【実施例】
【0028】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に何ら限定されるものではない。
【0029】
なお、実施例中、反応の進行はガスクロマトグラフィー等を用いて確認し、原料の消失が確認されるまで、又はそれ以上反応が進行しないことが確認されるまで反応を行った。また、NMRは25℃で、JEOL JNMECS400 spectrometer (396 MHz for
1H, 100 MHz for
13C{
1H})又はJEOL JNM-AL400 spectrometer (100 MHz for
13C)を用いて測定した。
【0030】
[キラルロジウム錯体の調製]
下記スキーム1に基づいて、キラルロジウム錯体(4)を調製した。なお、スキーム1中、ポリスチレン−ポリエチレングリコールアミノレジン(1)としては、TentaGel S NH
2(商品名、Rapp Polymere社製、アミノ基担持量:0.27mmol/g)を用い、(1R,4R,7R)−7−イソプロピル−5−メチルビシクロ[2.2.2]オクタ−2,5−ジエン−2カルボン酸(2)としては、Okamoto, K. et al. Org. Lett. 2008, 10, 4387-4389に記載の方法で調製したものを用いた。具体的な実験手順を以下に示す。
【化4】
【0031】
(1R,4R,7R)−7−イソプロピル−5−メチルビシクロ[2.2.2]オクタ−2,5−ジエン−2−カルボン酸(2)(0.21g,1.0mmol)及びポリスチレン−ポリエチレングリコールアミノレジン(1)(2.6g,0.7mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCl・HCl)(0.58g,3.0mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物(HOBt・H
2O)(0.46g,3.0mmol)、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)(0.037g,0.3mmol)及びジメチルホルムアミド(DMF)(20mL)の混合物を30℃で18時間振とうした。Kaiserテストにより反応の完了を確認した後に、得られたレジンをろ取し、これをDMF(12mL)及び酢酸エチル(12mL)でそれぞれ5回ずつ洗浄した。その後、24時間減圧乾燥することにより、白色ビーズ状のレジン(3)を得た(2.5g,収率:86%)。
13C{
1H} SR-MAS-NMR (100MHz, CDCl
3); δ 164.27, 143.22, 142.25, 136.47,126.44, 122.93, 111.02, 69.10, 46.34, 42.13, 38.27, 37.90, 32.44, 30.46, 20.55,20.08, 17.63.
【0032】
得られたレジン(3)(0.78g,0.2mmol)、シクロオクタジエンロジウムクロリドダイマー([RhCl(coe)
2]
2)(0.090g,0.125mmol)及び塩化メチレン(CH
2Cl
2)(8mL)の混合物を、窒素雰囲気下、30℃で18時間振とうした。得られたレジンをろ取し、これを塩化メチレン(8mL)で5回洗浄した。その後、15時間減圧乾燥することにより、キラルロジウム錯体(4)を得た。ICP分析の結果、得られたキラルロジウム錯体(4)におけるロジウム元素の含有量は0.25mmol/gであった。
13C{
1H} SR-MAS-NMR (100MHz, CDCl
3); δ 168.05, 143.96, 126.67,105.83, 104.54, 69.06, 54.20, 50.02, 46.24, 44.48, 42.75, 38.15, 29.44, 19.50.
【0033】
(実施例1〜17)
下記反応式(A)に従って、芳香族ボロン酸(6)を種々変更した他は同様の条件で、2−シクロヘキセン−1−オン(5a)に芳香族ボロン酸(6)を反応させて、光学活性β−置換カルボニル化合物(7a)を得た。具体的な操作を以下に示す。
【0034】
キラルロジウム錯体(4)(30.0mg,0.0075mmol(ロジウム元素換算))及び芳香族ボロン酸(0.45mmol)を、不活性雰囲気下バイアルに充填した。脱気した脱イオン水(1mL)及び2−シクロヘキセン−1−オン(5a)(28.9mg,0.30mmol)を添加した後、混合物を50℃で振とうした。室温に冷却した後に、得られた混合物をBond Elutリザーバーを用いて不活性雰囲気下ろ過した。残留物を酢酸エチル(3mL)で5回洗浄した後に、得られた有機相を合一して、エバポレーターを用いて濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=19:1)で精製することにより、目的の光学活性β−置換カルボニル化合物(7a)を得た。その結果を、以下の化学式に示す。具体的には、実施例毎に、得られた光学活性β−置換カルボニル化合物(7a)の構造を単離収率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)とともに示す。
なお、芳香族ボロン酸(6)としては、各実施例の1,4−付加体に対応するものを用いた。具体的には、芳香族ボロン酸(6)として、フェニルボロン酸(実施例1)、p−(ジメチルアミノ)フェニルボロン酸(実施例2)、p−メトキシフェニルボロン酸(実施例3)、p−tert−ブチルフェニルボロン酸(実施例4)、p−メチルフェニルボロン酸(実施例5)、p−フルオロフェニルボロン酸(実施例6)、p−クロロフェニルボロン酸(実施例7)、p−ブロモフェニルボロン酸(実施例8)、p−トリフルオロメチルフェニルボロン酸(実施例9)、p−ニトロフェニルボロン酸(実施例10)、o−メトキシフェニルボロン酸(実施例11)、m−メトキシフェニルボロン酸(実施例12)、p−(メトキシカルボニル)フェニルボロン酸(実施例13)、p−アセチルフェニルボロン酸(実施例14)、1−ナフタレンボロン酸(実施例15)、2−ナフタレンボロン酸(実施例16)及びTRANS−B−スチレンボロン酸(実施例17)をそれぞれ用いた。
また、上記振とうは、原料の消失が確認されるまで行い、実施例2の振とう時間は5時間であり、実施例4、10及び14の振とう時間は6時間であり、その他の実施例の振とう時間は3時間であった。
【0035】
【化5】
【0036】
(実施例18、19)
原料である2−シクロヘキセン−1−オン(5a)を同モル量の2−シクロペンテン−1−オン(実施例18)又は2−シクロヘプテン−1−オン(実施例19)に変更した他は、実施例1と同様にして、下記式(B)に示す反応を行い、目的とする光学活性β−置換カルボニル化合物(7)を得た。その結果を、以下に示す。具体的には、実施例毎に、得られた光学活性β−置換カルボニル化合物(7)の構造を単離収率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)とともに示した。
なお、実施例18及び19の振とう時間は6時間であった。
【0037】
【化6】
【0038】
(実施例21〜24)
原料である2−シクロヘキセン−1−オンを同モル量の共役エノン(5’)に変更し、且つ所定の芳香族ボロン酸(6)を用いた他は、実施例1と同様にして、下記式(C)に示す反応を行い、目的とする光学活性β−置換カルボニル化合物(7’)を得た。その結果を、以下に示す。具体的には、実施例毎に、得られた光学活性β−置換カルボニル化合物(7’)の構造を単離収率(%)及び鏡像体過剰率(%ee)とともに示した。
なお、共役エノン(5’)及び芳香族ボロン酸(6)としては、各実施例の光学活性β−置換カルボニル化合物(7’)に対応するものを用いた。具体的には、共役エノン(5’)として、1−フェニル−2−ブテン−1−オン(実施例21)、5−メチル−3−ヘキセン−2−オン(実施例22)、3−ノネン−2−オン(実施例23)、ベンジリデンアセトン(実施例24)を、芳香族ボロン酸(6)として、フェニルボロン酸(実施例21,22,23)及びp−メトキシフェニルボロン酸(実施例24)を、それぞれ用いた。
また、実施例21及び23の振とう時間は3時間であり、実施例22の振とう時間は6時間であり、実施例24の振とう時間は7時間であった。
【0039】
【化7】
【0040】
(実施例25〜27)
反応温度及び振とう時間を表1に示すように変更した他は、実施例1と同様にして、目的とする光学活性β−置換カルボニル化合物を得た。その結果(単離収率及び鏡像体過剰率)を表1に示す。これらの実施例により、反応温度を室温(25℃付近)まで下げた場合でも問題なく反応が進行することが確認できた。
【表1】
【0041】
(実施例28:触媒のリサイクル実験)
実施例1と同様の条件で反応を行った後に、触媒(キラルロジウム錯体(4))を回収し、回収した触媒を用いて繰り返し同様の反応を行うことに触媒のリサイクル性を評価した。
具体的には、実施例1と同様の条件で行った1回目の反応終了後、触媒を酢酸エチル(3mL)で5回洗浄した後に、触媒を減圧乾燥し、乾燥後の触媒を用いて同様の反応を行った。この操作を10回繰り返して(2〜11回目の反応)、収率及び鏡像体過剰率を評価した。
1回目の反応の収率及び鏡像体過剰率がそれぞれ91%及び95%eeであったのに対して、リサイクルした触媒を用いた2〜11回目の反応の収率及び鏡像体過剰率はそれぞれ89〜94%及び92〜95%eeであり、ほぼ遜色ない結果が得られた。この結果から、本発明のキラルロジウム錯体はリサイクル性に優れることが分かった。