特許第6979062号(P6979062)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6979062半導体ナノ粒子、半導体ナノ粒子含有分散液、及び、フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979062
(24)【登録日】2021年11月16日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】半導体ナノ粒子、半導体ナノ粒子含有分散液、及び、フィルム
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/08 20060101AFI20211125BHJP
【FI】
   C01B25/08 A
【請求項の数】23
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-515187(P2019-515187)
(86)(22)【出願日】2018年4月2日
(86)【国際出願番号】JP2018014127
(87)【国際公開番号】WO2018198684
(87)【国際公開日】20181101
【審査請求日】2019年10月1日
(31)【優先権主張番号】特願2017-85971(P2017-85971)
(32)【優先日】2017年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勉
【審査官】 若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/185933(WO,A1)
【文献】 特開2015−147726(JP,A)
【文献】 特開2016−172829(JP,A)
【文献】 特開2012−144587(JP,A)
【文献】 特開2011−194562(JP,A)
【文献】 KIM, S. et al.,Highly Luminescent InP/GaP/ZnS Nanocrystals and Their Application to White Light-Emitting Diodes,J. Am. Chem. Soc.,米国,American Chemical Society,2012年02月03日,Vol. 134, No. 8,pp. 3804-3809
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/08
C09K 11/00−11/89
Scopus
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー分散型X線分析により、亜鉛、硫黄及びインジウムが検出され、
エネルギー分散型X線分析から求められる、インジウムに対する亜鉛のモル比Zn/Inが、下記式(1a)を満たし、
ラマン分光分析により、300〜400cm−1にピークAが検出され、100〜130cm−1にピークBが検出される、半導体ナノ粒子。
7≦Zn/In≦15・・・(1a)
【請求項2】
前記ピークAに対する前記ピークBの強度比B/Aが、下記式(2a)を満たす、請求項1に記載の半導体ナノ粒子。
0<B/A<3・・・(2a)
【請求項3】
前記ピーク強度比B/Aが、下記式(2b)を満たす、請求項2に記載の半導体ナノ粒子。
0.5≦B/A≦1.5・・・(2b)
【請求項4】
前記モル比Zn/Inが、下記式(1b)を満たす、請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子。
7≦Zn/In≦12・・・(1b)
【請求項5】
前記モル比Zn/Inが、下記式(1c)を満たす、請求項4に記載の半導体ナノ粒子。
9≦Zn/In≦12・・・(1c)
【請求項6】
平均粒子径が、6nm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項7】
平均粒子径が、3.5nm以上5.5nm以下である、請求項6に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項8】
III族元素及びV族元素を含有するコアと、前記コアの表面の少なくとも一部を覆うII族元素及びVI族元素を含有するシェルとを有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項9】
III族元素及びV族元素を含有するコアと、前記コアの表面の少なくとも一部を覆う第1シェルと、前記第1シェルの少なくとも一部を覆う第2シェルとを有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項10】
前記コアに含まれる前記III族元素がInであり、前記コアに含まれる前記V族元素がP、N及びAsのいずれかである、請求項8又は9に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項11】
前記コアに含まれる前記III族元素がInであり、前記コアに含まれる前記V族元素がPである、請求項10に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項12】
前記コアが、更にII族元素を含有する、請求項8〜11のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項13】
前記コアに含まれる前記II族元素がZnである、請求項12に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項14】
前記第1シェルが、II族元素又はIII族元素を含む、請求項9に記載の半導体ナノ粒子。
ただし、前記第1シェルがIII族元素を含む場合、前記第1シェルに含まれるIII族元素は、前記コアに含まれるIII族元素とは異なるIII族元素である。
【請求項15】
前記第1シェルが、II族元素及びVI族元素を含有するII−VI族半導体、又は、III族元素及びV族元素を含有するIII−V族半導体である、請求項9に記載の半導体ナノ粒子。
ただし、前記第1シェルが、前記III−V族半導体である場合、前記III−V族半導体に含まれるIII族元素は、前記コアに含まれるIII族元素とは異なるIII族元素である。
【請求項16】
前記第1シェルが、前記II−VI族半導体である場合、前記II族元素がZnであり、前記VI族元素がSe又はSであり、
前記第1シェルが、前記III−V族半導体である場合、前記III族元素がGaであり、前記V族元素がPである、請求項15に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項17】
前記第1シェルが、前記III−V族半導体であり、前記III族元素がGaであり、前記V族元素がPである、請求項15に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項18】
前記第2シェルが、II族元素及びVI族元素を含有するII−VI族半導体、又は、III族元素及びV族元素を含有するIII−V族半導体である、請求項9に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項19】
前記第2シェルが、前記II−VI族半導体であり、前記II族元素がZnであり、前記VI族元素がSである、請求項18に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項20】
前記コアと、前記第1シェルと、前記第2シェルとが、いずれも閃亜鉛鉱構造を有する結晶系である、請求項9に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項21】
前記コア、前記第1シェル及び前記第2シェルのうち、前記コアのバンドギャップが最も小さく、かつ、
前記コア及び前記第1シェルがタイプ1型のバンド構造を示す、請求項9に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子を含有する半導体ナノ粒子含有分散液。
【請求項23】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子を含有するフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ナノ粒子、半導体ナノ粒子含有分散液、及び、フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
金属元素を含む溶液中において化学的な合成法によって得られるシングルナノサイズレベルのコロイド状の半導体ナノ粒子(以下、「量子ドット」とも称す。)は、一部のディスプレイ用途の波長変換フィルムにおける蛍光材料として実用化が始まっており、また、生体標識、発光ダイオード、太陽電池、薄膜トランジスタ等への応用も期待されている。半導体ナノ粒子を開示する文献としては、例えば特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2016/080435号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような背景において、本発明者が特許文献1を参考に半導体ナノ粒子を製造し、各種アプリケーションに応用したところ、製造工程や実際の使用など大気に曝されている環境下で特性(量子収率等)が低下していく場合があることが分かった。
【0005】
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、優れた大気耐久性を示す半導体ナノ粒子、上記半導体ナノ粒子を含有する半導体ナノ粒子含有分散液、及び、上記半導体ナノ粒子を含有するフィルムを提供することを目的とする。なお、大気耐久性とは、大気中での特性(量子収率等)の低下し難さを言う。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述のとおり、本発明者の検討から、半導体ナノ粒子を大気中に曝しておくと量子収率等の特性が低下することが分かっている。また、さらなる検討の結果、上述した特性の低下が、大気中の酸素や水分による酸化が主要因であるとの知見も得られている。
このようななか、本発明者がインジウムに対する亜鉛のモル比Zn/Inに着目し検討を行ったところ、上記モル比と酸化との間に顕著な相関が見られること、そして、上記モル比を特定の範囲にすることで酸化を著しく抑えることができることが明らかになった。
本発明は上記知見に基づくものであり、その具体的な構成は以下のとおりである。
【0007】
(1) エネルギー分散型X線分析により、亜鉛、硫黄及びインジウムが検出され、
エネルギー分散型X線分析から求められる、インジウムに対する亜鉛のモル比Zn/Inが、下記式(1a)を満たす、半導体ナノ粒子。
7≦Zn/In≦15・・・(1a)
(2) ラマン分光分析により、300〜400cm−1にピークAが検出され、100〜130cm−1にピークBが検出される、上記(1)に記載の半導体ナノ粒子。
(3) 上記ピークAに対する上記ピークBの強度比B/Aが、下記式(2a)を満たす、上記(2)に記載の半導体ナノ粒子。
0<B/A<3・・・(2a)
(4) 上記ピーク強度比B/Aが、下記式(2b)を満たす、上記(3)に記載の半導体ナノ粒子。
0.5≦B/A≦1.5・・・(2b)
(5) 上記モル比Zn/Inが、下記式(1b)を満たす、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の半導体ナノ粒子。
7≦Zn/In≦12・・・(1b)
(6) 上記モル比Zn/Inが、下記式(1c)を満たす、上記(5)に記載の半導体ナノ粒子。
9≦Zn/In≦12・・・(1c)
(7) 平均粒子径が、6nm以下である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の半導体ナノ粒子。
(8) 平均粒子径が、3.5nm以上5.5nm以下である、上記(7)に記載の半導体ナノ粒子。
(9) III族元素及びV族元素を含有するコアと、上記コアの表面の少なくとも一部を覆うII族元素及びVI族元素を含有するシェルとを有する、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の半導体ナノ粒子。
(10) III族元素及びV族元素を含有するコアと、上記コアの表面の少なくとも一部を覆う第1シェルと、上記第1シェルの少なくとも一部を覆う第2シェルとを有する、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の半導体ナノ粒子。
(11) 上記コアに含まれる上記III族元素がInであり、上記コアに含まれる上記V族元素がP、N及びAsのいずれかである、上記(9)又は(10)に記載の半導体ナノ粒子。
(12) 上記コアに含まれる上記III族元素がInであり、上記コアに含まれる上記V族元素がPである、上記(11)に記載の半導体ナノ粒子。
(13) 上記コアが、更にII族元素を含有する、上記(9)〜(12)のいずれかに記載の半導体ナノ粒子。
(14) 上記コアに含まれる上記II族元素がZnである、上記(13)に記載の半導体ナノ粒子。
(15) 上記第1シェルが、II族元素又はIII族元素を含む、上記(10)〜(14)のいずれかに記載の半導体ナノ粒子。
ただし、上記第1シェルがIII族元素を含む場合、上記第1シェルに含まれるIII族元素は、上記コアに含まれるIII族元素とは異なるIII族元素である。
(16) 上記第1シェルが、II族元素及びVI族元素を含有するII−VI族半導体、又は、III族元素及びV族元素を含有するIII−V族半導体である、上記(10)〜(15)のいずれかに記載の半導体ナノ粒子。
ただし、上記第1シェルが、上記III−V族半導体である場合、上記III−V族半導体に含まれるIII族元素は、上記コアに含まれるIII族元素とは異なるIII族元素である。
(17) 上記第1シェルが、上記II−VI族半導体である場合、上記II族元素がZnであり、上記VI族元素がSe又はSであり、
上記第1シェルが、上記III−V族半導体である場合、上記III族元素がGaであり、上記V族元素がPである、上記(16)に記載の半導体ナノ粒子。
(18) 上記第1シェルが、上記III−V族半導体であり、上記III族元素がGaであり、上記V族元素がPである、上記(16)に記載の半導体ナノ粒子。
(19) 上記第2シェルが、II族元素及びVI族元素を含有するII−VI族半導体、又は、III族元素及びV族元素を含有するIII−V族半導体である、上記(10)〜(18)のいずれかに記載の半導体ナノ粒子。
(20) 上記第2シェルが、上記II−VI族半導体であり、上記II族元素がZnであり、上記VI族元素がSである、上記(19)に記載の半導体ナノ粒子。
(21) 上記コアと、上記第1シェルと、上記第2シェルとが、いずれも閃亜鉛鉱構造を有する結晶系である、上記(10)〜(20)のいずれかに記載の半導体ナノ粒子。
(22) 上記コア、上記第1シェル及び上記第2シェルのうち、上記コアのバンドギャップが最も小さく、かつ、
上記コア及び上記第1シェルがタイプ1型のバンド構造を示す、上記(10)〜(21)のいずれかに記載の半導体ナノ粒子。
(23) 上記(1)〜(22)のいずれかに記載の半導体ナノ粒子を含有する半導体ナノ粒子含有分散液。
(24) 上記(1)〜(22)のいずれかに記載の半導体ナノ粒子を含有するフィルム。
【発明の効果】
【0008】
以下に示すように、本発明によれば、優れた大気耐久性を示す半導体ナノ粒子、上記半導体ナノ粒子を含有する半導体ナノ粒子含有分散液、及び、上記半導体ナノ粒子を含有するフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0010】
[半導体ナノ粒子]
本発明の半導体ナノ粒子は、エネルギー分散型X線分析(以下、「EDX分析」、又は、単に「EDX」とも言う)により、亜鉛、硫黄及びインジウムが検出され、エネルギー分散型X線分析(EDX)から求められる、インジウムに対する亜鉛のモル比Zn/In(以下、「Zn/In」又は「Zn/In(EDX)」とも言う)が、下記式(1a)を満たす。
7≦Zn/In≦15・・・(1a)
【0011】
本発明の半導体ナノ粒子はこのような構成をとることにより、優れた大気耐久性を示すものと考えられる。その理由は詳細には明らかではないが、本発明の半導体ナノ粒子において、Inに対するZnのモル比が非常に高いため、InがZnによって十分に保護され(欠陥が極めて少ない)、結果として、優れた大気耐久性を示すものと推測される。
ここで、上述のとおり、Zn/Inを特定の範囲にすることで大気耐久性が大幅に向上するとの知見が得られている。すなわち、Zn/Inと大気耐久性との間に臨界性が見られることが分かっている。
これは、Inに対してZnを多く含んでいてもZnによるInの保護が十分でないと微小な欠陥から大気中の酸素や水が入り込み、半導体ナノ粒子の酸化が生じてしまうところ、Inに対するZnの量をモル比で7倍以上にすることで欠陥がほぼ無くなり、大気中の酸素や水がほぼ完全にシャットダウンされ、結果として、大気耐久性が大幅に向上するためと考えられる。
例えば、本発明の半導体ナノ粒子が後述する好適な態様の1つであるInPコアとZnSとのコアシェル粒子である場合、Inに対してZnが多い場合でも、InPコアに対してZnSシェルの被覆が不十分、つまり、InPコアへの保護が十分でないと、InPコアが露出した部分や微小な欠陥から大気中の酸素や水が入り込み、半導体ナノ粒子の酸化が生じてしまう。一方で、Inに対するZnの量をモル比で7倍以上にすることで、InPコアの被覆不足がほぼ解消され、欠陥がほぼ無くなり、大気中の酸素や水がほぼ完全にシャットダウンされ、結果として、大気耐久性が大幅に向上するものと考えられる。
また、後述のとおり、本発明の半導体ナノ粒子は、さらに大気耐久性が向上する理由から、ラマン分光分析により、300〜400cm−1にピークAが検出され、100〜130cm−1にピークB(MgS又はZnMgSに由来すると考えらえるピーク)が検出される態様であることが好ましい。そのような態様にすることで大気耐久性が向上する理由は詳細には明らかではないが、Mgの還元電位が低いために、Mgが自ら酸化されることで、Zn(例えば、上述したInPコアとZnSシェルとのコアシェル粒子の場合にはZnSシェル)の酸化が抑制されるためと推測される。
【0012】
以下、本発明の半導体ナノ粒子について詳述する。
【0013】
〔亜鉛、硫黄及びインジウム〕
上述のとおり、本発明の半導体ナノ粒子は、エネルギー分散型X線分析(EDX)により、亜鉛、硫黄及びインジウムが検出される。すなわち、本発明の半導体ナノ粒子は、亜鉛(Zn)、硫黄(S)及びインジウム(In)を含む。
【0014】
〔Zn/In〕
本発明の半導体ナノ粒子において、エネルギー分散型X線分析から求められる、インジウムに対する亜鉛のモル比Zn/In(Zn/In)は、下記式(1a)を満たす。
7≦Zn/In≦15・・・(1a)
【0015】
Zn/Inは、本発明の効果がより優れる理由から、下記式(1b)を満たすことが好ましく、下記式(1c)を満たすことがより好ましく、下記式(1d)を満たすことがさらに好ましく、下記式(1e)を満たすことが特に好ましい。
7≦Zn/In≦12・・・(1b)
9≦Zn/In≦12・・・(1c)
9≦Zn/In<12・・・(1d)
9<Zn/In<12・・・(1e)
【0016】
なお、Zn/Inは以下のとおり求めたものである。
まず、半導体ナノ粒子のトルエン分散液をノンドープのSi基板上に塗布し、乾燥させ、EDX分析用サンプルとする。そして、得られたサンプルについて、下記装置等(装置、検出器及びソフトウエア)を用いて、下記条件にてEDX分析を行い、Zn/Inを求める。
(装置等)
・装置:日立ハイテクノロジース社製Miniscope TM1000
・検出器:オックスフォード・インストゥルメンツ製
・ソフトウエア:SwiftED−TM
(条件)
・積算時間:30秒
・加速電圧:15kV
・測定範囲:100μm×100μm
【0017】
〔ピークA及びB〕
本発明の半導体ナノ粒子は、本発明の効果がより優れる理由から、ラマン分光分析により、300〜400cm−1にピークAが検出され、100〜130cm−1にピークBが検出されるのが好ましい。
【0018】
<ピークA>
上記ピークAは、In−V族半導体(例えば、InP)などInを含有する構造に由来するピークと考えられる。なお、例えば、InPに由来するピークが300〜400cm−1に検出される点は、M.J.Seong、外4名,「Size−dependent Raman study of InP quantum dots」,Appl.Phys.Lett.,American Institute of Physics,2003年1月13日,第82巻、第2号,p185−187などに記載されている。
【0019】
<ピークB>
上記ピークBは、MgS又はZnMgSに由来するピークと考えられる。
【0020】
なお、ラマン分光分析は以下のとおり行う。
まず、半導体ナノ粒子のトルエン分散液(300μL)を石英セル(光路長1mm)に充填し、ラマン分光分析用サンプルとする。次いで、得られたサンプルについて下記のとおりラマン分光分析を行う。
チタンサファイアレーザーの出力光(波長:800nm、パルス時間幅:92fs、出力:1.8W、繰り返し周波数:1kHz)を2つに分割し、ピコ秒光パラメトリック増幅器によりラマン励起光(530nm、10ps、8cm−1)と、サファイア基板によりラマン検出光(531−680nm)を発生させる。ラマン励起光とラマン検出光を放物面鏡でサンプルに照射し、サンプルを透過したラマン検出光は分光器とCCD(Charge Coupled Device)カメラにより検出する。
【0021】
<B/A>
上記ピークAに対する上記ピークBの強度比B/A(以下、「B/A」又は「B/A(ラマン)」とも言う)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、下記式(2a)を満たすことが好ましく、下記式(2b)を満たすことがより好ましく、下記式(2c)を満たすことがさらに好ましく、下記式(2d)を満たすことが特に好ましい。
0<B/A<3・・・(2a)
0.5≦B/A≦1.5・・・(2b)
0.5≦B/A<1.5・・・(2c)
0.5<B/A<1.5・・・(2d)
【0022】
なお、B/Aは以下のとおり求めたものである。
上述のとおり、ラマン分光分析用サンプルを調製する。得られたサンプルについて上述のとおりラマン分光分析を行い、300〜400cm−1のピークAに対する100〜130cm−1のピークBの強度比(B/A)を求める。より具体的には、ピークAのピーク強度で規格化し、ピークBのピーク強度をベースライン補正して求める。
【0023】
〔平均粒子径〕
本発明の半導体ナノ粒子の平均粒子径は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、10nm以下であることが好ましく、6nm以下であることがより好ましい。下限も特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、2nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましい。本発明の半導体ナノ粒子の平均粒子径は、本発明の効果がより優れる理由から、3.5nm以上5.5nm以下であることがより好ましい。
ここで、平均粒子径は、透過型電子顕微鏡で少なくとも20個の粒子を直接観察し、粒子の投影面積と同一面積を有する円の直径を算出し、それらの算術平均の値をいう。
【0024】
〔好適な態様〕
本発明の半導体ナノ粒子は、本発明の効果がより優れる理由から、コアシェル粒子であることが好ましい。
本発明の半導体ナノ粒子がコアシェル粒子である場合の第1の好適な態様としては、例えば、III族元素及びV族元素を含有するコアと、上記コアの表面の少なくとも一部を覆うII族元素及びVI族元素を含有するシェルとを有する態様(シングルシェル形状)が挙げられる。
また、本発明の半導体ナノ粒子がコアシェル粒子である場合の第2の好適な態様としては、例えば、III族元素及びV族元素を含有するコアと、上記コアの表面の少なくとも一部を覆う第1シェルと、上記第1シェルの少なくとも一部を覆う第2シェルとを有する態様(マルチシェル形状)が挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、マルチシェル形状が好ましい。
また、本発明の半導体ナノ粒子は、本発明の効果がより優れる理由から、マグネシウム(Mg)を含有するのが好ましい。
【0025】
<コア>
本発明の半導体ナノ粒子がコアシェル粒子である場合、コアシェル粒子が有するコアは、本発明の効果がより優れる理由から、III族元素及びV族元素を含有する、いわゆるIII−V族半導体であるのが好ましい。
【0026】
(1)III族元素
III族元素としては、具体的には、例えば、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び、ガリウム(Ga)等が挙げられ、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、Inであるのが好ましい。
【0027】
(2)V族元素
V族元素としては、具体的には、例えば、P(リン)、N(窒素)、及び、As(ヒ素)等が挙げられ、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、Pであるのが好ましい。
【0028】
本発明においては、コアとして、上述したIII族元素及びV族元素の例示を適宜組み合わせたIII−V族半導体を用いることができるが、発光効率がより高くなり、また、発光半値幅が狭くなり、明瞭なエキシトンピークが得られる理由から、InP、InN、又は、InAsであるのが好ましく、中でも、発光効率が更に高くなる理由から、InPであるのがより好ましい。
【0029】
本発明においては、本発明の効果がより優れる理由から、上述したIII族元素及びV族元素以外に、更にII族元素を含有しているのが好ましく、特にコアがInPである場合、II族元素としてのZnをドープさせることにより格子定数が小さくなり、InPよりも格子定数の小さいシェル(例えば、後述するGaP、ZnSなど)との格子整合性が高くなる。
【0030】
<シェル>
本発明の半導体ナノ粒子がシングルシェル形状のコアシェル粒子である場合、シェルは、コアの表面の少なくとも一部を覆う材料であって、II族元素及びVI族元素を含有する、いわゆるII−VI族半導体であるのが好ましい。
ここで、本発明においては、シェルがコアの表面の少なくとも一部を被覆しているか否かは、例えば、透過型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分光法(TEM(Transmission Electron Microscope)−EDX(Energy Dispersive X−ray spectroscopy))による組成分布解析によっても確認することが可能である。
【0031】
(1)II族元素
II族元素としては、具体的には、例えば、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、及び、マグネシウム(Mg)等が挙げられ、なかでも本発明の効果がより優れる理由から、Znであるのが好ましい。
【0032】
(2)VI族元素
VI族元素としては、具体的には、例えば、硫黄(S)、酸素(O)、セレン(Se)、及び、テルル(Te)等が挙げられ、なかでも本発明の効果がより優れる理由から、S又はSeであるのが好ましく、Sであるのがより好ましい。
【0033】
本発明においては、シェルとして、上述したII族元素及びVI族元素の例示を適宜組み合わせたII−VI族半導体を用いることができるが、本発明の効果がより優れる理由から、上述したコアと同一又は類似の結晶系であるのが好ましい。
具体的には、本発明の効果がより優れる理由から、ZnS、ZnSeであるのが好ましく、安全性等の観点から、ZnSであるのがより好ましい。
【0034】
<第1シェル>
本発明の半導体ナノ粒子がマルチシェル形状のコアシェル粒子である場合、第1シェルは、コアの表面の少なくとも一部を覆う材料である。
ここで、本発明においては、第1シェルがコアの表面の少なくとも一部を被覆しているか否かは、例えば、透過型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分光法(TEM−EDX)による組成分布解析によっても確認することが可能である。
【0035】
本発明においては、コアとの界面欠陥を抑制しやすくなる理由から、第1シェルがII族元素又はIII族元素を含むことが好ましい。
ここで、第1シェルがIII族元素を含む場合は、第1シェルに含まれるIII族元素は、上述したコアに含まれるIII族元素とは異なるIII族元素である。
また、II族元素又はIII族元素を含む第1シェルとしては、例えば、後述するII−VI族半導体及びIII−V族半導体の他、III族元素及びVI族元素を含有するIII−VI族半導体(例えば、Ga23、Ga23など)などが挙げられる。
【0036】
本発明においては、欠陥の少ない良質な結晶相が得られる理由から、第1シェルが、II族元素及びVI族元素を含有するII−VI族半導体、又は、III族元素及びV族元素を含有するIII−V族半導体であるのが好ましく、上述したコアとの格子定数の差が小さいIII−V族半導体であるのがより好ましい。
ここで、第1シェルがIII−V族半導体である場合は、III−V族半導体に含まれるIII族元素は、上述したコアに含まれるIII族元素とは異なるIII族元素である。
【0037】
(1)II−VI族半導体
上記II−VI族半導体に含まれるII族元素としては、具体的には、例えば、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、及び、マグネシウム(Mg)等が挙げられ、なかでも本発明の効果がより優れる理由から、Znであるのが好ましい。
また、上記II−VI族半導体に含まれるVI族元素としては、具体的には、例えば、硫黄(S)、酸素(O)、セレン(Se)、及び、テルル(Te)等が挙げられ、なかでも本発明の効果がより優れる理由から、S又はSeであるのが好ましく、Sであるのがより好ましい。
【0038】
第1シェルとして、上述したII族元素及びVI族元素の例示を適宜組み合わせたII−VI族半導体を用いることができるが、本発明の効果がより優れる理由から、上述したコアと同一又は類似の結晶系(例えば、閃亜鉛鉱構造)であるのが好ましい。具体的には、本発明の効果がより優れる理由から、ZnSe、ZnS、又はそれらの混晶であるのが好ましく、ZnSeであるのがより好ましい。
【0039】
(2)III−V族半導体
上記III−V族半導体に含まれるIII族元素としては、具体的には、例えば、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び、ガリウム(Ga)等が挙げられ、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、Gaであるのが好ましい。なお、上述した通り、III−V族半導体に含まれるIII族元素は、上述したコアに含まれるIII族元素とは異なるIII族元素であり、例えば、コアに含まれるIII族元素がInである場合は、III−V族半導体に含まれるIII族元素はAl、Ga等である。
また、上記III−V族半導体に含まれるV族元素としては、具体的には、例えば、P(リン)、N(窒素)、及び、As(ヒ素)等が挙げられ、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、Pであるのが好ましい。
【0040】
第1シェルとして、上述したIII族元素及びV族元素の例示を適宜組み合わせたIII−V族半導体を用いることができるが、本発明の効果がより優れる理由から、上述したコアと同一又は類似の結晶系(例えば、閃亜鉛鉱構造)であるのが好ましい。具体的には、GaPであるのが好ましい。
【0041】
本発明においては、得られるコアシェル粒子の表面欠陥が少なくなる理由から、上述したコアと第1シェルとの格子定数の差が小さい方が好ましく、具体的には、上述したコアと第1シェルとの格子定数の差が10%以下であることが好ましい。
具体的には、上述したコアがInPである場合、上述した通り、第1シェルはZnSe(格子定数の差:3.4%)、又は、GaP(格子定数の差:7.1%)であることが好ましく、特に、本発明の効果がより優れる理由から、コアと同じIII−V族半導体であり、コアと第1シェルとの界面に混晶状態を作りやすいGaPであることがより好ましい。
【0042】
また、本発明においては、第1シェルがIII−V族半導体である場合、コアとのバンドギャップの大小関係(コア<第1シェル)に影響を与えない範囲で他の元素(例えば、上述したII族元素及びVI族元素)を含有又はドープしていてもよい。同様に、第1シェルがII−VI族半導体である場合、コアとのバンドギャップの大小関係(コア<第1シェル)に影響を与えない範囲で他の元素(例えば、上述したIII族元素及びV族元素)を含有又はドープしていてもよい。
【0043】
<第2シェル>
本発明の半導体ナノ粒子がマルチシェル形状のコアシェル粒子である場合、第2シェルは、上述した第1シェルの表面の少なくとも一部を覆う材料である。
ここで、本発明においては、第2シェルが第1シェルの表面の少なくとも一部を被覆しているか否かは、例えば、透過型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分光法(TEM−EDX)による組成分布解析によっても確認することが可能である。
【0044】
本発明においては、第1シェルとの界面欠陥を抑制し、また、欠陥の少ない良質な結晶相が得られる理由から、第2シェルが、II族元素及びVI族元素を含有するII−VI族半導体、又は、III族元素及びV族元素を含有するIII−V族半導体であるのが好ましく、材料自体の反応性が高く、より結晶性の高いシェルが容易に得られる理由から、II−VI族半導体であるのがより好ましい。
なお、II族元素及びVI族元素並びにIII族元素及びV族元素としては、いずれも、第1シェルにおいて説明したものが挙げられる。
【0045】
第2シェルとして、上述したII族元素及びVI族元素の例示を適宜組み合わせたII−VI族半導体を用いることができるが、本発明の効果がより優れる理由から、上述したコアと同一又は類似の結晶系(例えば、閃亜鉛鉱構造)であるのが好ましい。具体的には、ZnSe、ZnS、又はそれらの混晶であるのが好ましく、ZnSであるのがより好ましい。
【0046】
第2シェルとして、上述したIII族元素及びV族元素の例示を適宜組み合わせたIII−V族半導体を用いることができるが、本発明の効果がより優れる理由から、上述したコアと同一又は類似の結晶系(例えば、閃亜鉛鉱構造)であるのが好ましい。具体的には、GaPであるのが好ましい。
【0047】
本発明においては、得られるコアシェル粒子の表面欠陥が少なくなる理由から、上述した第1シェルと第2シェルとの格子定数の差が小さい方が好ましく、具体的には、上述した第1シェルと第2シェルとの格子定数の差が10%以下であることが好ましい。
具体的には、上述した第1シェルがGaPである場合、上述した通り、第2シェルはZnSe(格子定数の差:3.8%)、又は、ZnS(格子定数の差:0.8%)であることが好ましく、ZnSであることがより好ましい。
【0048】
また、本発明においては、第2シェルがII−VI族半導体である場合、コアとのバンドギャップの大小関係(コア<第2シェル)に影響を与えない範囲で他の元素(例えば、上述したIII族元素及びV族元素)を含有又はドープしていてもよい。同様に、第2シェルがIII−V族半導体である場合、コアとのバンドギャップの大小関係(コア<第2シェル)に影響を与えない範囲で他の元素(例えば、上述したII族元素及びVI族元素)を含有又はドープしていてもよい。
【0049】
本発明においては、エピタキシャル成長が容易となり、各層間の界面欠陥を抑制しやすくなる理由から、上述したコアと、第1シェルと、第2シェルとが、いずれも閃亜鉛鉱構造を有する結晶系であるのが好ましい。
【0050】
また、本発明においては、コアにエキシトンが滞在する確率が増大し、発光効率がより高くなる理由から、上述したコア、第1シェル及び第2シェルのうち、コアのバンドギャップが最も小さく、かつ、コア及び第1シェルがタイプ1型(タイプI型)のバンド構造を示すコアシェル粒子であるのが好ましい。
【0051】
<Mg>
上述のとおり、本発明の半導体ナノ粒子は、本発明の効果がより優れる理由から、マグネシウム(Mg)を含有するのが好ましい。
本発明の半導体ナノ粒子は、本発明の効果がより優れる理由から、Mgを、ZnMgS又はMgSとして含有するのが好ましく、半導体ナノ粒子の表面近傍にZnMgS層又はMgS層として含有するのがより好ましい。本発明の半導体ナノ粒子がZnMgS又はMgSを含有する場合、上述したピークBが検出されるものと考えられる。
【0052】
なお、以下、Mgを含有する半導体ナノ粒子を「半導体ナノ粒子(Mg有り)」、Mgを含有しない半導体ナノ粒子を「半導体ナノ粒子(Mg無し)」とも言う。
【0053】
<配位性分子>
本発明の半導体ナノ粒子は、分散性を付与する観点から、半導体ナノ粒子の表面に配位性分子を有していることが望ましい。
配位性分子は、溶媒への分散性等の観点から、脂肪族炭化水素基を含むことが好ましい。
また、配位性分子は、分散性を向上する観点から、主鎖の炭素数が少なくとも6以上の配位子であることが好ましく、主鎖の炭素数が10以上の配位子であることがより好ましい。
【0054】
このような配位性分子としては、飽和化合物であっても不飽和化合物であってもよく、具体的には、例えば、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エルカ酸、オレイルアミン、ドデシルアミン、ドデカンチオール、1,2−ヘキサデカンチオール、トリオクチルホスフィンオキシド、臭化セトリモニウム等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
〔半導体ナノ粒子の製造方法〕
本発明の半導体ナノ粒子を製造する方法は特に制限されないが、例えば、溶媒中で、亜鉛を含む化合物と硫黄を含む化合物とインジウムを含む化合物とを混合する方法などが挙げられる。その際、亜鉛を含む化合物の配合量、及び、インジウムを含む化合物の配合量を調整すること等により、上述した式(1a)を満たす半導体ナノ粒子を得ることができる。
本発明の半導体ナノ粒子を製造する方法は、得られる半導体粒子の大気耐久性がより向上する理由(以下、「本発明の効果がより優れる理由」とも言う)から、後述する第1の好適な態様又は第2の好適な態様であることが好ましく、第2の好適な態様であることがより好ましい。
【0056】
<第1の好適な態様>
本発明の半導体ナノ粒子の製造方法の第1の好適な態様としては、例えば、下記第1工程から第4工程を有する製造方法が挙げられる。上記第1の好適な態様により、コアと、コアの表面を覆う第1シェルと、第1シェルの表面を覆う第2シェルとを有する半導体ナノ粒子(Mg無し)が得られる。
(1)溶媒中にIII族元素を含むIII族原料を添加した溶液を加熱撹拌する第1工程
(2)第1工程後の上記溶液中に、V族元素を含むV族原料を添加してコアを形成する第2工程
(3)第2工程後の上記溶液中に、第1シェルの原料を添加し、第1シェルを形成する第3工程
(4)第3工程後の上記溶液中に、II族元素を含むII族原料を添加して第2シェルを形成し、半導体ナノ粒子を合成する第4工程
以下、各工程について説明する。
【0057】
(第1工程)
第1工程は、溶媒中にIII族元素を含むIII族原料を添加した溶液を加熱撹拌する工程である。
【0058】
(1)溶媒
第1工程において使用する溶媒としては、170℃以上の沸点を有する非極性溶媒が好適に挙げられる。
非極性溶媒としては、具体的には、例えば、n−デカン、n−ドデカン、n−ヘキサデカン、及び、n−オクタデカンなどの脂肪族飽和炭化水素;1−ウンデセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、及び、1−オクタデセンなどの脂肪族不飽和炭化水素;トリオクチルホスフィン;等が挙げられる。
これらのうち、本発明の効果がより優れる理由から、炭素数12以上の脂肪族不飽和炭化水素が好ましく、1−オクタデセンがより好ましい。
【0059】
(2)III族原料
溶媒中に添加するIII族原料としては、具体的には、例えば、塩化インジウム、酸化インジウム、酢酸インジウム、硝酸インジウム、硫酸インジウム、及び、インジウム酸;リン酸アルミニウム、アセチルアセトナトアルミニウム、塩化アルミニウム、フッ化アルミニウム、酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、及び、硫酸アルミニウム;並びに、アセチルアセトナトガリウム、塩化ガリウム、フッ化ガリウム、酸化ガリウム、硝酸ガリウム、及び、硫酸ガリウム;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、より高い発光効率が実現し易く、且つ可視域での発光波長制御がし易いインジウム化合物であることが好ましく、塩化物などの不純物イオンがコアに取り込まれ難く、高い結晶性を実現しやすい酢酸インジウムを用いるのがより好ましい。
【0060】
(3)II族原料
第1工程において、上述したIII族原料とともに、II族元素を含むII族原料を添加してもよい。
II族元素を含むII族原料としては、具体的には、例えば、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、亜鉛カルボキシル酸塩、アセチルアセトナト亜鉛、ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、フッ化亜鉛、炭酸亜鉛、シアン化亜鉛、硝酸亜鉛、酸化亜鉛、過酸化亜鉛、亜鉛過塩素酸塩、酢酸亜鉛、及び、硫酸亜鉛等が挙げられる。
II族原料は、本発明の効果がより優れる理由から、Znの酢酸塩である酢酸亜鉛又は塩化亜鉛を用いるのが好ましく、酢酸亜鉛を用いるのがより好ましい。
【0061】
(4)配位性分子
第1工程において溶媒に配位性分子を添加してもよい。使用する配位性分子としては、上述したものと同様のものが挙げられる。なかでも、コアの合成を促進し、コアへの適度な配位力を有するオレイン酸、パルミチン酸、又は、ステアリン酸が好ましい。
【0062】
(5)加熱撹拌条件
第1工程において、上述した各材料(III族原料、II族原料、配位性分子)は、本発明の効果がより優れる理由から、上述した溶媒に溶解させるのが好ましく、例えば、100〜180℃の温度で加熱撹拌して溶解させることが好ましい。なお、本発明の効果がより優れる理由から、この際に、減圧条件下で加熱することより、溶解させた混合溶液から溶存酸素や水分などを除去することが好ましい。
また、本発明の効果がより優れる理由から、上述した加熱溶解に要する時間は、30分以上であることが好ましい。
【0063】
(第2工程)
第2工程は、第1工程後の溶液中に、V族元素を含むV族原料を添加してIII−V族半導体であるコアを形成する工程である。
【0064】
(1)V族原料
V族元素を含むV族原料としては、具体的には、例えば、トリストリアルキルシリルホスフィン、トリスジアルキルシリルホスフィン、及び、トリスジアルキルアミノホスフィン;酸化砒素、塩化砒素、硫酸砒素、臭化砒素、及び、ヨウ化砒素;並びに、一酸化窒素、硝酸、及び、硝酸アンモニウム;等が挙げられる。
これらのうち、本発明の効果がより優れる理由から、Pを含む化合物であるのが好ましく、例えば、トリストリアルキルシリルホスフィン、又は、トリスジアルキルアミノホスフィンを用いるのが好ましく、具体的には、トリストリメチルシリルホスフィンを用いるのがより好ましい。
【0065】
(第3工程)
第3工程は、第2工程後の溶液中に、第1シェルの原料を添加し、第1シェルを形成する工程である。これにより、コアと第1シェルとを有する半導体ナノ粒子前駆体が得られる。
ここで、第1シェルの原料としては、第1シェルが上述したII−VI族半導体である場合には、上述したII族元素を含むII族原料及び後述するVI族元素を含むVI族原料が挙げられ、第1シェルが上述したIII−V族半導体である場合には、上述したIII族元素を含むIII族原料及び上述したV族元素を含有するV族原料が挙げられる。
ここで、第1シェルが、上述したIII−V族半導体である場合には、III−V族半導体に含まれるIII族元素は、上述したコアに含まれるIII族元素とは異なるIII族元素である。
また、第1シェルが、上述したIII−V族半導体である場合には、V族元素を含むV族原料については、コアを形成するV族原料と同一原料であってもよいため、第2工程で使用するV族原料の一部を使用し、第3工程においてはIII族原料のみを添加する態様であってもよい。
【0066】
(1)VI族原料
VI族元素を含むVI族原料としては、具体的には、例えば、硫黄、アルキルチオール、トリアルキルホスフィンスルフィド、トリアルケニルホスフィンスルフィド、アルキルアミノスルフィド、アルケニルアミノスルフィド、イソチオシアン酸シクロヘキシル、ジエチルジチオカルバミン酸、及び、ジエチルジチオカルバミン酸;並びに、トリアルキルホスフィンセレン、トリアルケニルホスフィンセレン、アルキルアミノセレン、アルケニルアミノセレン、トリアルキルホスフィンテルリド、トリアルケニルホスフィンテルリド、アルキルアミノテルリド、及び、アルケニルアミノテルリド;等が挙げられる。
これらのうち、得られる半導体ナノ粒子の分散性が良好となる理由から、アルキルチオールを用いるのが好ましく、具体的には、ドデカンチオール、又は、オクタンチオールを用いるのがより好ましく、ドデカンチオールを用いるのが更に好ましい。
【0067】
これらの材料のうち、III族原料及びV族原料を用いるのが好ましい。
特に、III族原料としては、Gaを含む化合物(例えば、アセチルアセトナトガリウム、塩化ガリウム、フッ化ガリウム、酸化ガリウム、硝酸ガリウム、及び、硫酸ガリウム等)を用いるのがより好ましく、Gaの塩化物を用いるのが更に好ましい。
なお、V族原料としては、上述したとおり、第2工程で使用するV族原料の一部を用いるのが好ましい。
【0068】
(第4工程)
第4工程は、第3工程後の溶液中に、II族元素を含むII族原料を添加して第2シェルを形成し、半導体ナノ粒子(Mg無し)を合成する工程である。
ここで、第2シェルの原料としては、第2シェルが上述したII−VI族半導体である場合には、上述したII族元素を含むII族原料及び上述したVI族元素を含むVI族原料が挙げられる。
【0069】
II族原料としては、本発明の効果がより優れる理由から、脂肪酸亜鉛(例えば、酢酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、及び、ステアリン酸亜鉛)、又は、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛を用いるのが好ましく、脂肪酸亜鉛を用いるのがより好ましく、オレイン酸亜鉛を用いるのがさらに好ましい。
また、VI族原料としては、本発明の効果がより優れる理由から、アルキルチオールを用いるのが好ましく、ドデカンチオールを用いるのがより好ましい。
【0070】
<第2の好適な態様>
本発明の半導体ナノ粒子の製造方法の第2の好適な態様としては、例えば、上述した第1の好適な態様(第1工程から第4工程を有する製造方法)の第4工程の後に、さらに、下記第5工程を有する方法が挙げられる。上記第2の好適な態様により、コアと、コアの表面を覆う第1シェルと、第1シェルの表面を覆う第2シェルと、第2シェルの表面を覆うマグネシウム含有層(マグネシウムを含有する層)(好ましくは、ZnMgS層又はMgS層)とを有する半導体ナノ粒子(Mg有り)が得られる。
【0071】
(第5工程)
第5工程は、第4工程後の上記溶液中に、マグネシウム原料を添加してマグネシウム含有層を形成し、半導体ナノ粒子(Mg有り)を合成する工程である。
【0072】
(1)マグネシウム原料
マグネシウム原料としては特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、脂肪酸マグネシウムであることが好ましく、脂肪酸マグネシウムは、本発明の効果がより優れる理由から、酢酸マグネシウム、オレイン酸マグネシウム、又は、ステアリン酸マグネシウムであることが好ましく、オレイン酸マグネシウムであることがより好ましい。
【0073】
また、第5工程において、本発明の効果がより優れる理由から、マグネシウム原料とともに、VI族原料を添加するのが好ましい。VI族原料の具体例及び好適な態様は、上述した第3工程で使用されるVI族原料と同じである。
【0074】
<積層処理回数>
上述した第1の好適な態様及び第2の好適な態様において、本発明の効果がより優れる理由から、第4工程(積層処理)は複数回数行うことが好ましい。本発明の効果がより優れる理由から、積層処理回数は3〜10回であることが好ましく、4〜6回であることがより好ましい。
【0075】
<II族原料/III族原料(仕込み)>
上述した第1の好適な態様及び第2の好適な態様において、第1工程で添加するIII族原料に対する第1〜4工程で添加するII族原料のモル比(以下、「II族原料/III族原料(仕込み)」とも言う)は、本発明の効果がより優れる理由から、7〜20であることが好ましく、9〜15であることがより好ましく、10〜12であることがさらに好ましい。なお、第4工程が複数回の積層処理である場合、第4工程で添加するII族原料の量は、全ての積層処理で添加した合計の量を指す。
以下、第1工程で添加するIII族原料のIII族元素がInであり、且つ、第1〜4工程で添加するII族原料のII族元素がZnである場合の上記「II族原料/III族原料(仕込み)」を「Zn/In(仕込み)」とも言う。
【0076】
<マグネシウム原料/III族原料(仕込み)>
上述した第2の好適な態様において、第1工程で添加するIII族原料に対する第5工程で添加するマグネシウム原料のモル比(以下、「マグネシウム原料/III族原料(仕込み)」とも言う)は、本発明の効果がより優れる理由から、0.01〜10であることが好ましく、0.1〜3であることがより好ましく、0.2〜1.5であることがさらに好ましく、0.3〜0.8であることが特に好ましく、0.4〜0.6であることが最も好ましい。
以下、第1工程で添加するIII族原料のIII族元素がInである場合の上記「マグネシウム原料/III族原料(仕込み)」を「Mg/In(仕込み)」とも言う。
【0077】
<Mg添加温度>
上述した第2の好適な態様において、第5工程でマグネシウム原料を添加する温度(以下、「Mg添加温度」とも言う)は、本発明の効果がより優れる理由から、100〜400℃であることが好ましく、190〜300℃であることがより好ましく、なかでも、210〜250℃であることがさらに好ましい。
【0078】
[半導体ナノ粒子含有分散液]
本発明の半導体ナノ粒子含有分散液(以下、「本発明の分散液」とも言う)は、上述した本発明の半導体ナノ粒子を含有する分散液である。
ここで、分散液の分散媒を構成する溶媒は、非極性溶媒が好ましい。
非極性溶媒としては、具体的には、例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素;クロロホルムなどのハロゲン化アルキル;ヘキサン、オクタン、n−デカン、n−ドデカン、n−ヘキサデカン、n−オクタデカンなどの脂肪族飽和炭化水素;1−ウンデセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンなどの脂肪族不飽和炭化水素;トリオクチルホスフィン;等が挙げられる。
【0079】
本発明の分散液における本発明の半導体ナノ粒子の含有量(濃度)は、0.1〜100mol/Lであるのが好ましく、0.1〜1mol/Lであるのがより好ましい。
本発明の分散液に含有される本発明の半導体ナノ粒子は1種であっても、2種以上であってもよい。
【0080】
[フィルム]
本発明のフィルムは、上述した本発明の半導体ナノ粒子を含有するフィルムである。
このような本発明のフィルムは、優れた大気耐久性を示すため、例えば、ディスプレイ用途の波長変換フィルム、太陽電池の光電変換(または波長変換)フィルム、生体標識、薄膜トランジスタ等に適用することができる。特に、本発明のフィルムは、量子ドットの吸収端よりも短波の領域の光を吸収し、より長波の光を放出するダウンコンバージョン、または、ダウンシフト型の波長変換フィルムへの応用が好適である。
【0081】
また、本発明のフィルムを構成する母材としてのフィルム材料は特に限定されず、樹脂であってもよく、薄いガラス膜であってもよい。
具体的には、アイオノマー、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体フィルム、ナイロン等をベースとする樹脂材料が挙げられる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
〔半導体ナノ粒子(Mg無し)の製造〕
下記第1〜4工程を行うことで、ZnがドープされたInP(コア)とコアの表面を覆うGaP(第1シェル)と第1シェルの表面を覆うZnS(第2シェル)とを有する半導体ナノ粒子(Mg無し)を製造した。
【0084】
<第1工程>
フラスコ中に16mLのオクタデセン、酢酸インジウム70mg(0.24mmol)、酢酸亜鉛24mg(0.12mmol)を加え、真空下で110℃加熱攪拌を行い、原料を十分溶解させると共に90分間脱気を行った。
【0085】
<第2工程>
次いで、窒素フロー下でフラスコを300℃まで昇温し、溶液の温度が安定したところで、約2mLのオクタデセンに溶解させた0.12mmolのトリストリメチルシリルホスフィンを加えた。
その後、溶液を230℃にした状態で120分間加熱した。溶液が赤色に着色し粒子(コア)が形成している様子が確認された。
【0086】
<第3工程>
次いで、溶液を200℃に加熱した状態において、4mLのオクタデセンに溶解させた、塩化ガリウム15mg(0.09mmol)及びオレイン酸62.5μL(0.2mmol)を加え、1時間ほど加熱することで、ZnがドープされたInP(コア)とGaP(第1シェル)とを有する半導体ナノ粒子前駆体の分散液を得た。
【0087】
<第4工程>
その後、第1シェルの表面を覆うZnS(第2シェル)を形成した。
具体的には、温度を150℃〜240℃に保持し、II族原料(例えば、脂肪酸亜鉛(例えば、酢酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、若しくは、ステアリン酸亜鉛)、又は、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、等)及びVI族原料(例えば、オクタデセンに溶解させた硫黄(ODE−S)、トリオクチルホスフィンに溶解させた硫黄(TOP−S)、若しくは、直鎖状アルカンチオール(例えば、ブタンチオール、オクタンチオール、又は、ドデカンチオール)、等)を交互に加え、15分〜4時間程度保持した(積層処理)。この積層処理を、添加原料の濃度を調整しながら5回程度繰り返すことでZnS(第2シェル)を形成した。
【0088】
このようにして、ZnがドープされたInP(コア)とコアの表面を覆うGaP(第1シェル)と第1シェルの表面を覆うZnS(第2シェル)とを有する半導体ナノ粒子(Mg無し)を得た。
【0089】
〔半導体ナノ粒子(Mg有り)の製造〕
上述した第4工程の後に、さらに、下記第5工程を行うことで、第2シェルの表面を覆うZnMgS又はMgS層を形成し、ZnがドープされたInP(コア)とコアの表面を覆うGaP(第1シェル)と第1シェルの表面を覆うZnS(第2シェル)と第2シェルの表面を覆うZnMgS層又はMgS層とを有する半導体ナノ粒子(Mg有り)を製造した。
【0090】
<第5工程>
第4工程の最終処理において、VI族原料添加から1時間経過後に、マグネシウム原料(例えば、脂肪酸マグネシウム(例えば、オレイン酸マグネシウムなど))を30分かけて添加し、さらにVI族原料(例えば、オクタデセンに溶解させた硫黄(ODE−S)、トリオクチルホスフィンに溶解させた硫黄(TOP−S)、若しくは、直鎖状アルカンチオール(例えば、ブタンチオール、オクタンチオール、又は、ドデカンチオール)、等)を添加して30分保持することでZnMgS層又はMgS層を形成した。
【0091】
このようにして、ZnがドープされたInP(コア)とコアの表面を覆うGaP(第1シェル)と第1シェルの表面を覆うZnS(第2シェル)と第2シェルの表面を覆うZnMgS層又はMgS層とを有する半導体ナノ粒子(Mg有り)を得た。
【0092】
〔比較例1〜3及び実施例1〜11〕
以下に、上述のとおり製造した半導体ナノ粒子(Mg無し、Mg有り)のうち、第4工程において、II族原料として脂肪酸亜鉛を使用し、且つ、VI族原料としてドデカンチオールを使用した態様(比較例1〜3及び実施例1〜11)について、より具体的に示す。
なお、いずれもトルエン分散液(半導体ナノ粒子含有分散液)とした。具体的には、得られた分散液を室温まで冷却し、エタノールを加え、遠心分離を行い、粒子を沈殿させ、上澄みを廃棄した後、トルエン溶媒に分散させた。
【0093】
<比較例1>
比較例1は、上述のとおり製造した半導体ナノ粒子(Mg無し)であり、第4工程における積層処理回数は表1に示されるとおりである。
【0094】
<比較例2及び実施例6>
比較例2及び実施例6は、上述のとおり製造した半導体ナノ粒子(Mg無し)であり、第4工程における積層処理回数は表1に示されるとおりである。
【0095】
<比較例3>
比較例3は、上述のとおり製造した半導体ナノ粒子(Mg有り)であり、第4工程における積層処理回数は表1に示されるとおりである。ただし、第1工程において、酢酸インジウムの使用量を35mg(0.12mmol)とし、II族原料として酢酸亜鉛12mg(0.06mmol)を使用し、第2工程において、トリストリメチルシリルホスフィンの使用量を0.08mmolとし、第3工程において、塩化ガリウムの使用量を0.03mgとした。
【0096】
<実施例1〜5及び7〜11>
実施例1〜5及び7〜11は、上述のとおり製造した半導体ナノ粒子(Mg有り)であり、第4工程における積層処理回数は表1に示されるとおりである。
【0097】
<Zn/In(仕込み)、Mg/In(仕込み)、Mg添加温度>
下記表1に、各実施例及び比較例について、
第1工程で使用した酢酸インジウムに対する第1〜4工程で使用した脂肪酸亜鉛(合計)のモル比(Zn/In(仕込み))、
第1工程で使用した酢酸インジウムに対する第5工程で使用したマグネシウム原料のモル比(Mg/In(仕込み))、及び、
第5工程におけるマグネシウム原料を添加した温度[℃](Mg添加温度)を示す。
【0098】
<Zn/In(EDX)>
下記表1に、各実施例及び比較例について、上述した「Zn/In」を示す(Zn/In(EDX))。Zn/Inの求め方は上述のとおりである。
なお、比較例1〜3及び実施例1〜11いずれについても、EDX分析により、亜鉛、硫黄及びインジウムが検出された。
【0099】
<B/A(ラマン)>
下記表1に、各実施例及び比較例について、上述した「B/A」を示す(B/A(ラマン))。B/Aの求め方は上述のとおりである。
なお、ピークAは、比較例1〜3及び実施例1〜11いずれについても検出された。
一方、ピークBは、半導体ナノ粒子(Mg有り)(比較例3、実施例1〜5及び7〜11)には検出されたが、半導体ナノ粒子(Mg無し)(比較例1〜2及び実施例6)には検出されなかった。
【0100】
<平均粒子径>
下記表1に、各実施例及び比較例について、上述した「平均粒子径」を示す。平均粒子径の測定方法は上述のとおりである。
【0101】
〔評価〕
得られた半導体ナノ粒子について以下のとおり初期特性及び大気耐久性を評価した。
【0102】
<初期特性>
得られた半導体ナノ粒子含有分散液を用いて量子収率(%)を測定した。結果を表1に示す(初期特性)。
【0103】
<大気耐久性>
得られた半導体ナノ粒子含有分散液(500μm)に大気(20℃、相対湿度30%)を満たし、遮光状態で85℃24時間放置した(耐久試験)。その後、量子収率を測定した。そして、量子収率の維持率(=耐久試験後の量子収率÷耐久試験前の量子収率×100)(%)を算出した。結果を表1に示す(維持率)。維持率が高いほど大気耐久性に優れることを表す。
また、下記基準に基づき大気耐久性を評価した。結果を表1に示す(大気耐久性)。大気耐久性の観点から、A〜Cであることが好ましく、A又はBであることがより好ましく、Aであることがさらに好ましい。
・A:維持率が78%以上
・B:維持率が75%以上78%未満
・C:維持率が60%以上75%未満
・D:維持率が50%以上60%未満
・E:維持率が50%未満
【0104】
【表1】
【0105】
なお、表1中の2つの実施例3は同じものである。
【0106】
表1から分かるように、Zn/Inが7未満の比較例1〜3と比較して、Zn/Inが7≦Zn/In≦15である実施例1〜11は、優れた大気耐久性を示した。ここで、Zn/Inが2.7である比較例1と、Zn/Inが6である比較例2と、Zn/Inが7以上である実施例6との対比から分かるように、Zn/Inを7以上にすることで大気耐久性が大幅に向上した。すなわち、Zn/Inと大気耐久性との間に臨界性が見られた。
【0107】
実施例1〜5の対比(Mg/In(仕込み)が0.5であり、且つ、Mg添加温度が240℃である態様同士の対比)から分かるように、Zn/Inが7≦Zn/In≦12である実施例1〜4は、より優れた初期特性及び大気耐久性を示した。なかでも、Zn/Inが9≦Zn/In≦12である実施例2〜4は、さらに優れた初期特性及び大気耐久性を示した。そのなかでも、Zn/Inが9≦Zn/In<12である実施例2及び3は、さらに優れた大気耐久性を示した。そのなかでも、Zn/Inが9<Zn/In<12である実施例3は、さらに優れた初期特性及び大気耐久性を示した。
【0108】
実施例3及び6〜11の対比(Zn/In(仕込み)が11.75である態様同士の対比)から分かるように、ピークBが検出された実施例3及び7〜11は、より優れた大気耐久性を示した。なかでも、B/Aが0<B/A<3である実施例3及び7〜10は、さらに優れた初期特性及び大気耐久性を示した。なかでも、B/Aが0.5≦B/A≦1.5である実施例3及び8〜10は、さらに優れた耐久性を示した。なかでも、B/Aが0.5≦B/A<1.5である実施例3及び8〜9は、さらに優れた大気耐久性を示した。なかでも、B/Aが0.5<B/A<1.5である実施例3及び9は、さらに優れた大気耐久性を示した。そのなかでも、B/Aが0.5<B/A<1.2である実施例3は、さらに優れた初期特性及び大気耐久性を示した。
【0109】
実施例3及び7〜8の対比(Zn/In(仕込み)が11.75であり、且つ、Mg/In(仕込み)が0.5である態様同士の対比)から、Mg添加温度が190℃以上である実施例3及び8は、より優れた大気耐久性を示した。なかでも、Mg添加温度が210℃以上である実施例3は、さらに優れた初期特性及び大気耐久性を示した。
【0110】
また、第4工程のII族原料として脂肪酸亜鉛以外のII族原料を使用した態様、及び、第4工程のVI族原料としてドデカンチオール以外のVI族原料を使用した態様についても、上述した比較例1〜3及び実施例1〜11と同様に「Zn/In」、「B/A」及び「平均粒子径」を測定したところ、表1と同様の結果となり、また、その初期特性及び維持率も表1と同様の傾向となった。
【0111】
また、上述した第3工程を行わなかった点以外は上述した比較例1〜3及び実施例1〜11と同様の手順に従って、シングルシェル形状の半導体ナノ粒子(ZnS(シェル)が、ZnがドープされたInP(コア)の表面を覆う半導体ナノ粒子)を製造した。そして、上述した比較例1〜3及び実施例1〜11と同様に「Zn/In」及び「B/A」を測定したところ、表1と同様の結果となり、また、その初期特性及び維持率も表1と同様の傾向となった。