特許第6980334号(P6980334)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6980334熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法およびそれにより製造された熱可塑性ポリウレタンフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980334
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法およびそれにより製造された熱可塑性ポリウレタンフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 37/26 20060101AFI20211202BHJP
   C08G 18/65 20060101ALI20211202BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   B32B37/26
   C08G18/65 011
   B32B27/40
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-544002(P2019-544002)
(86)(22)【出願日】2018年3月20日
(65)【公表番号】特表2020-507499(P2020-507499A)
(43)【公表日】2020年3月12日
(86)【国際出願番号】KR2018003187
(87)【国際公開番号】WO2018174498
(87)【国際公開日】20180927
【審査請求日】2019年8月15日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0034801
(32)【優先日】2017年3月20日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】サン・ユル・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュ・ヒ・ホン
(72)【発明者】
【氏名】セ・ジョン・パク
(72)【発明者】
【氏名】サン・ファン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・スン・キム
【審査官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−049941(JP,A)
【文献】 特表2004−516958(JP,A)
【文献】 特開平10−130615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00−43/00、
C08G18/00−18/87、71/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂、第1イソシアネート系硬化剤、および有機溶剤を含むポリウレタン樹脂組成物を製造するステップ、
前記ポリウレタン樹脂組成物を基材フィルム上に塗布し熱処理して、ポリウレタン樹脂層を含む積層体を製造するステップ、
前記積層体を2個準備し、前記積層体各々のポリウレタン樹脂層が互いに対向するように前記積層体を張り合わせるステップ、および
前記張り合わせられた積層体を熟成して、直接接して備えられる2個のポリウレタン樹脂層を含む熱可塑性ポリウレタンフィルムを形成するステップであって、前記張り合わせられた積層体の熟成は、25℃以上55℃以下の温度で12時間以上24時間以下の時間の間に行われる、ステップ
を含み、
前記2個のポリウレタン樹脂層間の界面接合力は14Mpa以上18Mpa以下である、熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記熱処理は、100℃以上150℃以下の温度で行われる、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記積層体の張り合わせは、80℃以上140℃以下の温度で行われる、請求項1または2に記載の熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記第1イソシアネート系硬化剤の含量は、前記ポリウレタン樹脂100重量部に対して5重量部超過7.5重量部未満である、請求項1からの何れか1項に記載の熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記第1イソシアネート系硬化剤は、2個以上6個以下のイソシアネート官能基を含む、請求項1からの何れか1項に記載の熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記ポリウレタン樹脂は、数平均分子量が1,800g/mol以上2,200g/mol以下のポリオール、炭素数4以上10以下のジオールを含む鎖延長剤、および第2イソシアネート系硬化剤を含む混合物を有機溶剤において共重合反応させて製造される、請求項1からの何れか1項に記載の熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記共重合反応は、50℃以上70℃以下の温度で行われる、請求項に記載の熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記ポリオールの含量は、前記混合物の重量に対して45重量%以上55重量%以下である、請求項またはに記載の熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記鎖延長剤の含量は、前記混合物の重量に対して10重量%以上15重量%以下である、請求項からの何れか1項に記載の熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記第2イソシアネート系硬化剤の含量は、前記混合物の重量に対して32.5重量%以上40重量%以下である、請求項からの何れか1項に記載の熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記ポリウレタン樹脂組成物の固形分含量は、20%以上70%以下である、請求項1から10の何れか1項に記載の熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法。
【請求項12】
前記熱可塑性ポリウレタンフィルムの厚さは、20μm以上500μm以下である、請求項1から11の何れか1項に記載の熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法。
【請求項13】
直接接して備えられる2個のポリウレタン樹脂層を含み、
前記2個のポリウレタン樹脂層間の界面接合力は14Mpa以上18Mpa以下であり、
前記ポリウレタン樹脂層はポリウレタン樹脂、第1イソシアネート系硬化剤、および有機溶剤を含むポリウレタン樹脂組成物の硬化物を含む、熱可塑性ポリウレタンフィルム。
【請求項14】
前記ポリウレタン樹脂は、数平均分子量が1,800g/mol以上2,200g/mol以下のポリオール、炭素数4以上10以下のジオールを含む鎖延長剤、および第2イソシアネート系硬化剤を含む混合物の共重合体である、請求項13に記載の熱可塑性ポリウレタンフィルム。
【請求項15】
厚さが20μm以上500μm以下である、請求項13または14に記載の熱可塑性ポリウレタンフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は2017年3月20日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2017−0034801号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本発明に含まれる。
【0002】
本発明は、厚さの厚い熱可塑性ポリウレタンフィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
熱可塑性ポリウレタン(thermoplastic polyurethane、TPU)フィルムは、強度、伸び特性、靱性(toughness)および耐摩耗性(abrasion resistance)などの機械的物性に優れており、自動車分野などで主に用いられている。
【0004】
一般に、押出されて成形されたポリウレタンペレットを溶剤に溶かしてポリウレタン溶液を製造し、ポリウレタン溶液を基材上に塗布して熱可塑性ポリウレタンフィルムを製造している。但し、分子量の高いポリウレタンペレットは溶剤によく溶解されないため、製造されるポリウレタン溶液の固形分含量は約15%以下と低い。固形分含量の低いポリウレタン溶液は基材上に一定厚さ以上に塗布するのが不可能であるため、厚さの厚いポリウレタンフィルムを製造するのが困難であるという問題がある。また、ポリウレタンペレットは追加的な重合反応が進行し難いため、ポリウレタン溶液から製造される熱可塑性ポリウレタンフィルムの物性を制御するのが容易ではないという問題があり、高分子量のポリウレタンペレットを溶解させるために毒性の強い溶剤を用いなければならないという問題がある。
【0005】
また、自動車分野では、耐久性と寿命特性に優れた熱可塑性ポリウレタンフィルムが求められている。
【0006】
そこで、高分子量のポリウレタン樹脂を用いつつ毒性の低い溶剤を用いて、厚くて耐久性に優れた熱可塑性ポリウレタンフィルムを製造できる技術が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、厚くて耐久性に優れた熱可塑性ポリウレタンフィルムおよびその製造方法を提供する。
【0008】
但し、本発明が解決しようとする課題は以上で言及した課題に制限されず、言及していないまた他の課題は下記の記載によって当業者に明らかに理解できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施態様は、ポリウレタン樹脂、第1イソシアネート系硬化剤、および有機溶剤を含むポリウレタン樹脂組成物を製造するステップ、前記ポリウレタン樹脂組成物を基材フィルム上に塗布し熱処理して、ポリウレタン樹脂層を含む積層体を製造するステップ、前記積層体を2個準備し、前記積層体各々のポリウレタン樹脂層が互いに対向するように前記積層体を張り合わせるステップ、および前記張り合わせられた積層体を熟成して、直接接して備えられる2個のポリウレタン樹脂層を含む熱可塑性ポリウレタンフィルムを形成するステップを含み、前記2個のポリウレタン樹脂層間の界面接合力は14Mpa以上18Mpa以下である、熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法を提供する。
【0010】
本発明の他の実施態様は、直接接して備えられる2個のポリウレタン樹脂層を含み、前記2個のポリウレタン樹脂層間の界面接合力は14Mpa以上18Mpa以下であり、前記ポリウレタン樹脂層はポリウレタン樹脂、第1イソシアネート系硬化剤、および有機溶剤を含むポリウレタン樹脂組成物の硬化物を含む、熱可塑性ポリウレタンフィルムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施態様による熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法は、厚くて耐久性に優れた熱可塑性ポリウレタンフィルムを容易に製造することができる。
【0012】
本発明の一実施態様による熱可塑性ポリウレタンフィルムは、厚くて耐久性に優れる。
【0013】
本発明の効果は上述した効果に限定されるものではなく、言及していない効果は本願の明細書および添付された図面によって当業者に明らかに理解できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施態様による熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法を示す模式図である。
図2】本発明の一実施態様によるポリウレタン樹脂層間の界面接合力を測定する実験を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願明細書の全体にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反する記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0016】
本願明細書の全体にわたって、ある部材が他の部材「上に」位置しているとする時、これは、ある部材が他の部材に接している場合だけでなく、二つの部材の間にまた他の部材が存在する場合も含む。
【0017】
本願明細書の全体にわたって、単位「重量%」とは、部材の総重量に対して部材に含まれる成分の重量比率を意味する。
【0018】
本願明細書の全体にわたって、単位「重量部」とは、各成分間の重量の比率を意味する。
【0019】
本願明細書の全体にわたって、用語「重合単位」とは、重合体内で単量体が反応した形態を意味し、具体的には、その単量体が重合反応を経てその重合体の骨格、例えば、主鎖または側鎖を形成している形態を意味する。
【0020】
本願明細書の全体にわたって、ある化合物の「重量平均分子量」および「数平均分子量」は、その化合物の分子量と分子量分布を用いて計算することができる。具体的には、1mlのガラス瓶にテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)と化合物を入れて化合物の濃度が1重量%のサンプル試料を準備し、標準試料(ポリスチレン)とサンプル試料をフィルタ(ポアの大きさが0.45mm)を介して濾過させた後、GPCインジェクタ(injector)に注入して、サンプル試料の溶離(elution)時間を標準試料のキャリブレーション(calibration)曲線と比較して化合物の分子量および分子量分布を得ることができる。この時、測定機器としてInfinity II 1260(Agilient社)を用いることができ、流速は1.00mL/min、カラム温度は40.0℃に設定することができる。
【0021】
以下では本明細書についてより詳しく説明する。
【0022】
本発明の一実施態様は、ポリウレタン樹脂、第1イソシアネート系硬化剤、および有機溶剤を含むポリウレタン樹脂組成物を製造するステップ、前記ポリウレタン樹脂組成物を基材フィルム上に塗布し熱処理して、ポリウレタン樹脂層を含む積層体を製造するステップ、前記積層体を2個準備し、前記積層体各々のポリウレタン樹脂層が互いに対向するように前記積層体を張り合わせるステップ、および前記張り合わせられた積層体を熟成して、直接接して備えられる2個のポリウレタン樹脂層を含む熱可塑性ポリウレタンフィルムを形成するステップを含み、前記2個のポリウレタン樹脂層間の界面接合力は14Mpa以上18Mpa以下である、熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法を提供する。
【0023】
本発明の一実施態様による熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法は、厚くて耐久性に優れた熱可塑性ポリウレタンフィルムを容易に製造することができる。具体的には、2個のポリウレタン樹脂層を直接接して備えることによって、より厚くて耐久性が向上した熱可塑性ポリウレタンフィルムを製造することができる。また、直接接している2個のポリウレタン樹脂層間の界面接合力は14Mpa以上18Mpa以下であって、2個のポリウレタン樹脂層が互いに剥離されることが効果的に抑制される。界面接合力に優れた前記2個のポリウレタン樹脂層を含む熱可塑性ポリウレタンフィルムは、耐久性および寿命特性に優れる。
【0024】
本発明の一実施態様によれば、前記第1イソシアネート系硬化剤の含量は、前記ポリウレタン樹脂100重量部に対して、5重量部超過7.5重量部未満、または5.5重量部以上7.25重量部以下であってもよい。前記第1イソシアネート系硬化剤の含量を前述した範囲に調節することによって、2個のポリウレタン樹脂層間の界面接合力および前記熱可塑性ポリウレタンフィルムの耐久性を向上させることができる。
【0025】
本発明の一実施態様によれば、前記第1イソシアネート系硬化剤は、2個以上6個以下のイソシアネート官能基を含むことができる。例えば、第1イソシアネート系硬化剤は、Evonik社の2官能イソシアネート系硬化剤であるH12MDI、AsahiKASEI社の6官能イソシアネート系硬化剤であるMHG−80B、AsahiKASEI社の6官能イソシアネート系硬化剤であるMFA−100、およびAsahiKASEI社の3官能イソシアネート系硬化剤であるTKA−100のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0026】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタン樹脂は、数平均分子量が1,800g/mol以上2,200g/mol以下のポリオール;炭素数4以上10以下のジオールを含む鎖延長剤;および第2イソシアネート系硬化剤を含む混合物を有機溶剤において共重合反応させて製造することができる。
【0027】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタン樹脂は、ソフトセグメント(soft segment)およびハードセグメント(hard segment)を含むブロック共重合体(block copolymer)であってもよい。具体的には、前記ポリウレタン樹脂のソフトセグメントは前記ポリオールと第2イソシアネート系硬化剤に由来した重合単位を含むことができ、前記ポリウレタン樹脂のハードセグメントは前記鎖延長剤と第2イソシアネート系硬化剤に由来した重合単位を含むことができる。
【0028】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリオールの数平均分子量は、1,800g/mol以上2,200g/mol以下、1,950g/mol以上2,050g/mol以下、または1,900g/mol以上2,100g/mol以下であってもよい。前記ポリオールの数平均分子量が前述した範囲内である場合、熱可塑性ポリウレタンフィルムの伸び率が減少するのを抑制することができる。
【0029】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリオールは、2個のヒドロキシ基を含有するジオールであってもよい。具体的には、前記ポリオールは、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリエステルジオールおよびポリエーテルジオールのうち1種以上を含むことができる。
【0030】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリオールの含量は、前記混合物の重量に対して45重量%以上55重量%以下であってもよい。具体的には、前記ポリオールの含量は、前記混合物の重量に対して、48重量%以上54重量%以下、または50重量%以上53重量%以下であってもよい。前記混合物内の前記ポリオールの含量を前述した範囲に調節することによって、ポリウレタン樹脂の重合反応を安定的に行うことができ、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムの加工性を向上させることができる。
【0031】
本発明の一実施態様によれば、前記鎖延長剤は、炭素数4以上10以下のジオール、または炭素数4以上6以下のジオールを含むことができる。前述した範囲の炭素数を有するジオールを含む鎖延長剤は、前記第2イソシアネート系硬化剤の鎖を効果的に延長させることができる。具体的には、前記鎖延長剤は、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10−デカンジオール、1,1−シクロヘキサンジメタノールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールのうち少なくとも一つを含むことができる。
【0032】
本発明の一実施態様によれば、前記鎖延長剤の含量は、前記混合物の重量に対して10重量%以上15重量%以下であってもよく、具体的には、10.5重量%以上14重量%以下、または12重量%以上12.5重量%以下であってもよい。前記混合物内の鎖延長剤の含量を前述した範囲に調節することによって、前記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量を効果的に向上させることができる。また、前記鎖延長剤の含量が前述した範囲内である場合、前記鎖延長剤は第2イソシアネート系硬化剤と反応してポリウレタン樹脂のハードセグメントを効果的に形成することができ、製造される熱可塑性ポリウレタンフィルムの機械的物性を向上させることができる。
【0033】
本発明の一実施態様によれば、前記第2イソシアネート系硬化剤は、2個以上6個以下のイソシアネート官能基を含むことができる。具体的には、前記第2イソシアネート系硬化剤は、2個のイソシアネート官能基を含むことができる。例えば、前記第2イソシアネート系硬化剤は、イソホロンジイソシアネート(IPDI;isophorone diisocyanate)、メチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート、キシレンジイソシアネート(XDI;xylene diisocyanate)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネートおよびシクロヘキサンジイソシアネート(cyclohexane diisocyanate)のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0034】
本発明の一実施態様によれば、前記第2イソシアネート系硬化剤の含量は、前記混合物の重量に対して32.5重量%以上40重量%以下であってもよい。具体的には、前記第2イソシアネート系硬化剤の含量は、前記混合物の重量に対して、34重量%以上38重量%以下、または35重量%以上36.5重量%以下であってもよい。前記第2イソシアネート系硬化剤の含量を前述した範囲に調節することによって、ポリウレタン樹脂を効果的に重合することができ、製造される熱可塑性ポリウレタンフィルムの加工性および耐久性を向上させることができる。
【0035】
本発明の一実施態様によれば、前記混合物は触媒をさらに含むことができ、前記触媒の含量は前記混合物100重量部に対して、0.005重量部以上0.02重量部以下、または0.008重量部以上0.015重量部以下であってもよい。前記触媒の含量を前述した範囲に調節することによって、ポリウレタン樹脂の重合反応を効果的に促進させることができ、比較的低い温度でポリウレタン樹脂を重合させることができる。前記触媒として当業界で用いられる触媒を特に制限されずに用いることができ、例えば、ジブチルスズジラウレート(dibutyl tin dilaurate;DBTDL)を用いることができる。
【0036】
本発明の一実施態様によれば、前記鎖延長剤として用いられるジオールを構成する炭素数は前記ポリオールを構成する炭素数より小さいため、前記混合物内で前記ジオールは前記ポリオールより流動性が高い。それにより、前記混合物内で、前記鎖延長剤と第2イソシアネート系硬化剤の反応が前記ポリオールと第2イソシアネート系硬化剤の反応より先に起こる。具体的には、鎖延長剤としてブタンジオールを用いる場合、ブタンジオールの2個のヒドロキシ基のうち1個のヒドロキシ基が前記第2イソシアネート系硬化剤のイソシアネート基と反応して結合し、前記ブタンジオールの未反応ヒドロキシ基が第2イソシアネート系硬化剤の新しいイソシアネート基と結合する過程が繰り返されるにつれて、長く延びた鎖構造を有する第2イソシアネート系硬化剤を形成することができる。その後、長く延びた鎖構造を有する第2イソシアネート系硬化剤と前記ポリオールが反応して、重量平均分子量が増加したポリウレタン樹脂を形成することができる。
【0037】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、40,000g/mol以上70,000g/mol以下であってもよい。前記ポリオールの数平均分子量、前記鎖延長剤として用いられるジオールの炭素数、前記混合物内のポリオールの含量、鎖延長剤の含量、第2イソシアネート系硬化剤の含量などを調節して、前記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量を制御することができる。前記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量を調節することによって、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムの引張強度および耐久性などの物性を容易に制御することができる。
【0038】
本発明の一実施態様によれば、前記共重合反応は、50℃以上70℃以下の温度で行うことができる。前記共重合反応温度を前述した範囲に調節することによって、ポリウレタン樹脂を安定的に重合することができる。また、比較的低い温度でポリウレタン樹脂を重合することができるため、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造費用および製造時間を減少させることができる。
【0039】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタン樹脂の重合反応は有機溶剤において行うことができる。熱可塑性ポリウレタンフィルムを製造するために水溶性溶剤を用いる場合には、ウレタン粒子を数十nm〜数百nmの直径を有するビーズ(bead)形態に加工して水溶性溶剤上に分散させなければならない。この時、ウレタン粒子を水溶性溶剤上で効果的に分散させるためには各種の界面活性剤およびモノマーなどの添加剤を用いなければならないため、熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造工程が複雑になり、製造時間および製造費用が増加するという問題がある。
【0040】
それに対し、本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタン樹脂は、前記有機溶剤に溶解(dissolve)している状態であって、前記ウレタン組成物に追加の分散剤および界面活性剤などの分散安定系の添加剤を付加する必要がない。したがって、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造時間および製造費用を減少させることができる。
【0041】
本発明の一実施態様によれば、前記有機溶剤は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)およびエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)のうち少なくとも一つを含むことができる。前記ポリウレタン樹脂の重合時に用いられる前述した種類の有機溶剤は毒性がほぼないものであるため、前記有機溶剤を用いることによって使用者の人体および環境に有害な影響を及ぼすのを防止することができる。
【0042】
本発明の一実施態様によれば、有機溶剤において前記混合物を反応させて、ポリウレタン樹脂および有機溶剤を含む組成物を製造することができ、前記組成物に第1イソシアネート系硬化剤を添加して、前記ポリウレタン樹脂組成物を製造することができる。すなわち、前記ポリウレタン樹脂組成物の有機溶剤は、前記ポリウレタン樹脂の製造時に用いられて残留する有機溶剤であってもよい。また、前記ポリウレタン樹脂組成物に追加の有機溶剤を添加することができる。
【0043】
本発明の一実施態様によれば、前記有機溶剤の含量は、前記ポリウレタン樹脂100重量部に対して30重量部以上80重量部以下であってもよい。前記有機溶剤の含量を前述した範囲に調節することによって、前記ポリウレタン樹脂組成物を熱処理するステップにおいて前記ポリウレタン樹脂組成物が急激に乾燥して有機溶剤が膨らむ現象を抑制することができ、熱可塑性ポリウレタンフィルムの厚さが薄くなるのを防止することができる。
【0044】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタン樹脂組成物の固形分含量は、20%以上70%以下、具体的には、30%以上60%以下、または40%以上55%以下であってもよい。本明細書において、前記「固形分」とは溶液全体から溶剤を除いた溶質または固形物を意味し、具体的には、前記ポリウレタン樹脂組成物の固形分とは、前記有機溶剤を除いた前記ポリウレタン樹脂、第1イソシアネート系硬化剤および触媒などの添加剤を総称するものであってもよい。前記ポリウレタン樹脂組成物の固形分含量が前述した範囲内である場合、前記ポリウレタン樹脂組成物を基材上に厚く塗布することができ、それにより、厚さの厚い熱可塑性ポリウレタンフィルムを製造することができる。
【0045】
図1は、本発明の一実施態様による熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法を示す模式図である。図1を参照すれば、基材フィルム上に塗布されたポリウレタン樹脂組成物を熱処理して、ポリウレタン樹脂層20、20’および基材フィルム10、10’を含む2個の積層体100、100’を製造することができる。前記積層体100、100’に含まれた2個のポリウレタン樹脂層20、20’を互いに対向するように位置させ、2個の積層体100、100’を張り合わせて、2個のポリウレタン樹脂層20、20’を接合することができる。その後、積層体を熟成させて熱可塑性ポリウレタンフィルム200を製造することができる。その後、さらに2個の基材フィルム10、10’を除去することができる。
【0046】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタン樹脂組成物を基材フィルム上に塗布する方法は特に制限されず、例えば、スプレーコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、ロールコーティング、フレキソコーティング、スクリーンコーティング、スピンコーティング、フローコーティング、ナイフコーティング、ノズルコーティング、ロータリースクリーンコーティング、リバースロールコーティング、コンマコーティング、リップコーティングおよびダイコーティングのいずれか一つの方法を用いることができる。
【0047】
本発明の一実施態様によれば、前記基材フィルム上に塗布されたポリウレタン樹脂組成物を熱処理して、基材フィルム上にポリウレタン樹脂層を形成することによって積層体を製造することができる。具体的には、前記ポリウレタン樹脂組成物を基材フィルム上に20μm以上500μm以下の厚さに塗布し熱処理することによって、基材フィルム上に厚さが10μm以上250μm以下のポリウレタン樹脂層を形成することができる。前記基材フィルム上に塗布された前記ポリウレタン樹脂組成物を熱処理する過程で、前記ポリウレタン樹脂組成物に含まれた有機溶剤が揮発することによって、形成されるポリウレタン樹脂層の厚さが減る。そこで、有機溶剤が揮発するにつれて減少するポリウレタン樹脂層の厚さを考慮して、前記基材フィルム上に塗布される前記ポリウレタン樹脂組成物の厚さを調節することができる。
【0048】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタン樹脂組成物を100℃以上150℃以下の温度で熱処理することができる。前記熱処理の温度条件を前述した範囲に調節することによって、前記ポリウレタン樹脂組成物に含まれた有機溶剤を効果的に揮発させてポリウレタン樹脂層を形成することができる。また、前記ポリウレタン樹脂組成物を前述した温度範囲で熱処理することによって、前記ポリウレタン樹脂組成物が急激に乾燥して有機溶剤が膨らむ現象を抑制することができ、製造されるポリウレタン樹脂層に黄変現象が発生するのを抑制することができる。
【0049】
本発明の一実施態様によれば、80℃以上140℃以下の温度で前記積層体を張り合わせることができる。具体的には、前記方法により製造された積層体を2個準備した後、各々のポリウレタン樹脂層が対向するように前記2個の積層体を積層し、前述した温度範囲でポリウレタン樹脂層を加熱して、前記2個の積層体を張り合わせることができる。前記ポリウレタン樹脂層が加熱されてポリウレタン樹脂層の温度がガラス転移温度に達すれば、前記2個のポリウレタン樹脂層が接している面が溶けて粘性が増加する。それにより、前記2個のポリウレタン樹脂層が接合され、接合された2個のポリウレタン樹脂層を剥離させるのが容易ではなくなる。
【0050】
したがって、本発明の一実施態様による熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法は、接着剤または接着フィルムを用いることなく2個のポリウレタン樹脂層を接合して、厚さの厚い熱可塑性ポリウレタンフィルムを製造することができる。
【0051】
また、前記積層体の張り合わせは、80℃以上140℃以下、80℃以上130℃以下、または100℃以上120℃以下の温度で行うことができる。前記積層体の張り合わせ温度を前述した温度範囲に調節することによって、前記2個のポリウレタン樹脂層間の界面接合力を効果的に向上させることができる。また、前述した温度条件で前記2個の積層体を張り合わせることによって、ポリウレタン樹脂層が過度に溶けて基材フィルム外へ流れて熱可塑性ポリウレタンフィルムの厚さが薄くなるのを抑制することができる。
【0052】
本発明の一実施態様によれば、当業界で用いられる方法により2個の積層体を張り合わせて、前記2個のポリウレタン樹脂層を直接接合することができる。例えば、80℃以上140℃以下に加熱された2個の圧着ロールの間に前記2個の積層体を通過させつつ、積層体を張り合わせて、前記2個のポリウレタン樹脂層を接合することができる。
【0053】
本発明の一実施態様によれば、前記張り合わせられた積層体を20℃以上60℃以下の温度で12時間以上24時間以下の時間の間、熟成することができる。具体的には、前記張り合わせられた積層体を25℃以上55℃以下、20℃以上35℃以下、または40℃以上50℃以下の温度で熟成することができる。
【0054】
前述した温度および時間の条件で2個のポリウレタン樹脂層を熟成することによって、2個のポリウレタン樹脂層間の界面接合力をさらに効果的に向上させることができる。前記接合された2個のポリウレタン樹脂層を含む積層体が熟成される過程で、前記2個のポリウレタン樹脂層が接している面に存在するポリウレタン樹脂を追加硬化させて、結合させることができる。それにより、前記2個のポリウレタン樹脂層間の接合力をさらに向上させることができる。
【0055】
また、前記積層体に含まれたポリウレタン樹脂層は半硬化状態であって、接合された2個のポリウレタン樹脂層を熟成させることで最終的に硬化した熱可塑性ポリウレタンフィルムを製造することができる。前記張り合わせられた積層体が熟成される過程で、前記ポリウレタン樹脂層に含まれたポリウレタン樹脂と前記第1イソシアネート系硬化剤が反応して、前記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量が増加する。また、前記半硬化したポリウレタン樹脂層に残存する微量のポリオール、鎖延長剤および第2イソシアネート系硬化剤間の追加的な反応を進行させることができる。
【0056】
本発明の一実施態様によれば、前記張り合わせられた積層体を熟成した後に基材フィルムを除去するステップをさらに含むことができる。
【0057】
本発明の一実施態様によれば、基材を除いた熱可塑性ポリウレタンフィルムの厚さは、20μm以上500μm以下であってもよい。具体的には、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムの厚さは、40μm以上450μm以下、100μm以上300μm以下、または200μm以上450μm以下であってもよい。すなわち、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法は、従来のポリウレタンフィルムに比べて、厚さの厚い熱可塑性ポリウレタンフィルムを提供することができる。
【0058】
本発明の他の実施態様は、直接接して備えられる2個のポリウレタン樹脂層を含み、前記2個のポリウレタン樹脂層間の界面接合力は14Mpa以上18Mpa以下であり、前記ポリウレタン樹脂層はポリウレタン樹脂、第1イソシアネート系硬化剤、および有機溶剤を含むポリウレタン樹脂組成物の硬化物を含む、熱可塑性ポリウレタンフィルムを提供する。
【0059】
本発明の一実施態様による熱可塑性ポリウレタンフィルムは、前述した熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法により製造されたものであってもよい。
【0060】
本発明の一実施態様による熱可塑性ポリウレタンフィルムは、厚くて耐久性に優れる。具体的には、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムは、直接接して備えられる2個のポリウレタン樹脂層を含んでいるため、従来のポリウレタンフィルムに比べて厚さが厚い。
【0061】
また、前記2個のポリウレタン樹脂層間の界面接合力は、14Mpa以上18Mpa以下、15Mpa以上17Mpa以下、14Mpa以上16Mpa以下、または16.5Mpa以上18Mpa以下であってもよい。界面接合力が前述した範囲を満たす2個のポリウレタン樹脂層を含む前記熱可塑性ポリウレタンフィルムは、耐久性および寿命特性に優れる。
【0062】
本発明の一実施態様によれば、前記第1イソシアネート系硬化剤の含量は、前記ポリウレタン樹脂100重量部に対して、5重量部超過7.5重量部未満、または5.5重量部以上7.25重量部以下であってもよい。前記第1イソシアネート系硬化剤の含量を前述した範囲に調節することによって、界面接合力に優れた2個のポリウレタン樹脂層を含む熱可塑性ポリウレタンフィルムを提供することができる。
【0063】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタン樹脂は、数平均分子量が1,800g/mol以上2,200g/mol以下のポリオール;炭素数4以上10以下のジオールを含む鎖延長剤;および第2イソシアネート系硬化剤を含む混合物の共重合体であってもよい。
【0064】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、40,000g/mol以上70,000g/mol以下であってもよい。前記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量を調節することによって、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムの引張強度および耐久性などの物性を容易に制御することができる。
【0065】
前記熱可塑性ポリウレタンフィルムにおけるポリオール、鎖延長剤、第1イソシアネート系硬化剤、第2イソシアネート系硬化剤、有機溶剤および触媒などは、前述した熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法で用いられるポリオール、鎖延長剤、第1イソシアネート系硬化剤、第2イソシアネート系硬化剤、有機溶剤および触媒などと同一のものであってもよい。
【0066】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリオールの含量は、前記混合物の重量に対して45重量%以上55重量%以下であってもよく、具体的には、48重量%以上54重量%以下、または50重量%以上53重量%以下であってもよい。前記混合物内の前記ポリオールの含量を前述した範囲に調節することによって、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムの加工性を向上させることができる。
【0067】
本発明の一実施態様によれば、前記鎖延長剤の含量は、前記混合物の重量に対して10重量%以上15重量%以下であってもよい。具体的には、前記鎖延長剤の含量は、前記混合物の重量に対して、10.5重量%以上14重量%以下、または12重量%以上12.5重量%以下であってもよい。前記混合物内の鎖延長剤の含量を前述した範囲に調節することによって、前記鎖延長剤は第2イソシアネート系硬化剤と反応してポリウレタン樹脂のハードセグメントを効果的に形成することができ、製造される熱可塑性ポリウレタンフィルムの機械的物性を向上させることができる。
【0068】
本発明の一実施態様によれば、前記第2イソシアネート系硬化剤の含量は、前記混合物の重量に対して32.5重量%以上40重量%以下であってもよく、具体的には、34重量%以上38重量%以下、または35重量%以上36.5重量%以下であってもよい。前記第2イソシアネート系硬化剤の含量を前述した範囲に調節することによって、ポリウレタン樹脂を効果的に重合することができ、製造される熱可塑性ポリウレタンフィルムの加工性および耐久性を向上させることができる。
【0069】
本発明の一実施態様によれば、前記混合物は触媒をさらに含むことができ、前記触媒の含量は前記混合物100重量部に対して、0.005重量部以上0.02重量部以下、または0.008重量部以上0.015重量部以下であってもよい。前記触媒の含量を前述した範囲に調節することによって、ポリウレタン樹脂の重合反応を効果的に促進させることができ、比較的低い温度でポリウレタン樹脂を重合させることができる。
【0070】
本発明の一実施態様によれば、前記有機溶剤の含量は、前記ポリウレタン樹脂100重量部に対して30重量部以上80重量部以下であってもよい。前記有機溶剤の含量を前述した範囲に調節することによって、前記ポリウレタン樹脂組成物の固形分含量を制御することができ、前記ポリウレタン樹脂組成物のコーティング性を向上させることができる。
【0071】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタン樹脂組成物の固形分含量は、20%以上70%以下であってもよい。具体的には、前記ポリウレタン樹脂組成物の固形分含量は、30%以上60%以下、または40%以上55%以下であってもよい。前記ポリウレタン樹脂組成物の固形分含量が前述した範囲内である場合、前記ポリウレタン樹脂組成物を基材フィルム上に厚く塗布することができ、基材フィルム上に厚さの厚いポリウレタン樹脂層を形成することができる。
【0072】
本発明の一実施態様によれば、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムの厚さは、20μm以上500μm以下であってもよい。具体的には、前記2個のポリウレタン樹脂層からなる熱可塑性ポリウレタンフィルムの厚さは、40μm以上450μm以下、100μm以上300μm以下、または200μm以上450μm以下であってもよい。すなわち、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムは、従来のポリウレタンフィルムに比べて厚さが厚い。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳しく説明することにする。但し、本発明に係る実施例は種々の他の形態に変形することができるものであって、本発明の範囲は下記に記述する実施例に限定されるものではない。本明細書の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0074】
実施例1
ポリウレタン樹脂組成物の製造
ポリオールとして数平均分子量が2,050g/molのポリカーボネートジオール(polycarbonatediol;PCDL、Asahi kasei社)、鎖延長剤として1,4−ブタンジオール(1,4−butanediol;1,4BD、BASF社)、第1イソシアネート系硬化剤として2個のイソシアネート官能基を含むH12MDI(Evonik社)、第2イソシアネート系硬化剤としてジイソシアン酸イソホロン(isophorone diisocyanate;IPDI、Evonik社)、触媒としてジブチルスズジラウレート(dibutyl tin dilaurate;DBTDL)、有機溶剤としてメチルエチルケトンを準備した。その後、ポリオールの含量が約52.6重量%、鎖延長剤の含量が約12.3重量%、第2イソシアネート系硬化剤の含量が約35.1重量%の混合物を製造し、前記混合物100重量部と有機溶剤約50重量部を混合して混合溶液を製造した。
【0075】
製造された混合溶液を反応器に装入し、55℃まで昇温して温度を維持しつつ、混合物100重量部に対して触媒0.005重量部を添加した。57℃で25時間反応させて、重量平均分子量が約51,000g/molのポリウレタン樹脂を含む組成物を製造した。その後、製造されたポリウレタン樹脂100重量部に対して約7重量部の第1イソシアネート系硬化剤を前記組成物に添加して、ポリウレタン樹脂組成物を製造した。製造されたポリウレタン樹脂組成物の固形分含量は約45%であった。
【0076】
熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造
製造されたポリウレタン樹脂組成物を基材フィルムであるポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)フィルム上に約200μmで塗布した。その後、ポリウレタン樹脂組成物を100℃で熱処理して、基材フィルム上に95μmの厚さを有するポリウレタン樹脂層が形成された積層体を製造した。同様の方法により積層体をもう一つ製造し、2個の積層体各々のポリウレタン樹脂層が互いに対向するように、積層体を位置させた。その後、2個の積層体を100℃に加熱された1対の圧着ロールの間に通過させて積層体を張り合わせて、2個のポリウレタン樹脂層を接合した。その後、張り合わせられた積層体を25℃の温度で24時間熟成させた後、積層体からPETフィルムを除去して、約190μmの厚さを有する熱可塑性ポリウレタンフィルムを製造した。
【0077】
実施例2〜実施例5
積層体を張り合わせる温度および張り合わせられた積層体の熟成温度を下記の表1のように調節したことを除いては、前記実施例1と同様の方法により熱可塑性ポリウレタンフィルムを製造した。
【0078】
比較例1〜比較例5
積層体を張り合わせる温度および張り合わせられた積層体の熟成温度を下記の表1のように調節したことを除いては、前記実施例1と同様の方法により熱可塑性ポリウレタンフィルムを製造した。
【0079】
ポリウレタン樹脂層間の界面接合力の測定実験
横15cm、縦2.5cmの大きさを有する積層体2個を製造し、横7.5cm、縦2.5cm部分だけ2個の積層体を張り合わせて、残りの部分は張り合わせないことを除いては、前記実施例1と同様の方法により、実施例1による熱可塑性ポリウレタンフィルムのサンプルを製造した。また、前述した方法と同様の方法により、各々、実施例2〜実施例5および比較例1〜比較例5によるサンプルを製造した。
【0080】
実施例1〜実施例5および比較例1〜比較例5によるサンプルのポリウレタン樹脂層間の界面接合力は、界面接合力測定実験装置であるUTM(Ultimate Tensile Machine、Model 3343、INSTRON社)を用いて測定した。
【0081】
図2は、本発明の一実施態様によるポリウレタン樹脂層間の界面接合力を測定する実験を概略的に示す図である。
【0082】
図2に示すように、実施例1によるサンプルにおいて接合されていない2個のポリウレタン樹脂層20、20’各々の端部を界面接合力測定実験装置(UTM)300に固定させて端部を引っ張り、2個のポリウレタン樹脂層が互いに剥離する時点でのサンプルに印加された引張強度を測定した。前述した方法と同様の方法により、実施例2〜実施例5および比較例1〜比較例5によるサンプルのポリウレタン樹脂層間の界面接合力を測定し、その結果を下記の表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
表1を参照すれば、80℃以上140℃以下の温度で積層体を張り合わせて、張り合わせられた積層体を20℃以上60℃以下の温度で熟成した実施例1〜実施例5は、2個のポリウレタン樹脂層の界面接合力が14Mpa以上18Mpa以下であることを確認した。
【0085】
それに対し、60℃の温度で積層体を張り合わせた比較例1および比較例5は、2個のポリウレタン樹脂層の界面接合力が劣ることを確認した。また、張り合わせられた積層体を−20℃の温度で熟成させた比較例2〜比較例4は、積層体の張り合わせ温度を80℃以上140℃以下に調節した場合にも、2個のポリウレタン樹脂層の界面接合力が劣ることを確認した。
【0086】
したがって、本発明の一実施態様による熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法は、界面接合力に優れた2個のポリウレタン樹脂層を含んでおり、寿命特性および耐久性に優れ、厚さの厚い熱可塑性ポリウレタンフィルムを容易に製造できることが分かる。
【符号の説明】
【0087】
100 ・・・積層体
10、10’ ・・・基材フィルム
20、20’ ・・・ポリウレタン樹脂層
200 ・・・熱可塑性ポリウレタンフィルム
300 ・・・界面接合力測定実験装置
図1
図2