(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記c)芳香族ビニル化合物−ビニルシアン化合物共重合体は、芳香族ビニル化合物55〜85重量%及びビニルシアン化合物15〜45重量%を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
前記熱可塑性樹脂組成物は、熱安定剤、酸化防止剤、衝撃補強剤、光安定剤、可塑剤、滑剤及び帯電防止剤からなる群から選択された1種以上をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本記載の熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された金属めっき成形品を詳細に説明する。
【0032】
本発明者らは、ゴムの粒径が異なる2種のABS樹脂と、芳香族ビニル化合物−ビニルシアン化合物共重合体と、特定の動粘度を有する所定のポリシロキサンとを特定の含量範囲内で混合する場合、エッチング時間が減少し、機械的物性の低下、熱的特性の低下及び未めっきの発生がないと共に、めっき密着力などが大きく改善されることを確認し、これに基づいて本発明を完成した。
【0033】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、a)共役ジエンゴムの粒径が0.05μm〜0.2μmであるビニルシアン化合物−共役ジエンゴム−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体5〜40重量%、b)共役ジエンゴムの粒径が0.2μm超〜0.5μm以下であるビニルシアン化合物−共役ジエンゴム−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体5〜40重量%、及びc)芳香族ビニル化合物−ビニルシアン化合物共重合体50〜80重量%からなるベース樹脂100重量部と;下記化学式1
【0035】
(前記Xは、水素又はヒドロキシ基であり、前記Yは水素又は
【化6】
であり、前記R
1及びR
2は、独立して炭素数1〜10のアルキル基であり、前記R
3及びR
4は、独立して炭素数6〜12のアリール基又は炭素数1〜10のアルキル基であり、前記R
5及びR
6は、独立して炭素数1〜10のアルキル基であり、前記Zは、水素又はヒドロキシ基であり、前記nは、1〜100の整数であり、前記mは、0〜100の整数である)で表される化合物0.01〜2重量部と;を含み、前記化学式1で表される化合物は、動粘度(25℃)が10〜20,000cStであることを特徴とし、この場合に、未めっきの発生率が高い条件において未めっきが発生せず、従来と比較して同等レベル以上の機械的物性を有しながらも、熱的特性、めっき密着力及び外観品質に優れるという効果がある。
【0036】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、a)共役ジエンゴムの粒径が0.05μm〜0.2μmであるビニルシアン化合物−共役ジエンゴム−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体5〜40重量%、b)共役ジエンゴムの粒径が0.2μm超〜0.5μm以下であるビニルシアン化合物−共役ジエンゴム−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体5〜40重量%、及びc)芳香族ビニル化合物−ビニルシアン化合物共重合体50〜80重量%からなるベース樹脂100重量部と;下記化学式1
【0038】
(前記Xは、水素又はヒドロキシ基であり、前記Yは、水素又は
【化8】
であり、前記R
1及びR
2は、独立して炭素数1〜10のアルキル基であり、前記R
3及びR
4は、独立して炭素数6〜12のアリール基又は炭素数1〜10のアルキル基であり、前記R
5及びR
6は、独立して炭素数1〜10のアルキル基であり、前記Zは、水素又はヒドロキシ基であり、前記nは、1〜100の整数であり、前記mは、0〜100の整数である)で表される化合物0.01重量部超〜2重量部未満と;を含み、前記a)グラフト共重合体は、前記b)グラフト共重合体よりも少ない量で含まれ、前記化学式1で表される化合物は、動粘度(25℃)が5cSt超〜200cSt未満であることを特徴とし、この範囲内で、めっき密着力、未めっきの未発生、熱的特性及びめっき外観品質などのめっき特性がいずれも優れ、加工性に優れるので、めっき用樹脂組成物に適するという利点がある。
【0039】
ベース樹脂
前記a)グラフト共重合体とb)グラフト共重合体のそれぞれは、一例として、共役ジエンゴムにビニルシアン化合物及び芳香族ビニル化合物を含んでグラフト重合された共重合体であってもよい。
【0040】
前記共役ジエンゴムは、一例として、共役ジエンゴムがコロイド状態で水に分散したラテックスであってもよく、この場合に、機械的強度及び加工性に優れるという効果がある。
【0041】
前記共役ジエンゴムは、二重結合と単結合が交互に配列している構造である共役ジエン(conjugated diene)化合物を含んで重合された重合体または共重合体を意味し、一例として、ブタジエン重合体、ブタジエン−スチレン共重合体、及びブタジエン−アクリロニトリル共重合体からなる群から選択された1種以上であってもよく、この場合に、機械的物性に優れるという効果がある。
【0042】
前記a)グラフト共重合体の共役ジエンゴムは、一例として、粒径が0.05μm〜0.2μm、0.05μm〜0.17μm、または0.07μm〜0.15μmであってもよく、この範囲内で、機械的物性、熱的特性及びめっき密着力に優れるという効果がある。
【0043】
前記b)グラフト共重合体の共役ジエンゴムは、一例として、粒径が0.2μm超〜0.5μm以下、0.25μm〜0.45μm、または0.3μm〜0.4μmであってもよく、この範囲内で、機械的物性、加工性及びめっき特性に優れるという効果がある。
【0044】
本記載において、共役ジエンゴムの粒径は、共役ジエンゴム粒子の平均粒径を意味し、一例として、動的レーザー光散乱(Dynamic Laser Light Scattering)法で強度(インテンシティ)ガウス分布(Intensity Gaussian Distribution、Nicomp 380)を用いて測定される。
【0045】
前記ビニルシアン化合物は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、及びこれらの誘導体からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはアクリロニトリルであってもよく、この場合に、機械的強度及び加工性に優れるという効果がある。
【0046】
前記芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、α−メチルスチレン、ρ−メチルスチレン、ο−エチルスチレン、ρ−エチルスチレン、ビニルトルエン、及びこれらの誘導体からなる群から選択された1種以上であってもよく、この場合に、機械的物性及びめっき特性に優れるという効果がある。
【0047】
前記ベース樹脂は、一例として、a)グラフト共重合体5〜40重量%、b)グラフト共重合体5〜40重量%、及びc)芳香族ビニル化合物−ビニルシアン化合物共重合体50〜80重量%を含むことができ、この場合に、熱的特性、機械的物性及びめっき密着力に優れるという効果がある。
【0048】
前記a)グラフト共重合体は、一例として、5〜40重量%、10〜35重量%、または10〜30重量%であってもよく、好ましくは10〜15重量%であってもよく、この範囲内で、流動性、機械的強度、めっき密着力及び熱的特性に優れるという効果がある。
【0049】
前記b)グラフト共重合体は、一例として、5〜40重量%、10〜35重量%、または10〜30重量%であってもよく、好ましくは20〜30重量%であってもよく、より好ましくは20重量%以上〜25重量%未満であってもよく、この範囲内で、流動性、機械的強度、めっき密着力及び熱的特性に優れるという効果がある。
【0050】
前記c)芳香族ビニル化合物−ビニルシアン化合物共重合体は、一例として、50〜80重量%、55〜75重量%、または60〜70重量%であってもよく、好ましくは60重量%超〜70重量%以下であってもよく、この範囲内で、衝撃強度などの機械的強度に優れながらも、めっき密着力に優れるという効果がある。
【0051】
前記a)グラフト共重合体は、好ましくは、b)グラフト共重合体よりも少ない量で含まれ、この場合に、流動性で表現される加工性に優れ、熱衝撃の評価後、めっき膜の膨れやクラックが全く発生しないので、熱的特性に優れるという効果がある。
【0052】
前記a)グラフト共重合体とb)グラフト共重合体は、好ましくは、重量比が1:1.5〜1:4であってもよく、より好ましくは1:1.5〜1:3であり、より好ましくは1:1.7〜1:3であり、最も好ましくは1:2〜1:3であり、この範囲内で、流動性に優れ、熱衝撃の評価後、めっき膜の膨れやクラックが全く発生しないので、熱的特性に優れるという効果がある。
【0053】
前記a)ビニルシアン化合物−共役ジエンゴム−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、一例として、0.05μm〜0.2μmの共役ジエンゴム30〜70重量%、ビニルシアン化合物5〜30重量%及び芳香族ビニル化合物15〜50重量%を含んでグラフト重合されたものであってもよく、この場合に、機械的物性などの全体的な物性バランスに優れながらも、めっき密着力及び熱的特性に優れるという効果がある。
【0054】
他の一例として、a)ビニルシアン化合物−共役ジエンゴム−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、0.05μm〜0.2μmの共役ジエンゴム45〜60重量%、ビニルシアン化合物10〜20重量%及び芳香族ビニル化合物25〜40重量%を含んでグラフト重合されたものであってもよく、この場合に、機械的物性などの全体的な物性バランスに優れながらも、めっき密着力及び熱的特性に優れるという効果がある。
【0055】
前記b)ビニルシアン化合物−共役ジエンゴム−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、一例として、粒径0.2μm超〜0.5μm以下の共役ジエンゴム40〜80重量%、ビニルシアン化合物3〜20重量%及び芳香族ビニル化合物10〜50重量%を含んでグラフト重合されたものであってもよく、この場合に、機械的物性などの全体的な物性バランスに優れながらも、めっき密着力及び熱的特性に優れるという効果がある。
【0056】
他の一例として、前記b)ビニルシアン化合物−共役ジエンゴム−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、粒径0.2μm超〜0.5μm以下の共役ジエンゴム50〜70重量、ビニルシアン化合物5〜15重量%及び芳香族ビニル化合物20〜40重量%を含んでグラフト重合されたものであってもよく、この場合に、衝撃強度などの機械的強度に優れながらも、めっき密着力及び熱的特性に優れるという効果がある。
【0057】
前記a)グラフト共重合体及びb)グラフト共重合体のそれぞれの製造方法は、この技術分野で通常使用可能な製造方法であれば制限されず、一例としては、乳化重合で製造されたものであってもよく、この場合に、グラフト効率に優れるので、機械的物性及び加工性に優れるという効果がある。
【0058】
前記c)芳香族ビニル化合物−ビニルシアン化合物共重合体は、芳香族ビニル化合物とビニルシアン化合物を含んで重合された非グラフト共重合体であって、一例として、芳香族ビニル化合物は、c)共重合体の総重量を基準として55〜85重量%、55〜75重量%、または60〜70重量%であってもよく、ビニルシアン化合物は、c)共重合体の総重量を基準として15〜45重量%、20〜40重量%、または20〜35重量%であってもよく、この範囲内で、流動性、機械的物性及びめっき密着力に優れるという効果がある。
【0059】
前記c)芳香族ビニル化合物−ビニルシアン化合物共重合体において芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン及びビニルトルエンからなる群から選択された1種以上であってもよく、前記ビニルシアン化合物は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及びエタクリロニトリルからなる群から選択された1種以上であってもよく、この場合に、加工性及び機械的強度に優れながらも、めっき密着力に優れるという効果がある。
【0060】
前記c)芳香族ビニル化合物−ビニルシアン化合物共重合体は、一例として、重量平均分子量が50,000〜200,000g/mol、60,000〜180,000g/mol、または70,000〜150,000g/molであってもよく、この範囲内で、衝撃強度などの機械的強度に優れながらも、めっき密着力に優れるという効果がある。
【0061】
本記載において重量平均分子量は、一例として、樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に1mg/mlの濃度で溶解して製造した後、これを0.45μmのシリンジフィルター(syringe filer)で濾過し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0062】
前記c)芳香族ビニル化合物−ビニルシアン化合物共重合体の製造方法は、特に制限されず、この技術分野で通常使用される製造方法であってもよく、一例として、連続塊状重合により製造されたものであってもよく、この場合に、製造コストが低減されるだけでなく、機械的物性に優れるという効果がある。
【0063】
化学式1で表される化合物
本記載の熱可塑性樹脂組成物は、一例として、下記化学式1で表される化合物を、ベース樹脂100重量部を基準として0.01〜2重量部、好ましくは0.01重量部超〜2重量部未満、より好ましくは0.03〜1.5重量部、さらに好ましくは0.05〜1重量部、最も好ましくは0.05重量部以上〜1重量部未満含むことができ、この場合に、機械的物性の低下なしに、めっき密着力及び外観品質に優れるという効果がある。
【0065】
前記Xは、一例として、水素又はヒドロキシ基であってもよく、前記Yは、一例として、水素又は
【化10】
であってもよく、前記R
1及びR
2は、一例として、独立して炭素数1〜10のアルキル基であってもよく、前記R
3及びR
4は、一例として、独立して炭素数6〜12のアリール基又は炭素数1〜10のアルキル基であってもよく、前記R
5及びR
6は、一例として、独立して炭素数1〜10のアルキル基であってもよく、前記Zは、一例として、水素又はヒドロキシ基であってもよく、前記nは、一例として、1〜100の整数であってもよく、前記mは、一例として、0〜100の整数であってもよく、この場合に、未めっきの発生率が高い条件において未めっきが発生せず、従来と比較して同等レベル以上の機械的物性を有しながらも、熱的特性、めっき密着力及び外観品質に優れるという効果がある。
【0066】
前記R
1及びR
2は、一例として、独立して炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜5のアルキル基、または炭素数1〜3のアルキル基であってもよく、この場合に、めっき密着力が大きく改善されることで、めっき後、外観品質に優れるという効果がある。
【0067】
前記R
3及びR
4は、一例として、独立して炭素数6〜12のアリール基又は炭素数1〜10のアルキル基であってもよく、他の一例として、独立して炭素数6〜8のアリール基又は炭素数1〜5のアルキル基であってもよく、更に他の一例として、フェニル基であってもよく、この場合に、未めっきの発生がなく、めっき密着力に優れるという効果がある。
【0068】
前記R
5及びR
6は、一例として、独立して炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜5のアルキル基、または炭素数1〜3のアルキル基であってもよく、この場合に、めっき密着力が大きく改善されることで、めっき後、外観品質に優れるという効果がある。
【0069】
前記nは、一例として、1〜100の整数、10〜90の整数、または20〜80の整数であってもよく、この場合に、熱的特性の低下なしに、外観品質及びめっき密着力に優れるという効果がある。
【0070】
前記mは、一例として、0〜100の整数、1〜80の整数、または10〜60の整数であってもよく、この場合に、熱的特性の低下なしに、外観品質及びめっき密着力に優れるという効果がある。
【0071】
前記化学式1で表される化合物は、一例として、動粘度(25℃)が10〜20,000cSt、10〜15,000cSt、または10〜10,000cStであってもよく、好ましくは5cSt超〜200cSt未満、より好ましくは10〜100cSt、さらに好ましくは10cSt以上〜100cSt未満、よりさらに好ましくは10〜50cSt、最も好ましくは15〜50cStであり、この場合に、めっき密着力、未めっきの未発生、熱的特性及びめっき外観品質などのめっき特性がいずれも優れ、加工性に優れるという効果がある。
【0072】
本記載において、動粘度は、絶対粘度を密度で割った値であってもよく、前記絶対粘度は、25℃でASTM D445−46Tに基づいて測定することができる。
【0073】
前記化学式1で表される化合物は、一例として、末端変性又は未変性のポリジメチルシロキサン、及び末端変性又は未変性のポリメチルフェニルシロキサンからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、末端変性又は未変性のポリメチルフェニルシロキサンであってもよく、この場合に、射出時にガスの発生が低下し、耐熱性が高くなることで、熱的特性に優れ、めっき密着力が大きく改善されて外観品質にも優れるという効果がある。
【0074】
前記末端変性は、この技術分野での通常の末端変性であれば制限されない。
【0075】
熱可塑性樹脂組成物
本記載の熱可塑性樹脂組成物は、一例として、めっき用樹脂組成物であってもよく、物性に影響を及ぼさない範囲内で、熱安定剤、酸化防止剤、衝撃補強剤、光安定剤、可塑剤、滑剤及び帯電防止剤からなる群から選択された1種以上の添加剤をさらに含むことができ、この場合に、本記載の熱可塑性樹脂組成物固有の基底物性を低下させることなく、添加剤の機能を実現するという効果がある。
【0076】
前記添加剤は、一例として、前記ベース樹脂100重量部を基準として、0.1〜10重量部、または1〜5重量部であってもよく、この範囲内で、本記載の熱可塑性樹脂組成物固有の基底物性を低下させることなく、添加剤の機能を実現するという効果がある。
【0077】
本記載の熱可塑性樹脂組成物は、一例として、溶融指数(220℃、10kg)が10〜40g/10分、または10〜30g/10分、好ましくは15〜30g/10分、より好ましくは18〜30g/10分であってもよく、この範囲内で、物性バランス及び加工性に優れるという効果がある。
【0078】
本記載の熱可塑性樹脂組成物は、一例として、衝撃強度が20kgf・cm/cm
2以上、または20〜40kgf・cm/cm
2、好ましくは20〜36kgf・cm/cm
2、より好ましくは23〜36kgf・cm/cm
2であってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れるという効果がある。
【0079】
本記載の熱可塑性樹脂組成物は、一例として、めっき密着力(10mm/80mm)が10N/cm以上、または10〜25N/cm、好ましくは10〜16N/cmであってもよく、この範囲内で、めっき後、外観品質及び物性バランスに優れるという効果がある。
【0080】
以下では、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法、及びその組成物を含む金属めっき成形品に関して説明する。本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法、及びその組成物を含む金属めっき成形品を説明するに当たって、上述した熱可塑性樹脂組成物の内容を全て含む。
【0081】
金属めっき成形品
本記載の金属めっき成形品は、一例として、本記載の熱可塑性樹脂組成物で成形され、表面に金属めっき層が形成されたものであってもよく、この場合に、表面とめっき膜とのめっき密着力、及び外観品質に優れるという効果がある。
【0082】
前記金属めっき層は、前記熱可塑性樹脂組成物からなる基材の表面にアンカリング(anchoring)結合されたものであってもよく、この場合に、表面とめっき膜とのめっき密着力、及び外観品質に優れるという効果がある。
【0083】
前記金属めっき成形品の製造方法は、一例として、本記載の熱可塑性樹脂組成物を射出して射出品を得るステップと;前記射出品をエッチング液を用いてエッチングするステップと;前記エッチングされた射出品をめっきするステップと;を含むことができ、この場合に、機械的物性及び熱的特性の低下なしに、めっき密着力に優れるという効果がある。
【0084】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として押出ペレットであってもよく、この場合に、再現性、工程安定性、工程容易性などに優れるという効果がある。
【0085】
前記エッチング工程は、ABS系樹脂内のゴム部分を溶かして表面に凹凸を付与する過程であって、この過程を通じて、ゴムが溶けて生じた孔は、めっき膜と物理的な結合力を有するようにするアンカリング(anchoring)部位として作用し、めっき密着力を有するようにするだけでなく、表面に極性を付与して、以降のめっき工程時に未めっきの発生を抑制する。
【0086】
前記エッチングステップにおいて、エッチング時間は、一例として、2〜10分、または3〜7分であってもよく、エッチング温度は、一例として、60〜75℃、または65〜70℃であってもよく、この範囲内で、工程コストを低減しながらも、めっき密着力及び熱的特性に優れた成形品を収得することができる。
【0087】
前記エッチング液は、一例として、無水クロム酸、硫酸、リン酸、過マンガン酸カリウム及び過酸化水素からなる群から選択された1種以上の水溶液であってもよく、この場合に、機械的物性及び熱的特性の低下なしに、めっき密着力に優れるという効果がある。
【0088】
前記金属めっき成形品の製造方法は、一例として、エッチングするステップの前に、前記射出品からオイルなどを除去する脱脂ステップを含むことができる。
【0089】
前記脱脂ステップは、好ましくは、前記射出品を界面活性剤で処理してオイルを除去することができ、前記界面活性剤は、本発明の属する技術分野で一般的に脱脂ステップに用いられる界面活性剤であれば、特に制限されない。
【0090】
前記脱脂ステップは、好ましくは、40〜60℃で1〜30分間行われてもよく、より好ましくは、50〜60℃で5〜10分間行われてもよく、この範囲内で、脱脂効率に優れるという利点がある。
【0091】
前記めっきするステップは、一例として、中和ステップ、触媒化ステップ、及び活性化ステップのうちの1つ以上のステップを含むめっき前処理ステップと、化学めっき及び電気めっきのうちの1つ以上のステップを含むめっき処理ステップとを含むことができる。
【0092】
前記中和ステップは、好ましくは、塩酸水溶液で処理するものであってもよく、この場合に、残留クロム酸などが効率的に除去されるという利点がある。
【0093】
前記中和ステップは、好ましくは、20〜30℃で15秒〜1分間塩酸水溶液で処理するものであってもよく、より好ましくは、25〜30℃で20〜30秒間塩酸水溶液で処理するものであってもよく、この範囲内で、残留クロム酸などが効果的に除去されるという利点がある。
【0094】
前記触媒化ステップは、好ましくは、金属触媒を用いて金属をアンカー孔に吸着させるステップであってもよく、前記金属触媒は、本発明の属する技術分野においてめっき前処理時に通常使用する金属触媒であれば、特に制限されないが、好ましくは、パラジウム−錫触媒であってもよく、この場合に、パラジウムがアンカー孔に吸着される。
【0095】
前記触媒化ステップは、好ましくは、20〜40℃で1〜10分間行うことができ、より好ましくは、25〜35℃で1〜5分間行うことができ、この範囲内で、金属のアンカー孔への吸着効率に優れるという利点がある。
【0096】
前記活性化ステップは、好ましくは、硫酸水溶液で処理して活性化させるステップであってもよく、この場合に、アンカー孔に吸着させようとする金属以外に他の金属などを除去することで、アンカー孔に吸着された金属を活性化させる効果が大きい。
【0097】
前記活性化ステップは、好ましくは、45〜65℃で1〜10分間行うことができ、より好ましくは、50〜60℃で1〜5分間行うことができ、この範囲内で、活性化効果が大きい。
【0098】
前記化学めっきは、好ましくは、金属塩を用いる無電解めっきであってもよく、前記金属塩は、好ましくは硫酸ニッケルであってもよい。
【0099】
前記化学めっきは、好ましくは、20〜40℃で1〜30分間行うことができ、より好ましくは、25〜35℃で1〜10分間行うことができ、この範囲内で、無電解めっき特性に優れるという利点がある。
【0100】
前記電気めっきは、好ましくは、銅電気めっき、ニッケル電気めっき、及びクロム電気めっきからなる群から選択された1種以上の電気めっきである。
【0101】
前記銅電気めっきは、本発明の属する技術分野において銅電気めっきに通常使用される銅塩を制限なしに用いることができるが、好ましくは硫酸銅を用いることができる。
【0102】
前記銅電気めっきは、好ましくは、20〜30℃で20〜60分間、2〜4A/dm
2で行うことができ、より好ましくは、23〜27℃で30〜40分間、2.5〜3.5A/dm
2で行うことができる。
【0103】
前記ニッケル電気めっきは、本発明の属する技術分野においてニッケル電気めっきに通常使用されるニッケル塩を制限なしに用いることができるが、好ましくは硫酸ニッケルを用いることができる。
【0104】
前記ニッケル電気めっきは、好ましくは、50〜60℃で10〜30分間、2〜4A/dm
2で行うことができ、より好ましくは、55〜60℃で10〜20分間、2.5〜3.5A/dm
2で行うことができる。
【0105】
前記クロム電気めっきは、本発明の属する技術分野においてクロム電気めっきに通常使用されるクロム系化合物を制限なしに用いることができるが、好ましくは無水クロム酸を用いることができる。
【0106】
前記クロム電気めっきは、好ましくは、45〜65℃で1〜15分間、10〜20A/dm
2で行うことができ、より好ましくは、50〜60℃で1〜5分間、13〜18A/dm
2で行うことができる。
【0107】
前記めっきステップにおいて、めっき方法は特に制限されず、当業界で通常行われる範囲内で適宜選択して行うことができる。
【0108】
前記成形品の用途は、特に制限されないが、好ましくは自動車用内装材あるいは外装材であってもよく、この場合に、自動車分野の厳しいめっき信頼性を大きく満足させるという利点がある。
【0109】
熱可塑性樹脂組成物の製造方法
本記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、一例として、a)共役ジエンゴムの粒径が0.05μm〜0.2μmであるビニルシアン化合物−共役ジエンゴム−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体5〜40重量%、b)共役ジエンゴムの粒径が0.2μm超〜0.5μm以下であるビニルシアン化合物−共役ジエンゴム−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体5〜40重量%、及びc)芳香族ビニル化合物−ビニルシアン化合物共重合体50〜80重量%からなるベース樹脂100重量部と;下記化学式1
【0111】
(前記Xは、水素又はヒドロキシ基であり、前記Yは、水素又は
【化12】
であり、前記R
1及びR
2は、独立して炭素数1〜10のアルキル基であり、前記R
3及びR
4は、独立して炭素数6〜12のアリール基又は炭素数1〜10のアルキル基であり、前記R
5及びR
6は、独立して炭素数1〜10のアルキル基であり、前記Zは、水素又はヒドロキシ基であり、前記nは、1〜100の整数であり、前記mは、0〜100の整数である)で表される化合物0.01〜2重量部と;を二軸押出機に投入して溶融混練及び押出するステップを含むことができ、前記化学式1で表される化合物は、動粘度(25℃)が10〜20,000cStであってもよく、この場合に、未めっきの発生率が高い条件において未めっきが発生せず、従来と比較して同等レベル以上の機械的物性を有しながらも、熱的特性、めっき密着力及び外観品質に優れるという効果がある。
【0112】
本記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、好ましくは、a)共役ジエンゴムの粒径が0.05μm〜0.2μmであるビニルシアン化合物−共役ジエンゴム−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体5〜40重量%、b)共役ジエンゴムの粒径が0.2μm超〜0.5μm以下であるビニルシアン化合物−共役ジエンゴム−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体5〜40重量%、及びc)芳香族ビニル化合物−ビニルシアン化合物共重合体50〜80重量%からなるベース樹脂100重量部と;下記化学式1
【0114】
(前記Xは、水素又はヒドロキシ基であり、前記Yは、水素又は
【化14】
であり、前記R
1及びR
2は、独立して炭素数1〜10のアルキル基であり、前記R
3及びR
4は、独立して炭素数6〜12のアリール基又は炭素数1〜10のアルキル基であり、前記R
5及びR
6は、独立して炭素数1〜10のアルキル基であり、前記Zは、水素又はヒドロキシ基であり、前記nは、1〜100の整数であり、前記mは、0〜100の整数である)で表される化合物0.01重量部超〜2重量部未満と;を二軸押出機に投入して溶融混練及び押出するステップを含み、前記a)グラフト共重合体は、前記b)グラフト共重合体よりも少ない量で含まれ、前記化学式1で表される化合物は、動粘度(25℃)が5cSt超〜200cSt未満であることを特徴とし、この範囲内で製造される樹脂組成物は、めっき密着力、未めっきの未発生、熱的特性及びめっき外観品質などのめっき特性がいずれも優れ、加工性に優れるので、めっき用樹脂組成物に適するという利点がある。
【0115】
前記溶融混練ステップは、一例として、上述した添加剤をさらに含むことができる。
【0116】
前記溶融混練及び押出するステップは、一例として、一軸押出機、二軸押出機及びバンバリーミキサーからなる群から選択された1種以上を使用して行われてもよく、好ましくは二軸押出機であり、これを使用して組成物を均一に混合した後、押出して、一例として、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を収得することができ、この場合に、機械的物性の低下、熱的特性の低下、及び未めっきの発生がないと共に、めっき密着力及び外観品質に優れるという効果がある。
【0117】
本記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法において使用される熱可塑性樹脂組成物は、上述した本記載の熱可塑性樹脂組成物の内容を全て含む。
【0118】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【実施例】
【0119】
[実施例]
下記実施例1〜8及び比較例1〜12で使用された材料は、次の通りである。
【0120】
a)ビニルシアン化合物−共役ジエンゴム−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体:ゴムの粒径が0.1μmであるABS樹脂(LG化学社のDP229M)
b)ビニルシアン化合物−共役ジエンゴム−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体:ゴムの粒径が0.3μmであるABS樹脂(LG化学社のDP270M)
c)芳香族ビニル化合物−ビニルシアン化合物共重合体:スチレン−アクリロニトリル共重合体(LG化学社の95RF)
d−1)化学式1で表される化合物:動粘度が10cStであるポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane(PDMS))(Shin−Etsu KF96−10cs)
d−2)化学式1で表される化合物:動粘度が15cStであるポリメチルフェニルシロキサン(Polymethylphenylsiloxane(PMPS))(Shin−Etsu KF56)
d−3)化学式1で表される化合物:動粘度が50cStであるポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane(PDMS))(Shin−Etsu KF96−50cs)
d−4)化学式1で表される化合物:動粘度が200cStであるポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane(PDMS))(Shin−Etsu KF96−200cs)
d−5)化学式1で表される化合物:動粘度が10,000cStであるポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane(PDMS))(Shin−Etsu KF96H−10,000cs)
d−6)化学式1で表される化合物:動粘度が5cStであるポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane(PDMS))(Shin−Etsu KF96L−5cs)
d−7)化学式1で表される化合物:動粘度が3,000cStであるポリメチルフェニルシロキサン(Polymethylphenylsiloxane(PMPS))(Shin−Etsu KF50)
【0121】
実施例1〜8及び比較例1〜12
それぞれ、下記の表1及び表2に記載された組成と含量を有するように各成分を二軸押出機に投入し、220〜250℃で溶融及び混練してペレット状の樹脂組成物を製造し、製造されたペレット状の樹脂組成物を射出して、物性を測定するための試片を作製した。射出を通じて、100mm×100mm×3mmの規格の四角試片と、150mm×80mm×3mmの規格のキャップ(cap)形状の試片をそれぞれ製造した。
【0122】
前記製造された試片上には、下記のような方法により、厚さ30μm以上の均一な厚さのめっき膜を形成した。
【0123】
まず、55℃で5分間界面活性剤を処理してオイルを除去し、65℃で5分間、エッチング剤である無水クロム酸−硫酸水溶液を用いてブタジエンを酸化させた。その次に、25℃で25秒間塩酸水溶液を処理して残留クロム酸を除去し、30℃で2分間、パラジウム−錫触媒を用いてパラジウムのアンカー孔への吸着を図った。活性化ステップは、55℃で2分間行われ、硫酸水溶液を用いて錫を除去し、硫酸ニッケルを用いて30℃で5分間無電解めっきを行った。無電解めっき後に行われた電気めっきでは、銅、ニッケル及びクロムを用い、硫酸銅を用いた銅電気めっきは、25℃で35分間、3A/dm
2で行った。そして、硫酸ニッケルを用いたニッケル電気めっきは、55℃で15分間、3A/dm
2で行い、無水クロム酸液を用いたクロム電気めっきは、55℃で3分間、15A/dm
2で行った。
【0124】
[試験例]
前記実施例1〜10及び比較例1〜12で製造された試片の特性を、下記の方法により測定し、その結果を、下記の表1及び表2に示した。
【0125】
*溶融指数(Melt Index、g/10分):製造された試片を用いて、標準測定ASTM D1238に準拠して220℃、10kgの条件で測定した。
【0126】
*衝撃強度(Notched Izod Impact Strength、kgf・cm/cm
2):厚さ6.4mmの試片を用いて、標準測定ASTM D256に準拠して測定した。
【0127】
*めっき密着力(N/cm):めっきされた四角試片(規格100mm×100mm×3mm)の前面部に10mm幅の傷をつけ、プッシュプルゲージ(Push−Pull gage)を用いて垂直方向に80mmを剥離しながら測定された値に対する平均値を示した。
【0128】
*未めっきの発生有無の評価:150mm×80mm×3mmの規格のキャップ(cap)形状の試片の外観を目視で観察し、未めっき部位がない場合に○、未めっき部位が一部でも発生した場合に×として区分して表した。
【0129】
*熱衝撃テスト:キャップ(cap)形状の試片を用いて、チャンバ内で以下の(1)〜(5)のような過程を行った後、めっき膜の外観を目視で観察し、クラック及びめっき膨れが全く発生しない場合に○、クラック及びめっき膨れが一部でも発生した場合に×として区分して表した。
(1)60分間、チャンバ内の温度を−40℃に維持
(2)1分内でチャンバ内の温度を80℃に昇温
(3)60分間、チャンバ内の温度を80℃に維持
(4)1分以内でチャンバ内の温度を−40℃に冷却
(5)(1)〜(4)の過程を4回繰り返す
【0130】
*めっき外観品質:キャップ(cap)形状の試片のめっき後の外観品質を目視で観察(未めっき部位を除く)し、最外殻のめっき表面に曇り(Fogging)部位がない場合に「異常無し」と、曇り(Fogging)部位がある場合に「不良」と評価した。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
(前記表1及び表2において、a、b、cの含量は、ベース樹脂の合計100重量%を基準とした重量%であり、dの含量は、ベース樹脂の合計100重量部を基準とした重量部である。)前記表1に示したように、本発明の実施例1〜9の場合、ゴムの粒径が異なる2種のABS樹脂、SAN樹脂、及び特定の動粘度を有する化学式1で表される化合物(シロキサン樹脂)を特定量含むことで、優れた溶融指数により加工性に優れながらも、衝撃強度、めっき密着力及び熱的特性などが大きく改善されたことが確認できた。
【0134】
さらに、本発明は、通常のめっき工程においてエッチング時間を減少させることで未めっきの発生率が高くならざるを得ない条件でも、未めっきが全く発生せず、機械的物性及び熱的特性に優れ、特にめっき密着力が非常に改善されることが確認できた。
【0135】
参考に、a)グラフト共重合体とb)グラフト共重合体との重量比が1:5である実施例10は、めっき密着力は多少低下したが、溶融指数及び衝撃強度に優れ、未めっきの発生有無、熱衝撃テスト及びめっき外観品質に異常なく優れていることが確認できた。
【0136】
反面、前記表2に示したように、d)シロキサン樹脂を含まないか、または本発明に係る含量範囲に満たない比較例1及び2の場合、未めっきが発生し、d)シロキサン樹脂が本発明に係る含量範囲を超える比較例3の場合、めっき密着力が大きく低下し、熱衝撃の評価後、めっき膜の膨れやクラックが発生してしまい、熱的特性が不良であることが確認できた。
【0137】
また、d)シロキサン樹脂の動粘度が200cSt以上である比較例4、5及び7は、めっき密着力が大きく低下し、熱衝撃の評価後、めっき膜の膨れやクラックが発生してしまい、熱的特性が不良であり、d)シロキサン樹脂の動粘度が5cSt以下である比較例6は、めっき外観品質が非常に不良であることが確認できた。
【0138】
また、ゴムの粒径が大きいb)ABS樹脂のみを含む比較例8は、めっき密着力が大きく低下し、また、熱衝撃の評価後、めっき膜の膨れやクラックが発生してしまい、熱的特性が不良であり、ゴムの粒径が小さいa)ABS樹脂のみを含むか、またはa)ABS樹脂をb)ABS樹脂ほど含む比較例9、10は、流動性が低下し、また、熱衝撃の評価後、めっき膜の膨れやクラックが発生してしまい、熱的特性が不良であることが確認できた。
【0139】
また、c)スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂を85重量%で、本発明に係る含量範囲を超えて含む比較例11は、衝撃強度とめっき密着力が著しく低下し、未めっきが発生し、熱衝撃の評価後、めっき膜の膨れやクラックが発生してしまい、熱的特性が不良であり、逆に、c)スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂を40重量%で、本発明に係る含量範囲に満たないように含む比較例12は、流動性が低下し、また、熱衝撃の評価後、めっき膜の膨れやクラックが発生してしまい、熱的特性が不良であることが確認できた。
【0140】
結論として、a)ABS樹脂、b)ABS樹脂、c)SAN樹脂及びd)シロキサン樹脂が本発明に係る範囲を満たす場合に限って、めっき密着力、未めっきの未発生、熱的特性及びめっき外観品質などのめっき特性がいずれも優れ、加工性に優れるので、めっき用樹脂組成物に適することが確認できた。