特許第6979888号(P6979888)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6979888タングステン膜の成膜方法及び成膜システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979888
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】タングステン膜の成膜方法及び成膜システム
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/14 20060101AFI20211202BHJP
   C23C 16/34 20060101ALI20211202BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20211202BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   C23C16/14
   C23C16/34
   H01L21/28 301R
   H01L21/285 C
   H01L21/28 A
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-6529(P2018-6529)
(22)【出願日】2018年1月18日
(65)【公開番号】特開2019-123917(P2019-123917A)
(43)【公開日】2019年7月25日
【審査請求日】2020年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 崇
(72)【発明者】
【氏名】前川 浩治
(72)【発明者】
【氏名】山口 克昌
【審査官】 山田 貴之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−151356(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0303960(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0148670(US,A1)
【文献】 特開2003−193233(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0327139(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00
C23C 16/00
H01L 21/28−21/288
H01L 21/44−21/445
H01L 29/40−29/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にTiN膜が形成された基板を処理容器内に配置し、減圧雰囲気で前記基板を加熱しつつ前記基板の表面にタングステン膜を成膜するタングステン膜の成膜方法であって、
AlClガス、TMA(トリメチルアルミニウム)ガスの少なくとも一方と還元ガスを前記処理容器内へ供給して、前記基板に、前記TiN膜の配向をキャンセルする第1の膜として、AlN膜を成膜する工程と、
タングステン含有ガスとガスを前記処理容器内へ交互に供給して、前記第1の膜の上に、タングステン膜を成膜する工程と、
を有することを特徴とするタングステン膜の成膜方法。
【請求項2】
前記第1の膜の成膜の後、前記タングステン膜を成膜する工程の前に、WFガスとSiHガスを処理容器内へ供給して前記基板の表面にタングステンの核を生成するための初期タングステン膜を形成する、または、SiHガスを処理容器内へ供給して前記基板の表面をトリートメントする工程をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のタングステン膜の成膜方法。
【請求項3】
前記第1の膜の膜厚は、1−2nmとすることを特徴とする請求項1又は2に記載のタングステン膜の成膜方法。
【請求項4】
前記初期タングステン膜の膜厚は、0.5−5nmとすることを特徴とする請求項2に記載のタングステン膜の成膜方法。
【請求項5】
第1の処理容器と、前記第1の処理容器内に配置され、表面にTiN膜が形成された基板を減圧雰囲気で加熱しつつ、AlClガス、TMA(トリメチルアルミニウム)ガスの少なくとも一方と還元ガスを前記第1の処理容器内へ供給して、前記基板の表面に、前記TiN膜の配向をキャンセルする第1の膜として、AlN膜を成膜する制御を行なう第1の制御部と、を有する第1成膜装置と、
第2の処理容器と、前記第2の処理容器内に配置され、前記第1の膜が形成された基板を減圧雰囲気で加熱しつつ、タングステン含有ガスとガスを前記第2の処理容器内へ交互に供給して、前記第1の膜上に、タングステン膜を成膜する制御を行う第2の制御部と、を有する第2成膜装置と、
を備えたことを特徴とする成膜システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の種々の側面及び実施形態は、タングステン膜の成膜方法及び成膜システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSIを製造する際には、MOSFETゲート電極、ソース・ドレインとのコンタクト、メモリのワード線等に、タングステンが広く用いられている。多層配線工程では、銅配線が主に用いられている。しかし、銅は、耐熱性に乏しく、また拡散しやすい。このため、耐熱性が要求される部分や銅の拡散による電気特性の劣化が懸念される部分等には、タングステンが用いられる。
【0003】
タングステンの成膜処理には、以前、物理的蒸着(PVD)法が用いられていた。しかし、PVD法は、高い被覆率(ステップカバレッジ)が要求される部分に対応することが困難である。このため、タングステンの成膜処理には、ステップカバレッジが良好な化学的蒸着(CVD)法が用いられる。
【0004】
CVD法によりタングステン膜を成膜する際には、シリコン層との密着性や反応抑制の観点から、シリコン層の上にバリア層としてTiN膜を形成し、その上にタングステン膜を成膜する方法が用いられている(例えば、特許文献1)。また、上記特許文献1では、上記反応によるタングステン膜の主成膜に先立って、タングステンが均一に成膜しやすいように、核生成(Nucleation)工程が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−213274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、核生成工程により生成されるタングステンの膜(以下、「Nucleation膜」とも言う。)は、高抵抗となる。このため、タングステン膜全体を薄膜化する場合、Nucleation膜部分の影響により、タングステン膜が高抵抗となる。
【0007】
LSIは、配線が微細化されており、配線の低抵抗化が求められている。例えば、3D NANDフラッシュメモリ等の三次元積層半導体メモリでは、タングステン膜がワード線として成膜されるが、微細化のため、タングステン膜のさらなる低抵抗化が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示するタングステン膜の成膜方法は、1つの実施態様において、表面にTiN膜が形成された基板を処理容器内に配置し、減圧雰囲気で前記基板を加熱しつつ基板の表面にタングステン膜を成膜するタングステン膜の成膜方法であって、基板に、アルミ含有材料による第1の膜を成膜する工程と、第1の膜の上に、タングステン膜を成膜する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
開示するタングステン膜の成膜方法の1つの態様によれば、薄膜化した場合でもタングステン膜の低抵抗化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る成膜システムの全体の概略構成の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る第1成膜装置の概略断面図である。
図3図3は、実施形態に係る第2成膜装置の概略断面図である。
図4図4は、実施形態に係る成膜方法の各工程の流れを示すフローチャートである。
図5図5は、実施形態に係る成膜方法の各工程でのウエハの状態を模式的に示した断面図である。
図6図6は、実施形態に係るAlN膜を成膜する際のガス供給シーケンスを示す図である。
図7図7は、実施形態に係るタングステン膜を成膜する際のガス供給シーケンスを示す図である。
図8図8は、本実施形態に係るウエハの層構成の一例を示す図である。
図9図9は、比較例に係るウエハの層構成の一例を示す図である。
図10図10は、タングステン膜の厚さに対する抵抗率の変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本願の開示するタングステン膜の成膜方法及び成膜システムの実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付すこととする。また、本実施形態により開示する発明が限定されるものではない。
【0012】
[システムの構成]
本実施形態では、複数の成膜装置による成膜システムにより、成膜を実施する場合を例に説明する。最初に、本実施形態に係る成膜システムについて説明する。図1は、実施形態に係る成膜システムの全体の概略構成の一例を示す図である。成膜システム100は、第1成膜装置101と、第2成膜装置102とを有する。実施形態に係る成膜システム100では、第1成膜装置101をアルミ含有材料の成膜に使用し、第2成膜装置102をタングステン膜の成膜に使用する。第1成膜装置101及び第2成膜装置102には、不図示の搬送機構が接続され、成膜対象の被処理基板が搬送機構により搬送される。
【0013】
成膜システム100は、下地膜として窒化チタン膜(TiN)の成膜を行い、次いで、窒化チタン膜(TiN)上にアルミ含有材料の成膜を行い、その後、アルミ含有材料上にタングステン膜を成膜するためのものである。
【0014】
図1に示すように、成膜システム100は、窒化チタン膜(TiN)を成膜する1つの下地膜成膜装置201と、アルミ含有材料を成膜する1つの第1成膜装置101と、タングステン膜を成膜する2つの第2成膜装置102とを有する。これらは、平面形状が七角形をなす真空搬送室301の4つの壁部にそれぞれゲートバルブGを介して接続されている。真空搬送室301内は、真空ポンプにより排気されて所定の真空度に保持される。すなわち、成膜システム100は、マルチチャンバータイプの真空処理システムであり、タングステン膜の成膜を、真空を破ることなく連続して行えるものである。つまり、下地膜成膜装置201、第1成膜装置101、第2成膜装置102の処理容器内で行われる工程のすべては、シリコンウエハW(以下「ウエハW」という。)を大気に曝露せずに行われる。
【0015】
第1成膜装置101および第2成膜装102の構成は後述する。下地膜成膜装置201は、例えば、真空雰囲気のチャンバー内でALD(Atomic Layer Deposition)によりウエハW上に例えば、チタン含有ガスと窒素含有ガスとを交互に供給して窒化チタン膜(TiN)を成膜する装置である。
【0016】
真空搬送室301の他の3つの壁部には3つのロードロック室302がゲートバルブG1を介して接続されている。ロードロック室302を挟んで真空搬送室301の反対側には大気搬送室303が設けられている。3つのロードロック室302は、ゲートバルブG2を介して大気搬送室303に接続されている。ロードロック室302は、大気搬送室303と真空搬送室301との間でウエハWを搬送する際に、大気圧と真空との間で圧力を制御するものである。
【0017】
大気搬送室303のロードロック室302が取り付けられた壁部とは反対側の壁部にはウエハWを収容するキャリア(FOUP等)Cを取り付ける3つのキャリア取り付けポート305が設けられている。また、大気搬送室303の側壁には、ウエハWのアライメントを行うアライメントチャンバ304が設けられている。大気搬送室303内には清浄空気のダウンフローが形成されるようになっている。
【0018】
真空搬送室301内には、搬送機構306が設けられている。搬送機構306は、下地膜成膜装置201、第1成膜装置101、第2成膜装置102、ロードロック室302に対してウエハWを搬送する。搬送機構306は、独立に移動可能な2つの搬送アーム307a,307bを有している。
【0019】
大気搬送室303内には、搬送機構308が設けられている。搬送機構308は、キャリアC、ロードロック室302、アライメントチャンバ304に対してウエハWを搬送するようになっている。
【0020】
成膜システム100は、全体制御部310を有している。全体制御部310は、下地膜成膜装置201、第1成幕装置101、第2成膜装置102の各構成部、真空搬送室301の排気機構、ガス供給機構及び搬送機構306、ロードロック室302の排気機構及びガス供給機構、大気搬送室303の搬送機構308、ゲートバルブG、G1、G2の駆動系等を制御するCPU(コンピュータ)を有する主制御部と、入力装置(キーボード、マウス等)、出力装置(プリンタ等)、表示装置(ディスプレイ等)、記憶装置(記憶媒体)を有している。全体制御部310の主制御部は、例えば、記憶装置に内蔵された記憶媒体、または記憶装置にセットされた記憶媒体に記憶された処理レシピに基づいて、成膜システム100に、所定の動作を実行させる。なお、全体制御部310は、後述する第1成膜装置101および第2成膜装置102が有する制御部6のような各ユニットの制御部の上位の制御部であってもよい。
【0021】
次に、以上のように構成される成膜システム100の動作について説明する。以下の処理動作は全体制御部310における記憶媒体に記憶された処理レシピに基づいて実行される。
【0022】
まず、搬送機構308により大気搬送室303に接続されたキャリアCからウエハWを取り出し、アライメントチャンバ304を経由した後に、いずれかのロードロック室302のゲートバルブG2を開けてそのウエハWをそのロードロック室302内に搬入する。ゲートバルブG2を閉じた後、ロードロック室302内を真空排気する。
【0023】
そのロードロック室302が、所定の真空度になった時点でゲートバルブG1を開けて、搬送機構306の搬送アーム307a,307bのいずれかによりロードロック室302からウエハWを取り出す。
【0024】
そして、下地膜成膜装置201のゲートバルブGを開けて、搬送機構306のいずれかの搬送アームが保持するウエハWをその下地膜成膜装置201に搬入し、空の搬送アームを真空搬送室301に戻すとともに、ゲートバルブGを閉じ、その下地膜成膜装置201により窒化チタン膜(TiN)の成膜処理を行う。
【0025】
窒化チタン膜(TiN)の成膜去処理が終了後、その下地膜成膜装置201のゲートバルブGを開け、搬送機構306の搬送アーム307a,307bのいずれかにより、その中のウエハWを搬出する。そして、第1成膜装置101のゲートバルブGを開けて、搬送アームに保持されたウエハWをその第1成膜装置101に搬入し、空の搬送アームを真空搬送室301に戻すとともに、ゲートバルブGを閉じ、その第1成膜装101により、ウエハW上に形成された窒化チタン膜(TiN)上にアルミ含有材料の成膜処理を行う。
【0026】
アルミ含有材料の成膜去処理が終了後、その第1成膜装置101のゲートバルブGを開け、搬送機構306の搬送アーム307a,307bのいずれかにより、その中のウエハWを搬出する。そして、第2成膜装置102のゲートバルブGを開けて、搬送アームに保持されたウエハWをその第2成膜装置102に搬入し、空の搬送アームを真空搬送室301に戻すとともに、ゲートバルブGを閉じ、その第2成膜装102により、ウエハW上に形成されたアルミ含有材料上にタングステン膜の成膜処理を行う。
【0027】
このようにタングステン膜が成膜された後、その第2成膜装置102のゲートバルブGを開け、搬送機構306の搬送アーム307a,307bのいずれかにより、その中のウエハWを搬出する。そして、いずれかのロードロック室302のゲートバルブG1を開け、搬送アーム上のウエハWをそのロードロック室302内に搬入する。そして、そのロードロック室302内を大気に戻し、ゲートバルブG2を開けて、搬送機構308にてロードロック室302内のウエハWをキャリアCに戻す。
【0028】
以上のような処理を、複数のウエハWについて同時並行的に行って、所定枚数のウエハWのタングステン膜の成膜処理が完了する。
【0029】
上述のように、1つの下地膜成膜装置201、1つの第1成膜装置101および2つの第2成膜装置102を搭載して成膜システム100を構成することにより、窒化チタン膜(TiN)の成膜、アルミ含有材料の成膜、およびタングステン膜の成膜を
を高スループットで実現することができる。なお、本実施例の成膜システム100は、4つの成膜装置を搭載した真空処理システムとして示したが、複数の成膜装置が搭載可能な真空処理システムであれば、成膜装置の数は、これに限らず、4つ以上であってもよく、例えば、8つ以上の成膜装置を搭載した真空処理ステムであってもよい。
【0030】
[成膜装置の構成]
第1成膜装置101及び第2成膜装置102は、略同様の構成とされている。以下では、第1成膜装置101の構成について主に説明し、第2成膜装置102の構成については異なる部分を主に説明する。
【0031】
第1成膜装置101の構成について説明する。図2は、実施形態に係る第1成膜装置の概略断面図である。第1成膜装置101は、処理容器1と、載置台2と、シャワーヘッド3と、排気部4と、ガス供給機構5と、制御部6とを有している。
【0032】
処理容器1は、アルミニウム等の金属により構成され、略円筒状を有している。処理容器1は、被処理基板であるウエハWを収容する。処理容器1の側壁にはウエハWを搬入又は搬出するための搬入出口11が形成され、搬入出口11はゲートバルブ12により開閉される。処理容器1の本体の上には、断面が矩形状をなす円環状の排気ダクト13が設けられている。排気ダクト13には、内周面に沿ってスリット13aが形成されている。排気ダクト13の外壁には、排気口13bが形成されている。排気ダクト13の上面には、処理容器1の上部開口を塞ぐように天壁14が設けられている。排気ダクト13と天壁14との間は、シールリング15で気密に封止されている。
【0033】
載置台2は、処理容器1内でウエハWを水平に支持する。載置台2は、ウエハWに対応した大きさの円板状に形成されており、支持部材23に支持されている。載置台2は、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス材料や、アルミニウムやニッケル合金等の金属材料で形成されており、内部にウエハWを加熱するためのヒータ21が埋め込まれている。ヒータ21は、ヒータ電源(図示せず)から給電されて発熱する。そして、載置台2の上面の近傍に設けられた熱電対(図示せず)の温度信号によりヒータ21の出力を制御することで、ウエハWが所定の温度に制御される。載置台2には、上面の外周領域及び側面を覆うようにアルミナ等のセラミックスにより形成されたカバー部材22が設けられている。
【0034】
載置台2の底面には、載置台2を支持する支持部材23が設けられている。支持部材23は、載置台2の底面の中央から処理容器1の底壁に形成された孔部を貫通して処理容器1の下方に延び、その下端が昇降機構24に接続されている。載置台2は、昇降機構24によって、支持部材23を介して、図2で示す処理位置と、その下方の二点鎖線で示すウエハWの搬送が可能な搬送位置との間で昇降する。支持部材23の処理容器1の下方には、鍔部25が取り付けられており、処理容器1の底面と鍔部25の間には、処理容器1内の雰囲気を外気と区画し、載置台2の昇降動作にともなって伸縮するベローズ26が設けられている。
【0035】
処理容器1の底面の近傍には、昇降板27aから上方に突出するように3本(2本のみ図示)のウエハ支持ピン27が設けられている。ウエハ支持ピン27は、処理容器1の下方に設けられた昇降機構28により昇降板27aを介して昇降する。ウエハ支持ピン27は、搬送位置にある載置台2に設けられた貫通孔2aに挿通されて載置台2の上面に対して突没可能となっている。ウエハ支持ピン27を昇降させることにより、搬送機構(図示せず)と載置台2との間でウエハWの受け渡しが行われる。
【0036】
シャワーヘッド3は、処理容器1内に処理ガスをシャワー状に供給する。シャワーヘッド3は、金属製であり、載置台2に対向するように設けられており、載置台2とほぼ同じ直径を有している。シャワーヘッド3は、処理容器1の天壁14に固定された本体部31と、本体部31の下に接続されたシャワープレート32とを有している。本体部31とシャワープレート32との間にはガス拡散空間33が形成されており、ガス拡散空間33には、処理容器1の天壁14及び本体部31の中央を貫通するようにガス導入孔36,37が設けられている。シャワープレート32の周縁部には下方に突出する環状突起部34が形成されている。環状突起部34の内側の平坦面には、ガス吐出孔35が形成されている。載置台2が処理位置に存在した状態では、載置台2とシャワープレート32との間に処理空間38が形成され、カバー部材22の上面と環状突起部34とが近接して環状隙間39が形成される。
【0037】
排気部4は、処理容器1の内部を排気する。排気部4は、排気口13bに接続された排気配管41と、排気配管41に接続された真空ポンプや圧力制御バルブ等を有する排気機構42とを有する。処理に際しては、処理容器1内のガスがスリット13aを介して排気ダクト13に至り、排気ダクト13から排気配管41を通って排気機構42により排気される。
【0038】
ガス供給機構5は、ガス導入孔36,37に接続され、成膜に用いる各種のガスを供給可能とされている。例えば、ガス供給機構5は、アルミ含有材料による膜を成膜するガス供給源として、Al含有ガス供給源51a、Nガス供給源53a、NHガス供給源55a、及びNガス供給源57aを有する。なお、図2に示すガス供給機構5では、各ガス供給源をそれぞれ分けて示したが、共通化可能なガス供給源は、共通化してもよい。
【0039】
Al含有ガス供給源51aは、ガス供給ライン51bを介してAl含有ガスを処理容器1内に供給する。Al含有ガスとしては、例えば、AlClガス、TMA(トリメチルアルミニウム:C18Al)ガスが挙げられる。ガス供給ライン51bには、上流側から流量制御器51c、貯留タンク51d及びバルブ51eが介設されている。ガス供給ライン51bのバルブ51eの下流側は、ガス導入孔36に接続されている。Al含有ガス供給源51aから供給されるAl含有ガスは、処理容器1内に供給される前に貯留タンク51dで一旦貯留され、貯留タンク51d内で所定の圧力に昇圧された後、処理容器1内に供給される。貯留タンク51dから処理容器1へのAl含有ガスの供給及び停止は、バルブ51eにより行われる。このように貯留タンク51dへAl含有ガスを一旦貯留することで、比較的大きい流量で安定的にAl含有ガスを処理容器1内に供給することができる。
【0040】
ガス供給源53aは、ガス供給ライン53bを介してキャリアガスであるNガスを処理容器1内に供給する。ガス供給ライン53bには、上流側から流量制御器53c、バルブ53e及びオリフィス53fが介設されている。ガス供給ライン53bのオリフィス53fの下流側は、ガス供給ライン51bに接続されている。Nガス供給源53aから供給されるNガスは、ウエハWの成膜中に連続して処理容器1内に供給される。Nガス供給源53aから処理容器1へのNガスの供給及び停止は、バルブ53eにより行われる。貯留タンク51dによってガス供給ライン51bには比較的大きい流量でガスが供給されるが、オリフィス53fによってガス供給ライン51bに供給されるガスが、ガス供給ライン53bに逆流することが抑制される。
【0041】
NHガス供給源55aは、ガス供給ライン55bを介して還元ガスであるNHガスを処理容器1内に供給する。ガス供給ライン55bには、上流側から流量制御器55c、貯留タンク55d及びバルブ55eが介設されている。ガス供給ライン55bのバルブ55eの下流側は、ガス供給ライン54bに接続されている。ガス供給ライン54bの下流側は、ガス導入孔37に接続されている。NHガス供給源55aから供給されるNHガスは、処理容器1内に供給される前に貯留タンク55dで一旦貯留され、貯留タンク55d内で所定の圧力に昇圧された後、処理容器1内に供給される。貯留タンク55dから処理容器1へのNHガスの供給及び停止は、バルブ55eにより行われる。このように貯留タンク55dへNHガスを一旦貯留することで、比較的大きい流量で安定的にNHガスを処理容器1内に供給することができる。
【0042】
ガス供給源57aは、ガス供給ライン57bを介してキャリアガスであるNガスを処理容器1内に供給する。ガス供給ライン57bには、上流側から流量制御器57c、バルブ57e及びオリフィス57fが介設されている。ガス供給ライン57bのオリフィス57fの下流側は、ガス供給ライン54bに接続されている。Nガス供給源57aから供給されるNガスは、ウエハWの成膜中に連続して処理容器1内に供給される。Nガス供給源57aから処理容器1へのNガスの供給及び停止は、バルブ57eにより行われる。貯留タンク55dによってガス供給ライン55bには比較的大きい流量でガスが供給されるが、オリフィス57fによってガス供給ライン55bに供給されるガスが、ガス供給ライン57bに逆流することが抑制される。
【0043】
上記のように構成された第1成膜装置101は、制御部6によって、その動作が統括的に制御される。制御部6は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置等を備える。CPUは、ROM又は補助記憶装置に格納されたプログラムに基づいて動作し、装置全体の動作を制御する。制御部6は、第1成膜装置101の内部に設けられていてもよく、外部に設けられていてもよい。制御部6が外部に設けられている場合、制御部6は、有線又は無線等の通信手段によって、第1成膜装置101を制御することができる。
【0044】
次に、第2成膜装置102の構成について説明する。図3は、実施形態に係る第2成膜装置の概略断面図である。第2成膜装置102は、使用するガス及びガスを供給するガス供給機構5以外、第1成膜装置101と同様の構成とされている。第2成膜装置102の第1成膜装置101と同一部分については、同一の符号を付して説明を省略し、主に異なる点について説明をする。
【0045】
ガス供給機構5は、ガス導入孔36,37に接続され、成膜に用いる各種のガスを供給可能とされている。例えば、ガス供給機構5は、タングステン膜を成膜するガスの供給源として、WFガス供給源61a、Nガス供給源62a、Nガス供給源63a、Hガス供給源64a、Hガス供給源65a、Nガス供給源66a、及びNガス供給源67aを有する。なお、図3に示すガス供給機構5でも、各ガス供給源をそれぞれ分けて示したが、共通化可能なガス供給源は、共通化してもよい。
【0046】
WFガス供給源61aは、ガス供給ライン61bを介してWFガスを処理容器1内に供給する。ガス供給ライン61bには、上流側から流量制御器61c、貯留タンク61d及びバルブ61eが介設されている。ガス供給ライン61bのバルブ61eの下流側は、ガス導入孔36に接続されている。WFガス供給源61aから供給されるWFガスは、処理容器1内に供給される前に貯留タンク61dで一旦貯留され、貯留タンク61d内で所定の圧力に昇圧された後、処理容器1内に供給される。貯留タンク61dから処理容器1へのWFガスの供給及び停止は、バルブ61eにより行われる。このように貯留タンク61dへWFガスを一旦貯留することで、比較的大きい流量で安定的にWFガスを処理容器1内に供給することができる。
【0047】
ガス供給源62aは、ガス供給ライン62bを介してパージガスであるNガスを処理容器1内に供給する。ガス供給ライン62bには、上流側から流量制御器62c、貯留タンク62d及びバルブ62eが介設されている。ガス供給ライン62bのバルブ62eの下流側は、ガス供給ライン61bに接続されている。Nガス供給源62aから供給されるNガスは、処理容器1内に供給される前に貯留タンク62dで一旦貯留され、貯留タンク62d内で所定の圧力に昇圧された後、処理容器1内に供給される。貯留タンク62dから処理容器1へのNガスの供給及び停止は、バルブ62eにより行われる。このように貯留タンク62dへNガスを一旦貯留することで、比較的大きい流量で安定的にNガスを処理容器1内に供給することができる。
【0048】
ガス供給源63aは、ガス供給ライン63bを介してキャリアガスであるNガスを処理容器1内に供給する。ガス供給ライン63bには、上流側から流量制御器63c、バルブ63e及びオリフィス63fが介設されている。ガス供給ライン63bのオリフィス63fの下流側は、ガス供給ライン61bに接続されている。Nガス供給源63aから供給されるNガスは、ウエハWの成膜中に連続して処理容器1内に供給される。Nガス供給源63aから処理容器1へのNガスの供給及び停止は、バルブ63eにより行われる。貯留タンク61d,62dによってガス供給ライン61b,62bには比較的大きい流量でガスが供給されるが、オリフィス63fによってガス供給ライン61b,62bに供給されるガスが、ガス供給ライン63bに逆流することが抑制される。
【0049】
ガス供給源64aは、ガス供給ライン64bを介して還元ガスであるHガスを処理容器1内に供給する。ガス供給ライン64bには、上流側から流量制御器64c、バルブ64e及びオリフィス64fが介設されている。ガス供給ライン64bのオリフィス64fの下流側は、ガス導入孔37に接続されている。Hガス供給源64aから供給されるHガスは、ウエハWの成膜中に連続して処理容器1内に供給される。Hガス供給源64aから処理容器1へのHガスの供給及び停止は、バルブ64eにより行われる。後述する貯留タンク65d,66dによってガス供給ライン65b,66bには比較的大きい流量でガスが供給されるが、オリフィス64fによってガス供給ライン65b,66bに供給されるガスが、ガス供給ライン64bに逆流することが抑制される。
【0050】
ガス供給源65aは、ガス供給ライン65bを介して還元ガスであるHガスを処理容器1内に供給する。ガス供給ライン65bには、上流側から流量制御器65c、貯留タンク65d及びバルブ65eが介設されている。ガス供給ライン65bのバルブ65eの下流側は、ガス供給ライン64bに接続されている。Hガス供給源65aから供給されるHガスは、処理容器1内に供給される前に貯留タンク65dで一旦貯留され、貯留タンク65d内で所定の圧力に昇圧された後、処理容器1内に供給される。貯留タンク65dから処理容器1へのHガスの供給及び停止は、バルブ65eにより行われる。このように貯留タンク65dへHガスを一旦貯留することで、比較的大きい流量で安定的にHガスを処理容器1内に供給することができる。
【0051】
ガス供給源66aは、ガス供給ライン66bを介してパージガスであるNガスを処理容器1内に供給する。ガス供給ライン66bには、上流側から流量制御器66c、貯留タンク66d及びバルブ66eが介設されている。ガス供給ライン66bのバルブ66eの下流側は、ガス供給ライン64bに接続されている。Nガス供給源66aから供給されるNガスは、処理容器1内に供給される前に貯留タンク66dで一旦貯留され、貯留タンク66d内で所定の圧力に昇圧された後、処理容器1内に供給される。貯留タンク66dから処理容器1へのNガスの供給及び停止は、バルブ66eにより行われる。このように貯留タンク66dへNガスを一旦貯留することで、比較的大きい流量で安定的にNガスを処理容器1内に供給することができる。
【0052】
ガス供給源67aは、ガス供給ライン67bを介してキャリアガスであるNガスを処理容器1内に供給する。ガス供給ライン67bには、上流側から流量制御器67c、バルブ67e及びオリフィス67fが介設されている。ガス供給ライン67bのオリフィス67fの下流側は、ガス供給ライン64bに接続されている。Nガス供給源67aから供給されるNガスは、ウエハWの成膜中に連続して処理容器1内に供給される。Nガス供給源67aから処理容器1へのNガスの供給及び停止は、バルブ67eにより行われる。貯留タンク65d,66dによってガス供給ライン65b,66bには比較的大きい流量でガスが供給されるが、オリフィス67fによってガス供給ライン65b,66bに供給されるガスが、ガス供給ライン67bに逆流することが抑制される。
【0053】
〔成膜方法〕
次に、上記のように構成された成膜システム100を用いて行われる、タングステン膜の成膜方法について説明する。図4は、実施形態に係る成膜方法の各工程の流れを示すフローチャートである。図5は、実施形態に係る成膜方法の各工程でのウエハの状態を模式的に示した断面図である。
【0054】
まず、最初に、本実施形態に係る成膜方法では、例えばトレンチやホール等の凹部を有するシリコン膜の表面に下地膜である窒化チタン(TiN)膜が形成されたウエハW(図5(a))を準備する。なお、ウエハWには実際にはトレンチやホール(コンタクトホールまたはビアホール)等の凹部が形成されているが、便宜上、図5では凹部を省略している。
【0055】
第1成膜装置101は、ウエハWに対して、ALD(Atomic Layer Deposition)法により、アルミ含有材料による膜を成膜する(ステップS1:図5(b))。例えば、第1成膜装置101は、Al含有ガスと、還元ガスを処理容器1内へ供給して、アルミ含有材料による膜として、AlN膜を成膜する。なお、AlN膜を成膜する工程の詳細は、後述する。
【0056】
第2成膜装置102は、ウエハWに対して、WFガスとSiHガスを処理容器1内へ供給してウエハWの表面にタングステンの核を生成するための初期タングステン膜としてNucleation膜を形成する(ステップS2:図5(c))。なお、ステップS3は、次のタングステン膜を形成しやすくする処理であるが、必須ではない。また、ステップS3は、第2成膜装置102が、SiHガスを処理容器1内へ所定時間供給してウエハWの表面をトリートメントする工程としてもよい。
【0057】
次に、第2成膜装置102は、ウエハWに対して、タングステン膜を成膜する(ステップS3:図5(d))。なお、タングステン膜を成膜する工程の詳細は、後述する。
【0058】
〔AlN膜の成膜〕
次に、第1成膜装置101がAlN膜を成膜する流れについて説明する。図6は、実施形態に係るAlN膜を成膜する際のガス供給シーケンスを示す図である。
【0059】
第1成膜装置101の制御部6は、載置台2のヒータ21を制御し、ウエハWを所定の温度(例えば250〜650℃)に加熱する。また、制御部6は、排気機構42の圧力制御バルブを制御し、処理容器1内を所定の圧力(例えば1.3×10〜8.0×10Pa)に調整する。
【0060】
制御部6は、バルブ53e,57eを開き、Nガス供給源53a,57aから夫々ガス供給ライン53b,57bに所定の流量(例えば100〜10000sccm)のキャリアガス(Nガス)を供給する。また、制御部6は、Al含有ガス供給源51a及びNHガス供給源55aから夫々Al含有ガス及びNHガスをガス供給ライン51b,55bに供給する。このとき、バルブ51e,55eが閉じられているので、Al含有ガス及びNHガスは、貯留タンク51d,55dに夫々貯留され、貯留タンク51d,55d内が昇圧する。
【0061】
次いで、制御部6は、バルブ51eを開き、貯留タンク51dに貯留されたAl含有ガスを処理容器1内に供給し、ウエハWの表面にアルミ含有材料による膜を吸着させる(ステップS11)。例えば、Al含有ガスとして、AlClガスを用いた場合、AlCl+NH→AlN+HCl↑と反応し、ウエハWの表面にAlNが吸着する。また、例えば、Al含有ガスとして、TMAガスを用いた場合、C18Al+NH→AlN+CxHy↑と反応し、ウエハWの表面にAlNが吸着する。
【0062】
制御部6は、バルブ51eを開いてから所定の時間(例えば0.05〜5秒)が経過した後、バルブ51eを閉じ、処理容器1内へのAl含有ガスの供給を停止する(ステップS12)。バルブ51eが閉じられたことにより、Al含有ガス供給源51aからガス供給ライン51bに供給されるAl含有ガスが貯留タンク51dに貯留され、貯留タンク51d内が昇圧する。また、バルブ51eが閉じられたことで、ガス供給ライン53bおよびガス供給ライン57bから供給されているキャリアガス(N)が、パージガスとしても機能して、余分なAl含有ガスを排気することができる(ステップS12)。
【0063】
制御部6は、バルブ51eを閉じてから所定の時間(例えば0.05〜5秒)が経過した後、バルブ55eを開き、貯留タンク55dに貯留されたNHガスを処理容器1内に供給し、ウエハWの表面に吸着したAl含有ガスを還元する(ステップS13)。
【0064】
制御部6は、バルブ55eを開いてから所定の時間(例えば0.05〜5秒)が経過した後、バルブ55eを閉じ、処理容器1内へのNHガスの供給を停止する(ステップS14)。バルブ55eが閉じられたことにより、NHガス供給源55aからガス供給ライン55bに供給されるNHガスが貯留タンク55dに貯留され、貯留タンク55d内が昇圧する。また、バルブ51eが閉じられたことで、ガス供給ライン53bおよびガス供給ライン57bから供給されているキャリアガス(N)が、パージガスとしても機能して、余分なAl含有ガスを排気することができる(ステップS14)。
【0065】
制御部6は、ステップS11〜S14のサイクルを複数サイクル(例えば10〜1000サイクル)繰り返すことにより所望の膜厚のAlN膜を成膜する。
【0066】
なお、図6に示した、AlN膜を成膜する際のガス供給シーケンス及びプロセスガズの条件は、一例であり、これに限定されるものではない。AlN膜の成膜は、他のガス供給シーケンス及びプロセスガズの条件を用いてもよい。
【0067】
〔タングステン膜の成膜〕
次に、第2成膜装置102がタングステン膜を成膜する流を説明する。図7は、実施形態に係るタングステン膜を成膜する際のガス供給シーケンスを示す図である。
【0068】
第2成膜装置102の制御部6は、載置台2のヒータ21を制御し、ウエハWを所定の温度(例えば250〜650℃)に加熱する。また、制御部6は、排気機構42の圧力制御バルブを制御し、処理容器1内を所定の圧力(例えば1.3×10〜8.0×10Pa)に調整する。
【0069】
制御部6は、バルブ63e,67eを開き、Nガス供給源63a,67aから夫々ガス供給ライン63b,67bに所定の流量(例えば100〜8000sccm)のキャリアガス(Nガス)を供給する。また、制御部6は、バルブ64eを開き、Hガス供給源64aからガス供給ライン64bに所定の流量(例えば100〜20000sccm)のHガスを供給する。また、制御部6は、WFガス供給源61a及びHガス供給源65aから夫々WFガス及びHガスをガス供給ライン61b,65bに供給する。このとき、バルブ61e,65eが閉じられているので、WFガス及びHガスは、貯留タンク61d,65dに夫々貯留され、貯留タンク61d,65d内が昇圧する。
【0070】
次いで、制御部6は、バルブ61eを開き、貯留タンク61dに貯留されたWFガスを処理容器1内に供給し、ウエハWの表面に吸着させる(ステップS21)。また、制御部6は、処理容器1内へのWFガスの供給に並行して、Nガス供給源62a,66aからガス供給ライン62b,66bに夫々パージガス(Nガス)を供給する。このとき、バルブ62e,66eが閉じられたことにより、パージガスは、貯留タンク62d,66dに貯留され、貯留タンク62d,66d内が昇圧する。
【0071】
制御部6は、バルブ61eを開いてから所定の時間(例えば0.05〜5秒)が経過した後、バルブ61eを閉じると共にバルブ62e,66eを開き、処理容器1内へのWFガスの供給を停止すると共に貯留タンク62d,66dに夫々貯留されたパージガスを処理容器1内に供給する(ステップS22)。このとき、圧力が上昇した状態の貯留タンク62d,66dから供給されるので、処理容器1内には比較的大きな流量、例えばキャリアガスの流量よりも大きい流量(例えば500〜10000sccm)でパージガスが供給される。そのため、処理容器1内に残留するWFガスが速やかに排気配管41へと排出され、処理容器1内がWFガス雰囲気からHガス及びNガスを含む雰囲気に短時間で置換される。一方、バルブ61eが閉じられたことにより、WFガス供給源61aからガス供給ライン61bに供給されるWFガスが貯留タンク61dに貯留され、貯留タンク61d内が昇圧する。
【0072】
制御部6は、バルブ62e,66eを開いてから所定の時間(例えば0.05〜5秒)が経過した後、バルブ62e,66eを閉じると共にバルブ65eを開き、処理容器1内へのパージガスの供給を停止すると共に貯留タンク65dに貯留されたHガスを処理容器1内に供給し、ウエハWの表面に吸着したWFガスを還元する(ステップS23)。このとき、バルブ62e,66eが閉じられたことにより、Nガス供給源62a,66aからガス供給ライン62b,66bに夫々供給されるパージガスが貯留タンク62d,66dに貯留され、貯留タンク62d,66d内が昇圧する。
【0073】
制御部6は、バルブ65eを開いてから所定の時間(例えば0.05〜5秒)が経過した後、バルブ65eを閉じると共にバルブ62e,66eを開き、処理容器1内へのHガスの供給を停止すると共に貯留タンク62d,66dに夫々貯留されたパージガスを処理容器1内に供給する(ステップS24)。このとき、圧力が上昇した状態の貯留タンク62d,66dから供給されるので、処理容器1内には比較的大きな流量、例えばキャリアガスの流量よりも大きい流量(例えば500〜10000sccm)でパージガスが供給される。そのため、処理容器1内に残留するHガスが速やかに排気配管41へと排出され、処理容器1内がHガス雰囲気からHガス及びNガスを含む雰囲気に短時間で置換される。一方、バルブ65eが閉じられたことにより、Hガス供給源65aからガス供給ライン65bに供給されるHガスが貯留タンク65dに貯留され、貯留タンク65d内が昇圧する。
【0074】
制御部6は、ステップS21〜S24のサイクルを複数サイクル(例えば50〜2000サイクル)繰り返すことにより所望の膜厚のタングステン膜を成膜する。
【0075】
なお、図7に示した、タングステン膜を成膜する際のガス供給シーケンス及びプロセスガズの条件は、一例であり、これに限定されるものではない。タングステン膜の成膜は、他のガス供給シーケンス及びプロセスガズの条件を用いてもよい。
【0076】
[作用及び効果]
次に、本実施形態に係る成膜方法の作用及び効果について説明する。図8は、本実施形態に係るウエハの層構成の一例を示す図である。図8は、本実施形態に係る成膜方法により成膜されたウエハWの層構成の一例を示したものである。ウエハWは、シリコン(SiO)層の上に、ブロックキングのためAlO層が形成され、AlO層の上に、密着性や反応抑制の観点から、厚さが例えば1nmのTiN膜が形成されている。そして、ウエハWは、TiN膜の上に、本実施形態に係る成膜方法により、厚さが例えば1nmのAlN膜が成膜され、AlN膜の上に、初期タングステン膜として、厚さが例えば1nmのタングステンのNucleation膜(Nuc)が形成されている。そして、ウエハWは、Nucleation膜の上に、低抵抗のタングステン膜(W)が形成されている。
【0077】
ここで、実施形態に係る成膜方法のプロセス条件の一例をまとめて以下に記載する。
【0078】
・AlN膜
温度:250〜550℃
圧力:0.1〜10Torr
Al含有ガス:10〜500sccm
キャリアガス(N2):1000〜10000sccm
パージガス(N2):0〜10000sccm
NH3ガス:1000〜10000sccm
時間:
Al含有ガス:0.05〜5秒
パージ:0.05〜5秒
NH3ガス:0.05〜5秒
パージ:0.05〜5秒
【0079】
・Nucleation膜:
温度:250〜550℃
圧力:1〜100Torr
W含有ガス:10〜500sccm
キャリアガス(N2):1000〜10000sccm
パージガス(N2):0〜10000sccm
H2ガス:500〜20000sccm
SiH4ガス:10〜1000sccm
時間:
W含有ガス:0.05〜15秒
パージ:0.05〜15秒
SiH4ガス:0.05〜15秒
パージ:0.05〜15秒
【0080】
・W膜
温度:250〜550℃
圧力:0.1〜20Torr
W含有ガス:100〜500sccm
キャリアガス(N2):1000〜10000sccm
パージガス(N2):0〜10000sccm
H2ガス:500〜20000sccm
時間:
W含有ガス:0.05〜15秒
パージ:0.05〜15秒
H2ガス:0.05〜15秒
パージ:0.05〜15秒
【0081】
ウエハWは、このようにタングステンの成膜前に、TiN膜の上にAlN膜を形成することで、AlN膜がTiNの配向をキャンセルできる。AlN膜は、厚さを1−2nm程度とすることが好まく、厚さが1nm程度あれば、下地のTiNの配向をキャンセルすることができる。これにより、ウエハWでは、成膜されるタングステンのグレインをより大きく成長させることができ、タングステン膜の抵抗を低下させることができる。
【0082】
また、ウエハWは、Nucleation膜を形成することで、成膜されるタングステンの密着性を高めることができる。また、成膜されるタングステンの均一性を高めることができる。Nucleation膜は、厚さを0.5−5nm程度とすることが好ましい。
【0083】
ここで、比較例を用いて効果を説明する。図9は、比較例に係るウエハの層構成の一例を示す図である。図9は、従来のウエハWの層構成の一例を示したものである。ウエハWは、シリコン(SiO)層の上に、ブロックキングのためAlO層が形成され、AlO層の上に、密着性や反応抑制の観点から、厚さが例えば2nmのTiN膜が形成されている。そして、ウエハWは、TiN膜の上に、厚さが例えば3nmのタングステンのNucleation膜(Nuc)が形成されている。そして、ウエハWは、Nucleation膜の上に、低抵抗のタングステン膜(W)が形成されている。
【0084】
以下に、比較例の各膜を成膜するプロセス条件の一例を記載する。
【0085】
・Nucleation膜:
温度:250〜550℃
圧力:1〜100Torr
W含有ガス:10〜500sccm
キャリアガス(N2):1000〜10000sccm
パージガス(N2):0〜10000sccm
H2ガス:500〜20000sccm
SiH4ガス:10〜1000sccm
時間:
W含有ガス:0.05〜15秒
パージ:0.05〜15秒
SiH4ガス:0.05〜15秒
パージ:0.05〜15秒
【0086】
・W膜:
温度:250〜550℃
圧力:0.1〜20Torr
W含有ガス:100〜500sccm
キャリアガス(N2):1000〜10000sccm
パージガス(N2):0〜10000sccm
H2ガス:500〜20000sccm
時間:
W含有ガス:0.05〜15秒
パージ:0.05〜15秒
H2ガス:0.05〜15秒
パージ:0.05〜15秒
【0087】
図10は、タングステン膜の厚さに対する抵抗率の変化の一例を示す図である。図10には、図8に示した本実施形態の層構成と、図9に示した比較例の層構成とによるタングステン膜の厚さによる抵抗率の変化が示されている。図10の例では、タングステン膜の厚さをTiN膜との界面から計測している。すなわち、本実施形態の層構成では、AlN膜、Nucleation膜(Nuc)、タングステン膜(W)の厚さを、タングステン膜の厚さとしている。比較例の層構成では、Nucleation膜(Nuc)、タングステン膜(W)の厚さを、タングステン膜の厚さとしている。また、図10の例では、厚さが10nmの場合の比較例の抵抗率を基準として、正規化して抵抗率を示している。図10に示すように、厚さが10nmの場合、本実施形態の層構成は、比較例の層構成に比べて、抵抗率が59%低下する。また、厚さが15nmの場合、本実施形態の層構成は、比較例の層構成に比べて、抵抗率が41%低下する。
【0088】
ここで、上述のように、LSIは、配線が微細化されており、配線の低抵抗化が求められている。例えば、3D NANDフラッシュメモリ等の三次元積層半導体メモリでは、タングステン膜がワード線として成膜されるが、微細化のため、タングステン膜のさらなる低抵抗化が求められている。
【0089】
これに対し、本実施形態の層構成は、薄膜化した場合でもタングステン膜の低抵抗化を図ることができる。
【0090】
また、従来、Nucleation膜の成膜では、還元ガスとして、Boron(B)ガスが用いられる。しかし、Boronは、ウエハWに悪影響を及ぼす場合がある。
【0091】
これに対し、本実施形態に係るNucleation膜の成膜では、還元ガスとして、SiHガスを用いることで悪影響を抑制できる。
【0092】
なお、図8に示した本実施形態の層構成では、Nucleation膜を設けた場合を示したが、Nucleation膜は必須ではない。Nucleation膜を成膜する代わりに、SiHガスを処理容器1内へ所定時間供給してウエハWの表面をトリートメントしてもよい。所定時間は、例えば、300秒程度以上の時間とすることが好ましい。
【0093】
また、本実施形態では、AlN膜とタングステン膜とを別々の成膜装置で成膜する場合を説明してきたが、これに限定されるものではない。例えば、AlN膜とタングステン膜は、AlN膜を形成するためのガス供給機構とタングステン膜を形成するためのガス供給機構を備えた1つの成膜装置で成膜してもよい。また、ウエハWは、大気圧力下でそれぞれの成膜装置を搬送されもよい。
【0094】
このように、本実施形態に係るタングステン膜の成膜方法は、処理容器1内に配置され、表面にTiN膜が形成されたウエハWを減圧雰囲気で加熱しつつウエハWの表面に、アルミ含有材料による第1の膜を成膜する。そして、本実施形態に係るタングステン膜の成膜方法は、第1の膜の上に、タングステン膜を成膜する。これにより、薄膜化した場合でもタングステン膜の低抵抗化を図ることができる。
【0095】
また、本実施形態に係るタングステン膜の成膜方法は、AlClガス、TMAガスの少なくとも一方と、還元ガスを処理容器1内へ供給して、第1の膜として、AlN膜を成膜する。これにより、AlN膜によってTiN膜の配向がキャンセルされ、成膜されるタングステンのグレインを大きく成長させることができるため、タングステン膜の抵抗を低下させることができる。
【0096】
また、本実施形態に係るタングステン膜の成膜方法は、第1の膜の成膜の後、タングステン膜を成膜する工程の前に、WFガスとSiHガスを処理容器1内へ供給してウエハWの表面にタングステンの核を生成するための初期タングステン膜を形成する、または、SiHガスを処理容器1内へ供給してウエハWの表面をトリートメントする。これにより、成膜されるタングステンの密着性を高めることができる。また、成膜されるタングステンの均一性を高めることができる。
【0097】
以上、実施形態について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく種々の変形態様を構成可能である。例えば、基板として半導体ウエハを例にとって説明したが、半導体ウエハはシリコンであっても、GaAs、SiC、GaNなどの化合物半導体でもよく、さらに、半導体ウエハに限定されず、液晶表示装置等のFPD(フラットパネルディスプレイ)に用いるガラス基板や、セラミック基板等にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 処理容器
5 ガス供給機構
6 制御部
W ウエハ
100 成膜システム
101 第1成膜装置
102 第2成膜装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10