特許第6980978号(P6980978)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6980978リチウム二次電池用絶縁層形成用組成物、及びそれを利用したリチウム二次電池用電極の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980978
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用絶縁層形成用組成物、及びそれを利用したリチウム二次電池用電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20211202BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20211202BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20211202BHJP
【FI】
   H01M4/62 Z
   H01M4/13
   H01M4/139
【請求項の数】15
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-536773(P2020-536773)
(86)(22)【出願日】2019年2月1日
(65)【公表番号】特表2021-507488(P2021-507488A)
(43)【公表日】2021年2月22日
(86)【国際出願番号】KR2019001461
(87)【国際公開番号】WO2019151831
(87)【国際公開日】20190808
【審査請求日】2020年7月6日
(31)【優先権主張番号】10-2018-0013009
(32)【優先日】2018年2月1日
(33)【優先権主張国】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】パク、スン チュル
(72)【発明者】
【氏名】リー、ウン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】チュン、ク スン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ウォン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヨー、ジュン ウー
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン ジェ
【審査官】 儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0015647(KR,A)
【文献】 国際公開第2013/157624(WO,A1)
【文献】 特開2004−259625(JP,A)
【文献】 特開2017−062960(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0062333(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0125720(KR,A)
【文献】 特表2016−514891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/62
H01M 4/13
H01M 4/139
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニリデンフルオリド、ポリビニルアルコール、スチレンブタジエンゴム、ポリエチレンオキシド、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、及びポリアリレートからなる群より選択される少なくとも1種のみからなるバインダー高分子と、
有機染料、油溶性染料及び有機蛍光体からなる群より選択される少なくとも1種を含む着色剤と、
溶媒と、のみからなり、
25℃での粘度が1,000cP以上である、リチウム二次電池用絶縁層形成用組成物。
【請求項2】
前記25℃での粘度が1,000cPから10,000cPである、請求項1に記載のリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物。
【請求項3】
前記着色剤の前記溶媒に対する溶解度は25℃で300g/Lから500g/Lである、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物。
【請求項4】
前記着色剤は、前記溶媒100重量部に対し0.01重量部から10重量部で含まれる、請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物。
【請求項5】
前記着色剤は金属イオンをさらに含んでなり、
前記金属イオンは、前記有機染料、前記油溶性染料及び有機蛍光体からなる群より選択される少なくとも1種と錯塩(complex salt)構造を形成する、請求項1から4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物。
【請求項6】
前記金属イオンは、銅、コバルト、クロム、ニッケル及び/または鉄からなる群より選択される少なくとも1種の金属のイオンである、請求項5に記載のリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物。
【請求項7】
前記バインダー高分子は、前記溶媒100重量部に対し5重量部から15重量部で含まれる、請求項1から6のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物。
【請求項8】
前記リチウム二次電池用絶縁層形成用組成物の固形分の含量は5重量%から15重量%である、請求項1から7のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物。
【請求項9】
前記リチウム二次電池用絶縁層形成用組成物は、リチウム二次電池用電極に含まれる電極活物質層の少なくとも一部と重畳する絶縁層を形成するために用いられる、請求項1に記載のリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物。
【請求項10】
電極集電体と、
前記電極集電体上に形成される電極活物質層と、
前記電極集電体上に形成され、前記電極活物質層と一部の領域で重畳するように形成される絶縁層とを含んでなり、
前記絶縁層は、請求項1から9のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物で形成される、リチウム二次電池用電極。
【請求項11】
電極集電体上に活物質スラリー組成物を塗布して未乾燥電極活物質層を形成するステップと、
前記未乾燥電極活物質層と一部の領域で重畳するように請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物を塗布して未乾燥絶縁層を形成するステップと、
前記未乾燥電極活物質層と前記未乾燥絶縁層を同時に乾燥させるステップとを含む、リチウム二次電池用電極の製造方法。
【請求項12】
前記活物質スラリー組成物と前記リチウム二次電池用絶縁層形成用組成物の25℃での粘度の差異は5,000cP以下である、請求項11に記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
【請求項13】
前記活物質スラリー組成物の25℃での粘度は5,000cPから15,000cPである、請求項12に記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
【請求項14】
前記活物質スラリー組成物は、前記バインダー高分子と同一の高分子物質を含む、請求項11から13のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
【請求項15】
請求項10に記載のリチウム二次電池用電極を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年2月1日付韓国特許出願第10−2018−0013009号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用絶縁層形成用組成物、及びそれを利用したリチウム二次電池用電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に対する技術の開発と需要の増加に伴い、エネルギー源としての二次電池の需要が急激に増加しており、それによって多様な要求に応えることができる電池に対する多くの研究が行われている。
【0004】
代表的に、電池の形状の面では、薄い厚さで携帯電話などのような製品に適用可能な角形電池とパウチ型電池に対する需要が高く、材料の面では、エネルギー密度、放電電圧、安全性に優れたリチウムコバルトポリマー電池のようなリチウム二次電池に対する需要が高い。
【0005】
このような二次電池において主な研究課題中の一つは、安全性を向上させることである。電池の安全性に関連する事故の主な原因は、正極と負極の間の短絡による異常な高温状態への到達に起因する。すなわち、正常な状況では正極と負極の間にセパレーターが位置して電気的絶縁を維持しているが、電池が過充電または過放電を起こしたり、電極材料の樹枝状成長(dendritic growth)または異物による内部短絡を起こしたり、釘、ねじなどの鋭い物体が電池を貫いたり、外力によって電池に無理な変形が加えられたりするなどの異常な誤用/乱用の状況では、既存のセパレーターだけでは限界を見せるようになる。
【0006】
一般に、セパレーターには、ポリオレフィン樹脂からなる微細多孔膜が主に利用されているが、その耐熱温度が120から160℃程度で耐熱性が不十分である。よって、内部短絡が発生すれば、短絡反応熱によってセパレーターが収縮して短絡部が拡大され、さらに大きくて多くの反応熱が発生する熱爆走(thermal runaway)の状態に至るようになるという問題があった。
【0007】
また、一般に、二次電池は、正極と負極を一定した大きさに切断し、複数枚重ねて角形に製造される。このとき、高分子電解質でコーティングされた正極または負極電極の縁部には、目立たない非常に小さな針模様の鋭い部分が存在するので、電極を積層すれば、この部分で微細な内部短絡が発生して電池の性能に悪影響を及ぼすことがある。特に、縁部には、高分子電解質をコーティングする時も不規則な面が内側より多いため、万遍なくコーティングされず、短絡が発生する可能性が高い。また、電極を積層する時、上下層の電極が少しでもずれるようになれば、正極と負極の短絡が発生し得る。
【0008】
このように、セルの変形や外部衝撃、または正極と負極の物理的短絡の可能性を低めるための多様な方法が研究されてきた。
【0009】
例えば、電池を完成した状態で電極組立体が動くことにより、電極タブが電極組立体の上段に接触して短絡が誘発されることを防止すべく、集電体の上段に隣接した電極タブ上に所定の大きさで絶縁テープを付着する方法がある。このような絶縁テープには通常ポリイミドフィルムが用いられ、集電体の上段から下方に若干延長された長さまで絶縁テープを巻き取ることが一般に推奨されている。また、巻戻しを防止するため、通常2から3回程度巻き取っている。
【0010】
しかし、このような絶縁テープの巻取り作業は非常に煩雑であり、集電体の上段から下方に若干延長された長さまで絶縁テープを巻き取る場合は、かかる部位が電極組立体の厚さの増加を誘発することがある。さらに、電極タブの折り 曲げ時に巻き戻されやすいという問題点を有している。
【0011】
韓国公開特許第10−2015−0031724号公報は、二次電池について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2015−0031724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の一課題は、絶縁層の形成時に整列の位置を容易に確認することができ、電極活物質層と重畳する部分で活物質層の浸食が発生することを抑制することができるリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物を提供することである。
【0014】
また、本発明の他の課題は、前述したリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物を利用するリチウム二次電池用電極の製造方法を提供することである。
【0015】
また、本発明のまた他の課題は、前述したリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物で形成された絶縁層を含むリチウム二次電池用電極を提供することである。
【0016】
また、本発明のまた他の課題は、前述したリチウム二次電池用電極を含むリチウム二次電池に関することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、バインダー高分子と、有機染料、油溶性染料及び有機蛍光体からなる群より選択される少なくとも1種を含む着色剤と、溶媒とを含んでなり、25℃での粘度が1,000cP以上である、リチウム二次電池用絶縁層形成用組成物を提供する。
【0018】
また、本発明は、電極集電体上に活物質スラリー組成物を塗布して未乾燥電極活物質層を形成するステップと、前記未乾燥電極活物質層と一部の領域で重畳するように前述のリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物を塗布して未乾燥絶縁層を形成するステップと、前記未乾燥電極活物質層と前記未乾燥絶縁層を同時に乾燥させるステップとを含む、リチウム二次電池用電極の製造方法を提供する。
【0019】
また、本発明は、電極集電体と、前記電極集電体上に形成される電極活物質層と、前記電極集電体上に形成され、前記電極活物質層と一部の領域で重畳するように形成される絶縁層とを含んでなり、前記電極活物質層と重畳する領域の絶縁層の厚さが前記電極活物質層の方向に漸次減少し、前記絶縁層は、前述のリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物で形成される、リチウム二次電池用電極を提供する。
【0020】
また、本発明は、前述のリチウム二次電池用電極を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物は、有機染料などを着色剤として用いるため、液安定性に優れ、絶縁層形成時の整列位置を容易に確認することができる。
【0022】
また、本発明に係るリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物は、分散剤を用いなくとも着色剤を容易に溶解させることができ、これに伴い、組成物の粘度の調節が容易であり、これから形成された絶縁層は、電極活物質層との重畳領域で接着力に優れて浸食が抑制され得る。
【0023】
したがって、前記絶縁層形成用組成物を用いて製造されたリチウム二次電池用電極及びリチウム二次電池は、絶縁層の形成位置の検出が容易なので、容易な品質の評価が可能であり、製品の品質及び安定性の確保が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1で製造した正極の断面のうち正極活物質層と絶縁層の重畳領域を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した写真である。
図2】比較例1で製造した正極の断面のうち正極活物質層と絶縁層の重畳領域を走査型電子顕微鏡で観察した写真である。
図3】実施例1で製造した正極に対する電解液溶出評価実験の結果を示した図である。
図4】実施例2で製造した正極に対する電解液溶出評価実験の結果を示した図である。
図5】実施例1の絶縁層形成用組成物に対する液安定性を確認するための写真である。
図6】比較例2の絶縁層形成用組成物に対する液安定性を確認するための写真である。
図7】実施例1の絶縁層形成用組成物のコーティング性を評価するための表面検査写真である。
図8】実施例3の絶縁層形成用組成物のコーティング性を評価するための表面検査写真である。
図9】実施例1の絶縁層形成用組成物のコーティング性を評価するための光学顕微鏡写真である。
図10】実施例3の絶縁層形成用組成物のコーティング性を評価するための光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に適合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0026】
本明細書で用いられる用語は、ただ例示的な実施形態を説明するために用いられたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味を有しない限り、複数の表現を含む。
【0027】
本明細書において、『含む』、『備える』または『有する』などの用語は、実施された特徴、数字、ステップ、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないものとして理解されなければならない。
【0028】
本明細書において、『%』は、明示的な異なる表示がない限り、重量%を意味する。
【0029】
本明細書において、平均粒径(D50)は、粒子の粒径分布曲線において、体積累積量の50%にあたる粒径と定義することができる。前記平均粒径(D50)は、例えば、レーザー回折法(laser diffraction method)を利用して測定することができる。前記レーザー回折法は、一般にサブミクロン(submicron)の領域から数mm程度までの粒径の測定が可能であり、高再現性及び高分解性の結果を得ることができる。
【0030】
以下、本発明に対して具体的に説明する。
【0031】
絶縁層形成用組成物
本発明の絶縁層形成用組成物は、(1)バインダー高分子、(2)有機染料(organic dye)、油溶性染料(oil soluble dye)及び有機蛍光体(organic phosphor)からなる群より選択される少なくとも1種を含む着色剤、及び(3)溶媒を含み、25℃での粘度が1,000cP以上である。
【0032】
例えば、絶縁層は、電極集電体上で電極活物質層がコーティングされていない無地部に形成されるか、電極活物質層と一部重畳するように形成されてよい。このとき、一般に、絶縁層のコーティング位置などを確認するため、絶縁層形成用組成物に顔料(pigment)などを混合して用いることができる。しかし、一般に、無機顔料(inorganic pigment)、有機顔料(organic pigment)などの顔料は、水または有機溶媒に不溶性であり、組成物内で凝集され易いため、絶縁層内に均一に分布され難い。このような顔料の凝集の問題を防止すべく、絶縁層形成用組成物に分散剤を添加することができる。しかし、電極活物質層及び絶縁層を重畳させる工程を行うために絶縁層形成用組成物にある程度の水準以上の粘度が求められるところ、このような要求を満たす粘度を有する組成物では、分散剤の添加にもかかわらず依然として顔料の分散が難しく、凝集が発生し得るという問題点がある。
【0033】
しかし、本発明のリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物は、高い水準の粘度でも、溶解性及び分散性に優れた有機染料(dye)などを着色剤として用いるので、別途の分散剤が不要であり、コーティング性に優れる。
【0034】
また、本発明のリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物は、有機染料などを着色剤として用いるので、液安定性に優れ、絶縁層形成時の整列位置を容易に確認することができる。
【0035】
また、本発明に係るリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物は、分散剤を用いなくとも着色剤を容易に溶解させることができ、これに伴い、組成物の粘度の調節が容易であり、これから形成された絶縁層は、電極活物質層との重畳領域で接着力に優れて浸食が抑制され得る。
【0036】
したがって、前記絶縁層形成用組成物を用いて製造されたリチウム二次電池用電極及びリチウム二次電池は、絶縁層の形成位置の検出が容易なので、容易な品質の評価が可能であり、製品の品質及び安定性の確保が可能である。
【0037】
前記バインダー高分子は、例えば、前記絶縁層形成用組成物が絶縁層に形成されるとき、電極集電体及び/または電極活物質層との決着性を与える成分である。
【0038】
前記バインダー高分子は、ポリビニリデンフルオリド、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、スチレンブタジエンゴム(styrene butadiene rubber)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、カルボキシメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butylate)、セルロースアセテートプロピオネート(cellulose acetate propionate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethyl polyvinylalcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethyl cellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethyl sucrose)、プルラン(pullulan)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルアセテート(polyvinylacetate)、エチレンビニルアセテート共重合体(polyethylene−co−vinyl acetate)、ポリアリレート(polyarylate)、及び分子量10,000g/mol以下の低分子化合物からなる群より選択される少なくとも1種のバインダー高分子であってよい。中でも、前記バインダー高分子は、接着性、耐化学性及び電気化学的安定性の側面でポリビニリデンフルオリドであってよい。
【0039】
前記ポリビニリデンフルオリド高分子は、前述した電極活物質層との接着力の向上、所望する粘度の確保の側面で、重量平均分子量が400,000から1,500,000、好ましくは600,000から1,200,000であってよい。
【0040】
前記ポリビニリデンフルオリド高分子は、組成物に対する溶解性向上の側面で、融点が150℃から180℃、好ましくは165℃から175℃であってよい。
【0041】
好ましくは、前記バインダー高分子には、後述する電極活物質層内でバインダーとして用いられる物質、すなわち、電極活物質層用バインダーと同一の物質を用いることができる。この場合、絶縁層と電極活物質層の間の接着力または密着力をさらに向上させることができる。
【0042】
前記バインダー高分子は、所望する粘度特性の具現及び絶縁層の容易な形成の側面で、前記溶媒100重量部に対し5重量部から15重量部、好ましくは7重量部から12重量部、より好ましくは7.5重量部から10重量部で含まれてよい。
【0043】
前記着色剤は、前記リチウム二次電池用絶縁層形成用組成物が絶縁層にコーティングされるとき、検出装置を介して絶縁層の形成位置を確認するために組成物内に含まれてよい。
【0044】
前記着色剤は、有機染料(organic dye)、油溶性染料(oil soluble dye)及び/または有機蛍光体(organic phosphor)を含む。有機染料、油溶性染料及び/または有機蛍光体を含む本発明に係る着色剤は、溶媒に対する溶解性に優れるので、これを用いる場合、染料または蛍光体が絶縁層内に均一に分布することができる。前記絶縁層形成用組成物は、顔料を着色剤として用いる場合に比べて着色剤の凝集の発生が著しく減少し、顔料の凝集を防止するために分散剤を用いる場合に発生し得る相分離、液安定性の減少、電極活物質層と絶縁層の間の重畳領域における浸食の発生などが著しく減少し得る。
【0045】
前記有機染料は、アントラキノン系染料、アニリノアゾ系染料、トリフェニルメタン系染料、ピラゾールアゾ系染料、ピリドンアゾ系染料、アトラピリドン系染料、オキソノール系染料、ベンジリデン染料、キサンテン染料からなる群より選択される少なくとも1種、好ましくは、ベンジリデン染料及びアゾ系染料からなる群より選択される少なくとも1種であってよく、より好ましくは、液安定性の向上、相分離防止効果の向上の側面でベンジリデン染料であってよい。
【0046】
前記有機蛍光体は、例えば、カルボキシル基、ホスフェート基、またはこれらを両方とも有する有機蛍光体であってよい。
【0047】
前記油溶性染料には、ベンゾイミダゾロン(benzimidazolone)系化合物、アゾ(azo)系化合物、キノフタロン(quinophthalone)系化合物、キナクリドン(quinacridone)系化合物、フタロシアニン(phthalocyanine)系化合物、DPP(Diketo−Pyrrolo−Pyrrole)系化合物、これらの2以上の組み合わせなどが用いられてよく、好ましくは、認識性の向上の側面で、ベンゾイミダゾロン系化合物、アゾ系化合物、これらの2以上の組み合わせなどが用いられてよい。
【0048】
前記着色剤は、前記有機染料、前記油溶性染料及び/または前記有機蛍光体の他に金属イオンをさらに含むことができる。具体的に、前記着色剤は、金属イオンと錯塩(complex salt)構造を形成した有機染料、油溶性染料及び/または有機蛍光体を含むことができる。前記有機染料、前記油溶性染料及び/または前記有機蛍光体は、前記金属イオンとの錯塩構造を有することにより、有機溶媒に対する溶解性または分散性に優れ、耐光安定性、耐熱性に優れ、鮮明性がさらに向上され、組成物内に均一な分布を具現することができる。
【0049】
前記金属イオンは、前述の有機染料、前記油溶性染料及び/または前記有機蛍光体と錯塩構造を形成することができる金属イオンであれば特に制限されず、例えば、銅、コバルト、クロム、ニッケル及び/または鉄のイオン、好ましくはクロムのイオンを含むことができる。
【0050】
前記着色剤の前記溶媒に対する溶解度は、25℃で300g/Lから500g/L、好ましくは350g/Lから450g/Lであってよく、前述の範囲にある時に着色剤の均一な分布、溶解性向上の側面で好ましい。
【0051】
前記着色剤は、前記溶媒100重量部に対し0.01重量部から10重量部、好ましくは0.01重量部から5重量部、より好ましくは0.01重量部から0.3重量部で含まれてよく、前記範囲にある時に、検出装置で絶縁層の形成位置を確認する際、視認性の確保、絶縁層内の均一な分布の側面で好ましい。
【0052】
前記溶媒は、前述した成分等の溶解性、後述する粘度範囲の具現の側面で、メチルピロリドン(NMP)を含むことができる。
【0053】
前記リチウム二次電池用絶縁層形成用組成物の固形分の含量は、5重量%から15重量%、好ましくは8重量%から12重量%、より好ましくは8.5重量%から10重量%であってよい。前述した範囲である時に所望するコーティング性、粘度範囲の確保の側面で好ましい。
【0054】
前記絶縁層形成用組成物の25℃での粘度は1,000cP以上であってよく、これに伴って高い粘度を有することにより、電極活物質層と絶縁層の重畳領域を具現する時の所望する密着性の具現、電極活物質層の浸食問題の防止の側面でよい。もし組成物の25℃での粘度が1,000cP未満であれば、液安定性が著しく低下し、前述した重畳領域での浸食が発生する虞がある。
【0055】
好ましくは、前記リチウム二次電池用絶縁層形成用組成物は、25℃での粘度が1,000cPから10,000cP、より好ましくは5,000cPから8,000cPであってよく、前述した範囲にある時に密着性、及び重畳領域における電極活物質層の浸食を防止する効果をさらに向上させることができ、優れたコーティング性を具現することができる。
【0056】
前述したリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物は、前述の粘度範囲を有するので、電極活物質層との優れた密着力、及び重畳領域における電極活物質層の浸食を防止する優れた効果を具現することができる。さらに、溶媒に対する溶解性に優れた有機材料を着色剤として用いるので、着色剤の均一な分布が可能であり、分散剤を用いないので、高い粘度範囲の具現が可能である。また、電極集電体または電極活物質層に対する密着力に優れ、絶縁層の整列位置を容易に評価、観察することができる。
【0057】
二次電池用電極
また、本発明は、前述したリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物で形成された絶縁層を含むリチウム二次電池用電極を提供する。
【0058】
前記リチウム二次電池用電極は、電極集電体と、前記電極集電体上に形成される電極活物質層と、前記電極集電体上に形成され、前記電極活物質層と一部の領域で重畳するように形成される絶縁層とを含んでなり、前記電極活物質層と重畳する領域の絶縁層の厚さが前記電極活物質層の方向に漸次減少し、前記絶縁層は、前述のリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物で形成される。
【0059】
前記リチウム二次電池用電極は、前述のリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物で形成された絶縁層を含んでなり、前記絶縁層及び前記電極活物質層の密着力を向上させることができるとともに十分な絶縁性を備えることができる。また、複数のリチウム二次電池用電極を積層させるなどでリチウム二次電池を製造するとき、電池の断線などで容量が減少するか抵抗が上昇する問題が防止され、電池の品質及び安定性を向上させることができる。
【0060】
また、前記リチウム二次電池用電極は、前述のリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物で形成された絶縁層が前述の着色剤及び粘度範囲を有することにより、重畳領域における電極活物質層の浸食が著しく防止され得る。
【0061】
以下、本発明に係るリチウム二次電池用電極を詳しく説明する。
【0062】
前記リチウム二次電池用電極は、電極集電体、電極活物質層及び絶縁層を含む。
【0063】
前記電極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば特に制限されるのではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム−カドミウム合金などが用いられてよい。また、前記電極集電体は、通常、3μmから500μmの厚さを有してよく、前記電極集電体の表面に微細な凹凸を形成して後述する電極活物質との結合力を強化させることもできる。例えば、前記電極集電体は、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態に用いられてよい。
【0064】
前記電極活物質層は、前記電極集電体上に形成される。
【0065】
前記電極活物質層は電極活物質を含むことができ、具体的に、正極活物質または負極活物質を含むことができる。好ましくは、前記電極活物質は正極活物質を含むことができる。
【0066】
前記正極活物質は特に制限されず、例えば、前記正極活物質は、通常用いられる正極活物質であってよい。具体的に、前記正極活物質は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物や1またはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;LiFeなどのリチウム鉄酸化物;化学式Li1+c1Mn2−c1(0≦c1≦0.33)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1−c2c2(ここで、Mは、Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、B及びGaからなる群より選択される少なくともいずれか一つであり、0.01≦c2≦0.3を満たす)で表されるNiサイト型のリチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2−c3c3(ここで、Mは、Co、Ni、Fe、Cr、Zn及びTaからなる群より選択される少なくともいずれか一つであり、0.01≦c3≦0.1を満たす)またはLiMnMO(ここで、Mは、Fe、Co、Ni、Cu及びZnからなる群より選択される少なくともいずれか一つである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMnなどが挙げられるが、これらだけに限定されるのではない。前記正極はLi−金属(metal)であってもよい。
【0067】
前記負極活物質は特に制限されず、例えば、リチウムの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションが可能な化合物が用いられてよい。具体的な例には、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金などの、リチウムとの合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープ及び脱ドープすることができる金属酸化物;または、Si−C複合体またはSn−C複合体のように前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などを挙げることができ、これらのうちいずれか一つまたは二つ以上の混合物が用いられてよい。さらに、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が用いられてもよい。また、炭素材料は、低結晶性炭素及び高結晶性炭素などがいずれも用いられてよい。低結晶性炭素には軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素には、無定形、板状、麟片状、球形または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、メソ相ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソ炭素微小球体(meso−carbon microbeads)、メソ相ピッチ(Mesophase pitches)、及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0068】
前記電極活物質は、前記電極活物質層の全重量に対し80重量%から99.5重量%、好ましくは88重量%から99重量%で含まれてよい。
【0069】
前記電極活物質層は、電極活物質層用バインダーをさらに含むことができる。
【0070】
前記電極活物質層用バインダーは、電極活物質同士の付着及び電極活物質と電極集電体との接着力を向上させる役割を担うことができる。
【0071】
前記電極活物質層用バインダーは、具体的に、ポリビニリデンフルオリド、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、スチレンブタジエンゴム(styrene butadiene rubber)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、カルボキシメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butylate)、セルロースアセテートプロピオネート(cellulose acetate propionate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethyl polyvinylalcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethyl cellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethyl sucrose)、プルラン(pullulan)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルアセテート(polyvinylacetate)、エチレンビニルアセテート共重合体(polyethylene−co−vinyl acetate)、ポリアリレート(polyarylate)、及び分子量10,000g/mol以下の低分子化合物からなる群より選択される少なくとも1種であってよく、好ましくは、接着性、耐化学性及び電気化学的安定性の側面でポリビニリデンフルオリドが特に好ましい。
【0072】
前記電極活物質層用バインダーは、前述したリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物に含まれているバインダー高分子と同一の物質であってよい。この場合、後述するところのように、電極活物質層及び絶縁層の重畳領域での決着力がさらに向上され得るので、製品の安定性及び品質の向上を期待することができ、接着力、密着力、溶接性などの工程能力が向上される側面で好ましい。
【0073】
前記電極活物質層用バインダーは、前記電極活物質層の全重量に対し0.1重量%から10重量%、好ましくは0.5重量%から5重量%で含まれてよい。
【0074】
前記電極活物質層は、前述した成分の他に導電材をさらに含むことができる。前記導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に制限されるのではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;炭素ナノチューブなどの導電性チューブ;フルオロカーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウイスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられてよい。
【0075】
前記導電材は、前記電極活物質層の全重量に対し0.1重量%から20重量%、好ましくは0.3重量%から10重量%で含まれてよい。
【0076】
前記絶縁層は電極集電体上に形成され、前記電極活物質層と一部の領域で重畳するように形成される。例えば、前記電極活物質層と前記絶縁層は、一部の領域で互いに重畳するように積層または形成されてよい。
【0077】
前記絶縁層は、前述したリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物で形成されてよい。これによって高い粘度範囲を有するので、重畳領域における電極活物質層の浸食を著しく防止し、前記電極活物質層及び前記電極集電体との優れた密着力の具現が可能である。また、前記リチウム二次電池用電極は、電池の内部短絡の危険が少なく、断線による抵抗の上昇または容量低下の問題が著しく改善され得る。
【0078】
前記絶縁層または前記リチウム二次電池用絶縁層形成用組成物に含まれる成分、含量などは前述した通りである。
【0079】
前記電極活物質層と前記絶縁層が重畳する領域において、前記電極活物質層は傾斜面に形成されてよい。
【0080】
前記電極活物質層と前記絶縁層が重畳する領域の長さは、0.05mmから1.3mm、好ましくは0.1mmから1.0mmであってよく、この場合、電極活物質層と絶縁層の重畳による容量の低下を最少化し、電極活物質層及び絶縁層の密着力または接着力をさらに向上させることができるので好ましい。
【0081】
電極活物質層と絶縁層の重畳による容量の低下を防止するための側面で、前記電極活物質層と重畳する領域の絶縁層の厚さは、前記電極活物質層の方向に漸次減少してよい。
【0082】
前記電極活物質層と前記絶縁層が重畳する領域において、前記電極活物質層の末端での絶縁層の厚さをA、前記絶縁層の末端での絶縁層の厚さをAとするとき、A/Aが0.05以上1未満、好ましくは0.1から0.7であってよく、前述した範囲にある時に電極活物質層と絶縁層の重畳による容量の低下を最小限に抑えながらも、前記絶縁層と前記電極活物質層の密着力、接着力をさらに向上させることができ、絶縁層と活物質層の間の浸食による界面破壊を防止することができる。
【0083】
前記Aは、3μmから20μm、好ましくは5μmから12μmであってよく、前記Aは、0.15μm以上20μm未満、好ましくは1μmから5μmであってよい。
【0084】
前記電極活物質層と前記絶縁層が重畳しない領域、例えば、重畳領域以外の領域の前記電極活物質層または前記絶縁層において、前記電極活物質層の厚さ(d)に対する前記絶縁層の厚さ(d)の割合(d/d)は、0.02から0.4、好ましくは0.05から0.1であってよい。
【0085】
前記リチウム二次電池用電極は、前記電極活物質層と前記絶縁層が前述した範囲の厚さの割合を有することにより、優れた絶縁性及び接着力を有するのは勿論のこと、複数の電極の積層によるリチウム二次電池の製造の際に電極タブの断線の発生を防止し、これに伴い、断線による容量の低下または抵抗の上昇を防止することができる。
【0086】
前記電極活物質層と前記絶縁層が重畳しない領域における前記絶縁層の厚さは3μmから20μmであってよく、前記電極活物質層の厚さは50μmから150μmであってよい。前記範囲であるとき、前述した絶縁性、接着性及び工程能力がさらに優れて具現され得る。
【0087】
リチウム二次電池用電極は、リチウム二次電池用正極またはリチウム二次電池用負極であってよく、好ましくはリチウム二次電池用正極であってよい。
【0088】
前述したリチウム二次電池用電極は、前述したリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物で形成された絶縁層を含んで絶縁層と電極活物質層または電極集電体の密着力を向上させることができるとともに、十分な絶縁性を備えることができる。また、前述したリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物を用いて重畳領域における電極活物質層の浸食を著しく防止することができる。さらに、複数のリチウム二次電池用電極を積層させるなどでリチウム二次電池を製造するとき、溶接性、工程安定性に優れるため、電池の断線などで容量が減少するか抵抗が上昇する問題が防止され、電池の品質及び安定性を向上させることができる。
【0089】
電極の製造方法
また、本発明は、前述したリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物を利用するリチウム二次電池用電極の製造方法を提供する。
【0090】
前記リチウム二次電池用電極の製造方法は、電極集電体上に活物質スラリー組成物を塗布して未乾燥電極活物質層を形成するステップと、前記未乾燥電極活物質層と一部の領域で重畳するように前述のリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物を塗布して未乾燥絶縁層を形成するステップと、前記未乾燥電極活物質層と前記未乾燥絶縁層を同時に乾燥させるステップとを含む。
【0091】
前記リチウム二次電池用電極の製造方法は、前述したリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物を塗布して未乾燥絶縁層または絶縁層を形成することから、電極活物質層または電極集電体との密着力に優れる。また、前述したリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物は高い粘度を有するので、電極活物質層との重畳領域における電極活物質層の浸食を著しく防止することができる。よって、これから製造されたリチウム二次電池用電極は、安定性が改善され、内部短絡による断線、抵抗の上昇及び容量の低下を著しく改善することができる。
【0092】
また、前記リチウム二次電池用電極の製造方法は、ウェットウェットコーティング法(wet−wet coating)を用いることができる。例えば、前記製造方法は、活物質スラリー組成物を電極集電体上に塗布し、ただし、これを乾燥させてはいない未乾燥電極活物質層を形成した後、絶縁層形成用組成物を一部重畳するように塗布して未乾燥絶縁層を形成し、前記未乾燥電極活物質層及び未乾燥絶縁層を同時に乾燥させることによって前述したリチウム二次電池用電極が製造されてよい。これによって製造された電極活物質層及び絶縁層は優れた密着力で接着されてよく、重畳領域が長く形成されることによって密着力、溶接容易性及び工程能力が向上されるので、これらから製造されたリチウム二次電池は、不良の発生が防止され、優れた品質及び安定性を有することができる。
【0093】
以下、前記リチウム二次電池用電極の製造方法を詳しく説明する。
【0094】
前記リチウム二次電池用電極の製造方法は、電極集電体上に活物質スラリー組成物を塗布して未乾燥電極活物質層を形成するステップを含む。
前記電極集電体は、前述した電極集電体と同一の種類、材料、厚さなどで用いられてよい。
【0095】
前記活物質スラリー組成物は、前記電極集電体上に塗布されて前記未乾燥電極活物質層に形成されてよい。例えば、前記未乾燥電極活物質層は、後述する未乾燥絶縁層との同時乾燥の後に電極活物質層を形成することができる。
【0096】
前記活物質スラリー組成物は、正極活物質スラリー組成物または負極活物質スラリー組成物、好ましくは正極活物質スラリー組成物であってよい。
【0097】
前記正極活物質スラリー組成物は、正極活物質、バインダー及び/または導電材を含むことができ、前記負極活物質スラリー組成物は、負極活物質、バインダー及び/または導電材を含むことができる。前記正極活物質、前記負極活物質、バインダー及び/または導電材は、前述した正極活物質、負極活物質、バインダー及び/または導電材が用いられてよい。
【0098】
前記活物質スラリー組成物は、前記電極集電体上に塗布されて未乾燥電極活物質層に形成されてよい。本明細書における『未乾燥』とは、前記活物質スラリー組成物を塗布した後に乾燥されていない場合は勿論、乾燥工程を行っていないため実質的に乾燥されていない場合を全て包括する。
【0099】
前記リチウム二次電池用電極の製造方法は、前記未乾燥電極活物質層と一部の領域で重畳するよう前述したリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物を塗布して未乾燥絶縁層を形成するステップを含む。
【0100】
前述したリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物は、前記未乾燥電極活物質層と一部の領域で重畳するように前記電極集電体上に塗布されて未乾燥絶縁層を形成することができる。例えば、前記未乾燥絶縁層は、後述する前記未乾燥電極活物質層との同時乾燥の後に前述した絶縁層を形成することができ、前記電極活物質層と重畳領域を形成することができる。
【0101】
前記絶縁層または前記リチウム二次電池用絶縁層形成用組成物に含まれる成分、含量などは前述した通りである。
【0102】
前記活物質スラリー組成物は、電極活物質層用バインダーをさらに含むことができる。具体的な前記電極活物質層用バインダーの成分などは前述で説明した。
【0103】
好ましくは、前記電極活物質層用バインダーは、前述したリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物に含まれているバインダー高分子と同一の物質であってよい。この場合、後述するところのように、電極活物質層及び絶縁層の重畳領域における決着力がさらに向上できるので、製品の安定性及び品質の向上を期待することができ、接着力、密着力の向上、溶接性などの工程能力の向上の側面で好ましい。
【0104】
前記リチウム二次電池用電極の製造方法は、前記未乾燥電極活物質層と前記未乾燥絶縁層を同時に乾燥させるステップを含む。
【0105】
前記リチウム二次電池用電極の製造方法は、活物質スラリー組成物を塗布、乾燥して電極活物質層を製造した後に絶縁層形成用組成物を塗布するのではなく、前記未乾燥電極活物質層と前記未乾燥絶縁層を同時に乾燥することによって電極活物質層と絶縁層の間の密着力、接着力をさらに向上させることができる。また、これによって前記未乾燥電極活物質層及び前記未乾燥絶縁層の重畳領域または前記電極活物質層及び前記絶縁層の重畳領域が相対的に長くなり、重畳領域の絶縁層の厚さを薄く形成することができるので、工程能力、溶接容易性が著しく向上され、電池の品質及び安定性を向上させることができる。
【0106】
また、前記リチウム二次電池用電極の製造方法は、前述したリチウム二次電池用絶縁層形成用組成物を用いるので、重畳領域における電極活物質層の浸食を著しく防止することができる。
【0107】
前記乾燥は、前記未乾燥電極活物質層と前記未乾燥絶縁層を十分乾燥させることができるのであれば特に制限はなく、当分野で通常知られている乾燥の方法を用いることができる。例えば、前記乾燥は、熱風方式、直接加熱方式、誘導加熱方式などを変更して適用することができ、具体的に前記乾燥は、50から180℃で1から5分間行われてよい。
【0108】
前記活物質スラリー組成物及び前記絶縁層形成用組成物の25℃での粘度の差異は、5,000cP以下、好ましくは2,000cP以下、より好ましくは1,000cP以下であってよい。前記活物質スラリー組成物及び前記絶縁層形成用組成物は、これらの粘度の差異が前述した範囲に調節されるので、前記未乾燥電極活物質層及び前記未乾燥絶縁層を乾燥した後にこれらの接着力または密着力をさらに向上させることができ、重畳領域における浸食が効果的に防止される。
【0109】
前記絶縁層形成用組成物の25℃での粘度は、1,000cPから10,000cP、好ましくは5,000cPから8,000cPであってよい。前記範囲であるとき、前記未乾燥電極活物質層または電極活物質層との密着力をさらに向上させることができる。
【0110】
前記活物質スラリー組成物の25℃での粘度は、5,000cPから15,000cP、好ましくは5,000cPから13,000cPであってよい。前記範囲であるとき、前記未乾燥電極活物質層または電極活物質層との密着力を向上させることができ、これに加え、コーティング性、工程能力をさらに向上させることができる。
【0111】
前述した粘度の範囲は、前記活物質スラリー組成物または前記絶縁層形成用組成物の成分、固形分の含量などを適宜調節して達成することができる。
【0112】
二次電池
また、本発明は、前述したリチウム二次電池用電極を含むリチウム二次電池を提供する。
【0113】
前記リチウム二次電池は、具体的に正極、前記正極と対向して位置する負極、前記正極と負極の間に介在されるセパレーター及び電解質を含む。このとき、前記正極及び/または前記負極は、前述したリチウム二次電池用電極が用いられてよい。また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、セパレーターの電極組立体を収納する電池容器、及び前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含むことができる。
【0114】
一方、前記リチウム二次電池において、セパレーターは、負極と正極を分離してリチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常リチウム二次電池でセパレーターとして用いられるものであれば特別な制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解液含浸能に優れたものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルム、またはこれらの2層以上の積層構造体が用いられてよい。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が用いられてもよい。さらに、耐熱性または機械的強度を確保するために、セラミックス成分または高分子物質が含まれているコーティングされたセパレーターが用いられてもよく、選択的に単層または多層構造で用いられてよい。
【0115】
また、本発明で用いられる電解質には、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0116】
具体的に、前記電解質は、有機溶媒及びリチウム塩を含むことができる。
【0117】
前記有機溶媒には、電池の電気化学的反応に関与するイオン等が移動することができる媒質の役割ができるものであれば、特別な制限なく用いられてよい。具体的に、前記有機溶媒には、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ−ブチロラクトン(γ−butyrolactone)、ε−カプロラクトン(ε−caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylenecarbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R−CN(Rは、炭素数2から20の直鎖状、分岐状または環状構造の炭化水素基であり、二重結合芳香族環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3−ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが用いられてよい。中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充電/放電性能を高めることができる高いイオン伝導度及び高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と低粘度の線形カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)との混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、約1:1から約1:9の体積比で混合して用いれば、優れた電解液の性能が表れ得る。
【0118】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池で用いられるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特別な制限なく用いられてよい。具体的に、前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiIまたはLiB(Cなどが用いられてよい。前記リチウム塩の濃度は、0.1から2.0Mの範囲内で用いた方がよい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれれば、電解質が適した伝導度及び粘度を有するので、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0119】
前記電解質には、前記電解質の構成成分以外にも、電池の寿命特性の向上、電池の容量減少の抑制、電池の放電容量の向上などを目的に、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N−置換オキサゾリジノン、N,N−置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2−メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれてもよい。このとき、前記添加剤は、電解質の全重量に対して0.1から5重量%で含まれてよい。
【0120】
実施形態等に係るリチウム二次電池は、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器、及びハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車の分野などに有用である。
【0121】
これに伴い、本発明の他の一具現例によれば、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール、及びそれを含む電池パックが提供される。
【0122】
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、及びプラグインハイブリッド電気自動車(Plug−in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのうちのいずれか一つ以上の中大型デバイスの電源に利用されてよい。
【0123】
本発明のリチウム二次電池の外形には特別な制限がないが、缶を用いた円筒状、角形、パウチ(pouch)型またはコイン(coin)型などになり得る。
【0124】
本発明に係るリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として用いられる電池セルに使用可能であるだけでなく、多数の電池セルを含む中大型の電池モジュールに単位電池としても好適に用いられてよい。
【0125】
以下、本発明の属する技術の分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるよう、本発明の実施例に対して詳しく説明する。しかし、本発明は、幾多の異なる形態に具現されてよく、ここで説明する実施例に限定されない。
【0126】
実施例及び比較例
実施例1:リチウム二次電池用絶縁層形成用組成物の製造
バインダー高分子としてポリビニリデンフルオリド(製品名:KF9700、製造社:Kureha、重量平均分子量:880,000)9重量部、着色剤としてベンジリデン系有機染料のyellow 081(BASF社製)0.1重量部をメチルピロリドン(NMP)100重量部に溶解させて絶縁層形成用組成物を製造した。このとき、前記絶縁層形成用組成物の粘度は6,000cPであった。
【0127】
実施例2:リチウム二次電池用絶縁層形成用組成物の製造
バインダー高分子としてポリビニリデンフルオリド(製品名:KF9700、製造社:Kureha、重量平均分子量:880,000)9重量部、着色剤としてアゾ系有機染料のred 395(BASF社製)0.1重量部をメチルピロリドン(NMP)100重量部に溶解させて絶縁層形成用組成物を製造した。このとき、前記絶縁層形成用組成物の粘度は6,000cPであった。
【0128】
実施例3:リチウム二次電池用絶縁層形成用組成物の製造
バインダー高分子としてポリビニリデンフルオリド(製品名:KF9700、製造社:Kureha、重量平均分子量:880,000)10.5重量部、着色剤としてベンジリデン系有機染料のyellow 081(BASF社製)0.1重量部をメチルピロリドン(NMP)100重量部に溶解させて絶縁層形成用組成物を製造した。このとき、前記絶縁層形成用組成物の粘度は12,000cPであった。
【0129】
比較例1:リチウム二次電池用絶縁層形成用組成物の製造
バインダー高分子としてポリビニリデンフルオリド(製品名:KF1100、製造社:Kureha、重量平均分子量:280,000)12重量部、着色剤としてベンジリデン系有機染料のyellow 081(BASF社製)0.1重量部をメチルピロリドン(NMP)100重量部に溶解させて絶縁層形成用組成物を製造した。このとき、前記絶縁層形成用組成物の粘度は670cPであった。
【0130】
比較例2:リチウム二次電池用絶縁層形成用組成物の製造
バインダー高分子としてポリビニリデンフルオリド(製品名:KF9700、製造社:Kureha、重量平均分子量:880,000)6重量部、着色剤として顔料(製品名:yellow 139、製造社:BASF)0.08重量部、分散剤としてCR−V(製造社:信越化学)1.5重量部をメチルピロリドン100重量部に溶解させることで、粘度が1,000cPである絶縁層形成用組成物を製造した。
【0131】
実験例
実験例1:SEM観察の評価
実施例1及び比較例1によって製造された絶縁層形成用組成物を用いてリチウム二次電池用正極を製造した。
【0132】
具体的に、正極活物質としてLiNi0.6Mn0.2Co0.2、導電材としてカーボンブラック、電極活物質層用バインダーとしてポリビニリデンフルオリド(PVdF)を重量比で97.3:1.5:1.2の割合で混合し、これを69重量%でNMP溶媒に添加することで、25℃での粘度が8,000cPである正極活物質スラリー組成物を準備した。
【0133】
その後、アルミニウム集電体上に前記正極活物質スラリー組成物を塗布して未乾燥正極活物質層を形成し、前記未乾燥正極活物質層と一部の領域で重畳するように前記アルミニウム集電体上に前記絶縁層形成用組成物を塗布して未乾燥絶縁層を形成した。
【0134】
その後、160℃で前記未乾燥正極活物質層及び前記未乾燥絶縁層を同時に乾燥(約3分間)してそれぞれ正極活物質層及び絶縁層を形成し、これを圧延してリチウム二次電池用正極を製造した。
【0135】
その後、正極の断面のうち正極活物質層と絶縁層の重畳領域の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、実施例1のSEM写真を図1に、比較例1のSEM写真を図2に示した。図1及び図2に示す通り、実施例1の正極は、絶縁層及び電極活物質層の重畳領域が優れた密着力によって形成され、浸食が発生しないことを確認することができる。しかし、比較例1の正極は、絶縁層及び電極活物質層の重畳領域に浸食が発生して製品への適用に難しさが生ずることを確認することができた。
【0136】
実験例2:電解液溶出の評価
アルミニウムホイル上に実施例1及び実施例2の絶縁層形成用組成物をコーティングし、5cm×5cmの大きさに切断し、これらを、LiPF 1.0モルが溶解され、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)を3:7の体積比で混合した非水電解液溶媒に18時間常温で含浸させ、着色剤が電解液に溶出されるのか否かを実験した。実験の後、実施例1の結果を図3に、実施例2の結果を図4にそれぞれ示した。
【0137】
図3及び図4に示す通り、実施例1の絶縁層形成用組成物は、着色剤が電解液に染み付くか溶出される現象が発生していないが、着色剤を用いた実施例2の絶縁層形成用組成物は、着色剤の電解液への溶出現象が多少発生することを確認した。
【0138】
実験例3:液安定性の評価
実施例1及び比較例2による絶縁層形成用組成物を常温(25℃)で31日間置いて組成物の液安定性を評価し、実施例1の観察結果を図5に、比較例1の観察結果を図6に示した。
【0139】
図5及び図6に示す通り、実施例1の絶縁層形成用組成物は、保管後31日が経過した後にも相分離が起こっていないため、液安定性に優れることを確認することができるが、比較例2の絶縁層形成用組成物は、時間が経つほど相分離が発生して安定性が低下したことを確認することができる。
【0140】
実験例4:コーティング性の評価
アルミニウムホイル上に実施例1及び実施例3の絶縁層形成用組成物を幅3.8mmでコーティング及び乾燥して絶縁層を形成し、表面検査機器((株)アンシス社製)で外観を観察した。実施例1の表面検査写真を図7に示し、実施例3の表面検査写真を図8に示した。
【0141】
図7及び図8に示す通り、実施例1及び実施例3の絶縁層形成用組成物は、粘度の水準が優秀であるため、大体コーティング性に優れるものと評価された。しかし、実施例1の場合、気泡を発生させることなく絶縁層が形成された反面、実施例3の場合、組成物の粘度が多少高いため、絶縁層内に気泡が多少発見された。
【0142】
実験例5:コーティング性の評価
アルミニウムホイル上に実施例1及び実施例3の絶縁層形成用組成物を幅3.8mmでコーティング及び乾燥して絶縁層を形成し、その外観を光学顕微鏡で観察した。実施例1の光学顕微鏡観察写真を図9に示し、実施例3の光学顕微鏡観察写真を図10に示した。図9及び図10において、黄色に見える部分が絶縁層形成用組成物のコーティング部分である。
【0143】
図9及び図10に示す通り、実施例1及び実施例3の絶縁層形成用組成物は、粘度の水準が優秀であるため、大体コーティング性に優れるものと評価された。
【0144】
実施例1の絶縁層形成用組成物で形成された絶縁層の場合、コーティング幅が均一であることを確認することができるが、実施例3は、粘度が多少高いため、コーティング幅の均一性が多少劣り、ウェーブ形状が形成されてアルミニウムホイルが露出されることを確認することができる。実施例1のコーティング面積に対し、実施例3のウェーブ形状によるアルミニウムホイルの露出面積は約30%であることに計算され、これにより、実施例3の場合、実施例1に比べてコーティング性が多少低下することを確認することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10