特許第6980908号(P6980908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6980908新規な架橋剤化合物およびこれを用いて製造される重合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980908
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】新規な架橋剤化合物およびこれを用いて製造される重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/40 20060101AFI20211202BHJP
   C08F 220/06 20060101ALI20211202BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   C08F20/40
   C08F220/06
   C07C69/54 ZCSP
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-516441(P2020-516441)
(86)(22)【出願日】2018年11月20日
(65)【公表番号】特表2020-534411(P2020-534411A)
(43)【公表日】2020年11月26日
(86)【国際出願番号】KR2018014281
(87)【国際公開番号】WO2019112203
(87)【国際公開日】20190613
【審査請求日】2020年3月18日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0168683
(32)【優先日】2017年12月8日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0139993
(32)【優先日】2018年11月14日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イム、ウォン−テク
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ウォンムン
(72)【発明者】
【氏名】キム、キチョル
(72)【発明者】
【氏名】キム、キ−ヒョン
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特表2017−502108(JP,A)
【文献】 特表2020−516753(JP,A)
【文献】 特表2016−521306(JP,A)
【文献】 N.O'Brien et al.,Facile versatile and cost effective route to branched vinyl polymers,Polymer,2000年,Vol41,p.6027-6031
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/00 − 20/70
C08F 220/00 − 220/70
C07C 69/54
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で表される架橋剤化合物:
【化14】
前記化学式1において、
1およびR2は、それぞれ独立して、水素またはメチルであり、
3およびR4は、それぞれ独立して、素数1〜20のアルキル(alkyl)であり、
5は、炭素数2〜10の線状または分枝状アルケニル(alkenyl)で置換された、線状または分枝状の炭素数1〜20のアルキレン(alkylene);または炭素数2〜20の線状または分枝状アルケニレン(alkenylene)であり、
nは、0〜10の整数である。
【請求項2】
前記R1およびR2は、水素である、請求項1に記載の架橋剤化合物。
【請求項3】
前記R3およびR4は、炭素数1〜5のアルキルである、請求項1または2に記載の架橋剤化合物。
【請求項4】
前記R3およびR4は、メチルである、請求項3に記載の架橋剤化合物。
【請求項5】
前記R5は、炭素数2〜10のアルケニルで置換された線状または分枝状の炭素数1〜10のアルキレン、または線状または分枝状の炭素数2〜10のアルケニレンである、請求項1〜4のいずれかに記載の架橋剤化合物。
【請求項6】
前記R5は、3−メチル−2−ヘキセニリデン(3−methyl−2−hexenylidene)、3−メチル−1−ヘキセニリデン(3−methyl−1−hexenylidene)、および4,8−ジメチル−ウンデカ−3,7−ジエニレン(4,8−dimethylundeca−3,7−dienylene)からなる群より選択されるものである、請求項5に記載の架橋剤化合物。
【請求項7】
前記化学式1は、下記の化学式1−1〜1−3で表される化合物の中から選択されるものである、請求項1〜6のいずれかに記載の架橋剤化合物:
【化15】
【化16】
【化17】
前記化学式1−1〜1−3において、nは、前記化学式1で定義した通りである。
【請求項8】
前記架橋剤化合物は、ミルセン(myrcene)またはゲラニオール(geraniol)を出発物質として製造されるものである、請求項1〜7のいずれかに記載の架橋剤化合物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の架橋剤化合物およびアクリル酸系単量体が重合された重合体。
【請求項10】
前記アクリル酸系単量体は、下記の化学式2で表される、請求項9に記載の重合体:
【化18】
前記化学式2において、
Rは、不飽和結合を含む炭素数2〜5のアルキルグループであり、
Mは、水素原子、1価または2価の金属、アンモニウム基、または有機アミン塩である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2017年12月8日付の韓国特許出願第10−2017−0168683号および2018年11月14日付の韓国特許出願第10−2018−0139993号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、新規な架橋剤化合物およびこれを用いて製造される重合体に関する。より詳しくは、優れた架橋特性および熱分解性を示す新規な構造の架橋剤化合物およびこれを用いて製造される重合体に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自重の5百から1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であって、開発業者ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などのそれぞれ異なる名前で名付けている。このような高吸水性樹脂は、生理用品として実用化され始め、現在は、幼児用紙おむつや生理用ナプキンなどの衛生用品のほか、園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野での鮮度保持剤、およびシップ用などの材料として広く使用されている。
【0004】
最も多い場合に、このような高吸水性樹脂は、おむつや生理用ナプキンなどの衛生材分野で広く使用されているが、この用途のために、水分などに対する高い吸収力を示す必要があり、外部の圧力でも吸収された水分が抜け出てはならず、これに加えて、水を吸収して体積膨張(膨潤)された状態でも形態をよく維持して、優れた通液性(permeability)を示す必要がある。
【0005】
したがって、高吸水性樹脂が優れた性能を有するためには、最も重要な構成となる重合体のベース樹脂(base resin)が高い吸水能を有しなければならない。
【0006】
このようなベース樹脂を作るために、一般に、内部架橋剤の存在下、アクリル酸系単量体を重合して重合体内部の架橋密度を調節することができる。内部架橋剤は、アクリル酸系単量体が重合された重合体、つまり、ベース樹脂の内部を架橋させるためのものであって、内部架橋剤の種類および含有量に応じてベース樹脂の内部架橋密度を調節することができる。ベース樹脂の架橋密度が低ければ、吸水能は高まるものの強度が弱くて、後続の工程で形態が維持されない問題点が発生し、架橋密度が高すぎると、強度は高まるものの水分吸収能が低下しかねず、ベース樹脂の強度および吸水能の観点から適切な架橋密度を調節することが非常に重要である。
【0007】
また、アクリル酸単量体を重合して製造した高吸水性樹脂は、アクリル酸特有の臭いを有しており、おむつなどの衛生用品への使用時、尿(urine)などの体液排泄時に不快な臭いも伴い、このような臭いを効果的に低減する機能が要求される。このために、高吸水性樹脂に多孔性吸着物質を混合して使用する方法が開発された。
【0008】
しかし、多孔性吸着物質を高吸水性樹脂に混合する場合、臭いの低減効果はあるものの、吸水能や透過率のような高吸水性樹脂の物性が低下したり、時間に応じて高吸水性樹脂が互いにかたまったり凝固してしまうケーキング(caking)現象が起こる問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためのものであって、架橋特性、熱分解性、匂い特性などに優れて、高吸水性樹脂の製造時に架橋剤として使用できる新規な構造の架橋剤化合物およびこれを用いて製造される重合体を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の問題を解決するために、本発明の一実施形態によれば、下記の化学式1で表される架橋剤化合物を提供する。
【0011】
【化1】
【0012】
前記化学式1において、
およびRは、それぞれ独立して、水素またはメチルであり、
およびRは、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜20のアルキル(alkyl)であり、
は、炭素数2〜10の線状または分枝状アルケニル(alkenyl)で置換された、線状または分枝状の炭素数1〜20のアルキレン(alkylene);または炭素数2〜20の線状または分枝状アルケニレン(alkenylene)であり、
nは、0〜10の整数である。
【0013】
また、本発明の他の実施形態によれば、前記架橋剤化合物とアクリル酸系単量体とが重合された重合体を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の架橋剤化合物は、従来知られていない新規な構造の化合物で、特定のグループ(moiety)を含み、本発明の架橋剤化合物とアクリル酸系単量体とが重合された重合体は、一定の温度以上で架橋構造が分解される熱分解性を示すことができる。
【0015】
したがって、本発明の架橋剤化合物を用いて製造された重合体は、重合直後には高い架橋密度を示して、強度が高く工程性に優れ、後続の高温工程で内部架橋構造が分解されて架橋密度が低くなることによって吸水能が向上できる。
【0016】
また、前記本発明の架橋剤化合物は、特有の香りを有し、別途の添加剤がなくても高吸水性樹脂特有の臭いおよび/または衛生用品としての使用時に発生する悪臭を低減する消臭性能を示し、天然の香りで使用者に優れた使用感を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、多様な変更が加えられて様々な形態を有し得ることから、特定の実施例を例示して下記に詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるあらゆる変更、均等物乃至代替物を含むことが理解されなければならない。
【0018】
以下、本発明の架橋剤化合物およびこれを用いて製造される重合体についてより詳しく説明する。
【0019】
架橋剤化合物
本発明の一実施形態による架橋剤化合物は、下記の化学式1で表される。
【0020】
【化2】
【0021】
前記化学式1において、
およびRは、それぞれ独立して、水素またはメチルであり、
およびRは、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜20のアルキル(alkyl)であり、
は、炭素数2〜10の線状または分枝状アルケニル(alkenyl)で置換された、線状または分枝状の炭素数1〜20のアルキレン(alkylene);または炭素数2〜20の線状または分枝状アルケニレン(alkenylene)であり、
nは、0〜10の整数である。
【0022】
本明細書において、「アルキル(alkyl)」は、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個の炭素原子の線状または分枝状の飽和した1価の炭化水素を意味する。アルキルの例として、メチル、エチル、プロピル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、1−メチル−ブチル、1−エチル−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3、3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、n−オクチル、tert−オクチル、1−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、n−ノニル、2,2−ジメチルヘプチル、1−エチル−プロピル、1,1−ジメチル−プロピル、2−メチルペンチル、4−メチルヘキシル、5−メチルヘキシルなどが挙げられるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0023】
本明細書において、「アルキレン(alkylene)」は、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個の炭素原子の線状または分枝状の飽和した2価の炭化水素を意味する。アルキレンの例として、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、へキシレン、ヘプチレン、オクチレンなどが挙げられるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0024】
本明細書において、「アルケニル(alkenyl)」は、1つ以上の炭素−炭素二重結合を含む2〜20個、好ましくは2〜10個、より好ましくは2〜6個の炭素原子の線状または分枝状の1価の炭化水素を意味する。アルケニルは、炭素−炭素二重結合を含む炭素原子を介して、および/または飽和した炭素原子を介して結合できる。アルケニルの例として、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、3−メチル−1−ブテニル、1,3−ブタジエニルなどが挙げられるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0025】
本明細書において、「アルケニレン(alkenylene)」は、1つ以上の炭素−炭素二重結合を含む2〜20個、好ましくは2〜10個、より好ましくは2〜6個の炭素原子の線状または分枝状の2価の炭化水素を意味する。アルケニレンは、炭素−炭素二重結合を含む炭素原子を介して、および/または飽和した炭素原子を介して結合できる。アルケニレンの例として、エテニレン、プロペニレン、ブテニレンなどが挙げられるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0026】
前記化学式1の架橋剤化合物は、ジ(メタ)アクリレート系誘導体化合物として新規な構造を有する。
【0027】
本発明の一実施例によれば、前記RおよびRは、水素であってもよい。
【0028】
本発明の一実施例によれば、前記RおよびRは、炭素数1〜5のアルキルであってもよい。好ましくは、前記RおよびRは、メチルであってもよい。
【0029】
本発明の一実施例によれば、前記R5は、炭素数2〜10のアルケニルで置換された線状または分枝状の炭素数1〜10のアルキレンであるか、または線状または分枝状の炭素数2〜10のアルケニレンであってもよい。例えば、前記R5は、3−メチル−2−ヘキセニリデン(3−methyl−2−hexenylidene)、3−メチル−1−ヘキセニリデン(3−methyl−1−hexenylidene)、4,8−ジメチル−ウンデカ−3,7−ジエニレン(4,8−dimethylundeca−3,7−dienylene)などであってもよいが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0030】
本発明の一実施例によれば、前記nは、0〜10の整数であってもよい。
【0031】
好ましくは、前記nは、0〜5、または0〜3の整数であってもよい。
【0032】
本発明の一実施例によれば、前記化学式1で表される化合物は、下記の化学式1−1〜1−3から構成される群より選択されるいずれか1つであってもよいが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0033】
【化3】
【0034】
【化4】
【0035】
【化5】
【0036】
前記化学式1−1〜1−3において、nは、前記化学式1で定義した通りである。
【0037】
前記化学式1で表される化合物の用途はこれに限るものではないが、アクリル酸系単量体との重合時に架橋剤として使用できる。
【0038】
前記化学式1の架橋剤化合物は、周知の有機合成方法により製造することができ、例えば、下記反応式1のような方法で製造することができるが、本発明がこれに限るものではない。
【0039】
【化6】
【0040】
前記反応式1において、R〜R、およびnは、前記化学式1で定義した通りであり、XおよびXは、ハロゲンである。
【0041】
本発明の一実施例によれば、前記化学式1が前記化学式1−1または1−2の化合物の時、本発明がこれに限るものではないが、次の方法で製造される。
【0042】
まず、ミルセン(myrcene)またはゲラニオール(geraniol)を出発物質としてこれにハロゲン基を導入する。次に、ハロゲン基をヒドロキシ基で置換してジオール(diol)を製造する。そして、前記ジオールにアクリロイル基を導入して、前記化学式1−1および1−2の混合物を得てこれらを分離する。
【0043】
前記ミルセンおよびゲラニオールは、テルペン(terpene)の誘導体化合物である。テルペンは、動植物に広く分布している可燃性の不飽和炭化水素であって、一般式(C(k≧2)を有する炭化水素である。テルペンは、分子内にイソプレン(C)単位体の数によって分類し、モノテルペン(C1016)は2個、セスキテルペン(C1524)は3個、ジテルペン(C2032)は4個のイソプレン単位体をそれぞれ有している。モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペンは、植物の精油(essential oil)に多く存在し、香料の原料や医薬品、化学工業の原料として使用される。また、テルペン、テルペンアルコール、テルペンアルデヒド、テルペンケトン、酸化テルペン、テルペンラクトンなどを総称してテルペノイドともいう。
【0044】
ミルセン(myrcene)は、モノテルペンの一種で、ホップ、レモングラス、イブキジャコウソウ、バーベナ、およびローリエを含む多数の植物におけるエッセンシャルオイルから豊富に発見され、特有のハーブの香りがする。
【0045】
ゲラニオール(geraniol)は、モノテルペノイドの一種で、ゼラニウム、レモンなどの様々なエッセンシャルオイルにも含まれている。水には溶解しないが、大部分の最も一般的な有機溶媒には溶解しやすく、バラの香りのような香りがする。
【0046】
前記ミルセンまたはゲラニオールのような天然テルペンを出発物質として化学式1の化合物を製造し、これを架橋剤として用いて重合体を架橋する場合、前記架橋剤が高温で分解される時、元のミルセンまたはゲラニオールの香りがするため、別途の添加剤なくても消臭効果を得ることができ、香りを発現することができる。
【0047】
より具体的には、本発明の一実施例によれば、前記化学式1−1および1−2の架橋剤化合物は、下記の反応式2−1および3によって製造される。
【0048】
【化7】
【0049】
前記反応式2−1において、ミルセンまたはゲラニオール1当量をエタノールに溶かした後、撹拌する。反応温度を0〜30℃に維持しながらアセティッククロライド(acetic chloride、4当量)をゆっくり滴加して(dropwise)投入する。TLCを用いてジクロロネート(dichloronate)化合物への反応転換を確認し、反応終結が確認されると、溶媒および未反応物を減圧蒸発させて除去する。得られたジクロロネート化合物(PcとTcとの混合物)は特別な追加の精製なく次の反応に使用する。得られたジクロロネート混合物を約80%純度のアセトン水溶液(aq.acetone)に入れて、約2.1当量の酸化亜鉛(ZnO)を投入した後、100℃の温度で還流(reflux)する。
【0050】
TLCを用いてジオール化合物への反応転換および終結が確認されると、温度を常温に冷却する。この後、固体沈殿物をろ過フィルタを用いて除去し、残りのアセトンを減圧蒸発して除去する。残りの有機物と少量の水を分別蒸留により除去して、所望のジオール化合物(PaとTaとの混合物)を得ることができる。前記反応式2−1によってジオール化合物を製造した時、化合物Paに比べて、化合物Taの量が増加することを確認することができる。
【0051】
次に、前記PaとTaとの混合物に対して、下記の反応式3によってアクリロイル基を導入することができる。
【0052】
【化8】
【0053】
前記反応式3において、前記PaとTaとの混合物をCHCl(1.0M)に溶かして撹拌しながら、0℃に温度を下げる。トリエチルアミン(triethylamine、TEA)あるいはN,N−ジイソプロピルエチルアミン(N,N−Diisopropylethylamine、DIPEA)2当量と4−ジメチルアミノピリジン(4−dimethylaminopyridine、DMAP)0.1当量を入れた後、アクリロイルクロライド(acryloyl chloride)2当量をゆっくり添加する。添加が完了した後、反応温度を常温に上昇させ、約4〜約12時間撹拌する。反応が終結した後、反応溶媒をセライトパッド(celite pad)を介してフィルタし、溶媒を真空条件で除去する。残りの有機物を水とエチルアセテート(ethyl acetate)を用いて抽出し、有機物層に残った水分を硫酸ナトリウム(NaSO)を用いて除去する。固体相をフィルタで除去し、残りの有機溶媒を真空状態で除去すれば、所望のP(化学式1−2の化合物)とT(化学式1−1の化合物)を得ることができる。
【0054】
前記得られた化学式1−1および1−2の化合物は分離、精製して使用したり、または分離せずに混合物状態で使用することができる。
【0055】
本発明の他の実施例によれば、前記化学式1−1および1−2の架橋剤化合物は、下記の反応式2−2および3によって製造される。
【0056】
【化9】
【0057】
前記反応式2−2において、ジクロロネート(dichloronate)化合物への反応までは前記反応式1と同一にする。次に、ClをOHに置換する反応において、得られたジクロロネート混合物を酢酸(acetic acid)に入れて、約2.1当量の酸化亜鉛(ZnO)を投入した後、常温で撹拌する。
【0058】
TLCを用いて反応の転換を確認し、終結が確認されると、固体沈殿物をろ過フィルタを用いて除去し、残りの酢酸を減圧蒸発して除去する。残りの有機物にメタノールを入れて、約2当量の炭酸カリウム(KCO)を添加した後、還流し撹拌する。TLCを用いて反応の転換をチェックし、反応の終結が確認されると、反応温度を常温に冷却する。メタノールを減圧蒸発して除去した後、残りの有機物を減圧蒸留すると、ジオール化合物(PaとTaとの混合物)を得ることができる。一方、前記反応式2−2による時、化合物Taに比べて、化合物Paの量が増加して、実質的には化合物Paのみ検出されることを確認することができる(Pa化合物:Ta化合物のmolar ratioが25:1以上)。
【0059】
次に、前記PaとTaとの混合物に対して、前記反応式3によってアクリロイル基を導入することができる。
【0060】
この後、同様に、前記得られた化学式1−1および1−2の化合物は分離、精製して使用したり、または分離せずに混合物状態で使用することができる。
【0061】
本発明の他の実施形態によれば、前記化学式1で表される架橋剤化合物とアクリル酸系単量体とが架橋重合された、重合体を提供する。
【0062】
前記アクリル酸系単量体は、下記の化学式2で表される化合物である:
【0063】
【化10】
【0064】
前記化学式2において、
Rは、不飽和結合を含む炭素数2〜5のアルキルグループであり、
Mは、水素原子、1価または2価の金属、アンモニウム基、または有機アミン塩である。
【0065】
好ましくは、前記アクリル酸系単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの1価の金属塩、2価の金属塩、アンモニウム塩、および有機アミン塩からなる群より選択される1種以上を含む。
【0066】
ここで、前記アクリル酸系単量体は、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したものであってもよい。
【0067】
参照として、本発明の明細書において、「重合体」、または「架橋重合体」は、アクリル酸系単量体が前記化学式1の架橋剤化合物の存在下で重合された状態のものを意味し、すべての水分含有量範囲または粒径範囲を包括することができる。前記重合体中、重合後乾燥前の状態のもので、含水率(水分含有量)が約40重量%以上の重合体を含水ゲル重合体と称することができる。
【0068】
また、「ベース樹脂」または「ベース樹脂粉末」は、前記重合体を乾燥および粉砕してパウダー(powder)形態にしたもので、表面架橋段階を行う前の重合体で、重合体の表面に架橋構造が形成されていない状態の重合体を意味する。
【0069】
前記化学式1で表される架橋剤化合物は、熱分解性内部架橋剤で、前記化学式1の化合物とアクリル酸系単量体とが架橋重合された重合体の内部架橋構造は、熱によって(例えば、150℃以上で)分解できる。これにより、アクリル酸系単量体を前記化学式1の架橋剤化合物の存在下で架橋重合すると、熱分解性内部架橋構造が導入された架橋重合体を提供することができる。
【0070】
この後、このような架橋重合体を表面架橋工程のような高温の後続工程に導入すれば、架橋重合体内の前記化学式1の化合物由来の架橋構造は少なくとも一部が分解される。これにより、架橋重合体内の内部架橋密度は減少する。反面、架橋重合体の表面は、表面架橋剤によって追加架橋されて外部架橋密度は増加する。したがって、前記化学式1で表される架橋剤化合物の存在下でアクリル酸単量体の架橋重合を進行させてベース樹脂を製造し、このベース樹脂に対して表面架橋のような後続工程を経ると、架橋重合体内の内部架橋構造は分解され、架橋重合体の表面は追加架橋されて、樹脂の内部から外部へいくほど架橋密度が増加する高吸水性樹脂が得られる。
【0071】
このように製造された高吸水性樹脂は、既存の高吸水性樹脂のベース樹脂よりも減少した内部架橋密度を有することができる。これにより、前記高吸水性樹脂は、既存の高吸水性樹脂に比べて相対的に向上した保水能を示すことができる。また、前記高吸水性樹脂は、内部架橋結合が分解された後、あるいは分解されながら表面架橋が進行して既存の高吸水性樹脂に比べてより厚い表面架橋層を有することができる。これにより、前記高吸水性樹脂は、優れた加圧下吸水能を示すことができる。そのため、一実施形態の高吸水性樹脂は、内部から外部へいくほど架橋密度が増加することによって、保水能および加圧吸水能が互いに反比例関係にあるという既存の常識とは異なり、保水能および加圧吸水能などの諸物性が共に向上して、すべて優れた特性を示すことができる。
【0072】
また、前記重合体は、前記化学式1の架橋剤化合物のほか、従来知られた内部架橋剤がさらに架橋されたものであってもよい。
【0073】
このような従来の内部架橋剤としては、分子内に2個以上の架橋性官能基を含む化合物を使用することができる。前記従来の内部架橋剤の具体例としては、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレート、トリアリールアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコール、グリセリン、およびエチレンカーボネートからなる群より選択された1種以上を使用することができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0074】
上述のように、本発明の重合体は、前記化学式1の新規な架橋剤化合物の特性によって、熱分解性内部架橋構造の一部が重合工程後の高温の後続工程で一部分解されて内部から外部へいくほど架橋密度が増加する形態を有することによって、保水能と加圧吸水能などの諸物性が共に向上した非常に優れた特性を示すことができる。また、前記本発明の架橋剤化合物の構造的特性による特有の香りを有し、別途の添加剤がなくても高吸水性樹脂特有の臭いおよび/または衛生用品としての使用時に発生する悪臭を低減する消臭性能を示し、優れた使用感を提供することができる。
【0075】
これにより、前記高吸水性樹脂は、高温の生産工程を経ても優れた吸水諸物性と匂い特性を示すおむつなどの衛生用品を提供することができる。
【0076】
以下、本発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述する。ただし、このような実施例は発明の例として提示されたに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められるものではない。
【0077】
<実施例>
<架橋剤化合物の合成実施例>
(合成例1)
【0078】
【化11】
【0079】
(合成例1−1)
ゲラニオール(geraniol)408.7gをエタノール700mlに溶かした後、撹拌した。反応温度を30℃に維持しながらアセティッククロライド(acetic chloride)(942g、856.4ml、4当量)をゆっくり滴加して(dropwise)投入した。TLCを用いて反応のconversionを確認し、反応終結が確認されると、溶媒および未反応物を減圧蒸発させて除去した。得られたジクロロネート化合物(PcとTcとの混合物)は追加の精製なく次の反応に使用した。
【0080】
Pc(CDCl,500MHz):5.50−5.45(m,1H),4.13−4.07(m,2H),2.16−2.06(m,2H),1.83−1.53(m,13H)
Tc(CDCl,500MHz):6.00(dd,J=16.87,11.00,1H)5.27(d,J=16.87,1H),5.12(d,J=11.00,1H),2.16−2.06(m,2H),1.83−1.53(m,13H)。
【0081】
(合成例1−2)
前記合成例1−1段階で得られたジクロロネート化合物(PcとTcとの混合物)(522.9g、基準物質)を約80%純度のaq.Acetone(1.5L)に入れて、ZnO(427.2g、2.1当量)を投入した後、100℃の温度で還流(reflux)した。TLCを用いて反応のconversionを確認し、終結が確認されると、温度を常温に冷却した。この後、固体沈殿物をろ過フィルタを用いて除去し、残りのアセトンを減圧蒸発して除去した。残りの有機物と少量の水を分別蒸留により所望のジオール化合物(PaとTaとの混合物)を得た。
【0082】
Pa(CDCl,500MHz):5.43−5.41(m,1H),4.17−4.12(m,2H),2.12−1.97(m,2H),1.75−1.13(m,13H)
Ta(CDCl,500MHz):5.91(dd,J=17.10,10.52,1H)5.22(d,J=17.09,1H),5.07(d,J=10.52,1H),2.06−1.97(m,2H),1.76−1.13(m,13H)。
【0083】
(合成例1−3)
前記合成例1−2段階で得られたジオール化合物(51.7g、基準物質)をCH2Cl2(300ml)に溶かして撹拌しながら、0℃に温度を下げた。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(91.1g、125.4ml、3当量)と4−ジメチルアミノピリジン(7.3g、0.1当量)を入れた後、アクリロイルクロライド(57.0g、51.0ml、2.1当量)をゆっくり添加した。添加が完了した後、反応温度を常温に上昇させて約6時間撹拌した。反応が終結した後、反応溶媒をcelite padを通してフィルタし、溶媒を真空条件で除去した。残りの有機物を水とエチルアセテート(EA)を用いて抽出し、有機物層に残った水分をNa2SO4を用いて除去した。固体相をフィルタで除去し、残りの有機溶媒を真空状態で除去して、2,6−dimethyloct−7−ene−2,6−diyl diacrylate(化合物T)と3,7−dimethyloct−2−ene−1,7−diyl diacrylate(化合物P)との混合物を約61%の収率で得た。
【0084】
2,6−dimethyloct−7−ene−2,6−diyl diacrylate(CDCl,500MHz):6.15−5.96(m,5H),5.82−5.71(m,2H),5.18−5.12(m,2H),2.15−2.03(m,2H),1.91−1.17(m,13H)。
【0085】
3,7−dimethyloct−2−ene−1,7−diyl diacrylate(CDCl,500MHz):6.39−6.02(m,2H),6.01−5.80(m,2H),5.75−5.72(m,2H),5.44−5.37(m,2H),4.69−4.65(m,2H),2.15−2.03(m,2H),1.77−1.23(m,13H)。
【0086】
(合成例2)
(合成例2−1)
前記合成例1−1段階で得られたジクロロネート化合物(PcとTcとの混合物)(313.7g、基準物質)をacetic acid(2L)に入れて、ZnO(256.3g、2.1当量)を投入した後、常温で撹拌した。TLCを用いて反応のconversionを確認し、終結が確認されると、固体沈殿物をろ過フィルタを用いて除去し、残りのacetic acidを減圧蒸発して除去した。残りの有機物にメタノール(1L)を入れて、KCO(470.0g、2当量)を添加した後、還流し撹拌した。TLCを用いて反応のconversionをチェックし、反応の終結が確認されると、反応温度を常温に冷却した。メタノールを減圧蒸発して除去した後、残りの有機物を減圧蒸留して、ジオール化合物(Pa化合物:Ta化合物>25:1molar ratioで実質的にPa化合物のみ検出された)を得た。
【0087】
Pa(CDCl,500MHz):5.43−5.41(m,1H),4.17−4.12(m,2H),2.12−1.97(m,2H),1.75−1.13(m,13H)
【0088】
(合成例2−2)
前記合成例2−1段階で得られたジオール化合物(Pa化合物)(51.7g、基準物質)をCHCl(300ml)に溶かして撹拌しながら、0℃に温度を下げた。トリエチルアミン(91.1g、125.4ml、3当量)と4−ジメチルアミノピリジン(7.3g、0.1当量)を入れた後、アクリロイルクロライド(57.0g、51.0ml、2.1当量)をゆっくり添加した。添加が完了した後、反応温度を常温に上昇させて約6時間撹拌した。反応が終結した後、反応溶媒をcelite padを通してフィルタし、溶媒を真空条件で除去した。残りの有機物を水とエチルアセテート(EA)を用いて抽出し、有機物層に残った水分をNaSOを用いて除去した。固体相をフィルタで除去し、残りの有機溶媒を真空状態で除去して、3,7−dimethyloct−2−ene−1,7−diyl diacrylate(化合物P)を約63%の効率で得た。
【0089】
3,7−dimethyloct−2−ene−1,7−diyl diacrylate(CDCl,500MHz):6.39−6.02(m,2H),6.01−5.80(m,2H),5.75−5.72(m,2H),5.44−5.37(m,2H),4.69−4.65(m,2H),2.15−2.03(m,2H),1.77−1.23(m,13H)。
【0090】
(合成例3)
前記合成例1−3段階で得られた化合物Tと化合物Pとの混合物をクロマトグラフィーを通して分離して、化合物Tを選択的に確保した。
【0091】
(合成例4)
(合成例4−1)
【化12】
【0092】
100mlの圧力容器に、4−methylpent−2−yne−1,4−diol(1g)をethyl acetate(20ml)に溶かして撹拌しながら、窒素雰囲気に置換した。Lindlar catalyst(10mg、1w%)を注意して投入し、圧力容器を密閉した。圧力容器内の窒素を5barの水素にすべて置換し、約6時間撹拌した。反応が終了した後、水素を注意して除去し、反応溶液の固体をcelite filterを通して除去した。濾液の溶媒を減圧蒸留して除去して、4−methylpent−2−ene−1,4−diol(650mg)を得た。
【0093】
(合成例4−2)
【化13】
【0094】
前記合成例4−1段階で得られた4−methylpent−2−ene−1,4−diol(3.5g、基準物質)をCHCl(30ml)に溶かして撹拌しながら、0℃に温度を下げた。トリエチルアミン(9.2g、12ml、3当量)と4−ジメチルアミノピリジン(0.7g、0.1当量)を入れた後、アクリロイルクロライド(5.7g、5ml、2.1当量)をゆっくり添加した。添加が完了した後、反応温度を常温に上昇させて約6時間撹拌した。反応が終結した後、反応溶媒をcelite padを通してフィルタし、溶媒を真空条件で除去した。残りの有機物を水とエチルアセテート(EA)を用いて抽出し、有機物層に残った水分をNaSOを用いて除去した。固体相をフィルタで除去し、残りの有機溶媒を真空状態で除去して、4−methylpent−2−ene−1,4−diyl diacrylateを約72%の効率で得た。
【0095】
4−methylpent−2−ene−1,4−diyl diacrylate(CDCl,500MHz):6.44−6.05(m,2H),6.09−5.86(m,2H),5.75−5.71(m,2H),5.61−5.57(m,2H),4.33−4.22(m,2H),1.39(m,6H)
【0096】
<高吸水性樹脂の製造実施例>
(実施例1)
アクリル酸(acrylic acid)100g、32%苛性ソーダ(NaOH)123.5g、熱重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.2g、光重合開始剤としてジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド0.008g、合成例1−3の架橋剤混合物0.6g、水55.0gを混合して、全体固形分濃度が43.8重量%のモノマー組成物を製造した。
【0097】
前記モノマー組成物を10cmの幅、2mの長さを有し、50cm/minの速度で回転する回転式ベルト上に、500mL/min〜2、000mL/minの供給速度で供給した。前記モノマー組成物の供給と同時に、10mW/cmの強度を有する紫外線を照射して、60秒間重合反応を進行させた。重合反応の進行後、meat chopper方法で切断し、Air−flow ovenを用いて185℃で40分間乾燥して、高吸水性樹脂(ベース樹脂)を製造した。
【0098】
(実施例2)
合成例2−2の架橋剤化合物0.6gを用いたことを除けば、実施例1と同様にして、高吸水性樹脂を製造した。
【0099】
(実施例3)
合成例3の架橋剤化合物0.6gを用いたことを除けば、実施例1と同様にして、高吸水性樹脂を製造した。
【0100】
(実施例4)
合成例4−2の架橋剤化合物0.6gを用いたことを除けば、実施例1と同様にして、高吸水性樹脂を製造した。
【0101】
(比較例1)
内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)を0.26g用いたことを除けば、実施例1と同様にして、高吸水性樹脂を製造した。
【0102】
<実験例>
(高吸水性樹脂の熱分解性評価)
本発明の架橋剤化合物とアクリル酸系単量体とが重合された重合体において、高温での熱分解性とこれによる吸水能変化を評価するために、実施例および比較例の高吸水性樹脂に対して185℃で熱処理をし、時間に応じた遠心分離保水能の変化を測定して、下記表1に記載した。
【0103】
(1)遠心分離保水能(CRC、Centrifuge Retention Capacity)
前記高吸水性樹脂の生理食塩水に対する無荷重下の吸収倍率による保水能をEDANA WSP241.3により測定した。
具体的には、遠心分離保水能を測定しようとする高吸水性樹脂のうち、米国標準20meshのスクリーンは通過し、米国標準100meshのスクリーン上には維持される粒径150〜850μmのサンプルを準備した。
そして、粒径が150〜850μmのサンプルW0(g、約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した。そして、常温で0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)に前記封筒を浸水させた。30分後に、封筒を遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後に、封筒の重量W2(g)を測定した。一方、サンプルを入れなかった空き封筒を用いて同一の操作をした後、その時の重量W1(g)を測定した。
このように得られた各重量を用いて、次の計算式1によって遠心分離保水能を確認した。
【数1】
前記計算式1において、
W0(g)は、粒径150〜850μmのサンプルの初期重量(g)であり、
W1(g)は、常温で生理食塩水にサンプルを入れなかった不織布製空き封筒を30分間浸水させた後、遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後に測定した不織布製空き封筒の重量であり、
W2(g)は、常温で生理食塩水にサンプルの入った不織布製封筒を30分間浸水して吸収させた後、遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後に、サンプルを含めて測定した不織布製封筒の重量である。
【0104】
【表1】
【0105】
表1を参照すれば、化学式1の新規架橋剤化合物の存在下でアクリル酸単量体を架橋重合した実施例1〜4の場合、高温(185℃)で熱処理をした時、時間に応じて保水能が増加した。これは、高温によって重合体の内部架橋構造が分解されて架橋密度が低くなるためと考えられる。
【0106】
これに対し、従来の架橋剤を用いた比較例1は、熱処理時間が経過しても保水能の有意な増加を見せていなかった。