【実施例】
【0047】
以下、実施例等により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。各実施例及び比較例で得たポリビニルアルコールの測定及び評価の方法は以下のとおりである。
【0048】
[誘導期及び成長期]
本発明における「誘導期」とは、反応液の加温を開始してから酢酸ビニルの消費が開始されるまでの期間を意味し、「成長期」とは、酢酸ビニルの消費が開始されてから目標の転化率に到達するまでの期間を意味する。これらの期間は、例えば、酢酸ビニルの消費が開始されてから任意の時間でサンプリングを行い、その固形分濃度から酢酸ビニルの消費率を算出して時間−酢酸ビニル消費率の相関をプロットし、少なくとも3点で近似直線を引いた場合の酢酸ビニル消費率が0%となる時間を「誘導期」と「成長期」の境界とすることによって算出できる。
【0049】
[数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定]
東ソー株式会社製サイズ排除高速液体クロマトグラフィー装置「HLC−8320GPC」を用い、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した。測定条件は以下の通りである。
カラム:東ソー株式会社製HFIP系カラム「GMHHR−H(S)」2本直列接続
標準試料:ポリメチルメタクリレート
溶媒及び移動相:トリフルオロ酢酸ナトリウム−HFIP溶液(濃度20mM)
流量:0.2mL/min
温度:40℃
試料溶液濃度:0.1wt%(開口径0.45μmフィルターでろ過)
注入量:10μL
検出器:RI
【0050】
[カルボキシル基およびラクトンの合計含有量の測定]
日本電子株式会社製核磁気共鳴装置「LAMDA 500」を用い、80℃でポリビニルアルコールの
1H−NMR測定を行った。溶媒として重水を使用した。なお、ポリビニルアルコールの全量体単位に対するカルボキシル基およびラクトンの合計含有量(mol%)は以下のように算出した。公知のポリビニルアルコールのメチンプロトン(−CH
2CH(OH)−または−CH
2CH(OCOCH
3)−)に由来するピークの全積分値(4.15−4.06ppm)を100とした場合の、2.33−2.21ppmの範囲に検出されるカルボキシル基に隣接するメチンプロトン(−CH
2−COONa)のピークの積分値および2.76−2.71ppmの範囲に検出されるラクトンのメチンプロトン(−CHCH
2CH
2COOCH−)ピークの積分地の当該数値の総和を1/2にすることで算出した。
【0051】
[炭素−炭素二重結合の含有量(X)(mol%)の測定]
日本電子株式会社製核磁気共鳴装置「LAMBDA 500」を用い、40℃及び95℃でポリビニルアルコールの
1H−NMR測定を行なった。溶媒としてDMSO−d
6を使用した。なお、ポリビニルアルコールの全単量体単位に対する炭素−炭素二重結合の含有量(X)(mol%)は以下のように算出した。公知のポリビニルアルコールのメチンプロトン(−CH
2CH(OH)−または−CH
2CH(OCOCH
3)−)に由来するピークの全積分値(3.3ppm、3.4ppm、3.5ppm、3.6ppm、3.9ppm及び4.8ppm;これらのうち、3.3〜3.6ppmの4つのピークについては40℃/95℃の測定値の比較から各積分値を算出した)を100とした場合の、5.5〜7.5ppmの範囲に検出される全ピークの積分値を算出し、当該数値の1/2をX(mol%)とした。なお、5.5〜7.5ppmの積分値を算出する際、ベースラインに傾斜が見られる場合には、その傾斜を考慮して各ピークの面積値を算出した。
【0052】
[1,2−グリコール結合量(mol%)の測定]
90℃減圧乾燥を2日間行ったポリビニルアルコールを、DMSO−d
6に溶解し、トリフルオロ酢酸を数滴加えた試料を調製し測定に供した。日本電子株式会社製核磁気共鳴装置「LAMBDA 500」を用い、80℃で
1H−NMR測定を行なった。このとき、けん化度が99.9モル%未満の試料の場合には、99.9mol%以上までけん化した後に測定に供した。ビニルアルコール単位のメチン由来のピークは3.2〜4.0ppm(積分値A)、1,2−グリコール結合の1つのメチン由来のピークは3.25ppm(積分値B)に帰属され、次式で1,2−グリコール結合含有量を算出できる。
1,2−グリコール結合量(モル%)=(B/A)×100
【0053】
[色相(YI)の評価]
得られたポリビニルアルコールの粉体のYI(ASTM D1925)をコニカミノルタ株式会社製分光測色計「CM−8500d」を用いて測定した(光源:D65、CM−A120白色校正板、CM−A126シャーレセット使用、正反射測定SCE、測定径φ30mm)。シャーレに試料5gを添加し、粉体を押さえつけないようにして軽く側面をたたいて振とうし、まんべんなく均一に粉体を敷き詰めた。この状態で合計10回の測定を行い(各回でシャーレを一度振とうしてから再測定)、その平均値を樹脂のYIとして求めた。
【0054】
[高速塗工性の評価]
得られたポリビニルアルコールを用いて濃度10質量%の水溶液を調製した。この水溶液を島津製作所製高化式フローテスタ「301型」を用いて、ダイ径0.2mm、ダイ長:5mm、温度:30℃、予熱時間:5分、剪断速度:1×10
3〜5×10
6/sの範囲内で溶液粘度を測定した。高速塗工性の評価を以下の基準により判断した。
○:剪断粘度が極大となる剪断速度が7.32×10
5/s以上
△:剪断粘度が極大となる剪断速度が2.20×10
5/s以上7.32×10
5/s未満
×:剪断粘度が極大となる剪断速度が2.20×10
5/s未満
【0055】
[耐水性評価]
濃度10質量%のポリビニルアルコール水溶液を調製し、PET製の型枠に流延し、23℃、53%RHに調整された部屋で一週間静置乾燥した。
得られたフィルムを型枠から外し、中心部の膜厚を厚み計で測定し、膜厚100〜200μmのフィルムを評価対象とした。得られたフィルムを20℃で20時間水に浸漬させ、浸漬前後の重量変化から溶出率[質量%]を算出した。耐水性の評価を以下の基準により判断した。
○:溶出率10%未満
△:溶出率10%以上40%未満
×:溶出率40%以上
【0056】
[機械的強度の評価]
濃度10質量%のポリビニルアルコール水溶液を調製し、PET製の型枠に流延し、23℃、90%RHに調整された部屋で一週間静置乾燥したフィルムを10mm×800mmに切り出し、島津製作所製オートグラフ「AG−IS」を用いて、チャック間距離50mm、引張り速度500mm/分の条件で強伸度測定を行い、23℃、90%RHの条件下で、最大応力[kgf/mm
2]を求めた。なお、測定は各サンプル5回測定し、その平均値を算出した。機械的強度の評価を以下の基準により判断した。
○:最大応力6.7kgf/mm
2以上
△:最大応力3.5kgf/mm
2以上、6.7kgf/mm
2未満
×:最大応力3.5kgf/mm
2未満
【0057】
[塗工液の高速塗工性の評価]
得られたポリビニルアルコールを用いて濃度8質量%の水溶液(塗工液)を調製した。この塗工液をブレードコーターで塗工温度30℃、塗工速度1200m/分、紙とブレード間の隙間0.004mmとして上質紙(坪量65g/m
2)に塗工した。このときの塗工液にかかる剪断速度は5×10
6/sとなる。塗工後、80℃のドラム乾燥機で5分間乾燥した。得られた塗工紙に塗工液が均一に塗られているかの評価は、塗工紙の塗工面に着色トルエンを刷毛で塗り、裏面に抜けてくる着色トルエンを観察して以下の基準で評価した。
○:着色トルエンが裏抜けしておらず、塗工面に着色ムラもない
×:着色トルエンが激しく裏抜けしており、塗工面の着色ムラもある
【0058】
[実施例1]
攪拌機、還流冷却管、開始剤の添加口を備えた反応器に、コバルト(II)アセチルアセトナートを0.037質量部添加し、反応器内を真空にした後窒素を導入する不活性ガス置換を3回行った。その後単蒸留精製した酢酸ビニル100質量部を添加し、還元剤としてN,N−ジメチルアニリン(以下、DMAと略称する)を0.09質量部添加した後、反応器を水浴に浸漬し、内温が30℃になるように加熱し撹拌した。その後酸化剤としてジイソプロピルパーオキシジカーボネート(以下、IPPと略称する)のトルエン溶液(濃度1質量%)を添加開始1.5時間までは単位時間あたり1.6質量部、その後単位時間あたり0.3質量部で添加した(IPPの総添加量0.033質量部)。適宜サンプリングを行い、その固形分濃度から重合の進行を確認し、酢酸ビニルの転化率が20%に到達したところで水浴を氷水に置換し、内温を10℃以下まで急冷した。ここに重合禁止剤としてソルビン酸のメタノール溶液2.3質量部(濃度10質量%、ソルビン酸として0.23質量部)を添加した。なお、ソルビン酸の60℃での酢酸ビニル単量体に対する連鎖移動定数は0.1を超える。重合反応における誘導期は2時間であり、成長期は2.5時間であった。
【0059】
重合禁止剤を添加してから、真空ラインに接続し、残留する酢酸ビニルを15℃で減圧留去した。反応器内を目視で確認しながら、粘度が上昇したところで適宜メタノールを添加しながら留去を続けた。その後30℃まで加熱し、酢酸エチルを添加しながらメタノールを35℃で減圧留去し、ポリ酢酸ビニルの酢酸エチル溶液を得た。ここに濃度25質量%の酢酸水溶液(pH2.0)94質量部を添加し、5分攪拌した後、30分静置し二層に分離した。水層をシリンジで抜き取った後、再び真空ラインに接続し、残留する酢酸エチルを30℃で減圧留去した。酢酸エチルを留去したところでメタノールを添加してポリ酢酸ビニルを溶解し、当該溶液を脱イオン水に滴下してポリ酢酸ビニルを析出させた。ろ過操作でポリ酢酸ビニルを回収し、40℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、ポリ酢酸ビニルを得た。以上の重合工程の詳細を表1に示す。
【0060】
次に、上記と同様の反応器に、得られたポリ酢酸ビニル100質量部とメタノール233質量部を添加し溶解した(濃度30質量%)後、水浴を加熱して内温が40℃になるまで加熱撹拌した。ここに水酸化ナトリウムのメタノール溶液(濃度14質量%)33.2質量部を添加して、40℃でけん化を行った(水酸化ナトリウムとして4.6質量部)。生成したゲル化物を粉砕機にて粉砕し、さらに40℃で放置して1時間けん化を進行させた。得られたけん化物にさらに水酸化ナトリウムのメタノール溶液(濃度14質量%)33.2質量部を添加し、65℃の加熱還流下でさらに1時間けん化反応を追い込んだ。その後、酢酸メチル200質量部を加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別することによって固体を得て、これにメタノール500質量部を加えて1時間加熱還流した。その後、遠心脱水して得られた固体を真空乾燥機にて40℃で24時間乾燥させ、ポリビニルアルコールを得た。以上のけん化工程の詳細を表2に示す。
【0061】
得られたポリビニルアルコールの各種物性を測定し、性能を評価した。けん化度は99.9mol%であり、数平均分子量(Mn)は74,800であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.30であった。また、ラクトン環とカルボキシル基の含有量は測定限界の0.005mol%未満であった。炭素−炭素二重結合の含有量(X)は0.0018mol%であった。1,2−グリコール結合の含有量は1.3mol%であった。色相(YI)は15.0であり、高速塗工性の評価は7.33×10
5/sであり、耐水性の評価は○であり、機械的強度の評価は○であった。以上の結果を表3にまとめて示す。なお、得られたポリビニルアルコールの水溶液からなる塗工液の高速塗工性の評価は○であった。
【0062】
[実施例2]
実施例1と同様の反応器にコバルト(II)アセチルアセトナートを0.037質量部添加し、反応器内を真空にした後窒素を導入する不活性ガス置換を3回行った。その後単蒸留精製した酢酸ビニル100質量部を添加し、単蒸留した酢酸メチルを100質量部添加し、還元剤としてDMAを0.09質量部添加した後、反応器を水浴に浸漬し、内温が30℃になるように加熱し撹拌した。その後酸化剤としてIPPのトルエン溶液(濃度1質量%)を添加開始1.5時間までは単位時間あたり1.6質量部、その後単位時間あたり0.3質量部で添加した(IPPの総添加量0.044質量部)。酢酸ビニルの転化率が30%に到達したところで水浴を氷水に置換し、内温を10℃以下まで急冷した。以降の操作は実施例1に記載の方法と同様の操作を行い、ポリ酢酸ビニルを得た。重合反応における誘導期は2時間であり、成長期は6時間であった。以上の重合工程の詳細を表1に示す。
【0063】
次に、上記と同様の反応器に、得られたポリ酢酸ビニル100質量部とメタノール400質量部を添加し溶解した(濃度20質量%)こと、および水酸化ナトリウムのメタノール溶液(濃度14質量%)45.7質量部を添加した(水酸化ナトリウムとして6.4質量部)以外は実施例1に記載の方法と同様にして2段階でけん化反応を行い、ポリビニルアルコールを得た。以上のけん化工程の詳細を表2に示す。また、得られたポリビニルアルコールの測定及び評価の結果を表3にまとめて示す。
【0064】
[実施例3]
コバルト(II)アセチルアセトナートを0.019質量部添加し還元剤としてDMAを0.04質量部添加し、酸化剤としてIPPのトルエン溶液(濃度1質量%)を添加開始1.5時間までは単位時間あたり0.8質量部、その後単位時間あたり0.15質量部で添加した(IPPの総添加量0.017質量部)以外は実施例1と同様の条件で酢酸ビニルの重合反応を行った。酢酸ビニルの転化率が25%に到達したところで水浴を氷水に置換し、内温を10℃以下まで急冷した。ここに重合禁止剤としてソルビン酸(60℃での酢酸ビニル単量体に対する連鎖移動定数が0.1を超える)のメタノール溶液1.2質量部(濃度10質量%、ソルビン酸として0.12質量部)を添加した。以降の操作は実施例1に記載する方法と同様の操作を行い、ポリ酢酸ビニルを得た。重合反応における誘導期は2時間であり、成長期は3.1時間であった。以上の重合工程の詳細を表1に示す。
【0065】
次に、上記と同様の反応器に、得られたポリ酢酸ビニル100質量部とメタノール900質量部を添加し溶解した(濃度10質量%)後、水浴を加熱して内温が40℃になるまで加熱撹拌した。ここに水酸化ナトリウムのメタノール溶液(濃度10質量%)77質量部を添加して、40℃でけん化を行った(水酸化ナトリウムとして7.7質量部)。生成したゲル化物を粉砕機にて粉砕し、さらに40℃で放置して1時間けん化させた後、酢酸メチル200質量部を加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別することによって固体を得て、これにメタノール500質量部を加えて1時間加熱還流した。その後、遠心脱水して得られた固体を真空乾燥機にて、40℃で24時間乾燥させ、ポリビニルアルコールを得た。けん化工程の詳細を表2に示す。また、得られたポリビニルアルコールの測定及び評価の結果を表3にまとめて示す。以上のけん化工程の詳細を表2に示す。また、得られたポリビニルアルコールの測定及び評価の結果を表3にまとめて示す。
【0066】
[実施例4]
実施例1と同様の条件でポリ酢酸ビニルを得た。重合反応における誘導期は2時間であり、成長期は2.5時間であった。以上の重合工程の詳細を表1に示す。
【0067】
次に、上記と同様の反応器に、得られたポリ酢酸ビニル100質量部とメタノール233質量部を添加し溶解した(濃度30質量%)後、水浴を加熱して内温が40℃になるまで加熱撹拌した。ここに水酸化ナトリウムのメタノール溶液(濃度14質量%)5.0質量部を添加して、40℃でけん化を行った(水酸化ナトリウムとして0.70質量部)以外は実施例3に記載の方法と同様にして1段階でけん化反応を行い、ポリビニルアルコールを得た。けん化工程の詳細を表2に示す。また、得られたポリビニルアルコールの測定及び評価の結果を表3にまとめて示す。
【0068】
[実施例5]
攪拌機、還流冷却管、開始剤の添加口を備えた反応器に、コバルト(II)アセチルアセトナートを0.037質量部、開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下、V−70と略称する)を0.13質量部添加し、反応器内を真空にした後窒素を導入する不活性ガス置換を3回行った。その後単蒸留精製した酢酸ビニル100質量部を添加してから、反応器を水浴に浸漬し、内温が30℃になるように加熱し撹拌した。適宜サンプリングを行い、その固形分濃度から重合の進行を確認し、酢酸ビニルの転化率が20%に到達したところで水浴を氷水に置換し、内温を10℃以下まで急冷した。ここに重合禁止剤としてソルビン酸のメタノール溶液2.3質量部(濃度10質量%、ソルビン酸として0.23質量部)を添加した。重合反応における誘導期は6時間であり、成長期は2.5時間であった。以上の重合工程の詳細を表1に示す。
【0069】
重合禁止剤を添加してから、真空ラインに接続し、残留する酢酸ビニルを15℃で減圧留去した。反応器内を目視で確認しながら、粘度が上昇したところで適宜メタノールを添加しながら留去を続け、さらに内温を50℃に昇温して1時間加熱撹拌した。その後30℃まで冷却した。以降の操作は実施例1に記載の方法と同様の操作を行い、ポリ酢酸ビニルを得た。以上の重合工程の詳細を表1に示す。
【0070】
また、けん化工程においては水酸化ナトリウムのメタノール溶液(濃度14質量%)36.4質量部(水酸化ナトリウムとしては5.1質量部)を添加した以外は実施例1に記載の方法と同様にして2段階でけん化反応を行い、ポリビニルアルコールを得た。けん化工程の詳細を表2に示す。また、得られたポリビニルアルコールの測定および評価の結果を表3に、機械的強度の評価結果を
図1に示す。
【0071】
[実施例6]
実施例1と同様の条件で酢酸ビニルの重合反応を行った。酢酸ビニルの転化率が18%に到達したところで水浴を氷水に置換し、内温を10℃以下まで急冷した。以降の操作は実施例1に記載の方法と同様の操作を行い、ポリ酢酸ビニルを得た。重合反応における誘導期は2時間であり、成長期は2.3時間であった。以上の重合工程の詳細を表1に示す。
【0072】
次に、上記と同様の反応器に、得られたポリ酢酸ビニル100質量部とメタノール233質量部を添加し溶解した(濃度30質量%)後、水浴を加熱して内温が40℃になるまで加熱撹拌した。ここに水酸化ナトリウムのメタノール溶液(濃度14質量%)182.9質量部を添加して、40℃でけん化を行った(水酸化ナトリウムとして25.6質量部)以外は実施例3に記載の方法と同様にして1段階でけん化反応を行い、ポリビニルアルコールを得た。けん化工程の詳細を表2に示す。また、得られたポリビニルアルコールの測定及び評価の結果を表3にまとめて示す。
【0073】
[比較例1]
攪拌機、還流冷却管、アルゴン導入管、開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル100質量部、メタノール40質量部を仕込み、窒素バブリングをしながら30分間反応器内を不活性ガス置換した。水浴を加熱して反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.025質量部添加し重合を開始した。適宜サンプリングを行い、その固形分濃度から重合の進行を確認し、酢酸ビニルの転化率が30%に到達したところで30℃まで冷却して重合を停止した。真空ラインに接続し、残留する酢酸ビニルをメタノールとともに30℃で減圧留去した。反応器内を目視で確認しながら、粘度が上昇したところで適宜メタノールを添加しながら留去を続け、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液を得た。重合反応における誘導期は0.2時間であり、成長期は2.7時間であった。以上の重合工程の詳細を表1に示す。
【0074】
得られたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液(ポリ酢酸ビニルとして150質量部)にメタノールを追加し、ポリ酢酸ビニルの濃度を30質量%にした以外は実施例4に記載の方法と同様にしてけん化反応を行い、ポリビニルアルコールを得た。けん化工程の詳細を表2に示す。また、得られたポリビニルアルコールの測定及び評価の結果を表3に、機械的強度の評価結果を
図1に示す。なお、得られたポリビニルアルコールの水溶液からなる塗工液の高速塗工性の評価は×であった。
【0075】
[比較例2]
比較例1と同様の条件で酢酸ビニルの重合を行った。重合反応における誘導期は0.2時間であり、成長期は2.7時間であった。以上の重合工程の詳細を表1に示す。
【0076】
得られたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液(ポリ酢酸ビニルとして150質量部)にメタノールを追加し、ポリ酢酸ビニルの濃度を30質量%にしたこと、および水酸化ナトリウムのメタノール溶液(濃度14質量%)65.7質量部(水酸化ナトリウムとしては9.2質量部)を添加したこと以外は実施例3に記載の方法と同様にして1段階でけん化反応を行い、ポリビニルアルコールを得た。けん化工程の詳細を表2に示す。また、得られたポリビニルアルコールの測定及び評価の結果を表3にまとめて示す。
【0077】
[比較例3]
コバルト(II)アセチルアセトナートを0.15質量部添加し還元剤としてDMAを0.70質量部添加し、酸化剤としてIPPのトルエン溶液(濃度5質量%)を添加開始1.7時間までは単位時間あたり3.8質量部、その後単位時間あたり0.96質量部で添加した(IPPの総添加量0.52質量部)以外は実施例1と同様の条件で酢酸ビニルの重合反応を行った。酢酸ビニルの転化率が16%に到達したところで水浴を氷水に置換し、内温を10℃以下まで急冷した。ここに重合禁止剤としてソルビン酸のメタノール溶液9.4質量部(濃度10質量%、ソルビン酸として0.94質量部)を添加した。重合反応における誘導期は2.5時間であり、成長期は3.2時間であった。以降の操作は実施例1に記載する方法と同様の操作を行い、ポリ酢酸ビニルを得た。以上の重合工程の詳細を表1に示す。
【0078】
次に、上記と同様の反応器に、得られたポリ酢酸ビニル100質量部とメタノール150質量部を添加し溶解した(濃度40質量%)こと、および水酸化ナトリウムのメタノール溶液(濃度14質量%)21.8質量部(水酸化ナトリウムとして3.05質量部)を添加した以外は実施例1に記載の方法と同様にして2段階でけん化反応を行い、ポリビニルアルコールを得た。以上のけん化工程の詳細を表2に示す。また、得られたポリビニルアルコールの測定及び評価の結果を表3にまとめて示す。
【0079】
[比較例4]
メタノールを4.8質量部、開始剤としてAIBNを0.003質量部添加した以外は比較例1と同様の条件で酢酸ビニルの重合を行った。重合反応における誘導期は0.2時間であり、成長期は2.7時間であった。以上の重合工程の詳細を表1に示す。
【0080】
得られたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液(ポリ酢酸ビニルとして150質量部)にメタノールを追加し、ポリ酢酸ビニルの濃度を10質量%にしたこと、および水酸化ナトリウムのメタノール溶液(濃度14質量%)42.1質量部(水酸化ナトリウムとしては5.9質量部)を添加したこと以外は実施例1に記載の方法と同様にして2段階でけん化反応を行い、ポリビニルアルコールを得た。けん化工程の詳細を表2に示す。また、得られたポリビニルアルコールの測定及び評価の結果を表3に、機械的強度の評価結果を
図1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】