【文献】
薄膜厚測定のためのPolycrystalline Silicon屈折率,日本,2015年03月13日,https://web.archive.org/web/20150313202150/https://www.filmetricsinc.jp/refractive-index-database/Polycrystalline+Silicon
【文献】
薄膜厚測定のためのAmorphous Silicon屈折率,日本,2015年03月13日,https://web.archive.org/web/20150313205215/https://www.filmetricsinc.jp/refractive-index-database/Amorphous+Silicon
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態1.
図1は、第1の実施形態の光学素子10の断面模式図である。光学素子10は、透明基材11と、透明基材上に設けられる凹凸部12とを備える。なお、図中の符号13は、凹凸部12を覆う媒質を示す。
【0015】
凹凸部12は、異なる2以上の材料により構成され、かつ2以上の層を有する多層構造である。また、凹凸部12は、入射光または、入射光のうち所定の偏光成分に対して所定の位相差を発生させる部位を少なくとも含む。なお、
図1は2層の凹凸部12を例示するが、凹凸部12は3層以上でもよい。
【0016】
本実施形態では、多層構造の凹凸部12に関し、凹凸部12と媒質13が接する面のうち最も低い部分より高い位置にあるものを、凹凸部12の凸部121とも呼ぶ。また、凸部121に囲まれてなる凹み部分であって凸部121の最上面より低い部分を、凹凸部12の凹部122とも呼ぶ。以下、凹凸部12から見て透明基材11に近づく方向を下方とし、透明基材11から離れる方向を上方とする。したがって、透明基材11と凹凸部12の界面が凹凸部12の最下面となり、凹凸部12の各段の上面のうち透明基材11と最も離れる面が最上面となる。さらに、凹凸部12と媒質13が接する面のうち最も高い部分と低い部分の間に位置する層を、位相差層123とも呼ぶ。
【0017】
透明基材11には、ガラス、樹脂等、使用する光の波長に対して透明である部材を使用できる。
【0018】
また、凹凸部12は、少なくとも1以上の層において、該層の使用波長における複素屈折率をn−ikとしたとき、式(1)を満たす材料を使用する。以下、式(1)を満たす材料を第1の材料とも表現する。なお、ここでいう「複素屈折率」は、使用波長のうち最も光強度が高い波長における屈折率に相当し、例えば、当該波長に対して±20nmの範囲や、±10nmの範囲で設定してもよい。以下、「屈折率」についても同様である。
【0019】
n≧2.5、k<0.01 ・・・(1)
【0020】
なお、使用波長は、光学素子10への入射光の波長帯である。以下、光学素子10に、波長700〜1200nmの近赤外光が入射する、として説明する。なお、後述するように520nmの入射光も対象にできるので波長帯は特に限定されない。例えば、近赤外光のように、可視光より長波長の光を取り扱う場合、光路長差を大きくするために凹凸が高くなる傾向にあるため、本実施形態の光学素子の構成が効果的である。
【0021】
第1の材料は、アモルファスシリコンまたはアモルファスシリコン化合物を母材とする材料が例示できる。該材料を用いると、波長700〜1200nmにおいてkを十分小さくできる。とくに、化学的安定性の観点から、水素化アモルファスシリコンまたは水素化アモルファスシリコン化合物のように、水素化したものが好ましい。アモルファスシリコンまたはアモルファスシリコン化合物を母材とする材料の成膜には、真空蒸着、スパッタリング、プラズマCVDなどを使用できる。以下、アモルファスシリコンは、「a−Si」とも記載する。
【0022】
a−Siまたはa−Si化合物を母材とする材料としては、a−Siを水素化したもの、a−Siと炭素やゲルマニウムとの化合物(それぞれ、a−SiC、a−SiGeと記述する)並びにこれら材料を水素化したものでもよい。例えば、a−Siやa−Siに対して炭素やゲルマニウムとの化合物を水素化したものは、それぞれa−Si:H、a−SiC:H、a−SiGe:Hなどのように記述される。また、これらは、それぞれ一部に酸素や窒素がドープされてもよい。
【0023】
a−Siの化合物を用いる利点としては、近赤外光に対して吸収が少ない点である。結晶化シリコンのバンドギャップは約1.1eVであり、波長に換算すると約1130nmである。したがって、結晶化シリコンの場合、波長1130nm以下の光は透過できない。一方、a−Siの化合物としては、a−SiC:Hで1.8〜2.4eV(波長で約520〜690nm)、a−Si:Hで1.7〜1.9eV(波長で約650〜730nm)、a−SiGe:Hで1.0〜1.7eV(波長で約730〜1240nm)のハンドギャップを有する。これらによれば、波長520nm以上の光に対して、吸収が小さい状態で透過できる。
【0024】
また、これらのa−Si化合物の中には、屈折率が2.3〜4の範囲のものがある。とくに2.5以上の屈折率のものを使用すると、可視域で用いられるTiO
2などの光学材料よりも屈折率が大きくなり好ましい。また、屈折率は、2.8以上がより好ましく、3以上がさらに好ましい。また、屈折率が高すぎると吸収が出やすいため、屈折率の上限は5以下が好ましく、4以下がより好ましい。
【0025】
上記材料を用いる場合、光学素子の使用波長範囲を520nm以上とできる。ただし、吸収率よりも透過率が高くなる吸収端近傍では吸収が残る場合があるため、使用する光の波長としては、600nm以上が好ましく、700nm以上がより好ましい。なお、結晶化シリコンでも、波長が1130nm以上、とくに1200nm以上では吸収が少ないことから、該波長範囲を使用する場合は結晶化シリコンを使用できる。しかし、使用する光の波長が1200nm以下の場合、材料選択性の観点からも、a−Si化合物を使用するとよい。
【0026】
また、基材は使用波長の光に対する透明性が要求されるため、1200nm以下の光を使用する場合、基材としては、結晶化シリコンのような材料を使用できない。したがって、ガラス、樹脂、セラミックスなどの透明材料を用いる必要がある。また、光学ガラスの一般的な屈折率は1.5程度、高いものでも2.1程度であるため、基材とa−Siとの界面で大きな屈折率差を生じ、大きな反射光が発生する。このような観点で後述する屈折率調整層や反射防止層により界面での反射防止が必要になる。
【0027】
また、基材上に0.5μm以上のa−Siまたはa−Si化合物を備える場合、これら部材と基材間の応力によって剥離が生じるおそれがあるため、これら部材と基材の線膨張係数の差が小さいとよい。基材とa−Siまたはa−Si化合物の線膨張係数の差の絶対値は、4×10
−6/K以下が好ましく、2×10
−6/K以下がより好ましい。なお、a−Siの線膨張係数は1.5〜4.0×10
−6/Kである。したがって、基材の線膨張係数の例として、8×10
−6/K以下が好ましく、6×10
−6/K以下がより好ましい。ここで、基材としてガラスを用いる場合、線膨張係数は20℃から300℃の平均線膨張係数を比較できる。線膨張係数は、−2×10
−6/K以上が好ましく、0×10
−6/K以上がより好ましい。
【0028】
このような材料の使用により、凹凸部12の高さを低減でき、例えばエッチングによって加工をする場合にテーパーなどの意図しない構造が発生する前に加工を終了でき、より設計に近い形状が得られる。これにより光学素子10の光学機能の制御が容易になる。
【0029】
図1は2段の凹凸部12を例示しているが、凹凸部12は3段以上の、階段状の疑似ブレーズ構造でもよい。ここで、凹凸部12の段数は、一般的な回折格子と同様、入射光に対して位相差を生じさせる段差を構成する各面を1段として数える。
【0030】
例えば、光学素子10は、
図2(a)に示すように3段以上の凹凸部12を備えてもよく、
図2(b)に示すように、少なくとも光路上の凹凸部12の全てが透明基材11に接し、第3の媒質13が透明基材11と接しない構成でもよい。以下、このような構成において、凹凸部12の1段目を構成する層すなわち少なくとも入射光の有効領域内において透明基材11の表面を覆っている層を、下地層124とも呼ぶ。なお、
図2(b)の構成では、下地層124の上面が凹凸部12の1段目である。下地層124は、単層でも多層でもよい。ここで、入射光の有効領域とは、入射光の光強度が1/e
2以上の領域、すなわち入射光のうち最も高い(位置の)光強度を100%とした場合に、13%以上の光強度を示す光が照射される領域とする。
【0031】
なお、光学素子10が回折光学素子であって凹凸部12がN段の階段状の疑似ブレーズ形状の場合、式(2)を満たすと、凸部121と凹部122(媒質13)によって発生する光路長差が1波長分の波面に近似でき、高い回折効率が得られ好ましい。ここでNは3以上の整数である。
【0032】
{(N−1)/N}×λ=Δnd ・・・(2)
【0033】
ここで、Δnは凹凸部12と媒質13の屈折率差、dは凹凸部12と媒質13が接する面のうち最も高い部分と低い部分の差、すなわち位相差層123の高さである。
【0034】
例えば、近赤外光において屈折率=1.455の石英ガラス周辺が空気雰囲気の場合を例にとると、{(N−1)/N}×λ=0.455dとなる。これより、位相差層123の高さdが、d<{(N−1)/N}×λ/0.455を満たすとよい。また、使用する光の波長が700〜1200nmの場合、位相差層123の高さdは、特に2段の凹凸部12であれば750nm以下が好ましい。なお、高さdは、4段以上であれば1150nm以下が好ましく、8段以上であれば1350nm以下が好ましい。
【0035】
また、凹凸部12は、反射防止機能を有してもよい。例えば、凹凸部12自体が、所定の位相差を発生させる凹凸構造であるとともに反射防止構造を有する多層構造の凹凸構造でもよい。
【0036】
ここで、屈折率n
0の媒質M1から入射角θ
0で光が入射し、各層の屈折率がn
rで厚さがd
rであるq層からなる多層膜M2を透過し、屈折率n
mの媒質M3へ光が入射する場合を考える。このときの反射率は、式(3)で計算できる。なお、η
0、η
m、η
rはそれぞれ、斜入射を考慮した媒質M1、多層膜M2、媒質M3の実効屈折率である。以下、式(3)に示す反射率Rを、多層構造による理論反射率とも呼ぶ。また、特に断らない場合、θ
0=0とするが、入射面が傾斜するような場合には、傾斜の平均的な傾斜によって入射角を定義してもよい。
【0038】
したがって、凹凸部12の多層構造の設計により、Yをη
0に近づけられると、他の媒質との界面反射を低減できる。とくに垂直入射の時は、η
0やη
mやη
rは屈折率と等価である。このとき、凹凸部12を、各層の屈折率をn
r、厚さをd
rとしたq層からなる多層膜とする。また、凹凸部12から見て入射側界面を構成する部材(透明基材11または媒質13)の屈折率をn
0、凹凸部12から見て出射側界面を構成する部材(媒質13または透明基材11)の屈折率をn
mとすればよい。
【0039】
例えば、凹凸部12は、多層構造による理論反射率R≦4%を満たすと好ましく、R≦2%を満たすとより好ましく、R≦1%を満たすとさらに好ましい。
【0040】
一例として、凹凸部12は、
図3(a)に示すように、最下位層すなわち透明基材11との界面に屈折率調整層14aを有し、かつ最上位層すなわち媒質13との界面に屈折率調整層14bを有する構成でもよい。ここで、屈折率調整層14aおよび14bは、当該屈折率調整層14aを含む多層構造の凹凸部12において、入射側界面をなす媒質(例えば、透明基材11)の屈折率をn
m、出射側界面をなす媒質(例えば、空気または媒質13)の屈折率をn
0、当該凹凸部12の各層のn
r、厚さをd
rとしたとき、当該凹凸部12の両界面に対して、式(4)を満たす単層または多層構造によって、理論反射率Rが上記条件を満たせばよい。
【0041】
(n
0×n
m)
0.5−α<n
r<(n
0×n
m)
0.5+α、かつ
(1−β)×λ/4<n
r×d
r<(1+β)×λ/4
ただし、α=0.25、β=0.6
・・・(4)
【0042】
ここで、αは0.25が好ましく、0.2がより好ましく、0.1がさらに好ましい。また、βは0.6が好ましく、0.4がより好ましい。また、
図3(a)に示す中間層14cは、1層でもよく、2層以上でもよい。また、屈折率調整層14aは最下位層でなくてもよく、また屈折率調整層14bも最上位層でなくてもよい。また、凹凸部12は、屈折率調整層14a、14bのいずれか一方のみを含む構成でもよい。すなわち、説明の便宜のため凹凸部12を構成する層に屈折率調整層14a、14b、中間層14c等の名称を付したが、いずれの構成でも、少なくとも第1の材料を含む多層構造の凹凸部12が、式(4)または理論反射率Rが上記条件を満たす構成であればよい。
【0043】
また、凹凸部12が3段以上の場合、凹凸部12の各段(ただし、高さを有する段に限る)は、2層以上の薄膜構造を基本ブロックとする多層構造でもよい。すなわち、凹凸部の各段のうち高さを有する段が、所定の屈折率及び厚さを有する2層以上の多層膜である基本ブロックを1つ以上積み上げられた構成でもよい。なお、基本ブロックは1種類に限らず、複数種類でもよい。その場合、基本ブロックの多層構造による理論反射率Rが上記条件を満たすように構成される。
【0044】
また、凹凸部12は、
図3(b)や
図3(c)に示すように、位相差層123や下地層124に加えて、少なくとも入射光の有効領域内の透明基材11と接する界面および媒質13と接する界面に、反射防止層15a,15bを有する構成でもよい。この場合、位相差層123,反射防止層15a,15bを含めて、凹凸部12と呼ぶ。なお、凹凸部12は、少なくとも反射防止層15aを含んでいればよい。また、
図3(b)は、凹部122において反射防止層15a,15bが積層されるが、反射防止層15aは、少なくとも入射光の有効領域内において、第1の材料により形成される層を少なくとも含む位相差層123(下地層124が存在すれば、下地層124)と透明基材11との間に備わっていればよい。また、反射防止層15bは、少なくとも入射光の有効領域内において、該位相差層123と媒質13との間に備わっていればよい。
【0045】
反射防止層15a、15bは、単層でもよいし、2層以上の多層膜でもよい。反射防止層を形成する材料として、各種金属、半導体の酸化物、窒化物、酸窒化物、フッ化物を使用できるが、シリコンを含有するシリコン化合物による単層膜または多層膜であると、例えばエッチング加工する場合に加工条件を大きく変える必要がないため好ましい。
【0046】
一例として、反射防止層15a、15bはそれぞれ、入射側界面をなす媒質の屈折率をn
m、出射側界面をなす媒質の屈折率をn
0、当該反射防止層もしくはその各層の屈折率をn
r、厚さをd
rとしたとき、当該反射防止層の両界面に対して、式(4)を満たす単層の反射防止層または多層構造による理論反射率Rが上記条件を満たせばよい。例えば、
図3(b)において透明基材11側から光が入射する場合、反射防止層15aに対して、入射側界面をなす媒質は透明基材11、出射側界面をなす媒質は位相差層123の部材である。また、反射防止層15bに対して、入射側界面をなす媒質は位相差層123の部材、出射側界面をなす媒質は媒質13である。
【0047】
また、位相差層123も、単層でもよいし、多層でもよい。所望の位相差を発生させ、かつ反射率を低減するための光学層として寄与させる観点より、凹凸部12の各層の厚さは、5nm以上が好ましい。その理由は、例えば、凹凸部12が、従来の構成のように、厚さ5nm程度のエッチングストップ層などを有すると、該層がない構成と比べて、光学的に制御されていない多層構造によって生じる干渉状態の大きなばらつきが生じるためである。なお、各層の厚さが5nm程度であっても凹凸部12全体として反射率が上記条件を満たしていればよく、その場合、当該各層の厚さの下限条件は無視してもよい。
【0048】
また、媒質13は、空気でも、空気以外でもよい。すなわち、光学素子10は、
図4に示すように、凹凸部12の透明基材11と対向する側の表面を覆って平坦化する充填部16を備えてもよい。この場合、充填部16の材料が媒質13となる。
【0049】
空気以外の媒質13の例としては、樹脂や無機物が挙げられる。この場合、所望の位相差を発生させるべく凹凸部12(より具体的には凸部121)と充填部16との、所定の波長(範囲)の光に対する屈折率差Δnは、0.45以上が好ましく、0.6以上がより好ましい。なお、光学素子10は、充填部16が露出する例(
図4)に限らず、
図5(a)のように、透明基材11−1および11−2によって凹凸部12および充填部16の主面を覆った構成でもよく、また、複数の凹凸部12を有してもよい。この場合、1つの凹凸部12を有する光学素子10を2つ重ねた構成でもよいし、
図5(b)のように、媒質13を介して2つの凹凸部12(12−1および12−2)を貼り合わせた構成でもよい。
【0050】
また、光学素子10全体としての反射率は、10%以下であればよく、6%以下が好ましく、4%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。このとき、透明基材11、凹凸部12及び媒質13の積層構造による反射率は、8%以下であればよく、4%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。ここで、透明基材11、凹凸部12及び媒質13の積層構造による反射率は、式(3)で示した多層構造による理論反射率でも評価できる。
【0051】
次に、光学素子10が回折光学素子であるとしてより詳細に説明する。この場合、凹凸部12は、回折作用を発現できる構造であればよい。凹凸部12は、例えば、
図1等に示すように、透明基材11の一方の表面上に2段以上の段を構成するとともに、各段の上面が互いに平行でもよい。
【0052】
次に、光学素子10が発現する回折作用について、
図6の光学素子10により生成される光のパターンの例示に基づき説明する。光学素子10は、光軸方向をZ軸として入射する光束21に対して出射される回折光群22が2次元に分布するように形成される。光学素子10は、Z軸と交点を持ちZ軸に垂直な軸をX軸及びY軸とした場合、X軸上における最小角度θx
minから最大角度θx
max及びY軸上における最小角度θy
minから最大角度θy
max(いずれも不図示)の角度範囲内に光束群が分布する。
【0053】
ここでX軸は光スポットパターンの長辺に略平行でY軸は光スポットパターンの短辺に略平行となる。なお、X軸方向における最小角度θx
minから最大角度θx
max、Y軸方向における最小角度θy
minから最大角度θy
maxにより形成される回折光群22の照射される範囲は、光学素子10と一緒に用いられる光検出素子における光検出範囲と略一致した範囲となる。本例では、光スポットパターンにおいて、Z軸に対しX方向の角度がθx
maxである光スポットを通るY軸に平行な直線が上記短辺となり、Z軸に対しY方向の角度がθy
maxである光スポットを通るX軸と平行な直線が上記長辺となる。以下、上記短辺と上記長辺の交点と回折光学素子を結ぶ直線とZ軸とがなす角度をθ
dとし、この角度を対角方向の角度と称する。なお、対角方向の角度θ
dは、光学素子10の最大出射角に相当する。
【0054】
光学素子10は、発生させる光スポットの数としては、10点以上が好ましく、100点以上がより好ましく、1000点以上がさらに好ましい。なお、光スポットの数の上限は、特に限定されないが、例えば、1000万点でもよい。
【0055】
また、通常、回折光学素子の凹凸構造は、断面がバイナリ形状やブレーズ形状等であるが、該凹凸構造の断面が連続的なブレーズ形状以外で形成される場合や、断面がブレーズ形状でも製造上のバラツキがある場合、所望の回折光の他に迷光が発生するおそれがある。しかし、このような迷光は、設計段階において意図するものではないため、上記角度範囲内に分布する光スポットには含まないものとする。
【0056】
また、
図6において、R
ijは投影面の分割領域を示す。例えば、光学素子10は、透明面を複数の領域R
ijに分割した場合、各領域R
ijに照射される回折光群22による光スポット23の分布密度が全領域の平均値に対して±50%以内となるように構成してもよい。なお、上記分布密度は、全領域の平均値に対して±25%以内でもよい。このように構成すると、投影面内で光スポット23の分布を均一にできるので、計測用途等において好適である。ここで投影面は、平面だけでなく曲面でもよい。また、平面の場合も、光学系の光軸に対して垂直な面以外に傾斜した面でもよい。
【0057】
図6に示す回折光群22に含まれる各回折光は、式(5)に示すグレーティング方程式において、Z軸方向を基準として、X方向における角度θ
xo、Y方向における角度θ
yoに回折される光となる。式(5)において、m
xはX方向の回折次数であり、m
yはY方向の回折次数であり、λは光束21の波長であり、P
x、P
yは後述する光学素子の基本ユニットのX軸方向、Y軸方向におけるピッチであり、θ
xiはX方向における光学素子への入射角、θ
yiはY方向における光学素子への入射角である。この回折光群22をスクリーンまたは測定対象物等の投影面に照射させることにより、照射された領域に複数の光スポット23が生成される。
【0058】
sinθ
xo=sinθ
xi+m
xλ/P
x
sinθ
yo=sinθ
yi+m
yλ/P
y
・・・(5)
【0059】
このような所定の条件を満たす回折光群22を出射する光学素子10として、反復フーリエ変換法等により設計された光学素子を使用できる。より具体的に、所定の位相分布を生じさせる基本ユニットを周期的に、例えば、2次元的に配列させた光学素子を使用できる。このような光学素子においては、遠方における回折光の回折次数の分布は基本ユニットにおけるフーリエ変換により得られる。
【0060】
光学素子10は、
図7(a)に示すように、透明基材11上に、凹凸部12を構成する基本ユニット31が、X軸方向にピッチP
x、Y軸方向にピッチP
yで2次元的に周期的に配列されてもよい。基本ユニット31は、例えば、
図7(b)に示すような位相分布を有する。
図7(b)に示す例では、黒塗りの領域が凸部121、白抜きの領域が凹部122となるように凹凸パターンを形成する。凹凸部12は、位相分布を発生できればよく、ガラスや樹脂材料等の光を透過する部材(透明基材11)の表面に凹凸パターンを形成した構造も含まれる。なお、光学素子10としては、この他にも、凹凸パターンが形成された透明な部材(透明基材11)の上に、この部材とは屈折率の異なる部材(充填部16)を貼り合わせ、表面を平坦化した構造や、透明な部材において屈折率を変化させた構造でもよい。つまり、凹凸パターンは、表面形状が凹凸である場合のみを意味するものではなく、入射光に位相差を与えられる構造も含む。
【0061】
また、光学素子10に基本ユニット31を2次元的に配置する際に基本ユニットは整数個である必要はなく、凹凸パターン内に1つ以上の基本ユニットが含まれれば凹凸パターンと凹凸パターンを有さない領域の境界が基本ユニットの境界と必ずしも一致しなくてもよい。また、基本ユニット31は一種類に限らず複数種でもよい。
【0062】
また、光学素子10は、上記の回折光学素子以外に、複数の基本ユニットを持たせることで拡散機能を発現させる回折光学素子や、レンズ作用など入射波面に対して位相を付与するフレネルレンズ素子、構造複屈折により偏光ごとに位相差を与える位相子や特定の偏光のみを透過する偏光子等でもよい。
【0063】
例えば、凹凸部12は、2次元な光拡散機能を発現する非周期的な凹凸構造でもよい。さらに、凹凸部12は、1次元方向に光を回折させる凹凸構造、レンズ作用など入射波面に対して位相を付与するフレネルレンズ構造を有する凹凸構造、入射光のうち所定の偏光成分に対して位相差を与える構造複屈折作用を発現する凹凸構造でもよい。
【0064】
式(5)に基づき、回折角が大きくなると格子のピッチが短くなる。また、一般的には出射させる光スポットの数を増やそうとすると基本ユニットの凹凸形状が複雑になる。すると、凹凸形状幅が細かくなり理想形状通りの加工が難しくなるため、回折光の制御が難しくなる傾向がある。したがって、本実施形態の光学素子10は、比較的広角の回折角を得る場合に、とくに効果的である。
【0065】
一般的に2次元に光を出射させる回折光学素子の凹凸形状の平面パターンは、複雑な2次元模様となる。そのため、単純なアスペクト比などの形状の指標を得るのは困難であるが、形状の加工性を議論するために空間的な周期P
pと凹凸の高さdを用いて、形式的なアスペクト比R
Aを、式(6)によって定義する。
【0066】
R
A=d/(P
p/2) ・・・(6)
【0067】
式(5)の次数m
x、m
yは凹凸部12の2次元形状をフーリエ変換して得られるが、このフーリエ変換によって2次元形状が有する空間周波数成分を求めているとも解釈できる。このとき、x、y方向の最大次数をm
xmax、m
ymaxとした場合、それに相当する空間的な周期P
px、P
pyはP
px=P
x/m
xmax、P
py=P
y/m
ymaxとなる。これらの値を上記の空間的な周期P
pとして用いる。形式的なアスペクト比R
Aの好ましい範囲は、x,y方向ともに、3以下がよく、2以下が好ましく、1以下がより好ましい。
【0068】
上記構成は、例えば、回折角、具体的には、入射光が透明基材11の一方の表面の法線方向から入射したときに発生する複数の回折光の各々(光スポット)がなす対角方向の角度θ
dが7.5°以上である場合に適用するとよく、15°以上の場合が好ましく、25°以上の場合がより好ましい。これは、2次元的な光のスポットを発現する回折光学素子に限らず1次元的な回折光を発現する回折格子やフレネルレンズ素子や拡散板や偏光子等にも適用できる。この場合、対角方向の角度θ
dを、レンズの広がり角、拡散板の拡散角、偏光子の最大出射角等と読み替えればよい。なお、これらを包含する表現として、単に「光学素子10の最大出射角」という場合がある。
【0069】
また、上記では、凹凸部12と他媒質の界面の反射率に基づいた構成を説明したが、実際の光学素子は、反射光も凹凸構造の作用によって複数の反射光に分岐されるため反射光の光量の測定が難しい場合がある。この場合、反射光の光量の評価を透過光の光量で評価してもよい。なお、透過光の光量は、光学素子の入射面と対向する出射面から出射される光を、素子に対して隣接させた積分球等の受光素子に受光させ、その光量を測定し評価できる。例えば、透過光の光量を、入射光の光量に対する受光量の割合である前方透過率により評価してもよい。このとき、透過光の光量は、入射光の光量から、透明基材11、凹凸部12、媒質13の界面で生じる反射だけでなく、素子の吸収、入射側素子界面で生じる反射、出射側素子界面で生じる反射を除いたものになる。
【0070】
また、光学素子10が回折光学素子の場合、例えば、透過光の光量を、各回折光に関するグレーティング方程式(式(5))を用いた理論値を用いて評価してもよい。この場合も、光学素子において、透明基材11、凹凸部12、媒質13の界面による反射以外に、素子内の吸収や素子界面の反射が発生しないものとする。
【0071】
ここで、光学素子10が、
図5(a)に示すような、2つの透明基材11で充填部16を封止した構造の回折光学素子の場合、前方透過率は入射光から、(A)基材、凹凸部、充填部の界面による反射、(B)基材、凹凸部、充填部を構成する部材の吸収、の2つの要因以外にも、(C)回折光が素子界面から出射されず素子内を伝播する成分を考慮する必要がある。この成分は、例えば、
図8中の実線矢印のように、素子内のいずれかの界面で全反射される光線であり、例えば式(5)を用いて計算できる。式(5)において、光線のZ方向のベクトル成分は(1−sin
2θ
xo−sin
2θ
yo)
0.5となるが、カッコ内が負の値になる場合、Z成分の伝播ベクトル成分が虚数になり空気中には出射されない成分と判断してもよい。なお、厳密には、素子内を伝播する回折光は素子界面で全反射され、凹凸部に再入射して、素子内で再度回折される場合があるが、以下、簡単のためにそのような擾乱がないとする。
【0072】
前方透過率は、積分球等の受光素子で評価できるが、上記のような出射側素子界面での全反射による素子内を伝播する成分も、素子側面から出射する光を受光装置で計測して評価できる。光学素子に吸収がないとした場合、光学素子としての反射率を、入射光量から前方透過率と光学素子側面から出射する光量を差分した値で評価してもよい。
【0073】
以上のように、光学素子は、最大出射角の設計によって前方透過率が変化する場合があり、とくに広角の光を出射させる場合、該変化が顕著になりやすい。また、凹凸部と他媒質との界面による反射率が低い場合、相対的に前方透過率を大きくできる。したがって、反射光量の評価の指標である前方透過率は、80%以上であればよく、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。また、光学素子が他の機能層を含む場合もあるが、上記の前方透過率は1つの凹凸部のみを含む単純な構造を想定した。一方、他の機能層を有する光学素子の場合、他の機能層による吸収や反射によるロスを計算して除去し、前方透過率を評価してもよい。また、凹凸部と他媒質との界面以外で生じる反射、吸収によるロスを計算して評価し、それを除去してもよい。
【0074】
実施形態2.
図9(a)、
図9(b)は、それぞれ、第2の実施形態の光学素子40の平面模式図、断面模式図である。本実施形態の光学素子40は、透明基材41の一方の面上に、透明基材41の主面と非平行で連続的な1つ以上の曲面を有する凹凸部42を備える。なお、図中の符号43は、凹凸部42の透明基材41と対向する側の表面を覆う媒質を示す。
【0075】
光学素子40は、
図9(b)に示すように、透明基材41の主面上に、透明基材41の主面と非平行で連続的な1つ以上の曲面を形成する凹凸構造44と、凹凸構造44と透明基材41との間に設けられる反射防止層45aと、凹凸構造44と媒質43との間に設けられる反射防止層45bとを含む凹凸部42を備える。このように、凹凸部42は、反射防止層45a、凹凸構造44、反射防止層45bの多層構造である。なお、凹凸部42は、反射防止層45aおよび反射防止層45bのいずれか一方のみを含む構成でもよい。
【0076】
以下、凹凸構造44において各曲面を構成する部位を、曲面部421とも呼ぶ。
【0077】
凹凸構造44は、
図9(a)および
図9(b)に示すように、透明基材41と非平行で連続的な曲面を構成する曲面部421が、少なくとも入射光の有効領域において隙間なく配された構造が挙げられる。このとき、曲面部421のうち、隣接する2つの曲面の境界が非連続な(尾根に相当する)部分が形成されてもよい。このように、曲面部421は、複数の曲面により隙間の無い(フラットな部分が無い)形状で構成することで、入射光の直進抜け成分が低減し、光利用効率を高める効果を奏する。
【0078】
なお、
図9(a)および
図9(b)における光学素子40は、拡散板を例示するがこれに限らない。光学素子40は、一次元方向や二次元方向に回折作用を有するブレーズ型回折光学素子、レンズ作用などを生じさせるレンズ素子やマイクロレンズアレイ、入射波面に対して位相を付与するブレーズ型フレネルレンズ素子、入射光のうち所定の偏光成分に対して位相差を与えて構造複屈折作用を発現するブレーズ型の位相子等でもよい。このとき、凹凸構造44は、透明基材41と非平行で連続的な曲面に代わる、もしくは該曲面に加えて、透明基材と非平行な傾斜面を1つ以上有する構造でもよい。
【0079】
以下、本実施形態でも、光学素子40に波長700〜1200nmの近赤外光が入射するものとして説明する。
【0080】
透明基材41には、透明基材11と同様、ガラス、樹脂等、使用する光の波長に対して透明である部材を使用できる。
【0081】
本実施形態でも、凹凸部42は、異なる2以上の材料により構成され、かつ2以上の層を有する多層構造である。凹凸部42は、少なくとも1以上の層において、該層の使用波長における複素屈折率をn−ikとしたとき、式(1)を満たす材料(第1の材料)を使用する。
【0082】
反射防止層45a、45bは、基本的に反射防止層15a、15bと同様であり、実施形態1.で説明した反射防止層15a、15bのように単層や多層の構成であったり、同様の材料の使用であったり、踏襲できる。
【0083】
また、実施形態1.における反射防止層15a、15bと同様、反射防止層45a、45bもそれぞれ、入射側界面をなす媒質の屈折率をn
m、出射側界面をなす媒質の屈折率をn
0、当該反射防止層もしくはその各層の屈折率をn
r、厚さをd
rとしたとき、当該反射防止層の両界面に対して、式(4)を満たす単層の反射防止層または多層構造による理論反射率Rが上記条件を満たす1層以上の反射防止層でもよい。
【0084】
また、媒質43は、空気でも、樹脂や無機物等の空気以外でもよい。すなわち、光学素子40は、
図10(a)に示すように、凹凸部42の透明基材41と対向する側の表面を覆って平坦化する充填部46を備えてもよい。この場合、充填部46の材料が媒質43となる。また、光学素子40は、充填部46を封止する第2の透明基材41−2を備えてもよい。すなわち、光学素子40は、第1の透明基材41−1と第2の透明基材41−2とによって凹凸部42および充填部46を封止した構成でもよい。
【0085】
本実施形態でも、所定の波長(範囲)の光における、凹凸部42(特に、凹凸構造44の凸部相当)と充填部46との屈折率差Δnは、0.45以上が好ましく、0.6以上がより好ましい。
【0086】
また、
図11に示すように、光学素子10は、屈折作用等を発生させる面を有する凹凸構造44を2以上備えてもよい。この場合、1つの凹凸構造44を有する凹凸部42を含む光学素子40を2つ重ねた構成でもよいし、
図11(a)および
図11(b)のように、1つの透明基材41上に、2つの凹凸構造44が積層されてもよい。このとき、
図11(a)に示すように、2つの凹凸構造44のうち第1の凹凸構造44−1は、透明基材41と一体化されてもよい。その場合、2つの凹凸構造44のうち第2の凹凸構造44−2は第1の凹凸構造44−1に積層され、反射防止層45aが、第1の凹凸構造44−1(透明基材41の材料により形成される凹凸構造)と第2の凹凸構造44−2(第1の材料により形成される凹凸構造)との間に備えられる。また、反射防止層45bが、第2の凹凸構造44−2(第1の材料により形成される凹凸構造)と媒質43との間に備えられる。この場合、凹凸部42は4つの機能層(第1の凹凸構造44−1、反射防止層45a、第2の凹凸構造44−2、反射防止層45b)を含む。
【0087】
また、
図11(b)に示すように、第1の凹凸構造44−1は、透明基材41の面上に、別の部材により設けられてもよい。その場合、反射防止層45aは、透明基材41と第1の凹凸構造44−1(特に、第1の材料により形成される凹凸構造の場合)との間に備えられてもよい。また、反射防止層45bは、第2の凹凸構造44−2(特に、第1の材料により形成される凹凸構造の場合)と媒質43との間に備えられてもよい。さらに、第1の凹凸構造44−1と第2の凹凸構造44−2との間に反射防止層45cが設けられてもよい。この場合、凹凸部42は5つの機能層(反射防止層45a、第1の凹凸構造44−1、反射防止層45c、第2の凹凸構造44−2、反射防止層45b)を含む。このように、凹凸構造を形成している媒質と他の媒質との界面全てに反射防止層が設けられているのが好ましい。
【0088】
反射防止層45cは、反射防止層45a、45bと同様、当該反射防止層の両界面に対して、式(4)を満たす単層または多層構造により、理論反射率Rが上記条件を満たす設計であればよい。例えば、
図11(b)において透明基材41側から近赤外光が入射する場合、反射防止層45cに対して、入射側界面をなす媒質は第1の凹凸構造44−1、出射側界面をなす媒質は第2の凹凸構造44−2である。
【0089】
また、
図11(a)のように透明基材41の表面を切削して凹凸構造44を得た場合は、当該凹凸構造44の表面のうち最も低い位置にある面を、透明基材との境界(すなわち、当該凹凸構造44の最下面であり透明基材41の表面である)とすればよい。
【0090】
また、
図11(c)のように、光学素子40は、第1の凹凸構造44−1と第2の凹凸構造44−2が隣り合う構成でもよい。
図11(c)の場合、反射防止層45aは、第1の凹凸構造44−1(透明基材41の材料により形成される凹凸構造)と第2の凹凸構造44−2(第1の材料により形成される凹凸構造)との間に備えられる。また、反射防止層45bは、第2の凹凸構造44−2(第1の材料により形成される凹凸構造)と媒質43との間に備えられる。この場合、凹凸部42は4つの機能層(第1の凹凸構造44−1、反射防止層45a、第2の凹凸構造44−2、反射防止層45b)を含む。
【0091】
ここで、
図12を用いて、屈折率nを有する凹凸構造44に透明基材41の法線方向から入射し、角度α傾斜した面から空気(屈折率=1)に出射する光の屈折作用を説明する。まず、スネルの法則により、nsinα=sinβが成立するが、例えばα=10°のときに石英ガラス(屈折率1.455)を材質とする場合、出射角(β−α)=4.6°となる。一方、凹凸構造44に屈折率2.8の材料を用いる場合、出射角=19°となる。したがって、凹凸構造44にこのような大きな屈折率の材料を用いることで小さな傾斜角でも大きな出射角が得られる。ここで、該傾斜面は、凹凸構造44が有する曲面の一部の近似として捉えてもよい。したがって、比較的大きな屈折率の材料を使用すれば、凹凸構造の傾斜面または曲面の傾斜角を小さくでき、これより、凹凸構造44の傾斜面または曲面を構成している部分の高さを低減できるので、凹凸構造(とくに、傾斜面や曲面が隣接する境界領域)の加工が容易になる。したがって、本実施形態においても、光学素子40の上記構成は、最大出射角が7.5°以上の場合に適用してもよい。なお、上記の最大出射角は、15°以上でもよく、25°以上でもよい。
【0092】
また、同じ観点より、凹凸構造44が1つ以上の曲面を有する場合において、凹凸構造44の各曲面のサグ量は、20μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
【0093】
また、各実施形態の光学素子は、3次元計測装置や、認証装置のように、光を照射して対象物によって散乱された(検査)光を所定の投影範囲に照射する投影装置にも使用できる。また、各実施形態の光学素子は、通信機器に含まれる、通信情報伝搬用光学系におけるレンズやマイクロレンズとしても使用できる。
【0094】
これら各装置においては、光学素子の反射率が低減される効果により、光源から出射される光の光量に対する当該光学素子から出射される光の光量の割合が50%以上であると好ましい。
【0095】
また、各実施形態の光学素子は、入射光または入射光のうち所定の偏光成分に対して、所定の波面変調を発現する所定の位相差を発生させるものでもよい。例えば、所定の波面変調により補正される収差の量として1λrms以下を得る場合に、上記各実施形態の光学素子を適用すると、より効果的である。ここで、1λrms以上の収差量の補正も可能であるが、一般的には光学系によって収差は1λrms以下に抑えられており、大きな波面を近似するために回折作用による迷光が生じることがあるため、1λrms以下が好適である。
【実施例】
【0096】
(例1)
本例は、
図1に示す第1の実施形態の光学素子10の例である。本例では、透明基材11の部材としてガラス基板を用いる。また、凹凸部12の材料に、a−Si:HとSiO
2を用いる。ここで、a−Si:Hが第1の材料に相当する。
【0097】
本例で用いるa−Si:Hの波長950nmにおける複素屈折率は、3.82−ik(k=0.001以下)である。また、ガラス基板、SiO
2の波長950nmにおける屈折率は、それぞれ1.513、1.457である。また、媒質13は空気とする。
【0098】
まず、ガラス基板上にa−Si:Hを130nmの厚さで成膜後、SiO
2を228nmの厚さで成膜する。その後、フォトリソグラフィおよびエッチングによってa−Si:H膜およびSiO
2膜を2段の凹凸構造へ加工し、ガラス基板上に2層構造の凹凸部12を得る。ここで、基本ユニットのピッチPx,Pyは1056μm(X方向),1003μm(Y方向)であり、最大次数m
xmax,m
ymaxは640(X方向),480(Y方向)である。したがって、X方向の空間的な周期P
px=1.65μm、Y方向の空間的な周期P
py=2.09μmである。ここから、X方向のアスペクト比R
AX=0.434、Y方向のアスペクト比R
AY=0.343となる。なお、波長950nmの光に出射される回折光の最大出射角は、X方向で34.7°、Y方向で26.7°である。
【0099】
図13に、波長800〜1000nmの光における本例の凸部121を通る光路の垂直入射に対する反射率の計算結果を示す。なお、反射率は式(3)を用いて計算した。ここで、図中の本例の凸部121を通る光路は、具体的に、ガラス基板、a−Si:H、SiO
2および媒質13としての空気を通る光路である。
図13に示すように950nmの光における、本例の反射率は0.1%であり、十分に小さい。なお、950±10nmでは0.1%以下であり、950±20nmでは1.1%以下である。またこのとき、凹凸部12と媒質13によって生じる位相差Δnd/λは0.5であり、2段の回折光学素子として好適である。
【0100】
また、
図13に、比較例として、上記構成においてa−Si:Hのみで凹凸部を構成した場合の凸部を通る光路の垂直入射に対する反射率の計算結果も併せ示す。比較例のa−Si:H膜の厚さは167nmであり、Δnd/λ=0.5である。ここで、図中の比較例の光路は、具体的に、ガラス基板、a−Si:Hおよび空気を通る光路である。
図13に示すように950nmの光における、比較例の反射率は60.2%であり、本例の反射率と比べると大きく、反射による損失が大きい。
【0101】
(例2)
本例は、
図3(c)に示す第1の実施形態の光学素子10の例である。本例では、透明基材11の部材としてガラス基板を用いる。また、凹凸部12の反射防止層15aの材料として、a−Si:H、SiO
2およびSiNを用いる。また、下地層124および位相差層123の材料としてa−Si:Hを用いる。また、反射防止層15bの材料として、SiNを用いる。
【0102】
本例で用いるa−Si:Hの波長950nmの光における複素屈折率は3.82−ik(k=0.001以下)である。また、ガラス基板、SiO
2、SiNの波長950nmにおける屈折率は、それぞれ1.513、1.457、1.9である。また、媒質13は空気(屈折率=1)とする。
【0103】
まず、ガラス基板上にa−Si:H、SiO
2、SiNからなる3層構造の反射防止層15aを成膜する。各層の膜厚はそれぞれ130nm、230nm、120nmである。その後、下地層124および位相差層123となるa−Si:H膜を400nmの厚さで成膜する。成膜後、a−Si:H膜を4段の凹凸構造へ加工する。当該凹凸構造において位相差層123の1段の高さは85nmである。凹凸構造に加工後、反射防止層15bとしてのSiNを125nmの厚さで成膜する。これにより、透明基材11上に5層構造の凹凸部12を得る。ここで、基本ユニットのx,y方向のピッチおよび最大次数は、Px=1056μm,Py=1003μm,m
xmax=640,m
ymax=480である。したがって、x,y方向の空間的な周期P
px=1.65μm,P
py=2.09μmである。ここから、x,y方向のアスペクト比R
AX=0.309、R
AY=0.244となる。
【0104】
表1に、本例の構成における凹凸部12の各層の部材および高さをまとめて示す。
【0105】
【表1】
【0106】
図14に、波長800〜1200nmの光における本例の各光路(より具体的には、凹凸部の各段に相当する領域)の垂直入射に対する反射率の計算結果を示す。
図14に示すように950nmの光における本例の最大反射率は0.9%であり、各光路の平均反射率は0.6%であり、十分に小さい。またこのとき、凹凸部と媒質によって生じる位相差Δnd/λは0.75(4段分)であり4段の回折光学素子として好適である。
【0107】
(例3)
本例は、
図3(b)に示す第1の実施形態の光学素子10と比較して、反射防止層15aを備えない例(比較例)である。なお、本例の光学素子は、透明基材11と、位相差層123と、位相差層123と媒質13との間に設けられる反射防止層15bを含む。本例では、透明基材11の部材としてガラス基板を用いる。また、凹凸部12の位相差層123の材料としてa−Si:Hを用いる。また、反射防止層15bの材料としてSiNを用いる。本例で用いるa−Si:Hの波長850nmの光における複素屈折率は3.5−ik(k=0.001以下)である。また、ガラス基板、SiNの波長850nmにおける屈折率は、それぞれ1.514、1.87である。なお、SiNは計算上、波長によらず屈折率が1.87として計算している。
【0108】
まず、ガラス基板上にa−Si:Hを297.5nmの厚さで成膜後、SiO
2を228nmの厚さで成膜する。その後、フォトリソグラフィおよびエッチングによってa−Si:H膜を8段の凹凸構造へ加工する。当該凹凸構造において位相差層123の1段の高さは42.5nmである。凹凸構造に加工後、反射防止層15bとしてのSiN
xを114nmの厚さで成膜する。これにより、透明基材11上に2層構造の凹凸部12を得る。ここで、基本ユニットのx,y方向のピッチおよび最大次数は、Px=1056μm,Py=1003μm,m
xmax=640,m
ymax=480である。したがって、x,y方向の空間的な周期P
px=1.65μm,P
py=2.09μmである。ここから、x,y方向のアスペクト比R
AX=0.361、R
AY=0.285となる。
【0109】
図15(a)は、本例の光学素子の要部断面模式図である。また、表2に、本例の構成における凹凸部12の各層の部材および高さをまとめて示す。
【0110】
【表2】
【0111】
図16に、波長800〜900nmの光における本例の各光路の垂直入射に対する反射率の計算結果を示す。
図16に示すように850nmの光における本例の最大反射率は17.0%であり、各光路の平均反射率は17.0%である。このとき、凹凸部と媒質によって生じる位相差Δnd/λは0.875(8段分)である。
【0112】
(例4)
本例は、例3の構成に、さらに、位相差層123の各段の間にSiO
2からなるストップエッチ層17を設けた例(比較例)である。
図15(b)は、本例の光学素子の要部断面模式図である。本例のストップエッチ層17の厚さは各々5nmとした。他の構成は例3と同様である。表3に、本例の構成における凹凸部12の各層の部材および高さをまとめて示す。
【0113】
【表3】
【0114】
図17に、波長800〜900nmの光における本例の各光路の垂直入射に対する反射率の計算結果を示す。
図17に示すように850nmの光における本例の最大反射率は18.0%であり、各光路の平均反射率は15.9%である。このとき、凹凸部と媒質によって生じる位相差Δnd/λは0.883(8段分)である。
【0115】
(例5)
本例は、例4に示した構成の他の例(比較例)として、ストップエッチ層17の厚さが2nmの例を示す。表4に、本例の構成における凹凸部12の各層の部材および高さをまとめて示す。
【0116】
【表4】
【0117】
図18に、波長800〜900nmの光における本例の各光路の垂直入射に対する反射率の計算結果を示す。
図18に示すように850nmの光における本例の最大反射率は17.4%であり、各光路の平均反射率は16.6%である。このとき、凹凸部と媒質によって生じる位相差Δnd/λは0.894(8段分)である。
【0118】
(例6)
本例は、例4の構成に対して、さらに反射防止層15aを備えた例であって、ストップエッチ層17で発生する反射を抑制する構成である。なお、本例は、
図3(b)に示す第1の実施形態の光学素子10の例である。
図15(c)は、本例の光学素子の要部断面模式図である。本例のストップエッチ層17の厚さは各々5nmとした。また、反射防止層15aの材料として、波長850nmにおける屈折率が2.3のTiO
2を用いた。他の構成は例4と同様である。
【0119】
表5に、本例の構成における凹凸部12の各層の部材および高さをまとめて示す。
【0120】
【表5】
【0121】
図19に、波長800〜900nmの光における本例の各光路の垂直入射に対する反射率の計算結果を示す。
図19に示すように850nmの光における本例の最大反射率は0.5%であり、各光路の平均反射率は0.2%である。このとき、凹凸部と媒質によって生じる位相差Δnd/λは0.883(8段分)である。
【0122】
(例7)
本例は、
図11(c)に示す第2の実施形態の光学素子40の例である。本例では、透明基材41および第1の凹凸構造44−1の材料としてガラス基板を用い、第2の凹凸構造44−2の材料としてa−Si:Hを用いる。また、反射防止層45aとしてTa
2O
5、SiO
2およびTa
2O
5からなる3層の多層膜を用いる。また、反射防止層45bとしてSiO
2およびTa
2O
5からなる2層の多層膜を用いる。本例で用いるa−Si:Hの波長950nmの光における複素屈折率は3.68−ik(k=0.001以下)である。また、ガラス基板、SiO
2、Ta
2O
5の波長950nmにおける屈折率は、それぞれ1.513、1.47、2.158である。また、媒質43は空気とする。
【0123】
まず、ガラス基板の表面を、フォトリソグラフィおよびエッチング加工によってX方向の平均ピッチが30μm、Y方向の平均ピッチが24μmとなる不規則な凹型の曲面部421群を有する第1の凹凸構造44−1へと加工する(
図20(a))。なお、X方向とY方向は素子面内においてそれぞれ直交する2方向である。ここで、曲面部421の平均曲率半径は70μmであり、曲面部421端部の平均的な傾斜はX方向で12.4°、Y方向で9.9°である。凹凸構造44−1において一番高い面と一番低い面の高低差は3μmである。なお、素子の大きさを3mm角とし、凹凸構造の加工領域は素子の全面にわたっている。また、入射光の有効領域を2mmφとする。
【0124】
次いで、第1の凹凸構造44−1上に、厚さ112nmのTa
2O
5、厚さ171nmのSiO
2および厚さ224nmのTa
2O
5からなる3層の反射防止層45aをスパッタリングによって製膜する(
図20(b))。その後、プラズマCVDにより、反射防止層45a上に、第2の凹凸構造44−2となるa−Si:Hを、第1の凹凸構造44−1の曲面部421を覆うことができる厚さ3μm以上で成膜する(
図20(c))。その後、a−Si:H膜の表面を研磨して平坦化し、第2の凹凸構造44−2を得る。さらに、第2の凹凸構造44−2の平坦な面に厚さ55nmのSiO
2および厚さ55nmのTa
2Oからなる2層の反射防止膜45bを製膜し、本例の光学素子40を得る(
図20(d))。
【0125】
図21は、本例の凹凸構造44−2の入射側および出射側の界面それぞれでの垂直入射する、波長800〜1000nmの光に対する反射率の計算結果である。なお、凹凸構造44−2の入射側界面の反射率は、具体的に、透明基材41(第1の凹凸構造44−1)側から反射防止層45aを介して第2の凹凸構造44−2へ、光が垂直に入射した場合の反射率である。また、凹凸構造44−2の出射側界面の反射率は、具体的に、第2の凹凸構造44−2から反射防止層45bを介して空気(媒質43)へ、光が垂直に入射した場合の反射率である。
図21に示すように、本例の凹凸構造44−2の入射側および出射側の界面での反射率は、それぞれ950nm±50nmの波長帯において、1%以下であり、950nm±20nmの波長帯で0.5%以下となっている。
【0126】
本例の光学素子40に対して、波長950nmの光を、加工前のガラス基板の主面に垂直に入射した場合、第1の凹凸構造44−1と第2の凹凸構造44−2と、の貼り合わせ後の凹凸部42の各曲面部421の端部において屈折される光の平均的な出射角はX方向で28°、Y方向で22°、対角方向で39°となる。したがって、最大出射角は39°である。比較として、このような出射角を屈折率1.51のガラス基板の表面加工により得られる凹凸構造のみで実現すると、曲面部421端部の傾斜角としてX方向で52.5°、Y方向で42°必要になる。したがって、a−Si:Hにより形成される第2の凹凸構造44−2を設けることで、傾斜角が低減し、凹凸部42の曲面部421が、加工が容易な形状となる。ここで、上記の各曲面部421端部の平均的な出射角を、本例の光学素子40の最大出射角とみなしてもよい。
【0127】
(例8)
本例は、第2の実施形態の光学素子40の他の例である。
図22は、本例の光学素子40の要部断面模式図であり、凸型の曲面部421を含む凹凸部42を備える。本例では、透明基材41の部材としてガラス基板を用いる。また、凹凸構造44の材料としてa−Si:Hを用いる。また、反射防止層45aとしてTa
2O
5、SiO
2およびTa
2O
5からなる3層の多層膜、反射防止層45bとしてSiO
2およびTa
2O
5からなる2層の多層膜を用いる。本例で用いるa−Si:Hの波長950nmの光における複素屈折率は3.68−ik(k=0.001以下)である。また、ガラス基板、SiO
2、Ta
2O
5の波長950nmにおける屈折率は、例7と同じである。
【0128】
まず、ガラス基板上に、厚さ112nmのTa
2O
5、厚さ171nmのSiO
2および厚さ224nmのTa
2O
5からなる3層の反射防止層45aをスパッタリングによって製膜する。なお、反射防止層45aは、後に凹凸構造44(より具体的には、凸型の曲面部421)が形成される位置に少なくとも設けられていればよい。その後、プラズマCVDにより、反射防止層45aが設けられたガラス基板上に、凹凸構造44となるa−Si:Hを厚さ4.5μmで成膜する。その後、フォトリソグラフィとエッチングによって、該a−Si:H膜を、外形φ120μm、曲率半径400μm、ピッチ240μmのレンズアレイに加工し、反射防止層45aに積層される凸型の曲面部421を有する凹凸構造44を得る。その後、凹凸構造44が設けられたガラス基板上に、厚さ55nmのSiO
2および厚さ55nmのTa
2O
5からなる2層の反射防止膜45bを製膜し、本例の光学素子40を得る。
【0129】
本例の光学素子40に対して、波長950nmの光をガラス基板の主面に垂直に入射した場合、レンズアレイをなす各曲面部421の端部において屈折される光の出射角は23.7°となる。なお、各曲面部421の中心厚みは、4.5μmである。比較として、このような出射角を屈折率1.51のガラス基板の表面加工により得られる凹凸構造のみで実現しようとすると、曲面部421端部の傾斜角として41.4°必要になり、かつ曲面部421の中心厚みが23μm必要となる。したがって、レンズアレイの材料にa−Si:Hを用いることで、凹凸部42の曲面部421(レンズアレイをなす各レンズ)は、加工が容易な形状となる。
【0130】
(例9)
本例は、
図4に示す第1の実施形態の光学素子10の例であり、透明基材11の部材としてガラス基板を用いる。また、凹凸部12の材料に、a−Si:HとSiO
2を用いる。ここで、a−Si:Hが第1の材料に相当する。また、本例の媒質13となる充填部16の材料に、SiO
2を用いる。
【0131】
本例で用いるa−Si:Hの波長950nmにおける複素屈折率は、3.82−ik(k=0.001以下)である。また、ガラス基板、SiO
2の波長950nmにおける屈折率は、それぞれ1.513、1.47である。なお、SiO
2の屈折率が他の例と異なるが、成膜条件等による違いである。
【0132】
まず、ガラス基板上に、最終的に位相差層123となる、厚さ107nmのa−Si:H、厚さ239nmのSiO
2および厚さ107nmのa−Si:Hからなる3層の多層膜を成膜する(
図23(a))。その後、該多層膜を、フォトリソグラフィとエッチングによって矩形の凸部121が所定のピッチで並ぶ凹凸形状に加工し、ガラス基板上に3層構造の位相差層123を含む2段の凹凸部12を得る(
図23(b))。その後、該凹凸部12が形成されたガラス基板上に、充填部16となるSiO
2を、該凹凸部12の凹部122を覆うことができる厚さ453nm以上で成膜する(
図23(c))。その後、SiO
2膜の表面を研磨して平坦化し、充填部16を有する本例の光学素子10を得る。
【0133】
図24は、本例の凸部121を通る光路の垂直入射する、波長800〜1000nmの光に対する反射率の計算結果である。該反射率は、具体的には、透明基材11、3層構造の凸部121、充填部16によって生じる反射率として計算した。
図24に示すように、950nm±10nmの波長帯の反射率は、1%以下となっている。また、3層構造の凸部121と、充填部材による凹部122とによって生じる位相差は波長950nmに対して半波長になっており、本例の光学素子10はバイナリ格子として好適である。