特許第6981170号(P6981170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6981170荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981170
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20211202BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   H01L21/30 541D
   G03F7/20 504
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-203667(P2017-203667)
(22)【出願日】2017年10月20日
(65)【公開番号】特開2019-79857(P2019-79857A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2020年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】中山 貴仁
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−038297(JP,A)
【文献】 特開2006−032807(JP,A)
【文献】 特開2009−260265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01J 37/305
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージに載置された描画対象の基板に対し荷電粒子ビームを照射してパターンを描画する描画部と、
前記ステージ上に設けられ、マークが形成されたマーク基板と、
前記マークに対する前記荷電粒子ビームの照射により、前記マーク表面での前記荷電粒子ビームの照射位置を検出する照射位置検出器と、
レーザ光の照射、及び反射光の受光により、前記基板の表面の高さ及び前記マーク基板の表面の高さを検出する高さ検出器と、
前記照射位置検出器により検出された前記照射位置から、前記マーク表面での前記荷電粒子ビームのドリフト量を算出し、該ドリフト量に基づいてドリフト補正量を算出するドリフト補正部と、
前記ドリフト補正量を用いて、前記荷電粒子ビームの照射位置を補正する描画制御部と、
を備え、
前記マーク基板は、複数の前記マークが形成されたパターン領域と、パターンが形成されていない非パターン領域とを有し、該非パターン領域の少なくとも一部は該パターン領域の間に配置され、
前記高さ検出器は、前記非パターン領域内の検出点の高さを、前記マーク基板表面の高さとして検出し、
前記検出点は、前記非パターン領域の中心部に位置することを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項2】
ステージに載置された描画対象の基板に対し荷電粒子ビームを照射してパターンを描画する描画部と、
前記ステージ上に設けられ、マークが形成されたマーク基板と、
前記マークに対する前記荷電粒子ビームの照射により、前記マーク表面での前記荷電粒子ビームの照射位置を検出する照射位置検出器と、
レーザ光の照射、及び反射光の受光により、前記基板の表面の高さ及び前記マーク基板の表面の高さを検出する高さ検出器と、
前記照射位置検出器により検出された前記照射位置から、前記マーク表面での前記荷電粒子ビームのドリフト量を算出し、該ドリフト量に基づいてドリフト補正量を算出するドリフト補正部と、
前記ドリフト補正量を用いて、前記荷電粒子ビームの照射位置を補正する描画制御部と、
を備え、
前記マーク基板は、複数の前記マークが形成されたパターン領域と、パターンが形成されていない非パターン領域とを有し、
前記高さ検出器は、前記非パターン領域内の複数の検出点の高さを検出し、該複数の検出点の高さの検出結果から前記マーク基板表面の高さを求めることを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項3】
前記マーク基板では、前記非パターン領域の少なくとも一部が、前記パターン領域の間に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項4】
ステージに載置された描画対象の基板に対し荷電粒子ビームを照射してパターンを描画する描画部と、前記ステージ上に設けられ、マークが形成されたマーク基板とを備える荷電粒子ビーム描画装置を用いて描画を行う荷電粒子ビーム描画方法であって、
レーザ光の照射、及び反射光の受光により、前記基板の表面の高さ及び前記マーク基板の表面の高さを検出する工程と、
前記マークに対する前記荷電粒子ビームの照射により、前記マーク表面での前記荷電粒子ビームの照射位置を検出する工程と、
検出した前記照射位置から、前記マーク表面での前記荷電粒子ビームのドリフト量を算出する工程と、
前記ドリフト量に基づいて、ドリフト補正量を算出する工程と、
前記ドリフト補正量に基づき前記荷電粒子ビームの照射位置を補正する工程と、
を備え、
前記マーク基板は、複数の前記マークが形成されたパターン領域と、パターンが形成されていない非パターン領域とを有し、該非パターン領域内の複数の検出点の高さを検出し該複数の検出点の高さの検出結果から前記マーク基板表面の高さを求めることを特徴とする荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項5】
ステージに載置された描画対象の基板に対し荷電粒子ビームを照射してパターンを描画する描画部と、前記ステージ上に設けられ、マークが形成されたマーク基板とを備える荷電粒子ビーム描画装置を用いて描画を行う荷電粒子ビーム描画方法であって、
レーザ光の照射、及び反射光の受光により、前記基板の表面の高さ及び前記マーク基板の表面の高さを検出する工程と、
前記マークに対する前記荷電粒子ビームの照射により、前記マーク表面での前記荷電粒子ビームの照射位置を検出する工程と、
検出した前記照射位置から、前記マーク表面での前記荷電粒子ビームのドリフト量を算出する工程と、
前記ドリフト量に基づいて、ドリフト補正量を算出する工程と、
前記ドリフト補正量に基づき前記荷電粒子ビームの照射位置を補正する工程と、
を備え、
前記マーク基板は、複数の前記マークが形成されたパターン領域と、パターンが形成されていない非パターン領域とを有し、該非パターン領域の少なくとも一部は該パターン領域の間に配置され、該非パターン領域内の検出点の高さを、前記マーク基板表面の高さとして検出し、該検出点は、該非パターン領域の中心部に位置することを特徴とする荷電粒子ビーム描画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、縮小投影型露光装置を用いて、石英上に形成された高精度の原画パターン(マスク、或いは特にステッパやスキャナで用いられるものはレチクルともいう。)をウェーハ上に縮小転写する手法が採用されている。高精度の原画パターンは、電子ビーム描画装置によって描画され、所謂、電子ビームリソグラフィ技術が用いられている。
【0003】
電子ビーム描画装置では、様々な要因により、描画中に電子ビームの照射位置が時間経過と共にシフトするビームドリフトと呼ばれる現象が発生し得る。このビームドリフトをキャンセルするため、ドリフト補正が行われる。ドリフト補正では、ステージ上に配置されたマーク基板に形成された測定用マークを電子ビームで走査し、電子ビームの照射位置を測定して、ドリフト量を求める。測定用マークは、例えばドット形状や十字形状の金属パターンである。
【0004】
描画対象の試料(マスク)の厚さは、通常、公差により試料毎に異なる。また、ステージ上に載置されるマーク基板には撓みや傾きが発生する。そのため、マーク基板の表面の高さと、試料の表面の高さとが異なり、マーク表面でのドリフト量と、試料表面でのドリフト量との間に誤差が生じていた。ドリフト補正を高精度に行うには、マーク表面の高さと、試料表面の高さとの差を考慮する必要がある。
【0005】
電子ビーム描画装置には、試料表面やマーク表面にレーザ光を照射し、反射光の受光位置から試料表面やマーク表面の高さを検出する検出器が設けられている。マーク基板のうち、測定用マークが設けられたパターン領域にレーザ光を照射すると、光の干渉等により高さ測定に誤差が生じ得るため、検出器は、何もパターンが形成されていない非パターン領域にレーザ光を照射する。
【0006】
しかし、マーク基板の撓みや傾きにより、パターン領域と非パターン領域とで高低差が生じる。そのため、検出器が検出するマーク基板の表面の高さと、ドリフト量が測定されるマーク表面の高さとに誤差が生じ、ドリフト補正を高精度に行うことが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−94744号公報
【特許文献2】特開平9−22859号公報
【特許文献3】特開平7−94401号公報
【特許文献4】特開平5−206017号公報
【特許文献5】特公昭63−20376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、マーク高さを精度良く検出してドリフト補正を行い、パターンの描画精度を向上させることができる荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画装置は、ステージに載置された描画対象の基板に対し荷電粒子ビームを照射してパターンを描画する描画部と、前記ステージ上に設けられ、マークが形成されたマーク基板と、前記マークに対する前記荷電粒子ビームの照射により、前記マーク表面での前記荷電粒子ビームの照射位置を検出する照射位置検出器と、レーザ光の照射、及び反射光の受光により、前記基板の表面の高さ及び前記マーク基板の表面の高さを検出する高さ検出器と、前記照射位置検出器により検出された前記照射位置から、前記マーク表面での前記荷電粒子ビームのドリフト量を算出し、該ドリフト量に基づいてドリフト補正量を算出するドリフト補正部と、前記ドリフト補正量を用いて、前記荷電粒子ビームの照射位置を補正する描画制御部と、を備え、前記マーク基板は、複数の前記マークが形成されたパターン領域と、パターンが形成されていない非パターン領域とを有し、該非パターン領域の少なくとも一部は該パターン領域の間に配置され、前記高さ検出器は、前記非パターン領域内の検出点の高さを、前記マーク基板表面の高さとして検出し、前記検出点は、前記非パターン領域の中心部に位置するものである。
【0010】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画装置は、ステージに載置された描画対象の基板に対し荷電粒子ビームを照射してパターンを描画する描画部と、前記ステージ上に設けられ、マークが形成されたマーク基板と、前記マークに対する前記荷電粒子ビームの照射により、前記マーク表面での前記荷電粒子ビームの照射位置を検出する照射位置検出器と、レーザ光の照射、及び反射光の受光により、前記基板の表面の高さ及び前記マーク基板の表面の高さを検出する高さ検出器と、前記照射位置検出器により検出された前記照射位置から、前記マーク表面での前記荷電粒子ビームのドリフト量を算出し、該ドリフト量に基づいてドリフト補正量を算出するドリフト補正部と、前記ドリフト補正量を用いて、前記荷電粒子ビームの照射位置を補正する描画制御部と、を備え、前記マーク基板は、複数の前記マークが形成されたパターン領域と、パターンが形成されていない非パターン領域とを有し、前記高さ検出器は、前記非パターン領域内の複数の検出点の高さを検出し、該複数の検出点の高さの検出結果から前記マーク基板表面の高さを求めるものである
【0011】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画装置の前記マーク基板では、前記非パターン領域の少なくとも一部が、前記パターン領域の間に配置されている
【0012】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画方法は、ステージに載置された描画対象の基板に対し荷電粒子ビームを照射してパターンを描画する描画部と、前記ステージ上に設けられ、マークが形成されたマーク基板とを備える荷電粒子ビーム描画装置を用いて描画を行う荷電粒子ビーム描画方法であって、レーザ光の照射、及び反射光の受光により、前記基板の表面の高さ及び前記マーク基板の表面の高さを検出する工程と、前記マークに対する前記荷電粒子ビームの照射により、前記マーク表面での前記荷電粒子ビームの照射位置を検出する工程と、検出した前記照射位置から、前記マーク表面での前記荷電粒子ビームのドリフト量を算出する工程と、前記ドリフト量に基づいて、ドリフト補正量を算出する工程と、前記ドリフト補正量に基づき前記荷電粒子ビームの照射位置を補正する工程と、を備え、前記マーク基板は、複数の前記マークが形成されたパターン領域と、パターンが形成されていない非パターン領域とを有し、該非パターン領域内の複数の検出点の高さを検出し該複数の検出点の高さの検出結果から前記マーク基板表面の高さを求めるものである。
【0013】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画方法は、ステージに載置された描画対象の基板に対し荷電粒子ビームを照射してパターンを描画する描画部と、前記ステージ上に設けられ、マークが形成されたマーク基板とを備える荷電粒子ビーム描画装置を用いて描画を行う荷電粒子ビーム描画方法であって、レーザ光の照射、及び反射光の受光により、前記基板の表面の高さ及び前記マーク基板の表面の高さを検出する工程と、前記マークに対する前記荷電粒子ビームの照射により、前記マーク表面での前記荷電粒子ビームの照射位置を検出する工程と、検出した前記照射位置から、前記マーク表面での前記荷電粒子ビームのドリフト量を算出する工程と、前記ドリフト量に基づいて、ドリフト補正量を算出する工程と、前記ドリフト補正量に基づき前記荷電粒子ビームの照射位置を補正する工程と、を備え、前記マーク基板は、複数の前記マークが形成されたパターン領域と、パターンが形成されていない非パターン領域とを有し、該非パターン領域の少なくとも一部は該パターン領域の間に配置され、該非パターン領域内の検出点の高さを、前記マーク基板表面の高さとして検出し、該検出点は、該非パターン領域の中心部に位置するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、マーク高さを精度良く検出してドリフト補正を行い、パターンの描画精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態による電子ビーム描画装置の概略図である。
図2】電子ビームの可変成形を説明する図である。
図3】実施の形態によるマーク基板を示し、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
図4】実施の形態による描画方法を説明するフローチャートである。
図5】比較例によるマーク基板を示し、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
図6】別の実施の形態によるマーク基板の平面図である。
図7】別の実施の形態によるマーク基板の平面図である。
図8】別の実施の形態によるマーク基板の平面図である。
図9】別の実施の形態によるマーク基板の平面図である。
図10】別の実施の形態によるマーク基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは電子ビームに限るものでなく、イオンビーム等でもよい。
【0017】
図1は本発明の実施形態に係る電子ビーム描画装置の概略図である。図1に示す描画装置1は、描画対象の基板56に電子ビームを照射して所望のパターンを描画する描画部30と、描画部30の動作を制御する制御部10とを備えた可変成形型の描画装置である。
【0018】
描画部30は、電子鏡筒32及び描画室34を有している。電子鏡筒32内には、電子銃40、ブランキングアパーチャ41、第1成形アパーチャ42、第2成形アパーチャ43、ブランキング偏向器44、成形偏向器45、対物偏向器46、照明レンズ47、投影レンズ48、及び対物レンズ49が配置されている。
【0019】
描画室34内には、移動可能に配置されたステージ50が配置される。ステージ50は、水平面内で互いに直交するX方向及びY方向に移動する。ステージ50上には、基板56が載置される。基板56は、例えば、半導体装置を製造する際の露光用マスク、マスクブランクス、半導体装置が製造される半導体基板(シリコンウェハ)等である。
【0020】
ステージ50上には、水平面内でのステージ50の位置を測定するためのミラー51が設けられている。また、ステージ50上には、電子ビームBのドリフト量を測定する際に使用されるマークが形成されたマーク基板20が設けられている。例えば、マーク基板20はシリコン基板であり、シリコン基板上に、タンタルやタングステン等の重金属で構成されたマークが形成されている。
【0021】
ステージ50の上方には、マークに対する電子ビームBの照射により、電子ビームBの照射位置(ビーム位置)を検出する照射位置検出器52が設けられている。照射位置検出器52として、例えば、マークが電子ビームBにより走査され、マークにより反射された反射電子を電流値として検出する電子検出器を用いることができる。検出されたビーム位置は、後述する制御計算機11に通知される。
【0022】
描画室34の外周面には、基板56やマーク基板20の表面高さを検出する高さ検出器58が設けられている。この高さ検出器58は、基板56やマーク基板20の表面に斜め上方からレーザ光を照射する投光部58aと、反射光を受光する受光部58bとを有する。受光部58bによる反射光の受光位置から、基板56やマーク基板20の表面高さを検出することができる。表面高さの検出結果は制御計算機11に通知される。
【0023】
制御部10は、制御計算機11、ステージ位置測定部16、記憶装置18等を有している。制御計算機11は、ショットデータ生成部12、描画制御部13、及びドリフト補正部14を有する。制御計算機11の各部の入出力データや演算中のデータはメモリ(図示略)に適宜格納される。
【0024】
制御計算機11の各部は、ハードウェアで構成してもよく、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、少なくとも一部の機能を実現するプログラムをCD−ROM等の記録媒体に収納し、電気回路を有するコンピュータに読み込ませて実行させてもよい。
【0025】
記憶装置18(記憶部)は、設計上の図形パターンが配置されたレイアウトデータを描画装置1に入力可能なフォーマットに変換した描画データを格納する。
【0026】
ショットデータ生成部12が記憶装置18から描画データを読み出し、複数段のデータ変換処理を行って装置固有のショットデータを生成する。ショットデータには、例えば、図形種、図形サイズ、照射位置、照射時間等が定義される。描画制御部13は、ショットデータに基づき、描画部30を制御して描画処理を行う。
【0027】
ドリフト補正部14は、ドリフト量を算出し、ドリフト量をキャンセルするドリフト補正量を求める。ドリフト量の算出方法は後述する。ドリフト補正部14は、ドリフト補正量に基づいて、電子ビームBの偏向量(ビーム照射位置)の補正情報を生成し、描画制御部13に与える。描画制御部13は、この補正情報を用いて描画部30を制御し、ビーム照射位置を補正する。
【0028】
ステージ位置測定部16は、ステージ50上に固定されたミラー51にレーザ光を入反射させてステージ50の位置を測定するレーザ測長器を含む。ステージ位置測定部16は、測定したステージ位置を制御計算機11に通知する。
【0029】
図1では、実施の形態を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置1は、その他の構成を備えていても構わない。
【0030】
電子鏡筒32内に設けられた電子銃40から放出された電子ビームBは、ブランキング偏向器44内を通過する際に、ブランキング偏向器44によって、ビームオンの状態ではブランキングアパーチャ41を通過し、ビームオフの状態では、ビーム全体がブランキングアパーチャ41で遮蔽されるように偏向される。ビームオフの状態からビームオンとなり、その後ビームオフになるまでにブランキングアパーチャ41を通過した電子ビームBが1回の電子ビームのショットとなる。
【0031】
ブランキング偏向器44とブランキングアパーチャ41を通過することによって生成された各ショットの電子ビームBは、照明レンズ47により、矩形の開口42a(図2参照)を有する第1成形アパーチャ42に照射される。第1成形アパーチャ42の開口42aを通過することで、電子ビームBは矩形に成形される。
【0032】
第1成形アパーチャ42を通過した第1成形アパーチャ像の電子ビームは、投影レンズ48により第2成形アパーチャ43上に投影される。第2成形アパーチャ43上での第1アパーチャ像の位置は、成形偏向器45によって制御される。これにより、第2成形アパーチャ43の開口43aを通過する電子ビームの形状と寸法を変化させる(可変成形を行う)ことができる。
【0033】
第2成形アパーチャ43を通過した電子ビームは、対物レンズ49により焦点が合わされ、対物偏向器46により偏向されて、XYステージ50上の基板56の所望する位置に照射される。
【0034】
図3(a)は、マーク基板20の平面図である。マーク基板20は、複数のマークが形成されたパターン領域22と、何もパターンが形成されていない非パターン領域24を有する。パターン領域22内には、十字形状やドット形状のパターンからなるマークが多数形成されており、電子ビームBの走査でマークが劣化すると、未使用のマークを順次使用していく。
【0035】
図3(a)に示す例では、パターン領域22がロ字形であり、その内側が非パターン領域24となっている。言い換えれば、非パターン領域24を囲むようにパターン領域22が設けられている。非パターン領域24の大きさは特に限定されないが、例えば1mm角程度である。非パターン領域24の中心部(図中×印の位置)が、高さ検出器58の投光部58aからレーザ光が照射される高さ検出点25となる。
【0036】
このような位置を高さ検出点25とすることで、図3(b)に示すようにマーク基板20が傾いていたり、マーク基板20に撓みがあったりする場合でも、高さ検出点25の高さと、パターン領域22内のマークの高さとをほぼ同等にすることができる。
【0037】
このようなマーク基板20を用いたドリフト補正処理を含む描画方法を、図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0038】
まず、高さ検出器58が、基板56の表面高さを検出する(ステップS1)。続いて、高さ検出器58は、マーク基板20の高さ検出点25にレーザ光を照射して、マーク基板20の表面高さを検出する(ステップS2)。このとき、基板56の表面高さと、マーク基板20の表面高さの差分が閾値を超えるかどうかを判断し(ステップS3)、超えた場合は基板56の高さを調整する(ステップS4)。
【0039】
ステージ50を移動させ、マークを対物レンズ49の中心位置に合わせ、電子ビームBによりマークを走査する(ステップS5)。照射位置検出器52が反射電子を検出し、ビームプロファイルを測定して、ビーム照射位置を検出する。ドリフト補正部14が、検出されたビーム照射位置と、基準位置とのずれ量を、ドリフト量として算出する(ステップS6)。
【0040】
ドリフト補正部14が、測定されたドリフト量に基づいて、ドリフト補正量を算出する(ステップS7)。描画制御部13は、記憶装置18から読み出した描画データと、算出されたドリフト補正量に基づいて、ビーム照射位置を補正しながら描画処理を行う(ステップS8)。
【0041】
次のドリフト量の測定時期までは(ステップS9_Yes、ステップS10_No)、ステップS7で算出したドリフト量を用いて、描画処理を行う。
【0042】
[比較例]
図5(a)は比較例によるマーク基板60の平面図であり、図5(b)はマーク基板60の側面図である。マーク基板60は、複数のマークが形成されたパターン領域62と、何もパターンが形成されていない非パターン領域64を有する。パターン領域62は、マーク基板60の一半側に位置し、非パターン領域64は他半側に位置する。非パターン領域64内のうち、パターン領域62から離れた箇所が高さ検出点65となる。
【0043】
図5(b)に示すように、マーク基板60が傾いていた場合、高さ検出点65の高さと、パターン領域62内のマーク高さとでは誤差が生じる。そのため、高さ検出点65の高さと基板56の表面高さとの差分、及びマーク表面におけるドリフト量からは、基板56の表面におけるドリフト量を精度良く計算することができず、ドリフト補正が不十分となる。
【0044】
一方、本実施形態では、マーク基板20に傾きや撓みがある場合でも、パターン領域22内のマークと、高さ検出点25とがほぼ同じ高さに位置するため、マーク高さを精度良く検出できる。そのため、基板56の表面におけるドリフト量を精度良く計算することができ、パターンの描画精度を向上させることができる。
【0045】
上記実施形態では、パターン領域22をロ字形(角環状)とする例について説明したが、円環状でもよく、一部を省略したコ字形やC字形等でもよい。
【0046】
図6に示すマーク基板20Aのように、高さ検出点25aを含む非パターン領域24aを囲むロ字形のパターン領域22aを複数設けてもよい。パターン領域22aには複数のマークが含まれる。ドリフト量測定の際は、ビーム走査するマークが含まれるパターン領域22aに対応した高さ検出点25aの高さを検出する。
【0047】
図7に示すマーク基板20Bのように、略矩形状のパターン領域22bと、対応する高さ検出点25bとの組み合わせを複数設けてもよい。
【0048】
図8に示すマーク基板20Cのように、長矩形状のパターン領域22cを間隔を空けて複数設け、パターン領域22c間(パターン領域22cに隣接した領域)を非パターン領域24cとし、非パターン領域24c内に複数の高さ検出点25cを設定してもよい。ドリフト量測定の際は、ビーム走査するマークに最も近接した高さ検出点25cの高さを検出する。
【0049】
上記実施形態では、マーク基板20の高さ検出点25を1箇所としていたが、複数箇所の高さを検出し、内挿によりマークの高さを算出してもよい。例えば、図9に示すように、パターン領域の外側と内側の非パターン領域に高さ検出点25_1〜25_9を設定し、これら複数の高さ検出点25_1〜25_9の高さを検出し、検出結果の内挿によりマークの高さを算出する。
【0050】
図10に示すように、マーク基板20Dの中央部に略矩形状のパターン領域22dを設け、パターン領域22dの周囲の非パターン領域に複数の高さ検出点を設定してもよい。例えば、マーク基板20Dの四方の角部に高さ検出点25d_1〜25d_4を設定する。高さ検出結果の内挿によりマークの高さを算出する。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 描画装置
10 制御部
11 制御計算機
12 ショットデータ生成部
13 描画制御部
14 ドリフト補正部
18 記憶装置
20、20A、20B、20C、20D マーク基板
22 パターン領域
24 非パターン領域
25 高さ検出点
30 描画部
32 電子鏡筒
34 描画室
40 電子銃
41 ブランキングアパーチャ
42 第1成形アパーチャ
43 第2成形アパーチャ
44 ブランキング偏向器
45 成形偏向器
46 対物偏向器
47 照明レンズ
48 投影レンズ
49 対物レンズ
50 ステージ
52 照射位置検出器
58 高さ検出器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10