特許第6980216号(P6980216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人名古屋大学の特許一覧 ▶ 国立大学法人 名古屋工業大学の特許一覧

<>
  • 特許6980216-切削工具製造方法 図000002
  • 特許6980216-切削工具製造方法 図000003
  • 特許6980216-切削工具製造方法 図000004
  • 特許6980216-切削工具製造方法 図000005
  • 特許6980216-切削工具製造方法 図000006
  • 特許6980216-切削工具製造方法 図000007
  • 特許6980216-切削工具製造方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980216
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】切削工具製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23D 63/06 20060101AFI20211202BHJP
   B23D 65/00 20060101ALI20211202BHJP
   B23K 26/362 20140101ALI20211202BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20211202BHJP
   B23P 15/28 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   B23D63/06
   B23D65/00
   B23K26/362
   B23K26/00 G
   B23P15/28 A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-539864(P2020-539864)
(86)(22)【出願日】2019年2月25日
(86)【国際出願番号】JP2019007030
(87)【国際公開番号】WO2020174528
(87)【国際公開日】20200903
【審査請求日】2020年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】社本 英二
(72)【発明者】
【氏名】糸魚川 文広
【審査官】 永田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−159318(JP,A)
【文献】 特開2003−145344(JP,A)
【文献】 特開2013−40436(JP,A)
【文献】 特開2018−8363(JP,A)
【文献】 Chun-Wei Liu,外2名,“Diamond turning of high-precision roll-to-roll imprinting molds for fabricating subwavelength gratings”,Optical Engineering,2016年,Vol. 55,No. 6,064105
【文献】 J Sun,外5名,“Fabrication of periodic nanostructures by single-point diamond turning with focused ion beam built tool tips”,Journal of Micromechanics and Microengineering,Vol. 22,2012年,115014
【文献】 Hiroshi Saito,外4名,“Mirror Surface Machining of Steel by Elliptical Vibration Cutting with Diamond-Coated Tools Sharpened by Pulse Laser Grinding”,International Journal of Automation Technology,2018年,Vol. 12,No. 4,pp. 573-581
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 63/06,65/00−65/04,
B23K 26/00−26/70,
B23P 15/28−15/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工部材を加工して、複数の切れ刃が並ぶ切削工具を製造する方法であって、
照射されるレーザ光の集束箇所を含む筒状照射領域を走査して、前記被加工部材の逃げ面側を加工する工程を備え、
前記逃げ面側を加工する工程は、加工深さを変化させる周期的な走査経路で筒状照射領域を走査して、複数の切れ刃を形成し、
周期的な走査経路は、加工深さが深くなる方向に前記筒状照射領域を前記被加工部材に対して相対移動させる第1経路と、加工深さが浅くなる方向に前記筒状照射領域を前記被加工部材に対して相対移動させる第2経路とを交互に繋げたものであって、第1経路および第2経路におけるレーザ光の照射方向は異なる、
ことを特徴とする切削工具製造方法。
【請求項2】
被加工部材を加工して、複数の切れ刃が並ぶ切削工具を製造する方法であって、
照射されるレーザ光の集束箇所を含む筒状照射領域を走査して、前記被加工部材の逃げ面側を加工する工程と、
前記逃げ面側を加工する工程におけるレーザ光の照射方向とは異なる方向に照射されるレーザ光の集束箇所を含む筒状照射領域を走査して、前記被加工部材のすくい面側を加工する工程と、を備え、
前記逃げ面側を加工する工程は、加工深さを変化させる周期的な走査経路で筒状照射領域を走査して、複数の切れ刃を形成する、
ことを特徴とする切削工具製造方法。
【請求項3】
前記逃げ面側を加工する工程は、隣り合う切れ刃先端の間隔が等しくなるように複数の切れ刃を形成する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の切削工具製造方法。
【請求項4】
走査経路は、周期的な波状経路である、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の切削工具製造方法。
【請求項5】
前記被加工部材は、工具母材をダイヤモンドコーティングした部材である、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の切削工具製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の切れ刃が並ぶ切削工具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サブミクロンからミクロンオーダーのピッチで周期的な微細溝を創製する切削加工には、従来、単結晶ダイヤモンド工具が用いられている。非特許文献1は、鋭く研磨した単一の剣先をもつ単結晶ダイヤモンド工具を用いて、サブミクロンオーダーのピックフィードで剣先形状を硬銅に転写した周期的な微細溝を示す。非特許文献2は、集束イオンビームを用いて周期的な4つの微細突起(切れ刃)を単結晶ダイヤモンド工具に形成し、4つの微細突起で被削材表面を切削する技術を開示する。
【0003】
特許文献1は、パルスレーザ光を比較的緩い角度で集光し、集束箇所を含む筒状の照射領域を被加工部材の表面上で走査することで面加工を行うパルスレーザ研削を開示する。具体的に特許文献1は、パルスレーザ光において筒状に延び且つ加工可能なエネルギをもつ照射領域を加工対象物の表面側の部位に重ねて、加工可能な速度で走査することで、加工対象物の表面領域を除去加工する方法を開示する。非特許文献3は、パルスレーザ研削により工具母材の逃げ面を2方向に加工して、V字形状の切れ刃を形成する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−159318号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Chun-Wei Liu, Jiwang Yan, and Shih-Chieh Lin, 「Diamond turning of high-precision roll-to-roll imprinting molds for fabricating subwavelength gratings」, Optical Engineering 55(6), 064105, 2016年6月
【非特許文献2】J. Sun, et al.,「Fabrication of periodic nanostructures by single-point diamond turning with focused ion beam built tool tips」、Journal of micromechanics and microengineering. 22 (2012年) 115014 (11pp)
【非特許文献3】Hiroshi Saito, Hongjin Jung, Eiji Shamoto, Shinya Suganuma, and Fumihiro Itoigawa;「Mirror Surface Machining of Steel by Elliptical Vibration Cutting with Diamond-Coated Tools Sharpened by Pulse Laser Grinding」, International Journal of Automation Technology, Vol.12, No.4, pp.573-581(2018年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に示す単結晶ダイヤモンド工具は単一の剣先しか持たないため、周期的な微細溝を創製する際の加工効率は低い。非特許文献2に示す単結晶ダイヤモンド工具は周期的な4つの切れ刃を持つため、ピックフィードを4ピッチ分の長さに設定することで1つの切れ刃の場合と比べて4倍の加工効率で周期的な微細溝を創製できる。しかしながら複数の切れ刃の形成に集束イオンビームを用いることで、工具の製造コストが高いという欠点がある。本開示者は、パルスレーザ研削が低コストで実現できることに注目し、パルスレーザ研削により複数の切れ刃を周期的に創製する方法を考案するに至った。
【0007】
本開示はこうした状況に鑑みてなされており、その目的とするところの1つは、複数の切れ刃が並ぶ切削工具を製造する新たな方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、被加工部材を加工して、複数の切れ刃が並ぶ切削工具を製造する方法に関する。この方法は、照射されるレーザ光の集束箇所を含む筒状照射領域を走査して、被加工部材の逃げ面側を加工する工程を備える。この工程は、加工深さを変化させる周期的な走査経路で筒状照射領域を走査して、複数の切れ刃を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】パルスレーザ研削を説明するための図である。
図2】レーザ加工装置の概略構成を示す図である。
図3】複数の切れ刃が並ぶ切削工具の製造方法の手順を示す図である。
図4】被加工部材の例を示す図である。
図5】第1工程および第2工程を説明するための図である。
図6】第2工程における加工の様子を示す図である。
図7】製造された切削工具の刃先周辺の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、パルスレーザ研削を説明するための図である。パルスレーザ研削は、特許文献1に開示されるように、レーザ光2の光軸方向に延び且つ加工可能なエネルギをもつ円筒状の照射領域を被加工部材20の表面に重ねて、その光軸と交差する方向へ走査することで、円筒状の照射領域が通過した被加工部材20の表面領域を除去する加工法である。パルスレーザ研削は、被加工部材20の表面に、光軸方向および走査方向に平行な面を成形する。
【0011】
図2は、レーザ加工装置1の概略構成を示す。レーザ加工装置1は、レーザ光2を照射するレーザ光照射部10、被加工部材20を支持する支持装置14、レーザ光照射部10を被加工部材20に対して相対的に変位可能とする変位機構11、変位機構11を動かすためのアクチュエータ12、およびレーザ加工装置1の全体の動作を制御する制御部13を備える。
【0012】
レーザ光照射部10は、レーザ光を発生するレーザ発振器、レーザ光の出力を調整する減衰器、レーザ光の径を調整するためのビームエキスパンダなどを備え、これらを経たレーザ光が光学レンズ経由で出力されるように構成される。たとえばレーザ発振器は、Nd:YAGパルスレーザ光を発生してよい。
【0013】
実施形態の変位機構11は、被加工部材20に対してレーザ光照射部10の位置および姿勢を変化させるための機構を有する。変位機構11は少なくともリンク機構を有してよい。アクチュエータ12は、制御部13からの指令に応じて変位機構11を動かし、これによりレーザ光照射部10の位置および姿勢が変化する。なお変位機構11は、レーザ光照射部10に対して支持装置14の位置および姿勢を変化させるための機構を有してもよい。いずれにしても変位機構11は、レーザ光照射部10と支持装置14の間の相対的な位置および姿勢を変化させるための機構を有する。
【0014】
制御部13は、レーザ光照射部10によるレーザ光照射と、アクチュエータ12の駆動を制御するCPUを備える。制御部13は、複数の切れ刃が並ぶ切削工具を製造するための加工プログラムにしたがって、レーザ光照射部10およびアクチュエータ12を制御する。
【0015】
図3は、複数の切れ刃が並ぶ切削工具の製造方法の手順を示す。制御部13は、レーザ光照射部10から照射されるレーザ光2の集束箇所を含む筒状照射領域を走査して、被加工部材20の逃げ面側を加工する第1工程(S1)と、第1工程におけるレーザ光の照射方向とは異なる方向に照射されるレーザ光の集束箇所を含む筒状照射領域を走査して、被加工部材20のすくい面側を加工する第2工程(S2)とを実行して、切削工具を製造する。制御部13は、第1工程および第2工程を、この順番に実行してよいが、逆順に実行してもよい。
【0016】
図4は、被加工部材20の例を示す。実施形態では、超硬合金の工具母材をダイヤモンドコーティングした被加工部材20を加工して、複数の切れ刃が並ぶ切削工具を製造する。ダイヤモンドコーティング層は、単結晶ダイヤモンドやCBN等に比べて、高いレーザ光のエネルギー吸収率を有するため、パルスレーザ研削により高能率に切れ刃を生成できる。また欠陥が少なく高硬度であるため、鋭利な切れ刃先端を低コストで生成しやすい利点もある。
【0017】
図4において、X軸方向は、被加工部材20を加工して製造した切削工具による切削工程における切込み方向を、Y軸方向は、切削工程における切削方向を示す。このため被加工部材20において、切れ刃を形成される屈曲箇所から切削方向と反対側に設けられる面を「逃げ面」、屈曲箇所から切削方向側に設けられる面を「すくい面」と呼ぶ。第1工程では、逃げ面側にパルスレーザ研削を施して、複数の切れ刃および逃げ面を形成し、第2工程では、すくい面側にパルスレーザ研削を施して、平坦なすくい面を形成する。第1工程および第2工程において、パルスレーザ光の走査方向は、X軸およびY軸に垂直なZ軸方向の成分を少なくとももつ。
【0018】
図5は、第1工程および第2工程を説明するための図である。
<第1工程>
説明図Aは、第1工程を説明するための図である。第1工程で制御部13は、レーザ光2の光軸の向きが第1照射方向30となるように、アクチュエータ12を制御して変位機構11を動かし、レーザ光照射部10および被加工部材20の相対位置を調整する。なおレーザ光の照射領域の走査中、第1照射方向30つまりレーザ光2の光軸の向きは変化してもよい。
【0019】
制御部13は、アクチュエータ12を制御して、加工深さを変化させる周期的な走査経路34でレーザ光2の筒状照射領域を走査して、複数の切れ刃を形成する。走査経路34は、最も集束したレーザスポットの中心の移動経路として定義されてよい。図5には、レーザスポット32の中心が走査経路34上を動かされて、レーザスポット32が通過した被加工部材20の領域が除去される様子が示される。
【0020】
周期的な走査経路34は、加工深さが深くなる方向に筒状照射領域を被加工部材20に対して相対移動させる第1経路34aと、加工深さが浅くなる方向に筒状照射領域を被加工部材20に対して相対移動させる第2経路34bとを交互に繋げて形成される。第1経路34aおよび第2経路34bは周期的に繰り返され、筒状照射領域の走査軌跡を第2経路34bから第1経路34aに切り替えたときに鋭い剣先となる切れ刃先端36が形成されるように、第1経路34aおよび第2経路34bの長さおよび方向が定められる。筒状照射領域の走査軌跡を第1経路34aから第2経路34bに切り替えたとき、切れ刃間には、円形であるレーザスポット32の形状の一部が残される。
【0021】
走査経路34を周期的な波状経路に設定することで、隣り合う切れ刃先端36の間隔(ピッチ)が等しくなるように複数の切れ刃が形成される。図5に示す例では、走査経路34が三角波状に設定されているが、鋸刃状に設定されてもよい。第1経路34aおよび/または第2経路34bは直線状でなくてもよく、曲線状であってもよい。
【0022】
<第2工程>
説明図Bは、第2工程を説明するための図である。第2工程で制御部13は、レーザ光2の光軸の向きが第2照射方向50となるように、アクチュエータ12を制御して変位機構11を動かし、レーザ光照射部10および被加工部材20の相対位置を調整する。第2工程では、レーザ光の照射領域の走査中、第2照射方向50つまりレーザ光2の光軸の向きは変化しない。
【0023】
図6は、第2工程においてパルスレーザ研削により加工前のすくい面24の一部の領域を除去する様子を示す。レーザ光2の集束箇所を含む筒状照射領域を加工前のすくい面24の表面に重ね、Z軸方向である走査経路54上を加工可能な速度で走査することで、加工後のすくい面25が形成される。
【0024】
なお第1工程で制御部13は、XY平面に平行であって、第1照射方向30をY軸方向から傾けることで、仕上げ面からの逃げ角を確保する。さらにZ軸方向の逃げ角を設定するために、制御部13は、XY平面に対して第1照射方向30を傾けてもよい。
【0025】
レーザ光2が第1経路34aを走査中、切れ刃にZ軸方向の逃げ角を生成するために、制御部13が、第1経路34aの進行方向に対して、右回りに数度(たとえば5度)光軸を傾けてよい。これにより筒状照射領域が、Z軸方向の逃げ角を設定する。同様にレーザ光2が第2経路34bを走査中、切れ刃にZ軸方向の逃げ角を生成するために、制御部13が、第2経路34bの進行方向に対して、右回りに数度(たとえば5度)光軸を傾ける。これにより筒状照射領域が、Z軸方向の逃げ角を設定する。このように制御部13は、第1経路34aおよび第2経路34bにおけるレーザ光2の照射方向を異ならせることで、Z軸方向の逃げ角を設定できる。
【0026】
なお第1工程でレーザ光2の筒状照射領域が、ダイヤモンドコーティング層よりも深い位置まで被加工部材20を加工する場合、切れ刃先端36の間の凹部にて超硬合金母材が露出するが、露出した超硬合金は、切れ刃として利用されることはない。実施形態で製造される切削工具によれば、切れ刃先端36および加工後のすくい面25に硬質なダイヤモンドコーティング層が残り、特に鋭利な切れ刃先端36に残されるコーティング層厚みより小さな切込みで微細切削を行う場合には利用される切れ刃部分の逃げ面側にもダイヤモンドコーティング層が残るため、微細切れ刃先端36による切削が可能である。このことは被加工部材20におけるダイヤモンドコーティング層を薄く形成でき、材料コストを低減できることを示す。
【0027】
図7は、製造された切削工具の刃先周辺の構造を示す。切削工具は、第1工程により周期的に形成された複数の切れ刃先端36および加工後の逃げ面23と、第2工程により平坦化された加工後のすくい面25とを有する。図示されるように、加工後の逃げ面23は、加工前の逃げ面22と連続し、加工後のすくい面25は、加工前のすくい面24と連続している。上記したZ軸方向の逃げ角は、すくい面25と逃げ面23とが鋭角となることで生成される。実施形態によれば、低コストで複数の切れ刃が並ぶ切削工具を製造できる。
【0028】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0029】
実施形態では、複数の切れ刃先端36が直線上に並ぶように被加工部材20を加工したが、複数の切れ刃先端36が円弧上に並ぶように被加工部材20を加工してもよい。また実施形態では、超硬合金母材をダイヤモンドコーティングした被加工部材20を利用したが、他の種類の部材、たとえば単結晶ダイヤモンド、CBN、多結晶ダイヤモンド、ナノ多結晶ダイヤモンドなどを利用してもよい。
【0030】
本開示の態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様は、被加工部材を加工して、複数の切れ刃が並ぶ切削工具を製造する方法であって、照射されるレーザ光の集束箇所を含む筒状照射領域を走査して被加工部材の逃げ面側を加工する工程を備える。この工程は、加工深さを変化させる周期的な走査経路で筒状照射領域を走査して、複数の切れ刃を形成する。
【0031】
前記工程が、加工深さを変化させながら筒状照射領域を被加工部材の逃げ面側で走査することで、被加工部材に複数の切れ刃を周期的に形成することが可能となる。前記工程は、隣り合う切れ刃先端の間隔が等しくなるように複数の切れ刃を形成してよい。
【0032】
周期的な走査経路は、加工深さが深くなる方向に筒状照射領域を被加工部材に対して相対移動させる第1経路と、加工深さが浅くなる方向に筒状照射領域を被加工部材に対して相対移動させる第2経路とを交互に繋げたものであってよい。第1経路と第2経路とを交互に繋げることで、加工深さを変化させる周期的な走査経路が形成されてよい。走査経路は、周期的な波状経路であってよい。
【0033】
第1経路および第2経路におけるレーザ光の照射方向は異なってよい。両経路におけるレーザ光の照射方向を異ならせることで、すくい面に連接する逃げ面に逃げ角を設定することが可能となる。切削工具製造方法は、前記工程におけるレーザ光の照射方向とは異なる方向に照射されるレーザ光の集束箇所を含む筒状照射領域を走査して被加工部材のすくい面側を加工する工程をさらに備えてよい。被加工部材は、工具母材をダイヤモンドコーティングした部材であってよい。
【符号の説明】
【0034】
1・・・レーザ加工装置、2・・・レーザ光、10・・・レーザ光照射部、11・・・変位機構、12・・・アクチュエータ、13・・・制御部、14・・・支持装置、20・・・被加工部材、30・・・第1照射方向、34・・・走査経路、34a・・・第1経路、34b・・・第2経路、36・・・切れ刃先端、50・・・第2照射方向、54・・・走査経路。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本開示は、複数の切れ刃が並ぶ切削工具の製造に利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7