【課題を解決するための手段】
【0027】
この課題は、4.9×10
17原子/cm
3以上かつ6.5×10
17原子/cm
3以下の新規のASTMによる酸素濃度、8×10
12原子/cm
3以上かつ5×10
13原子/cm
3以下の新規のASTMによる窒素濃度を有する単結晶シリコンから作られる半導体ウェハであって、半導体ウェハの前面はシリコンから作られるエピタキシャル層によって被覆され、半導体ウェハは、平均サイズが13〜35nmであり、平均密度がIRトモグラフィで決定される3×10
8cm
−3以上かつ4×10
9cm
−3以下である、8面体形状のBMDを含む、半導体ウェハによって解決される。
【0028】
本発明者らは、このような半導体ウェハの8面体BMD形状は、少なくとも100μmの深さにおいて1000℃における5時間にわたる熱処理後に安定であることを見い出した。
【0029】
一実施形態では、BMDの密度は、平均密度に基づいて50%以下だけ変化する。
一実施形態では、BMDのサイズは、平均サイズに基づいて50%以下だけ変化する。
【0030】
一実施形態によれば、ニッケルゲッタ効率は少なくとも80%である。少なくとも90%のニッケルゲッタ効率がより好ましい。ニッケルゲッタ効率は、Niの意図的な全汚染と比較した、両方のウェハ表面のNi量によって定義される。
【0031】
一実施形態では、ニッケルゲッタ効率は少なくとも95%である。
一実施形態によれば、TIS(総内表面積)は4.0×10
11nm
2/cm
3〜7×10
12nm
2/cm
3、好ましくは2.5×10
12nm
2/cm
3〜7×10
12nm
2/cm
3である。
【0032】
TISは、BMD密度(すべて)x平均BMD表面積として定義される。
TIS=4*π*r2*D(BMD)であり、式中、r=BMDの平均半径であり、D(BMD)はBMD密度である。
【0033】
総内表面積は、個々の測定されたゲッタ効率の各々の実験データセットによって決定される。
【0034】
一実施形態によれば、半導体ウェハは、5.25×10
17原子/cm
3以上かつ6.25×10
17原子/cm
3以下の新規のASTMによる酸素濃度を有する。
【0035】
一実施形態によれば、半導体ウェハは、0.7×10
13原子/cm
3以上かつ1.3×10
13原子/cm
3以下の新規のASTMによる窒素濃度を有する。
【0036】
内部ゲッタとして十分な活動を達成するためには、BMDの密度が3×10
8/cm
3以上でなければならない。それ以外の場合、半導体ウェハはエピタキシャル層の表面に双晶転位を形成する傾向があるため、酸素濃度は6.5×10
17原子/cm
3の上限を超えてはならない。
【0037】
1107cm
−1の波長における格子間酸素濃度の赤外線吸収は、FTIR分光計を使用して決定される。この方法は、SEMI MF1188に従って実行される。この方法は、国際追跡可能規格によって較正される。
240cm
−1、250cm
−1および267cm
−1の波長における窒素濃度の赤外線吸収は、FTIR分光計を使用して決定される。被試験材料は、測定の前に6時間にわたって600℃に加熱される。サンプルは、測定中に10Kに冷却される。この方法は、既知の窒素濃度を用いる規格によって較正される。
【0038】
SIMSとの相関関係は次のとおりである:Nitrogen conc.FTIR(at/cm3)=0.6*Nitrogen conc.SIMS(atoms/cm3)。
【0039】
BMDのサイズおよび密度は、2mmのエッジを除外して半導体ウェハの中心からエッジまで決定され、赤外線レーザ散乱トモグラフィによって評価される。
【0040】
レーザ散乱(IR−LST=赤外線レーザ散乱トモグラフィ)によるウェハ部分の検査方法では、BMDは入射光を散乱させ、入射光は、サンプルのへき開エッジ近くにあるCCDカメラによって記録される。IR−LSTによるBMDの密度の測定は、熱処理された半導体ウェハの半径方向の破壊したエッジに沿って行われる。測定方法自体は既知である(Kazuo Moriya他、J.Appl.Phys.66,5267(1989))。
【0041】
例として、Semilab Semiconductor Physics Laboratory Co.Ltd.が製造するLST−300Aおよび新世代の光散乱トモグラフ微小およびグローンイン欠陥分析器を使用することができる。
【0042】
BMDのサイズは、CCD検出器によって測定される散乱光の強度から計算される。検出可能な最小サイズは、カメラ感度としても知られる達成可能な信号対雑音比によって制限される。最新のIR−LST世代は、より低いスペクトルノイズのカメラを提供し、スループットを犠牲にしてより長い積分時間で感度を上げる可能性を提供する。サイズ検出下限は、高感度モードで約18nm(標準IR−LST設定)から約13nmに減少できる。これは、測定時間の4倍を意味する。
【0043】
8面体形状のBMDは、複数の{111}平面に囲まれたBMD、または複数の{111}平面および追加の{100}平面によって囲まれたBMDを意味する。{111}および{100}平面以外の平面によって囲まれたBMDが現れることがある。
【0044】
対照的に、プレート状BMDは、2つの比較的大きい{100}平面によって囲まれている。
【0045】
8面体形状は、以下のようにプレート状と区別される。
{001}方向から見た{100}および{010}方向のサイズのうち、長い方はAとして表され、短い方はBとして表される。
【0046】
楕円率(=比A/B)が1.5以下のBMDは、8面体の形状をしている。
楕円率が1.5を超えるBMDはプレート状である。
【0047】
8面体BMDの対角サイズは、上記の{100}および{010}方向のより長い方向Aを意味する。
【0048】
8面体BMDの平均サイズは、平均対角サイズとして定義される。
本発明は、単結晶シリコンから作られる半導体ウェハを製造するプロセスにも関し、当該プロセスは、
水素を含む雰囲気中でCZ法に従って融液から単結晶を引き上げることであって、融液には窒素が添加されており、結果、単結晶の、均一な直径を有する部分において、酸素濃度が4.9×10
17原子/cm
3以上かつ×10
17原子/cm
3以下となり、窒素濃度が8×10
12原子/cm3以上かつ5×10
13原子/cm
3以下となり、水素濃度が3×10
13原子/cm
3以上かつ8×10
13原子/cm
3以下となる、引き上げることと、
均一な直径を有する部分内の単結晶がPv領域で成長するスパンΔV内になるように引き上げ速度Vを制御することであって、引き上げ速度Vは、スパンの39%を含むスパンの部分範囲内にあり、部分範囲の最低引き上げ速度は、Pv領域からPi領域への移行における引き上げ速度よりも26%大きい、引き上げ速度Vを制御することと、
均一な直径を有する単結晶の部分から半導体ウェハを分離することと、
エピタキシャルウェハを形成するために、分離されている半導体ウェハの前面にシリコンのエピタキシャル層を堆積することと、
Ar、N
2、O
2またはそれらの混合物を含む雰囲気中で1015〜1035℃において1〜1.75時間にわたってエピタキシャルウェハを熱処理することと
を含む。
【0049】
エピタキシャル層の堆積中に溶解しないBMDシードを生成および/または安定化するために、半導体ウェハ上にエピタキシャル層を堆積する前に行われる半導体ウェハまたは単結晶の熱処理は、当該プロセスの構成要素ではない。
【0050】
本発明によるプロセスは、Ar、N
2、O
2またはそれらの混合物を含む雰囲気中で1015〜1035℃の温度において1〜1.75時間にわたってエピタキシャルウェハを熱処理することを含む。好ましくは、熱処理はN
2/O
2雰囲気中で行われる。
【0051】
一実施形態によれば、熱処理は、770〜790℃の温度において20〜200分にわたる第1の工程と、1015〜1035℃の温度において1〜1.75時間にわたる2の最終工程とを含む。
【0052】
一実施形態によれば、熱処理は600〜700℃の温度において開始され、ランプ速度は8℃/分以下であり、2.5℃/分以上である。
【0053】
一実施形態によれば、単結晶の、均一な直径を有する部分への酸素の取り込みは、酸素濃度が5.25×10
17原子/cm
3以上かつ6.25×10
17原子/cm
3以下になるように制御される。
【0054】
一実施形態によれば、単結晶の、均一な直径を有する部分への窒素の取り込みは、窒素濃度が0.7×10
13原子/cm
3以上かつ2.5×10
13原子/cm
3以下になるように制御される。
【0055】
水素の存在は、OSF欠陥のシードの形成を抑制し、特に半導体ウェハのエッジ領域における、BMDの密度の均一な放射状の進展に貢献する。この理由から、半導体ウェハが分離される元となるシリコンの単結晶は、水素を含む雰囲気中で引き上げられ、水素の分圧は、好ましくは5Pa以上かつ15Pa以下である。
【0056】
水素濃度を決定するために、立方体ブロック(3cm×3cm×30cm)の形態の試験サンプルが単結晶から切り出される。試験サンプルは、700℃の温度において5分間の期間にわたって処理され、その後急速に冷却される。次に、室温においてFTIR分光法により水素濃度を測定する。FTIR測定の前に、普通なら測定から除外される水素の一部分が、試験サンプルにCo
60線源からのガンマ線を照射することにより活性化される。放射線のエネルギー線量は5000〜21000kGyである。測定キャンペーンは、試験サンプルごとに1cm
−1の解像度における1000回のスキャンを含む。1832、1916、1922、1935、1951、1981、2054、2100、2120、および2143cm
−1の波数における振動バンドが評価される。水素の濃度は、それぞれ振動バンドの積分吸着係数に変換係数4.413×10
16cm
−1を乗算した値の合計から計算される。半導体ウェハの水素濃度を測定する場合、温度700℃における試験サンプルの熱処理は避けられ、半導体ウェハから切り出された面積3cm×20cmのストリップが試験サンプルとして使用される。
【0057】
単結晶の引き上げ中、V/G比は、P
v領域内で空孔が適切に過剰となる単結晶が結晶化する狭い範囲内に維持する必要がある。これは、引き上げ速度Vを制御して比V/Gを制御することにより行われる。P
v領域内で空孔が適切に過剰となる単結晶が成長するために、引き上げ速度Vは、当該速度が、P
v領域内での単結晶の成長を保証する引き上げ速度のスパンΔV内のすべての値を取ることができないという条件で制御される。許容される引き上げ速度は、ΔVの39%を含み、その最小引き上げ速度が、P
v領域からP
i領域への移行時の引き上げ速度V
Pv/Piよりも26%大きい、スパンΔVの部分範囲内にある。
【0058】
引き上げ速度V
Pv/PiおよびスパンΔVは、例えば引き上げ速度の直線的に増加または減少する進展によって試験単結晶を引き上げることにより、実験的に決定される。本発明による単結晶の引き上げ向けに意図されているものと同じホットゾーンが使用される。試験単結晶内のすべての軸方向位置に、引き上げ速度が割り当てられる。試験単結晶は軸方向に切断され、例えば銅で装飾するか、または少数電荷キャリアの寿命を測定することにより、点欠陥について検査される。スパンΔVは、試験単結晶の半径の98%以上の半径方向長さにわたって、P
v領域が試験単結晶の中心からエッジまで検出され得る最低引き上げ速度から最高引き上げ速度まで延びる。これに関連する最低引っ張り速度は、引っ張り速度V
Pv/Piである。
【0059】
引き上げ速度Vは、好ましくは、この部分から切り出されるすべての半導体ウェハが意図された特性を有するように、単結晶の、均一な直径を有する部分全体において、記載されている方法で制御される。この部分の単結晶の直径および得られる半導体ウェハの直径は、好ましくは200mm以上、特に好ましくは300mm以上である。
【0060】
単結晶を冷却して欠陥の形成、例えばOSF欠陥のシードの形成を妨げることがさらに有利である。冷却速度は、
1250℃〜1000℃の温度範囲内で1.7℃/分、
1000℃未満〜800℃の温度範囲内で1.2℃/分、および
800℃未満〜500℃の温度範囲内で0.4℃/分
以上であることが好ましい。
【0061】
本発明による半導体ウェハは、窒素がドープされた(N+H共ドーピング)融液からの水素を含む雰囲気中で引き上げられた単結晶から分離される。単結晶は、上記のようにP
v領域内で成長する。単結晶の引き上げは、基本的に国際公開第2017/097675号に記載されているプロセスに対応し、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
続いて、半導体ウェハの上側面および下部側面、ならびにまたエッジが、1つまたは複数の機械的処理工程および少なくとも1つの研磨工程を受ける。
【0063】
半導体ウェハの研磨された上側面上に、それ自体既知の方法でエピタキシャル層が堆積される。
【0064】
エピタキシャル層は、好ましくは単結晶シリコンから構成され、好ましくは2μm〜7μmの厚さを有する。
【0065】
エピタキシャル層を堆積している間の温度は、好ましくは1100℃〜1150℃である。
【0066】
エピタキシャル堆積後、半導体ウェハは、外方拡散に起因する測定可能な濃度の水素を一切含まない。
【0067】
半導体ウェハおよびエピタキシャル層は、好ましくはppドープエピタキシャル半導体ウェハのドーピングと同様に、電気的に活性なドーパント、例えばホウ素によってドープされる。
【0068】
さらなる実施形態では、ウェハはnnドープエピタキシャルウェハである。
半導体ウェハのBMDは、エピタキシャル層の堆積後、かつ電子部品の製造前に半導体ウェハを熱処理することにより形成される。
【0069】
本発明によれば、プロセスは、1015〜1035℃の温度において1〜1.75時間にわたってエピタキシャルウェハを熱処理することを含む。
【0070】
これは、必要なアニーリング時間が大幅に短縮されるため、米国特許出願公開第2001/021574号に記載された発明に勝る明らかな利点である。したがって、製造コストに関して利点がある。1015℃の温度では、米国特許出願公開第2001/021574号によって必要とされるアニーリング時間は2.54時間である。1035℃の温度では、米国特許出願公開第2001/021574号によって必要とされるアニーリング時間は2.04時間である。
【0071】
本発明によるより短いアニーリング時間で十分である理由は、N+H共ドーピングを使用してP
v領域の規定されたプロセスウィンドウ内で成長した結晶が使用されることである。
【0072】
一実施形態によれば、プロセスは、770〜790℃の温度において20〜200分にわたる第1の工程と、1015〜1035℃の温度において1〜1.75時間にわたる第2の最終工程とにおいて、エピタキシャルウェハを熱処理することを含む。第1の工程と第2の工程との間で、温度は毎分8℃の速度で所定の温度まで上げられる。