(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、セメント製造設備が備えるセメント焼成炉(セメントロータリーキルン)は、運転管理及びクリンカ等の被加熱物の焼成度を管理する上で、被加熱物の温度計測をすることを要する。セメント焼成炉のような粉塵濃度が高く、連続処理を行う炉内における被加熱物の温度計測においては、非接触で温度が計測できる放射温度計が用いられている。
【0003】
しかし、放射温度計では、計測対象である被加熱物と観測者の間に粉塵があると、粉塵による放射光の減衰及び粉塵自体からの放射光が影響し、被加熱物の温度を正確に計測できないという問題がある。
【0004】
粉塵濃度が高い炉内の温度計測に係る上記問題は、セメント焼成炉以外の他の焼成炉等においても当然起こり得る。このような問題を解消するため、例えば、煤塵濃度が高い炉内において、溶融スラグの液面温度を確実に計測することができる温度計測方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1で提案されている方法では、炉内に収容された溶融スラグの液面から放射される輻射光のうち、中間赤外域又は遠赤外域の輻射光を光電気素子に集光し、入射する輻射光の強度に応じた振幅の出力電圧を光電気素子から発生させ、この出力電圧値とプランクの輻射則から上記溶融スラグの液面温度を決定している。また、この温度計測方法では、2以上の異なる波長の輻射光が用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で提案されている方法では、対象としている粉塵の粒子径が1〜2μmであり、セメント焼成炉等における粉塵と比較すると非常に微細である。そのため、当該方法をそのままセメント焼成炉等における粉塵に適用してクリンカの温度計測等に使用することはできない。
【0007】
そして、セメント焼成炉において、放射温度計を用いる温度計測は、セメント焼成炉の出口側の最高温度に到達する近傍一点のみを計測していたので、上記粉塵による問題と相まって計測精度に難点がある。また、セメント焼成炉の運転管理は、炉内の計測した一点の温度を頼りに行うので、運転管理が十分であるとはいえない。運転管理が十分でないと、何らかの原因で発生した場合、炉内温度変動の検知が遅れることによって、セメント焼成炉の運転を安定させる操作が遅れてしまうため、不安定な状況からの回復に時間がかかり、クリンカ焼成度(品質)を維持することが困難となる。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、高温状態にある被加熱物の温度を精度よく計測できる炉内温度計測方法及び炉内監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下のものを提供する。
[1]長さがL(m)及び外径がD(m)であるセメント焼成炉の炉内温度計測方法であって、保護管を有する熱電対温度計を
、前記Dに対する前記セメント焼成炉の出口端
からの長さの比が8以上15以下
となる位置に配置して、前記セメント焼成炉内の被加熱物の温度を計測する炉内温度計測方法。
[2]前記熱電対温度計は、前記セメント焼成炉の出口端より同一距離であって、前記セメント焼成炉の周方向に複数個設けられている[1]の炉内温度計測方法。
[3]前記セメント焼成炉の内壁には耐火煉瓦が設けられており、前記耐火煉瓦は、前記セメント焼成炉の周方向に複数分割され内壁に装着固定された煉瓦止鉄板によって位置が固定され、前記熱電対温度計は、分割された前記煉瓦止鉄板の間から前記セメント焼成炉内に挿入されている[1]又は[2]の炉内温度計測方法。
[4]前記保護管の外径がD
t(mm)であり、前記熱電対温度計の挿入距離L
t(mm)は、前記耐火煉瓦のセメント焼成炉内部側表面から前記保護管の先端が2D
t以上出る[3]の炉内温度計測方法。
[5]前記保護管の材質は、SUS310s、カンタル、インコネル及び窒化珪素から選ばれる少なくとも1種である[1]〜[4]のいずれかの炉内温度計測方法。
[6]前記保護管の外径がD
t(mm)及びで内径がd
t(mm)あり、前記保護管の厚さは、(D
t−d
t)/2≧6を満たす[1]〜[5]のいずれかの炉内温度計測方法。
[7]長さがL(m)及び外径がD(m)であるセメント焼成炉の炉内監視システムであって、
前記Dに対する前記セメント焼成炉の出口端
からの長さの比が8以上15以下の位置に配置され、保護管を有する熱電対温度計によって、前記セメント焼成炉内の温度データを検出する温度計測装置と、前記温度データを受信し、前記セメント焼成炉内の被加熱物の材料温度及び焼成状態を監視する制御装置とを備える炉内監視システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高温状態にある被加熱物の温度を精度よく計測できる炉内温度計測方法及び炉内監視システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[セメント焼成炉]
以下、
図1を参照して、本発明の実施の形態におけるセメント焼成炉を説明する。
原料投入装置10は、原料投入部12を介して、セメント焼成炉20の入口端より投入する原料11の送量を制御する。原料投入装置10は、予熱装置(図示せず)を通過し、例えば、温度が800℃以上900℃以下に達した原料11をセメント焼成炉20に入れる制御を行う。
セメント焼成炉20は、回転しながら原料投入部12から投入された原料11を燃焼装置21が出力等を制御するキルンバーナ22で燃焼し、クリンカ等の被加熱物を焼成する。セメント焼成炉20内における焼成は、供給された主燃料を気体と共に環状に噴射させるキルンバーナ22によりなされる。焼成された被加熱物は、セメント焼成炉20の出口端より排出され、冷却器13に入る。冷却器13は、エアークエンチングクーラー(クリンカクーラー)であり、空気を使って焼成された原料11を急激に冷却する。
温度計測装置30は、焼成時の被加熱物の温度を計測する熱電対温度計31を備える。温度計測装置30は、熱電対温度計31で計測した温度を温度データとして制御装置50へ送信する。温度計測装置30は、例えば、
図2に示すように、複数の熱電対温度計31で計測した温度データを受信した無線送信部33が制御装置50へ無線で送信することができる。熱電対温度計31及び無線送信部33は、動作のための電力をバッテリー34から得る。
焼成炉駆動制御装置40は、セメント焼成炉20の駆動を制御する。
制御装置50は、受信した温度データに基づいて、材料温度及び焼成状態を監視する。また、制御装置50は、受信した温度データに基づいて、セメント焼成炉20に投入する窯入原料送量を原料投入装置10へ送信して制御し、焼成炉電力及び焼成炉石炭焚量を燃焼装置21へ送信して制御する。
入力装置60は、セメント焼成炉20の動作条件の設定を入力し、制御装置50へ送信する。
【0013】
[炉内温度計測方法]
本発明の実施の形態に係る炉内温度計測方法は、長さがL(m)及び外径がD(m)であるセメント焼成炉20の炉内温度計測方法である。本発明の実施の形態に係る炉内温度計測方法は、セメント焼成炉20の出口端よりL/Dが5以上15以下の位置に配置され、保護管を有する熱電対温度計31でセメント焼成炉20内の被加熱物の温度を計測する。
【0014】
セメント焼成炉20は、長さ
Lが60m以上100m以下程度であり、外径
Dが4m以上6m以下程度の円筒形を横においた形状である。セメント焼成炉20は、1分間に2〜3回の速さで回転する。
セメント焼成炉20は、入口端から仮焼帯201、脱着帯202、焼成帯203、冷却帯204が構成されている。
【0015】
セメント焼成炉20は、焼成時の被加熱物の温度を計測する熱電対温度計31が設けられている。熱電対温度計31は、セメント焼成炉20の出口端よりL/D(長さ/外径)が8以上15以下の位置に配置される。L/Dが8未満であると、セメント焼成炉20の表面にコーチングが付着成長し、熱電対温度計31の先端が埋没して計測できないことがある。L/Dが15を超えると、セメント焼成炉20の仮焼体201より先になって焼成時の被加熱物の温度を計測することができない。熱電対温度計31は、セメント焼成炉20の表面のコーチングが少なく、被加熱物の温度を正確に計測できるという観点から、セメント焼成炉20の出口端よりL/Dが9以上15以下であることが好ましく、10以上15以下であることがより好ましく、11以上15以下であることがさらに好ましい。ちなみに、仮焼帯201と脱着帯202の境界は、L/Dが8程度であり、脱着帯202と焼成帯203の境界は、L/Dが5程度である。
【0016】
熱電対温度計31は、
図3に示すように、セメント焼成炉20の出口端より同一距離であって、セメント焼成炉20の周方向に複数個設けられていることが好ましい。
図3では、4個の熱電対温度計31A〜31Dを示したが、4個に限られない。
熱電対温度計31がセメント焼成炉20の周方向に複数個設けられていることによって、
図4に示すように、セメント焼成炉20の回転することで、熱電対温度計31A〜31Dが順に被加熱物(原料11)と接し、原料温度を直接計測することができる。
【0017】
セメント焼成炉20の内壁(シェル面26)には、
図5に示すように、耐火煉瓦25が設けられている。耐火煉瓦25は、セメント焼成炉20の周方向に複数分割され内壁に装着固定された煉瓦止鉄板23によって位置が固定されている。熱電対温度計31は、分割された煉瓦止鉄板23の間からセメント焼成炉20内に挿入されていることが好ましい。熱電対温度計31を分割された煉瓦止鉄板23の間からセメント焼成炉20内に挿入することで、セメント焼成炉20の回転時のシェル面26の変形に伴う耐火煉瓦25による揉まれによる破損、及び耐火煉瓦25の移動により荷重がかかる破損を防ぐことができる。
図3及び
図4に示したように、煉瓦止鉄板23がセメント焼成炉20の周方向に4分割されている場合は、熱電対温度計31は、分割された煉瓦止鉄板23の間から4本挿入される。つまり、熱電対温度計31は、煉瓦止鉄板23の分割数に応じた本数を挿入することが好ましい。
分割された煉瓦止鉄板23の間は、
図5に示すように、キャスタブル耐火物24で充填されている。耐火物24は、挿入された熱電対温度計31の先端側を覆い、熱電対温度計31に耐火性及び耐衝撃性を付与する。
【0018】
熱電対温度計31は、
図6に示すように、外径D
t(mm)で内径d
t(mm)の保護管32を有する。
保護管32の外径D
t(mm)は、熱電対温度計31の耐久性及び取扱性の観点から、10mm以上30mm以下であることが好ましく、12mm以上25mm以下であることがより好ましく、14mm以上20mm以下であることがさらに好ましい。
保護管32の内径d
t(mm)は、熱電対の収容性容易性及び温度計測の応答性の観点から、3mm以上12mm以下であることが好ましく、4mm以上10mm以下であることがより好ましく、5mm以上8mm以下であることがさらに好ましい。
保護管32の厚さは、耐熱性、耐衝撃性及び燃焼ガスによる耐蝕性観点、並びに温度計側の応答性の観点から、(D
t−d
t)/2≧6を満たすことが好ましく、6≦(D
t−d
t)/2≦10を満たすことがより好ましく、6≦(D
t−d
t)/2≦8を満たすことがさらに好ましい。
【0019】
熱電対温度計31の挿入距離L
t(mm)は、被加熱物(原料11)の温度を正確に計測する観点及び耐熱性、耐衝撃性及び燃焼ガスによる耐蝕性観点から、耐火煉瓦25のセメント焼成炉内部側表面から保護管32の先端が2D
t以上出ることが好ましく、2.5D
t以上出ることがより好ましく、3.0D
t以上出ることがさらに好ましい。
【0020】
保護管32の材質は、耐熱性、耐衝撃性、耐酸化性及び燃焼ガスによる耐蝕性の観点から、SUS310s、カンタル、インコネル及び窒化珪素から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。保護管32の材質は、耐熱性に加え、被加熱物(原料11)及びコーチングとの接触時の衝撃耐久性に優れる観点から、金属製であるSUS310s、カンタル及びインコネルから選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0021】
[炉内監視システム]
本発明の実施の形態に係る炉内監視システムは、長さがL(m)及び外径がD(m)であるセメント焼成炉20の炉内監視システムである。本発明の実施の形態に係る炉内監視システムは、セメント焼成炉20の出口端よりL/Dが5以上15以下の位置に配置され、保護管を有する熱電対温度計31によって、セメント焼成炉20内の温度データを検出する温度計測装置30と、温度データを受信し、セメント焼成炉20内の被加熱物の材料温度及び焼成状態を監視する制御装置50とを備える。
【0022】
本発明の炉内監視システムによれば、セメント焼成炉20の出口端よりL/Dが5以上15以下の位置に挿入された熱電対温度計31によって、原料温度を直接計測することができるので、正確な原料温度を把握することができる。正確な原料温度を把握することでセメント焼成炉の運転管理を十分に行うことができ、セメント焼成炉の運転を安定させることができる。また、正確な原料温度を把握することでクリンカ焼成度(品質)を維持することができる。
本発明の炉内監視システムによれば、原料温度を連続して計測し、温度に変動が見られた場合は、事前にキルンバーナ等を調整することにより、出口端でのクリンカ温度をより一定に保ち、クリンカ焼成度をより安定させることが可能である。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0024】
[保護管の材質]
保護管の材質は、耐熱性、耐衝撃性、耐酸化性及び燃焼ガスによる耐蝕性の観点から、これらの性能に優れるSUS310s、カンタル、インコネル及び窒化珪素を選定した。セメント焼成炉は回転炉であるため、回転に伴い掻き上げられた原料やコーチングが落下する際の衝撃力が極めて大きいため、耐衝撃性、耐酸化性、耐蝕性の中で耐衝撃性を最重要視して材質を選定する。耐衝撃性は材料の靱性に関連し、一般的に硬度とは傾向が一致しない。
【0025】
<耐熱性>
材料特性情報より、耐熱最高温度が1,500℃以上であるものを「◎」、1,500℃未満1,200℃以上であるものを「○」、1,200℃未満1,000℃以上であるものを「△」、1,000℃未満であるものを「×」とした。
【0026】
<硬度>
硬度の測定は、ビッカース硬さ試験機(株式会社ミツトヨ製、製品名「HM−200」)を使用し、JISZ2244:2009に準拠して行った。
【0027】
<耐衝撃性>
耐衝撃性は材質の靱性に関連することより、金属の靱性評価に着目した。靱性評価は、金属引張試験(JISZ2241:2011)に準拠して行い、各材質の伸び(%)と絞り(%)に着目した。伸び(%)と絞り(%)がそれぞれ50%以上であるものを「◎」、50%未満10%以上であるものを「○」、10%未満1%以上であるものを「△」、1%未満であるものを「×」とした。
【0028】
【表1】
【0029】
表1より、耐熱性及び硬度は窒化珪素が優れているが、保護管の材質としては、耐衝撃性を最重要視することからSUS310sが最適であると選定した。
【0030】
以下に、表1で示した結果を立証するために、保護管の材質として、SUS310s、カンタル、インコネル及び窒化珪素を用いて保護管の耐久性比較試験を行った結果を示す。
【0031】
[保護管の耐久性比較試験1]
セメント焼成炉の出口端よりのL/Dを11、保護管の厚さを3mmで一定とし、分割された煉瓦止鉄板の間からセメント焼成炉内に保護管を有する熱電対温度計を挿入して、以下のような評価を行った。なお、熱電対温度計としては、R熱電対(株式会社チノー製、種類「白金−13%ロジウム」)を使用した。
【0032】
<耐用時間>
熱電対温度計での温度計測開始から、熱電対温度計が損傷するまでの時間を耐用時間として測定した。
【0033】
<耐久性>
計測した耐用時間が1,500時間以上であるものを「◎」、1,500時間未満500時間以上であるものを「○」、500時間未満30時間以上であるものを「△」、30時間未満であるものを「×」とした。
【0034】
(実施例1)
外径D
tが18mm、内径d
tが12mm、厚さが3mmであり材料がSUS310sの保護管にて評価を行った。熱電対温度計は、保護管の先端が耐熱煉瓦のセメント焼成炉内部側表面から80mmとなるように挿入した。結果を表2に示す。
【0035】
(実施例2)
外径D
tが18mm、内径d
tが12mm、厚さが3mmであり材料がカンタルの保護管にて評価を行った。熱電対温度計は、保護管の先端が耐熱煉瓦のセメント焼成炉内部側表面から80mmとなるように挿入した。結果を表2に示す。
【0036】
(実施例3)
外径D
tが18mm、内径d
tが12mm、厚さが3mmであり材料がインコネルの保護管にて評価を行った。熱電対温度計は、保護管の先端が耐熱煉瓦のセメント焼成炉内部側表面から80mmとなるように挿入した。結果を表2に示す。
【0037】
(実施例4)
外径D
tが18mm、内径d
tが12mm、厚さが3mmであり材料が窒化珪素の保護管にて評価を行った。熱電対温度計は、保護管の先端が耐熱煉瓦のセメント焼成炉内部側表面から80mmとなるように挿入した。結果を表1に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
表2より、保護管の材質としてSUS310sを用いた実施例1の耐用時間が一番長かった。しかし、保護管の厚さが3mmでは、いずれの保護管も1週間以内に損傷してしまい耐久性が若干低かった。なお、損傷までの保護管の温度は1,200℃付近で推移した。
【0040】
[保護管の耐久性比較試験2]
表1及び表2の結果より、耐衝撃性及び耐用時間が一番長かったSUS310sを選定し、厚さを増したSUS310sの保護管の耐久性比較試験を行った。
セメント焼成炉の出口端よりL/Dが11、保護管の厚さが6mm、材料がSUS310sで一定とし、分割された煉瓦止鉄板の間からセメント焼成炉内に保護管を有する熱電対温度計を挿入して、上記の耐用時間及び耐久性の評価を行った。なお、熱電対温度計としては、R熱電対(株式会社チノー製、種類「白金−13%ロジウム」)を使用した。
【0041】
(実施例5〜8)
外径D
tが18mm、内径d
tが6mm、厚さが6mmであり材料がSUS310sの4本の保護管に対して評価を行った。熱電対温度計は、保護管の先端が耐熱煉瓦のセメント焼成炉内部側表面から80mmとなるように挿入した。結果を表3に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
表3より、セメント焼成炉の出口端よりL/Dが11の位置に、厚さが6mmであり、材料がSUS310sの4本の保護管付きの熱電対温度計に対して評価を行った。結果としては、4本の保護管の全ての耐用時間が1,000時間を超え、うちの2本は耐用時間が1,500時間を超えた。この程度の耐用時間があれば、休転毎に熱電対温度計を取り替えることにより、セメント焼成炉内の連続温度計測が可能であることが確認できた。
分割された煉瓦止鉄板の間からセメント焼成炉内に保護管を有する熱電対温度計を挿入することで、耐熱煉瓦による揉まれ損傷を防止できることを休転時の炉内点検にて確認できた。
【0044】
[保護管の耐久性比較試験3]
表1及び表2の結果より、耐衝撃性及び耐用時間が一番長かったSUS310sを選定し、厚さを増したSUS310sの保護管の耐久性比較試験を行った。
セメント焼成炉の出口端よりL/Dが8、保護管の厚さが6mm、材料がSUS310sで一定とし、分割された煉瓦止鉄板の間からセメント焼成炉内に保護管を有する熱電対温度計を挿入して、上記の耐用時間及び耐久性の評価を行った。なお、熱電対温度計としては、R熱電対(株式会社チノー製、種類「白金−13%ロジウム」)を使用した。
【0045】
(比較例1〜4)
外径D
tが18mm、内径d
tが6mm、厚さが6mmであり材料がSUS310sの4本の保護管に対して評価を行った。熱電対温度計は、保護管の先端が耐熱煉瓦のセメント焼成炉内部側表面から80mmとなるように挿入した。結果を表4に示す。
【0046】
【表4】
【0047】
表4より、セメント焼成炉の出口端よりL/Dが7の位置に、厚さが6mmであり、材料がSUS310sの4本の保護管付きの熱電対温度計に対して評価を行った。結果としては、いずれの温度計も耐用時間が1,500時間未満となり、L/Dが7の位置での休転間での連続温度計測は困難であることが判明した。
分割された煉瓦止鉄板の間からセメント焼成炉内に保護管を有する熱電対温度計を挿入することで、耐熱煉瓦による揉まれ損傷を防止できることを休転時の炉内点検にて確認できた。