特許第6979989号(P6979989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6979989有機無機複合多孔層を含む二次電池用セパレータ及びこの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979989
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】有機無機複合多孔層を含む二次電池用セパレータ及びこの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/403 20210101AFI20211202BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20211202BHJP
   H01M 50/411 20210101ALI20211202BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20211202BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20211202BHJP
   H01M 50/431 20210101ALI20211202BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20211202BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20211202BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20211202BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20211202BHJP
   H01M 50/42 20210101ALN20211202BHJP
【FI】
   H01M50/403 D
   H01M10/0566
   H01M50/411
   H01M50/417
   H01M50/426
   H01M50/431
   H01M50/443 B
   H01M50/443 C
   H01M50/443 E
   H01M50/443 M
   H01M50/446
   H01M50/451
   H01M50/489
   !H01M50/42
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-182580(P2019-182580)
(22)【出願日】2019年10月3日
(62)【分割の表示】特願2017-520889(P2017-520889)の分割
【原出願日】2015年10月26日
(65)【公開番号】特開2020-74277(P2020-74277A)
(43)【公開日】2020年5月14日
【審査請求日】2019年10月3日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0145532
(32)【優先日】2014年10月24日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109841
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 健史
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジュ−スン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジ−ウン
(72)【発明者】
【氏名】ユ,イン−ギョン
(72)【発明者】
【氏名】ジン,サン−ミ
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ダ−キョン
【審査官】 川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/008003(WO,A1)
【文献】 特開2007−087881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40−50/497
H01M 10/00−10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池用多孔性セパレータであって、
気孔を有する高分子多孔性基材と、
前記高分子多孔性基材の少なくとも片面に形成される有機無機複合多孔層とを備えてなり、
前記有機無機複合多孔層が、無機物粒子、バインダー高分子粒子、及び吸着性高分子バインダーを備えてなるものであり、
前記無機物粒子が、前記吸着性高分子バインダーによって表面の少なくとも一部が覆われたものであり、
前記無機物粒子及び前記バインダー高分子粒子の平均粒径が、前記多孔性基材の気孔の平均直径よりも大きく、
前記無機物粒子の平均粒径が、200nm〜700nmであり、
前記バインダー高分子粒子は、粘着特性を有し、
前記多孔性高分子基材と前記有機無機複合多孔層とを結着するものであり、
前記有機無機複合多孔層から前記無機物粒子及び/又は前記バインダー高分子粒子が脱離しないように固定するものであり、或いは、
前記多孔性高分子基材と前記有機無機複合多孔層とを結着し、前記有機無機複合多孔層から前記無機物粒子及び/又は前記バインダー高分子粒子が脱離しないように固定するものであり、
前記吸着性高分子バインダーは、粘着成分の高分子であり、前記無機物粒子の表面に吸着し、前記無機物粒子の表面の一部又は全部を被覆するものであり、
前記吸着性高分子バインダーは、回転半径が前記無機物粒子の平均直径(D50)の1/100以上1/4以下であることを特徴とする、二次電池用多孔性セパレータ。
【請求項2】
前記吸着性高分子バインダーは、回転半径が50nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池用多孔性セパレータ。
【請求項3】
前記有機無機複合多孔層は、前記無機物粒子及び前記バインダー高分子粒子が充填された構造であり、
前記充填された無機物粒子及び/又はバインダー高分子粒子によるインタースティシャルボリウムによって形成された気孔を有する多孔性構造であることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池用多孔性セパレータ。
【請求項4】
前記バインダー高分子粒子の平均粒径が、最小20nmであることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池用多孔性セパレータ。
【請求項5】
前記バインダー高分子粒子の平均粒径が、50nm〜1000nmであることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用多孔性セパレータ。
【請求項6】
前記バインダー高分子粒子が、乳化重合によって形成された高分子重合微粒子であることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池用多孔性セパレータ。
【請求項7】
前記無機物粒子が、二次電池の作動電圧範囲内で酸化及び/又は還元反応が起こらないことを特徴とする、請求項1に記載の二次電池用多孔性セパレータ。
【請求項8】
前記無機物粒子が、イオン伝達能力を有する無機物粒子及び/又は誘電率が5以上である高誘電率無機物粒子であることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池用多孔性セパレータ。
【請求項9】
二次電池であって、
負極、正極、前記負極と前記正極との間に介されたセパレータ、及び電解液を備えてなるものであり、
前記セパレータが、気孔を有する高分子多孔性基材と、
前記高分子多孔性基材の少なくとも片面に形成される有機無機複合多孔層とを備えてなるものであり、
前記有機無機複合多孔層が、無機物粒子及びバインダー高分子粒子を備えてなり、
前記無機物粒子が、吸着性高分子バインダーによって表面の少なくとも一部が覆われたものであり、
前記無機物粒子及び前記バインダー高分子粒子の平均粒径が、前記多孔性基材の気孔の平均直径よりも大きく、
前記無機物粒子の平均粒径が、200nm〜700nmであり、
前記バインダー高分子粒子は、粘着特性を有し、
前記多孔性高分子基材と前記有機無機複合多孔層とを結着するものであり、
前記有機無機複合多孔層から前記無機物粒子及び/又は前記バインダー高分子粒子が脱離しないように固定するものであり、或いは、
前記多孔性高分子基材と前記有機無機複合多孔層とを結着し、前記有機無機複合多孔層から前記無機物粒子及び/又は前記バインダー高分子粒子が脱離しないように固定するものであり、
前記吸着性高分子バインダーは、粘着成分の高分子であり、前記無機物粒子の表面に吸着し、前記無機物粒子の表面の一部又は全部を被覆するものであり、
前記吸着性高分子バインダーは、回転半径が前記無機物粒子の平均直径(D50)の1/100以上1/4以下であることを特徴とする、二次電池。
【請求項10】
前記吸着性高分子バインダーが、回転半径が50nm以下であることを特徴とする、請求項9に記載の二次電池。
【請求項11】
前記有機無機複合多孔層は、前記無機物粒子及び前記バインダー高分子粒子が充填された構造であり、前記充填された無機物粒子及び/又はバインダー高分子粒子によるインタースティシャルボリウムによって形成された気孔を有する多孔性構造であることを特徴とする、請求項9に記載の二次電池。
【請求項12】
前記バインダー高分子粒子の平均粒径が、50nm〜1000nmであることを特徴とする、請求項9に記載の二次電池。
【請求項13】
二次電池用多孔性セパレータの製造方法であって、
(S10)気孔を有する高分子多孔性基材を準備する段階と、
(S20)吸着性高分子バインダーを溶媒に投入して溶解させる段階と、
(S30)前記S20段階の結果物に無機物粒子を添加して分散させる段階と、
(S40)前記S30段階の結果物にバインダー高分子粒子を投入して有機無機複合多孔層形成用スラリーを製造する段階と、
(S50)前記S40段階のスラリーを、S10段階で準備した多孔性基材に塗布し乾燥する段階とを含んでなるものであり、
前記S50段階で形成された有機無機複合多孔層が、無機物粒子及びバインダー高分子粒子を備えてなるものであり、前記無機物粒子及び前記バインダー高分子粒子が充填された構造であり、前記充填された無機物粒子及び/又はバインダー高分子粒子によるインタースティシャルボリウムによって形成された気孔を有する多孔性構造であり、
前記無機物粒子及び前記バインダー高分子粒子の平均粒径が、前記多孔性基材の気孔の平均直径よりも大きく、
前記無機物粒子の平均粒径が、200nm〜700nmであり、
前記バインダー高分子粒子は、粘着特性を有し、
前記多孔性高分子基材と前記有機無機複合多孔層とを結着するものであり、
前記有機無機複合多孔層から前記無機物粒子及び/又は前記バインダー高分子粒子が脱離しないように固定するものであり、或いは、
前記多孔性高分子基材と前記有機無機複合多孔層とを結着し、前記有機無機複合多孔層から前記無機物粒子及び/又は前記バインダー高分子粒子が脱離しないように固定するものであり、
前記吸着性高分子バインダーは、粘着成分の高分子であり、前記無機物粒子の表面に吸着し、前記無機物粒子の表面の一部又は全部を被覆するものであることを特徴とする、二次電池用多孔性セパレータの製造方法。
【請求項14】
前記バインダー高分子粒子の平均粒径が、50nm〜1000nmであることを特徴とする、請求項13に記載の二次電池用多孔性セパレータの製造方法。
【請求項15】
前記高分子粒子は、ポリエチレン系高分子粒子、ポリプロピレン系高分子粒子、ポリビニリデンフルオライド系高分子粒子、ポリビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系高分子粒子、ポリスチレン系高分子粒子、ポリアクリル系高分子粒子及びこれらの共重合体からなる群より選択された一種又は二種以上の混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池用多孔性セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池のような電気化学素子に用いられるセパレータ及びこの製造方法に関し、より詳しくは、通気性が向上した有機無機複合多孔層を備える多孔性セパレータ及びこの製造方法に関する。
【0002】
〔関連出願〕
本願は、2014年10月24日出願の韓国特許出願第10−2014−0145532号に基づく優先権を主張し、この特許出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本願に援用される。
【背景技術】
【0003】
二次電池は、正極/負極/分離膜/電解液を基本にして構成され、化学エネルギーと電気エネルギーとが可逆的に変換することにより充放電が可能となり、エネルギー密度が高いエネルギー貯蔵体である。前記二次電池は、携帯電話、ノートブックPCなどの小型電子機器を始め、電気自動車(hybrid electric vehicles,HEV)及びエネルギー貯蔵システム(Energy storage system,ESS)への応用が急速に増加しつつある。
【0004】
二次電池は、セパレータによって絶縁化している安定した電気化学素子であるが、内部または外部における電池の異常現象や衝撃から正極と負極との短絡が発生してしまい、発熱及び爆発の可能性があるため、絶縁体としての分離膜の熱的/化学的安全性の確保は、最も重要に考慮しなくてはならない事項である。
【0005】
しかし、ポリオレフィンなどの高分子素材のセパレータは、高温における熱収縮率が高く、デンドライト成長による破断の危険がある。このような問題を解消するために、多孔性分離膜基材の片面または両面に、無機物粒子をバインダーとともにコーティングすることで、セパレータを破断危険から保護し、熱収縮を防止するコーティング分離膜が開示されている。
【0006】
前記コーティング分離膜について、韓国登録特許第10−0775310号などによれば、有機溶媒に高分子樹脂バインダー及び無機物粒子を添加して有機無機スラリー(PVDF−CTFE/BaTiO3またはPVDF−CTFE/Al23)を製造し、これを
多孔性基材にコーティングすることで有機無機複合多孔層が形成されたセパレータを製造する。この工程で、粉末型無機物粒子間の良好な接着性を提供するために、PVDF−CTFEのようなバインダー樹脂を溶媒に溶解したバインダー溶液が用いられる。
【0007】
しかし、この場合、多孔性基材の気孔の内部にバインダー溶液の浸透が容易となることから、無機物と多孔性基材の表面との十分な接着力を確保するために多量のバインダーを用いる必要があり、電池性能が低下する恐れがある。図2は、従来の複合多孔層を備えるセパレータを示したが、図示した例のように有機溶剤に溶解したバインダー樹脂が多孔性基材の気孔に侵透してしまい、多孔性基材の気孔が閉塞するという問題が発生しやすい。また、スラリー内のバインダーの濃度が高くなる場合、スラリーの粘度が非常に高くなるため、薄膜の有機無機複合層の製造を困難にし、乾燥過程において高い温度を要し得る。さらに、スラリーの粘度を低く維持する場合、多孔性基材との接着力や無機物間の接着力が低くなり、無機物粒子が脱離しやすいという不具合が発生し得る。
【0008】
有機溶媒に基づく工程は、乾燥時、臨界爆発限界から乾燥ラインの乾燥ゾーン(dry
zone)が長くなるしかないため、スラリーの製造及び移送、コーティング工程における溶媒の蒸発によるスラリーの濃度変化及びレオロジー的性質が変わることによって、最終製品のコーティング品質に影響を及ぼし得る。
【0009】
また、多孔性基材と有機無機複合多孔層との接着力を向上させるために、韓国特許第10−1125013号には、水に溶けるイオン性高分子を用いる架橋型セラミックコーティング分離膜の製造方法が開示されている。この方法も、水に溶けるイオン性高分子を用いるが、水に分散していることではなく、完全に溶解するため、溶媒が閉じこめられる現象が避けられず、有機溶媒であるジエチルアセトアミド溶媒を水に対し15倍を用い、根本的に水系を用いたコーティング法を提示しておらず、基材との接着力の向上の目的から、コーティング後、化学架橋を誘導するためにスラリーの製造過程で架橋剤及び開始剤が有機溶媒とともに添加されなければならず、乾燥過程で20時間以上の熱処理またはUV処理が必須に求められる。
【0010】
しかし、スラリー溶液に架橋剤及び開始剤を添加する場合、多孔性基材に適用する前、コーティング溶液の保管及び移送過程で外部から加えられた熱及びエネルギーによって部分的に自体架橋が進み、スラリーの固化が進むことにより、最終的にコティング分離膜の均一性が低くなるという短所がある。また、乾燥時にも、長時間の熱処理及びUV処理が必要となるため、製造工程上、生産量が非常に制限的となり得、乾燥過程で高温/高エネルギーによって薄膜の多孔性基材が損傷し、物性及び通気度が低下し得るという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、通気性に優れた二次電池用セパレータ及びこの製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、バインダー及び/または増粘剤の含量調節によって通気度など、分離膜の固有特性を容易に調節できる製造方法を提供することを他の目的とする。
なお、本発明の他の目的及び長所は、下記する説明によって理解できるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段または方法、及びこの組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を達成するため、本発明は、バインダー高分子粒子を含む二次電池用多孔性セパレータを提供する。
【0013】
本発明の第1側面によれば、前記多孔性セパレータは、気孔を有する高分子多孔性基材と、前記高分子多孔性基材の少なくとも片面に形成される有機無機複合多孔層と、を含む。ここで、前記有機無機複合多孔層は、無機物粒子、バインダー高分子粒子及び吸着性高分子バインダーを含み、前記無機物粒子は、前記吸着性高分子バインダーによって表面の少なくとも一部が覆われたものである。
【0014】
本発明の第2側面によれば、前記第1側面において、前記吸着性高分子バインダーの最大回転半径(radius of gyration)が、前記無機物粒子の平均直径(D50)の1/100以上1/4以下である。
本発明の第3側面によれば、前記第2側面において、前記吸着性高分子バインダーの最大回転半径が50nm以下である。
【0015】
本発明の第4側面によれば、前記第1〜第3側面のうちいずれか一側面において、前記有機無機複合多孔層は、前記無機物粒子及び前記バインダー高分子粒子が充填された構造
であり、前記充填された無機物粒子及び/またはバインダー高分子粒子によるインタースティシャルボリウム(interstitial volume)によって形成された気孔を有する多孔性構造である。
【0016】
本発明の第5側面によれば、前記第1〜第4側面のうちいずれか一側面において、前記無機物粒子及びバインダー高分子粒子の平均粒径が、前記多孔性基材の気孔の平均直径よりも大きい。
【0017】
本発明の第6側面によれば、前記第1〜第5側面のうちいずれか一側面において、前記無機物粒子及びバインダー高分子粒子の平均粒径が、最小20nmである。
【0018】
本発明の第7側面によれば、前記第1〜第6側面のうちいずれか一側面において、前記バインダー高分子粒子は、乳化重合によって形成された高分子重合微粒子である。
【0019】
本発明の第8側面によれば、前記第1〜第7側面のうちいずれか一側面において、前記無機物粒子は、二次電池の作動電圧範囲内で酸化及び/または還元反応が起こらない。
【0020】
本発明の第9側面によれば、前記第8側面において、前記無機物粒子は、イオン伝達能力を有する無機物粒子及び/または誘電率定数が5以上である高誘電率無機物粒子である。
【0021】
本発明の第10側面は二次電池に関する。前記二次電池は、負極、正極、前記負極と正極との間に介されたセパレータ及び電解液を含み、前記セパレータは、気孔を有する高分子多孔性基材と、前記高分子多孔性基材の少なくとも片面に形成される有機無機複合多孔層と、を含み、ここで、前記有機無機複合多孔層は、無機物粒子及びバインダー高分子粒子を含み、前記無機物粒子は、吸着性高分子バインダーによって表面の少なくとも一部が覆われている。
【0022】
本発明の第11側面によれば、第10側面において、前記吸着性高分子バインダーの最大回転半径が、前記無機物粒子の平均直径(D50)の1/100以上1/4以下である。
【0023】
本発明の第12側面によれば、前記第11側面において、前記吸着性高分子バインダーの最大回転半径は50nm以下である。
【0024】
本発明の第13側面によれば、前記第10〜第12側面のうちいずれか一側面において、前記有機無機複合多孔層は、前記無機物粒子及び前記バインダー高分子粒子が充填された構造であり、前記充填された無機物粒子及び/またはバインダー高分子粒子によるインタースティシャルボリウムによって形成された気孔を有する多孔性構造である。
【0025】
本発明の第14側面によれば、前記第10〜第13側面のうちいずれか一側面において、前記無機物粒子及びバインダー高分子粒子の平均粒径が、前記多孔性基材の気孔の平均直径よりも大きい。
【0026】
本発明の第15側面は、二次電池用多孔性セパレータの製造方法に関する。前記製造方法は、下記の段階S10〜S50を含み、ここで、S50段階で形成された有機無機複合多孔層が、無機物粒子及びバインダー高分子粒子を含み、前記無機物粒子及び前記バインダー高分子粒子が充填された構造であり、前記充填された無機物粒子及び/またはバインダー高分子粒子によるインタースティシャルボリウムによって形成された気孔を有する多孔性構造である。
即ち、前記製造方法は、
(S10)気孔を有する高分子多孔性基材を準備する段階
(S20)吸着性高分子バインダーを溶媒に投入して溶解させる段階
(S30)前記S20段階の結果物に無機物粒子を添加して分散させる段階
(S40)前記S30段階の結果物にバインダー高分子粒子を投入して有機無機複合多孔層形成用スラリーを製造する段階
(S50)前記S40段階のスラリーを、S10段階で準備した多孔性基材に塗布し乾燥する段階を含んでなるものである。
【0027】
本発明の第16側面によれば、前記第15側面において、前記無機物粒子及びバインダー高分子粒子の平均粒径が、前記多孔性基材の気孔の平均直径よりも大きい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の分離膜の製造方法によって製造された二次電池用分離膜は、分離膜の乾燥工程時、表面欠陥の発生が少ないことから、耐熱性及び機械的物性に優れている。また、有機無機複合多孔層においてバインダー高分子粒子が分離膜基材の気孔の内部へ侵透しないため、通気性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、詳細な説明とともに本発明の原理を説明するものであって、発明の範囲がこれに限定されることではない。なお、本発明に添付の図面における構成要素の形状、大きさ、縮尺または比率などは、より明確な説明のために誇張または省略することがある。
図1】本発明の二次電池用セパレータを製造する方法の順序を概略的に示した工程のフローチャートである。
図2】従来の有機無機複合多孔層を備えたセパレータの断面を概略的に示した図である。
図3】本発明の一実施様態による二次電池用セパレータの断面を図式化して示した概略図である。
図4】一軸延伸した乾式多孔性分離膜の気孔サイズを測る方法を例示した図である。
図5】比較例2で製造されたセパレータの有機無機複合多孔層の表面を示したSEMイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0031】
本発明は、二次電池用多孔性セパレータ、これを含む二次電池及び前記セパレータの製造方法に関する。
【0032】
本発明による二次電池用多孔性セパレータは、a)高分子素材からなる多孔性基材と、b)前記多孔性基材の片面または両面に形成され、複数の無機物粒子、吸着性高分子バインダー及び複数のバインダー高分子粒子を含む有機無機(有機物及び無機物)複合多孔層
と、を含む。本発明において、前記無機物粒子は、前記吸着性高分子バインダーによって表面の少なくとも一部が覆われ得る。前記有機無機複合多孔層は、セパレータの耐熱性及び物理的強度を向上させ、前記無機物粒子が粒子型バインダーによって結着するため、有機溶媒を用いた溶剤型バインダー樹脂溶液を用いて製造したセパレータに比べて通気性に優れている。
【0033】
本発明の具体的な一実施様態によれば、前記多孔性基材はフィルム形態の多孔性膜であって、負極及び正極を電気的に絶縁して短絡を防止しながらも、リチウムイオンの移動経路を提供できるものであって、通常の電気化学素子の分離膜素材として使用可能なものであれば、特に制限なく使用できる。このような多孔性基材としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエチレンナフタレンなどのような高分子化合物をそれぞれ単独または二種以上を混合して形成した膜やこれらの不織布が挙げられる。
【0034】
前記多孔性基材の厚さは、1μm〜100μmの範囲のものであり、望ましくは、1μm〜30μmである。最近、電池の高出力/高容量化が進むにつれ、多孔性基材は、薄膜を用いることが有利である。前記多孔性基材に存在する気孔の直径は、10nm〜100nm、または10nm〜70nm、または10nm〜50nm、または10nm〜35nmであり、気孔度は、5%〜90%、望ましくは20%〜80%に形成できる。但し、本発明において、このような数値範囲は、具体的な実施形態または必要に応じて適切に変更することができる。
【0035】
多孔性基材の気孔は多様な種類の気孔構造があり、ポロシメーター(porosimeter)を用いて測定された、またはFE−SEMで観察された気孔の平均サイズのいずれか一つでも前記提示条件を満たせば、本発明に含まれる。ここで、通常知られている一軸延伸の乾式分離膜の場合においては、FE−SEM像においてMD方向の気孔サイズではなく、TD方向の気孔サイズにおける中央の気孔サイズを基準とし(図4参照)、他にも網構造を有する多孔性基材(例えば、湿式PE分離膜)はポロシメーターで測定した気孔サイズを基準とすることができる。
【0036】
本発明によるセパレータは、前記多孔性基材の片面または両面に有機無機複合多孔層が形成されているものである。本発明において、前記有機無機複合多孔層は、無機物粒子及びバインダー高分子を含む。また、前記無機物粒子は、吸着性高分子バインダーによって表面の全部または一部が覆われ得る。
【0037】
前記有機無機複合多孔層の厚さは特に制限されないが、電池性能を考慮して調節することができる。本発明の具体的な一実施様態において、前記厚さは0.5μm〜50μmまたは1μm〜10μmの範囲である。電池特性または用途によって前記多孔層の厚さ範囲を調節することで電池性能の向上を図ることができる。
【0038】
前記有機無機複合多孔層は、無機物粒子及び/またはバインダー高分子粒子が相互接触して充填された構造を有する。望ましくは、前記無機物粒子及び/またはバインダー高分子は、前記複合多孔層内で均一に分散して分布する。 また、前記複合多孔層内には、前記無機物粒子及び/またはバインダー高分子粒子の間に形成されたインタースティシャルボリュームが形成される。前記インタースティシャルボリウムは、前記多孔層内に存在する粒子が相互接触して限定される空間であって、前記複合多孔層は、前記インタースティシャルボリウムによって形成される気孔によって多孔性特性を有する。
【0039】
本願発明の具体的な一実施様態によれば、前記有機無機複合多孔層の気孔サイズ及び気孔度は、主に無機物粒子の大きさに依る。例えば、粒径が500nm以下である無機物粒子を使う場合、形成される気孔も500nm以下となる。このような気孔構造は、後で注液する電解液で満たされ、このように満たされた電解液はイオン伝達の役割を果すようになる。したがって、前記気孔サイズ及び気孔度は、セパレータのイオン伝導度の調節において重要な影響因子となる。これを考慮すれば、本発明の有機無機複合多孔層の気孔サイズ及び気孔度(porosity)は、それぞれ10nm〜500nm、または10nm〜300nm、または10nm〜200nmであり、30%〜70%の範囲であることが望ましい。
【0040】
本発明の具体的な一実施様態によれば、前記有機無機複合多孔層において、前記有機成分と無機成分との混合割合は、無機成分100重量部に対し有機成分が1重量部〜7重量部であることが望ましい。本発明において、有機成分は、前記複合多孔層に含まれる有機成分であって、後述のバインダー高分子粒子及び吸着性高分子バインダーを総称する。また、無機成分は、前記多孔層に含まれる無機成分として無機物粒子を含む。前記複合多孔層において、前記有機成分の含量が1重量部未満の場合は、複合多孔層の接着力を確保しにくく、希望する水準の耐熱性を達成しにくい一方、有機成分の含量が増加しすぎる場合は、バインダー成分による抵抗上昇によって希望する通気時間を達成しにくい。
【0041】
本発明の具体的な一実施様態によれば、前記バインダー高分子粒子は、粘着特性を有するものであって、前記多孔性基材と有機無機複合多孔層との結着力を提供し、有機無機複合多孔層から無機物粒子及び/または前記バインダー高分子粒子が脱離しないように固定する役割を果す。
【0042】
本発明の具体的な一実施様態によれば、前記バインダー高分子粒子は、高分子の乳化重合方法によって形成された高分子微粒重合体であり得る。しかし、これに特に限定されることではない。
【0043】
前記乳化重合方法は、単量体、開始剤及び乳化剤を、水などの水系溶媒中で重合する方法であり、本発明が目的する高分子粒子を製造できる方法でれば、特に限定されない。例えば、所定量の乳化剤を溶媒と混合及び攪拌した後、昇温し、単量体を添加する。続いて、開始剤を添加して単量体の重合を誘導する。その後、これを数分ないし数時間保持して重合微粒子である高分子粒子を得ることができる。
【0044】
本発明において、前記粒子は、球形または類似球形の形状を有することができ、類似球形とは、楕円形を含む3次元的な体積を有するものであって、形態が特定されない無定形など、全ての形態の粒子を含む。もし、前記バインダー高分子粒子の球形度が1に近い形態を有すれば、複合多孔層の気孔確保に有利となり得る。
【0045】
本発明の具体的な一実施様態において、前記高分子粒子は、粘着性を有するものであって、ポリエチレン系高分子粒子、ポリプロピレン系高分子粒子、ポリビニリデンフルオライド系高分子粒子、ポリビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系高分子粒子、ポリスチレン系高分子粒子、ポリアクリル系高分子粒子及びこれらの共重合体からなる群より選択された一種または二種以上の混合物であり得る。
【0046】
本発明の具体的な一実施様態において、前記高分子粒子は、(メタ)アクリレート系高分子粒子であり得る。前記(メタ)アクリレート系高分子粒子を製造するために、前記単量体としては、炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体であることが望ましい。また、前記単量体としては、アリルエステル、ビニルエステル、
不飽和エステル基またはこれらの混合物、シアノ基を含む単量体、アミン基を含む単量体及びビニル基を有するスチレン系単量体からなる群より選択された一種以上の単量体をさらに含むことができる。また、本発明において、カルボキシ基及び/または水酸基を有する単量体をさらに含むことができる。
【0047】
また、本発明において、前記乳化剤及び/または開始剤の種類や投入量は、用いられる単量体の種類、希望するバインダー高分子粒子の大きさ及び/または粘着特性によって適切に選択することができる。例えば、前記乳化剤としては特に限定されないが、ソジウムポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェート、ソジウムラウリルサルフェート、ソジウムアルキルジフェニルオキシドジスルホネート、ソジウムジオキチルスルホスクシネートからなる群より選択された二種以上を含むことができる。
【0048】
本発明の具体的な一実施様態によれば、前記バインダー高分子粒子の大きさは、前記多孔性基材の気孔の大きさよりも大きい。または、前記バインダー高分子粒子の平均粒径は、前記多孔性基材の気孔の平均直径よりも大きい。または、前記バインダー高分子粒子の平均粒径は、50nm〜1,000nm、または100nm〜800nm、または100nm〜600nm、または100nm〜500nmである。
【0049】
従来は、複合多孔層の形成に際し、バインダー用高分子樹脂を有機溶媒と混合した溶剤型バインダー溶液を用いていた。しかし、前記溶剤型バインダー溶液は、優れた粘着特性を示すが、多孔性基材に塗布したときに多孔性基材の気孔に侵透し、セパレータの気孔度を低下させるという問題があった。
【0050】
本発明は、かかる問題点を解決するための目的を有するものであって、本発明は、多孔性基材の気孔サイズよりも大きい粒径を有する高分子粒子をバインダーとして用いるため、多孔性基材の気孔を閉塞(blocking)するという問題が発生せず、これによって、多孔性基材の表面に複合多孔層を形成したとき、多孔性基材に対する通気時間の上昇率が低いという長所がある。図3は、本発明によるセパレータの断面を図式化して概略的に示した図である。これによれば、本発明においては、溶剤型バインダー溶液を用いることなく有機高分子粒子をバインダーとして用いるため、前記粒子が多孔性基材の気孔に侵透しないことから多孔性基材の気孔度に影響を及ぼさず、投入された全量の有機高分子粒子が複合多孔層内に無機物粒子と混合して分布するため、溶剤型バインダーに比べて無機物粒子間の結着性が向上する効果がある。
【0051】
本発明の具体的な一実施様態によれば、前記無機物粒子は、電気化学的に安定すれば、特に制限されない。即ち、前記無機物粒子は、適用される電気化学素子の作動電圧範囲(例えば、Li/Li+基準で0〜5V)で酸化及び/または還元反応が起こらないもので
あれば、特に制限されない。特に、イオン伝達能力を有する無機物粒子を用いる場合、電気化学素子内のイオン伝導度を高めて性能の向上を図ることができる。また、無機物粒子として誘電率の高い無機物粒子を用いる場合、液体電解質内の電解質塩、例えば、リチウム塩の解離度増加に寄与して電解液のイオン伝導度を向上させることができる。
【0052】
前述の理由から、前記無機物粒子は、誘電率定数が5以上、または10以上である高誘電率無機物粒子、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子またはこれらの混合物を含むことができる。誘電率定数が5以上である無機物粒子の非制限的な例には、BaTiO3、Pb(Zr,Ti)O3(PZT)、Pb1-xLaxZr1-yTiy3(PLZT、ここ
で、0<x<1、0<y<1である。)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(PMN−PT)、ハフニア(HfO2)、SrTiO3、SnO2、CeO2、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO2、Y23、Al23、SiC、TiO2などをそれぞれ単独または二種以上を混合して用いることができる。特に、前述のBaTiO3、Pb(Zr,
Ti)O3(PZT)、Pb1-xLaxZr1-yTiy3(PLZT、ここで、0<x<1、0<y<1である。)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(PMN−PT)、ハフニア(HfO2)のような無機物粒子は、誘電率定数が100以上の高誘電率特性を示
すだけでなく、一定の圧力を印加して引張または圧縮する場合、電荷が発生して両面の間に電位差が発生する圧電性(piezoelectricity)を有することで、外部衝撃による負極及び正極の両極における内部短絡の発生を防止し、電気化学素子の安全性の向上を図ることができる。また、前述の高誘電率無機物粒子とリチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子とを混用する場合、これらの上昇効果は倍加し得る。
【0053】
本発明において、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子とは、リチウム元素を含み、リチウムを保存せずリチウムイオンを移動させる機能を有する無機物粒子を指称し、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子は、粒子構造の内部に存在する一種の欠陷(defect)によってリチウムイオンを伝達及び移動させることができるため、電池内のリチウムイオンの伝導度が向上し、これにより電池性能の向上を図ることができる。
【0054】
前記リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子の非制限的な例には、リチウムホスフェート(Li3PO4)、リチウムチタンホスフェート(LixTiy(PO43、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LixAlyTiz(PO43, 0<x<2、0<y<1、0<z<3)、14Li2O−9Al23−38TiO2−39P25などのような(LiAlTiP)xy系ガラス(0<x<4、0<y<1
3)、リチウムランタンチタネート(LixLayTiO3、0<x<2、0<y<3)、
Li3.25Ge0.250.754などのようなリチウムゲルマニウムチオホスフェート(LixGeyzw、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、Li3Nなどのようなリチウムニトライド(Lixy、0<x<4、0<y<2)、Li3PO4−Li2S−
SiS2などのようなSiS2系ガラス(LixSiyz、0<x<3、0<y<2、0<
z<4)、LiI−Li2S−P25などのようなP25系ガラス(Lixyz、0<x<3、0<y<3、0<z<7)またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0055】
本発明の一実施例による分離膜において、有機無機複合多孔層の無機物粒子の大きさは制限されないが、均一な厚さの多孔層の形成及び適切な孔隙率のために、200nm〜700nmの範囲であることが望ましい。前記無機物粒子の大きさがこのような範囲を満たす場合、分散性が維持されセパレータの物性を調節することが容易となり、有機無機複合多孔層の厚さが増加する現象を避けることができて機械的物性が改善でき、また、大きすぎる気孔の大きさにより、電池の充・放電時における内部短絡が起こる確率を低くすることができる。
【0056】
本発明の一実施様態において、前記複合多孔層は、吸着性高分子バインダーで表面の一部または全部が覆われた無機物粒子を含むことができる。
【0057】
前記吸着性高分子バインダーは粘着成分の高分子であって、前記バインダー高分子粒子が無機物粒子と接触してインタースティシャルボリウムに起因した気孔を形成することとは違って、無機物粒子の表面に吸着される。これによって、無機物表面を陰電荷で荷電して溶媒内において陰イオンの反発力で分散を容易にすることと共に、乾燥時における接着力を確保するのに役に立つ。
【0058】
このような吸着性高分子バインダーの非制限的な例には、水を溶媒にする場合、ソジウム−カルボキシメチルセルロース(Sodium carboxymethyl cellulose,Na−CMC)、ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol,PVA)などがあり、有機溶媒を使う場合は、シアノエチルポリビニルアルコール(Cyanoethyl polyvinyl alcohol)、ポリビニルブチラ
ル(Polyvinyl butyral,PVB)などが挙げられる。
【0059】
本発明において、前記吸着性高分子バインダーは、回転半径が無機物粒子の平均直径(D50)の1/100以上1/4以下であり得る。高分子の回転半径が大きいほど高分子の分子量が高くて高分子主鎖の長さが増加し、高分子主鎖の長さの長いほどこれらが絡み合う傾向が増加する。したがって、回転半径が大きい吸着性高分子バインダーを用いる場合、無機物粒子によって形成されるインタースティシャルボリウムが吸着性高分子バインダーの絡み合いによって閉塞し得、これは通気度低下の要因として作用し得る。このような問題点を防止するために、前記吸着性高分子バインダーは、回転半径が無機物粒子の直径よりも小さいことが望ましい。一方、無機物粒子の直径に対し回転半径が小さすぎる場合、吸着した高分子が無機物粒子の分散に役立てられないため、無機物粒子の平均直径(D50)の1/100以上であることが望ましい。本発明の具体的な一実施様態によれば、前記吸着性高分子バインダーの回転半径は、無機物粒子の1/4以下のものであり得る。例えば、無機物粒子の平均直径(D50)が500nmである場合、吸着性高分子バインダーの回転半径は、5nm以上125nm以下であることが望ましい。
【0060】
次に、本発明は、前記多孔性セパレータを製造する方法を提供する。
図1は、本発明による多孔性セパレータを製造する方法において、具体的な一実施様態を順序に従って概略的に示した工程のフローチャートである。
【0061】
前記図1を参照すれば、本発明のセパレータは、適切な溶媒を準備した後、吸着性高分子バインダーを溶解した後、吸着性高分子バインダーが溶解された溶液に、無機物粒子を添加して充分に混練して分散させ、最後にバインダー高分子粒子を添加して多孔性コーティング層用スラリーを準備し、準備されたスラリーを多孔性基材の上に塗布し乾燥することで形成される。
【0062】
本発明の具体的な一実施様態において、前記溶媒としては、バインダー高分子粒子が溶解しないものが望ましい。本発明の具体的な一実施様態によれば、前記溶媒は、例えば、水であり得る。
【0063】
本発明の具体的な一実施様態において、前記溶媒は、別に準備しなくてもよく、バインダー高分子粒子の水分散エマルションに、無機物粒子及び吸着性高分子バインダーを添加することでスラリーを製造することができる。
【0064】
本発明において、前記スラリーを、多孔性基材の上にコーティングする方法は、当業界に知られた通常のコーティング方法を用いることができ、例えば、ダイ(die)コーティング、ロール(roll)コーティング、ディップ(dip)コーティングなどの方法を用いることができる。
【0065】
このように前述の方法によって多孔性セパレータを製造することができるが、前記方法は、本発明の多孔性セパレータを製造する具体的な一実施様態であり、前述の特性を有する多孔性セパレータを得ることができれば、製造方法は特に限定されない。
【0066】
また、本発明は、前述の多孔性セパレータを含む電気化学素子を提供する。前記電気化学素子は、具体的には二次電池であり、高いエネルギー密度、放電電圧、及び出力安全性を有するリチウム二次電池であることが望ましく、その中でも電解液漏れの可能性が少なくて重量及び製造コストが少なく、多様な形態への製造が容易なリチウムイオン二次電池であることが最も望ましい。
【0067】
本発明によるリチウムイオン二次電池は、正極、負極、セパレータ及び電解液を含み、
前記セパレータは前述の内容によるものである。
【0068】
本発明の具体的な一実施様態において、前記正極は、例えば、正極集電体の上に正極活物質を塗布及び乾燥して製作され、バインダー及び導電材に加え、必要に応じて、正極の構成に関連する成分をさらに含むこともできる。
【0069】
前記正極集電体は、一般に、3〜500μmの厚さにする。このような正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ高い導電性を有するものであれば、特に制限されない。例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼性炭素、またはアルミニウムやステンレス鋼の表面に、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを用いることができる。 また、正極集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、網、多孔質体、発泡体、不織布体など、多様な形態のものを用いることができる。
【0070】
前記正極活物質は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化
物(LiNiO2)などの層状化合物や一つまたそれ以上の転移金属に置き換えられた化
合物;化学式Li1+xMn2-x4(ここで、xは、0〜0.33である。)、LiMnO3、LiMn23、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(Li2CuO2);LiV38、LiFe34、 V25、Cu227などのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-xx2(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、Bま
たはGaであり、x=0.01〜0.3である。)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物; 化学式LiMn2-xx2(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、Zn
またはTaであり、x=0.01〜0.1である。)またはLi2Mn3MO8(ここで、
M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである。)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンに置き換えられたLiMn24;ジサルファイド化合物;Fe2(MoO43などが挙げられるが、これらに限定されることで
はない。
【0071】
前記負極は、電流集電体の上に負極活物質及びバインダーを含む負極材料を塗布し、乾燥及び圧縮して製作され、必要に応じて、導電材及び充填材などの成分を選択的にさらに含むことができる。
【0072】
前記負極材料は、例えば、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LixFe23(0
≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)、SnxMe1-x Me’yz(Me:Mn、Fe
、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;スズ系合金;SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb23、Pb34、Sb23、Sb24、Sb25、GeO、GeO2、Bi23、Bi24、及び
Bi25などの金属酸化物;ポリアセンチレンなどの導電性高分子;Li−Co−Ni系材料などを用いることができる。
【0073】
前記電解液は、リチウム塩含有の非水系電解質であって、有機溶媒及びリチウム塩を含む。前記有機溶媒としては、例えば、 N−メチル−2−ピロリジノン、プロピレンカー
ボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ガンマ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(franc)、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキセン、ジエチルエーテル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ホルム酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性溶媒が用いられ得る。
【0074】
前記リチウム塩は、前記非水系電解液に溶解しやすい物質であって、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、LiSCN、LiC(CF3SO23、(CF3SO22NLi、クロロホウ酸リチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウム、イミドなどを用い得る。
【0075】
また、非水系電解液には、充放電特性、難燃性などの改善のために、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N−置換オキサゾリジノン、N,N−置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アムモニウム塩、ピロール、2−メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどをさらに添加することができる。場合によって、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含み得、高温保存特性を向上させるために二酸化炭素ガスをさらに含み得る。
【0076】
この他、本明細書で詳述しなかった電池素子については、二次電池分野において通常使用される素子を用いることができる。
【0077】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が後述する実施例に限定されることではない。
【実施例】
【0078】
実施例1
Al23(LS235、日本軽金属株式会社製、粒子サイズ510nm)、アクリル系水分散エマルション(CSB130、東洋インキ株式会社製、固形分40%、粒子サイズ177nm)、カルボキシルメチルセルロース(SG−L02、(株)ジエルケム社製、回転半径25nm)を、98:1:1の割合で水に添加して撹拌することで均一な分散スラリーを得た。ドクターブレードを用いて前記スラリーをポリエチレン多孔性基材(WL11B 、ダブル・スコープ株式会社製、通気時間150秒/100cc)の片面に塗布
し、冷風乾燥することで有機無機複合多孔層の形成された多孔性セパレータを製造した。製造されたセパレータの通気時間は153秒/100cc水準であって、有機無機複合多孔層を形成する前の高分子基材の通気時間に比べてほとんど変化がなかった。
【0079】
実施例2
Al23の代わりにAlOOH(Actilox200SM、Nabaltec社製、粒子サイズ230nm)に変更し、スラリーの混合割合を質量比で無機物粒子:有機粒子:増粘剤が94:3:3の割合になるよう調整したことを除いては、実施例1と同様に多孔性セパレータを製造した。製造されたセパレータの通気時間は163秒/100cc水準であり、有機無機複合多孔層を形成する前の高分子基材の通気時間に比べてほとんど変化がなかった。
【0080】
比較例1
PVdF−CTFE(ポリフッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体)5重量部を、アセトン95重量部に添加し、50℃で約12時間以上溶解し、バインダー
溶液を準備した。前記バインダー溶液に実施例1と同一のアルミナ粒子をバインダー:アルミナ粒子の割合が重量比で10:90になるように混合して分散させることで、複合多孔層用スラリーを製造した。前記製造されたスラリーを実施例1と同様にコーティングした。製造されたセパレータの通気時間は235秒/100cc水準であって、大幅増加した。
【0081】
比較例2
Al23(FA51、Cabot社製、粒子サイズ50nm)、アクリル系水分散エマルション(CSB130、東洋インキ株式会社製、固形分40%、粒子サイズ177nm)、カルボキシルメチルセルロース(3H、第一工業製薬株式会社製、回転半径100nm)を、94:3:3の割合で水に添加して撹拌することで、均一な分散スラリーを得た。ドクターブレードを用いて前記スラリーをポリエチレン多孔性基材(WL11B、ダブル・スコープ株式会社製、通気時間150秒/100cc)の片面に塗布し、冷風乾燥することで、有機無機複合多孔層の形成された多孔性セパレータを製造した。製造されたセパレータの通気時間は269秒/100cc水準であって、有機無機複合多孔層を形成する前の高分子基材の通気時間に比べて急激に上昇した。図5は、比較例2で製造した分離膜の表面を示したSEMイメージである。これによれば、有機無機複合多孔層の表面において回転半径が大きいカルボキシルメチルセルロースの使用によって気孔が閉塞したことを確認した。気孔の閉塞部分は、図中の円(点線)で表した。
【符号の説明】
【0082】
100 セパレータ
110 多孔性基材
120 有機無機複合多孔層
121 無機物粒子
122 バインダー高分子粒子
図1
図2
図3
図4
図5