【実施例】
【0053】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0054】
<分析法>
以下の実施例において、発酵液中のアミノ酸の定量は、発酵液に添加したCarrez試薬により発酵液の除タンパク処理を行い、それを遠心し、得られた上清と四ホウ酸ナトリウム溶液とを混合した後、オルトフタルアルデヒド(o-phthalaldehyde; OPA)及びN-アセチル-L-システイン(NAC)を添加してD-アミノ酸及びL-アミノ酸を蛍光誘導体化し、高速液相クロマトグラフィー(HPLC)によるピーク分離及び340nmの励起波長による蛍光波長450nmを蛍光検出器により検出することにより実施した。
【0055】
<D-アミノ酸含有乳酸菌発酵液の調製法>
別途記載する一部の実施例を除き、脱脂粉乳(明治社製)を8wt%、精製乳糖を3wt%、ビール酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア社製)を1wt%、L-アスパラギン酸ナトリウムを0.5wt%の終濃度で水に混合した溶液を、121℃、2分の条件でオートクレーブ殺菌したものを培地として用いた。
【0056】
乳酸菌は0.1wt%のビール酵母エキスを含む10wt%還元脱脂乳で一晩培養することで植え継ぎ、前日に植え継いだ菌液を上記の培地に対し1wt%添加し、発酵を開始した。発酵のための培養条件は以下の実施例に記載するとおりである。
【0057】
[実施例1]D-アミノ酸含有OLL1247発酵液の調製及びアミノ酸分析
ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus) OLL1247株(受託番号NITE BP-01814)を添加した培地を上述の調製法に従って調製した。発酵はバイオット社の3L容ジャーファーメンターを用い、撹拌羽回転数を150rpmとし、窒素ガスをヘッドスペースへ通気して行った。発酵過程の温度は、発酵開始より16時間は43℃、その後32時間は45℃とした。細菌増殖は、発酵開始より16時間の時点で定常期に達していた。
【0058】
発酵開始より16時間までは、6規定(N)の炭酸カリウム溶液(和光純薬工業社製)を用いて発酵液のpHを5.90を中心に自動制御した。それ以降は発酵終了までpHの制御は実施しなかった。
【0059】
培養後の発酵液について、上記分析法に従い、L-アミノ酸、及びD-アミノ酸の濃度を測定した。結果を表1に示した。この結果から、OLL1247株の培養物(発酵液)において、各種D-アミノ酸、特にD-アスパラギン酸が高濃度で産生されたことが示された。
【0060】
【表1】
【0061】
[実施例2]脂肪酸エステル添加によるラセミ化促進
ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus) OLL1255株(受託番号NITE BP-76)を添加した培地を上述の調製法に従って調製した。発酵はバイオット社の3L容ジャーファーメンターを用い、撹拌羽回転数を150rpmとし、窒素ガスをヘッドスペースに通気して行った。発酵温度は37℃とし、6規定(N)の炭酸カリウム溶液(和光純薬工業社製)を用いて発酵液のpHを5.30を中心に自動制御した。12時間の発酵後、発酵液に、終濃度0.3wt%となるように、
図1に示す各種グリセリン脂肪酸エステル又はショ糖脂肪酸エステル(脂肪酸エステル)の分散液を添加し、45℃で24時間反応を行った。この24時間の反応中は、pHの制御は実施しなかった。なお細菌増殖は、発酵開始より12時間の時点で定常期に達していた。対照として、脂肪酸エステルを添加しないこと以外は同様の方法で発酵液を調製した。
【0062】
その後、上記分析法に従い、発酵液中のD-アスパラギン酸の濃度を測定した結果を
図1に示した。OLL1255株の発酵液に脂肪酸エステルを添加することにより、それを添加しない場合と比較してD-アスパラギン酸をより高濃度で生成できることが示された。このことは、脂肪酸エステルの添加により、発酵液中に含まれるL-アスパラギン酸のD-アスパラギン酸への変換(ラセミ化)が促進されたことを示す。
【0063】
[実施例3]
1)比較試料1の調製
ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus) OLL1255株(受託番号NITE BP-76)を添加した培地を上述の調製法に従って調製した。発酵はバイオット社の3L容ジャーファーメンターを用い、撹拌羽回転数を150rpmとし、窒素ガスをヘッドスペースに通気して行った。発酵過程の温度は、発酵開始より16時間は37℃、その後32時間は45℃とした。
【0064】
発酵開始より16時間までは、6規定(N)の炭酸カリウム溶液(和光純薬工業社製)を中和剤として用いて発酵液のpHを5.90を中心に自動制御しながら、培養を行った。炭酸カリウム溶液の添加は発酵開始の4時間後に開始した。発酵開始より16時間後以降は、乳酸がほとんど産生されず、pHの制御は実施しなかった。
【0065】
45℃で32時間の反応後の発酵液を-30℃で予備凍結し、次いでクリスト(Christ)社製の卓上凍結乾燥機を用いて乾燥粉末(比較試料1)とした。
【0066】
2)試験試料1の調製
炭酸カリウムの代わりに、ラウリン酸ペンタグリセリンを2.4wt%の濃度で含む炭酸カルシウム製剤を中和剤として使用したこと以外は、比較試料1の調製と同様の方法で発酵(培養)を行った。発酵においては、比較試料1の調製における炭酸カリウムの添加量とモル濃度で同一になる量の炭酸カルシウムが添加されるように、その炭酸カルシウム製剤を使用した。炭酸カルシウム製剤の添加のタイミングは、炭酸カルシウムのアルカリとしての反応性の低さを考慮し、比較試料1の調製における炭酸カリウムの経時添加量を参考にして比較試料1についての炭酸カリウムの添加開始時から約2時間早めた時点からとし、比較試料1の調製時の炭酸カリウム相当量の炭酸カルシウム製剤を1時間間隔で添加した。
【0067】
45℃で32時間の反応後の発酵液を-30℃で予備凍結し、次いでクリスト(Christ)社製の卓上凍結乾燥機を用いて乾燥粉末(試験試料1)とした。
【0068】
3)D-アスパラギン酸の濃度測定
上記の比較試料1と試験試料1の調製における発酵中、発酵開始の16時間、32時間、及び48時間経過後に、上記分析法に従い、発酵液中のD-アスパラギン酸の濃度を測定した。結果を
図2に示した。ラウリン酸ペンタグリセリンを含む炭酸カルシウム製剤を用いることで、OLL1255株の発酵液において、D-アスパラギン酸がより高濃度で生成されることが示された。
【0069】
[実施例4]
1)比較試料2の調製
市販の「明治ブルガリアヨーグルト」(明治社製)から当業者に一般に知られる方法によりラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス菌を単離し、それを添加した培地を上述の調製法に従って調製した。発酵はバイオット社の3L容ジャーファーメンターを用い、撹拌羽回転数を150rpmとし、窒素ガスをヘッドスペースに通気して行った。発酵過程の温度は、発酵開始より16時間は37℃、その後32時間は45℃とした。
【0070】
発酵開始より16時間までは、6規定(N)の炭酸カリウム溶液(和光純薬工業社製)を中和剤として用いて発酵液のpHを5.90を中心に自動制御しながら、培養を行った。炭酸カリウム溶液の添加は発酵開始の4時間後に開始した。発酵開始より16時間後以降は、乳酸がほとんど産生されず、pHの制御は実施しなかった。
【0071】
45℃で32時間の反応後の発酵液を-30℃で予備凍結し、次いでクリスト(Christ)社製の卓上凍結乾燥機を用いて乾燥粉末(比較試料2)とした。
【0072】
2)試験試料2の調製
炭酸カリウムの代わりに、ラウリン酸ペンタグリセリンを2.4wt%の濃度で含む炭酸カルシウム製剤を中和剤として使用したこと以外は、比較試料2の調製と同様の方法で発酵を行った。発酵においては、比較試料2の調製における炭酸カリウムの添加量とモル濃度で同一になる量の炭酸カルシウムが添加されるように、その炭酸カルシウム製剤を使用した。炭酸カルシウム製剤の添加のタイミングは、アルカリとしての反応性の低さを考慮し、比較試料2の調製における炭酸カリウムの経時添加量を参考にして比較試料2についての炭酸カリウムの添加開始時から約2時間早めた時点からとし、比較試料2の調製時の炭酸カリウム相当量の炭酸カルシウム製剤を1時間間隔で添加した。
【0073】
45℃で32時間の反応後の発酵液を-30℃で予備凍結し、次いでクリスト(Christ)社製の卓上凍結乾燥機を用いて乾燥粉末(試験試料2)とした。
【0074】
3)D-アスパラギン酸の濃度測定
上記の比較試料2と試験試料2の調製における発酵中、発酵開始の16時間、32時間、及び48時間経過後に、上記分析法に従い、発酵液中のD-アスパラギン酸の濃度を測定した。結果を
図3に示した。ラウリン酸ペンタグリセリンを含む炭酸カルシウム製剤を用いることで、OLL1255株以外のラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス菌の発酵液においても、D-アスパラギン酸がより高濃度で生成されることが示された。
【0075】
[実施例5]
実施例3で得られた比較試料1及び試験試料1の発酵液粉末、並びに実施例4で得られた比較試料2及び試験試料2の発酵液粉末を、45℃で1ヶ月保存し、保存期間後の粉末性状及びD-アスパラギン酸の残存性を評価した。D-アスパラギン酸の残存性は、調製直後の発酵液粉末について上記分析法に従って測定したD-アスパラギン酸の濃度に対する、保存期間後の発酵液粉末について上記分析法に従って測定したD-アスパラギン酸の濃度の比率(D-アスパラギン酸残存率[%])として算出した。
【0076】
45℃で1ヶ月保存後の発酵液粉末について、外観写真を
図4に、D-アスパラギン酸残存率を
図5に示した。保存試験の結果、比較試料1及び比較試料2は、黒色に変色しており、粒子の大きさの増大や粒子同士の強固な固結状態が認められたのに対し、試験試料1及び2は、本来の白色から黄色の外観を保ち、微粉末状態へ容易に解砕が可能な物性を保持していた。またD-アスパラギン酸残存率は、いずれの菌株でも、上記の炭酸カルシウム製剤を用いた場合の方が高かった。このことから、上記炭酸カルシウム製剤を用いることにより、発酵液粉末の安定性が大きく改善することが示された。この安定性改善効果は乳酸がカルシウム塩に変換されたことによるものと考えられる。
【0077】
[実施例6]
ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカスOLL1255株の代わりに、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)JCM 1120
T株を用い、脂肪酸エステルとしてカプリル酸モノグリセリド、ラウリン酸モノグリセリド、ショ糖ラウリン酸エステル、又はショ糖パルミチン酸エステルを使用して、実施例2と類似の方法で発酵液を調製し、D-アスパラギン酸の濃度の測定を行った。
【0078】
具体的には、脱脂粉乳(明治社製)を8wt%、精製乳糖を3wt%、ビール酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア社製)を1wt%、L-アスパラギン酸ナトリウムを0.5wt%の終濃度で水に混合した溶液を、121℃、2分の条件でオートクレーブ殺菌したものを培地とした。
【0079】
ラクトバチルス・ヘルベティカスJCM 1120
T株は0.1wt%のビール酵母エキスを含む10wt%還元脱脂乳で一晩培養することで植え継ぎ、前日に植え継いで得られた菌液を上記培養培地に対し1wt%添加し、発酵を開始した。
【0080】
ラクトバチルス・ヘルベティカスJCM 1120
Tの発酵はバイオット社の3L容ジャーファーメンターを用い、撹拌羽回転数を150rpmとし、窒素ガスをヘッドスペースに通気して行った。発酵温度は37℃とし、6規定(N)の炭酸カリウム溶液(和光純薬工業社製)を用いpH 5.30を中心に自動制御した。22時間の発酵後、6規定の炭酸カリウムにより発酵液をpH6.0へと調整し、さらに、終濃度0.3wt%となるように、
図6に示す各種グリセリン脂肪酸エステル又はショ糖脂肪酸エステルの分散液を添加し、45℃で24時間反応を進めた。発酵液のpH6.0への調整後、45℃で24時間の反応中はpHの制御は実施しなかった。対照として、脂肪酸エステルを添加しないこと以外は同様の方法で発酵液を調製した。
【0081】
その後、上記分析法に従い、発酵液中のD-アスパラギン酸の濃度を測定した。結果を
図6に示す。
【0082】
同様に、OLL1255株の代わりに、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum) JCM 1173
T株を用い、脂肪酸エステルとしてカプリル酸モノグリセリドを使用して、実施例2と類似の方法で発酵液を調製し、D-アスパラギン酸の濃度の測定を行った。
【0083】
具体的には、脱脂粉乳(明治社製)を8wt%、精製乳糖を3wt%、ビール酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア社製)を1wt%、イーストリッチマンガン(オリエンタル酵母工業社製)を0.5wt%、L-アスパラギン酸ナトリウムを0.5wt%の終濃度で水に混合した溶液を、121℃、2分の条件でオートクレーブ殺菌したものを培地とした。
【0084】
JCM 1173
T株は0.5wt%のビール酵母エキス及び0.2wt%のイーストリッチマンガンを含む10wt%還元脱脂乳で一晩培養することで植え継ぎ、前日に植え継いだ菌液を上記培地に対し1wt%添加し、発酵を開始した。
【0085】
ラクトバチルス・ファーメンタムJCM 1173
Tの発酵はバイオット社の3L容ジャーファーメンターを用い、撹拌羽回転数を150rpmとし、窒素ガスをヘッドスペースに通気して行った。発酵温度は37℃とし、6規定(N)の炭酸カリウム溶液(和光純薬工業社製)を用いpH 5.30を中心に自動制御した。25時間の発酵後、発酵液に、終濃度0.3wt%となるように、カプリル酸モノグリセリドの分散液を添加し、45℃で24時間反応を進めた。なお45℃で24時間の反応中は、発酵液のpHの制御は実施しなかった。
【0086】
その後、上記分析法に従い、発酵液中のD-アスパラギン酸の濃度を測定した。結果を
図7に示した。
【0087】
本実施例の結果から、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス以外の種のラクトバチルス属菌を用いた場合でも、脂肪酸エステルを使用して発酵液中のD-アスパラギン酸の生成濃度を増加させることができることが示された。
【0088】
[実施例7]
脱脂粉乳(明治社製)を8wt%、精製乳糖を3wt%、ビール酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア社製)を1wt%、L-アスパラギン酸ナトリウムを0.5wt%の終濃度で水に混合した溶液を、121℃、2分の条件でオートクレーブ殺菌したものを培地とした。乳酸菌の調製及び培地への添加は上述の実施例と同様にして行った。
【0089】
ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus) MEP201603株の発酵はバイオット社の3L容ジャーファーメンターを用い、撹拌羽回転数を150rpmとし、窒素ガスをヘッドスペースに通気して行った。発酵温度は37℃とし、6規定(N)の炭酸カリウム溶液(和光純薬工業社製)を用いpH 5.90に制御しながら16時間発酵を行った。続いて、その後の発酵温度を37℃、41℃、又は45℃とし、さらに24時間反応を進めた。なお細菌増殖は、発酵開始より16時間の時点で定常期に達していた。発酵開始より16時間後以降はpHの制御は実施しなかった。
【0090】
その後、上記分析法に従い、発酵液中のD-アスパラギン酸の濃度を測定した。結果を
図8に示す。
図8に示されるとおり、37℃での培養(増殖)後に発酵液の温度を45℃に上昇させることにより、発酵液中のD-アスパラギン酸の濃度を顕著に増加させることができたことが示された。
【0091】
[実施例8]
脱脂粉乳(明治社製)を8wt%、精製乳糖を3wt%、ビール酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア社製)を1wt%、L-アスパラギン酸ナトリウムを0.5wt%、ラウリン酸ペンタグリセリンを0.2wt%の終濃度で水に混合した溶液を、121℃、2分の条件でオートクレーブ殺菌したものを培地とした。対照として、ラウリン酸ペンタグリセリン0.2wt%を含まないこと以外は同じ培地を調製した。乳酸菌の調製及び培地への添加は上述の実施例と同様にして行った。
【0092】
ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus) MEP201603株の発酵はバイオット社の3L容ジャーファーメンターを用い、撹拌羽回転数を150rpmとし、窒素ガスをヘッドスペースに通気して行った。発酵過程の温度は、発酵開始より16時間は37℃、その後32時間は45℃とした。
【0093】
発酵開始より16時間までは、6規定(N)の炭酸カリウム溶液(和光純薬工業社製)を用いて発酵液のpHを5.30を中心に自動制御しながら、培養を行った。発酵開始より16時間後以降はpHの制御は実施しなかった。
【0094】
その後、上記分析法に従い、発酵液中のD-アスパラギン酸の濃度を測定した。結果を
図9に示す。
図9に示されるとおり、ラウリン酸ペンタグリセリンを用いることにより、発酵液中のD-アスパラギン酸の濃度をさらに増加させることができることが示された。なお脂肪酸エステルは、一般的に、菌の増殖阻害を示すことが知られているが、本実施例に示すとおり、ラクトバチルス属菌を用いたD-アミノ酸生成においては脂肪酸エステルによる増殖阻害は示されなかった。
【0095】
[実施例9]
脱脂粉乳(明治社製)を8wt%、精製乳糖を3wt%、ビール酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア社製)を1wt%、L-アスコルビン酸ナトリウムを0.5wt%の終濃度で水に混合した溶液を、121℃、2分の条件でオートクレーブ殺菌したものを培地とした。乳酸菌の調製及び培地への添加は上述の実施例と同様にして行った。
【0096】
ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus) MEP201603株の発酵はバイオット社の3L容ジャーファーメンターを用い、撹拌羽回転数を150rpmとし、窒素ガスをヘッドスペースに通気して行った。発酵温度は37℃とし、6規定(N)の炭酸カリウム溶液(和光純薬工業社製)を用いpH 5.30を中心に自動制御した。16時間の発酵後、発酵液に、炭酸カルシウムスラリー、ラウリン酸ペンタグリセリンを含む炭酸カルシウムスラリー製剤、炭酸カルシウム、又はラウリン酸ペンタグリセリンを含む炭酸カルシウム製剤を、炭酸カルシウム相当量が同一(2wt%)となる量で添加し、45℃で24時間反応を進めた。
【0097】
対照として、上記と同様に調製した培地を用いて、炭酸カルシウム(炭酸カルシウムスラリー、ラウリン酸ペンタグリセリンを含む炭酸カルシウムスラリー製剤、炭酸カルシウム、又はラウリン酸ペンタグリセリンを含む炭酸カルシウム製剤)を添加しないこと以外は、同様の試験を行った。
【0098】
その後、上記分析法に従い、発酵液中のD-アスパラギン酸の濃度を測定した。結果を
図10に示す。炭酸カルシウムだけではD-アスパラギン酸の生成は促進されなかったが、ラウリン酸ペンタグリセリンを用いることにより、発酵液中のD-アスパラギン酸の濃度をさらに増加させることができることが示された。