【実施例】
【0064】
実施例1:Pt曲線と粒子の詰まり
Pt曲線は、吸引ノズル21に粒子が詰まって固液分離が成功したか否かの状態を明確に示す。
図4A〜
図4Cは、
図1に示す構成の固液分離装置11を用いて測定したPt曲線の実測例を示すグラフである。固液分離装置11は、圧力センサ31を備えており、圧力センサ31が検出するシリンジ内圧P値を一定時間間隔でプロットした。
吸引ノズル21(以下、単に管ともいう)は、後述する
図5Cに記載の、管の名称が「B」のもの(以下、管Bあるいは管B型)を用いた。
この実施例で用いた粒子は、全血、血清または血漿を加熱して得られる上清を脱塩処理した液体から標的物質として所望のペプチドまたは核酸を吸着させる吸着剤(担体)を想定し、多孔質シリカを用いた。
【0065】
具体的には
(a)後述する
図5A記載の担体の名称が「1」のもの(以下、担体1番あるいは担体1型)の日本化成社製メソ多孔質シリカ担体(商品名メソピュア:なお、
図5Aに示す担体2番〜10番は担体1番の分級品) を100 mg、
(b)
図5Aに記載の担体10番を100 mg、
(c)
図5Aに記載の担体5番を10 mg、
を秤量して容器23(epppendorf社製Safe-Lock Tubes 2.0 mL)(
図1)へ移した。
なお、担体1番は、目開きサイズ75 μmの篩と900 μmの篩とを重ねて、原末としての上記メソ多孔質シリカ担体を篩って、篩間に残った粒子を回収することによって得た。担体2〜10番は、
図5A所定の目開きサイズの篩を重ねて、原末としての担体1番を篩って、篩間に残った粒子を回収することによって得た。マイクロトラックFRA 9220装置(Leeds & Northrup社製)を用いてレーザー回折・散乱法により測定した担体1番〜10番の粒度分布を
図5Bに示す。
【0066】
そこへ溶媒(液体)としてPBS(バイオラッド社製、商品コード:1610780)を1.5 mL添加した。そして、プランジャ13aを初期の位置から上死点へ移動させて容器23に収容された粒子と液体を吸引した。
プランジャ13aが上死点から下死点へまたは下死点から上死点へ移動するとシリンジの容積は1000 μL変化する、攪拌動作におけるプランジャ13aの移動速さR
suctionは、2800 μL/sである。
【0067】
プランジャ13aは、
図2と同様に5往復の攪拌動作を行った後に上死点で静止させ、その後、ゆっくりと下死点へ移動(前進)させ、下死点で所定の期間停止させた。アジテーションおよび吸引の工程(以下、単にアジテーション工程ともいう)に続くイジェクション工程においては、プランジャ13aを上死点から下死点へ前進させた。アジテーション工程およびイジェクション工程において1回の前進により変化するシリンジの体積は1000 μLであった(後進も同様)。前進時の、移動速度Rは800 μL/sである。
【0068】
攪拌および吸引の工程ならびに排出工程を通じて、PBS溶媒と担体とが懸濁されたこと、管内で担体によるプラグ形成が完遂されたこと(固液分離成功)、あるいはプラグ形成が不成功に終わったこと(固液分離不成功)は、目視で観察し動画撮像も行って事後確認して判断した。
なお、固液分離成功は、アジテーション工程とイジェクション工程のあとで、上記担体1番と上記PBS溶媒とを分けることができたと判断したことを示している。
【0069】
図4A〜
図4Cは、それぞれ、上記(a)〜(c)の各種担体を用いた場合のPt曲線を示す。
図4A〜
図4Cにおいて、グラフの右側に、固液分離成功時のパターン、および、固液分離不成功時の代表的な管内の様子をイラストで示している。
固液分離不成功と判断した管と担体の組み合わせにおいては、固液分離成功時と比べてPt曲線に関して以下の特徴が挙げられる。
(1)アジテーション工程において計測されたP
agitの値と比して、イジェクション工程の時間の前半部分のΔt
1期間中に計測されたP
ejectの値は、有意な差を示さなかった、
(2)イジェクション工程の後半部分のΔt
2期間中に、プランジャ13aの前進移動が終了した以降に続く溶媒の管外への排出(以下「緩和」)が認められなかった。
【0070】
一方、固液分離成功と判別された組み合わせでは、Pt曲線の中に、判別式
P
e =a×(t+b)
2+c
ただし、係数a≠0である。
を用いたカーブフィットで得られる曲線、即ち放物線にフィットする曲線が含まれていた。
なお、カーブフィットには、Synergy Software社製のKaleida Graphを用いた。
以上、Pt曲線が固液分離の成功と不成功を判断するツールの役割を果たすことが確かめられた。
【0071】
実施例2:管と担体の組み合わせによる固液分離
図4A〜
図4Cを用いて説明した固液分離成否の判定手法を用いて、より多種類の管と担体について、固液分離を行って可否を判断した。
この実施形態で、担体の種類は固有のサイズ(粒度分布)および、混合液または懸濁液中での体積分率(担体濃度)で規定される。
【0072】
図5Aは、そのうち実験に用いた各担体の作製に用いた篩の目開きサイズを示す説明図である。
図5Aの右上にイラストで示しているが、担体の粒径をS4としている。
図5Bは、
図5A所定の目開きサイズを有する篩を用いて作製した担体1番〜10番についてレーザー回折・散乱法より粒径を測定することによって得られた担体1番〜10番の粒度分布を示す表である。
図5Cは、実験に用いた管の種類を示す説明図である。管の種類は、特に固有の先端開口のサイズ(液体通過断面積)で規定される。
図5Cの右上にイラストで示しているが、管の先端の開口径をS0としている。
図5Dは、
図5Aに示す担体と、
図5Cに示す管の組合せで固液分離の実験を行った結果を示す表である。表および以下の記載で「◎」は固液分離良好と判断したことを示し、「〇」は固液分離可能と判断したことを示す。
【0073】
実験は、
図5Aに示す担体群(担体1番〜9番)と
図5Cに示す管群(N、A、B、O、B1およびB2型)との中からそれぞれ任意に選んだ担体および管の組み合わせを選択し、選択した管を固液分離装置11のコネクタに装着した。そして、選択した担体とPBS溶媒とを容器23に入れて静置した。
つぎに、
図2に示すようにアジテーション工程とイジェクション工程を実施してPt曲線を得た。目視観察および得られたPt曲線およびに基づいて固液分離の成否を判定し、
図5Dの表を得た。
【0074】
実験の結果から、以下のことが導かれる。
(1)固液分離を可能とする組み合わせは、ひとつまたは限定された複数ではなく、多数に及ぶ、
(2)前記のとおり、管の形状(写真等)や担体の形状(担体1番〜担体9番は二次凝集体のため形状は不定形)よりも、管の先端開口と担体の粒径との相対的なサイズの方が固液分離の成否に大きく影響している。
【0075】
より具体的に説明すると、担体7番と管B1との組合せを用いた場合には良好な固液分離を示した一方で、担体8番と管B1との組合せを用いた場合には固液分離の成功率が低くなった(
図5D)。
図5Cによれば、担体7番のupper diameterは0.25 mmに対して担体8番のupper diameterは0.18である。そして、
図5Cによれば、管B1の最小の開口径は0.8 mmである。これらの数値に基づいて計算すると、管の最小の開口径が粒子のupper diameterより大きく、かつ、粒子のupper diameterの6倍より小さい場合には、良好な固液分離を示すことが明らかとなった。なお、本実施例において、粒子のupper diameterは、担体作製時に用いた2つの篩のうち、大きい方の篩目サイズをいう。
【0076】
なお、成功率とは、ある管とある担体との組み合わせに対して前記の合否判定をn回繰り返して行った場合、固液分離が成功した場合の数mの割合(m÷n)のことを指す。前記合否判定をそれぞれ10回繰り返し(n=10)、固液分離の成功率を調べた。成功率は、m÷nの割合が50%以上100%以下を示した場合に「◎」、10%以上50%未満を示した場合に「〇」、0%を示した場合に「×」として
図5Dに表した。なお、本実施例で用いた管と担体の組合せについては、成功率0%を示したものはなかった(
図5D)。
【0077】
また、実験に使用された管群は、以下のとおりである。
管N型;Precision Science社製、F4100、
管A型;epppendorf社製、ep T.I.PS Standard 50−1000μL、
管B型;Corning社製、100−1000μL Universal Fit Pipet Tips、
管O型;GILSON社製、CP−1000のキャピラリー部、
管B1型;管B型の先端を、精密アートナイフ157B型(オルファ社製)を用いて、開口面と平行に輪切り加工したもの。先端の開口径S0は、加工後にノギスCD−15PSX(ミツトヨ社製)で計測し、0.8 mm〜1.6 mmの範囲であることを確認した。
管B2型;管B型の先端を、精密アートナイフ157B型(オルファ社製)を用いて、開口面と平行に輪切り加工したもの。先端の開口径S0は、加工後にノギスCD−15PSX(ミツトヨ社製)で計測し、1.6 mm〜2.4 mmの範囲であることを確認した。
【0078】
担体は、日本化成社製メソ多孔質シリカ担体(商品名メソピュアのメソ多孔質シリカ担体(担体1〜9番)を100mgを250mg秤量し、それぞれ容器に移したものである。
前述のとおり、溶液中の担体の濃度も担体の種類を決める因子であるが、この因子に基づいた組み合わせの実施例は、実施例6にて後述する。
【0079】
実施例3:担体の分散及び集合の再現性
実施例2で得られた成功率について、その実際の値が非常に高いことを次に示す。
図5Aおよび
図5Cに記載の管を
図1に記載の装置に接続して、アジテーション工程とイジェクション工程を100回連続して繰り返した。
その結果、いずれの回数においても、合格と判定されるPt曲線を示した。つまり、成功率が100%であった。
図6A〜Cは、そのことを示すPt曲線の例示である。すなわち、
図6Aは11〜15回目のPt曲線を、
図6Bは13回目のPt曲線を、
図6Cは14回目のPt曲線を示す。これらの結果は、本実施形態の固液分離が再現性良く実施できることを表している。
【0080】
実施例4:プランジャの移動速度の検討
以上のような合格と判定されるケースが、特定のプランジャの移動速さR
ejectによって限定されるか否かを検証した。方法は、実施例1に記載の方法と同一である。詳しい検証条件は、次のとおりである。
【0081】
図5C記載の担体1番100 mgを実施例1と同様の容器に秤量し、1 mLのPBSを添加して混合液とした。管は
図5Cに記載の管B1型(口径1.5 mm)を使用し、
図1の装置のコネクタを介してポンプと接続した。アジテーション工程にともなう溶媒の吸引と吐出は、次のプランジャの移動条件の下でなされた。後進と前進が5回交互に繰り返され、さらに、1回の後進を行った。1回の前進または後進の移動体積は1000μL、移動速さR
agitは2800μL/sであった。イジェクション工程においては、1回の前進を行い、移動体積は1000μLであった。その際、30〜1200μL/sまでの範囲のR
ejectで前進するようにプランジャの移動を制御した。各移動速さでのイジェクション工程においてそれぞれPt曲線を記録した。実施例1記載の方法と同様にして合否判定を行った。
【0082】
高低いずれのプランジャ移動速さR
ejectにおいても、管内でプラグが形成されるのを観察した。つまり、固液分離が成し遂げられるR
ejectの条件は、広範であることが例証された(
図7)。
なお、R
ejectの値がより大きい(より速くプランジャが前進する)とき、より高い管内圧力が生ずること、あるいは、R
ejectの値がより小さい(より遅くプランジャが前進する)とき、より長い時間(Δt
2)を費やす圧力降下(緩和)が生ずること、が確認された。
【0083】
実施例5:多様な撹拌(アジテーション)方法の検討
本実施形態の固液分離の成否が撹拌方法(アジテーション工程)の多様性に影響されるか否かを調査するために、以下の実験を行った。
内径18mmの円筒状の容器に担体としてイオン交換樹脂バイオレックスMSZ501D(バイオラッド社)4.9gを秤量し、溶媒としてミリポア社製水精製装置MilliQ型が供給する超純水3.2mLを添加した。第1の管として
図5C記載の管B2型(口径2.34mm)、第2の管として
図5C記載の管B2型(口径1.8mm)を用いて、それを
図1の装置に接続した。第2の管による容器内の溶媒の吸引と吐出、あるいは、第1の管と第2の管の両者による容器内の溶媒の吸引と吐出によって、懸濁液を作製した。懸濁液を第1の管で吸引してから、プラグが形成されるのを観察した。その後、所定の命令によりプランジャを前進させて、第1の管の中の懸濁液から溶媒だけを管外へ排出した。目視観察により、また、Pt曲線を用いた合否判定により、固液分離が実施されたことを証明した。
以上の結果から、溶媒または混合液または懸濁液に接する管の本数とは関係なく、本実施形態の固液分離を達成できることが示された。
【0084】
実施例6:担体の濃度の影響
担体の濃度の影響を調査するために、以下の実験を行った。使用した担体、溶媒、管の口径を表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
表1に記載の、担体12番(バイオラッド社製、バイオレックスMSZ501D)を実施例5に記載の容器に、
図5Cと表1に記載の担体1番と、表1に記載の担体13番(粒径0.5mmのジルコニア球(アズワン株式会社 型番YTZ-0.5))を実施例1で使用した容器に秤量し、表1に記載の溶媒を添加した。
表1に記載の管を
図1に記載の装置のコネクタ部に接続し、実施例1と同様のアジテーション工程とイジェクション工程を適用した。イジェクション工程の前進は、25℃(室温)、大気圧下において行った。
その結果、いずれの濃度においても、期待された担体の分散や担体の塊化が観察され、固液分離が果たされることが確認された(
図8A〜
図8C)。
【0087】
実施例7:担体の比重の影響
担体の比重の影響を調査するために、以下の実験を行った。使用した担体と溶媒、イジェクション時のΔV
plngr とR
ejectを表2に示す。
まず、実施例1で使用したものと同じ容器に表2に記載の各種担体(9A〜9D)を秤量し、比重1のリン酸緩衝液(PBS)を1.5mL添加して混合液とした。各種混合液について、
図5Cに記載の管Bを接続した装置(
図1)を用いて、実施例1と同様のアジテーション工程とイジェクション工程を行った。
【0088】
イジェクション工程の前進によるプランジャの移動体積と移動速さRは表2に記載の通りであった。この前進は、25℃(室温)、大気圧下において行った。
図1記載の装置によって記録されたPt曲線を
図9A〜Dに示す。それらの結果から、いずれの比重の担体を用いても、期待された担体の分散や担体の塊化が観察され、固液分離を達成できることが確認された。
【0089】
【表2】
【0090】
上記の表2中の表記について以下に説明する。
担体14番;粒径0.5mmのSUS304球 九州ベアリング株式会社
担体15番;粒径0.5 mmのアルミナ球 アズワン株式会社 型番AL9-0.5
担体16番;粒径0.5 mmのポリスチレン球
PBS;10×PBS(バイオラッド社製、1610780)を超純水で10倍に希釈
【0091】
実施例8:溶媒の比重の影響
溶媒の比重の影響を調査するために、以下の実験を行った。使用した担体と溶媒、イジェクション時のΔV
plngr とR
ejectを表3に示す。
【0092】
まず、実施例1で使用したものと同じ容器に比重2の担体1を100gを秤量し、表3に記載の各種担体(10A〜10C)を1.5mL添加して混合液とした。各種混合液について、
図5Cに記載の管Bを接続した装置(
図1)を用いて、実施例1と同様のアジテーション工程とイジェクション工程を行った。
図1記載の装置によって記録されたPt曲線を
図10A〜Cに示す。それらの結果から、いずれの比重の溶媒を用いても、期待された担体の分散や担体の塊化が観察され、固液分離を達成できることが確認された。
【0093】
【表3】
【0094】
上記の表3中の表記について以下に説明する。
PBS;10×PBS(バイオラッド社製、1610780)を超純水で10倍に希釈
60%CsCl;CsCl(和光純薬社製、034−08161)を超純水で溶解
Hexan;n-Hexan(和光純薬社、082−00421)
【0095】
実施例9:溶媒の粘度の影響
溶媒の粘度の影響を調査するために、以下の実験を行った。使用した担体と溶媒、イジェクション時のΔV
plngr とR
ejectを表4に示す。
まず、実施例1で使用したものと同じ容器に表4に記載の各種担体(11A〜11D)を秤量し、表4に記載の各種溶媒を1.5mL添加して混合液とした。各種混合液について、
図5Cに記載の管Bを接続した装置(
図1)を用いて、実施例1と同様のアジテーション工程とイジェクション工程を行った。
【0096】
図1記載の装置によって記録されたPt曲線を
図11A〜Dに示す。それらの結果から、いずれの粘度の溶媒を用いても、期待された担体の分散や担体の塊化が観察され、固液分離を達成できることが確認された。
【0097】
【表4】
【0098】
上記の表4中の表記について以下に説明する。
Tween;tween−20(ナカライテスク社製、23926−35)
80%Glycerol;Glycerol(ナカライテスク社製、17018−25)を超純水で希釈
超純水 95℃;超純水をホットバス(東京理化器械社製、SB−450型)中に30分間静置することで調製
【0099】
実施例10:温度の影響
実施例1で使用したものと同じ容器に
図5Cに記載の担体6を100mg秤量して、超純水を1.5mL添加して得られた混合液を(a)アイスバス(容器に水道水と、Scotsman社製AFE400型の製氷砕氷器にて作製した氷で満たしたもの)に30分間静置することで0.5℃に調製した混合液、(b)室温下に静置した25℃の混合液、(c)ホットバス(東京理化器械社製SB−450型)中に30分間静置することで98℃に調製した各種混合液について、
図5Cに記載の管Bを接続した装置(
図1)を用いて、実施例1と同様のアジテーション工程とイジェクション工程を行った。
【0100】
イジェクション工程の前進によるプランジャの移動体積は1000μL、移動速さRは800μL/s(ただし、(a)については2800μL/s)であった。この前進は、25℃(室温)、大気圧下において行った。
図1記載の装置によって記録されたPt曲線を
図12A〜Cに示す。その結果、いずれの温度下においても、期待された担体の分散や担体の塊化が観察され、固液分離を達成できることが確認された。
【0101】
実施例11:界面活性剤を含む溶媒の利用可能性
溶媒に界面活性剤が含まれる場合の影響を調査するために、以下の実験を行った。
図5Cに記載の担体1を100mgを実施例1で使用したものと同じ容器に秤量し、溶媒としてTritonX(ナカライテスク社製、商品コード:35501−15)を超純水で所定の濃度((a)20%、(b)8%、(c)0%)に達するまで希釈したものを1mL添加して得られた混合液を作製した。これらの混合液について、
図5Cに記載の管B1(S0=1.32)を接続した装置(
図1)を用いて、実施例1と同様のアジテーション工程とイジェクション工程を適用した。
【0102】
イジェクション工程の前進は、25℃(室温)、大気圧下において行った。
図1に記載の装置によって記録されたPt曲線を
図13A〜Cに示す。その結果、いずれの溶媒を用いても、期待された担体の分散や担体の塊化が観察され、固液分離を達成できることが確認された。
【0103】
実施例12:固液分離に使用可能な担体の種類の範囲の拡大化
ある管との組み合わせにおいて固液分離が不成功、即ち、不合格と判別された担体が、支持体と併用されることによって、固液分離が可能になるか否かを調査するために、以下の実験を行った。
【0104】
まず、実施例1で使用したものと同じ容器に、管Bに対して不合格の担体として
図5C記載の担体10を、合格の担体(支持体)として
図5C記載の担体2と同じ担体を用いた。担体10を100mg、担体2と同じ担体を10mg秤量し、これらを混合して担体と支持体との混合物を作製した(
図14A)。各種担体及び混合物にPBSをそれぞれ1.5mL添加して混合液とした。得られた各種混合液について、
図5Cに記載の管Bを接続した装置(
図1)を用いて、実施例1と同様のアジテーション工程とイジェクション工程を行った。イジェクション工程の前進は、25℃(室温)、大気圧下において行った。
【0105】
図1に記載の装置によって記録されたPt曲線を
図14B〜Dに示す。その結果、事前の判定の通り、不合格となった担体に対しては塊化が観察されず(
図14B)、合格となった担体に対しては本発明の固液分離が観察された(
図14C)。また、上記の担体及び支持体の混合物を用いた場合には固液分離が果たされることが確認された(
図14D)。
不合格と判定された担体であっても、合格となった担体を支持体として添加することによって、固液分離を達成可能になることが実証された。つまり、支持体を添加するという簡単な操作のみで、本発明の固液分離において取り扱える担体の範囲を、大きく広げられることが明らかとなった。
【0106】
実施例13:副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)ペプチドの精製
本実施形態の固液分離を利用することで、ACTHペプチドを含む液体試料から塩を除去し、ACTHペプチドを精製画分として回収することが可能であるか調査した。
(1)TMR-ACTHペプチドを含む液体試料の調製
標的分子として、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の1位〜24位のアミノ酸からなるACTH部分ペプチドをテトラメチルローダミン(TMR)で標識したTMR-ACTHペプチド(株式会社スクラム製)を用いた。なお、ACTHは塩基性ペプチド(等電点pI=10.64)であり、配列番号1で表される。TMR-ACTHペプチドの最終濃度が50 nMとなるように、PBS(バイオラッド社製、1610780)に溶解し、TMR-ACTHペプチドを含む液体試料を調製した。
【0107】
(2)TMR-ACTHペプチドを含む液体試料の脱塩処理(シリアルダイリューション式)
TMR-ACTHペプチドを含む液体試料を、本実施形態の固液分離を用いる
図15に記載の工程(以下、シリアルダイリューション式のBF分離操作という)により脱塩処理した。一連の工程は、
図1に記載の装置を用いて行った。担体として、細孔径4 nmの日本化成社製のメソ多孔質シリカ担体の表面にアミノシリル基修飾を有するもの(以下、アミノシリル基修飾シリカ担体という)を用いた。
図5C記載の管B型の管と、実施例1で使用したものと同じ容器を用いた。
【0108】
図15に記載のシリアルダイリューション式のBF分離操作の各工程(i)〜(iii)について以下に説明する。
(i) 吸着工程
TMR-ACTHペプチドを含む液体試料(F0)1.5 mLを、担体100 mgを収容した容器に添加した。アジテーション工程によりTMR-ACTHペプチドを担体に吸着させて、担体を含む液体試料を管内に吸引した。管を容器から引き上げ、管の口部へと担体を沈降させ、プラグが形成されるのを観察した。その後、イジェクション工程により液体のみを吐出した。吐出した液体をフロースルー画分(F1)として回収した。
【0109】
(ii) 水洗工程
吐出後の管をイオン交換水1 mLが入った実施例1と同様の容器に浸し、吸排操作を繰り返すことによって攪拌し、塩類を洗い流した。担体とイオン交換水との懸濁液を管内に吸引し、管を容器から引き上げ、管の口部へと担体を沈降させ、プラグが形成されるのを観察した。その後、イジェクション工程により液体のみを吐出した。吐出した液体をすすぎ水画分(F2-1)として回収した。同様の水洗工程をさらに2回繰り返し行った。
図15では、2回目及び3回目の水洗工程で得られたすすぎ水画分を、それぞれF2-2およびF2-3と表記している。
【0110】
(iii) 溶出工程
吐出後の管を、ペプチド溶出用の脱着液(溶出液){50%アセトニトリル(和光純薬社製、019−21691)と0.1%トリフルオロ酢酸(和光純薬社製、206−10731)とを含む水溶液}1 mLの入った実施例1と同様の容器に浸し、アジテーションにより攪拌し、担体に吸着したペプチドを溶出させた。担体と脱着液との懸濁液を管内に吸引し、管を容器から引き上げ、管の口部へと担体を沈降させ、プラグが形成されるのを観察した。その後、イジェクション工程により液体のみを吐出した。吐出した液体を精製画分(F3)として回収した。
【0111】
(3)導電率の測定
脱塩処理前の液体試料(F0)及び脱塩処理後の精製画分(F3)について、導電率を測定した。導電率計はTwin Cond B-173(株式会社堀場製作所)を用いた。ここで、脱塩処理前の溶媒が水であるのに対して、脱塩処理後の溶媒は50%アセトニトリル/0.1%TFA溶液である。よって、脱塩処理後の導電率値は、測定値から50%アセトニトリル/0.1%TFA溶液の導電率値(2.0 mS/cm)を差し引いた値を示した。
【0112】
得られた導電率から、下記の式1に従って、本脱塩処理による脱塩効率を算出した。
脱塩効率(%)=(脱塩処理前の導電率−脱塩処理後の導電率)/(脱塩処理前の導電率)×100 ・・・ 式1
導電率と脱塩効率を下記の表5に示す。なお、F3の導電率は、アセトニトリル自体の導電率(2.0 mS/cm)を差し引いたためにマイナスの値になった。引き算前の値は1.72 mS/cmであった。
【0113】
【表5】
【0114】
(4)蛍光強度の測定
脱塩処理前の液体試料(F0)及び脱塩処理後の精製画分(F3)について、蛍光強度を測定した。分光蛍光光度計はF-7000(株式会社日立ハイテクノロジーズ)を用いて、励起波長480 nmおよび蛍光波長580 nmでの蛍光強度を測定した。
得られた蛍光強度から、下記の式2に従って、本脱塩処理によるペプチド回収率を算出した。
ペプチド回収率(%)=(脱塩処理後における蛍光強度)/(脱塩処理前における蛍光強度)×100 ・・・ 式2
蛍光スペクトルを
図16に、蛍光強度とペプチド回収率を下記の表6に示す。
【0115】
【表6】
【0116】
表5に示されるように、BF分離操作によって精製画分F3は十分に脱塩されていた。また、表6に示されるように、脱塩処理後の精製画分F3からは、TMRに起因する蛍光が観測され、精製画分F3中にTMR-ACTHペプチドが含まれていた。これらの結果から、本実施形態の固液分離を利用したシリアルダイリューション式のBF分離操作により、液体試料中の塩を取り除き、ACTHペプチドを精製画分として回収できることが明らかとなった。
【0117】
実施例14:癌胎児性抗原(CEA)ペプチドの精製
本実施形態の固液分離を利用することで、CEAペプチドを含む液体試料から塩を除去し、CEAペプチドを精製画分として回収することが可能であるか調査した。
(1)TMR-CEAペプチドを含む液体試料の調製
標的分子として、癌胎児性抗原(CEA)の132位〜171位のアミノ酸からなるCEA部分ペプチドをTMRで標識したTMR-CEAペプチド(株式会社スクラム製)を用いた。なお、CEAは酸性ペプチド(等電点pI=4.38)であり、配列番号2で表される。TMR-CEAペプチドの最終濃度が2.5μMとなるように、PBSに溶解し、TMR-CEAペプチドを含む液体試料を調製した。
【0118】
(2)TMR-CEAペプチドを含む液体試料の脱塩処理
TMR-ACTHペプチドを含む液体試料に代えて上記(1)で調製したTMR-CEAペプチドを含む液体試料を用いたこと、担体として、細孔径4 nmの日本化成社製メソ多孔質シリカ担体(商品名メソピュア:
図5A記載の担体の名称が「1」のもの)の表面にオクタデシルシリル基(ODS)修飾を有するもの(ODS修飾シリカ担体)を用いたことを除いては、実施例13と同様に、
図15に記載のシリアルダイリューション式のBF分離操作で脱塩処理を実施した。
【0119】
(3)導電率の測定
脱塩処理前の液体試料F0及び脱塩処理後の精製画分F3について、実施例13と同様の方法で導電率を測定した。得られた導電率から、実施例13に記載の式1に従って、本脱塩処理による脱塩効率を算出した。導電率と脱塩効率を下記の表7に示す。なお、F3の導電率は、アセトニトリル自体の導電率(2.0 mS/cm)を差し引いたためにゼロになった。引き算前の値は2 mS/cmであった。
【0120】
【表7】
【0121】
(4)蛍光強度の測定
脱塩処理前の液体試料F0及び脱塩処理後の精製画分F3について、実施例13と同様の方法で励起波長480 nmおよび蛍光波長580 nmでの蛍光強度を測定した。得られた蛍光強度から、実施例13に記載の式2に従って、本脱塩処理によるペプチド回収率を算出した。
蛍光スペクトルを
図17に、蛍光強度とペプチド回収率を下記の表8に示す。
【0122】
【表8】
【0123】
その結果、表7に示されるように、BF分離操作によって精製画分F3は十分に脱塩されていた。また、表8に示されるように、脱塩処理後の精製画分F3からは、TMRに起因する蛍光が観測され、精製画分F3中にTMR-CEAペプチドが含まれていた。これらの結果から、本実施形態の固液分離を利用したシリアルダイリューション式のBF分離操作により、液体試料中の塩を取り除き、CEAペプチドを精製画分として回収できることが明らかとなった。
【0124】
実施例15:ペプチドの選択的精製
BNPと比較してACTHに対して高い親和性をもつ担体を使用して、ACTHとBNPペプチドを含む液体試料から、本実施形態の固液分離を利用したBF分離操作による精製画分におけるBNPとACTHの回収率の差を調査した。
(1)ペプチド混合物を含む液体試料の調製
標的分子として、TMR-ACTHペプチドと脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)(株式会社スクラム製)を用いた。なお、BNPは塩基性ペプチド(等電点pI=10.95)であり、配列番号3で表される。TMR-ACTHペプチドの最終濃度が5μM、BNPペプチドの最終濃度が100μMとなるようにPBSに溶解し、ペプチド混合物を含む液体試料を調製した。
【0125】
(2)ペプチド混合物を含む液体試料からの対象ペプチドのBF分離処理
ペプチド混合物を含む液体試料を、実施例13と同様の方法でBF分離処理した。用いた担体はODS修飾シリカ担体である。
【0126】
(3)ペプチドの検出
BF分離処理前後の各画分[BF分離処理前(F0)、BF分離処理工程中のフロースルー画分(F1)とすすぎ水画分{F2; 3つのすすぎ水画分(F2-1、F2-2およびF2-3)を等量ずつ混合した}、および、BF分離処理後の精製画分(F3)]について、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を行った。具体的には、10xローディングバッファー(タカラバイオ株式会社)および60%(w/w)グリセロール溶液の1:1混合物であるサンプルバッファー(還元剤非添加)と上記の各画分とを混合し、ニューページ4-12%ビス-トリスゲルおよびニューページMES SDSランニングバッファー(共にライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いて200 V(定電圧)で30分間、電気泳動を行った。泳動槽はエクセルシュアロックミニセル(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)、電源装置はパワーステーション1000XP(アトー株式会社)を用いた。電気泳動後のゲルについて、TMR-ACTHペプチドを蛍光イメージャーPharos FX システム(バイオラッドラボラトリーズ株式会社)を用いて検出した。
【0127】
また、BNPペプチドを銀染色により検出した。銀染色には銀染色キット「イージーステインシルバー」(アトー株式会社)を用いた。染色の各工程は以下の通りである。固定;固定液 100 mL{超純水40 mL+メタノール(和光純薬工業株式会社) 50 mL+酢酸(和光純薬工業株式会社)10 mL+キット瓶S-1 1 mL}で10分間振とう、洗浄;超純水100 mLで10分間振とう×3回、染色;染色液(超純水100 mL+キット瓶S-2 1 mL)で10分間振とう、洗浄;超純水100 mLで30秒間振とう、発色液100 mL(超純水200 mL+キット瓶S-3 1 mL+キット瓶S-4 1 mL)で30秒間振とう、発色;発色液 100 mLで5〜10分間振とう、停止;停止液 100 mL(超純水100 mL+酢酸1 mL)で10分間振とう、洗浄;超純水100 mLで5分間振とう×2回。振とう機はインビトロシェーカーWave-SI(タイテック株式会社)を用いた。
【0128】
ゲルの蛍光イメージング像および銀染色像について、画像処理ソフトウェアImageJ 1.46r(NIH)を用いてTMR-ACTHペプチドあるいはBNPペプチドのバンドのデンシトメトリー値を求め、回収率を下記の式3に従って算出した。
回収率(%)=(各画分でのデンシトメトリー値)/(BF分離処理前のデンシトメトリー値)×100 ・・・ 式3
ゲルの蛍光イメージング像と銀染色像を
図18および
図19に、TMR-ACTHペプチドあるいはBNPペプチドの回収率を下記の表9に示す。
【0129】
【表9】
【0130】
その結果、本実施形態の固液分離を利用したシリアルダイリューション式のBF分離操作により、ACTHとBNPペプチドを含む液体試料から、担体のACTHとBNPに対する親和性の差に従って、精製画分としてBNPよりもACTHが選択的に回収されることが示された。
【0131】
実施例16:ペプチドの選択的精製
ACTHに対して高い親和性をもち、λDNAに対して低い親和性を持つ担体を使用して、本発明の固液分離を利用したBF分離操作により、ACTHとλDNAを含む液体試料からACTHを選択的に精製画分として回収可能であるかを調査した。
(1)ペプチドと核酸とを含む液体試料の調製
標的分子として、TMR-ACTHペプチドを用いた。夾雑物として、バクテリオファージλ由来の直鎖状核酸で、48,502塩基長からなるλDNA(タカラバイオ株式会社製、型番:3010)を用いた。TMR-ACTHペプチドの最終濃度が5μM、λDNAの最終濃度が50μg/mLとなるようにPBSに溶解し、ペプチドと核酸とを含む液体試料を調製した。
【0132】
(2)ペプチドと核酸とを含む液体試料からのペプチドのBF分離処理
ペプチドと核酸とを含む液体試料を、実施例13と同様の方法でBF分離処理した。担体として、細孔径4 nmの、化学修飾を有さないメソ多孔質シリカ担体、すなわち部材表面にシラノール基を有する無修飾シリカ担体(日本化成社製)を用いた。
【0133】
(3)ペプチドおよび核酸の検出
BF分離処理前後の各画分[BF分離処理前(F0)、BF分離処理工程中のフロースルー画分(F1)とすすぎ水画分{F2; 3つのすすぎ水画分(F2-1、F2-2およびF2-3)を等量ずつ混合した}、および、BF分離処理後の精製画分(F3)]について、SDS-PAGEあるいはアガロースゲル電気泳動を行った。SDS-PAGEは実施例15と同様の方法で行った。アガロースゲル電気泳動は、具体的には、アガロース(タカラバイオ株式会社)とトリス酢酸EDTA(TAE)バッファー(和光純薬工業株式会社)を混合し、加熱溶解後にゲルトレイ(株式会社ミューピッド)中で固めて1%アガロースゲルを作成した。6xローディングバッファー(タカラバイオ株式会社)と上記の各画分とを混合し、作製した1%アガロースゲルとTAEバッファーを用いて100 V(定電圧)で40分間、電気泳動を行った。電源装置付泳動槽はMupid-2plus(株式会社ミューピッド)を用いた。電気泳動後のゲルについて、核酸蛍光染色剤SYBR Green II(ロンザジャパン株式会社)でλDNAを染色し、蛍光イメージャーImage Quant LAS4000(GEヘルスケア・ジャパン株式会社)を用いて検出した。λDNAの染色は、1xSYBR Green II/TAEバッファー中でゲルを60分間振とうして行った。振とう機はインビトロシェーカーWave-SIを用いた。
【0134】
ゲルの蛍光イメージング像について、実施例15と同様の方法でTMR-ACTHペプチドあるいはλDNAの回収率を算出した。
ゲルの蛍光イメージング像を
図20および
図21に、TMR-ACTHペプチドあるいはλDNAの回収率を下記の表10に示す。
【0135】
【表10】
【0136】
その結果、本実施形態の固液分離を利用したBF分離操作により、ACTHペプチドとλDNAを含む液体試料の中から、精製画分としてACTHを選択的に回収できることが示された。
【0137】
実施例17:血液試料からのペプチドの精製
特開2015−140320号に記載の方法に従って、全血を処理することにより得られたペプチドの液(以下、ペプチドスープともいう)中の塩を取り除き、精製画分としてペプチドを取り出すことが可能であるかを調査した。
(1)ペプチドと全血とを含む液体試料の調製
標的分子として、ACTHの1位〜24位のアミノ酸からなるACTH部分ペプチドを、赤色蛍光色素であるテトラメチルローダミン(TMR)で標識したTMR−ACTH部分ペプチド(株式会社バイオロジカ)を用いた。夾雑物として、抗凝固剤EDTA塩が添加された健常ボランティア血液(全血)をPROMEDDX社から購入して用いた。特開2015−140320号に記載の方法に従って、TMR-ACTHペプチドの最終濃度が5μM、全血が3倍希釈となるように、TMR-ACTH部分ペプチドおよび全血を、塩化亜鉛を含有するトリス−リン酸混合系緩衝液(Tris・HCl[pH=7.0](最終濃度100 mM)、リン酸ナトリウム(最終濃度0.4 mM)、NaCl (最終濃度6 mM)、そしてZnCl
2(最終濃度100 mM))に溶解し、ペプチドと全血とを含む液体試料を調製した。
【0138】
(2)ペプチドと全血とを含む液体試料の加熱処理
ペプチドと全血とを含む液体試料1.4 mLを10 mL容のガラス試験管に移し、次にテフロン(登録商標)製の試験管用耐圧密封ホルダー(マイルストーンゼネラル株式会社)にて封じてから、マイクロ波照射装置MultiSYNTH(マイルストーンゼネラル株式会社)を用いて、室温(25℃)から100℃まで30秒間で昇温し、その後100℃から160℃まで1分間で昇温することにより加熱処理を行った。加熱処理後の冷却は、前記のマイクロ波照射装置に接続されたエアコンプレッサーYC-3R(株式会社八重崎空圧)から圧縮空気を前記の耐圧密封ホルダーに吹き付けることで行った。冷却速度は、毎分20℃とした。加熱処理後の上清画分であるペプチドスープを回収した。
【0139】
(3)ペプチドと全血とを含む液体試料の加熱処理上清の脱塩処理
ペプチドと全血とを含む液体試料の加熱処理上清(ペプチドスープ)を、実施例13と同様のBF分離操作で脱塩処理した。用いた担体はODS修飾シリカ担体である。
【0140】
(4)導電率の測定
脱塩処理前後の各画分{脱塩処理前(F0)、脱塩処理工程中のフロースルー画分(F1)とすすぎ水画分(F2-1,F2-2,F2-3)、および、脱塩処理後の精製画分(F3)}について、実施例13と同様の方法で導電率を測定し、本脱塩処理による脱塩効率を算出した。
導電率と脱塩効率を下記の表11に示す。
【0141】
【表11】
【0142】
(5)蛍光強度の測定
脱塩処理前後の各画分{脱塩処理前(F0)、脱塩処理工程中のフロースルー画分(F1)とすすぎ水画分(F2-1,F2-2,F2-3)、および、脱塩処理後の精製画分(F3)}について、実施例13と同様の方法で蛍光強度を測定し、本脱塩処理によるペプチド回収率を算出した。蛍光強度測定において、TMR-ACTHペプチドの検出では励起波長540 nmおよび蛍光波長580 nm、また、全血由来ペプチドの検出では励起波長287 nmおよび蛍光波長350 nmとした。
蛍光スペクトルを
図22および
図23に、蛍光強度とペプチド回収率を下記の表12に示す。
【0143】
【表12】
【0144】
その結果、本発明の固液分離を利用したシリアルダイリューション式のBF分離操作によって、特開2015−140320号に記載の方法に従って全血から調製した液中の塩の除去を行い、ACTHや全血由来のペプチドを精製画分として回収できることが示された。
【0145】
実施例18:多様な担体を用いてのTMR-ACTHペプチドの精製
ACTHに対して高い親和性をもつことが確認されている3種類の担体を使用して、特開2015−137978号に記載の試薬中で加熱処理を行って得られた液中の塩を、本発明の固液分離を利用したBF分離操作によって除去することが可能であるかを調査した。さらに、3種類の担体による回収率の差を調査した。
【0146】
(1)ペプチドと全血とを含む液体試料の調製
標的分子として、TMR-ACTHペプチドを用いた。夾雑物として、実施例17と同様の全血を用いた。両者を共に、グリシンを含有する0.5×リン酸緩衝性生理食塩水(0.5×PBS[pH=7.4]、塩化ナトリウム(最終濃度68.5 mM)、リン酸水素二ナトリウム(最終濃度4 mM)、塩化カリウム(最終濃度1.3 mM)、リン酸二水素カリウム(最終濃度0.7 mM、そしてグリシン(最終濃度500 mM))に溶解し、ペプチドと全血とを含む液体試料を調製した。
(2)ペプチドと全血とを含む液体試料の加熱処理
ペプチドと全血とを含む液体試料を実施例17と同様の方法で加熱処理を行いさらにそのまま160℃で60秒間保持することで、加熱処理後の上清画分を回収した。
【0147】
(3)ペプチドと全血とを含む液体試料の加熱処理上清の脱塩処理(リテンションバック式)
ペプチドと全血とを含む液体試料の加熱処理上清を、本実施形態の固液分離を用いた
図24に記載の工程(以下、リテンションバック式のBF分離操作)により脱塩処理した。一連の工程は、
図1記載の装置を用いて行った。担体として、無修飾シリカ担体、ODS修飾シリカ担体、あるいは、アミノシリル基修飾シリカ担体を用いた。管として
図5C記載の管B1型(口径1.34mm)を、容器として実施例1と同様の容器を使用した。一連の工程の概略図と工程中に生じる各画分の名称を
図24に示した。
【0148】
図24に記載のリテンションバック式のBF分離操作の各工程(i)〜(iii)について以下に説明する。
(i) 吸着工程
TMR-ACTHペプチドと全血とを含む液体試料(F0)1.5 mLを、担体100 mgを秤量した実施例1と同様の容器に添加した。混合液を攪拌し、TMR-ACTHペプチドを担体に吸着させて、担体を含む液体試料を管内に吸引した。担体を含む液体試料を吸引した後の容器内に僅かに残る担体を含む液体試料を残渣(R0)とした。管を容器から引き上げ、静置し、管の口部へと担体を沈降させ、プラグが形成されるのを観察した。その後、溶媒を吐出した。吐出した溶媒をフロースルー画分(F1)として回収した。
【0149】
(ii) 水洗工程
水洗用のイオン交換水1 mLを前述の残渣(R0)に添加した後、管内でプラグ形成した担体をイオン交換水中で攪拌し、塩類を洗い流した。撹拌された液を管内に吸引し、管を容器から引き上げ、静置し、管の口部へと担体を沈降させ、プラグが形成されるのを観察した。その後、溶媒を吐出した。吐出した溶媒をすすぎ水画分(F2)として回収した。担体を含むイオン交換水を吸引した後の1.5 mL容器内に僅かに残る担体を含むイオン交換水を残渣(R0)とした。同様の水洗工程をさらに2回繰り返した。
【0150】
(iii) 溶出工程
ペプチド溶出用の脱着液1 mLを、上記の水洗工程によって最終的に得られた残渣(R0)に添加した後、担体を脱着液中で攪拌し、担体に吸着したペプチドを溶出させた。担体と脱着液との混液を管内に吸引し、管を容器から引き上げ、静置し、管の口部へと担体を沈降させ、プラグが形成されるのを観察した。その後、溶媒を吐出した。吐出した液体を精製画分(F3)として回収した。
【0151】
(4)導電率の測定
無修飾シリカ担体、ODS修飾シリカ担体、あるいは、アミノシリル基修飾シリカ担体を用いた脱塩処理前後の各画分{脱塩処理前(F0)および脱塩処理後の精製画分(F3)}について、実施例13と同様の方法で導電率を測定した。導電率を下記の表13に示す。なお、F3の導電率は、アセトニトリル自体の導電率(2.0 mS/cm)を差し引いたためにマイナスの値になった。引き算前の値は1.18 mS/cm。
【0152】
【表13】
【0153】
(5)蛍光強度の測定
無修飾シリカ担体、ODS修飾シリカ担体、あるいは、アミノシリル基修飾シリカ担体を用いた脱塩処理前後の各画分{脱塩処理前(F0)および脱塩処理後の精製画分(F3)}について、実施例13と同様の方法で蛍光強度を測定し、ペプチド回収率を算出した。
蛍光強度測定において、TMR-ACTHペプチドの検出では励起波長540 nmおよび蛍光波長580 nm、また、全血由来ペプチドの検出では励起波長287 nmおよび蛍光波長350 nmとした。
また、算出したペプチド回収率から、下記の式4に従って、本脱塩処理後のTMR-ACTHペプチドと全血由来ペプチドとの比率の違いを算出した。
TMR-ACTHペプチド/全血由来ペプチド回収率比=(TMR-ACTHペプチドの回収率)/(全血由来ペプチドの回収率)・・・ 式4
【0154】
無修飾シリカ担体を用いた本脱塩処理前後の蛍光スペクトルを
図25および
図26に、ODS修飾シリカ担体を用いた本脱塩処理前後の蛍光スペクトルを
図27および
図28に、アミノシリル基修飾シリカ担体を用いた本脱塩処理前後の蛍光スペクトルを
図29および
図30に示す。また、蛍光強度とペプチド回収率を下記の表14〜16に、TMR-ACTHペプチド/全血由来ペプチド回収率比を下記の表17に示す。
【0155】
【表14】
【0156】
【表15】
【0157】
【表16】
【0158】
【表17】
【0159】
その結果、本実施形態の固液分離を利用したリテンションバック式のBF分離操作によって、特開2015−137978号に記載の方法に従って、全血から得られた液中の塩の除去が可能であった。さらに、3種類の担体の間で、ACTHの回収率に大きな差は無かったが、いずれの担体においても大量の全血由来ペプチドに対して、ACTHを選択的に回収し、結果、精製画分中におけるペプチド中のACTHの濃縮が可能であることが示された。
【0160】
この発明の好ましい態様には、上述した複数の態様のうちの何れかを組み合わせたものも含まれる。
前述した実施の形態の他にも、この発明について種々の変形例があり得る。それらの変形例は、この発明の範囲に属さないと解されるべきものではない。この発明には、請求の範囲と均等の意味および前記範囲内でのすべての変形とが含まれるべきである。