特許第6981211号(P6981211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6981211水酸化リチウム粉砕粉、水酸化リチウム粉砕粉の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981211
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】水酸化リチウム粉砕粉、水酸化リチウム粉砕粉の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01D 15/02 20060101AFI20211202BHJP
   B02C 19/06 20060101ALI20211202BHJP
   H01M 4/505 20100101ALN20211202BHJP
   H01M 4/525 20100101ALN20211202BHJP
【FI】
   C01D15/02
   B02C19/06 B
   !H01M4/505
   !H01M4/525
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-231201(P2017-231201)
(22)【出願日】2017年11月30日
(65)【公開番号】特開2018-90484(P2018-90484A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2020年8月5日
(31)【優先権主張番号】特願2016-233659(P2016-233659)
(32)【優先日】2016年11月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】金谷 日出和
(72)【発明者】
【氏名】川上 裕二
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 知倫
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−151707(JP,A)
【文献】 特開2016−105376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01D 15/02
B02C 19/06
H01M 4/505
H01M 4/525
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素濃度が0.3質量%以下であり、水分量が0.15質量%以下である水酸化リチウム粉砕粉。
【請求項2】
平均粒子径が10μm以上100μm以下である請求項1に記載の水酸化リチウム粉砕粉。
【請求項3】
無水水酸化リチウム、および水酸化リチウム一水和物から選択される1種以上を含有する請求項1または2に記載の水酸化リチウム粉砕粉。
【請求項4】
水酸化リチウムを、二酸化炭素の含有量が100体積ppm未満であり、露点が−70℃以下の雰囲気中で粉砕機により粉砕する粉砕工程を有する水酸化リチウム粉砕粉の製造方法。
【請求項5】
前記粉砕機が気流式粉砕機である請求項4に記載の水酸化リチウム粉砕粉の製造方法。
【請求項6】
前記気流式粉砕機がジェットミルである請求項5に記載の水酸化リチウム粉砕粉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸化リチウム粉砕粉、水酸化リチウム粉砕粉の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やノート型パソコンなどの携帯電子機器の普及に伴い、高いエネルギー密度を有する小型で軽量な非水系電解液二次電池の開発が強く望まれている。
【0003】
また、モーター駆動用電源などの大型の電池として高出力の二次電池の開発が強く望まれている。
【0004】
このような要求を満たす二次電池として、リチウムイオン二次電池がある。リチウムイオン二次電池は、負極、正極、電解液などで構成され、負極および正極の活物質として、リチウムを脱離および挿入することが可能な材料が用いられている。
【0005】
リチウムイオン二次電池については、現在研究開発が盛んに行われているところである。中でも、層状またはスピネル型のリチウム金属複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有する電池として実用化が進んでいる。
【0006】
係るリチウムイオン二次電池の正極材料として、現在、合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)や、コバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)、マンガンを用いたリチウムマンガン複合酸化物(LiMn)、リチウムニッケルマンガン複合酸化物(LiNi0.5Mn0.5)、リチウム過剰ニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiMnO-LiNiMnCo)などのリチウム複合酸化物が提案されている。
【0007】
上述のリチウム複合酸化物の製造方法として、例えば特許文献1には、リチウム二次電池の正極板を構成するコバルト酸リチウム配向焼結板を製造するための、コバルト酸リチウム配向焼結板の製造方法であって、Co原料及びBiを含むグリーンシートを作製するグリーンシート作製工程と、
前記グリーンシート作製工程で得られた前記グリーンシートを、ビスマス源が添加されたビスマス雰囲気下において焼成することにより(h00)面がシート面と平行となるような配向性を有する配向焼成板を作製するグリーンシート焼成工程と、
前記グリーンシート焼成工程で得られた前記配向焼成板をリチウム源が共存するリチウム雰囲気下で焼成することによりLiCoOの(104)面が板面と平行となるような配向性を有するコバルト酸リチウム配向焼結板を作製するコバルト酸リチウム配向焼結板作製工程と、を含む、コバルト酸リチウム配向焼結板の製造方法が開示されている。
【0008】
また、例えば上述のリチウム複合酸化物の粒状体等を得る場合であれば、リチウム金属以外の成分を含有するリチウム複合酸化物前駆体と、水酸化リチウム等のリチウム化合物との混合物を焼成する方法が用いられている。
【0009】
このようにリチウム複合酸化物を製造する場合には、リチウム源として水酸化リチウムが用いられているが、工業的に入手できる水酸化リチウムは塊状であることが多いため、通常粉砕した水酸化リチウムが用いられている。また、粉砕した水酸化リチウムは、気流により配管内を搬送され各種工程へと搬送されている。
【0010】
例えば特許文献1においては、水酸化リチウムとしてのLiOH・HO粉末をジェットミルで1μm以下に粉砕してから用いた例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2016−105376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、水酸化リチウムを粉砕した場合に、粉砕物を搬送する配管に閉塞を生じる場合があった。このように配管が閉塞すると、配管を取り外して清掃等を行う必要があり、生産性の観点から問題があった。
【0013】
そこで上記従来技術が有する問題に鑑み、本発明の一側面では、搬送する配管が閉塞することを抑制することができる水酸化リチウム粉砕粉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、
炭素濃度が0.3質量%以下であり、水分量が0.15質量%以下である水酸化リチウム粉砕粉を提供する。

【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、搬送する配管が閉塞することを抑制することができる水酸化リチウム粉砕粉を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[水酸化リチウム粉砕粉]
まず、本実施形態の水酸化リチウム粉砕粉の一構成例について説明する。
【0017】
本実施形態の水酸化リチウム粉砕粉は、炭素濃度を0.3質量%以下とすることができる。
【0018】
本発明の発明者らは、粉砕した水酸化リチウム、すなわち水酸化リチウム粉砕粉を搬送する配管(流路)に閉塞を生じる原因について鋭意検討を行った。その結果、配管の閉塞を生じる場合には、水酸化リチウム粉砕粉の炭酸化が進行し、該水酸化リチウム粉砕粉の炭素濃度(炭素含有量、炭素量)が高くなっていることが確認できた。
【0019】
炭酸化が進んだ水酸化リチウム粉砕粉により閉塞が生じるメカニズムについては明らかではないが、本発明の発明者らは以下のように推定している。
【0020】
塊状の水酸化リチウムを粉砕し、水酸化リチウム粉砕粉とすることで、水酸化リチウムの新たな面が露出することになるが、該露出した新たな面が、大気中の二酸化炭素と反応して例えば、以下の式(1)、または式(2)で示すように炭酸リチウムと、水分とを生じる。
【0021】
2LiOH+CO→LiCO+HO ・・・(1)
2LiOH・HO+CO→LiCO+3HO ・・・(2)
このため、水酸化リチウム粉砕粉について炭素濃度が高い場合、炭酸化の際に生じた水分に起因する水分含有量も多くなっており、水酸化リチウム粉砕粉間での凝集が生じやすくなり、配管の閉塞が生じ易くなると考えられる。
【0022】
そこで、本実施形態の水酸化リチウム粉砕粉は、炭素濃度、すなわち炭素の含有割合を0.3質量%以下とすることで、上述の反応を抑制しており、水分の含有量も抑制されているため、水酸化リチウム粉砕粉間の凝集を抑制することができる。このため、水酸化リチウム粉砕粉を搬送する配管の閉塞の発生を抑制することができる。
【0023】
本実施形態の水酸化リチウム粉砕粉の炭素濃度は小さいことが好ましく、0.2質量%以下であることがより好ましい。
【0024】
また、本実施形態の水酸化リチウム粉砕粉の炭素濃度の下限値は特に限定されるものではないが、例えば0以上とすることができる。
【0025】
水酸化リチウム粉砕粉の炭素濃度の測定方法は特に限定されるものではないが、例えば試料中の炭素を高周波等で燃焼し分析する無機炭素分析装置により測定、評価を行うことができる。
【0026】
なお、原料となる水酸化リチウムの炭素濃度が0.3質量%を超えていると、そのまま粉砕しても所望の炭素濃度をもつ水酸化リチウム粉砕粉を得られない場合がある。そのため、原料となる水酸化リチウムの炭素濃度は0.3質量%以下であることが好ましく、0.15質量%以下であることがより好ましい。原料となる水酸化リチウムの炭素濃度の下限値は特に限定されないが、例えば0.02質量%以上とすることができる。
【0027】
また、水酸化リチウム粉砕粉に含有される水分量は、0.5質量%以下であることが好ましく、0.15質量%以下であることがより好ましい。なお、水酸化リチウム粉砕粉に含まれる水分量の下限値は特に限定されないが、例えば0.01質量%以上とすることが好ましい。
【0028】
本実施形態の水酸化リチウム粉砕粉の粒径等は特に限定されるものではないが、上述のように、粉砕を行い、その表面積が大きくなった場合に炭酸化が進行し易くなり、閉塞の原因となり易い。従って、本実施形態の水酸化リチウム粉砕粉の平均粒子径は大きいことが好ましい。また、粒径が小さくなると水酸化リチウム粉砕粉のかさが大きくなるため、充填性が問題となることがある。このため、本実施形態の水酸化リチウム粉砕粉の平均粒子径は例えば10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましい。
【0029】
ただし、平均粒子径が大きすぎると、正極活物質を製造する際に水酸化リチウム粉砕粉と遷移金属前駆体粉末との混合性に問題を生じる場合があることから、本実施形態の水酸化リチウム粉砕粉の平均粒子径は例えば100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましい。
【0030】
なお、ここでの平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒子径を意味する。本明細書において、平均粒子径は同様の意味を有する。
【0031】
本実施形態の水酸化リチウム粉砕粉に含まれる水酸化リチウムの種類は特に限定されるものではない。例えば本実施形態の水酸化リチウム粉砕粉は、無水水酸化リチウム、および水酸化リチウム一水和物から選択される1種以上を含有することが好ましい。
【0032】
また、本実施形態の水酸化リチウム粉砕粉は、無水水酸化リチウム、および水酸化リチウム一水和物から選択される1種以上から構成することもできる。ただし、この場合でも、本実施形態の水酸化リチウム粉砕粉が、粉砕工程等において混入した不可避成分を含有することを排除するものではない。
【0033】
以上に説明した本実施形態の水酸化リチウム粉砕粉によれば、炭素含有量が0.3質量%以下であり、炭酸化反応の進行が十分に抑制されている。このため、水酸化リチウム粉砕粉同士の凝集を十分に抑制し、該水酸化リチウム粉砕粉を搬送する配管において閉塞が生じることを抑制することができる。
[水酸化リチウム粉砕粉の製造方法]
本実施形態の水酸化リチウム粉砕粉の製造方法の一構成例について説明する。
【0034】
本実施形態の水酸化リチウム粉砕粉の製造方法は、水酸化リチウムを脱炭酸雰囲気中で粉砕機により粉砕する粉砕工程を有することができる。なお、ここでいう脱炭酸雰囲気とは後述のように二酸化炭素の含有量が100体積ppm未満の雰囲気であることが好ましい。
【0035】
既述のように、本発明の発明者らは粉砕した水酸化リチウム、すなわち水酸化リチウム粉砕粉を搬送する配管(流路)に閉塞を生じる原因について鋭意検討を行った。その結果、配管の閉塞を生じる場合には、水酸化リチウム粉砕粉の炭酸化が進行し、該水酸化リチウム粉砕粉の炭素濃度が高くなっており、炭酸化の際に発生した水が原因で水酸化リチウム粉砕粉間の凝集が生じやすくなっていることを見出した。
【0036】
そこで、本実施形態の水酸化リチウム粉砕粉の製造方法は、脱炭酸雰囲気中で粉砕機により粉砕する粉砕工程を有することができる。
【0037】
ここでいう脱炭酸雰囲気とは、炭酸ガス、すなわち二酸化炭素の含有量を大気雰囲気よりも低減した雰囲気を意味し、例えば二酸化炭素の含有量が100体積ppm未満であることが好ましく、50体積ppm以下であることがより好ましく、20体積ppm以下であることがさらに好ましい。なお、脱炭酸雰囲気中の二酸化炭素の含有量の下限値は特に限定されず、0でも良いことから、0以上とすることができる。
【0038】
また、上記粉砕工程は、二酸化炭素濃度が十分に抑制されていればその他の成分は特に限定されるものではない。例えば粉砕工程の雰囲気中に含まれる水分については、直接水酸化リチウム粉砕粉の表面状態に影響を与えるものではなく、その含有量は特に限定されない。ただし、特に水酸化リチウム粉砕粉間の凝集を抑制する観点から、粉砕工程で用いる雰囲気、すなわち脱炭酸雰囲気の水分の含有量は少ない方が好ましく、例えば該脱炭酸雰囲気の露点は−70℃以下であることが好ましい。
【0039】
なお、脱炭酸雰囲気の露点の下限値は特に限定されないが、過度に低くするためにはコストが高くなることから、脱炭酸雰囲気の露点は−90℃以上とすることができる。
【0040】
既述のように脱炭酸雰囲気の二酸化炭素以外のその他の成分については特に限定されるものではないため、脱炭酸雰囲気としては、例えば二酸化炭素の含有量を低減した空気(脱炭酸空気)や、不活性ガス雰囲気、酸素雰囲気等任意の雰囲気を用いることができる。
【0041】
粉砕工程で用いる粉砕機の種類は特に限定されるものではなく、気流式粉砕機や、ボールミル、ビーズミル、ローラーミル、遊星ミル等の各種粉砕機を用いることができるが、粉砕工程で用いる粉砕機としては、気流式粉砕機を好ましく用いることができる。気流式粉砕機では、高圧に噴射される気体に被粉砕物を乗せ、被粉砕物同士や、被粉砕物と衝突板とを衝突させることで被粉砕物の粉砕を行っている。このため、従来のように脱炭酸を行っていない気体を用いて粉砕を行うと特に炭酸化が進行し、水酸化リチウム粉砕粉間の凝集が特に進行し易くなっていた。しかし、本実施形態の水酸化リチウム粉砕粉の製造方法によれば、脱炭酸雰囲気とすることで、すなわち係る被粉砕物を搬送するための気体として脱炭酸気体を用いることで、水酸化リチウム粉砕粉間の凝集を抑制することができる。このため、水酸化リチウム粉砕粉を搬送する配管の閉塞の発生を抑制する効果が特に高くなるため好ましい。
【0042】
気流式粉砕機としては、例えばジェットミルを好ましく用いることができる。
【0043】
本実施形態の水酸化リチウム粉砕粉の製造方法では、上述の粉砕工程だけではなく、粉砕工程終了後の水酸化リチウム粉砕粉の搬送経路についても脱炭酸雰囲気とすることが好ましい。具体的には例えば粉砕機で粉砕した水酸化リチウム粉砕粉を粉砕粉捕集手段により捕集する場合には、粉砕機から粉砕粉捕集手段までの間の経路についても脱炭酸雰囲気とすることが好ましい。
【0044】
以上に説明した本実施形態の水酸化リチウム粉砕粉の製造方法によれば、既述の炭素濃度を抑制した水酸化リチウム粉砕粉を製造することができる。このため、水酸化リチウム粉砕粉を搬送する配管において水酸化リチウム粉砕粉間の凝集を防止し、該配管が閉塞することを抑制することができる。
[非水系電解液二次電池用正極活物質、及びその製造方法]
次に、本実施形態の非水系電解液二次電池用正極活物質(以下、単に「正極活物質」とも記載する)、及びその製造方法の一構成例について説明する。
【0045】
本実施形態の正極活物質は、既述の水酸化リチウム粉砕粉を用いて製造される正極活物質であれば良く、その組成は特に限定されるものではない。
【0046】
本実施形態の正極活物質は、例えば一般式:LiNi(1−y−z)Co2+α(式中、Mは、Al、Tiの中から選ばれる少なくとも1種の元素を表し、x、y、zはそれぞれ、0.90≦x≦1.10、0.02≦y≦0.35、0.005≦z≦0.15、−0.2≦α≦0.2を満たす)で表されるリチウム金属複合酸化物とすることができる。
【0047】
本実施形態の正極活物質の製造方法は、特に限定されるものではない。本実施形態の正極活物質の製造方法は、例えば以下の工程を有することができる。
【0048】
前駆体水酸化物を熱処理する焙焼工程。
【0049】
熱処理済みの前駆体水酸化物と、水酸化リチウム粉砕粉とを混合して混合物を形成する混合工程。
【0050】
混合工程で形成された混合物を焼成する焼成工程。
【0051】
以下、各工程について説明する。
(焙焼工程)
焙焼工程では、前駆体水酸化物を熱処理することができ、前駆体水酸化物としては、生成する正極活物質の組成に応じて選択することができる。例えばニッケルコバルト複合水酸化物を用いることができる。ニッケルコバルト複合水酸化物としては、例えば一般式:Ni(1−y−z)Co(OH)2+β(式中、Mは、Al、Tiの中から選ばれる少なくとも1種の元素を表し、y、zはそれぞれ、0.02≦y≦0.35、0.005≦z≦0.15、−0.2≦β≦0.2を満たす)で表されるニッケルコバルト複合水酸化物を用いることができる。ニッケルコバルト複合水酸化物の製造方法は特に限定されず、例えば、ニッケル、コバルトおよび添加元素Mを共沈させることによりニッケルコバルト複合水酸化物を得ることができる。
【0052】
焙焼工程では、例えば前駆体水酸化物中の水分を除去し、前駆体水酸化物中の少なくとも一部を酸化物とすることができる。
【0053】
焙焼工程における熱処理温度は特に限定されないが、熱処理により前駆体水酸化物粒子が含有する水分を除去し、最終的に得られる正極活物質中のリチウムや、その他の金属の原子数の割合がばらつくことを防ぐことができるように選択することが好ましい。
【0054】
焙焼工程における熱処理温度は特に限定されないが、例えば熱処理温度は105℃以上800℃以下であることが好ましく、500℃以上800℃未満であることがより好ましい。
【0055】
これは、焙焼工程での熱処理温度が105℃未満の場合、前駆体水酸化物中の余剰水分が除去できず、最終的に得られる正極活物質中のリチウムや、その他の金属の原子数の割合のばらつきが大きくなる恐れがあるからである。
【0056】
また、熱処理温度が800℃を超えると、焙焼により粒子が焼結して均一な粒径の正極活物質が得られない恐れがあるからである。
【0057】
なお、焙焼工程では、得られる正極活物質中のリチウム等の金属の原子数の割合にばらつきが生じない程度に水分が除去できればよいので、必ずしも全ての前駆体水酸化物を酸化物に転換する必要はない。しかしながら、得られる正極活物質中の金属の原子数のばらつきを、より少なくするためには、熱処理温度を500℃以上として前駆体水酸化物を酸化物に全て転換することが好ましい。
【0058】
このため、焙焼工程における熱処理温度は例えば500℃以上800℃未満とすることがより好ましい。
【0059】
焙焼工程において熱処理する際の雰囲気は特に制限されるものではなく、非還元性雰囲気であればよいが、簡易的に行える空気気流中において行うことが好ましい。
【0060】
また、焙焼工程における熱処理時間(焙焼時間)は特に制限されないが、1時間未満では前駆体水酸化物の余剰水分の除去が十分に行われない場合があるので、1時間以上が好ましく、3時間以上がより好ましい。熱処理時間の上限についても特に限定されないが、生産性等を考慮して15時間以下が好ましい。
【0061】
そして、焙焼に用いられる設備は、特に限定されるものではなく、前駆体水酸化物を非還元性雰囲気中、好ましくは空気気流中で加熱できるものであればよく、ガス発生がない電気炉などが好適に用いられる。
(混合工程)
混合工程は、上記焙焼工程において得られた熱処理後の前駆体水酸化物(以下、「焙焼粒子」という)と、水酸化リチウム粉砕粉とを混合して、混合物(混合粉)を得る工程である。
【0062】
焙焼粒子と水酸化リチウム粉砕粉とは、混合物中のリチウム以外の金属の原子数と、リチウムの原子数(Li)との比(Li/Me)が、0.90以上1.10以下となるように混合することが好ましい。後述する焼成工程の前後でLi/Meはほとんど変化しないので、焼成工程に供する混合物中のLi/Meが、得られる正極活物質におけるLi/Meとほぼ同じになる。このため、混合工程で調製する混合物におけるLi/Meが、得ようとする正極活物質におけるLi/Meと同じになるように混合することが好ましい。
【0063】
混合工程において、焙焼粒子と水酸化リチウム粉砕粉とを混合する際の混合手段としては、一般的な混合機を使用することができ、たとえば、シェーカーミキサ、レーディゲミキサ、ジュリアミキサ、Vブレンダなどを用いればよい。
(焼成工程)
焼成工程は、上記混合工程で得られた混合物を焼成して、正極活物質とする工程である。焼成工程において混合物を焼成すると、焙焼粒子に、水酸化リチウム粉砕粉中のリチウムが拡散し正極活物質、例えばリチウムニッケルコバルト複合酸化物粒子が形成される。
【0064】
焼成工程において、混合物を焼成する焼成温度は特に限定されないが、例えば600℃以上950℃で以下であることが好ましく、700℃以上900℃以下であることがより好ましい。
【0065】
焼成温度を600℃以上とすることで、焙焼粒子中へのリチウムの拡散を十分に進行させることができ、得られる正極活物質の結晶構造を均一にすることができ、生成物を正極活物質として用いた場合に電池特性を特に高めることができるため好ましいからである。また、反応を十分に進行させることができるため、余剰のリチウムの残留や、未反応の粒子が残留することを抑制できるからである。
【0066】
焼成温度を950℃以下とすることで、生成する正極活物質の粒子間で焼結が進行することを抑制することができる。また、異常粒成長の発生を抑制し、得られる正極活物質の粒子が粗大化することを抑制することができる。
【0067】
また、熱処理温度まで昇温する過程で、水酸化リチウムの融点付近の温度にて1時間以上5時間以下程度保持することで、より反応を均一に行わせることができ、好ましい。
【0068】
焼成工程における焼成時間のうち、所定温度、すなわち上述の焼成温度での保持時間は特に限定されないが、2時間以上とすることが好ましく、より好ましくは4時間以上である。これは焼成温度での保持時間を2時間以上とすることで、正極活物質の生成を十分に促進し、未反応物が残留することをより確実に防止することができるからである。
【0069】
焼成温度での保持時間の上限値は特に限定されないが、生産性等を考慮して24時間以下であることが好ましい。
【0070】
焼成時の雰囲気は特に限定されないが、酸化性雰囲気とすることが好ましい。酸化性雰囲気としては、酸素含有ガス雰囲気を好ましく用いることができ、例えば酸素濃度が18容量%以上100容量%以下の雰囲気とすることがより好ましい。
【0071】
これは焼成時の雰囲気中の酸素濃度を18容量%以上とすることで、正極活物質の結晶性を特に高めることができるからである。
【0072】
酸素含有ガス雰囲気とする場合、該雰囲気を構成する気体としては、例えば大気や、酸素、酸素と不活性ガスとの混合気体等を用いることができる。
【0073】
なお、酸素含有ガス雰囲気を構成する気体として、例えば上述のように酸素と不活性ガスとの混合気体を用いる場合、該混合気体中の酸素濃度は上述の範囲を満たすことが好ましい。
【0074】
特に、焼成工程においては、上述のように酸素含有ガス雰囲気下で実施することが好ましく、酸素含有ガス気流中で実施することがより好ましく、大気、または酸素気流中で行うことがさらに好ましい。特に電池特性を考慮すると、酸素気流中で行うことが好ましい。
【0075】
なお、焼成に用いられる炉は、特に限定されるものではなく、大気ないしは酸素気流中で混合物を焼成できるものであればよいが、炉内の雰囲気を均一に保つ観点から、ガス発生がない電気炉が好ましく、バッチ式あるいは連続式の炉をいずれも用いることができる。
【0076】
焼成工程によって得られた正極活物質は、凝集もしくは軽度の焼結が生じている場合がある。この場合には、解砕してもよい。
【0077】
ここで、解砕とは、焼成時に二次粒子間の焼結ネッキングなどにより生じた複数の二次粒子からなる凝集体に、機械的エネルギーを投入して、二次粒子自体をほとんど破壊することなく二次粒子を分離させて、凝集体をほぐす操作のことである。
【0078】
また、焼成工程の前に、仮焼成を実施することが好ましい。
【0079】
仮焼成を実施する場合、仮焼成温度は特に限定されないが、焼成工程における焼成温度より低い温度とすることができる。仮焼成温度は、例えば250℃以上600℃以下することが好ましく、350℃以上550℃以下とすることがより好ましい。
【0080】
仮焼成時間、すなわち上記仮焼成温度での保持時間は、例えば1時間以上10時間以下程度とすることが好ましく、3時間以上6時間以下とすることがより好ましい。
【0081】
仮焼成後は、一旦冷却した後焼成工程に供することもできるが、仮焼成温度から、焼成温度まで昇温して連続して焼成工程を実施することもできる。
【0082】
なお、仮焼成を実施する際の雰囲気は特に限定されないが、例えば焼成工程と同様の雰囲気とすることができる。
【0083】
仮焼成することにより、焙焼粒子へのリチウムの拡散が十分に行われ、特に均一な正極活物質を得ることができる。
【0084】
本実施形態の正極活物質、およびその製造方法によれば、既述の炭素濃度が0.3質量%以下の水酸化リチウム粉砕粉を原料の1つとして用いることができる。このため、得られる正極活物質は、リチウムサイトのリチウムによる占有率が高く、結晶性に優れた正極活物質とすることができる。このため、非水系電解液二次電池の正極材料として用いた場合に優れた電池特性を有する非水系電解液二次電池とすることができる。
[非水系電解液二次電池]
次に、本実施形態の非水系電解液二次電池の一構成例について説明する。
【0085】
本実施形態の非水系電解液二次電池は、既述の正極活物質を正極材料として用いた正極を有することができる。
【0086】
まず、本実施形態の非水系電解液二次電池の構造の構成例を説明する。
【0087】
本実施形態の非水系電解液二次電池は、正極材料に既述の正極活物質を用いたこと以外は、一般的な非水系電解液二次電池と実質的に同様の構造を備えることができる。
【0088】
具体的には、本実施形態の非水系電解液二次電池は、ケースと、このケース内に収容された正極、負極、非水系電解液およびセパレータを備えた構造を有することができる。
【0089】
より具体的にいえば、セパレータを介して正極と負極とを積層させて電極体とし、得られた電極体に非水系電解液を含浸させることができる。そして、正極の正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、および負極の負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、それぞれ集電用リードなどを用いて接続し、ケースに密閉した構造を有することができる。
【0090】
なお、本実施形態の非水系電解液二次電池の構造は、上記例に限定されないのはいうまでもなく、またその外形も筒形や積層形など、種々の形状を採用することができる。
【0091】
各部材の構成例について以下に説明する。
(正極)
まず正極について説明する。
【0092】
正極は、シート状の部材であり、例えば、既述の正極活物質を含有する正極合材ペーストを、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布乾燥して形成できる。なお、正極は、使用する電池にあわせて適宜処理される。たとえば、目的とする電池に応じて適当な大きさに形成する裁断処理や、電極密度を高めるためにロールプレスなどによる加圧圧縮処理等を行うこともできる。
【0093】
上述の正極合材ペーストは、正極合材に、溶剤を添加して混練して形成することができる。そして、正極合材は、粉末状になっている既述の正極活物質と、導電材と、結着剤とを混合して形成できる。
【0094】
導電材は、電極に適当な導電性を与えるために添加されるものである。導電材の材料は特に限定されないが、例えば天然黒鉛、人造黒鉛および膨張黒鉛などの黒鉛や、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック系材料を用いることができる。
【0095】
結着剤は、正極活物質をつなぎ止める役割を果たすものである。係る正極合材に使用される結着剤は特に限定されないが、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸等から選択された1種以上を用いることができる。
【0096】
なお、正極合材には活性炭などを添加することもできる。正極合材に活性炭などを添加することによって、正極の電気二重層容量を増加させることができる。
【0097】
溶剤は、結着剤を溶解して正極活物質、導電材、および活性炭等を結着剤中に分散させる働きを有する。溶剤は特に限定されないが、例えばN−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
【0098】
また、正極合材ペースト中における各物質の混合比は特に限定されるものではなく、例えば一般の非水系電解液二次電池の正極の場合と同様にすることができる。例えば、溶剤を除いた正極合材の固形分を100質量部とした場合、正極活物質の含有量を60質量部以上95質量部以下、導電材の含有量を1質量部以上20質量部以下、結着剤の含有量を1質量部以上20質量部以下とすることができる。
【0099】
なお、正極の製造方法は上記方法に限定されるものではなく、例えば正極合材や正極ペーストをプレス成型した後、真空雰囲気下で乾燥すること等で製造することもできる。
(負極)
負極は、例えば銅などの金属箔集電体の表面に、負極合材ペーストを塗布し、乾燥して形成されたシート状の部材である。
【0100】
負極は、負極合材ペーストを構成する成分やその配合、集電体の素材等は異なるものの、実質的に上述の正極と同様の方法によって形成され、正極と同様に必要に応じて各種処理が行われる。
【0101】
負極合材ペーストは、負極活物質と結着剤とを混合した負極合材に、適当な溶剤を加えてペースト状にすることができる。
【0102】
負極活物質としては例えば、金属リチウムやリチウム合金などのリチウムを含有する物質や、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる吸蔵物質を採用することができる。
【0103】
吸蔵物質は特に限定されないが、例えば天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂等の有機化合物焼成体、およびコークスなどの炭素物質の粉状体等から選択された1種以上を用いることができる。
【0104】
係る吸蔵物質を負極活物質に採用した場合には、正極同様に、結着剤として、PVDF等の含フッ素樹脂を用いることができ、負極活物質を結着剤中に分散させる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
(セパレータ)
セパレータは、正極と負極との間に挟み込んで配置されるものであり、正極と負極とを分離し、電解液を保持する機能を有している。
【0105】
セパレータの材料としては、例えばポリエチレンや、ポリプロピレンなどの薄い膜で、微細な孔を多数有する膜を用いることができるが、上記機能を有するものであれば、特に限定されない。
(非水系電解液)
非水系電解液は、例えば支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。
【0106】
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート;また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート;さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル化合物;エチルメチルスルホンやブタンスルトンなどの硫黄化合物;リン酸トリエチルやリン酸トリオクチルなどのリン化合物などから選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0107】
支持塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiN(CF3SO22、およびそれらの複合塩などを用いることができる。
【0108】
なお、非水系電解液は、電池特性改善のため、ラジカル捕捉剤、界面活性剤、難燃剤などを含んでいてもよい。
【0109】
本実施形態の非水系電解液二次電池は、既述の正極活物質を正極材料として用いた正極を備えている。このため、優れた電池特性を有する非水系電解液二次電池とすることができる。
【実施例】
【0110】
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(水酸化リチウム粉砕粉の製造)
以下の手順により、水酸化リチウム粉砕粉を製造した。
【0111】
水酸化リチウム一水和物(LiOH・HO)について、真空乾燥による無水化処理を施した。次いで、得られた無水水酸化リチウムを粉砕工程に供した。この無水水酸化リチウムの炭素濃度は0.03質量%、水分量は0.02質量%であった。
【0112】
粉砕工程では、原料である無水水酸化リチウムの搬送経路の上流側から順に、粉砕前の無水水酸化リチウムを貯留しておくホッパーと、粉砕機(粉砕装置)であるジェットミル(セイシン企業製)と、粉砕粉捕集用のバグフィルターと、粉砕粉荷造り用の荷造り装置とが配置された粉砕手段を用いた。
【0113】
なお、粉砕手段を構成するホッパー、粉砕機、バグフィルター、荷造り装置は配管により接続されており、ホッパーから供給された無水水酸化リチウムは粉砕機で粉砕され、粉砕粉がバグフィルターにより捕集され、荷造り装置に回収されるように構成されている。また、ホッパーと粉砕機との間の配管上には、金属異物除去用の永久磁石式のマグネット、及び原料内異物除去用の振動篩が配置されている。
【0114】
粉砕機であるジェットミルは、水平型のジェットミルを用いた。そして、該粉砕機では、プッシャーエアー及びベンチュリーノズルによって加速された原料が粉砕室に導入され、粉砕室内に設置されたグライディングノズルから吐出される高速流体によって、原料の相互衝突・摩擦が起こって、超微粉が得られる。
【0115】
本実施例では、粉砕機内に導入する気体として、露点が−70℃、かつ二酸化炭素の含有量が20体積ppmの脱炭酸空気を用い、粉砕工程の間、粉砕機内は係る雰囲気に保持されている。
【0116】
粉砕後、荷造り装置に回収された水酸化リチウム粉砕粉の炭素濃度を無機炭素分析装置(LECOジャパン製)により分析したところ、0.17質量%であることが確認できた。重量法により水分量を測定したところ、0.09質量%であった。
【0117】
また、得られた水酸化リチウム粉砕粉の平均粒子径をレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル製 MT3300EX−2)により、嵩密度を定容積容器の粉体重量測定を行うことによりそれぞれ分析したところ、平均粒子径は67.5μm、嵩密度は0.30g/ccであった。
【0118】
また、上記の場合と同じ条件で連続粉砕を行ったところ、後述する比較例1や比較例2の場合と比較して、粉砕機であるジェットミルのノズルへの水酸化リチウム粉砕粉の付着が低減され、ジェットミルのメンテナンス頻度が1/5に減少し、生産性が改善された。このことから、本実施例で得られた水酸化リチウム粉砕粉を気流により配管内を搬送した場合に、後述する比較例1、2の水酸化リチウム粉砕粉と比較して閉塞が起こりにくくなっているといえる。
(正極活物質の製造)
前駆体水酸化物としてNi0.88Co0.09Al0.03(OH)を用意し、係る前駆体水酸化物を空気(酸素:21容量%)気流中にて、600℃で3時間の熱処理を行い、前駆体水酸化物に含まれていた水分を除去し、酸化物(Ni0.88Co0.09Al0.03)に転換して回収した。なお、ニッケル複合酸化物の平均粒子径は、12μmで、嵩密度は1.1g/mlであった。
【0119】
上述の水酸化リチウム粉砕粉と、焙焼工程で熱処理を行った前駆体水酸化物とを混合して混合物を調製した(混合工程)。
【0120】
得られた混合物を内寸が280mm(L)×280mm(W)×90mm(H)の焼成容器に装入し、これを連続式の焼成炉であるローラーハースキルンを用いて、酸素濃度80容量%、残部が不活性ガスである酸素含有ガス雰囲気中で、最高温度を765℃として焼成を行った(焼成工程)。さらに得られた焼成物の表面に付着した余剰成分を除去するため、該焼成物を質量比で水1に対し1.5となるように、純水に投入してスラリーとし、5分間の撹拌後、濾過、乾燥して正極活物質を得た(水洗工程)。
【0121】
得られた正極活物質に対し、X線回折装置によるリートベルト解析を実施したところ、リチウム席の席占有率は98.5%を超えていることが確認できた。このことから、結晶性に優れた高品質の正極活物質が得られていることを確認できた。
[実施例2]
粉砕工程において、粉砕機内に導入する気体として、露点が−70℃、かつ二酸化炭素の含有量が90体積ppmの脱炭酸空気を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2にかかる水酸化リチウム粉砕粉を得た。
【0122】
水酸化リチウム粉砕粉の炭素濃度は0.29質量%であった。重量法により水分量を測定したところ、0.14質量%であった。また、平均粒子径は40.2μm、嵩密度は0.26g/ccであった。
【0123】
また、粉砕機内に導入する気体として、露点が−70℃、かつ二酸化炭素の含有量が90体積ppmの脱炭酸空気を用いた点以外は実施例1と同じ条件で連続粉砕を行ったところ、後述する比較例1や比較例2の場合と比較して、粉砕機であるジェットミルのノズルへの水酸化リチウム粉砕粉の付着が低減され、ジェットミルのメンテナンス頻度が1/4に減少し、生産性が改善された。このことから、本実施例で得られた水酸化リチウム粉砕粉を気流により配管内を搬送した場合に、後述する比較例1、2の水酸化リチウム粉砕粉と比較して閉塞が起こりにくくなっているといえる。
【0124】
本実施例で得られた水酸化リチウム粉砕粉を用いた点以外は、実施例1と同様にして正極活物質を製造した。得られた正極活物質に対して、実施例1と同様にX線回折装置によるリートベルト解析を実施したところ、リチウム席の席占有率は98.5%を超えていることが確認できた。このことから、結晶性に優れた高品質の正極活物質が得られていることを確認できた。
[比較例1]
粉砕工程において、脱炭酸空気に替えて脱炭酸を行っていない空気を用いた点以外は、実施例1と同様にして水酸化リチウム粉砕粉、及び正極活物質を製造し、評価を行った。なお、用いた脱炭酸を行っていない空気の露点は10℃、二酸化炭素の含有量は400体積ppmとなる。
【0125】
水酸化リチウム粉砕粉の炭素濃度は0.64質量%となり、実施例1の約4倍、無水水酸化リチウムの炭酸化が生じることを確認できた。なお、得られた水酸化リチウム粉砕粉の水分量は0.25質量%、平均粒子径は10.5μm、嵩密度は0.22g/ccであった。
【0126】
また、得られた正極活物質について、実施例1と同様にX線回折装置によるリートベルト解析を実施したところ、リチウム席の席占有率は98.2%になることが確認できた。このことから、実施例と比較して、正極活物質の結晶性が低下していることを確認できた。
[比較例2]
粉砕工程において、粉砕機内に導入する気体として、露点が−70℃、かつ二酸化炭素の含有量が150体積ppmの脱炭酸空気を用いた点以外は実施例1と同様にして、比較例2にかかる水酸化リチウム粉砕粉を得た。
【0127】
水酸化リチウム粉砕粉の炭素濃度は0.53質量%となり、実施例1の約3倍、無水水酸化リチウムの炭酸化が生じることを確認できた。なお、得られた水酸化リチウム粉砕粉の水分量は0.21質量%、平均粒子径は54.5μm、嵩密度は0.28g/ccであった。
【0128】
また、粉砕機内に導入する気体として、露点が−70℃、かつ二酸化炭素の含有量が150体積ppmの脱炭酸空気を用いた点以外は実施例1と同じ条件で連続粉砕を行ったところ、比較例1の場合と比較して、粉砕機であるジェットミルのノズルへの水酸化リチウム粉砕粉の付着は同程度であり、生産性の改善は見られなかった。
【0129】
本比較例で得られた水酸化リチウム粉砕粉を用いた点以外は、実施例1と同様にして正極活物質を製造した。得られた正極活物質について、実施例1と同様にX線回折装置によるリートベルト解析を実施したところ、リチウム席の席占有率は98.3%になることが確認できた。このことから、実施例と比較して、正極活物質の結晶性が低下していることを確認できた。