特許第6979296号(P6979296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979296
(24)【登録日】2021年11月17日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】切削方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 27/06 20060101AFI20211125BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20211125BHJP
   B28D 1/24 20060101ALI20211125BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20211125BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20211125BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20211125BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20211125BHJP
   C03B 33/037 20060101ALN20211125BHJP
【FI】
   B24B27/06 M
   H01L21/78 F
   B28D1/24
   B28D5/00 Z
   B23Q17/20 Z
   B23Q17/24 Z
   B24B49/12
   !C03B33/037
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-146720(P2017-146720)
(22)【出願日】2017年7月28日
(65)【公開番号】特開2019-25583(P2019-25583A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 直子
【審査官】 須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−312979(JP,A)
【文献】 特開平10−307004(JP,A)
【文献】 特開平10−332332(JP,A)
【文献】 特開2014−053358(JP,A)
【文献】 特開2003−203883(JP,A)
【文献】 特開2005−085973(JP,A)
【文献】 特開2016−197702(JP,A)
【文献】 米国特許第08952497(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B21/00−51/00
B23Q17/00;17/20;17/24
B28D1/00−7/04
C03B33/00−33/14
H01L21/78;21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削予定ラインを有した被加工物を切削ブレードで切削する切削方法であって、
被加工物の裏面に保持部材を配設する保持部材配設ステップと、
該保持部材を介して被加工物を保持テーブルで保持する保持ステップと、
該保持テーブルで保持された被加工物に対して該切削ブレードの先端が該保持部材に至るまで該切削ブレードを切り込ませ該切削予定ラインに沿って該切削ブレードで被加工物を切削して該保持部材に至る切削溝を形成する切削ステップと、
該切削ステップで形成された該切削溝を被加工物の表面側から撮像カメラで撮像して被加工物の該表面における該切削溝の撮像画像を形成する表面側切削溝撮像ステップと、
切削溝を被加工物の該表面側から赤外線カメラで撮像して被加工物の該裏面における該切削溝の撮像画像を形成する裏面側切削溝撮像ステップと、
該表面と該裏面における該切削溝を確認する確認ステップと、を備え、
該表面側切削溝撮像ステップと該裏面側切削溝撮像ステップとでは、同一の座標位置における切削溝の表面及び裏面の撮像画像を得て、
該確認ステップでは、該切削溝の斜め切り又は先細りを検出することを特徴とする切削方法。
【請求項2】
該確認ステップでは、同一の座標位置における該表面側の切削溝の撮像画像と、該裏面側の該切削溝の撮像画像とを表示部に並べて表示する、請求項1に記載の切削方法。
【請求項3】
該撮像カメラは、該赤外線カメラで兼用される、請求項に記載の切削方法。
【請求項4】
該確認ステップでは、該赤外線カメラの焦点を被加工物の該表面に位置づけて該表面における該切削溝を撮像し、該赤外線カメラの該焦点を被加工物の該裏面に位置づけて該裏面における該切削溝を撮像する、請求項に記載の切削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削予定ラインを有する被加工物を切削ブレードで切削する切削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハやガラス基板等の被加工物は、例えば、回転する円環状の切削ブレードを備える切削装置によって切削予定ラインに沿って切削され、複数のチップへと分割される。このような切削ブレードによる分割が行われる場合、通常、切削後に、被加工物が切削予定ラインに沿って適正に分割されたか否か、あるいは、分割のために形成される切削溝にチッピング(欠け)が生じていないか否か、などに関するカーフチェックが行われる。この種のカーフチェックは、一般に、切削された切削溝を撮像手段によって撮像することにより行われる(例えば、特許文献1参照)。このカーフチェックにおいて、切削溝におけるチッピングの有無やカーフ幅(切削溝幅)が許容値内に入っているか否かを確認し、不具合が発生した場合には、切削ブレードの位置の補正などの対処を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−246015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構成では、切削溝を撮像してカーフチェックする際に、被加工物の表面側の切削溝しか確認していないため、例えば、被加工物の裏面側で許容値以上のチッピングやクラックが発生していたり、切削溝が切削予定ラインから許容値以上の位置ずれしている場合、被加工物全体を加工した後に、これらの不具合が発覚することにより不良チップが製造されてしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、不良チップが製造されるおそれを低減できる切削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、切削予定ラインを有した被加工物を切削ブレードで切削する切削方法であって、被加工物の裏面に保持部材を配設する保持部材配設ステップと、該保持部材を介して被加工物を保持テーブルで保持する保持ステップと、該保持テーブルで保持された被加工物に対して該切削ブレードの先端が該保持部材に至るまで該切削ブレードを切り込ませ該切削予定ラインに沿って該切削ブレードで被加工物を切削して該保持部材に至る切削溝を形成する切削ステップと、該切削ステップで形成された該切削溝を被加工物の表面側から撮像カメラで撮像して被加工物の該表面における該切削溝の撮像画像を形成する表面側切削溝撮像ステップと、該切削溝を被加工物の該表面側から赤外線カメラで撮像して被加工物の該裏面における該切削溝の撮像画像を形成する裏面側切削溝撮像ステップと、該表面と該裏面における該切削溝を確認する確認ステップと、を備え、該表面側切削溝撮像ステップと該裏面側切削溝撮像ステップとでは、同一の座標位置における切削溝の表面及び裏面の撮像画像を得て、該確認ステップでは、該切削溝の斜め切り又は先細りを検出するものである。
また、該確認ステップでは、同一の座標位置における該表面側の切削溝の撮像画像と、該裏面側の該切削溝の撮像画像とを表示部に並べて表示しても良い。
【0007】
この構成によれば、被加工物の表面側から被加工物の表面及び裏面における切削溝をそれぞれ撮像し、この撮像画像に基づいて、表面と裏面における切削溝を確認することにより、裏面側で許容値以上のチッピング等の不具合が発生した場合でも即座に検出できるため、不良チップが製造されるおそれを低減することができる。
【0008】
この構成において、撮像カメラは、赤外線カメラで兼用する構成としてもよい。この構成によれば、1台の赤外線カメラで、被加工物の表面及び裏面における切削溝を撮像できるため、カメラの切り換え動作が不要となり、被加工物を撮像する際の作業工程が簡素化される。
【0009】
また、該確認ステップでは、該赤外線カメラの焦点を被加工物の該表面に位置づけて該表面における該切削溝を撮像し、該赤外線カメラの該焦点を被加工物の該裏面に位置づけて該裏面における該切削溝を撮像してもよい。この構成によれば、赤外線カメラの焦点を調整することで、被加工物の表面及び裏面における切削溝をそれぞれ撮像できるため、撮像する際の作業工程を簡素化できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被加工物の表面側から被加工物の表面及び裏面における切削溝をそれぞれ撮像し、この撮像画像に基づいて、表面と裏面における切削溝を確認することにより、裏面側で許容値以上のチッピング等の不具合が発生した場合でも即座に検出できるため、不良チップが製造されるおそれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態に係る切削方法に用いられる切削装置の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、環状フレームに支持された被加工物の一例を示す斜視図である。
図3図3は、ウエーハの切削方法の手順を示すフローチャートである。
図4図4は、環状フレームにダイシングテープを介して支持されたウエーハをチャックテーブルに保持した状態を示す側面図である。
図5図5は、チャックテーブルに保持されたウエーハを切削手段によって切削している状態を示す側面図である。
図6図6は、第1撮像手段を用いて、チャックテーブルに保持されたウエーハの切削溝の表面側を撮像する状態を示す側面図である。
図7図7は、第2撮像手段を用いて、チャックテーブルに保持されたウエーハの切削溝の裏面側を撮像する状態を示す側面図である。
図8図8は、第1撮像手段が撮像した表面側切削溝撮像画像の一例と第2撮像手段が撮像した裏面側切削溝撮像画像の一例とを並べて配置した図である。
図9図9は、表面側切削溝撮像画像と裏面側切削溝撮像画像とから想定される切削溝の形状の一例を示すウエーハの部分断面図である。
図10図10は、第1撮像手段が撮像した表面側切削溝撮像画像の他の一例と第2撮像手段が撮像した裏面側切削溝撮像画像の他の一例とを並べて配置した図である。
図11図11は、表面側切削溝撮像画像と裏面側切削溝撮像画像とから想定される切削溝の形状の一例を示すウエーハの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
以下、本実施形態に係る被加工物の切削方法について説明する。図1は、本実施形態に係る切削方法に用いられる切削装置の構成例を示す斜視図である。図2は、環状フレームに支持された被加工物の一例を示す斜視図である。切削装置1は、図1に示すように、チャックテーブル(保持テーブル)10と切削手段20とを相対移動させることにより、チャックテーブル10上に保持されたウエーハ(被加工物)100(図2参照)を切削加工するものである。切削装置1は、チャックテーブル10と、切削手段20と、第1撮像手段30と、第2撮像手段35と、X軸移動手段40と、Y軸移動手段50と、Z軸移動手段60と、制御部70と、表示部75とを含んで構成されている。
【0014】
本実施形態の被加工物であるウエーハ100は、シリコンを母材とする円板状の半導体ウエーハやサファイア、SiC(炭化ケイ素)などを母材とする光デバイスウエーハである。ウエーハ100は、図2に示すように、表面101に形成された格子状の分割予定ライン(切削予定ライン)102によって区画された複数の領域にデバイス103が形成されている。ウエーハ100は、裏面104に貼着されたダイシングテープ(保持部材)105を介して、環状フレーム106に支持されている。ウエーハ100は、環状フレーム106に支持された状態でチャックテーブル10上に保持される。なお、被加工物は、分割予定ライン102に沿って切削される板状物であれば良く、本実施形態のように、分割予定ライン102によって区画された領域にデバイス103を有することを要するものではない。また、本実施形態では、保持部材としてダイシングテープ105を用いた構成としたが、例えば、シリコンやガラス等のハードプレートを接着剤やワックス、両面テープ等の接着部材を介して被加工物に貼着する構成としてもよい。
【0015】
チャックテーブル10は、図1に示すように、多孔性セラミックス等から形成された保持部11と、この保持部11の周囲に配設された複数(本実施形態では4個)のクランパ12とを備える。保持部11は、環状フレーム106に支持されたウエーハ100をその裏面側から吸引することで保持する。この際、クランパ12は、環状フレーム106を挟んで保持する。また、チャックテーブル10は、保持部11の中心軸線を中心に回転可能に構成されており、切削手段20に対して、任意の回転角度に調整することができる。
【0016】
切削手段20は、切削ブレード21と、スピンドルと、スピンドルハウジング23と、切削液供給ノズル24とを含んでいる。切削手段20は、チャックテーブル10に保持されたウエーハ100(図2)に切削液を供給しながら加工を行う。このとき、切削手段20は、第1撮像手段30または第2撮像手段35によって撮像された被加工物の画像データに基づいて、ウエーハ100の加工すべき領域を切削ブレード21により加工する。スピンドルハウジング23内にはスピンドルが収容され、エアベアリングにより回転可能に支持されている。スピンドルは、スピンドルハウジング23中に収容されたモータにより回転駆動され、スピンドルの先端側には切削ブレード21が着脱可能に装着されている。
【0017】
切削ブレード21は、チャックテーブル10に保持された被加工物を切削する。切削ブレード21は、略リング形状の極薄の切削砥石である。切削液供給ノズル24は、切削ブレード21による被加工物の加工中に、被加工物の加工点へ切削液を供給する。
【0018】
第1撮像手段(撮像カメラ)30は、チャックテーブル10に保持されたウエーハ100を表面101側から撮像してウエーハ100の表面101の画像を生成する。第1撮像手段30は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサを備えた顕微鏡等であり、撮像された画像を用いて、ウエーハ100のアライメント調整が行われる。第2撮像手段(赤外線カメラ)35は、チャックテーブル10に保持されたウエーハ100を表面101側から撮像して、少なくともウエーハ100の裏面104の画像を生成する。赤外線(Infrared Rays)は、可視光に比べて波長が長いため、散乱しにくい性質があり、シリコンなどを透過してウエーハ100の裏面104を撮像することができる。もちろん、第2撮像手段(赤外線カメラ)35を用いて、ウエーハ100を表面101側から撮像して、該表面101の画像を生成することも可能である。
【0019】
X軸移動手段40は、装置基台2上に搭載されて、チャックテーブル10を切削送り方向(X軸方向)に移動させるものである。切削送り方向(X軸方向)は、鉛直方向と直交する。X軸移動手段40は、X軸パルスモータ41と、X軸ボールねじ42と、一対のX軸ガイドレール43,43とを含んでいる。一対のX軸ガイドレール43,43上には、チャックテーブル10が載置され、このチャックテーブル10の下部にX軸ボールねじ42が螺合している。X軸移動手段40は、X軸パルスモータ41により発生した回転力によりX軸ボールねじ42を回転駆動させることで、チャックテーブル10を一対のX軸ガイドレール43,43に沿って、装置基台2に対してX軸方向に移動させる。
【0020】
Y軸移動手段50は、装置基台2上に搭載されて、切削ブレード移動基台3及び切削手段20を割り出し送り方向(Y軸方向)に移動させるものである。ここで、割り出し送り方向(Y軸方向)は、切削ブレード21の回転軸の軸方向であり、切削送り方向(X軸方向)及び鉛直方向とそれぞれ直交している。Y軸移動手段50は、Y軸パルスモータ51と、Y軸ボールねじ52と、一対のY軸ガイドレール53,53とを含んでいる。一対のY軸ガイドレール53,53上には、切削手段20が搭載される切削ブレード移動基台3が載置され、この切削ブレード移動基台3の下部にY軸ボールねじ52が螺合している。Y軸移動手段50は、Y軸パルスモータ51により発生した回転力によりY軸ボールねじ52を回転駆動させることで、切削ブレード移動基台3及び切削手段20をY軸ガイドレール53,53に沿って、装置基台2に対してY軸方向に移動させる。
【0021】
Z軸移動手段60は、切削ブレード移動基台3に搭載されて、支持部4及び切削手段20を切り出し方向(Z軸方向)に移動させるものである。この切り出し方向(Z軸方向)は、鉛直方向であり、切削送り方向(X軸方向)及び割り出し送り方向(Y軸方向)にそれぞれ直交する。Z軸移動手段60は、切削ブレード移動基台3に設けられており、Z軸パルスモータ61と、Z軸ボールねじ(不図示)と、一対のZ軸ガイドレール63,63とを含んでいる。一対のZ軸ガイドレール63,63には、切削手段20が搭載される支持部4が連結されており、この支持部4にZ軸ボールねじが螺合している。Z軸移動手段60は、Z軸パルスモータ61により発生した回転力によりZ軸ボールねじを回転させることで、支持部4及び切削手段20をZ軸ガイドレール63に沿ってガイドしつつ、切削ブレード移動基台3に対してZ軸方向に移動させる。
【0022】
制御部70は、例えば、CPU等で構成された演算処理装置と、ROM、RAM、ハードディスク等で構成されて各種のデータやプログラムを記憶する記憶部と、を備える。この制御部70は、オペレータの入力や予め設定されたプログラム等に基づいて、上記した各部の動作を制御する機能を有する。また、制御部70は、第1撮像手段30による撮像画像をアライメント用にパターンマッチング処理したり、第1撮像手段30及び第2撮像手段35による各撮像画像をカーフチェック用に画像処理して表示部75に表示させたりする画像処理手段として機能する。
【0023】
表示部75は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)等で構成されたモニタであり、制御部70によって処理された画像を表示する。また、制御部70には、各種スイッチ、タッチパネル等の入力装置で構成される操作部(不図示)が接続され、オペレータは、操作部を介して、切削装置1の各部に対する指示を入力する。例えば、オペレータは、操作部を操作することにより、第1撮像手段30及び第2撮像手段35の少なくとも一方を用いて、ウエーハ100の撮像画像を生成することができる。
【0024】
上記した構成では、ウエーハ100を保持したチャックテーブル10と切削手段20とを切削送り方向(X軸方向)、割り出し送り方向(Y軸方向)及び切り出し方向(Z軸方向)にそれぞれ相対的に移動させてウエーハ100に対する切削加工を行う。次に、本実施形態に係る切削方法について説明する。図3は、ウエーハの切削方法の手順を示すフローチャートである。
【0025】
本実施形態では、ウエーハ(被加工物)100の切削方法は、図3に示すように、保持部材配設ステップS1、保持ステップS2、切削ステップS3、表面側切削溝撮像ステップS4、裏面側切削溝撮像ステップS5および確認ステップS6を備えて構成されている。これら各ステップの順序は、図3に限るものではなく、例えば、裏面側切削溝撮像ステップS5を表面側切削溝撮像ステップS4よりも先に実行することも可能である。次に、これらの各ステップについて説明する。
【0026】
[保持部材配設ステップS1]
保持部材配設ステップは、図2に示すように、ウエーハ100の裏面104にダイシングテープ105を貼着すると共に、このダイシングテープ(保持部材)105を介して、ウエーハ100を環状フレーム106に支持する。環状フレーム106は、ウエーハ100よりも大きな開口部を有し、この開口部内にウエーハ100が配置される。なお、ウエーハ100は、環状フレーム106に支持されることを必ずしも要するものではなく、例えば、ウエーハ100の裏面104にウエーハ100と略同じ大きさの円板状のダイシングテープ(保持部材)105を貼着してもよい。
【0027】
[保持ステップS2]
図4は、環状フレームにダイシングテープを介して支持されたウエーハをチャックテーブルに保持した状態を示す側面図である。ウエーハ100は、ダイシングテープ105を介して、チャックテーブル10の上に載置され、保持部11(図1)によって吸引保持されている。また、環状フレーム106は、クランパ12によって挟持されている。
【0028】
[切削ステップS3]
図5は、チャックテーブルに保持されたウエーハを切削手段によって切削している状態を示す側面図である。チャックテーブル10に保持されたウエーハ100のアライメント調整を行った後、ウエーハ100に対する切削加工を行う。この場合、ウエーハ100の分割予定ライン102上に、切削手段20の切削ブレード21を配置し、ウエーハ100を保持したチャックテーブル10と切削手段20とを切削送り方向(図1中X軸方向)に相対的に移動させつつ、スピンドル22と共に切削ブレード21を回転させた状態で、ウエーハ100に対して切削ブレード21の先端がダイシングテープ105に至るまで切削ブレード21を切り込ませる。これにより、ウエーハ100には、分割予定ライン102上に切削溝107が形成される。ダイシングテープ105は、切削ブレード21によって切断されないため、ウエーハ100はダイシングテープ105によって保持された状態を保っている。
【0029】
[表面側切削溝撮像ステップS4]
図6は、第1撮像手段を用いて、チャックテーブルに保持されたウエーハの切削溝の表面側を撮像する状態を示す側面図である。表面側切削溝撮像ステップS4では、第1撮像手段30は、ウエーハ100に形成された切削溝107上に配置され、該切削溝107を撮像する。具体的には、ウエーハ100の分割予定ライン102(切削溝107)上に予め設定された座標位置が、第1撮像手段30の下に位置付くようにチャックテーブル10を移動し、第1撮像手段30は、この座標位置でチャックテーブル10が停止した後に撮像する。これにより、第1撮像手段30は、ウエーハ100の表面101側から切削溝107の表面部107Aの撮像画像を形成し、この撮像画像は、制御部70が備える記憶部に格納される。この際、ウエーハ100の管理番号情報、撮像された座標位置情報などが合わせて格納される。本実施形態では、表面側切削溝撮像ステップS4は、予め設定された所定数(例えば10本)の切削溝107が形成される度に、形成された切削溝107を撮像して実行される。この場合、経験的に切削不良が生じやすい位置(例えば、ウエーハ100に対する切削ブレード21の入口や出口)を上記した座標位置として予め設定しておき、この位置の切削溝107に対して、表面側切削溝撮像ステップS4を実行するのが効果的である。また、ウエーハ100に対する切削ブレード21の入口と出口との間の中央領域で撮像してもよい。また、切削溝107の一端から他端までを複数回撮像して全体を確認するようにしてもよい。また、切削溝107に沿って、第1撮像手段30とチャックテーブル10とを相対的に移動させつつ撮像してもよい。また、すべての切削溝107に対して、表面側切削溝撮像ステップS4を実行してもよい。
【0030】
[裏面側切削溝撮像ステップS5]
図7は、第2撮像手段を用いて、チャックテーブルに保持されたウエーハの切削溝の裏面側を撮像する状態を示す側面図である。裏面側切削溝撮像ステップS5では、第2撮像手段35は、表面側切削溝撮像ステップS4に続いて実行される。すなわち、表面側切削溝撮像ステップS4において、撮像された切削溝107に対して裏面側切削溝撮像ステップS5を実行する。第2撮像手段35は、該当する切削溝107上に配置され、ウエーハ100の裏面104に焦点を位置づけて撮像する。これにより、第2撮像手段35は、ウエーハ100の表面101側から切削溝107の裏面部107Bの撮像画像を形成し、この撮像画像は、制御部70が備える記憶部に格納される。また、ウエーハ100の裏面104に焦点を位置づけた状態で、切削溝107に沿って、第2撮像手段35とチャックテーブル10とを相対的に移動させつつ撮像してもよい。本実施形態では、第2撮像手段35は、第1撮像手段30と同一の座標位置で撮像する。これにより、同一の座標位置における切削溝107の表面部107A及び裏面部107Bの撮像画像を得ることができる。
【0031】
[確認ステップS6]
図8は、第1撮像手段が撮像した表面側切削溝撮像画像の一例と第2撮像手段が撮像した裏面側切削溝撮像画像の一例とを並べて配置した図である。図9は、表面側切削溝撮像画像と裏面側切削溝撮像画像とから想定される切削溝の形状の一例を示すウエーハの部分断面図である。確認ステップS6では、オペレータは、切削溝107の表面部107A及び裏面部107Bの撮像画像を確認する。具体的には、図8に示すように、同一の座標位置における表面側切削溝撮像画像80Aと裏面側切削溝撮像画像80Bとが組(ペア)となり、例えば、表示部75(図1)に横並びに表示される。一の切削溝107において、該切削溝107の表面部107A及び裏面部107Bが、座標位置を変えてそれぞれ複数撮像されている場合には、オペレータの操作によって、表面側切削溝撮像画像80Aと裏面側切削溝撮像画像80Bとの組が順次、表示部75(図1)に表示される。
【0032】
この構成では、表面側切削溝撮像画像80A及び裏面側切削溝撮像画像80Bを通じて、切削溝107の表面部107Aだけでなく、裏面部107Bの切削状態を観察することができる。このため、例えば、撮像画像に基づいて、制御部70に切削溝107の表面部107A及び裏面部107Bに発生するチッピングの大きさ(最大値、平均値)を算出させ、表面部107Aまたは裏面部107Bに許容値以上のチッピングが発生したか否かを容易に検出することができる。ここで、表面部107Aまたは裏面部107Bの少なくとも一方に、許容値以上のチッピングが発生した場合には、制御部70は、警報を発してウエーハ100の切削を一端中断する。オペレータは、上記チッピングが発生した原因への対処(例えば、切削ブレードの交換やドレッシングなど)を行うことにより、不良チップが製造されるおそれを低減することができる。
【0033】
また、この構成では、同一の座標位置における表面側切削溝撮像画像80Aと裏面側切削溝撮像画像80Bとを横並びに配置するため、制御部70は、切削溝107における表面部107Aの中心線108Aと裏面部107Bの中心線108Bとの位置ずれの有無を容易に検出することができる。ここで、図8に示すように、切削溝107における表面部107Aの中心線108Aと裏面部107Bの中心線108Bとが距離Lの位置ずれを生じている場合、図9に示すように、いわゆる斜め切れの切削溝107が形成されていると想定される。この際の距離Lが許容値以上であれば、制御部70は、警報を発してウエーハ100の切削を一端中断する。オペレータは、次の分割予定ライン102の切削から、位置ずれを打ち消す補正(例えば、チャックテーブル10に対する切削ブレード21の切削送り速度に調整など)をすることにより、次の分割予定ライン102から不良チップが製造されるおそれを低減することができる。
【0034】
上記のような斜め切れは、ウエーハ100の材質や切り込み深さ、加工送り速度等に応じて発生状況が変わる。更に、斜め切れは、ウエーハ100に対して、切削ブレード21が進入した側、出た側、その間においてそれぞれ発生状況が変わる傾向にある。このため、例えば、バー状に切り出したシリコン片やカーボン片等の確認用部材をハーフカットした後、この確認用部材を横に倒して、顕微鏡などの撮像手段で溝形状を確認する従来の構成では、実際のウエーハ100に対して斜め切れが発生するか否かを判断できなかった。これに対して、本実施形態では、同一の座標位置における表面側切削溝撮像画像80Aと裏面側切削溝撮像画像80Bとから、斜め切れの有無を容易に検出することができる。
【0035】
また、確認ステップS6では、斜め切れの他に、いわゆる先細りについても検出することができる。図10は、第1撮像手段が撮像した表面側切削溝撮像画像の他の一例と第2撮像手段が撮像した裏面側切削溝撮像画像の他の一例とを並べて配置した図である。図11は、表面側切削溝撮像画像と裏面側切削溝撮像画像とから想定される切削溝の形状の一例を示すウエーハの部分断面図である。
【0036】
この構成では、制御部70は、図10に示すように、切削溝107における表面部107Aの幅WAと裏面部107Bの幅WBとの差を算出する。切削溝107における表面部107Aの幅WAと裏面部107Bの幅WBとの差が発生している場合、図11に示すように、いわゆる先細りの切削溝107が形成されていると想定される。この際の幅WAと幅WBとの差が許容値以上であれば、制御部70は、警報を発してウエーハ100の切削を一端中断する。オペレータは、先細りの原因(例えば、切削ブレード21の偏摩耗など)を追求し、この原因への対処(例えば、切削ブレードの交換やドレッシングなど)を行うことにより、不良チップが製造されるおそれを低減することができる。
【0037】
次に、別の実施形態について説明する。上記した実施形態では、切削装置1は、顕微鏡等からなる第1撮像手段30と、赤外線カメラからなる第2撮像手段35とを備える構成としたが、これに限るものではなく、例えば、第1撮像手段30を赤外線カメラからなる第2撮像手段35で兼用してもよい。すなわち、赤外線カメラからなる第2撮像手段35を用いて、切削溝107の表面部107A及び裏面部107Bをそれぞれ撮像する。
【0038】
この場合、第2撮像手段35の焦点をウエーハ100の表面101に位置づけて切削溝107の表面部107Aを撮像し、次に、第2撮像手段35の焦点をウエーハ100の裏面104に位置づけて切削溝107の裏面部107Bを撮像する。この構成では、第2撮像手段35の焦点を調整することで、切削溝107の表面部107A及び裏面部107Bをそれぞれ撮像できるため、撮像する際の作業工程、すなわち表面側切削溝撮像ステップS4及び裏面側切削溝撮像ステップS5を簡素化することができる。
【0039】
また、ウエーハ100の厚みが所定値(例えば80μm)以下の場合には、例えば、ウエーハ100の表面101と裏面104との中間位置に第2撮像手段35の焦点を位置づけて、切削溝107の表面部107A及び裏面部107Bを一度に撮像することができ、同一の撮像画像内に表面部107A及び裏面部107Bを表すことができる。
【0040】
以上、本実施形態に係る切削方法は、分割予定ライン102を有したウエーハ100を切削ブレード21で切削する切削方法であって、ウエーハ100の裏面104にダイシングテープ105を配設する保持部材配設ステップS1と、ダイシングテープ105を介してウエーハ100をチャックテーブル10で保持する保持ステップS2と、チャックテーブル10で保持されたウエーハ100に対して切削ブレード21の先端がダイシングテープ105に至るまで切削ブレード21を切り込ませ分割予定ライン102に沿って切削ブレード21でウエーハ100を切削してダイシングテープ105に至る切削溝107を形成する切削ステップS3と、切削ステップS3で形成された切削溝107をウエーハ100の表面101側から第1撮像手段30で撮像してウエーハ100における切削溝107の表面部107Aの撮像画像を形成する表面側切削溝撮像ステップS4と、切削溝107をウエーハ100の表面101側から第2撮像手段35で撮像して、切削溝107の裏面部107Bの撮像画像を形成する裏面側切削溝撮像ステップS5と、切削溝107の表面部107Aと裏面部107Bの撮像画像を確認する確認ステップS6とを備えている。この構成によれば、切削溝107の表面部107Aと裏面部107Bの撮像画像を通じて、切削溝107の表面部107Aだけでなく、裏面部107Bの切削状態を観察することができる。このため、例えば、切削溝107の表面部107A及び裏面部107Bに、許容値以上のチッピングや、切削溝107の斜め切れまたは先細りが発生したか否かを容易に検出することができることにより、不良チップが製造されるおそれを低減することができる。
【0041】
なお、上記した本実施形態に係る切削方法によれば、以下の切削装置が得られる。
(付記1)
切削予定ラインを表面に有する被加工物を、該被加工物の裏面に配設された保持部材を介して保持する保持テーブルと、
該保持テーブルに保持された該被加工物を切削する切削ブレードを有し、該切削予定ラインに沿って該被加工物を該切削ブレードで被加工物を切削して該保持部材に至る切削溝を形成する切削手段と、
該切削溝を該被加工物の該表面側から撮像して該切削溝における表面部の撮像画像を形成する第1撮像部と、
該切削溝を該被加工物の該表面側から撮像して該切削溝における裏面部の撮像画像を形成する第2撮像部と、
該切削溝における該表面部と該裏面部との撮像画像に基づいて、該被加工物の切削不良箇所を検出する制御部とを備える切削装置。
【0042】
上記切削装置は、本実施形態に係る切削方法と同様に、切削溝107の表面部107Aと裏面部107Bの撮像画像を通じて、切削溝107の表面部107Aだけでなく、裏面部107Bの切削状態を観察することができる。このため、例えば、切削溝107の表面部107A及び裏面部107Bに、許容値以上のチッピングや、切削溝107の斜め切れまたは先細りが発生したか否かなどの切削不良箇所を容易に検出することができ、不良チップが製造されるおそれを低減することができる。
【0043】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 切削装置
10 チャックテーブル(保持テーブル)
20 切削手段
21 切削ブレード
30 第1撮像手段(撮像カメラ)
35 第2撮像手段(赤外線カメラ)
70 制御部
75 表示部
80A 表面側切削溝撮像画像
80B 裏面側切削溝撮像画像
100 ウエーハ(被加工物)
101 表面
102 分割予定ライン(切削予定ライン)
104 裏面
105 ダイシングテープ(保持部材)
107 切削溝
107A 表面部
107B 裏面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11