(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも一つのブロックは、前記金属製ブッシュ及び前記樹脂部材の軸方向において前記硬度又は前記弾性率が一定である、請求項1〜3の何れか一項記載の樹脂製歯車。
少なくとも一つのブロックでは、前記金属製ブッシュ及び前記樹脂部材の軸方向において前記硬度又は前記弾性率が異なる部分が存在する、請求項1又は2記載の樹脂製歯車。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した樹脂製歯車は、例えば、内燃機関で発生する動力を伝達する部位で用いられることがある。内燃機関における爆発燃焼は間欠的に行われているため、内燃機関から樹脂製歯車に伝達される動力の大きさは一定ではなく常に変動する。このような部位で用いられる樹脂製歯車では、当該動力の大きさに合わせて減衰量を変動することができれば、例えば、歯車の噛合する部位で発生する振動を抑制できる。
【0005】
そこで、本発明は、歯車の噛合する部位によって減衰量の変動を可能にする樹脂製歯車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の樹脂製歯車は、環状の金属製ブッシュと、金属製ブッシュの周囲に設けられ、外周部に歯形が形成された環状の樹脂部材と、金属製ブッシュと樹脂部材との間に設けられた環状の弾性部材と、を備え、弾性部材は、円周方向に沿って硬度又は弾性率が異なる複数のブロックから形成されており、隣接するブロック同士は、硬度又は弾性率が互いに異なっている。
【0007】
この構成の樹脂製歯車は、円周方向に沿って硬度又は弾性率が異なる複数のブロックによって樹脂部材が形成されている。例えば、内燃機関で発生する動力を伝達する部位で用いられる場合において、樹脂製歯車に伝達される動力が相対的に強いときに噛合する歯車の内側に硬度又は弾性率が相対的に小さなブロックを配置し、樹脂製歯車に伝達される動力が相対的に弱いときに噛合する歯車の内側に硬度又は弾性率が相対的に大きなブロックを配置する。硬度又は弾性率が相対的に小さい樹脂部材に力が作用した場合には、弾性部材の形状が相対的に大きく変化するので、大きな減衰効果を発揮し得る。一方、硬度又は弾性率が相対的に大きな樹脂部材に力が作用した場合には、弾性部材の形状が相対的に小さくしか変化しないので、大きな減衰効果を発揮することはない。これによって、樹脂製歯車の回転に伴って減衰量を変動させることが可能になる。
【0008】
本発明の樹脂製歯車では、弾性部材を形成する複数のブロックは、円周方向に沿って均等に分割されていてもよい。これにより、樹脂製歯車の回転に伴って減衰量を一定の周期で変動させることが可能になる。
【0009】
本発明の樹脂製歯車では、弾性部材を形成する複数のブロックは、二分割されてもよい。これにより、樹脂製歯車に伝達される動力が相対的に強いときに噛合する歯車の内側に硬度又は弾性率が相対的に小さいブロックを配置し、樹脂製歯車に伝達される動力が相対的に弱いときに噛合する歯車の内側に硬度又は弾性率が相対的に大きいブロックを配置することができる。この結果、樹脂製歯車に伝達される動力の変動に合わせて適切に減衰量を変動させられるので、歯車の噛合する部位で発生する振動を抑制できる。
【0010】
本発明の樹脂製歯車では、少なくとも一つのブロックは、金属製ブッシュ及び樹脂部材の軸方向において硬度又は弾性率を一定にしてもよい。この構成の樹脂製歯車では、円周方向に沿って硬度又は弾性率が異なる複数のブロックからなる樹脂部材を容易に形成することができる。
【0011】
本発明の樹脂製歯車では、少なくとも一つのブロックでは、金属製ブッシュ及び樹脂部材の軸方向において硬度又は弾性率が異なる部分が存在してもよい。この構成の樹脂製歯車では、円周方向に沿って硬度又は弾性率が異なる複数のブロックからなる樹脂部材を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、樹脂製歯車における減衰量の変動が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
一実施形態に係る樹脂製歯車1は、いわゆる高強度樹脂ギヤであって、車両用又は産業用の歯車として用いられる。例えば樹脂製歯車1は、エンジン内のバランスシャフトギヤ及びカムシャフトギヤ等に使用できる。
図1及び
図2に示されるように、樹脂製歯車1は、金属製ブッシュ3と、弾性部材5と、樹脂部材7と、接着層9と、接着層11と、を備えている。本実施形態に係る樹脂製歯車1は、平歯車である。なお、
図1では、接着層9,11の図示を省略している。
【0016】
金属製ブッシュ3は、回転軸(図示省略)に取り付けられる部材である。金属製ブッシュ3は、円環状である。金属製ブッシュ3は、金属材料により形成されており、例えば、機械構造用炭素鋼S45C等の炭素鋼、焼結金属等で形成されている。金属製ブッシュ3には、貫通孔3hが設けられている。貫通孔3hは、金属製ブッシュ3の一方の側面3aと他方の側面3bとを貫通している。貫通孔3hには、回転軸が挿入される。金属製ブッシュ3は、内周面4aと、外周面4bと、を有している。内周面4aは、貫通孔3hを画成している。外周面4bは、弾性部材5と対向する面である。
【0017】
弾性部材5は、樹脂製歯車1が他の歯車と噛み合いにより発生する衝撃を減衰する部材である。具体的には、後段にて詳述する駆動中の樹脂部材7の歯形7bが相手歯車との噛み合うことによって樹脂部材7に過剰の衝突エネルギが加わると、樹脂部材7と金属製ブッシュ3との間に配置された弾性部材5が変形(圧縮変形又は引張変形)して上記エネルギを吸収する。また、当該変形の程度によって減衰の程度、すなわち樹脂製歯車における減衰量が変化する。弾性部材5は、円環状である。弾性部材5は、金属製ブッシュ3の周囲に設けられている。弾性部材5は、金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間に設けられている。
【0018】
弾性部材5は、円周方向に沿って硬度が異なる第一ブロック5a及び第二ブロック5bから形成されている。第一ブロック5a及び第二ブロック5bの周方向における長さは互いに等しい。すなわち、弾性部材5を形成する第一ブロック5a及び第二ブロック5bは、円周方向に沿って均等に分割されている。
【0019】
なお、第一ブロック5aと第二ブロック5bからなる弾性部材5において、第一ブロック5aと第二ブロック5bとの境界は、明示的に形成されない場合がある。この場合であっても、第一ブロック5aと第二ブロック5bとの間には、仮想的な境界が形成されており、この仮想的な境界を境に円周方向に沿って硬度が変化する。
【0020】
弾性部材5において、第一ブロック5a及び第二ブロック5bは、硬度が互いに異なっている。なお、ここで言う硬度は、JIS K 6253で規定されるショアA硬度をいう。第一ブロック5aの硬度は、第二ブロック5bの硬度よりも高い。第一ブロック5aの硬度の例は、20〜55である。第二ブロック5bの硬度の例は、55〜90である。第一ブロック5aの硬度に対する第二ブロック5bの硬度の比は、例えば、10:9〜10:6である。第一ブロック5aは、フッ素ゴムから形成されている。第二ブロック5bは、フッ素ゴムよりも硬度が低いシリコンゴムから形成されている。第一ブロック5a及び第二ブロック5bは、金属製ブッシュ3及び樹脂部材7の軸方向において硬度が一定である。
【0021】
なお、ブロックごとに硬度を変える方法は、ブロックごとに硬度が異なる材料に変えたり、一つのブロックにおいて金属製ブッシュ3及び樹脂部材7の軸方向に硬度が異なる部分を設けたりする方法がある。
【0022】
樹脂部材7は、他の歯車と噛み合う部材である。樹脂部材7は、環状である。樹脂部材7は、樹脂で形成されている。樹脂部材7は、弾性部材5の周囲に設けられている。ここでの樹脂部材7は、弾性部材5の外周面に接するように設けられている。樹脂部材7の外周部には、歯形7bが形成されている。歯形7bは、樹脂部材7の周方向において、所定の間隔をあけて複数形成されている。なお、弾性部材5の周囲に設けられることには、弾性部材5の周りに直接接するように設けられることだけでなく、弾性部材5の周りに他の部材(金属製のリング部材等)を介して設けられることを含む。
【0023】
続いて、樹脂製歯車1の製造方法について説明する。樹脂製歯車1の製造方法は、ブッシュ加工工程と、抄造素形体形成工程と、樹脂部材形成工程と、切削工程と、樹脂部材加工工程と、弾性部材形成工程と、歯切加工工程と、を含む。
【0024】
[ブッシュ加工工程]
ブッシュ加工工程では、金属製ブッシュ3の外周面4bに加工を施す。具体的には、例えば、金属製ブッシュ3の外周面4bにリン酸塩被膜処理を施し、外周面4bにリン酸層を形成する。リン酸層は、例えば、リン酸亜鉛被膜(亜鉛を含む組成)であり得る。リン酸亜鉛被膜の主成分は、ホパイト(Zn
3(PO
4)
2・4H
2O)及びフォスフォフィライト(Zn
2Fe(PO
4)
2・4H
2O)である。リン酸亜鉛被膜は、リン酸イオン及び亜鉛イオンを主成分とする処理液を用いて処理され、亜鉛が析出することで形成される。リン酸亜鉛被膜の厚さは、例えば、2μm〜3μmである。金属製ブッシュ3の外周面4bにリン酸層を形成することにより、外周面4bに凹凸が形成される。金属製ブッシュ3に加工を施した後、金属製ブッシュ3を洗浄する。金属製ブッシュ3の洗浄は、接着剤塗布工程の前に実施されればよい。
【0025】
[抄造素形体形成工程]
抄造素形体形成工程では、抄造法によって、円環状の抄造素形体を形成する。抄造素形体は、短繊維のみを含むものであっても、短繊維及び樹脂を含むものであってもよい。
【0026】
抄造法による抄造素形体の形成には、従来公知の方法を適用することができる。例えば、円環形状は、筒状金型を用いることにより形成することができる。また、抄造素形体は、例えば、金型の中央にブッシュを配置し、ブッシュの周囲に短繊維、分散媒及び任意の樹脂の分散液を注入し、金型から分散媒を排出した後に、筒状金型内に残った集合体を圧縮することにより形成することができる。
【0027】
短繊維の融点、又は、短繊維の分解温度は、250℃以上であることが好ましい。このような短繊維を用いることで、成形時の成形温度又は加工温度、実使用時の雰囲気温度において、短繊維が熱劣化を起こすことなく、耐熱性に優れた繊維基材又は樹脂製歯車とすることができる。
【0028】
短繊維としては、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、超高強力ポリエチレン繊維、ポリケトン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリイミド繊維、及びポリビニルアルコール系繊維から選ばれた少なくとも1種以上の短繊維を使用することが好ましい。特に、パラ系アラミド繊維と、メタ系アラミド繊維との混合繊維を短繊維として用いた場合には、耐熱性、強度、樹脂成形後の加工性のバランスが優れている。
【0029】
スラリとしては、有機溶媒、有機溶媒と水との混合物、又は、水等を用いることができる。スラリとしては、特に経済的で、環境への負荷が少ない、水を使用することが好ましい。有機溶媒を用いる場合には、安全面に充分注意し、メタノール、エタノール、アセトン、トルエン、ジエチルエーテル等の有機溶媒を使用することも可能である。
【0030】
樹脂は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれであってもよいが、製造される樹脂製歯車の強度を向上させる観点から、熱硬化性樹脂であると好ましい。より具体的には、エポキシ樹脂、ポリアミノアミド樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等から選ばれた1以上の樹脂と、選択された樹脂の種類に応じた硬化剤とを組み合わせたものが使用できる。これらの中でも、樹脂硬化物の強度、耐熱性等の点からポリアミノアミド樹脂が好ましく、耐熱性、強度が優れる2,2’−(1,3フェニレン)ビス2−オキサゾリンとアミン硬化剤の混合物100質量部に対し、触媒には硬化促進剤として、例えば、n−オクチルブロマイドが5質量部以下からなる樹脂を使用することが好ましい。
【0031】
なお、樹脂は、抄造素形体形成工程において短繊維と一緒に抄造されてもよく、短繊維のみを含む抄造素形体を形成した後に、樹脂部材形成工程において抄造素形体に含浸されてもよい。
【0032】
[樹脂部材形成工程]
樹脂部材形成工程では、金型内に上記抄造素形体を配置し、樹脂を硬化させて樹脂部材7を形成する。抄造素形体形成工程において樹脂を用いなかった場合には、金型内に樹脂を注入して抄造素形体に含浸させた後に、樹脂を硬化させる。
【0033】
[切削工程]
切削工程では、金属製ブッシュ3及び樹脂部材7からなる成形品を切削して成形品の寸法を調整する。切削工程では、成形品を旋盤等の工作機械によって切削加工する。具体的には、切削工程では、成形品の外径部分及び内径部側面を削り、成形品を所定の寸法に加工する。
【0034】
[樹脂部材加工工程]
樹脂部材加工工程では、樹脂部材7の内周面7aに加工を施す。具体的には、例えば、樹脂部材7の内周面7aにショットブラスト加工を施し、内周面7aに凹凸を形成する。樹脂部材加工工程の後、樹脂部材7を洗浄する。樹脂部材7の洗浄は、接着剤塗布工程の前に実施されればよい。なお、当該樹脂部材加工工程は省略されてもよい。
【0035】
[弾性部材形成工程]
弾性部材形成工程では、金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間に第一ブロック5a及び第二ブロック5bからなる弾性部材5を形成する。
図3(a)に示されるように、第一成形金型20Aに金属製ブッシュ3及び樹脂部材7を配置する。第一成形金型20Aは、第二ブロック5bに対応する場所は、空洞化されずに中実化されている。次に、金属製ブッシュ3の外周面4bに接着剤A1を塗布し、樹脂部材7の内周面7aに接着剤A2を塗布する。接着剤A1,A2は、加硫接着剤であり、例えば、ケムロック 607(ロード・ジャパンインク製)を用いることができる。
【0036】
続いて、
図3(b)に示されるように、未加硫のゴム材料(フッ素ゴム)G1を第一押込部材22Aによって第一注入部21Aに押し込み、第一注入部21Aを介してゴム材料G1を注入する。これにより、円周方向に沿う半分の領域における金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間にゴム材料G1が充填される。そして、充填したゴム材料G1を加硫すると共に、加硫したゴム材料G1に熱及び圧力を加える。これにより、金属製ブッシュ3とゴム材料G1とが加硫接着されると共にゴム材料G1と樹脂部材7とが加硫接着され、金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間にニトリルゴムからなる第一ブロック5aが形成される。また、上記の加硫接着によって、金属製ブッシュ3と弾性部材5の第一ブロック5aとの間(界面)に接着層9が形成され、弾性部材5の第一ブロック5aと樹脂部材7との間(界面)に接着層9が形成される。
【0037】
続いて、
図3(c)に示されるように、第二成形金型20Bに金属製ブッシュ3と弾性部材5の第一ブロック5aとが一体化された中間体と樹脂部材7とを配置する。次に、金属製ブッシュ3の外周面4bに接着剤A3を塗布し、樹脂部材7の内周面7aに接着剤A4を塗布する。接着剤A3,A4は、接着剤A1,A2と同様に、加硫接着剤であり、例えば、ケムロック 607(ロード・ジャパンインク製)を用いることができる。
【0038】
続いて、
図3(d)に示されるように、未加硫のゴム材料(シリコンゴム)G2を第二押込部材22Bによって第二注入部21Bに押し込み、円周方向に沿う残り半分の領域における金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間に、第二注入部21Bを介してゴム材料G2を注入する。これにより、円周方向に沿う残り半分の領域における金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間にゴム材料G2が充填される。そして、充填したゴム材料G2を加硫すると共に、加硫したゴム材料G2に熱及び圧力を加える。これにより、金属製ブッシュ3とゴム材料G1とが加硫接着されると共にゴム材料G1と樹脂部材7とが加硫接着され、金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間にニトリルゴムからなる第二ブロック5bが形成される。また、上記の加硫接着によって、金属製ブッシュ3と弾性部材5の第二ブロック5bとの間(界面)に接着層13が形成され、弾性部材5の第二ブロック5bと樹脂部材7との間(界面)に接着層15が形成される。
【0039】
以上の工程を経て、金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間に第一ブロック5a及び第二ブロック5bからなる弾性部材5が形成される。弾性部材5は、必要に応じて、バリの除去等を行う。
【0040】
[歯切加工工程]
歯切加工工程では、樹脂部材7の歯切加工を行う。適用される歯切加工としては、ホブ盤又はシェービング盤による仕上げ加工が挙げられる。ホブ盤としては、例えば三菱重工業株式会社製のGE15A(商品名)を用いることができる。なお、ホブ盤による切削量は、200μm以上になる。シェービング盤としては、例えば三菱重工業株式会社製のFE30A(商品名)を用いることができる。なお、シェービング加工による切削量は少なく、20〜150μm程度になる。歯切加工工程により、樹脂部材7に歯形7bが形成される。
【0041】
以上の工程により、樹脂製歯車1が製造される。
【0042】
上記実施形態の樹脂製歯車1では、弾性部材5における第一ブロック5aと第二ブロック5bとで、硬度が互いに異なっている。これによって、樹脂製歯車1の回転に伴って減衰量を変動させることが可能になる。
【0043】
上記実施形態の樹脂製歯車1では、例えば、内燃機関で発生する動力を伝達する部位で用いられる場合において、
図4に示されるように、樹脂製歯車1に伝達される動力が相対的に強いときに噛合する歯形7b(
図1に示されるP1の範囲に位置する歯形7b)の内側に、硬度が相対的に大きい第一ブロック5aが配置され、樹脂製歯車1に伝達される動力が相対的に小さいときに噛合する歯形7b(
図1に示されるP2の範囲に位置する歯形7b)の内側に、硬度が相対的に小さな第二ブロック5bが配置されている。これによって、例えば、内燃機関で発生する動力を伝達する部位で用いられる場合において、樹脂製歯車1に伝達される動力の大きさに応じて減衰量を変動させることが可能になる。この結果、樹脂製歯車1の噛合する歯形7bで発生する振動を抑制できる。
【0044】
上記実施形態の樹脂製歯車1では、弾性部材5を形成する第一ブロック5a及び第二ブロック5bは、円周方向に沿って均等に分割されているので、樹脂製歯車1の回転に伴って減衰量を一定の周期で変動させることが可能になる。
【0045】
上記実施形態の樹脂製歯車1では、第一ブロック5a及び第二ブロック5bは、金属製ブッシュ3及び樹脂部材7の軸方向における硬度を一定としているので、円周方向に沿って硬度が異なる第一ブロック5a及び第二ブロック5bからなる弾性部材5を容易に形成することができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0047】
<変形例1>
上記実施形態では、
図1に示されるように、弾性部材5は、円周方向に沿って硬度が異なる二つの第一ブロック5a及び第二ブロック5bから形成され、円周方向に沿って均等に二分割されている例を挙げて説明したが、これに限定されない。弾性部材5は、
図5に示されるように、円周方向に沿って硬度が異なる四つの第一ブロック5a、第二ブロック5b、第三ブロック5c、及び第四ブロック5dからなり、円周方向に沿って均等に四分割されていてもよい。四つの第一ブロック5a、第二ブロック5b、第三ブロック5c、及び第四ブロック5dは、それぞれ、フッ素ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、及びシリコンゴムから形成したり、フッ素ゴム、シリコンゴム、HNBR、NBRから形成したりする。ここでは、硬度の順番が、フッ素ゴム>シリコンゴム>HNBR>NBRとなるように配合等を調整した。この場合であっても、上記実施形態と同様に、樹脂製歯車1の回転に伴って減衰量を一定の周期で変動させることが可能になる。
【0048】
更に、例えば、内燃機関で発生する動力を伝達する部位で用いられる場合において、樹脂製歯車1に伝達される動力が相対的に最も強いときに噛合する歯形7bの内側に、硬度が相対的に最も大きい第一ブロック5aが配置され、樹脂製歯車1に伝達される動力が相対的に二番目に強いときに噛合する歯形7bの内側に、硬度が相対的に二番目に大きい第二ブロック5bが配置され、樹脂製歯車1に伝達される動力が相対的に三番目に強いときに噛合する歯形7bの内側に、硬度が相対的に三番目に大きい第三ブロック5cが配置され、樹脂製歯車1に伝達される動力が相対的に四番目に強いときに噛合する歯形7bの内側に、硬度が相対的に四番目に大きい第四ブロック5dが配置されている。
【0049】
変形例1に係る樹脂製歯車1では硬度が互いに異なる第一ブロック5a、第二ブロック5b、第三ブロック5c、及び第四ブロック5dに分割されているので、樹脂製歯車1に伝達される動力が四段階で周期的に切り替わるように変動する場合であっても、当該動力の大きさに合わせて減衰量を変動させることができる。
【0050】
<変形例2>
変形例2に係る樹脂製歯車1では、
図6に示されるように、円周方向に沿って硬度が異なる三つの第一ブロック5a、第二ブロック5b、及び第三ブロック5cからなり、円周の半分が、円周方向に沿って均等に三分割されていてもよい。三つの第一ブロック5a、第二ブロック5b、及び第三ブロック5cは、それぞれ、フッ素ゴム、シリコンゴム、及びHNBRから形成されている。ここでは、硬度の順番が、フッ素ゴム>シリコンゴム>HNBRとなるように配合等を調整した。この場合であっても、上記実施形態と同様に、樹脂製歯車1の回転に伴って減衰量を一定の周期で変動させることが可能になる。
【0051】
更に、例えば、内燃機関で発生する動力を伝達する部位で用いられる場合において、樹脂製歯車1に伝達される動力が相対的に最も強いときに噛合する歯形7bの内側に、硬度が相対的に最も大きい第一ブロック5aが配置され、樹脂製歯車1に伝達される動力が相対的に二番目に強いときに噛合する歯形7bの内側に、硬度が相対的に二番目に大きい第二ブロック5bが配置され、樹脂製歯車1に伝達される動力が相対的に三番目に強いときに噛合する歯形7bの内側に、硬度が相対的に三番目に大きい第三ブロック5cが配置されている。
【0052】
変形例2に係る樹脂製歯車1では硬度が互いに異なる第一ブロック5a、第二ブロック5b、及び第三ブロック5cに分割されているので、樹脂製歯車1に伝達される動力が三段階で切り替わるような変動する場合であっても、当該動力の大きさに合わせて減衰量を変動することができる。また、変形例2に係る樹脂製歯車1では、円周方向の半分が第一ブロック5a、第二ブロック5b、及び第三ブロック5cの三つのブロックに分割されているので、上記実施形態と比べて、より短い周期の変動に対応することが可能になる。
【0053】
<変形例3>
変形例3に係る樹脂製歯車1では、
図7に示されるように、円周方向に沿って硬度が異なる第一ブロック5a及び第二ブロック5bからなる。また、第一ブロック5aは、第二ブロック5bに対して、円周方向に部分的に二箇所配置されている。第一ブロック5aは、軸中心を挟んで対向して配置されている。第一ブロック5aの円周方向の長さは、第二ブロック5bと比べて短い。二つの第一ブロック5a及び第二ブロック5bは、それぞれ、シリコンゴム及びフッ素ゴムから形成されている。この場合であっても、上記実施形態と同様に、樹脂製歯車1の回転に伴って減衰量を変動させることが可能になる。
【0054】
更に、例えば、内燃機関で発生する動力を伝達する部位で用いられる場合において、樹脂製歯車1に伝達される動力が相対的に強いときに噛合する歯形7bの内側に、硬度が相対的に大きい第一ブロック5aが配置され、樹脂製歯車1に伝達される動力が相対的に弱いときに噛合する歯形7bの内側に、硬度が相対的に小さい第二ブロック5bが配置されてもよい。
【0055】
変形例3に係る樹脂製歯車1では硬度が互いに異なる第一ブロック5a及び第二ブロック5bが、第二ブロック5bに対して部分的に第一ブロック5aが配置されているので、樹脂製歯車1に伝達される動力が周期的かつ突発的に変動する場合であっても、当該動力の大きさに合わせて減衰量を変動することができる。
【0056】
<その他の変形例>
上記実施形態又は変形例では、弾性部材5が、二つ、四つ、及び六つのブロックに分割された例を挙げて説明したが、三つ、五つ、又は七つ以上のブロックに分割されてもよい。また、一方のブロックに対して硬度が異なる他方のブロックが二箇所に配置される例を挙げて説明したが、一箇所に配置されてもよいし、三箇所以上に等間隔で配置されてもよい。また、上記実施形態又は変形例において、一方のブロックに対して硬度が異なる他方のブロックが二箇以上に部分的に配置される場合には、等間隔に配置されなくてもよい。
【0057】
上記実施形態又は変形例では、一つのブロック5a〜5dは、金属製ブッシュ3及び樹脂部材7の軸方向において硬度を一定とする例を挙げて説明したが、一つのブロック5a〜5dは、金属製ブッシュ3及び樹脂部材7の軸方向に物性(例えば、樹脂材料)が異なる部分が存在してもよい。この変形例に係る樹脂製歯車1では、円周方向に沿って硬度が異なる複数のブロックからなる樹脂部材7を容易に形成することができる。
【0058】
上記実施形態又は変形例では、隣接するブロック間で硬度が互いに異なる例を挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、隣接するブロック間において、弾性率が異なっておればよい。
【0059】
上記実施形態では、金属製ブッシュ3の外周面がフラットに形成されている例を挙げて説明したが、外周面から外側に向かって突出する複数の突出部を有していてもよい。この突出部が形成された金属製ブッシュを有する樹脂製歯車では、金属ブッシュと樹脂部材との結合力を強化させることができる。
【0060】
上記実施形態又は変形例では、加硫接着剤が用いられる間接接着の例を挙げて説明したが、加硫接着剤が用いられない直接接着としてもよい。
【0061】
上記実施形態では、樹脂製歯車1が平歯車である形態を一例に説明した。しかし、樹脂製歯車1は、はすば歯車等であってもよい。