材料から形成され、発光素子110Bから出射された光線を反射させて発光装置100Eの上面100a側から外部に出射させる機能を有する。本実施形態におけるパッケージは、絶縁材料である樹脂を母材とする基台および導電性のリードを有する、上述のような樹脂パッケージのほか、基台の材料としてセラミックを用いたセラミックパッケージまたは金属パッケージ等の、公知の電子部品用パッケージを用いることができる。
【0103】
図42に示すように、リード361の上面361aの一部およびリード362の上面362aの一部は、素子載置凹部350eの底面350fの一部を構成し、リード361の下面361bおよびリード362の下面362bは、発光装置100Eの下面100bから露出されている。ここでは、発光素子110Bは、接合部材360によってリード361上に固定されている。接合部材360を構成する材料は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂材料等の絶縁性の材料、または、Agペースト等の導電性の材料である。
【0104】
図41および
図42に例示する構成において、発光素子110Bは、下面110bとは反対側の上面110aに正極112Bおよび負極114Bを有する。正極112Bおよび負極114Bには、Au、Ag、Al、Cu等の導電性のワイヤ372および371がそれぞれ接続される。この例では、ワイヤ372によって正極112Bがリード362に電気的に接続され、ワイヤ371によって負極114Bがリード361に電気的に接続されている。
【0105】
発光装置100Eは、素子載置凹部350eの内側に位置する透光性部材340をさらに含む。
図42に模式的に示すように、透光性部材340は、発光素子110B、ワイヤ371および372を覆っている。また、
図42に模式的に示すように、透光性部材340は、発光素子110Bの上面110aの上方に位置する上面340aに、例えば二次元的に配置された複数の凹部340dを有する。なお、この例では、透光性部材340の上面340aは、基台350の上面350aと概ね整合しており、透光性部材340の上面340aは、上面350aとともに発光装置100Eの上面100aを構成する。
【0106】
なお、透光性部材340の上面340aが基台350の上面350aと概ね整合することは、必須ではない。
図43に模式的に示すように、透光性部材340の上面340aは、周縁部と比較してその中央が低く窪んだ凹状を有し得る。また、図示しないが、透光性部材340の上面340aは、中央が高くなった凸状であってもよい。
【0107】
以下、発光装置100Eの例示的な製造方法を説明する。
図41および
図42に示す発光装置100Eは、概略的には、
図9に示すフローと同様の工程に従って製造することができる。ただし、ここでは、発光体の準備の工程は、
図44に示すように、上面を有する発光素子を準備する工程(ステップS214)と、シリコーン樹脂原料で発光素子を覆い、シリコーン樹脂原料を硬化させることによって樹脂体を形成する工程(ステップS215)とを含む。透光性部材の形成の工程は、
図10を参照して説明した例と同様であり得る。
【0108】
発光体の準備(
図9のステップS21)に際し、まず、発光素子110Bおよびパッケージ300を準備する(
図44のステップS214)。ここで、パッケージ300は、各々がパッケージ300を構成する複数の単位を含む複合基板の形で準備することができる。
図45は、複合基板の一例を示す。
図45に例示する複合基板300Fは、導電性のリードフレーム360Fと、複数の素子載置凹部350eが設けられた基台350Fとを含む。
図45では、それぞれが素子載置凹部350eを含む複数の単位のうちの4つを取り出して示している。
【0109】
図45に模式的に示すように、リードフレーム360Fは、第1導電部材であるリード361および第2導電部材であるリード362の複数の組と、互いに隣接する組の間に配置され、これらの組を互いに接続する複数の連結部363とを有する。リード361および362は、例えば、Cuから形成された基材と、基材を被覆する金属層とを有し得る。基材を被覆する金属層は、Ag、Al、Ni、Pd、Rh、Au、Cu、または、これらの合金等を含む、例えばめっき層である。基材を被覆する金属層は、各層がこれらの金属材料の1種以上を含む積層体の形で形成されてもよい。
【0110】
リード361の一部およびリード362の一部は、基台350Fの素子載置凹部350eのそれぞれの底部において露出されている。素子載置凹部350e内において互いに対向するリード361および362の組のそれぞれは、リード361および362が互いに空間的に分離されることによって形成されたギャップGpを有する。複合基板300Fは、リードフレーム360Fに基台350Fをトランスファー成形等によって一体的に形成することによって得ることが可能である。ギャップGpは、基台350Fを構成する材料によって埋められる。
【0111】
次に、
図46に示すように、各素子載置凹部350e内に発光素子110Bを配置し、ワイヤ371および372によって正極112Bおよび負極114Bをリード361、362に電気的に接続する。
【0112】
さらに、各素子載置凹部350eを未硬化のシリコーン樹脂を含むシリコーン樹脂原料で充填し、シリコーン樹脂原料を硬化させることにより、発光素子110Bを覆う透光性の樹脂体340Zを形成する(
図44のステップS215)。樹脂体340Zを形成するためのシリコーン樹脂原料は、上述の樹脂体140Xの材料と同様の材料であり得る。すなわち、樹脂体340Z中のシリコーン樹脂は、典型的には、少なくとも1つのフェニル基を分子中に有する有機ポリシロキサン、および/または、2つのメチル基がケイ素原子に結合したDユニットを有する有機ポリシロキサンを含有する。シリコーン樹脂原料は、光散乱性のフィラー等がさらに分散された原料であってもよい。
【0113】
以上の工程により、
図46に示すように、各々が発光素子110Bおよび透光性の樹脂体340Zを有する複数の発光体100Yを単位とする繰り返し構造が得られる。ここでは、さらに、
図19、
図23を参照して説明した例と同様にして、樹脂体340Zの上面に凹凸パターンを形成する。
【0114】
例えば、
図47に模式的に示すように、支持体60上に発光体100Yを配置し、素子載置凹部350eの開口側にフォトマスク200を配置する。このとき、
図47に示すように、フォトマスク200は、樹脂体340Zと接していてもよい。樹脂体340Zの上面が凹状である場合には、フォトマスク200は、
図48に示すように、基台350Fと接しながらも樹脂体340Zとは離間するように配置され得る。
【0115】
さらに、例えば紫外線照射装置500により、フォトマスク200を介して樹脂体340Zの上面340a(例えば
図19、
図23の樹脂体140Uの上面140aに相当)を紫外線で照射する(
図10のステップS221)。紫外線の照射により、
図49に模式的に示すように、上面340aのうちフォトマスク200の遮光領域200sに対応する第1領域R1の高さと、上面340aのうちフォトマスク200の透過領域200tに対応する第2領域R2の高さとを互いに異ならせ得る。結果として、樹脂体340Zから、発光素子110Bの上面110aを覆い、上面340aに複数の凹部340dを有する透光性部材340を形成することができる。その後、ダイシング装置等によって、互いに隣接する2つの発光体100Yの間の位置で基台350Fとリードフレーム360Fの連結部363とを切断することにより、複数の発光装置100Eを得ることができる。
【0116】
なお、樹脂体340Zの形成に先立ち、発光素子110Bを覆う波長変換部材を形成してもよい。例えば、発光素子110Bが覆われるように各素子載置凹部350eの内部に、蛍光体を含む樹脂材料である第2樹脂材料を付与し、第2樹脂材料を硬化させることにより、波長変換部材を形成する。さらに、波長変換部材上に樹脂体340Zを形成する。
【0117】
その後、
図47および
図48を参照して説明した工程を実行すれば、
図50に例示する発光装置100F、あるいは、
図51に例示する発光装置100Gが得られる。発光装置100Fおよび発光装置100Gは、発光素子110Bを覆う波長変換部材320Aと、波長変換部材320Aを覆う透光性部材340とを素子載置凹部350eの内側に有する。
図50および
図51のいずれの例においても、透光性部材340の上面340aには、複数の凹部340dが設けられている。
図50に示す例と比較して、
図51に示す例では、透光性部材340の上面340aは、その中央が窪んだ形状を有しており、上面340aの多くの部分は、基台350の上面350aよりも低い位置にある。
【0118】
あるいは、シリコーン樹脂を含有する第2樹脂材料をシリコーン樹脂原料として用いて第2樹脂材料で各素子載置凹部350eを充填してもよい。素子載置凹部350e内の第2樹脂材料を硬化させて発光体を得た後、
図47および
図48を参照して説明した工程と同様の工程を実行すれば、
図52に例示する発光装置100H、あるいは、
図53に例示する発光装置100Iが得られる。発光装置100Hおよび発光装置100Iは、素子載置凹部350e内に、発光素子110Bを覆う波長変換部材320Bを有する。
図52および
図53に模式的に示すように、波長変換部材320Bは、その上面320aに、複数の凹部340dを有する。
図61を参照して説明した例と同様に、
図53に示す例では、
図52に示す例と比較して、波長変換部材320Bの上面320aは、その中央が窪んだ形状を有しており、上面320aの多くの部分は、基台350の上面350aよりも低い位置にある。このように、透光性部材としての波長変換部材320Bに、紫外線の部分的な照射により、複数の凹部320dを形成してもよい。
【0119】
上述の第2の実施形態と同様に、本開示の第3の実施形態によれば、発光素子を覆う透光性の樹脂体の表面に微細な凹凸を付与することが可能であり、光の取り出し効率向上の効果が期待できる。第3の実施形態によれば、発光素子を樹脂で封止した後に、発光素子を覆う透光性部材の表面に基本的に非接触で凹凸パターンを形成することが可能である。また、本実施形態においても、凹凸形状の付与後の透光性部材を構成する樹脂は、硬化された状態である。そのため、リフロー等の高温を伴うプロセスを実行しても、透光性部材の表面の凹凸形状を維持させ得る。
【0120】
このように、本開示の実施形態によれば、発光素子の封止後に、発光素子を覆う透光性の構造の表面に、基本的に非接触で微細な凹凸を付与することが可能である。
図41〜
図49を参照して説明した例から明らかなように、紫外線の照射による形状の付与の対象は、板状の形状を有する部材に限定されない。紫外線の照射による形状の付与の対象は、ドーム状等、曲面状の表面を有する部材であってもよい。本開示の実施形態によれば、ポッティング、圧縮成形等によって発光素子を覆う透光性の構造を形成した後、その構造の表面に微細な凹凸を事後的に付与し得る。
【実施例】
【0121】
(実施例1−1)
以下の手順に従って実施例1−1〜実施例1−3のサンプルを作製し、各サンプルの表面の形状を紫外線の照射の前後で比較した。
【0122】
まず、フェニル基を分子中に有する有機ポリシロキサンを含有するシリコーン樹脂を予備硬化させることにより形成された透光シートを準備した。ここでは、透光シートとして、信越化学工業株式会社から販売されているシリコーン樹脂(型番:KE−1011)をスクリーン印刷法によってシート状に整形した後、150℃の温度下で0.5時間加熱することによりシリコーン樹脂を予備硬化させ、厚さ100μmの透光シートを得た。
【0123】
また、クロムから形成された複数の遮光領域を有するフォトマスクを準備した。遮光領域の各々の形状は、直径が9μmの円形状であった。また、これらの遮光領域は、それぞれの中心が三角格子の格子点上に位置するようにフォトマスクの主面に二次元に配置され、互いに隣接する2つの遮光領域の間の中心間距離は、15μmであった。
【0124】
次に、透光シートの一方の主面上にフォトマスクを配置し、最も強いピークの波長が365nmの位置にある紫外線光源を有する紫外線照射装置を用い、フォトマスクを介して透光シートの主面を紫外線で照射した。なお、照射された紫外線は、UVA〜UVCの波長範囲にわたるスペクトルを有していた。このときの紫外線の照射量は、210J/cm
2、照射時間は、300秒程度であった。
【0125】
図54は、紫外線の照射後の透光シートの表面を拡大して示す顕微鏡画像である。
図55および
図56は、紫外線の照射後の透光シートの表面形状を示す、レーザー顕微鏡によって得られた画像である。
図56は、透光シートの断面プロファイルを示している。
【0126】
詳しい機構は不明であるが、本発明者らがこれらの結果を検討したところ、フォトマスクを介した紫外線の照射によって、紫外線の照射を受けた領域の表面が盛り上がっていることがわかった。紫外線の照射を受けた領域の表面が盛り上がることにより、
図54および
図55に示すように、フォトマスクの遮光領域のパターンに対応した複数の凹部が透光シートの主面に形成されている。
図56から、透光シートの表面のうち、凹部以外の部分は、概ね平坦であり、また、凹部も概ね滑らかな曲面によって構成されていることがわかった。すなわち、透光シートの表面のうち相対的に高い部分と凹部とを接続する肩部には、エッジが形成されている。なお、紫外線照射後の透光シート表面の凹部の深さは、0.24〜0.43μm程度の範囲であった。
【0127】
(実施例1−2)
Dユニットを有する有機ポリシロキサンを含有する、未硬化のシリコーン樹脂原料(信越化学工業株式会社製、LPS−3541)を用いたこと以外は実施例1−1のサンプルと同様にして、実施例1−2のサンプルを作製した。ここで、LPS−3541は、上述のKE−1011と同様に、フェニル基を分子中に有する有機ポリシロキサンを含有する。このときに得られた透光シートの厚さは、およそ100μmであった。
【0128】
図57は、実施例1−2のサンプルの表面を拡大して示す。
図58は、実施例1−2のサンプルの表面形状を示す、レーザー顕微鏡によって得られた画像である。
図57および
図58から、実施例1−1のサンプルと同様に、紫外線の部分的な照射により、フォトマスクの遮光領域に対応した位置に凹部を形成可能であることがわかった。紫外線照射後の透光シート表面の凹部の深さは、0.10〜0.12μm程度の範囲であった。
【0129】
(実施例1−3)
YAG蛍光体の粉末(平均粒径:10.5μm)をシリコーン樹脂中に混合することにより、YAG蛍光体の粉末が分散されたシリコーン樹脂原料を調製した。シリコーン樹脂としては、上述のLPS−3541を用いた。シリコーン樹脂原料中のYAG蛍光体の粉末の含有量は、質量比で46%であった。YAG蛍光体の粉末が分散されたシリコーン樹脂原料をシート状に整形して予備硬化させることにより透光シートを形成したこと以外は実施例1−1のサンプルと同様にして、実施例1−3のサンプルを作製した。このときに得られた透光シートの厚さは、およそ100μmであった。
【0130】
図59は、実施例1−3のサンプルの表面を拡大して示す。
図60は、実施例1−3のサンプルの表面形状を示す、レーザー顕微鏡によって得られた画像である。
図59および
図60から、蛍光体の粒子が分散された原料から形成されたシートであっても、実施例1−1のサンプルおよび実施例1−2のサンプルと同様に、紫外線の部分的な照射によって、フォトマスクの遮光領域に対応した位置に凹部を形成可能であることがわかった。紫外線照射後の透光シート表面の凹部の深さは、0.45〜0.92μm程度の範囲であった。
【0131】
次に、以下の手順により、樹脂シートの表面に付与された形状への熱の影響を検証した。
【0132】
(参考例2−1、参考例2−2)
まず、上述のシリコーン樹脂LPS−3541をスクリーン印刷法によってシート状に整形した後、150℃の温度下で4時間加熱することにより、厚さ150μmの樹脂シートを作製した。次に、複数の凸部を表面に有する型を準備した。樹脂シートの一方の主面と、型の凸部とを対向させ、周囲の温度を300℃に上昇させた状態で、ヒートプレス装置を用いて5MPaの圧力で樹脂シートの主面に型を押し付けることにより、樹脂シートの主面に複数の凹部を形成した。ここでは、1.5μmの高さを有する円錐状の凸部が二次元に配置された型を用いた。これらの凸部は、それぞれの頂部が三角格子の格子点上に位置するように型の表面に二次元に配置されており、互いに隣接する2つの凸部の間の頂部の間隔は、3μmであった。
【0133】
図61は、型の分離後の樹脂シートの表面形状を示す。樹脂シートの表面に形成された凹部の深さは、0.9〜1.1μm程度の範囲であった。次に、型の分離後の樹脂シートを切断することにより、2枚のシートを得た。2枚のシートのうちの一方については、実施例1−1のサンプルの作製に用いた紫外線照射装置を用い、凹部が形成された表面を22.4J/cm
2の照射量、30秒程度の照射時間で紫外線で照射した。他方のシートについては、凹部の形成後に紫外線照射装置による紫外線の照射を行わなかった。
【0134】
2枚のシートを電気炉内に配置し、300℃の温度下に40分間おいた後に電気炉から取り出して室温まで自然冷却させた。これらのシートのうち、紫外線照射装置による紫外線の照射が行われたシートを参考例2−1のサンプルとし、紫外線照射装置による紫外線の照射が行われなかった他方のシートを参考例2−2のサンプルとした。
【0135】
図62は、参考例2−1のサンプルの表面形状を示す。
図61と
図62との比較から、例えば型の押し付けによって表面に凹凸のパターンを付与した後に、紫外線の照射を実行することにより、300℃程度の加熱によっても凹部の形状を維持可能であることがわかった。なお、参考例2−1のサンプルの表面に形成された凹部の深さは、0.9〜1.1μm程度の範囲であった。換言すれば、加熱の前後において、凹部の深さの変化は、おおよそ25%以下の範囲内であった。
【0136】
図63は、参考例2−2のサンプルの表面形状を示す。
図63から、紫外線の照射を行わない場合には、加熱により、表面に形成された凹形状がほぼ失われることがわかった。なお、参考例2−2のサンプルの表面に残った凹部の深さは、0.03μm程度に過ぎなかった。
【0137】
図62と
図63との比較からわかるように、表面に凹部を有する樹脂シートの表面を20J/cm
2程度以上の照射量で紫外線で照射することにより、高温(例えばガラス転移点以上の温度)にさらされた場合であっても凹部の形状を維持させ得る。これは、紫外線で照射された表面およびその近傍に何らかの変化が生じたためであると推測される。
【0138】
(参考例3)
次に、樹脂シートに部分的に紫外線の照射を行った参考例3のサンプルを作製し、赤外分光分析により、紫外線で照射された部分と、紫外線で照射されなかった部分との間でスペクトルの比較を行った。参考例3のサンプルは、上述のシリコーン樹脂LPS−3541を予備硬化させることにより形成された、厚さ150μmの透光シートの表面の一部を紫外線で照射することによって作製した。その後、透光シート中のシリコーン樹脂を本硬化させた。
【0139】
図64〜
図66は、フーリエ変換型赤外分光光度計によって得られた、参考例3のサンプルに関する透過光の赤外スペクトルを示す。
図64〜
図66中、曲線K1は、意図的に紫外線で照射されていない部分に関するスペクトルを示し、曲線K2は、意図的に紫外線で照射された部分に関するスペクトルを示している。ここでは、赤外スペクトルの取得に、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社から販売されているNicolet iS50モジュールを用いた。
【0140】
図65を参照する。
図65は、
図64のスペクトルのうち、波数が4000〜1300cm
−1の範囲を拡大して示す。
図65中には、波数が2000〜1400cm
−1の範囲をさらに拡大した図も示されている。
図65に示すスペクトルにおいて、Si−OHに由来する吸収に関係する、波数が3700〜3000cm
−1の範囲に注目すると、紫外線の照射により、波数が3400cm
−1付近に吸収のピークが出現し、波数3700〜3000cm
−1の範囲の吸収が増加していることがわかった。
【0141】
図66も参照する。
図66は、
図64のスペクトルのうち、波数が1400〜400cm
−1の範囲を拡大して示している。
図65および
図66から、Si−CH
3に由来する吸収に関係する、波数が2960cm
−1および800cm
−1付近の吸収ピークに着目すると、紫外線の照射により、それぞれのピークの高さが低くなることがわかった。つまり、本開示の実施形態による発光装置の透光性部材の赤外吸収は、基本的に、20J/cm
2以上の照射量で意図的に紫外線が照射されていないシリコーン樹脂と比較して波数3700cm
−1超3000cm
−1未満の範囲で大きく、波数2960cm
−1および800cm
−1付近において小さい。このことから、紫外線の照射により、透光シートのうち、紫外線の照射された表面のごく浅い領域に変化が生じて透光シートの硬さが部分的に向上し、その結果として高温による凹部の形状の変化が抑制された可能性がある。
【0142】
次に、紫外線の照射量が互いに異なる複数のサンプルを作製し、紫外線の照射がサンプルの表面の瞬間接着力に与える影響を検証した。なお、本明細書では、「タック性」の用語を「瞬間接着力」の用語とを区別せずに使用し、これらを同じ意味で用いる。本明細書における「瞬間接着力」または「タック性」は、以下に説明するプローブ法による測定によって得られる値を意味する。
【0143】
まず、厚さ3mmの樹脂ブロックを作製し、同一の樹脂ブロックから、切断により、直径が16mmの複数の試験片を準備する。これらの試験片について、インストロンジャパン カンパニイリミテッドから販売されているデュアルコラム卓上型試験機5966を用いて、樹脂ブロックの表面にプローブを接触させた後、一定の速度でプローブを移動させ、樹脂ブロックの表面からのプローブの剥離に必要な力を測定する。測定においては、先端形状が平面状かつ先端面の面積が1800mm
2の、ステンレス製のプローブを用いる。樹脂シートの表面に対するプローブの接触時間およびプローブの引張速度は、それぞれ、1秒および9mm/分とする。同一のシートから切断によって得られる3枚の試験片に関する測定値の平均をタック性の測定値とする。
【0144】
(参考例3−1)
以下の手順により、参考例3−1および参考例3−2のサンプルならびに比較例のサンプルを作製した。上述の参考例2−1のサンプルと同様にして、信越化学工業株式会社製のシリコーン樹脂LPS3541をスクリーン印刷法によってシート状に整形し、150℃の温度下で4時間加熱することにより、厚さ150μmの樹脂シートを作製した。ただし、ここでは、型の押し付けによる形状の付与は行わず、樹脂シートを切断することによって複数の樹脂シート片を得た。これらの樹脂シート片から無作為に3枚の樹脂シート片を抽出し、参考例2−1のサンプルと同様にして、一方の主面を240J/cm
2の照射量、30秒程度の照射時間で紫外線で照射した。紫外線の照射後の樹脂シート片を電気炉内に配置し、300℃の温度下に40分間おいた後に電気炉から取り出して室温まで自然冷却させ、参考例3−1のサンプルとした。
【0145】
(参考例3−2)
紫外線の照射量を22.4J/cm
2に変更したこと以外は参考例3−1のサンプルと同様にして、参考例3−2のサンプルを作製した。
【0146】
(比較例)
紫外線の照射を実行しなかったことたこと以外は参考例3−1のサンプルと同様にして、比較例のサンプルを作製した。
【0147】
図67は、参考例3−1、参考例3−2および比較例の各サンプルの表面のタック性に関する測定結果を示す。
図67中、最も右側のプロットは、参考例3−1のサンプルに関する測定値を示し、中央のプロットは、参考例3−2のサンプルに関する測定値を示す。
図67中、最も左側のプロットは、比較例のサンプルに関する測定値を示す。
【0148】
図67に示すように、比較例のサンプルに関する表面のタック性の測定値は、おおよそ23〜32N・cm
−2の範囲であった。一方、22.4J/cm
2の照射量で紫外線が照射された参考例3−2のサンプルは、おおよそ0.1〜8N・cm
−2の範囲のタック性の値を示し、240J/cm
2の照射量で紫外線が照射された参考例3−1のサンプルは、0.3〜0.6N・cm
−2の範囲のタック性の値を示した。このことから、意図的な紫外線の照射により、シリコーン樹脂から形成された樹脂シートの表面および/または表面近傍に何らかの変化が生じた可能性がある。その結果、意図的な紫外線の照射により、樹脂表面のタック性が低下したものと推測される。
図67に示す結果から、例えば、シリコーン樹脂を含む樹脂体の表面を20J/cm
2程度以上の照射量で意図的に紫外線で照射することによって、樹脂体の表面の瞬間接着力を、意図的な紫外線の照射がなされていないシリコーン樹脂の表面の瞬間接着力の例えば50%以下に低下させ得ることがわかった。