【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は、静電気に関する研究を続けていたところ、大気中において、低い電圧(電位差)で負に帯電した部材の表面から荷電粒子が放出され、他の部材の表面に入射していることを観測し、例えば、大気中、35mmのギャップ(距離)において極めて弱い電界(1kV/mm以下)をかけても、放出された微量な荷電粒子に反応して発光する現象を世界で初めて発見した。
【0008】
詳細は後述するが、本発明に係る荷電粒子検出用材料を荷電粒子放出部および荷電粒子放出部の表面に塗布しておくことによって、荷電粒子が放出している荷電粒子放出部の表面から光が放出されると共に、荷電粒子が入射している荷電粒子入射部の表面からも光が放出される。したがって、それらの光を観測することにより、リアルタイムで荷電粒子を検出することができる。なお、従来は、空気中では、1〜3kV/mm程度の電界をかけないと気中放電現象(火花放電、コロナ放電、グロー放電、アーク放電等)が起こらないと言われていた。また、それよりも遥かに弱い電界で起こる放電は暗放電と呼ばれ、また宇宙線や自然放射能由来の放射線等による気体分子の電離によるきわめて微弱な電流は暗流と呼ばれている。そして、これら暗放電・暗流は、静電気を由来として発生することがあるが、発光現象を伴わないため、目視またはカメラ等で検出することはできなかった。
【0009】
また、この静電気由来の暗放電・暗流は、それに由来する電磁波を検出することである程度の位置を把握することはできる。しかし、常にノイズが発生している製造現場、静電気放電が複数発生する場所または静電気放電のエネルギーが低い場合等では、ノイズ等の影響で観測することができなかった。
【0010】
このような複雑化した環境における放電現象は、今まで知られていた従来の観測方法では観測することができない現象であり、本発明により初めて観測することができたものである。そして、本発明者は、静電気由来のこの現象を静電気発光(Static Electrical Luminescence:SEL)と名付けた。
【0011】
本発明は、上述したように、従来技術では観測することができない、極めて弱い電界(低い電位差)で起こる放電現象等による荷電粒子をも検出することができる荷電粒子検出用材料並びにそれを用いた荷電粒子検出膜および荷電粒子検出液を提供することを目的とする。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の第1の態様は、荷電粒子放出部から荷電粒子が射出されたこと、または荷電粒子入射部に荷電粒子が入射したことを検出する荷電粒子検出用材料であって、発光物質、エレクトロルミネセンス物質、破壊発光物質、フォトクロミック物質、残光物質、輝尽発光物質および応力発光物質の少なくとも1つを含むことを特徴とする荷電粒子検出用材料にある。
【0013】
ここで、「荷電粒子」とは、電荷を帯びた粒子・クラスタ・気体等をいう。荷電粒子としては、例えば、電子、陽子、イオン化した原子(原子核そのものを含む。)、イオン化した分子(錯体を含む。)、電離・イオン化した気体等が挙げられる。
【0014】
また、「発光物質」とは、後述する蛍光物質以外の発光物質であり、X線、紫外線若しくは可視光線等により発光する物質および化学変化または生物酵素により発光する物質をいう。発光物質の具体例としては、例えば、Tris(2−phenylpyridinato)iridium(III)に代表されるイリジウム錯体、白金錯体の燐光性発光材料、ルミノール、ロフィン、ルシゲニン、シュウ酸エステルに代表される化学発光物質と感光発光色素9,10−ジフェニルアントラセン、9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセン、テトラセン、1−クロロ−9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセン、5,12−ビス(フェニルエチニル)ナフタセン、ルブレン、ローダミン6G、ローダミンB、ルミノールに代表される生物発光物質等が挙げられる。
【0015】
「エレクトロルミネセンス物質」とは、電場を加えると発光する物質をいう。エレクトロルミネセンス物質の具体例としては、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)や、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体(BeBq)、トリ(ジベンゾイルメチル)フェナントロリンユーロピウム錯体(Eu(DBM)3(Phen))、ジトルイルビニルビフェニル(DTVBi)、ルベンの様な低分子系の物質、ポリ(p−フェニレンビニレン)や、ポリアルキルチオフェンのようなπ共役高分子の物質等が挙げられる。
【0016】
「破壊発光物質」とは、破壊や摩擦などの力学刺激による破壊に伴って発光する物質をいう。破壊発光物質の具体例としては、例えば、苦灰石、白雲母、石英、トリリチア雲母、ペクトライト、蛍石、ポリリチア雲母等の無機材料や、Eu(TTA)3系、カルバゾール誘導体、アントラニル酸系、砂糖等の有機物等が挙げられる。
【0017】
「フォトクロミック物質」とは、X線や紫外線、可視光線が照射されることで色等の物理的特徴の変化を伴う物質をいう。フォトクロミック物質の具体例としては、例えば、スピロピラン系、ジアリールエテン系、フルギド系に代表される有機色素、バリウムマグネシウムケイ酸塩(BaMgSiO
4)に代表される無機材料等が挙げられる。
【0018】
「残光物質」とは、照射された可視光や紫外線等の光(電磁波)を蓄えて、照射を止めても発光する物質をいう。残光物質の具体例としては、例えば、ラジウム化合物やプロメチウム化合物、硫化亜鉛(ZnS系)やアルミン酸ストロンチウム(SrAl
2O
4系)等が挙げられ、DyやEu等の1〜3価の金属イオンを任意の割合で添加した硫化亜鉛(ZnS系)やアルミン酸ストロンチウム(SrAl
2O
4系)が好ましい。ここで、「添加」とは、2個以上の物質を同時に添加する「共添加」および「賦活」をも含む概念である。
【0019】
「輝尽発光物質」とは、高いエネルギーを持つレーザーや放射線等の照射後、可視または赤外光の励起により、発光する物質をいう。輝尽発光物質の具体例としては、例えば、BaFX:Eu
2+(XはBrまたはIである。)等が挙げられる。
【0020】
「応力発光物質」とは、機械的な外力により生じる変形によって発光(可視光、紫外光、近赤外光を含む。)する物質をいう。応力発光物質としては、例えば、スピネル構造、コランダム構造、βアルミナ構造、ケイ酸塩、欠陥制御型アルミン酸塩、ウルツ鉱型構造と閃亜鉛鉱型構造とが共存する構造を有する酸化物、硫化物、セレン化物またはテルル化物を主成分として構成されるもの等や、これらを構成するアルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンの少なくとも一部が、希土類金属イオンおよび遷移金属イオンの少なくとも1種の金属イオンに置換されているもの等が挙げられる。
【0021】
応力発光物質としては、例えば、アルミナ系、シリカ系、リン酸系、酸化チタン系、硫化亜鉛系およびその他に分類されるものがある。
【0022】
アルミナ系としては、具体的には、xSrO・yAl
2O
3・zMO(Mは二価金属、Mg,Ca,Ba,x,y,zは整数である。なお、Mは二価金属であれば限定されるものではないが、Mg,Ca,Baが好ましい。またx,y,zは1以上の整数を表す。)、Al
2O
3:Tb
3+、SrAl
2O
4:M(M=Eu
2+,Dy
3+,Ce
3+,Ho
3+のうち、少なくとも1つ以上を添加(doping)したもの)、ZnAl
2O
4:M(M=Eu
2+,Mn
2+,Dy
3+,Ce
3+,Ho
3+のうち、少なくとも1つ以上を添加)、SrAl
2O
4:Eu
2+、SrAl
2O
4:Ce
3+、SrAl
2O
4:Eu
2+,Dy
3+、SrAl
2O
4:Eu
2+,Ho
3+、SrAl
2O
4:Ho
3+,Ce
3+、XAl
2O
4:M(X=Sr,Ba,Mg,Ca,Znのうち、1〜2つを添加、M=Eu
2+,Dy
3+,Tb
3+,Ho
3+のうち、少なくとも1つ以上を添加)、SrAl
2O
4:Eu
2+,Cr
3+,Nd
3+等が挙げられる。
【0023】
また、他のアルミナ系としては、具体的には、一般式Sr{1−(2x+3y+3z)/2}Al
2O
4:xEu
2+,yCr
3+, zNd
3+(ただし、x,y,zは、0.25〜10mol%、好ましくは0.5〜2mol%を表す。)、Sr
3Al
2O
6:Eu
2+、CaYAi
3O
7:Eu
2+、CaYAl
3O
7:M(M=Eu
2+,Ce
3+,Dy
3+,Ce
3+,Ho
3+のうち1つを添加)、SrMgAl
10O
17:Ce
3+等が挙げられる。
【0024】
シリカ系としては、具体的にはxSrO・yAl
2O
3・zSiO
2(x,y,zは整数を表す。)、Ca
2Al
2Si
2O
7:Ce
3+、X
2Al
2SiO
7:M(X=Ca,Srのうち1つを添加、M=Eu
2+,Eu
3+,Ce
3+,Dy
3+のうち、少なくとも1つ以上を添加)、Ca
2MgSi
2O
7;Ce
3+、XMgSi
2O
7:M(X=Ba
2,Ca
2,Sr
2のうち1つを添加、またはX=SrCa,SrBaのうち1つ、M=Eu
2+,Dy
3+,Ce
3+のうち、少なくとも1つ以上を添加)、CaAl
2Si
2O
8:Eu
2+, SrCaAl
2Si
2O
8:Eu
2+、Ca
3Y
2Si
3O
12:RE
3+(RE
3+=Dy
3+,Eu
2+のうち、少なくとも1つ以上を添加)、BaSi
2O
2N
2:Eu
2+等が挙げられる。
【0025】
リン酸系としては、具体的には、Li
3PO
4:RE(RE=Dy
3+,Tb
3+,Ce
3+,Eu
2+)、LiXPO
4:Eu
2+(X=Sr,Brのうち1つ)、Li
2BaP
2O
7:Eu
2+、CaZr(PO
4)
2:Eu
2+等が挙げられる。
【0026】
酸化チタン系としては、具体的には、CaTiO
3:Pr
3+、BaCaTiO
3:Pr
3+、BaTiO
3−CaTiO
3:Pr
3+等が挙げられる。
【0027】
硫化亜鉛系としては、具体的には、ZnS:M(Mは二価金属であれば限定されるものではないが、Mn,Ga,Cu等が望ましい。M=Mn
2+,Ga
2+,Te
2+,Cu
2+,CuCl,Alのうち、少なくとも1つ以上を添加)、XZnOS:M(X=Ca,Baのうち1つ、M=Mn
2+,Cu
2+のうち1つを添加)、ZnMnTe等が挙げられる。
【0028】
また、その他のものとしては、具体的には、CaZrO
3:Eu
3+、CaNb
2O
n:Pr
3+(n=6,7)、(Sr,Ca,Ba)(2)SnO
4:Sm3+,La
3+、Sr
n+1Sn
nO
3n+1:Sm
3+(n=1,2,それ以上)、Y
2O
3:Eu
2+、ZrO
2:Ti、XGa
2O
4:Mn
2+(X=Zr,Mgのどちらか1つ)等が挙げられる。
【0029】
かかる第1の態様では、荷電粒子が、荷電粒子放出部から射出されたり、荷電粒子入射部に入射したことをリアルタイムで容易に検出することができる。
【0030】
本発明の第2の態様は、非真空中において、荷電粒子放出部から荷電粒子が射出されたこと、または荷電粒子入射部に荷電粒子が入射したことを検出する荷電粒子検出用材料であって、蛍光物質、発光物質、エレクトロルミネセンス物質、破壊発光物質、フォトクロミック物質、残光物質、輝尽発光物質および応力発光物質の少なくとも1つを含むことを特徴とする荷電粒子検出用材料にある。
【0031】
ここで、「非真空」とは、10
−4Torr以上の圧力状態をいう。本発明に係る荷電粒子検出用材料は10
−3〜10
5Torrの圧力範囲で用いられることが好ましく、10
−3〜10
4Torrの圧力範囲で用いられることがより好ましい。なお、非真空中に存在する気体分子は特に限定されず、Ar、HeおよびN
2等の不活性気体や、大気等であってもよい。
【0032】
また、「蛍光物質」とは、照射されたX線、紫外線または可視光線等のエネルギーを吸収することで発光する物質をいう。蛍光物質としては、例えば、ZnS:Ag+(Zn,Cd)S:Ag、Y
2O
2S:Eu+Fe
2O
3、ZnS:Cu,Al、ZnS:Ag+CoAl
2O
3、Zn2SiO4:Mn、ZnS:Ag,Cl、ZnS:Zn、(KF,MgF
2):Mn、(Zn,Cd)S:Ag、(Zn,Cd)S:Cu、ZnO:Zn、(Zn,Cd)S:Cu、ZnS:Cu、ZnS:Cu,Ag、MgF
2:Mn、(Zn,Mg)F
2:Mn、Zn
2SiO
4:Mn、ZnS:Ag+(Zn,Cd)S:Cu、Gd
2O
2S:Tb、Y
2O
2S:Tb、Y
2O
2S:Tb、Y
3Al
5O
12:Ce、Y
3(Al,Ga)
5O
12:Ce、Y
2SiO
5:Ce、Y
3Al
5O
12:Tb、Y
3(Al,Ga)
5O
12:Tb、ZnS:Ag,Al、InBO
3:Tb、InBO
3:EU、ZnS:Ag、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al、Y
2SiO
5:Tb、(Zn,Cd)S:Cu、Cl+(Zn,Cd)S:Ag,CL、InBO
3:Tb+InBO
3:Eu、ZnS:Ag+ZnS:Cu+Y
2O
2S:Eu、InBO
3:Tb+InBO
3:Eu+ZnS:Ag、(Ba,Eu)Mg
2Al
16O
27、(Ce,Tb)MgAl
11O
19、(Y,Eu)
2O
3、(Sr,Eu,Ba,Cf)
5(PO
4)
3CL、(La,Ce,Tb)PO
4、Y
2O
3:Eu、LaPO
4:Ce,Tb、(Sr,Cf、Ba)
10(PO
4)
6CL
2:Eu、(La,Ce,Tb)PO
4:Ce,Tb、Zn
2SiO
4:Mn、Zn
2SiO
4:Mn、Sb
2O
3、Ce
0.67Tb
0.33MgAl
11O
19:Ce,Tb、Y
2O
3:Eu(III)、Mg
4(F)GeO
6:Mn、Mg
4(F)(Ge,Sn)O
6:Mn、CaWO
4、CaWO
4:Pb、(Ba,Ti)
2P
2O
7:Ti、Sr
2P
2O
7:Sn、Cf
5F(PO
4)
3:Sb、Sr
5F(PO
4)
3:Sb,Mn、BaMgAl
10O
17:Eu,Mn、BaMg
2Al
16O
27:Eu(II)、BaMg
2Al
16O
27:Eu(II),Mn(II)、Sr
5Cl(PO
4)
3:Eu(II)、Sr
6P
5BO
20:Eu、(Cf,Zn,Mg)
3(PO
4)
2:Sn、(Sr,Mg)
3(PO
4)
2:Sn、CaSiO
3:Pb,Mn、Cf
5F(PO
4)
3:Sb,Mn、Cf
5(F,Cl)(PO
4)
3:Sb,Mn、(Cf,Sr,Ba)
3(PO
4)
2Cl
2:Eu、3Sr
3(PO
4)
2SrF
2:Sb,Mn、Y(P,V)O
4:Eu、(Zn,Sr)
3(PO
4)
2:Mn、Y
2O
2S:Eu、(Sr,Mg)
3(PO
4)
2:Sn(II)、3.5MgO
0.5MgF
2GeO
2:Mn、Cf
3(PO
4)
2CaF
2:Ce,Mn、SrAl
2O
7:Pb、BaSi
2O
5:Pb、SrFB
2O
3:Eu(II)、SrB
4O
7:Eu、Gd
2O
2S:Tb、Gd
2O
2S:Eu、Gd
2O
2S:Pr,Gd
2O
2S:Pr,Ce,F、Y
2O
2S:Tb、Y
2O
2S:Tb、Y
2O
2S:Tb、Zn(0.5)Cd(0.4)S:Ag、Zn(0.4)Cd(0.6)S:Ag、CdWO
4、CaWO
4、MgWO
4、Y
2SiO
5:Ce、YAlO
3:Ce、Y
3Al
5O
12:Ce、Y
3(Al,Ga)
5O
12:Ce、CdS、ZnO:Ga、ZnO:Zn、(Zn、Cd)S:Cu,Al、ZnO:Zn、(Zn,Cd)S:Cu,Al、ZnS:Cu,Al、ZnCdS:Ag、ZnS:Ag、Zn
2SiO
4:Mn、ZnS:Cu、CsI:Tl、LiF/ZnS:Ag、LiF/ZnS:Cu,Al,Auや、フルオレセインイソチオシアネートに代表されるフルオレセイン系の物質、ポルフィリン、白金ポルフィリンに代表されるポルフィリン系の物質、ローダミン、アゾベンゼン誘導体、アントラセンに代表される有機色素系の物質、ルテニウムトリスビピリジルに代表される金属錯体系の物質、ポリ(1,4-フェニレンビニレン)、ポリ(1,4-フェニレン)、ポリフルオレン、ポリ(チオフェン)に代表される発光ポリマー系の物質、その他にY
2O
2:Eu等が挙げられる。
【0033】
かかる第2の態様では、非真空中であっても、荷電粒子が、荷電粒子放出部から射出されたり、荷電粒子入射部に入射したことをリアルタイムで容易に検出することができる。
【0034】
本発明の第3の態様は、空気中において荷電粒子放出部と荷電粒子入射部との電界が、1V/mm〜3000V/mmの範囲にあることを特徴とする第1または第2の態様に記載の荷電粒子検出用材料にある。なお、空気中以外では、その誘電率によって、荷電粒子放出部と荷電粒子入射部との電界の範囲は変化する。
【0035】
ここで、「空気中」とは、700〜800Torr、湿度10〜90%、温度0〜100℃の状態をいう。本発明に係る荷電粒子検出用材料は、720〜780Torr、湿度30〜80%、温度10〜80℃の範囲で用いられることが好ましい。
【0036】
かかる第3の態様では、従来の観測方法では観測することができなかった低エネルギーの荷電粒子をリアルタイムで容易に検出することができる。さらに、その電界が22V/mm〜1000V/mmの範囲にあることがより好ましい。電界がこの範囲にあると、従来の観測方法では観測することができなかった低エネルギーの荷電粒子をリアルタイムでより容易に検出することができる。
【0037】
本発明の第4の態様は、荷電粒子が電子であり、荷電粒子放出部と荷電粒子入射部との電位差が、パッシェンの法則により算出される電圧Vより低いことを特徴とする第1〜3の態様の何れかに記載の荷電粒子検出用材料にある。
【0038】
ここで、「パッシェンの法則」とは、放電のおこる電圧(火花電圧)に関する実験則であって、次式で表されるものである。
【0039】
【数1】
(A、Bは次の表1に示す定数、pは気体の気圧、dは電極間の距離(荷電粒子放出部と荷電粒子入射部との距離)である。)
【0040】
【表1】
【0041】
この表1において、V
smは最小火花電圧であり、pd
smは最小火花電圧のときのpdの値である。また、各定数は表1に記載されている範囲内であれば特に限定されないが、各定数の範囲の中央の値(例えば、空気であれば、A=1.1、B=274、V
sm=330、pd
sm=0.76)が特に好ましい。
【0042】
なお、Cは気体の種類および電極材料によって決まる定数であり、実験により求めることができる。また、表1に記載されていない気体の場合における各定数の値は、実験を行い、その結果を最小二乗法によってフィッティングすること等により、求めることができる。
【0043】
かかる第4の態様では、従来は発光現象を伴わない放電である低電圧領域において、低エネルギーの電子をリアルタイムで容易に検出することができる。なお、この電圧領域でも低エネルギーの電子が荷電粒子放出部から荷電粒子入射部に移動することで発光を誘起する材料(荷電粒子検出用材料)を用いることにより、本発明者が世界で初めて、静電気由来の放電を、光を用いて検出することに成功した。
【0044】
本態様における検出条件としては、例えば、空気中・電極間距離10mm〜55mmの条件では3kV以上が好ましく、空気中・電極間距離10mm〜45mmの条件では2kV〜3kVが好ましく、空気中・電極間距離10mm〜35mmの条件では1kV〜3kVが好ましい。
【0045】
本発明の第5の態様は、蛍光物質、発光物質、エレクトロルミネセンス物質、破壊発光物質、フォトクロミック物質、残光物質、輝尽発光物質および応力発光物質の総重量比率が20〜80wt%であることを特徴とする第1〜4の態様の何れかに記載の荷電粒子検出用材料にある。
【0046】
かかる第5の態様では、荷電粒子放出部または荷電粒子入射部の表面に容易に塗布することができると共に、一般的な産業用カメラ等で検出可能なレベルの十分な輝度で発光することができるので、容易に荷電粒子を検出することができる。
【0047】
本発明の第6の態様は、非真空が、10
−3〜10
5Torrの圧力範囲であることを特徴とする第2〜5の態様の何れかに記載の荷電粒子検出用材料にある。
【0048】
かかる第6の態様では、10
−3〜10
5Torrの圧力範囲内であっても、荷電粒子が、荷電粒子放出部から射出されたり、荷電粒子入射部に入射したことをリアルタイムで容易に検出することができる。
【0049】
本発明の第7の態様は、残光物質が、SrAl
2O
4で表される物質にEu
2+およびDy
3+が添加されているもの、SrAl
2O
4で表される物質にEu
2+およびDy
2+、M(M=1〜3価の金属イオン)が添加されているもの、またはZn
3(PO
4)で表される物質にMn
2+およびM(M=1〜3価の金属イオン)が添加されているものであることを特徴とする第1〜6の態様の何れかに記載の荷電粒子検出用材料にある。
【0050】
かかる第7の態様では、荷電粒子検出用材料がより高い輝度で発光することができるので、より容易に荷電粒子を検出することができる。
【0051】
本発明の第8の態様は、応力発光物質が、SrAl
2O
4で表される物質にEu
2+が添加されているもの、SrAl
2O
4で表される物質にEu
2+、Ho
3+、Dy
2+、M
1、M
2およびM
3(M
1、M
2、M
3=1〜3価のそれぞれ異なる金属イオン)の少なくとも一つが添加されているもの、またはCaYAl
3O
7で表される物質にEu
2+が添加されているものであることを特徴とする第1〜6の態様の何れかに記載の荷電粒子検出用材料にある。
【0052】
かかる第8の態様では、荷電粒子検出用材料がより高い輝度で発光することができるので、より容易に荷電粒子を検出することができる。
【0053】
本発明の第9の態様は、第1〜8の何れかの態様に記載の荷電粒子検出用材料を含む荷電粒子検出膜にある。
【0054】
ここで、「荷電粒子検出膜」は、上述した物質の少なくとも1種類が含まれている材料で構成されていれば特に限定されない。荷電粒子検出膜としては、たとえばエポキシ樹脂やウレタン樹脂と、これらの樹脂の架橋・硬化反応を制御するための硬化剤と溶剤と、上述した物質およびその物質を均一に分散させるための分散剤・補助剤とを均一に混合し作製したものでもよい。また、荷電粒子検出膜に含まれる上述した物質の濃度(重量比率)は特に限定されないが、20wt%〜80wt%の範囲であれば目視で発光を確認することができるので好ましく、50wt%〜70wt%の範囲であれば目視でより明確に発光を確認することができるのでより好ましい。また、荷電粒子検出膜の厚さは、特に限定されないが、厚さが1μm〜1mmの範囲が発光強度および取り扱い易さの点から好ましく、厚さが10μm〜500μmの範囲が発光強度および取り扱い易さの点からより好ましい。
【0055】
なお、荷電粒子検出膜は、計測対象物の表面に直接形成(溶液塗布・硬化)されてもよいし、既に形成されている「荷電粒子検出膜」を計測対象物の表面に貼り付けることによって計測対象物の表面に形成されてもよい。
【0056】
かかる第9の態様では、荷電粒子検出膜は、計測対象物の形状の影響を受けることなく容易に形成したり、貼りつけたりすることができる。その結果、計測対象物が曲面等の複雑な3次元形状をしていたとしても、その表面に入射する荷電粒子を容易に検出することができる。
【0057】
本発明の第10の態様は、第1〜8の態様に何れかに記載の荷電粒子検出用材料を含む荷電粒子検出液にある。
【0058】
ここで、荷電粒子検出液を構成する荷電粒子検出用材料以外の要素は、荷電粒子検出用材料を分散させることができるものであれば特に限定されず、例えば、水や透明・半透明の樹脂等であってもよい。
【0059】
かかる第10の態様では、複雑な形状の計測対象物や荷電粒子検出膜を形成できないような狭隘な部分等を有する計測対象物の表面にも荷電粒子検出用材料を流し込む(配置する)ことができるので、そのような複雑な形状の計測対象物に入射する荷電粒子を容易に検出することができる。また、液体中に荷電粒子検出用材料が三次元的に分散しているので、液体中を移動する荷電粒子の軌跡を可視化することができる。
【0060】
なお、「蛍光物質」、「発光物質」、「エレクトロルミネセンス物質」、「破壊発光物質」、「フォトクロミック物質」、「残光物質」、「輝尽発光物質」および「応力発光物質」は、各物質の特性だけでなく、他の物質の特性を有していてもよい。たとえば、「応力発光物質」が「蛍光物質」の特性を有していてもよい。この場合には、この物質は「応力発光物質」であり、かつ「蛍光物質」でもある。
【0061】
また、荷電粒子検出用材料には、上述した物質以外の物質が含まれていてもよい。なお、上述した物質以外の物質は特に限定されない。