(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カルボキシル基を有する有機高分子化合物(A)とエポキシ樹脂(B)と、の反応物と、鱗片状粒子、楕球状粒子及び棒状粒子からなる群より選択される少なくとも1種の黒鉛粒子(C)と、を含有し、前記エポキシ樹脂(B)の含有量が、前記カルボキシル基を有する有機高分子化合物(A)の量に対して、体積比で0.3〜2.5であり、前記鱗片状粒子の場合には面方向、前記楕球状粒子の場合には長軸方向又は前記棒状粒子の場合には長軸方向が熱伝導シートの厚み方向に配向している、圧縮破壊強度が120℃で5〜16MPaである熱伝導シート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<熱伝導シート>
本発明の熱伝導シートは、カルボキシル基を有する有機高分子化合物(A)とエポキシ樹脂(B)との反応物と、鱗片状粒子、楕球状粒子又は棒状粒子からなる群より選択される少なくとも1種の黒鉛粒子(C)(以下、単に「黒鉛粒子(C)」と呼ぶことがある)と、を含有し、前記鱗片状粒子の場合には面方向、前記楕球状粒子の場合には長軸方向又は前記棒状粒子の場合には長軸方向が熱伝導シートの厚み方向に配向している、圧縮破壊強度が120℃で5〜16MPaである。
以下、本発明の熱伝導シートに用いられる材料を説明する。
【0016】
<有機高分子化合物(A)>
本発明に用いられるカルボキシル基を有する有機高分子化合物(A)(以下、単に「有機高分子化合物(A)」と呼ぶことや「(A)成分」と呼ぶことがある)は、1g中に、0.1〜1mmol、好ましくは0.3〜0.8mmol、より好ましくは0.4〜0.7mmolのカルボキシル基を有する。カルボキシル基の量が、0.1mmol以上であると膜強度及び圧縮復元性に優れ、1mmol以下であると柔軟性に優れる。
【0017】
本発明に用いられる有機高分子化合物(A)は、重量平均分子量が250000〜1000000であることが好ましく、より好ましくは300000〜700000、更に好ましくは400000〜600000である。重量平均分子量が、250000以上であると膜強度に優れ、1000000以下であると柔軟性に優れる。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定することができる。
【0018】
本発明に用いられる有機高分子化合物(A)は、ガラス転移温度(Tg)が、−20℃以下であることが好ましく、より好ましくは−70〜−20℃、更に好ましくは−50〜−30℃である。ガラス転移温度が、−20℃以下であると、柔軟性に優れる。
ガラス転移温度(Tg)は、動的粘弾性測定(引張)を行い、それによって導き出されるtanδより算出できる。
【0019】
本発明に用いられる有機高分子化合物(A)としては、1g中に0.1〜1mmolのカルボキシル基を有するものであれば特に制限はない。例えば、カルボキシル基を有する、アクリル酸ブチル、アクリロニトリル、及びアクリル酸との共重合で得られるアクリルゴムや、アクリロニトリル、ブタジエン、及びメタクリル酸との共重合体であるNBR等が挙げられる。
【0020】
有機高分子化合物(A)のカルボキシル基は、アクリル酸由来であることが好ましい。有機高分子化合物(A)のカルボキシル基がアクリル酸由来である場合、カルボキシル基の量は、次式で求められる。
(樹脂1g中に含まれるアクリル酸の量[g])/(アクリル酸の分子量)
【0021】
本発明に用いられる有機高分子化合物(A)としては、カルボキシル基含有アクリル酸エステル共重合樹脂(アクリル酸ブチル/アクリル酸エチル/アクリロニトリル/アクリル酸共重合体、ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HTR−280改2DR、又はHTR−811A改7DR)、カルボキシル基変性NBR(日本ゼオン株式会社製、商品名:Nippol 1072、又は、Nippol DN601)等が入手可能である。
有機高分子化合物(A)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0022】
有機高分子化合物(A)の含有量は、組成物全体積の20〜50体積%であることが好ましく、より好ましくは25〜40体積%、更に好ましくは25〜30体積%である。有機高分子化合物(A)の含有量が、25体積%以上であると柔軟性に優れ、50体積%以下であると熱伝導性に優れる。
【0023】
<エポキシ樹脂(B)>
本発明に用いられるエポキシ樹脂(B)(以下、(B)成分と呼ぶことがある)は、エポキシ当量が300以上であることが好ましく、より好ましくは300〜10000、更に好ましくは400〜700である。エポキシ当量が300以上であると柔軟性、靭性に優れ、熱伝導シートの柔軟性と強度の両立が図れる。
また、1分子中の末端エポキシ基が2〜5個であることが好ましく、より好ましくは2〜4個、更に好ましくは2〜3個である。1分子中の末端エポキシ基が2個以上であると圧縮強度に優れ、5個以下であると柔軟性に優れる。
【0024】
エポキシ樹脂(B)としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、及びナフタレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂(B)としては、例えば、以下の一般式(1)〜(12)に示されるエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0026】
一般式(1)〜(12)中のkは、1以上の整理数1以上50以下の整数であり、好ましくは1以上5以下の整数である。
【0027】
エポキシ樹脂(B)としては、例えば、高耐久性・柔軟強靭エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名:EPICLON EXA−4816)、柔軟強靭性液状エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名:EPICLON EXA−4850−150又はEPICLON EXA−4850−1000)、ダイマー酸変性エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、商品名:YD−172又はYD−173)、BPF型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、商品名:YDF−2001又はYDF−2004)、可とう性タイプエポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、商品名:JER 872)等が入手可能である。
【0028】
エポキシ樹脂(B)の含有量は、熱伝導シートの全体積の15〜45体積%であることが好ましく、より好ましくは20〜40体積%、更に好ましくは30〜40体積%である。エポキシ樹脂(B)の含有量が、15体積%以上であると圧縮強度に優れ、45体積%以下であると熱伝導性に優れる。
【0029】
エポキシ樹脂(B)の含有量は、カルボキシル基を有する有機高分子化合物(A)の量に対して、体積比で0.3〜2.5であることが好ましく、より好ましくは0.4〜2.0、更に好ましくは、0.5〜1.5である。エポキシ樹脂(B)の含有量が、有機高分子化合物(A)に対して0.3以上であると圧縮強度に優れ、2.5以下であると柔軟性に優れ、良好な熱伝導性が得られる傾向にある。
【0030】
本発明に用いられるエポキシ樹脂(B)は可とう性を有しているエポキシ樹脂が好ましい。本発明で得られる熱伝導シートは、エポキシ樹脂(B)が有するエポキシ基と有機高分子化合物(A)のカルボキシル基が架橋することで、圧縮強度に優れる熱伝導シートを得ることができる。エポキシ樹脂(B)が可とう性を有していると、熱伝導シートに良好な柔軟性が付与され、熱伝導性が向上する傾向にある。
また、エポキシ樹脂(B)のエポキシ基が有機高分子化合物(A)のカルボキシル基より過剰に存在している場合、未反応のエポキシ樹脂が熱伝導シート中に存在してもよい。
【0031】
エポキシ樹脂(B)の25℃における粘度は10000mPa・s以上であることが好ましく、より好ましくは20000〜5000000mPa・s、更に好ましくは100000〜2000000mPa・sである。また、エポキシ樹脂(B)は25℃で固体であってもよい。エポキシ樹脂(B)の25℃における粘度が10000mPa・s以上であると、高温高圧時に熱伝導シート中の未反応のエポキシ樹脂(B)が流動して熱伝導シートから染み出すことが抑制される傾向にある。エポキシ樹脂(B)は25℃で固体であってもよいが、熱伝導シートを作成する際の混練工程で溶融できることが好ましいため、融点は80℃以下であることが好ましい。
【0032】
<黒鉛粒子(C)>
本発明に用いられる黒鉛粒子(C)は、鱗片状粒子、楕球状粒子及び棒状粒子からなる群より選択される少なくとも1種である。熱伝導性の観点から、黒鉛粒子(C)は鱗片状粒子であることが好ましい。
黒鉛粒子(C)の結晶中の6員環面の配向方向は、鱗片状粒子の場合には面方向、楕球状粒子の場合には長軸方向又は棒状粒子の場合には長軸方向であることが好ましい。結晶中の6員環面の配向方向は、X線回折測定によって確認することができる。
【0033】
黒鉛粒子(C)の結晶中の6員環面の配向方向は、具体的には以下の方法で確認する。先ず、黒鉛粒子の鱗片状粒子の面方向、楕球状粒子の長軸方向又は棒状粒子の長軸方向が、シート又はフィルムの面方向に対して実質的に平行に配向した測定用サンプルシートを作製する。測定用サンプルシート調製の具体的な方法としては、10体積%以上の黒鉛粒子と樹脂との混合物をシート化する。ここで用いる「樹脂」とは、有機高分子化合物(A)及びエポキシ樹脂(B)を含む樹脂を使用できるが、非晶質樹脂のようなX線回折の妨げになるピークが現れない材料、また、形状を作ることが可能である材料であれば、樹脂でなくても用いることができる。この混合物のシートが、元の厚みの1/10以下となるようにプレスし、プレスしたシートを積層し、この積層体を更に1/10以下まで押しつぶす操作を3回以上繰り返す。この操作により、調製した測定用サンプルシート中では、黒鉛粒子が鱗片状粒子の場合には面方向、楕球状粒子の場合には長軸方向又は棒状粒子の場合には長軸方向が、測定用サンプルシートの面方向に対し実質的に平行に配向した状態になる。
【0034】
上記のように調製した測定用サンプルシートの表面に対し、X線回折測定を行うと、2θ=77°付近に現れる黒鉛の(110)面に対応するピークの高さを、2θ=27°付近に現れる黒鉛の(002)面に対応するピークの高さで割った値が0〜0.02となる。
【0035】
このことより、本発明において、「結晶中の6員環面が鱗片状粒子の面方向、楕球粒子の長軸方向又は棒状粒子の長軸方向に配向している」とは、黒鉛粒子(C)、有機高分子化合物(A)及びエポキシ樹脂(B)を含有した組成物をシート化したものの表面に対し、X線回折測定を行い、2θ=77°付近に現れる黒鉛の(110)面に対応するピークの高さを、2θ=27°付近に現れる黒鉛の(002)面に対応するピークの高さで割った値が0〜0.02となる状態をいう。
【0036】
本発明に用いられる黒鉛粒子(C)は、例えば、鱗片黒鉛粉末、人造黒鉛粉末、薄片化黒鉛粉末、酸処理黒鉛粉末、膨張黒鉛粉末、及び炭素繊維フレーク等の鱗片状、楕球状又は棒状の黒鉛粒子を用いることができる。これらの中でも、有機高分子化合物(A)と混合した際に、鱗片状の黒鉛粒子になりやすいもの、具体的には、鱗片黒鉛粉末、薄片化黒鉛粉末、膨張黒鉛粉末の鱗片状黒鉛粒子が、配向させやすく、粒子間接触も保ちやすく、且つ高い熱伝導性を得やすいために好ましい。黒鉛粒子(C)は、1種を単独でもちいてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
黒鉛粒子(C)の長径の平均値は、特に制限されないが、熱伝導性の観点から、好ましくは0.1〜5mm、より好ましくは0.2〜2mm、更に好ましくは0.5〜1mmである。また、黒鉛粒子(C)の長径の平均値は、熱伝導シートの厚みに対して1〜5倍が好ましく、更には2〜4倍がより好ましい。
【0038】
尚、本発明において「長径の平均値」とは、熱伝導シートの厚み方向における断面を、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察し、任意の50個の黒鉛粒子について見えている方向から長径を測定し、平均値を求めた結果をいう。
【0039】
黒鉛粒子(C)の含有量は、特に制限されないが、好ましくは熱伝導シートの全体積の10〜50体積%、より好ましくは30〜45体積%である。黒鉛粒子(C)の含有量が、10体積%以上であると熱伝導性に優れ、50体積%以下であると柔軟性に優れる傾向にある。
【0040】
<熱伝導シートの物性>
本発明の熱伝導シートは、圧縮破壊強度が、120℃で5〜16MPaであることが好ましく、より好ましくは6〜12MPa、更に好ましくは7〜10MPaである。圧縮破壊強度が16MPa以下であると、良好な柔軟性が得られる傾向にあり、被着体との密着性が向上し、良好な熱伝導特性が得られる傾向にある。また、5MPa以上であると高温高圧条件になった際でも熱伝導シートの形状を維持できる傾向にある。
【0041】
なお、本明細書において、「圧縮破壊強度と」とは、熱伝導シート表面での厚み方向の圧縮試験によって得られる、歪み-圧縮応力曲線の傾きの編曲点を圧縮破壊点とし、その応力を圧縮破壊強度と定義した(
図1参照)。
【0042】
圧縮試験は以下のようにして行える。
恒温槽が付属している圧縮試験装置(INSTRON 5948 Micro Tester 、INSTRON社製)を用いて、直径6mmの円型に切り抜いた、面積28.26mm
2の熱伝導シートを1mm厚の銅板に挟み、恒温槽の温度120℃において、熱伝導シートの厚み方向、つまり黒鉛粒子(C)の配向方向に対して2mm/minの変位速度で最大圧力が16MPaになるまで荷重を加え、変位(mm)と荷重(N)を測定した。変位(mm)/厚み(mm)で求められる歪み(無次元)を横軸に、荷重(N)/面積(mm
2)で求められる応力(MPa)を縦軸に示した歪み−応力曲線傾きの変曲点を圧縮破壊点として、その応力を圧縮破壊強度(MPa)とした。
【0043】
圧縮破壊強度は、有機高分子化合物(A)中のカルボキシル基の量を増やす、添加する有機高分子化合物(A)の量を増やす、又は添加するエポキシ樹脂(B)の量を増やすことにより上昇する傾向があり、有機高分子化合物(A)中のカルボキシル基の量を減らす、添加する有機高分子化合物(A)の量を減らす、又は、添加するエポキシ樹脂(B)の量を減らすことにより減少する傾向がある。
【0044】
本発明の熱伝導シートの柔軟性が向上すると、被着体との密着性が向上し、熱伝導性が向上する。熱伝導特性は、熱伝導シートを被着体(発熱体及び放熱体)への圧着する際の圧力条件(圧力、温度、時間)によって大きく変わる物性である。本発明では熱伝導性の指標としては、25℃、2MPa条件下における熱抵抗を用いた。
熱抵抗は以下のようにして測定することができる。面積A1(cm
2)に切り抜いた熱伝導シートを、発熱体であるトランジスタ(2SC2233)と放熱体である銅ブロックとの間に挟み、トランジスタを2MPaの圧力で押し付けながら電流を通じた際のトランジスタの温度T1(℃)及び銅ブロックの温度T2(℃)を測定し、測定値と印加電力W1(W)、から、次式により熱抵抗値X(K・cm
2/W)を算出した。
X=(T1−T2)×A1/W1
【0045】
熱伝導シートのポンプアウト評価試験としては、サーマルサイクル試験前後の熱伝導シートの変形量で判断した。熱伝導シートを、セラミック基板と銅板に挟んで、3MPaの荷重をかけながら、−40℃5分保持、25℃5分保持、125℃5分保持、25℃5分保持を1サイクルとして、2000サイクル試験した。試験前の一辺の長さの最大値をd0、試験後の一辺の長さの最大値をd1として、d1/d0×100で表される寸法変化率(%)で評価した。寸法変化率が120%以下ならポンプアウトなしと判断した。
【0046】
<熱伝導シートの製造方法>
本発明における熱伝導シートの製造方法は、特に制限はないが、例えば、下記のように作製することができる。
(ア)混練工程
先ず、カルボキシル基を有する有機高分子化合物(A)と、エポキシ樹脂(B)と、黒鉛粒子(C)とを、混練し、組成物を得る。混練の際は加熱をしてもよく、例えば、80〜100℃で加熱することが好ましい。混練時間としても、特に限定されるものではなく、例えば、15〜45分とすることができる。
混練方法は特に制限されるものではないが、例えば、ニーダー混練機による混合方法、及びロール混練機による混合方法等が挙げられる。
【0047】
前記混練は、十分に混練され且つ有機高分子化合物(A)とエポキシ樹脂(B)がこの時点では反応しない条件で行うことが好ましい。具体的には、有機高分子化合物(A)及び反応性官能基がエポキシ基であるエポキシ樹脂(B)を用いる場合は、80〜85℃で15〜30分の条件で混練することが好ましい。
【0048】
(イ)1次シート作製工程
1次シート作製工程は、先の工程で得られた組成物をシート化できれば、いずれの方法であってもよく、特に限定されない。例えば、圧延成形、プレス成形、及び押し出し成形からなる群から選択される少なくとも1つの成形方法を用いて実施することが好ましい。これらの方法を選択することで、得られる1次シートの主たる面に対して、ほぼ平行な方向に黒鉛粒子(C)が鱗片状粒子の場合には面方向、楕球状粒子の場合には長軸方向又は棒状粒子の場合には長軸方向が配向する。黒鉛粒子(C)の配向性の観点からは、圧延成形又はプレス成形が好ましい。
例えば、前記組成物を5〜10MPaの圧力でプレスし、主たる面に関してほぼ平行な方向に黒鉛粒子(C)が鱗片状粒子の場合には面方向、楕球状粒子の場合には長軸方向又は棒状粒子の場合には長軸方向が配向した1次シートを得ることができる。
組成物を5〜10MPaの圧力で押し付けて作製された1次シートの厚みは、熱伝導性の観点から黒鉛粒子(C)の長径の平均値の1〜20倍が好ましい。1次シートの厚みは、押し付ける圧力により調整できる。
【0049】
1次シート面内での前記黒鉛粒子(C)の向きは、組成物を成形する際に組成物の流れる方向を調整することによって制御できる。つまり、組成物をプレスする方向、組成物を圧延ロールに通す方向、又は組成物を押し出す方向を調整することで、前記黒鉛粒子(C)の向きを制御できる。
【0050】
また、1次シートを作製する際、有機高分子化合物(A)、エポキシ樹脂(B)及び黒鉛粒子(C)を含有する組成物の成形前の形状が塊状物である場合は、塊状物の厚み(d0)に対し、成形後の1次シートの厚み(dp)が、dp/d0<0.15になるようプレス成形、又は圧延成形するか、また、押し出し成形機の出口における1次シート断面形状に相当する形状調整によって、1次シートの横幅(W)に対し厚み(dp’)が、dp’/W<0.15となるように成形することが好ましい。dp/d0<0.15、又はdp’/W<0.15となるよう成形することにより、前記黒鉛粒子(C)が1次シートの主たる面に関して平行方向に配向させ易くなる。
【0051】
(ウ)積層体作製工程
積層体作製工程は、先の工程で得られた1次シートの積層体を形成する。積層体は、例えば、独立した複数枚の1次シートを順に重ね合わせた形態に限らず、1枚の1次シートを切断せずに折り畳んだ形態であっても、又は1次シートの1枚を捲回させた形態であってもよい。
1次シートを重ねて積層する際は、1次シート面内での黒鉛粒子(C)の向きを揃えて積層する。積層する際の1次シートの形状は、特に制限はなく、例えば、矩形状の1次シートを積層した場合は、角柱状の成形体が得られ、円形状の一次シートを積層した場合は、円柱状の成形体が得られる。1次シートを積層後、積層方向に0.1〜0.5MPaの圧力で押し付けながら、120〜170℃で2〜8時間加熱し、積層体を得る。
1次シートを積層する際の圧力は、この後の工程において積層体の厚み方向に対し、0〜30度の角度でスライスする都合上、スライス面がつぶれて所要面積を下回らない程度に弱く、且つシート間がうまく接着する程度に強くなるよう調整される。好ましくは、0.1〜0.5MPaの圧力範囲で接着する。
【0052】
また、前記1次シートを、前記黒鉛粒子の配向方向を軸にして、0.1〜0.5MPaの圧力で押し付けながら捲回して、120〜170℃で2〜8時間加熱し、成形体を得てもよい。120〜170℃で2〜8時間加熱することにより、有機高分子化合物(A)とエポキシ樹脂(B)が反応し、硬化する。
【0053】
加熱に関しては、前工程で反応させなかった前記有機高分子化合物(A)とエポキシ樹脂(B)を、確実に反応させる条件であることが必要である。具体的には、150〜170℃で、6〜8時間の条件で加熱することが好ましい。
【0054】
(エ)スライス工程
次いで、前記積層体の厚み方向とは垂直な方向に0.1〜0.5MPaの圧力で押し付けながら、積層体の厚み方向に対し0〜30度の角度で、−20〜20℃の温度範囲でスライスし、熱伝導シートを得る。
【0055】
スライスする際の圧力及び角度は、熱伝導性の観点から積層体の厚み方向とは垂直な方向に0.1〜0.5MPaの圧力及び積層体の厚み方向に対し0〜30度の角度であることが好ましい。更に、円形状の1次シートを積層した円柱状の成形体の場合は、上記圧力及び角度の範囲内で、かつら剥きのようにスライスしてもよい。
【0056】
スライスする方法は、例えば、マルチブレード法、レーザー加工法、ウォータージェット法、ナイフ加工法等が挙げられるが、熱伝導シートの厚みの平行を保ちやすい点で、ナイフ加工法が好ましい。しかし、いずれにおいても、0.1〜0.5MPaの圧力をかけて押し付ける盤面を有する必要がある。
【0057】
スライスする際の切断具は特に制限はないが、スリットを有する平滑な盤面と、このスリット部より突出した刃部とを有するスライス部材であって、前記刃部が、熱伝導シートの所望の厚みに応じてスリット部からの突出長さが調節可能であるものを使用すると、得られる熱伝導シートの表面近傍の黒鉛粒子の配向を乱し難く、且つ所望の厚みが薄い熱伝導シートも作製し易いので好ましい。
【0058】
具体的には、上記スライス部材は、鋭利な刃を備えたカンナ又はスライサーを用いることが好ましい。これらの刃は、熱伝導シートの所望の厚みに応じて前記スリット部からの突出長さを調節可能とすることで、容易に所望の厚みとすることが可能である。
スライスする際の積層体の温度範囲は、スライスのし易さの観点から、好ましくは−20〜20℃、より好ましく−10〜0℃である。
【0059】
熱伝導シートの厚さは、用途等によって適宜設定されるが、好ましくは0.1〜3mm、より好ましくは0.2〜1mmである。熱伝導シートの厚さが、0.1mm以上であるとシートとして取り扱い易く、3mm以下であると放熱効果に優れる。また、前記成形体のスライス幅が熱伝導シートの厚さとなり、スライス面が熱伝導シートにおける発熱体や放熱体との当接面となる。
【0060】
<放熱装置>
本発明での放熱装置は、本発明の熱伝導シートを、発熱体と放熱体の間に介在させてなるものである。発熱体としては、例えば、半導体チップ、半導体パッケージ、パワーモジュール等が挙げられる。放熱体としては、例えば、ヒートスプレッダ、ヒートシンク、水冷パイプ等が挙げられる。
【0061】
放熱装置の一例を
図2を用いてより具体的に説明する。熱伝導シート1を、基板2に設置された発熱体としての半導体チップ3に対しその一方の面を密着させ、他方の面を放熱体としてのヒートスプレッダ4に密着させている。
図2に示すように、熱伝導シート1はシート1枚に対し、発熱体及び放熱体が各々1個である必要はなく、1対複数でも複数対複数でもよい。なお、前記ヒートスプレッダ4は、シール材5により基板2に固着され、熱伝導シート1と半導体チップ3及びヒートスプレッダ4との密着性を、押しつけることで向上させている。
【0062】
放熱装置の一例を
図3を用いてより具体的に説明する。熱伝導シート6を、発熱体としてのパワーモジュール7のモジュール基板8に対しその一方の面を密着させ、他方の面を放熱体としてのヒートシンク9に密着させている。
図面に示すように、熱伝導シート6はシート1枚に対し、発熱体及び放熱体が各々1個である必要はなく、1対複数でも複数対複数でもよい。前
記パワーモジュール7は、モジュール基板8、半導体チップ10、チップ基板11、接着材12、封止材13、等から構成される。パワーモジュール7とヒートシンク9はネジ等で固定されており、熱伝導シート6とパワーモジュール7及びヒートシンク9との密着性を、圧力をかけることで向上させている。
【0063】
熱伝導シートにかかる初期の圧力としては特に限定されないが、熱伝導シートの密着性を向上させるためには高い圧力が好ましい。一方で、発熱体や放熱体が破壊する圧力、又は熱伝導シートが潰れる圧力より小さい圧力である必要がある。例えば、0.5〜12MPaであることが好ましく、より好ましくは1〜7MPa、更に好ましくは2〜5MPaである。また、この放熱装置は使用している間に、熱の影響を受け、構成部材の熱膨張の差や、反り等の変形により、熱伝導シートにかかる圧力は変動し、上記の圧力の範囲よりもより高い圧力が熱伝導シートにかかる可能性がある。
【0064】
この際に用いられる発熱体としては、その表面温度が200℃を超えないものが好ましい。本発明の熱伝導シートが、特に好適に使用できる温度範囲は、−10〜120℃であり、半導体パッケージ、ディスプレイ、LED、及び電灯等が、好適な発熱体の例として挙げられる。
【0065】
一方、放熱体としては、例えば、アルミニウム又は銅のフィン、板等を利用したヒートシンク、ヒートパイプに接続されているアルミニウム又は銅のブロック、内部に冷却液体をポンプで循環させているアルミニウム又は銅のブロック、ペルチェ素子、及びこれを備えたアルミニウム又は銅のブロックなどが使用できる。
【0066】
本発明の放熱装置は、発熱体と放熱体に、本発明の熱伝導シートを接触させることで得られる。発熱体、熱伝導シート及び放熱体を充分に密着させた状態で固定することが好ましい。発熱体と放熱体に熱伝導シートを接触させる方法に特に制限はないが、密着を持続させる観点から、ばねを介してねじ止めする方法、又はクリップで挟む方法等のように、押し付ける力が持続する接触方法が好ましい。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。尚、各実施例において、圧縮破壊強度、熱抵抗、及びポンプアウト評価試験は以下の方法により求めた。
【0068】
(圧縮破壊強度の測定)
恒温槽が付属している圧縮試験装置(INSTRON 5948 Micro Tester (INSTRON社製))を用いて、直径6mmの円型に切り抜いた、面積28.26mm
2の熱伝導シートを1mm厚の銅板に挟み、恒温槽の温度120℃において、熱伝導シートの厚み方向に対して2mm/minの変位速度で最大圧力が16MPaになるまで荷重を加え、変位(mm)と荷重(N)を測定した。変位(mm)/厚み(mm)で求められる歪み(無次元)を横軸に、荷重(N)/面積(mm
2)で求められる応力(MPa)を縦軸に示した歪み−応力曲線傾きの変曲点を圧縮破壊点として、その応力を圧縮破壊強度(MPa)とした。
【0069】
(熱抵抗の測定)
熱伝導シートを、10mm角に切り抜き、発熱体であるトランジスタ(2SC2233)と放熱体である銅ブロックとの間に挟み、トランジスタを2MPaの圧力で押し付けながら電流を通じた際のトランジスタの温度T1(℃)及び銅ブロックの温度T2(℃)を測定し、測定値と印加電力W1(W)、から、熱抵抗値X(K・cm
2/W)を算出した。
X=(T1−T2)/W1
【0070】
(ポンプアウト評価試験)
熱伝導シートを、20mm角に切り抜き、厚み0.5mmのセラミック基板と厚み1mmの銅板に挟んで、バネで3MPaの荷重をかけ、冷熱衝撃装置(TSA−71H−W型、エスペック株式会社製)に投入し、−40℃5分保持、25℃5分保持、125℃5分保持、25℃5分保持を1サイクルとして、2000サイクル試験した。試験前後の一辺の長さは標準ABSデジマチックキャリパ(株式会社ミツトヨ製、CD−15CPX)で測定した。試験前の一辺の長さの最大値をd0、試験後の一辺の長さの最大値をd1として、寸法変化率(%)をd1/d0×100で算出した。寸法変化率が120%以下ならポンプアウトなしと判断した。
【0071】
(実施例1)
有機高分子化合物(A)としてカルボキシル基含有アクリル酸エステル共重合樹脂(アクリル酸ブチル/アクリル酸エチル/アクリロニトリル/アクリル酸共重合体、ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HTR−280改2DR、カルボキシル基含有量:0.69mmol/g、重量平均分子量:53万、Tg=−39℃、比重1.06)432g、カルボキシル基変性NBR(日本ゼオン株式会社製、商品名:Nippol 1072、重量平均分子量:25万、カルボキシル基濃度:0.75KOHmg/g、比重0.98)224g、カルボキシル基変性NBR(日本ゼオン株式会社製、商品名:Nippol DN601、重量平均分子量:6.8万、カルボキシル基濃度:0.75KOHmg/g、比重0.98)224g、エポキシ樹脂(B)としてエポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名:EPICLON EXA−4816、2官能、エポキシ当量:403g/eq.、比重1.2)1391g、黒鉛粒子(C)として鱗片状の膨張黒鉛粉末(日立化成株式会社製、長径の平均値:500〜1000μm、比重2.1)2230gを、100℃で30分、ニーダー混練機(株式会社モリヤマ製、DS3−SGHM−E型加圧双腕型ニーダー)で混練し、組成物を得た。
【0072】
組成物全体積に対する各成分の配合比を、各成分の比重から計算したところ、カルボキシル基を有する有機高分子化合物(A)が28.0体積%、エポキシ樹脂(B)が37.6体積%、黒鉛粒子(C)が34.4体積%であった。また、エポキシ樹脂(B)の含有量は、カルボキシル基を有する有機高分子化合物(A)の含有量に対して、体積比で1.3であった。
【0073】
得られた組成物を50g程度の塊に分割し、押し出し成形機(株式会社パーカー製、商品名:HKS40−15型押し出し機)及びロール成形機(日立機械エンジニアリング株式会社製、商品名:V2S−SR型シーティング熱ロール機)を用い、厚さ2mmの1次シートを得た。
【0074】
得られた1次シートを、5cm角にカッターで切り出し、切り出したシートを150枚積層し、積層方向に0.3MPaの圧力をかけながら、170℃で、8時間加熱し、厚さ30cmの積層体を得た。
【0075】
次いで、この積層体をドライアイスで−10℃に冷却した後、5cm×30cmの積層断面を、0.3MPaの圧力で押し付けながら、木工用スライサー(株式会社丸仲鐵工所製、商品名:超仕上げかんな盤スーパーメカ、スリット部からの刀部の突出長さ:0.11mm)を用いてスライス(積層対の厚み方向に対して0度の角度でスライス)し、縦5cm×横30cm×厚さ0.15mmの熱伝導シート(I)を得た。
【0076】
この熱伝導シート(I)の物性値を求めたところ、圧縮破壊強度は5.2MPa、熱抵抗は0.07K・cm
2/Wであった。この熱伝導シート(I)の寸法変化率は112%であり、ポンプアウト評価試験結果は、変位量ポンプアウト「無」であった。
【0077】
(実施例2)
有機高分子化合物(A)としてカルボキシル基含有アクリル酸エステル共重合樹脂(アクリル酸ブチル/アクリル酸エチル/アクリロニトリル/アクリル酸共重合体、ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HTR−280改2DR、カルボキシル基含有量:0.69mmol/g、重量平均分子量:53万、Tg=−39℃、比重1.06)404g、カルボキシル基変性NBR(日本ゼオン株式会社製、商品名:Nippol 1072、重量平均分子量:25万、カルボキシル基濃度:0.75KOHmg/g、比重0.98)210g、カルボキシル基変性NBR(日本ゼオン株式会社製、商品名:Nippol DN601、重量平均分子量:6.8万、カルボキシル基濃度:0.75KOHmg/g、比重0.98)210g、エポキシ樹脂(B)としてダイマー酸変性エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、商品名:YD−172、2官能、エポキシ当量:600g/eq.、比重1.2)1300g、黒鉛粒子(C)として鱗片状の膨張黒鉛粉末(日立化成株式会社製、長径の平均値:500〜1000μm、比重2.1)2377gを、100℃で30分、ニーダー混練機(株式会社モリヤマ製、DS3−SGHM−E型加圧双腕型ニーダー)で混練し、組成物を得た。
【0078】
組成物全体積に対する各成分の配合比を、各成分の比重から計算したところ、カルボキシル基を有する有機高分子化合物(A)が26.8体積%、エポキシ樹脂(B)が35.8体積%、黒鉛粒子(C)が37.4体積%であった。また、また、エポキシ樹脂(B)の含有量は、カルボキシル基を有する有機高分子化合物(A)の含有量に対して、体積比で1.3であった。
以下、実施例1と同様に操作し、縦5cm×横30cm×厚さ0.15mmの熱伝導シート(II)を得た。
【0079】
この熱伝導シート(II)の物性値を求めたところ、圧縮破壊強度は5.6MPa、熱抵抗は0.08K・cm
2/Wであった。この熱伝導シート(II)の寸法変化率は111%であり、ポンプアウト評価試験結果は、ポンプアウト「無」であった。
【0080】
(実施例3)
有機高分子化合物(A)としてカルボキシル基含有アクリル酸エステル共重合樹脂(アクリル酸ブチル/アクリル酸エチル/アクリロニトリル/アクリル酸共重合体、ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HTR−280改2DR、カルボキシル基含有量:0.69mmol/g、重量平均分子量:53万、Tg=−39℃、比重1.06)404g、カルボキシル基変性NBR(日本ゼオン株式会社製、商品名:Nippol 1072、重量平均分子量:25万、カルボキシル基濃度:0.75(KOHmg/g)、比重0.98)210g、カルボキシル基変性NBR(日本ゼオン株式会社製、商品名:Nippol DN601、重量平均分子量:6.8万、カルボキシル基濃度:0.75(KOHmg/g)、比重0.98)210g、エポキシ樹脂(B)としてエポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名:EPICLON EXA−4816、2官能、エポキシ当量:403g/eq.、比重1.2)1300g、黒鉛粒子(C)として鱗片状の膨張黒鉛粉末(日立化成株式会社製、長径の平均値:500〜1000μm、比重2.1)2377gを、100℃で30分、ニーダー混練機(株式会社モリヤマ製、DS3−SGHM−E型加圧双腕型ニーダー)で混練し、組成物を得た。
【0081】
組成物全体積に対する各成分の配合比を、各成分の比重から計算したところ、カルボキシル基を有する有機高分子化合物(A)が26.8体積%、エポキシ樹脂(B)が35.8体積%、黒鉛粒子(C)が37.4体積%であった。また、また、エポキシ樹脂(B)の含有量は、カルボキシル基を有する有機高分子化合物(A)の含有量に対して、体積比で1.3であった。
以下、実施例1と同様に操作し、縦5cm×横30cm×厚さ0.15mmの熱伝導シート(III)を得た。
【0082】
この熱伝導シート(III)の物性値を求めたところ、圧縮破壊強度は7.3MPa、熱抵抗は0.06K・cm
2/Wであった。この熱伝導シート(III)の寸法変化率は103%であり、ポンプアウト評価試験結果は、ポンプアウト「無」であった。
【0083】
(実施例4)
有機高分子化合物(A)としてカルボキシル基含有アクリル酸エステル共重合樹脂(アクリル酸ブチル/アクリル酸エチル/アクリロニトリル/アクリル酸共重合体、ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HTR−280改2DR、カルボキシル基含有量:0.69mmol/g、重量平均分子量:53万、Tg=−39℃、比重1.06)1305g、エポキシ樹脂(B)としてダイマー酸変性エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、商品名:YD−172、2官能、エポキシ当量:600g/eq.、比重1.2)817g、黒鉛粒子(C)として鱗片状の膨張黒鉛粉末(日立化成株式会社製、長径の平均値:500〜1000μm、比重2.1)2377gを、100℃で30分、ニーダー混練機(株式会社モリヤマ製、DS3−SGHM−E型加圧双腕型ニーダー)で混練し、組成物を得た。
【0084】
組成物全体積に対する各成分の配合比を、各成分の比重から計算したところ、カルボキシル基を有する有機高分子化合物(A)が40.4体積%、エポキシ樹脂(B)が22.4体積%、黒鉛粒子(C)が37.2体積%であった。また、また、エポキシ樹脂(B)の含有量は、カルボキシル基を有する有機高分子化合物(A)の含有量に対して、体積比で0.6であった。
以下、実施例1と同様に操作し、縦5cm×横30cm×厚さ0.15mmの熱伝導シート(IV)を得た。
【0085】
この熱伝導シート(IV)の物性値を求めたところ、圧縮破壊強度は9.3MPa、熱抵抗は0.12K・cm
2/Wであった。この熱伝導シート(IV)の寸法変化率は102%であり、ポンプアウト評価試験結果は、ポンプアウト「無」であった。
【0086】
実施例1〜実施例4は圧縮破壊強度が5〜16MPaであり、3MPaにおけるサーマルサイクル試験で評価したポンプアウト評価試験においていずれもポンプアウトしない、十分な強度を有していた。
【0087】
(比較例1)
有機高分子化合物(A)としてカルボキシル基含有アクリル酸エステル共重合樹脂(アクリル酸ブチル/アクリル酸エチル/アクリロニトリル/アクリル酸共重合体、ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HTR−280改2DR、カルボキシル基含有量:0.69mmol/g、重量平均分子量:53万、Tg=−39℃、比重1.06)404g、カルボキシル基変性NBR(日本ゼオン株式会社製、商品名:Nippol 1072、重量平均分子量:25万、カルボキシル基濃度:0.75KOHmg/g、比重0.98)210g、カルボキシル基変性NBR(日本ゼオン株式会社製、商品名:Nippol DN601、重量平均分子量:6.8万、カルボキシル基濃度:0.75KOHmg/g、比重0.98)210g、エポキシ樹脂(B)としてビスフェノールF型エポキシ(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:EX−211、2官能、エポキシ当量:138g/eq.)75g、黒鉛粒子(C)として鱗片状の膨張黒鉛粉末(日立化成株式会社製、長径の平均値:500〜1000μm)2377g、カルボキシル基を含まない有機高分子化合物として、ポリブテン(日油株式会社製、商品名:ポリブテン 200N、比重0.91)1225gを、100℃で30分、ニーダー混練機(株式会社モリヤマ製、DS3−SGHM−E型加圧双腕型ニーダー)で混練し、組成物を得た。
【0088】
組成物全体積に対する各成分の配合比を、各成分の比重から計算したところ、カルボキシル基を含む有機高分子化合物(A)が24.2体積%、エポキシ樹脂(B)が2.0体積%、黒鉛粒子(C)が33.7体積%であった。また、エポキシ樹脂(B)の含有量は、カルボキシル基を有する有機高分子化合物(A)の含有量に対して、体積比で0.1であった。
以下、実施例1と同様に操作し、縦5cm×横30cm×厚さ0.15mmの熱伝導シート(V)を得た。
【0089】
この熱伝導シート(V)の物性値を求めたところ、圧縮破壊強度は3.7MPa、熱抵抗は0.06K・cm
2/Wであった。この熱伝導シート(V)の寸法変化率は125%であり、ポンプアウト評価試験結果は、ポンプアウト「有」であった。熱抵抗が低い値を示していることから、柔軟性が損なわれず、熱伝導性には優れているが、圧縮破壊強度が低いために、ポンプアウトの課題を解決できなかった。
【0090】
(比較例2)
有機高分子化合物(A)としてカルボキシル基含有アクリル酸エステル共重合樹脂(アクリル酸ブチル/アクリル酸エチル/アクリロニトリル/アクリル酸共重合体、ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HTR−280改2DR、カルボキシル基含有量:0.69mmol/g、重量平均分子量:53万、Tg=−39℃、比重1.06)404g、カルボキシル基変性NBR(日本ゼオン株式会社製、商品名:Nippol 1072、重量平均分子量:25万、カルボキシル基濃度:0.75(KOHmg/g)、比重0.98)210g、カルボキシル基変性NBR(日本ゼオン株式会社製、商品名:Nippol DN601、重量平均分子量:6.8万、カルボキシル基濃度:0.75(KOHmg/g)、比重0.98)210g、エポキシ樹脂(B)としてビスフェノールF型エポキシ(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:EX−211、2官能、エポキシ当量:138g/eq.、比重1.1)1300g、黒鉛粒子(C)として鱗片状の膨張黒鉛粉末(日立化成株式会社製、長径の平均値:500〜1000μm、比重2.1)2377gを、100℃で30分、ニーダー混練機(株式会社モリヤマ製、DS3−SGHM−E型加圧双腕型ニーダー)で混練し、組成物を得た。
【0091】
組成物全体積に対する各成分の配合比を、各成分の比重から計算したところ、カルボキシル基を含む有機高分子化合物(A)が26.0体積%、エポキシ樹脂(B)が37.8体積%、黒鉛粒子(C)が36.2体積%であった。また、また、エポキシ樹脂(B)の含有量は、カルボキシル基を含む有機高分子化合物(A)の含有量に対して、体積比で1.5であった。
以下、実施例1と同様に操作し、縦5cm×横30cm×厚さ0.15mmの熱伝導シート(VI)を得た。
【0092】
この熱伝導シート(VI)の物性値を求めたところ、圧縮破壊強度は4.1MPa、熱抵抗は0.06K・cm
2/Wであった。この熱伝導シート(VI)の寸法変化率は123%であり、ポンプアウト評価試験結果は、ポンプアウト「有」であった。熱抵抗が低い値を示していることから、柔軟性が損なわれず、熱伝導性には優れているが、圧縮破壊強度が低いために、ポンプアウトの課題を解決できなかった。