(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。
【0013】
<本発明の実施形態に係る分光測定装置の構成例>
本発明の実施形態に係る分光測定装置は、錠剤等の医薬品を対象物とし、対象物にテラヘルツ波を照射し、対象物を通過したテラヘルツ波を受光、分析して対象物を構成する物質を判定するものである。なお、対象物は医薬品に限られず任意である。
【0014】
また、該分光測定装置は、テラヘルツ波以外の電磁波を対象物に照射するようにしてもよい。具体的には、例えば赤外光、赤外光よりも短い波長の電磁波、ミリ波、ミリ波よりも長い波長の電磁波を対象物に照射するようにしてもよい。
【0015】
<本発明の第1の実施形態に係る分光測定装置の構成例>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る分光測定装置の構成例を示している。該分光測定装置100は、光源部11、ビーム径調整部12、受光部13、及び信号処理部14を備える。
【0016】
光源部11は、ビーム径調整部12に対してテラヘルツ波L1を出力する。ビーム径調整部12は、信号処理部14からの制御に従い、光源部11から出力されたテラヘルツ波L1のビーム径(半値全幅)を最小値M1から最大値M2の範囲で調整し、ビーム径D(M1≦D≦M2)のテラヘルツ波L2を対象物1に照射する。
【0017】
受光部13は、対象物1を通過したテラヘルツ波、すなわち、テラヘルツ波L2が対象物1(を構成する物質)にて吸収されたり、散乱されたりしたテラヘルツ波L3を受光する。また、受光部13は、受光面におけるテラヘルツ波L3の電場振幅分布または強度分布の2次元イメージを取得する。さらに、受光部13は、電場振幅分布または強度分布の2次元イメージ、あるいは、強度分布を加算して得られる積分強度を受光信号として信号処理部14に出力する。受光部13は、例えば、THzカメラ、ショットキーダイオード、パイロメータ、ボロメータ、アンテナアレイ等から成る。
【0018】
信号処理部14は、受光部13から受光信号として、テラヘルツ波L3の電場振幅分布の2次元イメージが入力される場合、その値を2乗することにより強度分布に変換してから加算して積分強度を得る。また、信号処理部14は、受光部13から受光信号として、テラヘルツ波L3の強度分布の2次元イメージが入力される場合、その値を加算して積分強度を得る。
【0019】
信号処理部14は、受光部13におけるテラヘルツ波L3の積分強度に基づき、ビーム径調整部12から出力されるテラヘルツ波L2のビーム径Dの最適値である最適ビーム径を決定する。
【0020】
また、信号処理部14は、受光部13におけるテラヘルツ波L3の積分強度に基づき、対象物1を構成する物質の種類を判別したり、結合状態の違いを見分けたり、それぞれの分子の医薬品を構成する各分子の含有濃度を定量的に測定したりする。
【0021】
ここで、対象物1に照射するテラヘルツ波L2のビーム径Dと、散乱の影響の関係について説明する。
【0022】
図2は、受光部13によって受光されるテラヘルツ波L3の強度分布の例を示しており、同図(A)はビーム径Dを1mmとした場合、同図(B)はビーム径Dを10mmとした場合である。なお、同図(A),(B)ともに、対象物1と受光部13との距離は100mmとした。
【0023】
同図(A),(B)に示されるように、受光部13によって受光されるテラヘルツ波L3の強度分布には、対象物1における散乱に起因する大きな斑が発生している。
【0024】
同図(B)の場合は、同図(A)の場合に比較して、散乱に起因する強度分布の斑のサイズが小さくなっている。したがって、受光部13が、同図(A),(B)に示す範囲内の全体のテラヘルツ波の強度を平均化してテラヘルツ波L3の受光強度値を算出する場合、同図(B)の場合の方、すなわち、ビーム径Dが大きい方が、複数の斑を含むテラヘルツ波L3の強度分布全体を平均化して一様な値を得ることができる。よって、ビーム径Dが大きい方が、散乱に起因する斑のサイズや数の変動などで生じる測定値のばらつきを低減できると言える。ただし、テラヘルツ波L2のビーム径Dが受光部13の受光範囲よりも大きい場合、テラヘルツ波L3の全体の光量に対する、受光部13が受光できる光量の割合が低下するのでSN比が低下してしまう。したがって、対象物1に照射するテラヘルツ波L2のビーム径Dを適切に調整することが重要である。ビーム径Dを適切に調整すれば、散乱の影響を低減し、かつ、SN比の低下を抑止することが可能となる。
【0025】
図3は、ビーム径Dと積分強度との対応関係の一例を示している。同図に示すように、ビーム径Dを最小値M1から最大値M2まで変化させた場合、ビーム径DがM1からM3までは積分強度が最大となる。また、ビーム径DがM3からM2に変化するにつれて積分強度は徐々に低下する。よって、信号処理部14においては、最大の積分強度を得ることができ、かつ、ビーム径Dが最大となるM3を最適ビーム径に決定する。
【0026】
次に、ビーム径調整部12におけるビーム径Dの調整方法を具体的に説明する。
【0027】
図4は、ビーム径調整部12の第1の構成例を示している。該第1の構成例は、レンズ121と、レンズ121を駆動するレンズ駆動部122とを有する。
【0028】
該第1の構成例は、レンズ駆動部122が、信号処理部14からの制御に従い、対象物1に対して、レンズ121を近づけるか、または遠ざける方向に移動させることによって、ビーム径Dを調整することができる。
【0029】
図5は、ビーム径調整部12の第2の構成例を示している。該第2の構成例は、レンズ121と、対象物駆動部123とを有する。
【0030】
該第2の構成例は、対象物駆動部123が、信号処理部14からの制御に従い、レンズ121に対して、対象物1を近づけるか、または遠ざける方向に移動させることによって、ビーム径Dを調整することができる。
【0031】
なお、上述した第1及び第2の構成例を組み合わせて、レンズ121と対象物1との両方を互いに近づけたり、または遠ざけたりできるようにしてもよい。また、ビーム径Dの変更にあわせて、受光部13の位置や受光感度を調整するようにしてもよい。
【0032】
さらに、ビーム径Dの調整方法は、上述した例に限らず、例えば、2枚以上のレンズを用いたビームエキスパンダや、拡散板等を用いるようにしてもよい。
【0033】
次に、
図6は、ビーム径Dとレンズ121と関係を説明するための図である。レンズ121の焦点距離f1と、レンズ121に入射するテラヘルツ波L1のビーム径d1とは、予め得ることができる。さらに、レンズ121と対象物1との距離の初期値t0も得ることができる。さらに、レンズ駆動部122または対象物駆動部123によるレンズ121と対象物1との距離の変化量をdtとして取得すれば、レンズ121と対象物1との実際の距離tは、t=t0+dtとして求めることができる。以上のようにして得たf1,d1,tを用い、ビーム径Dは、次式(1)に従って計算することができる。
D=d1(t―f1)/f1 ・・・(1)
【0034】
次に、
図7は、分光測定装置100によるビーム径調整処理の一例を説明するフローチャートである。
【0035】
ビーム径調整処理は、例えば、分光測定装置100を立ち上げたときや対象物1を変更したとき等に実行される。
【0036】
はじめに、分光測定装置100が、対象物1に照射するテラヘルツ波L2のビーム径Dの最適値(最適ビーム径)を決定するための調整用測定処理を実行する(ステップS1)。
【0037】
図8は、調整用測定処理の一例を詳述するフローチャートである。はじめに、信号処理部14が、ビーム径調整部12に対してビーム径Dの測定範囲[M1,M2]と、測定間隔dM(ビーム径Dの変化量)を設定する。さらに、信号処理部14が、測定範囲[M1,M2]を測定間隔dMで除算した結果に1を加算して測定回数Nを計算する(ステップS11)。
【0038】
次に、信号処理部14が、ビーム径調整部12から出射されるテラヘルツ波L2のビーム径Dを最小値M1に設定してビーム径調整部12に通知する(ステップS12)。
【0039】
この通知に応じ、ビーム径調整部12が、光源部11からのテラヘルツ波L1のビーム径を最小値M1に調整し、テラヘルツ波L2として対象物1に照射する。そして、受光部13が、対象物1を通過したテラヘルツ波L3を受光し、その積分強度を計算して信号処理部14に出力する。信号処理部14は、受光部13から入力された積分強度を現在のビーム径に対応付けて記憶する(ステップS13)。
【0040】
次に、信号処理部14が、現在の測定回数がN回目であるか否かを判断する(ステップS14)。現在の測定回数がN回目ではないと判断した場合(ステップS14でNO)、信号処理部14が、現在のビーム径Dを測定間隔dMだけ増加してビーム径調整部12に通知する(ステップS15)。この後、処理はステップS13に戻り、ステップS13〜S15の処理が繰り返される。
【0041】
そして、信号処理部14が、現在の測定回数がN回目であると判断した場合(ステップS14でYES)、対応付けて記憶している積分強度とビーム径に基づき、積分強度が最大となる最大のビーム径M3を最適ビーム径に決定する(ステップS16)。
【0042】
なお、ステップS16では、レンズ駆動部122(
図4)や対象物駆動部123(
図5)の制御精度を加味して、積分強度が最大値に対して±20%のばらつきを許容して最適ビーム径M3を決定するようにしてもよい。
【0043】
このようにして最適ビーム径M3を決定した後、処理は
図7のステップS2に進められる。次に、信号処理部14が、最適ビーム径M3をビーム径調整部12に通知する(ステップS2)。
【0044】
この通知に応じ、ビーム径調整部12が、光源部11からのテラヘルツ波L1のビーム径を最適ビーム径M3に調整し、テラヘルツ波L2として対象物1に照射する(ステップS3)。以上で、ビーム径調整処理は終了される。この後、最適ビーム径M3のテラヘルツ波L2が対象物1に照射されることになり、信号処理部14が、対象物1を構成する物質の種類を判別したり、結合状態の違いを見分けたり、それぞれの分子の医薬品を構成する各分子の含有濃度を定量的に測定したりする。
【0045】
なお、上述したステップS1の調整用測定処理では、テラヘルツ波L2のビーム径Dを最小値M1から最大値M2まで徐々に増加させたが、テラヘルツ波L2のビーム径Dを最大値M2から最小値M1まで徐々に減少させるようにしてもよい。また、信号処理部14では、N回分の積分強度とビーム径Dとを対応付けて記憶するようにしたが、前回の積分強度との差分とビーム径Dとを対応付けて記憶するようにしてもよい。
【0046】
また、同一の対象物1を連続して測定する場合、ステップS1の調整用測定処理は省略してもよい。
【0047】
以上説明したように、分光測定装置100によれば、最適ビーム径M3のテラヘルツ波L2を対象物1に照射するので、対象物1を構成する物質で生じる散乱の影響を低減または除去することができる。また、テラヘルツ波L2の大部分の光線を対象物1に照射することができるので、SN比を大きく保つことができ、分光測定感度を向上することができる。
【0048】
<本発明の第2の実施形態に係る分光測定装置の構成例>
次に、
図9は、本発明の第2の実施形態に係る分光測定装置の構成例を示している。該分光測定装置200は、分光測定装置100(
図1)における受光部13を、受光部20に置換したものである。分光測定装置200の構成要素のうち、分光測定装置100構成要素と共通するものについては、同一の符号を付しているので、その説明は適宜省略する。
【0049】
受光部20は、波長変換部201、及び変換波受光部202を有する。波長変換部201は、対象物1を通過したテラヘルツ波L3の波長を変換し、その結果得られた変換波LC3を変換波受光部202に照射する。変換波受光部202は、変換波LC3を受光し、受光した変換波LC3のビーム面内の電場振幅分布、強度分布、または強度分布を加算した値(積分強度)を信号処理部14に出力する。なお、変換波受光部202が出力する積分強度等は、テラヘルツ波L3のビーム面内の積分強度等を反映したものとなる。
【0050】
例えば、波長変換部201は、テラヘルツ波L3の波長をIR(infrared)光帯域の変換波LC3に変換する。この場合、変換波受光部202は、IR光である変換波LC3に対して受光感度を有していればよい。一般に、IR光に対する受光感度を有するデバイスは、
テラヘルツ帯域の電磁波に対する受光感度を有するデバイスに比較して、安価であり、受光感度が高い。IR光に対する受光感度を有するデバイス変換波受光部202は、例えば、PD(Photo Diode)、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary MOS)イメージセンサ等によって実現できる。
【0051】
次に、
図10は、波長変換部201の第1の構成例を示している。該第1の構成例は、プローブ光源部31、ビーム径調整部32、偏光子33、ビームスプリッタ34、非線形光学結晶35、補償子36、及び偏光子37を有する。第1の構成例は、非線形光学結晶35によるポッケルス効果を利用したものである。
【0052】
プローブ光源部31は、プローブ光LC1としての例えばIR光をビーム径調整部32に照射する。ビーム径調整部32は、プローブ光LC1のビーム径を調整(拡大または縮小)し、ビーム径DPのプローブ光LC2を偏光子33に出射する。偏光子33は、プローブ光LC2を偏光してビームスプリッタ34に出射する。ビームスプリッタ34は、偏光されたプローブ光LC2を非線形光学結晶35の方向に反射する。また、ビームスプリッタ34は、非線形光学結晶35からの変換波LC3を透過する。
【0053】
非線形光学結晶35は、例えば電気光学結晶を含み、例えば、ZnTe,GaAs,LiNbO3,GaP,DAST等から成る。非線形光学結晶35は、テラヘルツ波L3とプローブ光LC2とが入射することにより非線形光学効果が生じる。非線形光学効果の例としては、ポッケルス効果、パラメトリック発生等が挙げることができる。該第1の構成例では、ポッケルス効果を利用する。
【0054】
非線形光学結晶35は、ポッケルス効果により、テラヘルツ波L3を、プローブ光LC2と同じ波長の変換波(IR光)LC3に変換することができる。非線形光学結晶35によって変換された変換波LC3は、ビームスプリッタ34を透過して補償子36及び偏光子37に入射される。
【0055】
補償子36及び偏光子37は、変換波LC3の偏光状態の変化を検光する。変換波受光部202は、補償子36及び偏光子37を介して入射した変換波LC3を受光し、そのビーム面内の強度分布または積分強度を検出して信号処理部14に出力する。
【0056】
該第1の構成例においては、プローブ光源部31からのプローブ光LC1のビーム径がビーム径調整部32によって調整され、ビーム径DPのプローブ光LC2として偏光子33を介してビームスプリッタ34に出射され、ビームスプリッタ34で反射されて非線形光学結晶35に入射される。
【0057】
非線形光学結晶35には、テラヘルツ波L3も入射されており、ポッケルス効果により、テラヘルツ波L3が変換波(IR光)LC3に変換される。非線形光学結晶35によって変換された変換波LC3は、ビームスプリッタ34、補償子36及び偏光子37を介して、変換波受光部202に入射される。
【0058】
なお、変換波受光部202にて変換波LC3の強度分布または積分強度を検出する際には、偏光子33と偏光子37の透過軸を直交させ、補償子36の速軸または遅軸を偏光子33の透過軸と一致させる方法を用いることができる。
【0059】
なお、変換波受光部202にて変換波LC3の強度分布が検出された場合、信号処理部14は、各ピクセルの変換波LC3の強度の値をテラヘルツ波L3の強度に変換して加算し、テラヘルツ波L3の積分強度を算出する。
【0060】
または、偏光子33と偏光子37の透過軸を直交させ、補償子36の速軸または遅軸を偏光子33の透過軸から0度より大きい角度にすることによってテラヘルツ波L3の電場振幅分布を測定し、信号処理部14にて2乗してから加算し、テラヘルツ波L3の積分強度としてもよい。
【0061】
さらに、偏光子37の代わりにウォラストンプリズムまたは偏光依存ビームスプリッタを配置して、変換波LC3を二光路に分け、変換波受光部202をバランスディテクタとし、それぞれの光路の変換波LC3の強度差を検出することで検出効率を向上させるようにしてもよい。
【0062】
次に、
図11は、波長変換部201の第2の構成例を示している。該第2の構成例と第1の構成例とで共通する構成要素については、同一の符号を付しているので、その説明は適宜省略する。
【0063】
該第2の構成例は、プローブ光源部31、ビーム径調整部32、偏光子33、波長選択ミラー39、非線形光学結晶35、補償子36、及び偏光子37を有する。第2の構成例は、第1の構成例と同様、非線形光学結晶35によるポッケルス効果を利用したものである。
【0064】
波長選択ミラー39は、テラヘルツ波を透過し、IR光を反射する特性を有する。したがって、波長選択ミラー39は、偏光子33を介して入射するプローブ光LC2を非線形光学結晶35の方向に反射し、対象物1介して入射したテラヘルツ波L3を透過する。波長選択ミラー39は、例えばペリクル、シリコン板等の光学素子から成る。
【0065】
非線形光学結晶35は、ポッケルス効果により、テラヘルツ波L3を、プローブ光LC2と同じ波長の変換波(IR光)LC3に変換する。非線形光学結晶35によって変換された変換波LC3は、補償子36及び偏光子37を介して変換波受光部202に入射する。
【0066】
該第2の構成例においては、プローブ光源部31からのプローブ光LC1のビーム径がビーム径調整部32によって調整され、ビーム径DPのプローブ光LC2として偏光子33を介して波長選択ミラー39に入射され、波長選択ミラー39にて反射されて非線形光学結晶35に入射される。
【0067】
非線形光学結晶35には、波長選択ミラー39を透過したテラヘルツ波L3も入射されており、ポッケルス効果により、テラヘルツ波L3が変換波(IR光)LC3に変換される。非線形光学結晶35によって変換された変換波LC3は、補償子36及び偏光子37を介して、変換波受光部202に入射される。
【0068】
次に、
図12は、波長変換部201の第3の構成例を示している。該第3の構成例と第1の構成例とで共通する構成要素については、同一の符号を付しているので、その説明は適宜省略する。
【0069】
該第3の構成例は、プローブ光源部31、ビーム径調整部32、及び非線形光学結晶35を有する。第3の構成例は、非線形光学結晶35によるパラメトリック発生を利用したものである。なお、第3の構成例におけるプローブ光源部31が照射するプローブ光LC1の周波数ω1は、テラヘルツ波L3の周波数ω2、及び変換波LC3の周波数ω3と次式(2)の関係を有するものとする。
ω3=ω1−ω2 ・・・(2)
【0070】
該第3の構成例においては、プローブ光源部31からのプローブ光LC1のビーム径がビーム径調整部32によって調整され、ビーム径DPのプローブ光LC2として非線形光学結晶35に入射される。
【0071】
非線形光学結晶35には、対象物1を透過したテラヘルツ波L3も入射されており、パラメトリック発生により、変換波LC3に変換される。非線形光学結晶35によって変換された変換波LC3は、変換波受光部202に入射される。
【0072】
上述した第1〜3の構成例のいずれかを採用した波長変換部201を備える分光測定装置200によれば、テラヘルツ帯域に対応する受光部13に比較して安価で受光感度か高い変換波受光部202を用いることができる。よって、分光測定装置100に比較して、コスト低減および検出感度の向上が可能である。また、測定結果から散乱の影響を低減または除去することが可能となる。
【0073】
<本発明の第3の実施形態に係る分光測定装置の構成例>
次に、
図13は、本発明の第3の実施形態に係る分光測定装置の構成例を示している。該分光測定装置300は、分光測定装置100(
図1)に対して、入力部15、及び記憶部16を追加したものである。分光測定装置300の構成要素のうち、分光測定装置100の構成要素と共通するものについては、同一の符号を付しているので、その説明は適宜省略する。
【0074】
入力部15は、対象物1を識別するための識別情報(名称、識別番号等)をユーザから受け付けて信号処理部14に通知する。また、入力部15は、記憶部16に記憶させるテーブル161(
図14)をユーザから受け付けて信号処理部14に出力する。入力されたテーブル161は、信号処理部14によって記憶部16に記録される。さらに、入力部15は、記憶部16に記憶されたテーブル161に対する更新情報をユーザから受け付けて信号処理部14に通知する。信号処理部14は、入力された更新情報に基づき、記憶部16に記憶されたテーブル161を更新する。記憶部16は、テーブル161を記憶する。
【0075】
図14は、テーブル161の一例を示している。テーブル161には、対象物1の識別情報(同図の場合、名称)と、その大きさ(同図の場合、直径)と、最適ビーム径とが対応付けて記録されている。
【0076】
分光測定装置300における信号処理部14は、立ち上げ時において、記憶部16に記憶されたテーブル161を参照することにより、入力部15に対してユーザから入力される対象物1の識別情報に対応する最適ビーム径を特定し、ビーム径調整部12に通知するようになされている。
【0077】
したがって、分光測定装置300は、ユーザから入力される対象物1の識別情報に対応する記録がテーブル161に存在すれば、最適ビーム径を決定するための調整用測定処理(
図8)が不要なので、分光測定装置100に比較して、速やかに分光測定を開始することができる。
【0078】
なお、ユーザから入力される対象物1の識別情報に対応する記録がテーブル161に存在しない場合、分光測定装置300は、分光測定装置100と同様に調整用測定処理(
図8)を実行することができる。
【0079】
また、分光測定装置300は、調整用測定処理を実行して現在の対象物1に対する最適ビーム径を決定した後、該対象物1の識別情報と最適ビーム径とを追記することによりテーブル161を自動更新するようにしてもよい。
【0080】
さらに、テーブル161には、最適ビーム径の代わりに、または最適ビーム径に加えて、該最適ビーム径に調整するためのビーム径調整部12における調整値(レンズ駆動部122(
図4)によるレンズ121の移動位置、対象物駆動部123(
図5)による対象物1の移動位置)等を記録するようにしてもよい。この場合、信号処理部14は、立ち上げ時において、記憶部16に記憶されたテーブル161を参照することにより、入力部15に対してユーザから入力される対象物1の識別情報に対応する最適ビーム径を特定し、該最適ビーム径に調整するためのビーム径調整部12における調整値を取得してビーム径調整部12に通知するようにすればよい。
【0081】
<本発明の第4の実施形態に係る分光測定装置の構成例>
次に、
図15は、本発明の第4の実施形態に係る分光測定装置の構成例を示している。該分光測定装置400は、分光測定装置100(
図1)に対して、対象物測定部17を追加したものである。分光測定装置400の構成要素のうち、分光測定装置100の構成要素と共通するものについては、同一の符号を付しているので、その説明は適宜省略する。
【0082】
対象物測定部17は、対象物1の大きさや形状を測定するか、対象物1の大きさや形状を測定し得る情報を取得して信号処理部14に出力する。該第4の構成例における信号処理部14は、対象物測定部17から通知に基づき、最適ビーム径を決定してビーム径調整部12を制御する。
【0083】
図16は、対象物測定部17の具体例を示している。
【0084】
同図(A)は、対象物測定部17を撮像装置171によって実現した場合を示している。撮像装置171は、対象物1を撮像し、その結果得られる画像を信号処理部14に出力する。信号処理部14は、予め取得している撮像装置171と対象物1との距離、及び対象物1の画像に基づき、対象物1の大きさを計算し、最適ビーム径を決定してビーム径調整部12を制御する。
【0085】
同図(B)は、対象物測定部17を測定器172によって実現した場合を示している。測定器172は、例えば、自動的に駆動するデジタルノギス、デジタルマイクロメータ、レーザによる距離測定センサ等である。
【0086】
測定器172は、対象物1の大きさを測定し、測定結果を信号処理部14に通知する。信号処理部14は、予め取得している撮像装置171と対象物1との距離、及び対象物1の測定結果に基づき、最適ビーム径を決定してビーム径調整部12を制御する。
【0087】
以上説明した分光測定装置400によれば、対象物1の大きさや形状の測定結果に基づいて最適ビーム径を決定しているので、分光測定感度の向上が期待できる。
【0088】
<本発明の第5の実施形態に係る分光測定装置の構成例>
次に、
図17は、本発明の第5の実施形態に係る分光測定装置の構成例を示している。該分光測定装置500は、分光測定装置100(
図1)に対して、対象物1と受光部13との間に結像部18を追加したものである。分光測定装置500の構成要素のうち、分光測定装置100の構成要素と共通するものについては、同一の符号を付しているので、その説明は適宜省略する。
【0089】
結像部18は、受光部13の受光面の大きさに合わせ、テラヘルツ波L3のビーム径を調整する。具体的には、対象物1を透過したテラヘルツ波L3の全体が、受光部13の受光面からはみ出すことなく最大の大きさを占めるように、テラヘルツ波L3のビーム径を調整する。
【0090】
図18は、結像部18の構成例を示している。結像部18は、信号処理部14からの制御に従い、対象物1と受光部13との間を移動する両凸レンズ181(
図18)を有する。なお、両凸レンズ181を固定し、受光部13の受光面を移動させるようにしてもよい。
【0091】
結像部18を成す両凸レンズ181とテラヘルツ波L3のビーム径との関係を、
図18を参照して説明する。
【0092】
同図に示すように、対象物1から両凸レンズ181までの距離をf2、両凸レンズ181から受光部13の受光面までの距離をf3とし、両凸レンズ181の焦点距離をfd(不図示)とした場合、対象物1と両凸レンズ181と受光部13との配置は、次式(3)を満たすように配置する。
f2+f3>fd ・・・(3)
【0093】
この場合、受光部13の受光面におけるビーム径Ddは、次式(4)のとおりとなる。
Dd=Df3/f2 ・・・(4)
【0094】
なお、結像部18は、両凸レンズ181以外で構成してもよい。例えば、2枚以上のレンズを用いて収差を低減するように構成してもよい。または、シリンドリカルレンズを採用し、テラヘルツ波L3のビーム径を縦横非対称な形状に変更するように構成してもよい。
【0095】
次に、
図19は、結像部18を備えた分光測定装置500によるビーム径調整処理を説明するフローチャートである。該ビーム径調整処理は、分光測定装置100(
図1)によるビーム径調整処理(
図7)にステップS4の処理を追加したものである。
【0096】
すなわち、分光測定装置500によるビーム径調整処理では、分光測定装置100と同様、ステップS1の調整用測定処理にて、信号処理部14が最適ビーム径M3を決定する。次に、ステップS2にて、信号処理部14が、最適ビーム径M3をビーム径調整部12に通知する。この通知に応じ、ステップS3にて、ビーム径調整部12が、光源部11からのテラヘルツ波L1のビーム径を最適ビーム径M3に調整し、テラヘルツ波L2として対象物1に照射する。
【0097】
次に、ステップS4にて、信号処理部14が、最適ビーム径M3と受光部13の受光面の大きさとに基づき、両凸レンズ181の位置を決定する。そして、結像部18が、信号処理部14からの制御に従い、両凸レンズ181を移動することによりビーム径Ddを調整する。以上で、分光測定装置500によるビーム径調整処理は終了される。
【0098】
以上に説明した分光測定装置500によれば、結像部18が、受光部13の受光面におけるテラヘルツ波L3のビーム径Ddを調整するので、受光部13がテラヘルツ波L3を効率良く受光できる。よって、散乱の影響を低減または除去しつつ、さらなる分光測定感度の向上が可能となる。
【0099】
<本発明の第6の実施形態に係る分光測定装置の構成例>
次に、
図20は、本発明の第6の実施形態に係る分光測定装置の構成例を示している。該分光測定装置600は、分光測定装置100(
図1)に対して、ビーム径調整部12と対象物1との間にビーム形状変更部19を追加したものである。分光測定装置600の構成要素のうち、分光測定装置100の構成要素と共通するものについては、同一の符号を付しているので、その説明は適宜省略する。
【0100】
分光測定装置600における信号処理部14は、受光部13からの受光信号に基づき、対象物1の大きさと形状を判定し、判定結果に基づいてビーム形状変更部19を制御する。
【0101】
ビーム形状変更部19は、信号処理部14からの制御に従い、ビーム径調整部12から出力されるビーム径Dのテラヘルツ波L2のビーム形状を、対象物1の形状に合わせて、例えば、楕円形、三角形、四角形等の任意の形状に変更するものである。ビーム形状変更部19は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、SLM(Spatial Light Modulator)、金属版を任意の形状に切り抜いたマスク等により実現できる。
【0102】
分光測定装置600によれば、対象物1に合わせて形状を変更したテラヘルツ波L2を対象物1に照射するので、対象物1の断面形状が円形ではなく、楕円形、四角形、その他の形状であっても、テラヘルツ波L2の光線を対象物1に効率よく照射することができ、散乱の影響を低減または除去しながら分光測定感度のさらなる向上が可能となる。
【0103】
なお、該分光測定装置600に対象物測定部17(
図15)を追加し、信号処理部14が、対象物測定部17による測定結果に基づいて対象物1の形状を識別し、その識別結果に基づいて、ビーム形状変更部19を制御するようにしてもよい。
【0104】
<対象物1の大きさが小さい場合の対処>
ところで、ビーム径調整部12が調整可能なビーム径の最小値M1に比較して対象物1の大きさが小さい場合、上述した分光測定装置100〜600では対象物1による散乱の影響を抑止することができない。そのよう場合、複数の対象物1から成るクラスタ(集合体)を形成し、該クラスタを対象物1として分光測定すればよい。
【0105】
図21は、対象物1のクラスタの例を示している。同図(A)は、円形の対象物1を平面状に敷き詰めてクラスタ101を形成した例である。同図(B)は、矩形の対象物1を平面状に敷き詰めてクラスタ102を形成した例である。同図(C)は、円形の対象物1を立体的に敷き詰めてクラスタ103を形成した例である。
【0106】
なお、対象物1の形状、クラスタ101〜103の形状、敷き詰め方、密度については図示する例に限られない。ただし、感度向上に観点から、クラスタ101〜103を構成する対象物どうしの間隔はできるだけ小さいことが望ましい。
【0107】
上述したように、ビーム径の最小値M1に比較して大きさいの小さい対象物1をクラスタ化して分光測定すれば、対象物1による散乱の影響を低減または除去することが可能となる。
【0108】
<応用例>
なお、本発明は、分光測定以外の測定に応用することも可能である。例えば、テラヘルツ波を用いるCTスキャンや、テラヘルツ波の吸収率・反射率を利用したイメージング・スキャニング等、散乱光によって測定値の変動や測定精度低下などの影響を受ける測定に応用できる。
【0109】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、他の効果があってもよい。
【0110】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した各実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明が、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を、他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に、他の実施形態の構成を加えることも可能となる。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能となる。