(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980129
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20211202BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
G01N35/10 F
G01N35/00 B
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-553778(P2020-553778)
(86)(22)【出願日】2019年10月18日
(86)【国際出願番号】JP2019041028
(87)【国際公開番号】WO2020090508
(87)【国際公開日】20200507
【審査請求日】2021年3月17日
(31)【優先権主張番号】特願2018-204879(P2018-204879)
(32)【優先日】2018年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 友一
(72)【発明者】
【氏名】野中 昂平
(72)【発明者】
【氏名】川原 鉄士
【審査官】
松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2018/047545(WO,A1)
【文献】
特開2009−229232(JP,A)
【文献】
特開2013−217740(JP,A)
【文献】
特開2012−150023(JP,A)
【文献】
特開2005−3610(JP,A)
【文献】
特開2010−107398(JP,A)
【文献】
特開平8−278252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルプローブを用いてサンプル分注位置にあるサンプルを分注するサンプル分注システムと、
前記サンプル分注システムを制御する装置制御部とを有し、
前記装置制御部は、サンプルが前記サンプル分注位置に運ばれてくるまでの待機状態においては第1動作シーケンスにより、前記サンプル分注位置にあるサンプルを分注する分析状態においては第2動作シーケンスにより、前記サンプル分注システムを動作させ、
前記第1動作シーケンスの1サイクルにおいて前記サンプルプローブの内部洗浄を行う時間は、前記第2動作シーケンスの1サイクルにおいて前記サンプルプローブの内部洗浄を行う時間よりも短く設定されている自動分析装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1動作シーケンスの1サイクルにおいて前記サンプルプローブの内部洗浄を行う時間は、前記第2動作シーケンスの1サイクルにおいて前記サンプルプローブの内部洗浄を行う時間の20%以上80%以下に設定されている自動分析装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記第1動作シーケンスは、複数サイクルに1回の割合で前記サンプルプローブの内部洗浄を行うよう設定されている自動分析装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記装置制御部は、前記第1動作シーケンスの1サイクルにおいて前記サンプルプローブの内部洗浄を行う時間である内洗時間と前記内洗時間で前記サンプルプローブの内部洗浄を行った場合の前記サンプル分注システムの配管内流体の平衡温度との関係を登録したデータベースを予め記憶しており、
前記装置制御部は、分析状態における前記サンプル分注システムの配管内流体の温度を実測して、分析状態における配管内流体の平均的な平衡温度を推定し、前記データベースを参照して前記第1動作シーケンスの1サイクルにおいて前記サンプルプローブの内部洗浄を行う時間を決定する自動分析装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記第1動作シーケンスの1サイクルの時間と前記第2動作シーケンスの1サイクルの時間とは等しく、
前記第1動作シーケンスの1サイクルにおいて前記サンプルプローブの内部洗浄を開始するタイミングは、前記第2動作シーケンスの1サイクルにおいて前記サンプルプローブの内部洗浄を開始するタイミングよりも早いタイミングに設定されている自動分析装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記第1動作シーケンスは、1サイクルの開始直後に前記サンプルプローブの内部洗浄を行うよう設定されている自動分析装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記第1動作シーケンスは、1サイクルに複数回、前記サンプルプローブの内部洗浄を行うよう設定され、
前記第1動作シーケンスの1サイクルにおいて複数回、前記サンプルプローブの内部洗浄を行う時間の合計時間は、前記第2動作シーケンスの1サイクルにおいて前記サンプルプローブの内部洗浄を行う時間よりも短く設定されている自動分析装置。
【請求項8】
サンプルプローブを用いてサンプル分注位置にあるサンプルを分注するサンプル分注システムと、
前記サンプル分注システムを制御する装置制御部とを有し、
前記装置制御部は、サンプルが前記サンプル分注位置に運ばれてくるまでの待機状態においては第1動作シーケンスにより、前記サンプル分注位置にあるサンプルを分注する分析状態においては第2動作シーケンスにより、前記サンプル分注システムを動作させ、
前記第1動作シーケンスは、複数サイクルに1回の割合で前記サンプルプローブの内部洗浄を行うよう設定されている自動分析装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記第1動作シーケンスの1サイクルにおいて前記サンプルプローブの内部洗浄を行う時間は、前記第2動作シーケンスの1サイクルにおいて前記サンプルプローブの内部洗浄を行う時間よりも短く設定されている自動分析装置。
【請求項10】
請求項8において、
前記装置制御部は、前記第1動作シーケンスで前記サンプルプローブの内部洗浄を行う内洗頻度と前記内洗頻度で前記サンプルプローブの内部洗浄を行った場合の前記サンプル分注システムの配管内流体の平衡温度との関係を登録したデータベースを予め記憶しており、
前記装置制御部は、分析状態における前記サンプル分注システムの配管内流体の温度を実測して、分析状態における配管内流体の平均的な平衡温度を推定し、前記データベースを参照して前記第1動作シーケンスで前記サンプルプローブの内部洗浄を行う頻度を決定する自動分析装置。
【請求項11】
請求項8において、
前記第1動作シーケンスの1サイクルの時間と前記第2動作シーケンスの1サイクルの時間とは等しく、
前記第1動作シーケンスの1サイクルにおいて前記サンプルプローブの内部洗浄を開始するタイミングは、前記第2動作シーケンスの1サイクルにおいて前記サンプルプローブの内部洗浄を開始するタイミングよりも早いタイミングに設定されている自動分析装置。
【請求項12】
請求項11において、
前記第1動作シーケンスは、1サイクルの開始直後に前記サンプルプローブの内部洗浄を行うよう設定されている自動分析装置。
【請求項13】
請求項8において、
前記第1動作シーケンスは、1サイクルに複数回、前記サンプルプローブの内部洗浄を行うよう設定され、
前記第1動作シーケンスの1サイクルにおいて複数回、前記サンプルプローブの内部洗浄を行う時間の合計時間は、前記第2動作シーケンスの1サイクルにおいて前記サンプルプローブの内部洗浄を行う時間と同じあるいは短く設定されている自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサンプル分注システムを備える自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査用の自動分析装置は、分析に使用する被検試料(以下、サンプルという)がサンプル搬送機構によりサンプル分注位置に搬送された後、装置が備えるサンプル分注システムにより吸引し、分析部に吐出することにより、サンプルの分析を行う。
【0003】
サンプル分注システムでは、あるサンプルを分注した後、異なるサンプルを吸引する場合にはサンプル間のコンタミネーションを防ぐため、サンプルプローブの内部洗浄(以下、内洗ともいう)を行う。内洗時には、サンプル分注システムの配管に接続されている高圧ポンプを利用して配管内部にイオン交換水を注入し、排出する。このようにサンプルプローブの内部洗浄を行うと、配管内部の流体の一部または全部が入れ替えられるため、配管内部の流体温度が不安定になる。具体的には、注入する流体(イオン交換水)の温度とサンプル分注システム周辺の温度との間に温度差がある場合、配管内部の流体温度が安定するまでに一定の時間を必要とする。
【0004】
サンプル分注性能を向上するには、サンプル分注システムの配管内部の流体温度が安定していることが重要である。配管内部の流体の体積は流体温度に依存しており、温度が上昇すると体積は膨張し、逆に温度が下がると体積は収縮する。もしサンプル分注動作中に流体温度が変化すると配管内部の流体に体積変化が生じ、分注性能に悪影響を及ぼすことになる。特に、サンプル吐出量が小さい場合には、その影響は無視できないものとなる。特許文献1ではこの温度変化による悪影響を緩和するため、サンプルプローブの内部洗浄動作終了から配管内部の流体温度が安定するまでの時間帯について、サンプル分注動作を制限する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−150023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、流体温度が不安定な時間帯のサンプル分注動作を制限することにより、分析動作が停滞し、自動分析装置の処理能力の低下につながるおそれがある。
【0007】
本発明は、サンプル分注システムの配管内部の流体温度を安定させることにより、自動分析装置への分析依頼状況や検体吐出量の設定などに応じてサンプル分注動作に制限をかけることなく、安定して高精度な分注性能を維持することのできる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
サンプルプローブを用いてサンプル分注位置にあるサンプルを分注するサンプル分注システムと、サンプル分注システムを制御する装置制御部とを有する自動分析装置において、装置制御部は、サンプルがサンプル分注位置に運ばれてくるまでの待機状態においては第1動作シーケンスにより、サンプル分注位置にあるサンプルを分注する分析状態においては第2動作シーケンスにより、サンプル分注システムを動作させ、第1動作シーケンスの1サイクルにおいてサンプルプローブの内部洗浄を行う時間は、第2動作シーケンスの1サイクルにおいてサンプルプローブの内部洗浄を行う時間よりも短く設定されている、または第1動作シーケンスは、複数サイクルに1回の割合でサンプルプローブの内部洗浄を行うよう設定されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、待機状態での配管内流体の平衡温度を、分析状態での配管内流体の平衡温度に近づけることによりサンプル分注動作中の流体温度の変化量を低減でき、安定して高精度な分注性能を維持することができる。
【0010】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】内洗動作による配管内流体の温度変化を表す模式図である。
【
図4】内洗動作による配管内流体の温度変化を表す模式図である。
【
図5】内洗動作による配管内流体の温度変化を表す模式図である。
【
図6】内洗動作による配管内流体の温度変化を表す模式図である。
【
図7】待機状態で内洗を実施しない場合の配管内流体の温度変化を表す模式図である。
【
図8】待機状態と分析状態のそれぞれにおける1サイクル中の動作を表す図である。
【
図9】待機状態の内洗時間の違いによる温度変化を表す模式図である。
【
図10】待機状態の内洗頻度の違いによる温度変化を表す模式図である。
【
図11】待機状態の各内洗頻度に応じた平衡温度を表す模式図である。
【
図12】待機状態の内洗動作のタイミングと分注動作中の温度変化量を表す模式図である。
【
図13】待機状態の内洗動作を1サイクル中に複数回実施する場合の内洗動作のタイミングと温度変化量を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施例は本発明の実施の形態の一つであり、この形態に限定されるものではない。
【0013】
図1に自動分析装置の概略構成図を示す。自動分析装置はサンプルと試薬とを反応させる反応容器1を環状に配列した反応ディスク2と、各種試薬を収納する試薬ボトル3を架設した試薬保冷庫4と、サンプルを収納するサンプルカップ5と、サンプルカップ5を収容するサンプルラック6と、サンプルラック6をサンプル分注位置まで搬送するサンプル搬送機構7とを備え、サンプルはサンプル分注機構8で吸引され、反応ディスク2上の反応容器1に分注される。サンプル分注機構の分注後、サンプルプローブ洗浄槽9でサンプルプローブの洗浄が行われる。
【0014】
試薬は第1試薬分注機構10または第2試薬分注機構12により試薬ボトル3から吸引され、サンプルが既に分注された反応容器1にそれぞれ分注される。サンプルと試薬との混合液は撹拌機構16,17で撹拌される。反応容器1内の反応液の吸光度を反応ディスク外周に設置した分光光度計14で測定し、さらに測定データを元に装置制御部26(
図2参照)が検査結果を算出してオペレータに報告する。分析が終了した反応容器1は反応容器洗浄機構15により洗浄され、再利用される。
【0015】
図2にサンプル分注システムの構成例を示す。サンプル分注機構8は、サンプルの吸引および吐出を行うサンプルプローブ20と、それを支持するサンプリングアーム21を備え、サンプルプローブ20はサンプルカップ5と反応容器1との間を往復しながら分注を実施する。サンプルプローブ20は配管22を介してシリンジポンプ23と接続されており、配管内部にはイオン交換水が充填されている。なお、シリンジポンプ23は流体の体積変化を制御する機能を持ち、配管内部のイオン交換水を駆動してサンプルプローブ20からサンプルの吸引および吐出を行う。
【0016】
このとき、あるサンプルを分注した後に別の異なるサンプルを吸引する場合には、サンプル間のコンタミネーションを回避するためにサンプルプローブ20の内洗を実施する。これに対して、同じサンプルを続けて分注する場合には内洗は実施されない。配管22には高圧ポンプ24が接続されており、サンプルプローブ20の内洗を行う際には電磁弁25を開放し、高圧ポンプ24からイオン交換水を配管内部に注入する。注入されたイオン交換水はサンプルプローブ20内部を洗浄し、サンプルプローブ洗浄槽9にて排出される。これらの動作は自動分析装置の装置制御部26で制御される。
【0017】
一般的に自動分析装置においては、1つの測定対象サンプルに対して複数の項目を測定する場合がほとんどである。すなわち、1つのサンプルから依頼された項目数分の分注動作を実施している間は内洗が実施されず、次の(異なる)サンプルを分注する前に内洗動作が実行されるため、サンプルプローブの内洗動作は、複数サイクルに1回の頻度で実行されることになる。
【0018】
図3は内洗動作が実施された場合におけるサンプル分注システムの配管内流体の温度変化の模式図である。内洗動作前(時刻T1以前)の配管内部の流体温度が配管周辺の環境温度Aと等しい状態を考える。内洗動作中(時刻T1〜T2)では配管内部に高圧ポンプ24から温度A
2のイオン交換水が注入されることにより、配管内部の流体温度は温度A
1まで低下する。内洗動作終了後(時刻T2以降)、配管内流体の温度は配管周辺からの熱影響を受け徐々に上昇し、時刻T3には再び配管周辺の環境温度に達して安定する。
【0019】
しかしながら、配管内流体の温度が配管周辺の環境温度に一致するために必要な時間(T2〜T3)は長く、内洗動作が実施される時間間隔のほうが短いことが常であるため、実際には
図3のような温度変化にはならない。流体温度が周辺環境温度まで上昇する前に次の内洗動作が実施されることにより、配管周辺の環境温度Aにまで至らない。
【0020】
配管内流体の温度について、内洗による温度下降分をT
downとし、内洗後次の内洗が実施されるまでの時間経過による温度上昇分をT
upとする。配管内流体の温度変化はT
downとT
upの大小関係により異なる挙動を示す。
図4に示すT
up<T
downの場合には、配管内流体の平均温度は徐々に下降する。逆に、
図5に示すような配管内の温度が予め低く、短時間であっても配管内温度が急激に増加するような状態や、測定項目数が多く次の内洗時間までの間隔が長い状態ではT
up>T
downの関係となり、配管内流体の平均温度は徐々に上昇していく。そして、
図6に示すようにT
up=T
downの状態となったとき、配管内流体の平均温度は一定値を示すようになる。本明細書では、これを平衡温度と定義する。
【0021】
自動分析装置では、基準となる1サイクルの動作を繰り返し行うことで分析を実施する。分析実施時におけるサンプル分注システムの状態は、測定対象のサンプルがサンプル分注位置まで運ばれてくるまでの待機状態と、サンプル分注位置にあるサンプルを分注する分析状態とに大別され、待機状態の後に分析状態に移行する。
【0022】
待機状態において内洗動作を実施しないとすると、長時間内洗が実施されないことにより、
図3で示したような配管内流体の温度が周辺環境温度に一致する状況が生じうる。
図7に、待機状態で内洗動作を実施しない場合において、待機状態から分析状態へ移行する時の配管内流体の温度変化(模式図)を示す。待機状態では配管内流体の温度は周辺環境温度に一致しているので、1検体目の分注動作では温度変化はなく、良好な結果が得られる。しかし、2検体目の分注を実行する前にキャリーオーバー回避のため内洗動作が実施されると、新たに配管内に注入されたイオン交換水は周囲の高温状態に反応し、急速に温度が上昇するため、2検体目の分注動作中の温度変化量は他の分注動作時と比べて相対的に大きくなり、結果として分析性能が悪化する。したがって、待機状態であっても内洗動作を実施し、待機状態における配管内流体の平衡温度を分析状態における平衡温度にできる限り近づけることで、待機状態から分析状態に移行した場合の温度変化の影響を小さくする必要がある。
【0023】
ところで、先述のように自動分析装置は、基準となる1サイクルの動作を繰り返し行うことが基本であるが、分析状態では通常1つのサンプルに対し複数の項目の測定を実施するため、測定項目数に応じた回数だけ1つのサンプルから分注動作を実施する、すなわち内洗動作が実施されるのは複数サイクルに1回のみである。このため、待機状態において毎サイクル、分析状態と同じ内洗動作を実施してしまうと、待機状態における平衡温度と分析状態における平衡温度との間に差が生じ、待機状態から分析状態に移行したあとの最初の分注動作における温度変化が顕著になる。そのため、この待機状態と分析状態との平衡温度の差を可能な限り減らすことが求められる。そこで、装置制御部は、待機状態においてサンプル分注システムを動作させる動作シーケンスと分析状態においてサンプル分注システムを動作させる動作シーケンスとにおいて、その両者における内洗動作を異ならせる。
【0024】
図8に、本実施例における分析状態と待機状態それぞれにおける動作シーケンスの1サイクルでの概略図を示す。この例では、待機状態の動作シーケンス40における内洗時間tbを、分析状態の動作シーケンス30における内洗時間taよりも短く設定する(tb<ta)。待機状態と分析状態との動作シーケンスの1サイクルの時間はどちらも同じである。分析状態では1サイクルの中で分注動作31および内洗動作32が実施されるが、待機状態では分注動作は実施されず、内洗動作42のみ実施される。内洗動作42以外の待機動作41,43ではサンプル分注システムの各機構は停止している。また、分析状態の動作シーケンス30の分注動作31は、具体的にはサンプリングアーム21の吸引位置への移動動作33、サンプルプローブ20の吸引動作34、サンプリングアーム21の吐出位置への移動動作35、サンプルプローブ20の吐出動作36、サンプリングアーム21の洗浄位置への移動動作37を含んでいる。この例では、サイクルの開始から内洗動作が実施されるまでの時間tcは、待機状態と分析状態とで同じとされている。
【0025】
図9に待機状態での内洗時間tbが異なる場合における分析実行時の配管内流体の温度変化(概略図)を示す。
図9においては、待機状態の内洗時間tb(t2)が分析状態の内洗時間ta(t1)と同じ場合の温度変化51と待機状態の内洗時間tb(t3)が分析状態の内洗時間ta(t1)よりも短い場合の温度変化52とをあわせて示している。待機状態の内洗時間tb(t2)が分析状態の内洗時間ta(t1)と同じに設定する場合、両状態の平衡温度差(B−D)が大きいことから、分析状態に移行した最初の測定における分注動作中の温度変化が大きくなる。一方、待機状態の内洗時間tb(t3)が分析状態の内洗時間(t1)よりも短く設定する場合、内洗時間(t2)のときと比較して、待機状態での平衡温度が上昇するため、分析状態との平衡温度差(B−C)が小さくなる。これによって分析状態に移行した最初の測定における分注動作中の温度変化をより低減することができるため、測定結果の安定化が図られる。ただし、内洗時間tbが極端に短いと、先述したとおり待機状態における平衡温度が周辺環境温度Aに一致し、実質的に内洗動作を実行していない状況になる可能性がある。このため、内洗時間は待機状態と分析状態の平衡温度を近づける効果のある範囲で設定する必要がある。分析状態の平衡温度を決定する分析の依頼のされ方(1サンプルあたりの分注回数、分析状態での内洗頻度)を事前に知ることができないため、一意に最適な内洗時間を決定できるわけではないが、内洗時間tbを短くすることにつれ対数的に待機状態の平衡温度は、周辺環境温度Aに漸近するため、待機状態での内洗時間tbを分析状態での内洗時間taの50%として設定すれば、実質的な内洗不実施状態を回避しつつ、十分に待機状態の平衡温度を分析状態の平衡温度に近づける目的を達成できる。
【0026】
すなわち、待機状態の平均温度を分析状態の平衡温度に近づけられればよいので、待機状態での内洗時間tbを分析状態の内洗時間taよりも一定程度短く設定することで効果は得られる。例えば、内洗時間taの80%としてもよい。一方、待機状態での内洗時間tbが分析状態の内洗時間taの0%であると内洗を行わないことに相当し、待機状態での内洗時間tbをこのように極端に短く設定した場合にも効果が失われる。したがって、待機状態の内洗時間tbは分析状態の内洗時間taの20%以上80%以下の範囲とすることが望ましい。
【0027】
また、分析状態の平衡温度は装置を使用する施設の運用状況に依存するため一義的には決まらない。様々な施設の運用状況においても適度な効果が得られるように内洗時間を設定するという観点からは、先に述べたように待機状態での内洗時間tbを分析状態の内洗時間taの50%またはその近傍とすることが望ましい。例えば、待機状態の内洗時間tbを分析状態の内洗時間taの40%以上60%以下の範囲に設定する。
【0028】
また別の実施の形態として、待機状態での内洗頻度を変更してもよい。
図10に、待機状態の内洗頻度を異ならせた場合の温度変化(概略図)を示す。
図10においては例として、待機状態において1サイクルに1回内洗を実施した場合の温度変化51と、2サイクルに1回内洗を実施した場合の温度変化53をあわせて示している。なお、この例では、待機状態と分析状態で内洗時間は同じ(t1)とする。
図10に示されるように、内洗頻度を減らすことで、待機状態の平衡温度は高くなるため、この場合も
図9で示した場合と同様に、待機状態と分析状態の平衡温度差(B−E)を小さくできる。なお、
図10においては2サイクルに1回の内洗の場合を示したが、3サイクルに1回、4サイクルに1回など、2サイクル以上に1回の内洗頻度であってもよい。ただし、内洗頻度の決定は内洗時間の決定と同様に、待機状態と分析状態の平衡温度を近づけることを目的とするものであるが、分析の依頼のされ方(1サンプルあたりの分注回数、即ち分析状態での内洗頻度)を事前に知ることができないため、一意に最適値を決定できるわけではない。このため、内洗時間の決定同様に、実質的に内洗していない状況となるほど、内洗頻度を低下させてはいけない。
【0029】
待機状態での内洗時間あるいは内洗頻度を決定するための手法の一つとして、自動分析装置で実際に測定された結果を統計処理することにより、分析状態での配管内流体の平均的な平衡温度を求め、待機状態の最適な内洗頻度あるいは内洗時間を決定することができる。
図11に待機状態の内洗頻度の違いによる平衡温度の違い(概略図)を示す。なお、この例では、内洗時間は待機状態と分析状態とで同じにしている。
図11に示されるように、内洗頻度が少ないほど、平衡温度は高くなり、周辺環境温度に近づく。そこで、
図11に示されるような、待機状態における内洗頻度ごとの平衡温度のデータを予め装置に登録しておく。自動分析装置で実際に測定した分析状態での配管内流体の温度を統計処理することにより、分析状態の配管内流体の平均的な平衡温度を推定した後、予め用意した待機状態での内洗頻度と平衡温度との関係を登録したデータベースを参照し、分析状態と待機状態の平衡温度差を最も小さくするように待機状態の内洗頻度を決定することで、装置全体としての最適な待機状態での内洗頻度を決定することができる。なお、
図11では内洗頻度が異なる場合の平衡温度を示したが、内洗時間が異なる場合も
図11と同様に、内洗時間が短くなればなるほど平衡温度が周辺環境温度に近づく関係となり、装置内に予め待機状態での内洗時間と平衡温度との関係を登録したデータベースを記憶しておくことは可能であるため、同じ手法を適用できる。なお、内洗時間あるいは内洗頻度のいずれかを設定するに限られず、その双方を設定して分析状態と待機状態の平衡温度差を小さくするようにしてもよい。このとき、待機状態での内洗時間と内洗頻度との組み合わせと平衡温度との関係を登録したデータベースを予め記憶することにより、精度よく決定することが可能になる。
【0030】
図8に示した動作シーケンスは、サイクルの開始から内洗動作が実施されるまでの時間tcを待機状態と分析状態とで等しくしている例である。これに対して、待機状態の1サイクルにおける内洗動作の開始タイミングを早めるよう設定することで、待機状態から分析状態に移行して最初の分注動作中の温度変化量を小さくすることができる。
図12は、待機状態の1サイクルで内洗動作のタイミングが異なる2つの場合における動作シーケンスと、それぞれにおける温度変化(概略図)を示している。CaseAとCaseBでは分析状態における動作シーケンスは同一であるが、待機状態における内洗動作を、CaseAではサイクル開始直後に実施し、CaseBではサイクル終了直前に実施するよう設定している。CaseAの温度変化は実線で示される温度変化60であり、CaseBの温度変化は破線で示される温度変化61である。
図12に示すように、CaseAにおける分注動作中の温度変化量αは、CaseBにおける分注動作中の温度変化量βよりも小さくなる。これは、待機状態のサイクルの最初に内洗を実施することにより、分注が実施されるまでの時間が確保されるため、分注動作時に温度変化が激しい領域を回避することができるためである。このように、待機状態のサイクルでの内洗開始タイミングを分析状態のサイクルでの内洗開始タイミングよりも早める、究極的には待機状態におけるサイクルの開始から内洗動作が実施されるまでの時間を0とすることで、続く分注動作中の温度変化量を最小とすることが可能になる。
図12では、待機状態の内洗時間を分析状態の内洗時間よりも短くする例について示しているが、待機状態の内洗頻度を複数回に1回とする場合においても同様の効果が得られる。
【0031】
また、他の実施の形態として、
図13に示すように、待機状態の内洗動作を1サイクルの間で複数回実施するよう設定してもよい(CaseC)。待機状態における内洗動作を複数回に分割する場合、1サイクル中の内洗動作の合計時間(tb1+tb2+tb3)が、分析状態における内洗時間taを下回るように設定する。
図13では、(tb1+tb2+tb3)=tb(CaseAの内洗時間)<ta(分析状態における内洗時間)とした例を示している。CaseAとCaseCではどちらの内洗時間も同じであるため、平衡温度はどちらも同じHになることが期待できるが、破線で示されるCaseAの温度変化60の振幅をδ、実線で示されるCaseBの温度変化62の振幅をγとすると、γ<δとすることができる。このように、1サイクル中の内洗動作の合計時間(tb1+tb2+tb3)を適切に設定することにより、待機状態と分析状態の平衡温度を近づけることが可能となり、かつ内洗動作を1サイクルで分割して実施することにより、内洗動作によって生じる配管内流体の温度変化の振幅を小さくすることができ、結果として分析結果の安定性を確保できる。
図13では、待機状態の内洗時間の合計時間を分析状態の内洗時間よりも短くする例を説明したが、待機状態の内洗頻度を複数回に1回とする場合においても同様の効果が得られ、この場合は待機状態の内洗時間の合計時間を分析状態の内洗時間と同じまたは短く設定すればよい。
【符号の説明】
【0032】
1:反応容器、2:反応ディスク、3:試薬ボトル、4:試薬保冷庫、5:サンプルカップ、6:サンプルラック、7:サンプル搬送機構、8:サンプル分注機構、9:サンプルプローブ洗浄槽、10:第1試薬分注機構、11:第1試薬プローブ洗浄槽、12:第2試薬分注機構、13:第2試薬プローブ洗浄槽、14:分光光度計、15:反応容器洗浄機構、16,17:撹拌機構、18,19:撹拌機構用洗浄槽、20:サンプルプローブ、21:サンプリングアーム、22:配管、23:シリンジポンプ、24:高圧ポンプ、25:電磁弁、26:装置制御部、30:分析状態の動作シーケンス、31:分注動作、32:内洗動作、33,35,37:移動動作、34:吸引動作、36:吐出動作、40:待機状態の動作シーケンス、41,43:待機動作、42:内洗動作、51,52,53,60,61,62:温度変化。