(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979915
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】光ファイバ多孔質母材の製造装置及び光ファイバ多孔質母材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 37/018 20060101AFI20211202BHJP
C03B 8/04 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
C03B37/018 C
C03B8/04 C
C03B8/04 G
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-65519(P2018-65519)
(22)【出願日】2018年3月29日
(65)【公開番号】特開2019-172545(P2019-172545A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2020年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白土 和寿
【審査官】
松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−060261(JP,A)
【文献】
特開昭61−141631(JP,A)
【文献】
特開2006−199527(JP,A)
【文献】
実開平07−021741(JP,U)
【文献】
特開2012−066998(JP,A)
【文献】
特開平05−058661(JP,A)
【文献】
特開昭63−079055(JP,A)
【文献】
実開昭63−115040(JP,U)
【文献】
実開平07−038144(JP,U)
【文献】
特開2007−230813(JP,A)
【文献】
特開2016−117616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00−37/16
C03B 8/00− 8/04
F23D 14/20−14/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器と、
前記反応容器内に設けられたバーナーと、
前記バーナーに原料ガス及び可燃ガスを供給するガス供給部と、を備え、
前記反応容器内において、前記バーナーから前記可燃ガス及び前記原料ガスを含むガスを供給し、前記ガスの反応によって生じる微粒子を堆積させて多孔質母材を形成する光ファイバ多孔質母材の製造装置であって、
前記バーナーが放射する火炎に向かう気流を規制する気流規制部材を設け、
前記気流規制部材の開口端から該気流規制部材内に、出発材又は合成中の光ファイバ多孔質母材の下端が入り込むようにしたことを特徴とする光ファイバ多孔質母材の製造装置。
【請求項2】
前記気流規制部材は、前記バーナーの先端部に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ多孔質母材の製造装置。
【請求項3】
前記気流規制部材は、前記バーナーを内包するように、前記反応容器内に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ多孔質母材の製造装置。
【請求項4】
前記気流規制部材は、筒状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光ファイバ多孔質母材の製造装置。
【請求項5】
前記バーナーは、光ファイバのコア部を合成するコア合成用バーナーであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光ファイバ多孔質母材の製造装置。
【請求項6】
光ファイバ多孔質母材の製造方法において、
原料ガス、可燃ガス、助燃ガス及び緩衝ガスを合流してバーナーに供給し、出発材の外周にガラス微粒子を合成する際に、前記バーナーの外周を囲うように形成した気流規制部材内に、前記出発材または合成中の光ファイバ多孔質母材の下端が入り込むようにすることを特徴とする光ファイバ多孔質母材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ多孔質母材の製造装置
及び光ファイバ多孔質母材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石英ガラス系光ファイバは、通常は石英ガラスからなる光ファイバ母材を線引きして製造される。この光ファイバ母材を製造する際には、VAD(Vapor−phase Axial Deposition)法、OVD(Outside Vapor−phase Deposition)法、MCVD(Modified Chemical Vapor Deposition)法、プラズマ法等の方法が広く用いられている。これらの方法では、石英ガラスの原料ガスとして四塩化珪素(SiCl
4)のガスを用いることが一般的である。
【0003】
そして、合成装置において、バーナーを用いて、火炎により原料ガスを加水分解反応させ、これによってガラス微粒子を合成し、基材である出発材に堆積させて多孔質状のスートを形成することで、光ファイバ多孔質母材を製造する。光ファイバ多孔質母材は、焼結工程を行うことによって透明ガラス化され、線引きを行うための透明な光ファイバ母材となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−066998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
合成装置内では、装置自体の吸気や排気等によって様々な気流が生じ得る。しかしながら、合成装置内の気流によってバーナーの炎に揺らぎが生じると、出発材に堆積されたガラス微粒子の層にムラが発生しやすくなる。このようなムラが生じると、光ファイバ多孔質母材から最終的な光ファイバの特性を予測しようとした場合に、その予測特性と実際の光ファイバの特性とに差異が生じやすくなるといった問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ガラス微粒子の堆積のムラを低減し、光ファイバ多孔質母材から予測した光ファイバの予測特性の精度を向上させることができる光ファイバ多孔質母材の製造装置
及び光ファイバ多孔質母材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る光ファイバ多孔質母材の製造装置は、反応容器と、前記反応容器内に設けられたバーナーと、前記バーナーに原料ガス及び可燃ガスを供給するガス供給部と、を備え、前記反応容器内において、前記バーナーから前記可燃ガス及び前記原料ガスを含むガスを供給し、前記ガスの反応によって生じる微粒子を堆積させて多孔質母材を形成する光ファイバ多孔質母材の製造装置であって、前記バーナーが放射する火炎に向かう気流を規制する気流規制部材を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の一態様に係る光ファイバ多孔質母材の製造装置は、上記の発明において、前記気流規制部材は、前記バーナーの先端部に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の一態様に係る光ファイバ多孔質母材の製造装置は、上記の発明において、前記気流規制部材は、前記バーナーを内包するように、前記反応容器内に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の一態様に係る光ファイバ多孔質母材の製造装置は、上記の発明において、前記気流規制部材は、筒状であることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の一態様に係る光ファイバ多孔質母材の製造装置は、上記の発明において、前記気流規制部材の開口端から該気流規制部材内に、出発材又は合成中の光ファイバ多孔質母材の下端が入り込むように、前記気流規制部材を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の一態様に係る光ファイバ多孔質母材の製造装置は、上記の発明において、前記バーナーは、光ファイバのコア部を合成するコア合成用バーナーであることを特徴とするものである。
本発明に係る光ファイバ多孔質母材の製造方法は、光ファイバ多孔質母材の製造方法において、原料ガス、可燃ガス、助燃ガス及び緩衝ガスを合流してバーナーに供給し、出発材の外周にガラス微粒子を合成する際に、前記バーナーの外周を囲うように形成した気流規制部材内に、前記出発材または合成中の光ファイバ多孔質母材の下端が入り込むようにすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る光ファイバ多孔質母材の製造装置
及び光ファイバ多孔質母材の製造方法においては、バーナーが放射する火炎に向かう気流を規制する気流規制部材によって、反応容器内の気流がバーナーから放射された火炎に影響を及ぼすことを規制することができる。これにより、バーナーの火炎の揺らぎが抑えられ、出発材に堆積された微粒子の層にムラができるのを抑制することができる。よって、本発明に係る光ファイバ多孔質母材の製造装置
及び光ファイバ多孔質母材の製造方法は、光ファイバ多孔質母材から予測した光ファイバの予測特性の精度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態に係る光ファイバ多孔質母材の製造装置の構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、構成例1に係る合成装置のバーナー及びその近傍の一例を示した模式図である。
【
図3】
図3は、構成例2に係る合成装置のバーナー及びその近傍の一例を示した模式図である。
【
図4】
図4は、構成例2に係る合成装置のバーナー及びその近傍の他例を示した模式図である。
【
図5】
図5は、構成例3に係る合成装置のバーナー及びその近傍の一例を示した模式図である。
【
図6】
図6は、構成例3に係る合成装置のバーナー及びその近傍の他例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る光ファイバ多孔質母材の製造装置
及び光ファイバ多孔質母材の製造方法の一実施形態について説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0016】
図1は、実施形態に係る光ファイバ多孔質母材Pの製造装置の構成を示す模式図である。この製造装置100は、VAD法によって、出発材Tにガラス微粒子を堆積させてスートSを形成し、光ファイバ多孔質母材Pを製造する装置であって、原料供給装置10と、原料気化装置20と、ガス供給装置30と、合成装置40と、原料液輸送配管群50と、原料ガス輸送配管群60と、ガス輸送配管群70と、断熱材80と、を備えている。
【0017】
原料供給装置10は、石英系ガラス光ファイバの原料となり、常温常圧では液体である四塩化珪素又はシロキサンと、四塩化ゲルマニウムと、を原料液毎に収容し、原料気化装置20に供給する装置である。原料液輸送配管群50は、複数の配管で構成されており、各配管で各原料液を原料気化装置20に輸送する。
【0018】
原料気化装置20は、各原料液を収容するための複数の原料容器と、各原料液を加熱して気化するための複数のヒータと、各原料液の沸点を下げるために各原料容器の内部を減圧するための複数の減圧器と、複数のマスフローコントローラを備えている。
【0019】
各ヒータは、原料液輸送配管群50で輸送され、各原料容器に収容された原料液を、加熱して気化する。各ヒータは、原料液が四塩化珪素や四塩化ゲルマニウムである場合は、100[℃]程度まで原料液を加熱することができることが好ましく、原料液がシロキサンである場合は、200[℃]程度まで原料液を加熱することができることが好ましい。また、各減圧器は、対応する原料容器内を0.1気圧(101.3[hPa])程度まで減圧できるものを用いることが好ましい。各原料容器は、気化した原料が漏出しないように密閉性が高いものであり、対応する減圧器による減圧に耐え得る程度の強度を有したものである。
【0020】
原料ガス輸送配管群60は、本実施形態では2つの原料ガス輸送配管で構成されており、各配管で各原料ガスを原料気化装置20から輸送する。各原料ガスの流量は原料気化装置20の各マスフローコントローラで調整される。なお、各マスフローコントローラも、そこで各原料ガスが液化しないような温度に保温されていることが好ましい。断熱材80は、原料ガス輸送配管群60を一括して覆うように設けられている。
【0021】
ガス供給装置30は、光ファイバ多孔質母材Pの製造に用いる原料ガス以外のガス(非原料ガス)を合成装置40に供給する装置である。ガス供給装置30が供給する非原料ガスは、燃焼ガスや緩衝ガス(シールガス)である。燃焼ガスは、水素(H
2)ガス等の可燃ガス、酸素(O
2)ガス等の助燃ガスである。緩衝ガスはアルゴン(Ar)ガス等の不活性ガスである。ガス輸送配管群70は、複数の配管で構成されており、各配管(燃焼ガス輸送配管や緩衝ガス輸送配管)で各非原料ガスを合成装置40に輸送する。各非原料ガスの流量はガス供給装置30のマスフローコントローラで調整される。
【0022】
合成装置40は、原料ガス輸送配管群60と、燃焼ガス輸送配管を含むガス輸送配管群70とが接続されている。合成装置40は、反応容器41と、バーナー42,43と、排出口45と、を有する。反応容器41は、ガラス微粒子を堆積させる出発材Tを収容可能に構成されている。また、合成装置40は、出発材Tを保持し、回転させながら引き上げる引き上げ機構を備えている。出発材Tは、例えば純度の高い石英ガラス棒である。なお、反応容器41にはエアー等の吸気口(図示しない)を設けてもよい。
【0023】
バーナー42,43は、反応容器41内に設けられており、原料気化装置20及びガス供給装置30から供給されたガラス原料ガス及び燃焼ガスからガラス微粒子を合成する合成用バーナーである。バーナー42は、コア合成用バーナーであり、出発材Tの外周に堆積して光ファイバのコア部となる内側スートを構成するガラス微粒子を合成する。バーナー42には、原料気化装置20及びガス供給装置30から原料ガス輸送配管群60及びガス輸送配管群70によって輸送された、四塩化珪素ガス、四塩化ゲルマニウムガス、可燃ガス、助燃ガス、緩衝ガスが一旦合流されてから供給される。バーナー43は、クラッド合成用バーナーであり、内側スートの外周に堆積して光ファイバのクラッド部となる外側スートを構成するガラス微粒子を合成する。バーナー43には、原料気化装置20及びガス供給装置30から原料ガス輸送配管群60及びガス輸送配管群70によって輸送された、四塩化珪素ガス、可燃ガス、助燃ガス、緩衝ガスが一旦合流されてから供給される。これらのガスの火炎中の加水分解反応によって、ガラス微粒子が合成され、出発材Tに向けて吹き付けられて堆積し、内側スートと外側スートとが形成され、スートSとなる。なお、合成されたものの堆積しなかったガラス微粒子は、排出口45から排出される。
【0024】
[構成例1]
図2は、構成例1に係る合成装置40のバーナー42及びその近傍の一例を示した模式図である。構成例1に係る合成装置40においては、バーナー42の先端部の外周に、バーナー42が放射する火炎に向かう気流を規制する円筒状の気流規制部材90が設けられている。この気流規制部材90は、耐熱性を有する石英製や金属製、金属にコーティングを施した材料等によって構成されている。出発材Tに対するバーナー42の位置は固定されており、気流規制部材90の出発材T側で開口した開口端90Aにおける径方向中心位置から出発材Tの下端位置までの距離Xが、0[mm]≦X≦300[mm]、好ましくは、X=0[mm]となるように気流規制部材90を設ける。
【0025】
このように、バーナー42の先端部の外周に円筒状の気流規制部材90を設けることによって、合成装置40の反応容器41内で生じた気流が、バーナー42から放射された火炎に影響を及ぼすことを気流規制部材90によって規制することができる。これにより、バーナー42の火炎が気流によって大きく揺らぐことを抑制できる。よって、光ファイバのコア部となる内側スートを構成するガラス微粒子を合成する際に、バーナー42から放射される火炎を安定させることができる。したがって、出発材Tに堆積されたガラス微粒子の層(内側スート)にムラができるのを抑制し、光ファイバ多孔質母材Pから予測した光ファイバの予測特性の精度を向上させることができる。その結果、光ファイバの特性の安定化を図ることができる。
【0026】
なお、気流規制部材90は、バーナー42に着脱可能なように設けられても良いし、溶接等によってバーナー42と一体化して設けても良い。
【0027】
[構成例2]
図3は、構成例2に係る合成装置40のバーナー42及びその近傍の一例を示した模式図である。構成例2に係る合成装置40においては、バーナー42の先端部の外周に、バーナー42が放射する火炎に向かう気流を規制する、段階的に径が異なる円筒状の気流規制部材91が設けられている。気流規制部材91は、バーナー42の先端部の外径とほぼ同径の内径を有し、バーナー42の先端部に取り付けられた小径部91aと、小径部91aよりも出発材T側に位置し、小径部91aよりも大きい内径を有する大径部91cと、小径部91aと大径部91cとを繋ぐテーパー部91bとで構成されている。また、気流規制部材91は、耐熱性を有する石英製や金属製、金属にコーティングを施した材料等によって構成されている。
【0028】
構成例2に係る合成装置40においては、出発材Tに対するバーナー42の位置が固定されており、出発材Tと気流規制部材91とが、気流規制部材91の出発材T側で開口した開口端91Aから大径部91c内に出発材Tの下端が入り込むような位置関係となるように、気流規制部材91を設けることができる。この際、気流規制部材91の開口端91Aにおける径方向中心位置から出発材Tの下端位置までの距離Xは、X<0[mm]、すなわち、マイナスの値となる。
【0029】
図4は、構成例2に係る合成装置40のバーナー42及びその近傍の他例を示した模式図である。構成例2に係る合成装置40においては、
図4に示すように、合成中の光ファイバ多孔質母材P(スートS)と気流規制部材91とが、気流規制部材91の開口端91Aから大径部91c内に合成中の光ファイバ多孔質母材P(スートS)の下端が入り込むような位置関係となるように、気流規制部材91を設けるのが望ましい。この際、気流規制部材91の開口端91Aにおける径方向中心位置から合成中の光ファイバ多孔質母材P(スートS)の下端位置までの距離Yは、Y<0[mm]、すなわち、マイナスの値となる。
【0030】
構成例2に係る合成装置40のように、気流規制部材91の開口端91Aから大径部91c内に出発材T又は合成中の光ファイバ多孔質母材P(スートS)の下端を入り込ませて、距離X又は距離Yをマイナスの値とすることにより、反応容器41内で生じた気流がバーナー42から放射された火炎に影響を及ぼすことを気流規制部材91によって、より確実に規制することができる。これにより、バーナー42の火炎が気流によって揺らぐのが抑えられ、光ファイバのコア部となる内側スートを構成するガラス微粒子を合成する際に、バーナー42から放射される火炎を安定させることができる。よって、出発材Tに堆積されたガラス微粒子の層(内側スート)にムラができるのを抑制し、光ファイバ多孔質母材Pから予測した光ファイバの予測特性の精度を向上させることができる。その結果、光ファイバの特性の安定化を図ることができる。
【0031】
なお、気流規制部材91は、バーナー42に着脱可能なように設けられても良いし、溶接等によってバーナー42と一体化して設けても良い。また、バーナー42の先端部の外周に、円筒状のフードを設けて、そのフードを気流規制部材91の小径部91aに替えて用い、フードに気流規制部材91のテーパー部91bを接続するようにしても良い。
【0032】
[構成例3]
図5は、構成例3に係る合成装置40のバーナー42及びその近傍の一例を示した模式図である。構成例3に係る合成装置40においては、バーナー42が放射する火炎に向かう気流を規制する筒状の気流規制部材92が、バーナー42を内包するように、バーナー42とは異なる合成装置40内に設けられた構造体に取り付けられている。気流規制部材92は、耐熱性を有する石英製や金属製、金属にコーティングを施した材料等によって構成されている。なお、気流規制部材92の形状としては、円筒状でも良いし角筒状でも良い。
【0033】
構成例3に係る合成装置40においては、バーナー42の先端部の外周に、石英製や金属製、金属にコーティングを施した材料等で構成された円筒状のフード46が設けられている。このフード46の出発材T側で開口した開口端46Aは、バーナー42の先端よりも出発材T側に位置している。このフード46の開口端46Aよりも出発材T側に、気流規制部材92の出発材T側で開口した開口端92Aが位置している。
【0034】
構成例3に係る合成装置40においては、気流規制部材92の開口端92Aにおける径方向中心位置から出発材Tの下端位置までの距離Xを、X≦0[mm]とするのが好ましい。例えば、距離X<0[mm]の場合には、出発材Tと気流規制部材92とが、気流規制部材92の開口端92Aから気流規制部材92内に出発材Tの下端が入り込むような位置関係となるように、気流規制部材92を設ければ良い。
【0035】
図6は、構成例3に係る合成装置40のバーナー42及びその近傍の他例を示した模式図である。構成例3に係る合成装置40においては、
図6に示すように、気流規制部材92の開口端92Aにおける径方向中心位置から合成中の光ファイバ多孔質母材P(スートS)の下端位置までの距離Yを、X≦0[mm]とするのが好ましい。例えば、距離Y<0[mm]の場合には、合成中の光ファイバ多孔質母材P(スートS)と気流規制部材92とが、気流規制部材92の開口端92Aから気流規制部材92内に合成中の光ファイバ多孔質母材P(スートS)の下端が入り込むような位置関係となるように、気流規制部材92を設ければ良い。
【0036】
構成例3に係る合成装置40のように、合成装置40内に設けられた構造体に気流規制部材92を取り付けて、バーナー42の周囲を囲むことによって、反応容器41内で生じた気流が、バーナー42から放射された火炎に影響を及ぼすことを気流規制部材92によって規制することができる。これにより、バーナー42の火炎が気流によって揺らぐことを抑制できる。よって、光ファイバのコア部となる内側スートを構成するガラス微粒子を合成する際に、バーナー42から放射される火炎を安定させることができる。したがって、出発材Tに堆積されたガラス微粒子の層(内側スート)にムラができるのを抑制し、光ファイバ多孔質母材Pから予測した光ファイバの予測特性の精度を向上させることができる。その結果、光ファイバの特性の安定化を図ることができる。
【0037】
なお、
図5及び
図6の構成例3に係る合成装置40では、フード46が設けられた例を示したが、フードは必ずしも設けなくても良い。
【0038】
これまで本実施形態においては、光ファイバのコア部となる内側スートを構成するガラス微粒子を合成するためのコア合成用バーナーであるバーナー42に対応させて気流規制部材90,91,92を設ける場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、光ファイバのクラッド部となる外側スートを構成するガラス微粒子を合成するためのクラッド合成用バーナーであるバーナー43に対応させて気流規制部材90,91,92を設けても良い。
【符号の説明】
【0039】
10 原料供給装置
20 原料気化装置
30 ガス供給装置
40 合成装置
41 反応容器
42,43 バーナー
45 排出口
46 フード
50 原料液輸送配管群
60 原料ガス輸送配管群
70 ガス輸送配管群
80 断熱材
90,91,92 気流規制部材