【実施例1】
【0017】
図1〜
図10を用いて、実施例1に係る基板処理装置及び半導体装置の製造方法について説明する。
<基板処理装置の全体構成>
本実施形態において、基板処理装置は、半導体装置(デバイス)の製造方法における製造工程の一工程として熱処理等の基板処理工程を実施する縦型基板処理装置(以下、処理装置と称する)1として構成されている。
図1に示すように、処理装置1は、移載室124と、移載室124の上方に配置された処理炉2を有する。
【0018】
処理炉2は、鉛直方向に延びた円筒形状の反応管4と、反応管4の外周に設置された第1加熱手段(炉体)としてのヒータ3(
図4参照)とを備える。反応管4は、例えば石英やSiCにより形成される。反応管4の内部には、基板としてのウェハ7を処理する処理室6が形成される。
【0019】
反応管4の下端開口部には、円筒形のマニホールド5が、Oリング等のシール部材を介して連結され、反応管4の下端を支持している。マニホールド5は、例えばステンレス等の金属により形成される。マニホールド5の下端開口部は円盤状の図示していないシャッタまたは蓋部122によって開閉される。蓋部122は、例えば金属により円盤状に形成される。図示していないシャッタおよび蓋部122の上面にはOリング等のシール部材が設置されており、これにより、反応管4内と外気とが気密にシールされる。
【0020】
蓋部122上には、断熱部144が載置される。断熱部144は、例えば石英により形成される。断熱部144は、表面または内部に第2加熱手段(加熱機構)としてのキャップヒータ144aを有する。キャップヒータ144aは、処理室6の下方や後述するボート126の下部に保持された基板を加熱するよう構成される。断熱部144の上方には、基板保持部としてのボート126が設置される。ボート126は、天板126aと、底板126cと、天板126aと底板126cとの間に複数本設置された柱126bとで構成される。ボート126は、柱126bに複数段形成された溝にウェハ7を載置することにより、複数枚、例えば25〜150枚のウェハ7を垂直方向に多段に支持する。ボート126は、例えば石英やSiCより形成される。断熱部144とボート126により基板保持体127が構成される。基板処理の際、基板保持体127は、処理室6内に収納される。
【0021】
断熱部144は、蓋部122を貫通する回転軸128に接続される。回転軸128は、蓋部122の下方に設置された回転機構130に接続されている。回転機構130によって回転軸128を回転させることにより、断熱部144およびボート126を回転させることができる。
【0022】
移載室124内には、基板移載機156と、ボート126と、昇降機構としてのボートエレベータ132とが配置される。基板移載機156は、例えば5枚のウェハ7を取り出すことができるアーム(ツィーザ)156aを有している。基板移載機156は、図示しない駆動手段によりアーム156aを上下回転動作させることにより、ポッドオープナ158の位置に置かれたポッド160とボート126との間にて、ウェハ7を搬送させることが可能なように構成される。ボートエレベータ132は、蓋部122を上下に昇降させることにより、反応管4に対してボート126を搬入出させる。移載室124の構成の詳細については後述する。
【0023】
処理装置1は、基板処理に使用されるガスを処理室6内に供給するガス供給機構134を備えている。ガス供給機構134が供給するガスは、成膜される膜の種類に応じて適宜換えられる。ガス供給機構134は、原料ガス供給部(原料ガス供給系)、反応ガス供給部(反応ガス供給系)および不活性ガス供給部(不活性ガス供給系)を含む。
【0024】
原料ガス供給系は、ガス供給管9を備え、ガス供給管9には、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)10および開閉弁であるバルブ11が設けられている。ガス供給管9はマニホールド5の側壁を貫通するノズル8に接続される。ノズル8は、反応管4内に上下方向に沿って立設し、ボート126に保持されるウェハ7に向かって開口する複数の供給孔が形成されている。ノズル8の供給孔を通してウェハ7に対して原料ガスが供給される。
【0025】
以下、同様の構成にて、反応ガス供給系からは、ガス供給管9、MFC10、バルブ11およびノズル8を介して、反応ガスがウェハ7に対して供給される。不活性ガス供給系からは、ガス供給管12、MFC13、バルブ14およびノズル8を介して、反応ガスがウェハ7に対して供給される。
【0026】
マニホールド5には、排気管15が取り付けられている。排気管15には、処理室6内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ16および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ17を介して、真空排気装置としての真空ポンプ18が接続されている。このような構成により、処理室6内の圧力を処理に応じた処理圧力とすることができる。
【0027】
次に、本実施形態にかかる移載室124の構成について
図1〜3を用いて説明する。
【0028】
図2、3に示すように、移載室124は、天井、床および四方を囲う側壁120によって平面多角形状に構成され、例えば、平面四角形状(直方体)に構成される。移載室124の一側面には、第1送風部(第1ガス供給部)としてのクリーンユニット162が設置される。クリーンユニット162よりクリーンエア(清浄雰囲気)としてのガスが移載室124内に供給される。また、移載室124の周囲に位置する空間には、ガスを循環させるための循環路174が形成される。移載室124内に供給されたガスは、側面排気部172aより排気され、循環路174を経由してクリーンユニット162より再び移載室124内に供給される。循環路174の途中には図示しないラジエタが設置され、ガスはラジエタを通過することにより冷却される。
【0029】
クリーンユニット162は、上部クリーンユニット162aと下部クリーンユニット162bとが上下に隣り合うように配置される。上部クリーンユニット162aは、移載室124内、特にボート126に向けてガスを供給するよう構成される。下部クリーンユニット162bは、移載室124内、特に断熱部144に向けてガスを供給するよう構成される。以下、クリーンユニット162と称した場合は、上部クリーンユニット162aを示す場合、下部クリーンユニット162bを示す場合、またはそれらの両方を示す場合を含む。
【0030】
クリーンユニット162は、上流側から順に、送風部としてのファン164と、バッファ室としてのバッファエリア166と、フィルタ部168と、ガス供給口170とを有する。バッファエリア166は、ガス供給口170の全面からガスを均一に吹き出すための拡散空間である。フィルタ部168は、ガスに含まれるパーティクルを取り除くように構成される。ファン164、バッファエリア166、フィルタ部168、ガス供給口170は、上部クリーンユニット162a、下部クリーンユニット162bにそれぞれ備えられている。
【0031】
クリーンユニット162の対面側の一側面には、側面排気部172aとボートエレベータ132が設置される。上部クリーンユニット162aから移載室124内に供給されたガスは、主に側面排気部172aより排気され、循環路174を経由してクリーンユニット162より移載室124内に再び供給される。これにより、移載室124内の上部領域(ウェハ7領域)には、水平方向(ウェハ7と平行な方向)のガス流れ(サイドフロー)が形成される。
【0032】
図3に示すように、移載室124の床面には、ボート126を挟んで一対の底面排気部172bが設けられている。底面排気部172bは、移載室124の一辺に沿って長方形状に形成される。下部クリーンユニット162bから移載室124内に供給されたガスは、主に底面排気部172bより排気され、循環路174を経由してクリーンユニット162より移載室124内に再び供給される。これにより、移載室124内の下部領域(断熱部144領域)には、垂直方向のガス流れ(ダウンフロー)が形成される。
【0033】
図2及び
図3に示すように、クリーンユニット162が設置される側面と対面する側面以外の側面には、第2送風部(第2ガス供給部)としてのガスパイプ176が設置される。例えば、ガスパイプ176は、クリーンユニット162が設置される側面に隣接する側面に設置される。本実施例では、ガスパイプ176は、移載室124内の基板移載機156とボート126を挟んで対面する位置(移載室124の側面とボート126との間の位置)に設置される。ガスパイプ176は、ボート126の最下段に載置される基板よりも下の領域に向けてガスを供給するよう構成される。好ましくは、ガスパイプ176は、ボート126最下段の基板と断熱部144との間の領域に向けてガスを供給するように構成される。
【0034】
図2に示すように、ガスパイプ176は、移載室124内に水平方向に沿って横設され、基板保持体127に向かって開口する吹出し口176aが形成されている。ガスパイプ176の吹出し口176aを介して移載室124内、特に基板保持体127に対してガスが供給される。ガスとしては、例えば不活性ガスが挙げられる。ガスパイプ176は、移載室124内にガスを供給する移載室ガス供給機構178に接続される。移載室ガス供給機構178は、ガス供給管136cを備え、ガス供給管136cには、上流方向から順に、MFC138cおよびバルブ140cが設けられている。
【0035】
ガスパイプ176は、吹出し口176aの高さ位置が、ボート126の最下段に保持される基板と断熱部144との間の高さ位置となるように設置される。
図3に示すように、吹出し口176aは複数の開孔により形成される。吹出し口176aが偶数個の開孔で形成される場合、ウェハ7の中心線を挟んで左右に同数の開孔が形成される。吹き出し口176bが奇数個の開孔で形成される場合、ウェハ7の中心線上に1つの開孔を形成し、1つの開孔の左右に同数の開孔が形成される。本実施例においては、吹出し口176aは、例えば直径1mm以下の開孔が5つ形成される。平面視において、吹出し口176aは、ウェハ7の直径の範囲内の領域に形成される。言い換えれば、吹出し口176aの開口(形成)範囲がウェハ7の直径の範囲内に収まるように形成される。このような構成により、吹出し口176aから供給されるガスの主流の向きを、水平方向とすることができる。これにより、ボート126の最下段の基板と断熱部144との間の空間にガスの障壁(ガスカーテン)を形成することができ、ボート126側である上部雰囲気(ウェハ7領域の雰囲気)と断熱部144側である下部雰囲気(断熱部144領域の雰囲気)とをガスカーテンにより区切ることができる。
【0036】
図1に示すように、回転機構130、ボートエレベータ132、基板移載機156、ガス供給機構134(MFC10,13およびバルブ11,14)、APCバルブ17、クリーンユニット162、移載室ガス供給機構178(MFC138cおよびバルブ140c)には、これらを制御するコントローラ29が接続される。コントローラ29は、例えば、CPUを備えたマイクロプロセッサ(コンピュータ)からなり、処理装置1の動作を制御するよう構成される。
【0037】
処理炉2は、
図4に示すように、後述する反応管4の筒部を加熱するために、上下方向に沿って配置されたメインヒータとしてのヒータ3を有する。ヒータ3は円筒形状であり、後述する反応管4の筒部(本実施形態では側部)の周囲に上下方向に沿って配置されている。ヒータ3は、上下方向に複数に分割された複数のヒータユニットで構成されている。本実施形態では、ヒータ3は、上方から下方に向かって順にアッパヒータ3Aと、センタアッパヒータ3Bと、センタヒータ3Cと、センタロアヒータ3Dと、ロアヒータ3Eと、を備えている。ヒータ3は、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより、基板処理装置1の設置床に対して垂直に据え付けられている。
【0038】
アッパヒータ3Aと、センタアッパヒータ3Bと、センタヒータ3Cと、センタロアヒータ3Dと、ロアヒータ3Eは、電力調整器70にそれぞれ電気的に接続されている。電力調整器70は、コントローラ29に電気的に接続されている。コントローラ29は、電力調整器70によって各ヒータへの通電量を制御する温度コントローラとしての機能を有する。コントローラ29によって、電力調整器70の通電量が制御されることで、アッパヒータ3Aと、センタアッパヒータ3Bと、センタヒータ3Cと、センタロアヒータ3Dと、ロアヒータ3Eの温度がそれぞれ制御されるようになっている。ヒータ3は、後述するようにガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0039】
ヒータ3の内側に、反応容器(処理容器)を構成する反応管4が配設されている。反応管4は、例えば石英(SiO
2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管4は、下端のフランジ部4Cにおいて互いに結合した外管4Aと内管4Bとを有する2重管構造とされている。言い換えると、外管4Aと内管4Bは、それぞれ円筒状に形成されており、外管4Aの内部に内管4Bが配置されている。外管4Aには、上端が閉じられた天井部72が設けられている。また、内管4Bには、上端が閉じられた天井74が設けられており、内管4Bの下端は開口している。天井74は、内面が平坦な形状とされている。外管4Aは、内管4Bの上方及び側方を取り囲むように配置されている。
【0040】
外管4Aの下部には、フランジ部4Cが設けられている。フランジ部4Cは、外管4Aよりも大きな外径を有し、外側へ突出している。反応管4の下端寄りには、外管4A内と連通する排気ポート4Dが設けられる。これらを含む反応管4全体は単一の材料で一体に形成される。外管4Aは、内側を真空にしたときの圧力差に耐えうるように、比較的肉厚に構成されている。
【0041】
処理炉2は、ヒータ3の上部側に、外管4Aの天井部72の斜め上方側及び上方側を覆うように配置された側部断熱体76及び上部断熱体78を有している。一例として、円筒状の側部断熱体76がヒータ3の上部に設けられており、上部断熱体78が側部断熱体76に架け渡された状態で側部断熱体76に固定されている。これにより、処理炉2は、反応管4の上方及び側方を取り囲む構成とされている。
【0042】
外管4Aの天井部72の上方側であって、上部断熱体78の下壁部には、反応管4の外管4Aの天井部72及び内管4Bの天井74を加熱する天井ヒータ80が設けられている。本実施形態では、天井ヒータ80は、外管4Aの外側に設けられている。天井ヒータ80は、電力調整器70に電気的に接続されている。コントローラ29は、電力調整器70によって天井ヒータ80への通電量を制御する。これにより、天井ヒータ80の温度は、アッパヒータ3Aと、センタアッパヒータ3Bと、センタヒータ3Cと、センタロアヒータ3Dと、ロアヒータ3Eの温度とは独立して制御されるようになっている。
【0043】
マニホールド5は、円筒又は円錐台形状で金属製又は石英製であり、反応管4の下端を支えるように設けられている。マニホールド5の内径は、反応管4の内径(フランジ部4Cの内径)よりも大きく形成されている。これにより、反応管4の下端(フランジ部4C)と後述するシールキャップ19との間に後述する円環状の空間を形成される。この空間もしくはその周辺の部材を炉口部と総称する。
【0044】
内管4Bは、排気ポート4Dよりも反応管の奥側で、その側面において内側と外側を連通させる主排気口4Eを有し、また、主排気口4Eと反対の位置において供給スリット4Fを有する。主排気口4Eは、基板としてのウェハ7が配置されている領域に対して開口する単一の縦長の開口としてもよいし、円周方向に延びた複数のスリットとしてもよい(
図1参照)。供給スリット4Fは、円周方向に伸びたスリットであり、各ウェハ7に対応するように垂直方向に複数並んで設けられている。
【0045】
外管4Aと内管4Bの間の排気空間Sには、供給スリット4Fの位置に対応させて、原料ガス等の処理ガスを供給する1本以上のノズル8が設けられている。ノズル8には、処理ガス(原料ガス)を供給するガス供給管9がマニホールド5を貫通してそれぞれ接続されている。ノズル8から出た処理ガスは、各ウェハ7の端から端へ横断するように、各ウェハ7の隙間(最上段のウェハにあっては、ボート天板21Bとの隙間)をウェハ7の表側面に平行に流れる。
【0046】
それぞれのガス供給管9の流路上には、上流方向から順に、流量制御器であるマスフローコントローラ(MFC)10および開閉弁であるバルブ11が設けられている。バルブ11よりも下流側では、不活性ガスを供給するガス供給管12がガス供給管9に接続されている。ガス供給管12には、上流方向から順に、MFC13およびバルブ14が設けられている。主に、ガス供給管9、MFC10、バルブ11により、処理ガス供給系であるガス供給機構が構成される。
【0047】
ノズル8は、ガス供給空間S1内に、反応管4の下部から立ち上がるように設けられている。ノズル8の側面や上端には、ガスを供給する1ないし複数のノズル孔8Hが設けられている。複数のノズル孔8Hは、供給スリット4Fのそれぞれの開口に対応させて、反応管4の中心を向くように開口させることで、内管4Bを通り抜けてウェハ7に向けてガスを噴射することができる。
【0048】
排気ポート4Dには、処理室6内の雰囲気を排気する排気管15が接続されている。排気管15には、処理室6内の圧力を検出する圧力検出器(圧力計)としての圧力センサ16および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ17を介して、真空排気装置としての真空ポンプ18が接続されている。APCバルブ17は、真空ポンプ18を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室6内の真空排気および真空排気停止を行うことができる。更に、APCバルブ17は、真空ポンプ18を作動させた状態で、圧力センサ16により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室6内の圧力を調整することができるように構成される。主に、排気管15、APCバルブ17、圧力センサ16により、排気系が構成される。真空ポンプ18を排気系に含めて考えてもよい。
【0049】
マニホールド5の下方には、マニホールド5の下端の開口90を気密に閉塞可能な蓋としてのシールキャップ19が設けられている。すなわち、シールキャップ19は、反応管4の外管4Aを塞ぐ蓋(シャッター)としての機能を有する。シールキャップ19は、例えばステンレスやニッケル基合金等の金属からなり、円板状に形成されている。シールキャップ19の上面には、マニホールド5の下端と当接するシール部材としてのOリング19Aが設けられている。
【0050】
また、シールキャップ19の上面には、マニホールド5の下端内周より内側の部分に対し、シールキャップ19を保護するカバープレート20が設置されている。カバープレート20は、例えば、石英、サファイヤ、またはSiC等の耐熱耐蝕性材料からなり、円板状に形成されている。カバープレート20は、機械的強度が要求されないため、薄い肉厚で形成されうる。カバープレート20は、シールキャップ19と独立して用意される部品に限らず、シールキャップ19の内面にコーティングされた或いは内面が改質された、窒化物等の薄膜或いは層であってもよい。カバープレート20はまた、円周の縁からマニホールド5の内面に沿って立ち上がる壁を有しても良い。
【0051】
反応管4の内管4Bの内部には、基板保持具としてのボート21(
図1のボート126に対応)が収容されている。ボート21は、直立した複数の支柱21Aと、複数の支柱21Aの上端を互いに固定する円板状のボート天板21Bと、を備えている。ここで、ボート天板21Bは、天板の一例である。なお、本実施形態では、ボート21は、複数の支柱21Aの下端部に円環状の底板21Cを備えているが、これに代えて、円板状の底板を設けてもよい。
【0052】
ボート21は、例えば25〜200枚のウェハ7を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持する。そこではウェハ7は、一定の間隔を空けて配列させる。ボート21は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で形成されている。
【0053】
反応管4の内管4Bは、ボート21を安全に搬入出可能な最小限の内径を有することが望ましい。本実施形態では、例えば、ボート天板21Bの直径は、内管4Bの内径の90%以上98%以下に設定されるか、又は、ボート21に保持されたウェハ7間のギャップは、例えば、6mm以上16mm以下に設定されている。ここで、ボート天板21Bの直径は、内管4Bの内径の90%以上98%以下が好ましく、92%以上97%以下がより好ましく、94%以上96%以下がさらに好ましい。
【0054】
ボート天板21Bの直径が、内管4Bの内径の90%以上とされることで、ボート天板21Bの縁と内管4Bとの隙間を狭くすることができ、拡散によるガス移動(特にボート天板21B上からウェハ7側へ後述する余剰ラジカルが流入すること)を抑制することができる。また、ボート天板21Bの直径が、内管4Bの内径の98%以下とされることで、ボート21を内管4Bから安全に搬入出することができる。
【0055】
また、ウェハ7間のギャップは、6mm以上16mm以下が好ましく、7mm以上14mm以下がより好ましく、8mm以上12mm以下がさらに好ましい。ウェハ7間のギャップが、6mm以上とされることで、隣り合うウェハ7の間をガスがスムーズに流れる。また、ウェハ7間のギャップが16mm以下とされることで、より多くのウェハ7を処理することができる。
【0056】
さらに、本実施形態では、ボート天板21Bによって他と仕切られた、天井74とボート天板21Bとで挟まれた上端空間の容積は、例えば、ボート21に保持された互いに隣接する(隣り合う)ウェハ7に挟まれた空間の容積の、1倍以上3倍以下となるように設定されている。
【0057】
ここで、天井74とボート天板21Bとで挟まれた上端空間の容積は、互いに隣接するウェハ7に挟まれた空間の容積の1倍以上3倍以下が好ましく、1倍以上2.5倍以下がより好ましく、1倍以上2倍以下がさらに好ましい。すなわち、天井74とボート天板21Bとで挟まれた上端空間の容積は小さいほど好ましい。ただし、ガスが主排気口4Eにスムーズに流れることが求められる。
【0058】
天井74とボート天板21Bとで挟まれた上端空間の容積が、ボート21に保持された互いに隣接するウェハ7に挟まれた空間の容積の3倍以下とされることで、ガス余りの絶対量が少なくなる。また、天井74とボート天板21Bとで挟まれた上端空間の容積が、ボート21に保持された互いに隣接するウェハ7に挟まれた空間の容積の1倍以上とされることで、ガスが主排気口4Eにスムーズに流れる。
【0059】
ボート21の下部には後述する断熱アセンブリ(断熱構造体)22が配設されている。断熱アセンブリ22は、上下方向の熱の伝導或いは伝達が小さくなるような構造を有し、通常、内部に空洞を有する。内部は軸パージガスによってパージされうる。反応管4において、ボート21が配置されている上部分をウェハ7の処理領域A、断熱アセンブリ22が配置されている下部分を断熱領域Bと呼ぶ。
【0060】
シールキャップ19の処理室6と反対側には、ボート21を回転させる回転機構23(
図1の回転機構130に対応)が設置されている。回転機構23には、軸パージガスのガス供給管24が接続されている。ガス供給管24には、上流方向から順に、MFC25およびバルブ26が設けられている。このパージガスの1つの目的は、回転機構23の内部(例えば軸受け)を、処理室6内で用いられる腐食性ガスなどから守ることである。パージガスは、回転機構23から回転軸66(
図1の回転軸128に対応)に沿って供給され、断熱アセンブリ22内に導かれる。
【0061】
ボートエレベータ27(
図1の132に対応)は、反応管4の外部下方に垂直に備えられ、シールキャップ19を昇降させる昇降機構(搬送機構)として動作する。これにより、シールキャップ19に支えられたボート21およびウェハ7が、処理室6内外に搬入出される。なお、シールキャップ19が最下位置に降りている間、シールキャップ19の代わりに反応管4の下端開口を塞ぐシャッタ(不図示)を設けることもできる。
【0062】
外管4Aの側部の外壁若しくは内管4Bの内側には、反応管4の内部の温度を検出する処理空間温度センサとしての温度センサ(温度検出器)28が設置されている。温度センサ28は、例えば、上下に並んで配列された複数の熱電対によって構成される。図示を省略するが、温度センサ28は、コントローラ29に電気的に接続されている。温度センサ28により検出された温度情報に基づき、コントローラ29は、電力調整器70によってアッパヒータ3Aと、センタアッパヒータ3Bと、センタヒータ3Cと、センタロアヒータ3Dと、ロアヒータ3Eへの通電量をそれぞれ調整することで、処理室6内の温度が所望の温度分布となる。
【0063】
また、外管4Aの天井部72の外壁には、反応管4内の上部の温度を検出する上端空間温度センサとしての温度センサ(温度検出器)82が設置されている。温度センサ82は、例えば、水平方向に並んで配列された複数の熱電対によって構成される。図示を省略するが、温度センサ82は、コントローラ29に電気的に接続されている。温度センサ82により検出された温度情報に基づき、コントローラ29は、電力調整器70によって天井ヒータ80への通電量を調整することで、処理室6内の上部の温度が所望の温度分布となる。
【0064】
図1に示されているように、移載室124にはパーティクルを測定するために捕集する測定口である空間パーティクル測定口(以下、パーティクル測定口)400が設置され、当該パーティクル測定口400はチューブ401でパーティクルを計測するためのカウンタである空間パーティクルカウンタ(以下、パーティクルカウンタ)402につながれている。空間に漂うパーティクルを測定する測定器としてのパーティクル測定器はパーティクル測定口400、チューブ401およびパーティクルカウンタ402によって構成される。さらに、パーティクルカウンタ402は、後述するコントローラ29と接続されている。
【0065】
パーティクルカウンタ402は内部にポンプを備えており、パーティクル測定口400から周辺の雰囲気を吸い込んでいる。コントローラ29は、ボート21が処理炉2内から下降し始める時、すなわち、シールキャップ19が処理炉2の下端部から離れて炉口61が開放される時にパーティクルカウンタ402に「測定開始」の信号を送る。パーティクルカウンタ402はコントローラ29から「測定開始」信号を受信すると、測定開始時前に記憶していたパーティクル数を0(ゼロ)にリセットした後、吸い込んだ雰囲気中に含まれるパーティクル数を検出し、その数を累積カウントし、累積パーティクル数として記録する。また、コントローラ29は、パーティクルカウンタ402から送られてくるパーティクル数を入出力装置222(
図5参照)の表示画面(以下、画面)に表示するようにしてもよい。
【0066】
このパーティクルカウンタ402で、冷却ガスの供給中にその下流で測定を行う。コントローラ29は、ボート21に収納された溶射被膜が形成されたダミーウェハを横切った冷却ガスからパーティクルカウンタ402が測定したパーティクルが規定値を超えた時に、所定の記録動作、報告動作あるいは当該ダミーウェハをボート21から取り除く動作を行う。つまり、溶射被膜の表面形状は極めてランダムであるため、その上に成膜されたSiN膜が容易に剥離するような特異な局所形状をしている可能性が否定できない。したがって、実際に成膜を行って、パーティクルを発生させやすいダミーウェハを見極めて除外することが有効である。
【0067】
コントローラ29は、
図5に示すように、MFC10、13、25、138c、バルブ11、14、26、140c、圧力センサ16、APCバルブ17、真空ポンプ18、回転機構23、130、ボートエレベータ132(
図4のボートエレベータ27に相当)等の各構成と電気的に接続され、それらを自動制御する。また、コントローラ29は、ヒータ3(アッパヒータ3A、センタアッパヒータ3B、センタヒータ3C、センタロアヒータ3D、ロアヒータ3E)、天井ヒータ80、キャップヒータ34(
図1のキャップヒータ144aに相当)、温度センサ28、82等の各構成と電気的に接続され、それらを自動制御する。図示を省略するが、コントローラ29は、電力調整器70を介してヒータ3(アッパヒータ3A、センタアッパヒータ3B、センタヒータ3C、センタロアヒータ3D、ロアヒータ3E)、天井ヒータ80、キャップヒータ34とそれぞれ電気的に接続されている。
【0068】
コントローラ29は、CPU(Central Processing Unit)212、RAM(Random Access Memory)214、記憶装置216、I/Oポート218を備えたコンピュータとして構成される。RAM214、記憶装置216、I/Oポート218は、内部バス220を介して、CPU212とデータ交換可能なように構成される。I/Oポート218は、上述の各構成に接続されている。コントローラ29には、例えばタッチパネル等との入出力装置222及び外部記憶装置224が接続されている。
【0069】
記憶装置216は、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置216内には、基板処理装置1の動作を制御する制御プログラムや、処理条件に応じて基板処理装置1の各構成に成膜処理等を実行させるためのプログラム(プロセスレシピやクリーニングレシピ等のレシピ)が読み出し可能に格納されている。RAM214は、CPU212によって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0070】
CPU212は、記憶装置216から制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置222からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置216からレシピを読み出し、レシピに沿うように各構成を制御する。
【0071】
コントローラ29は、外部記憶装置(例えば、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ、CDやDVD等の光ディスク、HDD)224に持続的に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置216や外部記憶装置224は、コンピュータ読み取り可能な有体の媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置224を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0072】
コントローラ29は、個々のダミー基板の使用履歴を管理する。つまりダミー基板のそれぞれについて、前記基板保持具に保持されて前記製品ウェハとともに処理された履歴を、膜厚の累積値として保持する。そして、前記累積値が規定値を超えた時に所定の記録動作、報告動作あるいは当該ダミーウェハを前記基板保持具から取り除く動作を行う。
【0073】
このような構成において、ウェハ7として大表面積ウェハ(表側の表面に凹凸状の集積回路パターンが形成されて表面積が、例えば、平坦な表面のベアウェハの100倍)を従来の方法で処理した際の面間のラジカル分布の解析結果を
図6に示す。これは膜厚分布と相関がある。縦型装置では通常、製品として使用するウェハ7(プロダクトウェハ610)の他に、ボート126の上下端に製品として使用しないダミーウェハ620を数枚装填してプロセスを行う。これは主にプロダクトウェハ610の温度の均一性を保つためである。本例ではプロダクトウェハ610は、スロット8〜107に装填され、それらの両端にはそれぞれ7〜8枚のダミーウェハ620がプロダクトウェハ610と同じ間隔で装填される。
【0074】
図6に示した従来の方法では、プロダクトウェハ610(表面に回路パターンが形成されたウェハ:以下、パターンウェハと記す)の上下端においてラジカルの分圧が上昇し、均一性が悪化していることが分かる。この原因は、パターンウェハ610上は表面積が大きくラジカルの消費が激しいために気相中のラジカル濃度は低くなる一方で、表面積が小さいダミーウェハ620上では消費が少ないため気相中のラジカル濃度は高いためである。
【0075】
そして、このような極端な濃度差がついているパターンウェハ610とダミーウェハ620が隣り合う領域では、気相中の濃度拡散が発生しラジカル濃度差を緩和する方向に働く。そのためプロダクトウェハ610の上下端では必然的に濃度が高く(膜厚が厚く)なり、均一性を悪化させてしまう。このようにして、ラジカルの消費がほとんどないダミーウェハ620と、消費が激しいパターンウェハ610(表面積に比例する)の差によってローディングエフェクトが発生する
そのための対策のひとつとして、既存のダミーウェハ620ではなく、ダミーウェハにSi溶射処理を施すことによってダミーウェハ上の表面積を増大させることが考えられる。ダミーウェハの表面積をパターンウェハと同等かもしくはそれ以上とすることによって、両者の消費差をなくしてローディングエフェクトを緩和することができる。ただし、例えばダミーウェハ表面を粗面化しただけでは、表面積はベアウェハの数倍程度にしかならず、大表面積のパターンウェハには対応できない。これに対して、本手法のSi溶射処理を用いれば、ベアウェハの数十倍〜数百倍まで表面積を増大することができる。
【0076】
[Si溶射ダミーウェハの作り方]
ダミーウェハは、一般的に、デバイス製造過程等で生じる不良ウェハを再研磨して用意されることが多い。本実施例のSi溶射ダミーウェハ820(
図10参照)も、そのようなダミーウェハ(ベアーダミー)を材料とすることができる。本実施例のSi溶射ダミーウェハは、まず、単結晶Siウェハであるベアーダミー821の表側面に、Si溶射によりSi溶射被膜822を形成する。溶射には大きく分けて、原料を溶解し溶滴(微粒子)にして吹き付けるサーマルスプレーと、固体の粉体を臨界速度以上で吹き付けるコールドスプレーがあり、いずれも利用できる。
【0077】
このとき、Si溶射ダミーウェハ820のSi溶射被膜822中の気孔が連続細孔となり、かつ大表面積を得るために適度に高い気孔率となる条件で安定して溶射が行われる必要がある。この点において、溶射は低温で行われた方が、微粒子が基材にたたきつけられて扁平化したスプラットが過度に密着しないので好ましい場合がある。このように形成された多孔質膜は、表面に開口した連続細孔に富んでおり、その表面積が膜厚(体積)に比例し、この比例定数は比表面積と呼ばれる。
【0078】
Si溶射によるSi溶射被膜822を形成後、Si溶射ダミーウェハ820は、製品ウェハ810(パターンウェハ610に相当)と類似した洗浄(例えば改良型RCA洗浄)及び乾燥が行われ、更に必要に応じてウェハ表面検査装置等による異物(パーティクル)検査を行う。
【0079】
なお、製品ウェハ810への成膜の際のラジカル消費をできるだけ忠実に再現しようとすると、Si溶射ダミーウェハ820の被膜中の細孔の径を、製品ウェハ810のパターンの寸法(ヴィアの直径やトレンチの幅)に対応させた方が良い場合がある。例えば3D NANDで用いられるヴィア直径は50nm以下である。一方で、Si溶射により形成する溶射被膜の細孔の径は、溶射する微粒子のサイズによってある程度制御できる。
【0080】
図7に、Si溶射ダミーウェハ820に形成された、好ましいSi溶射被膜822の積算細孔容積分布701の例を示す。製品ウェハ810のパターンのスケールを50nmとしたときに、積算細孔容積は約40%となっている。このように、積算細孔容積分布701において全容積の25%から75%に相当する細孔直径の範囲に、製品ウェハ810が有するヴィアの直径もしくはトレンチの幅が収まっていることが望ましい。75%の積算容積に対応する細孔直径が、パターンのサイズに比べて小さいと、細孔が小さすぎるために細孔の閉塞が起こりやすいだけでなく、毛管凝縮のような別の現象が起こって、製品ウェハ810を模擬できなくなる恐れがある。他方、25%の積算容積に対応する細孔直径が、パターンのサイズに比べて大きいと、細孔が大きすぎるために、忠実に模擬できなくなる恐れがある。
【0081】
あるいは、Si溶射による溶射被膜にフッ化水素酸水溶液中での陽極化成による多孔質化を施し、製品ウェハ810上に形成されたパターンと同等のスケールのメソ孔を形成してもよい。この場合、表面積Sは下記の式で表現される:
S = S
s0 * t
s * (1 + S
p0 * t
p),
ここで、t
s は溶射処理時間、S
s0は溶射によって単位時間に形成される表面積、t
s は陽極化成時間、S
p0は陽極化成によって短時間に増加する表面積であり、S
s0 とS
p0は経験的に得られる。
【0082】
[成膜シミュレーション]
Si溶射ダミーウェハ820と回路パターンが形成された製品ウェハ810の表面積を同じにした場合の面間のラジカル分布の解析結果を
図8に示す。この計算は実機よりもシンプルなモデルで実施しているが、Si溶射ダミーウェハ820と製品ウェハ810の消費差がなければ上下端でもフラットとなり、面間のラジカル分布が均一となっていることが示されている。ラジカル濃度差が抑えられることにより、ローディングエフェクトも解消されうる。供給律速のCVDでない限り、ラジカル分圧が直ちに膜厚に比例するわけではないが、この濃度差は例えば5%以内であることが望ましい。
実際の装置では、ボート天板と反応管の間の空間に高濃度のラジカルが存在するなどの影響により、製品ウェハ810よりも少し大きめな表面積のSi溶射ダミーウェハ820とした方が均一性は良好となる場合もある。
【0083】
本手法のSi溶射層は、溶射膜厚と表面積がほぼ比例しているため、溶射膜厚が厚いほど表面積が大きくなる。すなわち溶射膜厚を変えることで表面積を自由に調整することができる。したがって膜種や世代によって表側面に形成されるパターンが変わることにより製品ウェハ810の表面積が変わるような場合でも、それに合わせて柔軟に対応することができる。
【0084】
[1ロット(バッチ)分の成膜処理手順]
次に、上記の基板処理装置1を用い、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、1ロット分のウェハ7上に膜を形成する処理(以下、成膜処理ともいう)のシーケンス例について、主に
図4に示した構成に基づいて、
図9を用いて説明する。
【0085】
(ウェハチャージおよびボートロード):S901
ボート21(
図1のボート126)には、ウェハ7を保持可能なすべての位置に、パターンが形成された複数のプロダクトウェハが保持されている。複数枚のウェハ7がボート21に装填(ウェハチャージ)されると、ボート21は、ボートエレベータ27(
図1のボートエレベータ132)によって処理室6内に搬入(ボートロード)される。このとき、シールキャップ19は、Oリング19Aを介してマニホールド5の下端を気密に閉塞(シール)した状態となる。ウェハチャージする前のスタンバイの状態から、バルブ26を開き、円筒部39内へ少量のパージガスが供給されうる。
【0086】
(圧力調整):S902
処理室6内、すなわち、ウェハ7が存在する空間が所定の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ18によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室6内の圧力は、圧力センサ16で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ17が、フィードバック制御される。円筒部39内へのパージガス供給及び真空ポンプ18の作動は、少なくともウェハ7に対する処理が終了するまでの間は維持する。
【0087】
(昇温工程):S903
処理室6内から酸素等が十分排気された後、処理室6内の昇温が開始される。処理室6が成膜に好適な所定の温度分布となるように、温度センサ28が検出した温度情報に基づきヒータ3(アッパヒータ3A、センタアッパヒータ3B、センタヒータ3C、センタロアヒータ3D、ロアヒータ3E)への通電量がフィードバック制御される。また、温度センサ82が検出した温度情報に基づき天井ヒータ80への通電量がフィードバック制御される。
【0088】
ヒータ3(アッパヒータ3A、センタアッパヒータ3B、センタヒータ3C、センタロアヒータ3D、ロアヒータ3E)、天井ヒータ80及びキャップヒータ34による処理室6内の加熱は、少なくともウェハ7に対する処理(成膜)が終了するまでの間は継続して行われる。キャップヒータ34への通電期間は、ヒータ3による加熱期間と一致させる必要はない。成膜が開始される直前において、キャップヒータ34の温度は、成膜温度と同温度に到達し、マニホールド5の内面温度は180℃以上(例えば260℃)に到達していることが望ましい。
【0089】
また、回転機構23によるボート21およびウェハ7の回転を開始する。回転機構23により、回転軸66、回転台37、円筒部39を介してボート21が回転されることで、キャップヒータ34は回転させずにウェハ7を回転させる。これにより加熱のむらが低減される。回転機構23によるボート21およびウェハ7の回転は、少なくとも、ウェハ7に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0090】
(成膜工程):S904
S903で処理室6内の温度が予め設定された処理温度に安定すると、成膜工程S904でステップ1:S9041〜ステップ4:S9044を繰り返し実行する。なお、ステップ1:S9041を開始する前に、バルブ26を開き、パージガス(N
2)の供給を増加させてもよい。
【0091】
[ステップ1:原料ガス供給工程]:S9041
ステップ1では、処理室6内のウェハ7に対し、HCDSガスを供給する。バルブ11を開くと同時にバルブ14を開き、ガス供給管9内へHCDSガスを、ガス供給管12内へN
2ガスを流す。HCDSガスおよびN
2ガスは、それぞれMFC10、13により流量調整され、ノズル室42を介して処理室6内へ供給され、排気管15から排気される。ウェハ7に対してHCDSガスを供給することにより、ウェハ7の最表面上に、第1の層として、例えば、シリコン(Si)含有膜が形成される。
【0092】
[ステップ2:原料ガス排気工程]:S9042
第1の層が形成された後、バルブ11を閉じ、HCDSガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ17は開いたままとして、真空ポンプ18により処理室6内を真空排気し、処理室6内に残留する未反応もしくは第1の層の形成に寄与した後のHCDSガスを処理室6内から排出する。また、バルブ14やバルブ26を開いたままとして、供給されたN2ガスは、ガス供給管9や反応管4内、炉口部をパージする。
【0093】
[ステップ3:反応ガス供給工程]:S9043
ステップ3では、処理室6内のウェハ7に対してNH
3ガスを供給する。バルブ11、14の開閉制御を、ステップ1におけるバルブ11、14の開閉制御と同様の手順で行う。NH
3ガスおよびN
2ガスは、それぞれMFC10、13により流量調整され、ノズル室42を介して処理室6内へ供給され、排気管15から排気される。ウェハ7に対して供給されたNH
3ガスは、ステップ1でウェハ7上に形成された第1の層、すなわちSi含有層の少なくとも一部と反応する。これにより第1の層は窒化され、SiおよびNを含む第2の層、すなわち、シリコン窒化層(SiN層)へと変化(改質)される。
【0094】
[ステップ4:反応ガス排気工程]:S9044
第2の層が形成された後、バルブ11を閉じ、NH
3ガスの供給を停止する。そして、ステップ1と同様の処理手順により、処理室6内に残留する未反応もしくは第2の層の形成に寄与した後のNH3ガスや反応副生成物を処理室6内から排出する。
【0095】
以上の4つのステップS9041からS9044までを非同時に、すなわち、オーバーラップさせることなく行うサイクルを所定回数(n回)行うことにより、ウェハ7上に、所定組成および所定膜厚のSiN膜を形成することができる(S9045)。
【0096】
上述の成膜工程:S904におけるステップS9041からS9044までのシーケンスの処理条件としては、例えば、
処理温度(ウェハ温度):250〜700℃、
処理圧力(処理室内圧力):1〜4000Pa、
HCDSガス供給流量:1〜2000sccm、
NH
3ガス供給流量:100〜10000sccm、
N
2ガス供給流量(ノズル):100〜10000sccm、
N
2ガス供給流量(回転軸):100〜500sccm、
が例示される。それぞれの処理条件を、それぞれの範囲内のある値に設定することで、成膜処理を適正に進行させることが可能となる。
【0097】
HCDS等の熱分解性ガスは、石英よりも金属の表面において副生成物の膜を形成しやすい場合がある。HCDS(及びアンモニア)に晒された表面は、特に260℃以下のときにSiO、SiONなどが付着しやすい。
【0098】
(パージおよび大気圧復帰):S905
成膜処理が完了した後、バルブ14を開き、ガス供給管12からN
2ガスを処理室6内へ供給し、排気管15から排気する。これにより、処理室6内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、残留する原料や副生成物が処理室6内から除去(パージ)される。その後、APCバルブ17が閉じられ、処理室6内の圧力が常圧になるまでN
2ガスが充填される(大気圧復帰)。
【0099】
(ボートアンロードおよびウェハディスチャージ):S906
ボートエレベータ27によりシールキャップ19が下降され、マニホールド5の下端が開口される。そして、処理済のウェハ7が、ボート21に支持された状態で、マニホールド5の下端から反応管4の外部に搬出される(ボートアンロード)。処理済のウェハ7は、ボート21より取出される。
【0100】
上述の成膜処理を行うと、加熱されていた反応管4内の部材の表面、例えば、外管4Aの内壁、ノズル8の表面、内管4Bの表面、ボート21の表面等に、窒素を含むSiN膜等が堆積し、薄膜を形成しうる。そこで、これらの堆積物の量、すなわち、累積膜厚が、堆積物に剥離や落下が生じる前の所定の量(厚さ)に達したところで、クリーニング処理が行われる。クリーニング処理は、反応管4内へフッ素系ガスとして例えばF
2ガスを供給することで行われる。
【0101】
(降温工程): :S907
基板保持体127の移載室124への搬出が完了すると、ウェハ7が所定の温度になるまで移載室124内でウェハ7を降温(冷却)させる。この時、クリーンユニット162からは第1の流速および第1の流量でのガス供給が継続され、ガスパイプ176からは第1の流速より大きい第3の流速および第1の流量より小さく、第2の流量より大きい第3の流量で基板保持体127にガスが供給される。ここで、所定の温度とは、ウェハ7を搬出可能な温度であり、ツィーザ156aまたはポッド160の耐熱温度以下の温度である。
【0102】
第3の流速は、例えば20〜40cm/sであり、第3の流量は、例えば15〜70L/minである。第3の流速が20cm/sより小さい場合、または、第3の流量が15L/minより小さい場合、ボート21最下段のウェハ7と断熱部144との間の領域に水平なガスの流れを形成することができない。第3の流速が40cm/sより大きい場合、または、第3の流量が70L/minより大きい場合、ウェハ7が振動してしまう。
【0103】
上述の成膜処理を行うと、加熱されていた反応管4内の部材の表面、例えば、外管4Aの内壁、ノズル8の表面、内管4Bの表面、ボート21の表面等に、窒素を含むSiN膜等が堆積し、薄膜を形成しうる。そこで、これらの堆積物の量、すなわち、累積膜厚が、堆積物に剥離や落下が生じる前の所定の量(厚さ)に達したところで、クリーニング処理が行われる。クリーニング処理は、反応管4内へフッ素系ガスとして例えばF
2ガスを供給することで行われる。
【0104】
ボートアンロード時に、冷却ガスでウェハ7やボート21、断熱アセンブリを冷却する。その際、ダミー基板が強い気流にさらされると、急激な冷却による膜剥がれやパーティクルが発生する可能性があるため、流速を下げるように冷却ガスの供給量を制御することができる。
【0105】
[Si溶射ダミーを持続的に使用するための管理]
Si溶射ダミーウェハ820は、成膜されたSiN等によって細孔が徐々に塞がれ、表面積が減少する。N枚のウェハを搭載できるボート21において、それぞれの搭載位置を、一番上からSlot N, Slot N-1, Slot N-2,…とするとき、例えば、Slot Nには使用回数がn回以下のウェハを、Slot N-1には使用回数がn+1回以上2n回以下のウェハを、Slot N-2には使用回数が2n+1回以上3n回以下のウェハを、Slot N-iには使用回数がi * n+1回以上(i + 1) *n回以下のウェハを搭載する。ここで、nは1つの搭載位置に搭載したまま繰り返し使用できる回数、iは0から始まるインデックスである。
【0106】
ボート21の上側のSi溶射ダミーウェハ820の枚数を4枚とすると、ボートダウン時に、Slot N-3に使用回数が4nに達したSi溶射ダミーウェハ820があるとき、移載機は、そのSi溶射ダミーウェハ820をボート21から取り出して所定の収容器に移載し、Slot NからSlot N-2にあるSi溶射ダミーウェハ820を、一段下のSlot N-1からSlot N-3にそれぞれ移し替える。そしてSlot Nには、新たなSi溶射ダミーウェハ820を搭載する。
【0107】
ボート21の下側のSi溶射ダミーウェハ820についても同様である。なお使用回数又は表面積の減少が所定以上になったものを副ダミーウェハとし、Si溶射ダミーウェハ820をダミーウェハと副ダミーウェハの2つにグルー
プ化して管理してもよい。
なおここでは、製品ウェハ810からより遠いところに使用回数のより少ないSi溶射ダミーウェハ820を配置したが、その逆に、製品ウェハ810からより近いところに使用回数のより少ないSi溶射ダミーウェハ820を配置してもよい。
【0108】
[Si溶射ダミーウェハの再生方法]
・再溶射
通常の再生ウェハ同様、一旦Si溶射ダミーウェハ820をCMP等の手法で研磨し、Si溶射被膜822を除去する。あるいは、細孔の開口を実質的に閉塞させるように、今のSi溶射被膜822の上に多結晶または単結晶Si厚膜を例えば成膜させる。その後Si溶射を行う。
【0109】
・ドライ洗浄
Si溶射ダミーウェハ820のSi溶射被膜822上に成膜された材質を選択的にエッチングする方法により、再生可能である。例えばSiN/Siであれば、フッ素化オレフィン(ハイドロフルオロカーボン)を用いた等方性プラズマエッチ等が利用できる。
【0110】
・ウェット洗浄
Si溶射ダミーウェハ820のSi溶射被膜822上に成膜された材質を選択的にエッチングする方法により、再生可能である。例えばSiN/Siであれば、リン酸エッチングが利用できる。
【0111】
本実施例によれば、大消費ウェハ処理時のローディングエフェクトを緩和し、プロダクトウェハ上に形成される膜の、複数のプロダクトウェハ間の面間均一性を向上させることが可能となる。