特許第6981356号(P6981356)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京エレクトロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6981356-成膜装置及び成膜方法 図000002
  • 特許6981356-成膜装置及び成膜方法 図000003
  • 特許6981356-成膜装置及び成膜方法 図000004
  • 特許6981356-成膜装置及び成膜方法 図000005
  • 特許6981356-成膜装置及び成膜方法 図000006
  • 特許6981356-成膜装置及び成膜方法 図000007
  • 特許6981356-成膜装置及び成膜方法 図000008
  • 特許6981356-成膜装置及び成膜方法 図000009
  • 特許6981356-成膜装置及び成膜方法 図000010
  • 特許6981356-成膜装置及び成膜方法 図000011
  • 特許6981356-成膜装置及び成膜方法 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981356
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】成膜装置及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20211202BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20211202BHJP
   H01L 21/312 20060101ALN20211202BHJP
【FI】
   H01L21/31 B
   C23C16/455
   !H01L21/312 B
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-83406(P2018-83406)
(22)【出願日】2018年4月24日
(65)【公開番号】特開2019-192763(P2019-192763A)
(43)【公開日】2019年10月31日
【審査請求日】2020年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】特許業務法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 達也
(72)【発明者】
【氏名】新納 礼二
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 洋二
【審査官】 田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−076784(JP,A)
【文献】 特開2010−239103(JP,A)
【文献】 特開平10−050656(JP,A)
【文献】 特表2014−512102(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/014179(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/455
H01L 21/312
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空雰囲気が形成される処理容器と、
前記処理容器内に設けられ、複数の基板を載置するための基板載置領域がその上面側に形成され、前記基板載置領域を回転軸周りに公転させるための回転機構を備えた回転テーブルと、
前記基板載置領域に載置された基板を加熱する加熱機構と、
前記回転テーブルを回転させたときに基板が移動する移動領域と対向するように設けられ、前記加熱機構により加熱された基板の表面に吸着し、互いに反応して膜物質を形成するための成膜ガスである第1の成膜ガス及び第2の成膜ガスを前記回転テーブル側に向けて吐出するためのガス吐出孔が、前記回転テーブルの回転中心側から周縁側の範囲に亘って前記移動領域と交差するように形成されたガス供給部と、
前記処理容器内を排気するための排気部と、を備え、
前記第1の成膜ガス及び第2の成膜ガスは、前記移動領域の互いに重なる領域に同時に供給されることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記第1の成膜ガス及び第2の成膜ガスのうちの飽和蒸気圧が低い低蒸気圧ガスの飽和蒸気圧をP0、飽和蒸気圧が高い高蒸気圧ガスの飽和蒸気圧をP0’とし、前記低蒸気圧ガス及び高蒸気圧ガスの分圧を各々P1,P1’とすると、前記第1、第2の成膜ガスの各供給圧力はP1/P0が1以下、P1’/P0’が1以下であり且つP1よりも高い値になるように設定され、
前記加熱機構は、供給された各成膜ガスに対する当該成膜ガスの消費量の割合である反応効率が70%以上となる温度に基板を加熱することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記処理容器の天井面側には、前記回転テーブル側に向けて、膜の処理を行うための光を照射する照射部を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記照射部は、前記ガス供給部を介して供給されたクリーニングガスを活性化して前記回転テーブルの表面に付着した膜のクリーニングを行うための紫外線照射部であることを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記照射部は、前記膜を改質するための紫外線照射部であることを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項6】
真空雰囲気が形成される処理容器内に設けられ、回転テーブルの一面側に形成された複数の基板載置領域に基板を載置し、当該回転テーブルを回転させてその回転軸周りに基板を公転させる工程と、
次いで、前記基板載置領域に載置された基板を加熱すると共に、当該加熱された基板の表面に吸着し、互いに反応して膜物質を形成するための成膜ガスである第1の成膜ガス及び第2の成膜ガスを、前記回転テーブルの回転中心側から周縁方向側の範囲に亘って、前記公転に伴って基板が移動する移動領域と交差するように、前記回転テーブルと対向する位置から供給する工程と、
前記処理容器内を排気する工程と、を含み、
前記第1の成膜ガス及び第2の成膜ガスは、夫々基板の移動領域の互いに重なる領域に同時に供給されることを特徴とする成膜方法。
【請求項7】
成膜ガスを供給する工程では、前記第1の成膜ガス及び第2の成膜ガスのうちの飽和蒸気圧が低い低蒸気圧ガスの飽和蒸気圧をP0、飽和蒸気圧が高い高蒸気圧ガスの飽和蒸気圧をP0’とし、前記低蒸気圧ガス及び高蒸気圧ガスの分圧を各々P1,P1’とすると、前記第1、第2の成膜ガスの各供給圧力はP1/P0が1以下、P1’/P0’が1以下であり且つP1よりも高い値になるように設定されることと、
前記処理容器に供給された各成膜ガスに対する当該成膜ガスの消費量の割合である反応効率が70%以上となる温度に基板を加熱することと、を特徴とする請求項6に記載の成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程においては、半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)などの基板に対して供給した処理ガスを反応させて成膜処理を行う場合がある。
【0003】
成膜処理の例として、例えば特許文献1には、基板支持体に支持された基板に、互いに反応する有機反応体を含む第一、第二の反応体の蒸気を水平通流により供給して有機膜を成膜する例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−76784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、基板に互いに反応して膜物質となる成膜ガスを供給して、膜物質からなる膜を成膜する成膜装置において、生産性が高く、かつ基板に成膜される膜の膜厚の面内及び面間均一性を高める技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の成膜装置は、真空雰囲気が形成される処理容器と、
前記処理容器内に設けられ、複数の基板を載置するための基板載置領域がその上面側に形成され、前記基板載置領域を回転軸周りに公転させるための回転機構を備えた回転テーブルと、
前記基板載置領域に載置された基板を加熱する加熱機構と、
前記回転テーブルを回転させたときに基板が移動する移動領域と対向するように設けられ、前記加熱機構により加熱された基板の表面に吸着し、互いに反応して膜物質を形成するための成膜ガスである第1の成膜ガス及び第2の成膜ガスを前記回転テーブル側に向けて吐出するためのガス吐出孔が、前記回転テーブルの回転中心側から周縁側の範囲に亘って前記移動領域と交差するように形成されたガス供給部と、
前記処理容器内を排気するための排気部と、を備え、
前記第1の成膜ガス及び第2の成膜ガスは、前記移動領域の互いに重なる領域に同時に供給されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基板に互いに反応して膜物質となる成膜ガスを供給して、膜物質からなる膜を成膜する成膜装置において、生産性が高く、かつ基板に成膜される膜の膜厚の面内及び面間均一性を高める技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施の形態に係るポリイミドが生成する過程を示す反応図である。
図2】本開示の実施の形態に係る成膜装置の縦断側面図である。
図3】前記成膜装置の横断平面図である。
図4】ウエハに吸着する成膜ガスの吸着量が変化する仕組みに係る説明図である。
図5】前記成膜装置における成膜ガスの分圧及びウエハの加熱温度の設定の考え方示す説明図である。
図6】前記成膜装置における成膜ガス供給領域及び成膜ガスの流れを説明する平面図である。
図7A】実施の形態に係る成膜ガスの第1例を示す説明図である。
図7B】前記成膜ガスの第2例を示す説明図である。
図7C】前記成膜ガスの第3例を示す説明図である。
図8】予備試験に用いた成膜装置を示す縦断側面図である
図9】予備試験における温度ごとのガス供給ノズルからの距離に対して成膜される膜の膜厚を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一の実施の形態に係る成膜装置について説明する。この成膜装置は、基板であるウエハに向けて互いに反応する第1のモノマーを含む第1の成膜ガスと、第2のモノマーを含む第2の成膜ガスと、を供給し、ウエハの表面に反応物の膜物質からなる膜を成膜する成膜処理を行う。実施の形態では、第1のモノマーとして二官能性の酸無水物、例えばPMDA(C10:無水ピロメリト酸)が用いられ、第2のモノマーとして二官能性のアミン、例えばODA(C1212O:4,4’―ジアミノジフェニルエーテル)が用いられて、ポリイミドからなる膜物質が生成される。
【0010】
ポリイミドの合成について説明する。図1に示すようにPMDAは、具体的には4つの炭素元素(C)と1つの酸素元素(O)とが環状に単結合(一重結合)により互いに接続された5員環からなる官能基を2つ備えており、前記酸素元素に隣接する炭素元素には、夫々別の酸素元素が二重結合により接続している。そして、5員環を構成する酸素元素が各々外側を向くように配置されると共に、これら2つの官能基間に、各々の官能基の2つの炭素元素を共有するベンゼンが介在していて芳香族モノマーをなしている。前記5員環は、イミド環を形成するためのものである。
【0011】
ODAには、1つの窒素元素(N)と2つの水素元素(H)とを備えたアミノ基(−NH)が2つ配置されており、これら窒素元素は、ジフェニルエーテルの一端側及び他端側に夫々結合している。尚、図1では炭素元素及び水素元素については記載を省略している。そして、これら2種類のモノマーを互いに混合すると、前駆体であるポリアミド酸が生成するので、この前駆体の熱処理(加熱)によって脱水縮合が起こり、図1の下段に示すポリイミドが合成される。
【0012】
次いで成膜装置の構成について説明する。図2図3に示すように成膜装置は、真空雰囲気が形成される扁平な概ね円形の真空容器(処理容器)10を備え、真空容器10は、側壁及び底部を構成する容器本体12と、天板11とにより構成されている。真空容器10内には、直径300mmの複数枚のウエハWを水平に載置する円形の回転テーブル2が設けられている。図2に示すように回転テーブル2の上面(一面側)には、回転テーブル2の周方向(回転方向)に沿って、6つの円形の凹部で構成された載置部(基板載置領域)24が設けられており、各載置部24の凹部内にウエハWが載置される。
【0013】
回転テーブル2の裏面中央部には、回転軸22を介して回転機構23が設けられ、回転テーブル2は、成膜処理中において鉛直軸(図2に示す回転テーブル2の中心C)周りに上方から見て時計回り方向に回転する。従って回転テーブル2は、ウエハWが載置された載置部24を回転軸22周りに公転させるように構成されている。ウエハWを載置した回転テーブル2を回転させると、載置部24に載置されたウエハWが公転することにより、図3中一点鎖線で示す移動領域Aを移動する。図2中の20は回転軸22及び回転機構23を収納するケース体である。このケース体20には、回転テーブル2の下方領域に窒素ガスをパージガスとして供給するためのパージガス供給管72が接続されている。
【0014】
図2に示すように真空容器10の底部における回転テーブル2の下方には同心円状に加熱機構である複数のヒータ7が設けられ、各載置部24に載置されたウエハWが加熱されるように構成されている。なお図2中の70は、ヒータ7の上方側を覆う覆い部材である。また図3に示すように真空容器10の側壁には、ウエハWの搬送口15が開口しており、ゲートバルブ16によって開閉自在に構成されている。真空容器10内における搬送口15に臨む位置は、ウエハWの受け渡し位置となっており、当該受け渡し位置に対応する部位には、回転テーブル2の下方側に載置部24を貫通してウエハWを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン及びその昇降機構(いずれも図示せず)が設けられている。そしてウエハWは搬送口15を介して、真空容器10の外部に設けられた図示しない基板搬送機構により、受け渡し位置に搬送され、基板搬送機構と昇降ピンとの協働作用により、載置部24に受け渡される。
【0015】
また、真空容器10の側壁には、PMDAを含む第1の成膜ガス及びODAを含む第2の成膜ガスを回転テーブル2に向けて供給するためのガス供給部であるガス供給ノズル3が設けられている。
ガス供給ノズル3は、先端が封止された筒状に構成され、真空容器10の外周壁から中心に向かって伸び、回転テーブル2を回転させた時にウエハWが移動する既述の移動領域Aと交差するように、回転テーブル2の径方向に向けて設けられている。また、ガス供給ノズル3は、当該回転テーブル2の上方位置に、ウエハWの移動領域Aと対向するように設けられている。
【0016】
筒状に構成されたガス供給ノズル3の下面には、その長さ方向に沿って等間隔に並ぶ複数のガス吐出孔30が設けられている。上述のガス供給ノズル3の配置を踏まえると、これらのガス吐出孔30は、前記移動領域Aと交差する回転テーブル2の回転中心側から周縁側の範囲に亘って形成されているといえる。
【0017】
真空容器10外側に位置するガス供給ノズル3の基端部には、ガス供給管31が接続されている。ガス供給管31は上流側にて2本のガス導入管53、63に分岐している。ガス導入管53の上流側は、流量調整部M1、バルブV1をこの順に介してPMDA気化部51に接続されている。
【0018】
PMDA気化部51内においては、PMDAが固体の状態で貯蔵されており、PMDA気化部51はこのPMDAを加熱する図示しないヒータを備えている。また、PMDA気化部51にはキャリアガス供給管54の一端が接続されており、バルブV2、ガス加熱部58をこの順に介して、キャリアガス供給管54の他端はN(窒素)ガス供給源52に接続されている。このような構成により、キャリアガスであるNガスが加熱された状態でPMDA気化部51に供給され、当該PMDA気化部51内にて加熱され気化しているPMDAと、Nガスとが混合されて混合ガスとなり、第1の成膜ガスとして、ガス供給ノズル3に導入される。
【0019】
さらに、キャリアガス供給管54におけるガス加熱部58の下流側且つバルブV2の上流側は分岐してガス供給管55を形成し、このガス供給管55の下流端は、バルブV3を介してガス導入管53のバルブV1の下流側且つ流量調整部M1の上流側に接続されている。このような構成によって、上記の第1の成膜ガスをガス供給ノズル3に供給しないときには、ガス加熱部58で加熱されたNガスを、PMDA気化部51を迂回させてガス供給ノズル3に導入することができる。
【0020】
一方、ガス導入管63の他端は、流量調整部M2、バルブV4をこの順に介してODA気化部61に接続されている。ODA気化部61内においては、ODAが液体(あるいは顆粒状の固体)の状態で貯留されており、ODA気化部61はこのODAを加熱する図示しないヒータを備えている。また、当該ODA気化部61にはキャリアガス供給管64の一端が接続されており、キャリアガス供給管64の他端はバルブV5、ガス加熱部68を介してNガス供給源62に接続されている。このような構成により、加熱されたキャリアガスNガスが加熱された状態でODA気化部61に供給され、当該ODA気化部61内にて加熱され気化しているODAと、Nガスとが混合されて混合ガスとなり、第2の成膜ガスとして、ガス供給ノズル3に導入することができる。
【0021】
さらに、キャリアガス供給管64におけるガス加熱部68の下流側且つバルブV5の上流側は分岐してガス供給管65を形成し、このガス供給管65の下流端は、バルブV6を介してガス導入管63のバルブV4の下流側且つ流量調整部M2の上流側に接続されている。このような構成によって、上記の第2の成膜ガスをガス供給ノズル3に供給しないときには、ガス加熱部68で加熱されたNガスを、ODA気化部61を迂回させてガス供給ノズル3に導入することができる。
【0022】
ガス供給管31及びガス導入管53、63には、流通中の成膜ガス中のPMDA及びODAが液化、または付着することを防ぐために、例えば管内を加熱するための配管ヒータ32、57、67が各々管の周囲に設けられる。この配管ヒータ32、57、67によって、ガス供給ノズル3から吐出される成膜ガスの温度が調整される。なお、図示の便宜上、配管ヒータ60は配管の一部のみに示しているが、液化を防ぐことができるように例えば配管全体に設けられている。
またガス供給管31には、クリーニング用のガスを供給するためのクリーニングガス供給管33の一端が接続されている。クリーニングガス供給管33の他端側は、2本に分岐し、各端部に夫々Nガス供給源34と、O(酸素)ガス供給源35と、が接続されている。なお図2、3中のV7、V8はバルブである。
このような構成により、真空容器10内にガス供給ノズル3を介し、クリーニングガスとして、Nガスにて希釈されたOガスを供給することができる。
【0023】
また真空容器10の底面の周縁における、ガス供給ノズル3の位置から見て、回転テーブル2の回転方向の下流側の位置には、排気口4が設けられている。回転テーブル2の径方向に向けて設けられたガス供給ノズル3と、排気口4から回転テーブル2の中心Cに向けて引いた直線との成す角度θは、30〜90°の範囲が好ましく、例えば60°に設定される。また排気口4の位置を、前記角度θが30〜90°の範囲で可変となるように構成してもよい。例えば材料の選択やガスの流量、温度、圧力などのプロセスパラメータを変更した際にガスの濃度の均一性に偏りが生じた場合に排気口4の位置を調整することでガスの濃度の均一性を改善することができる。排気口4には、排気管42の一端が接続され、排気管42の他端には、真空ポンプ43が接続されている。
【0024】
さらに天板11には、ウエハWの加熱温度(200℃)よりも高温であって、成膜ガスの吸着を阻害して、ポリイミドの形成を抑える成膜阻害温度(240℃)に真空容器10を加熱する容器加熱部71が設けられている。これにより真空容器10内へのポリイミドの形成が抑制されている。
【0025】
この他、成膜装置は、回転テーブル2に向けて紫外線を照射し、回転テーブル2のクリーニングを行うための紫外線照射部8を備えている。図2に示すように、上面側から見たとき、紫外線照射部8は、回転テーブル2の中心Cを挟んで、その直径方向に沿うように設けられている。紫外線照射部8はランプハウス82の内部に紫外線ランプ83を配置した構造となっており、天板11に形成された透過窓81を介して回転テーブル2の表面に紫外線を照射できるように構成されている。
【0026】
上述の構成を備える成膜装置はコンピュータである制御部90を備えており、この制御部90は、プログラム、メモリ、CPUを備えている。プログラムには、後述するウエハWに対する処理を進行させるように命令(各ステップ:ステップ群)が組み込まれている。このプログラムは、コンピュータ記憶媒体、例えばコンパクトディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、DVD等に格納され、制御部90にインストールされる。制御部90は当該プログラムにより成膜装置の各部に制御信号を出力し、各部の動作を制御する。具体的には、真空ポンプ43による排気流量、流量調整部M1、M2による真空容器10内へ供給する各ガスの流量、Nガス供給源52、62からのNガスの供給、各ヒータへの供給電力、などの各制御対象が制御信号により制御される。
【0027】
以上に説明した構成を備える実施の形態に係る成膜装置においては、ウエハWの加熱温度及び第1の成膜ガス及び第2の成膜ガスの供給量(第1の成膜ガス及び第2の成膜ガスの分圧)を操作変数としてウエハWの表面に成膜されるポリイミドの膜の膜厚を制御する。
【0028】
ウエハWの表面に、互いに反応するモノマーを吸着させて膜物質を形成する吸着反応において、膜物質の形成量(以下、「成膜量」ともいう)は、ウエハWに対する、各モノマーの吸着量に依存する。そして、ウエハWに対するモノマーの吸着量は、モノマーである第1の成膜ガスや第2の成膜ガスの各分子の衝突頻度(単位時間当たりの衝突量)に依存する。従って、ウエハWに対する各モノマーの吸着量は、第1の成膜ガス及び第2の成膜ガスの分圧により制御することができる。
【0029】
一方で、モノマーを分子レベルで見たとき、ウエハWの表面に吸着しているモノマーの振動エネルギーが大きくなると、ウエハWの表面から脱離する。従って、ウエハWの表面に付着しているモノマーの正味の吸着量は、図4に模式的に示すように、モノマーが単位時間にウエハWの表面に衝突する量と、吸着したモノマーがウエハWの表面から脱離する量と、のバランスによって決定される。そして、両成膜ガスのモノマーがウエハWに吸着している時間(吸着滞留時間)が長くなると、ウエハWに吸着したモノマー同士が反応する確率が増大し、成膜量が増える。
【0030】
このため例えば、PMDAとODAとの吸着反応によりポリイミドを生成させる場合に、部材の温度を240℃以上に加熱すると、単位時間あたりのモノマーの吸着量よりも脱離量が多くなり、当該部材の表面におけるモノマーの正味の吸着量が殆どゼロとなる。そこで、成膜対象であるウエハW以外のガス供給ノズル3やその上流側の管路、真空容器10の温度を例えば240℃(既述の成膜阻害温度に相当する)に加熱することにより、第1、第2の成膜ガスを混合供給したとしても、これらの部材の表面への膜物質の堆積を抑えることができる。
【0031】
以上に説明したメカニズムをまとめると、各成膜ガスの供給量(分圧)を上げると、当該成膜ガスのモノマーの吸着量が増えて成膜量は増大し、供給量(分圧)を下げると吸着量が減って成膜量は減少する。また、ウエハWの温度を上げるとモノマーの振動エネルギーが大きくなってモノマーの脱離量が増大すると共に吸着滞留時間が短くなることにより、成膜量は減少する。反対にウエハWの温度を下げると(但し、反応温度以上に加熱されていること)、モノマーの脱離量が減少すると共に吸着滞留時間が長くなることにより成膜量が増大する傾向がみられる。
【0032】
以上に検討したように、各成膜ガスの供給量やウエハWの温度を変化させて成膜を行う場合、これらの成膜ガスの飽和蒸気圧に留意しなければならない。温度一定の条件下で圧力が当該成膜ガスの飽和蒸気圧曲線を上回った場合には、成膜ガスが液化して、精密な膜厚制御を行うことができなくなってしまうおそれがある。従って成膜ガスの吸着量を増加させるにあたって、成膜ガスが液化しない範囲において成膜ガスの分圧及びウエハWの加熱温度を調整する必要がある。
【0033】
図5は、第1の成膜ガス及び第2の成膜ガスの飽和蒸気圧曲線を示す特性図であり、横軸は温度を示し、縦軸には圧力を対数表示してある。同図中、第1の成膜ガスの飽和蒸気圧曲線を実線で示し、第2の成膜ガスの飽和蒸気圧曲線を破線で示してある。なお図5に示す第1の成膜ガス及び第2の成膜ガスの飽和蒸気圧曲線は模式的な表示であり、PMDAやODAの実際の飽和蒸気圧曲線を記載したものではない。
【0034】
図1を用いて説明したように第1のモノマーと第2のモノマーとが1対1で反応してポリイミドの繰り返し単位構造が形成されるとし、例えば第1の成膜ガスの飽和蒸気圧が第2の成膜ガスの飽和蒸気圧よりも高い例で説明する。
【0035】
この場合には、まず飽和蒸気圧が低い成膜ガス(図5に示す例では第1の成膜ガス)については、当該成膜ガスが気体の状態を維持可能な温度、分圧条件下で成膜処理を行う。即ち、図5の例では、第1の成膜ガスの飽和蒸気圧曲線よりも下方側の温度、分圧条件下で成膜処理を行えばよいことになる。
【0036】
例えば図5に一点鎖線で示したウエハWの温度範囲内の所定の加熱温度で成膜処理を行う場合には、第1の成膜ガスの分圧が飽和蒸気圧未満の範囲でできるだけ両成膜ガスの分圧を上昇させてモノマーがウエハWの表面に衝突する量を増加させる。これによりモノマーの吸着量をできるだけ増加させることができる。
【0037】
また、図5に二点鎖線で示した分圧範囲の所定の成膜ガス分圧で成膜処理を行う場合には、同じく第1の成膜ガスの分圧が飽和蒸気圧未満の範囲でできるだけ加熱温度を下げてモノマーの脱離量を少なくする。これによりモノマーの脱離量を減少させると共に、吸着滞留時間を長くすることができる。
【0038】
このように飽和蒸気圧が低い低蒸気圧ガスの飽和蒸気圧を越えない分圧となるように低蒸気圧ガスの供給量を設定する。
一方、飽和蒸気圧が高い成膜ガス(図5に示す例では第2の成膜ガス)については、化学量論比的には低蒸気圧ガスと同量の(分圧を揃えた)高蒸気圧ガスを供給すればよいようにも考えられる。しかしながら、分圧を揃えた状態の場合、低蒸気圧ガスと比較して、高蒸気圧ガスはウエハWへの吸着量も少なくなってしまう。そこで、高蒸気圧ガスについては、飽和蒸気圧を越えない分圧範囲にて、低蒸気圧ガスよりも過剰量供給することが好ましい。
【0039】
なお、上述の成膜ガスの供給量(分圧)設定法は、成膜ガスが昇華曲線を超えて固化することを防止する場合にも同様に適用することができる。
【0040】
ここで既述のように、本実施の形態においては、ガス供給ノズル3と、排気口4から回転テーブル2の中心Cに向けて引いた直線との成す角度θが30°〜90°の範囲に設定されている。言い替えると、ガス供給ノズル3と排気口4とは比較的近い位置に配置されているため、ガス吐出孔30から吐出された各成膜ガスは、回転テーブル2の上方側の空間全体に広がる前に、短時間で排気口4から排出される。
【0041】
このように、供給から排気までの時間が短い期間中に成膜を行うためには、図4を用いて説明した模式図において、モノマーが単位時間にウエハWの表面に衝突する量が多い方が好ましい。また、モノマーがウエハWに吸着している時間(吸着滞留時間)を長くして、ウエハWに吸着したモノマー同士が反応する確率を増大させることが好ましい。
【0042】
前者(単位時間当たりのモノマーの衝突量の増大)の観点では、供給する成膜ガスについては、飽和蒸気圧に近い値であることが好ましい。一方で既述のように、成膜ガスの供給圧が飽和蒸気圧を超えてしまうと、成膜ガスが液化してしまう。そこで、第1、第2の成膜ガスのうちの飽和蒸気圧が低い成膜ガス(低蒸気圧ガス)に着目して成膜ガスの供給圧の制御を行う。即ち、低蒸気圧ガスの飽和蒸気圧をP0とし、前記ガス供給ノズル3から供給される低蒸気圧ガスの分圧をP1とすると、低蒸気圧ガスの供給圧力はP1/P0の値が1以下の、できるだけ高い値になるように設定されることが好ましい。
【0043】
一方、既述のように、第1、第2の成膜ガスのうちの飽和蒸気圧が高い成膜ガス(高蒸気圧ガス)は、高蒸気圧ガスの分圧をP0’、分圧をP1’としたとき、
P1’/P0’の値が1以下であり、且つ、低蒸気圧ガスよりも高い分圧で供給するとよい。
【0044】
また後者(モノマーの吸着滞留時間を長くする)観点では、ウエハWの加熱温度を適度に低くして、一旦吸着したモノマーが脱離しにくくなる温度に調整すればよい。
これらの観点を総合的に勘案し、本例では、供給された成膜ガス(低蒸気圧ガスを基準とする)に対する当該成膜ガスの消費量の割合である反応効率Eが70%以上、例えば90%となる温度にウエハWを加熱するようにヒータ7の加熱温度が設定されている。
【0045】
具体的には、ガス供給ノズル3から供給される低蒸気圧ガスの供給流量をL1、排気口4に到達する当該成膜ガスの排気流量をL1’とし、成膜処理にて消費された成膜ガスの割合を反応効率E(%)とする。このとき、成膜処理にて消費された前記成膜ガスの量は、低蒸気圧ガスの供給流量L1と、低蒸気圧ガスの排気流量L1’と、の差分値より求めることができる。この考え方に基づき下記の式(1)で表される反応効率Eが70%以上となるようにウエハWの加熱温度を設定する。これにより、成膜ガスが供給された領域にて成膜ガスをウエハWに効率よく吸着、反応させ、排気口に至るまでの短時間で成膜を行うことができる。
E(%)={(L1−L1’)/L1}×100 …(1)
【0046】
以上に説明した考え方に基づきポリイミドの成膜を行う本例の成膜装置の作用について説明する。
例えば図示しない外部の搬送機構により6枚のウエハWを回転テーブル2の各載置部24に載置し、ゲートバルブ16を閉じる。載置部24に載置されたウエハWは、ヒータ7によって所定の温度、例えば140℃に加熱される。次いで真空排気部43により排気口4を介して排気を行い、Nガス供給源52、62から供給されるNガスにより、真空容器10内の圧力(全圧)を、例えば50Pa(0.4Torr)に調節し、回転テーブル2を例えば10rpm〜30rpmで回転させる。
【0047】
次いで上述の全圧を維持しつつ、PMDAを含む第1の成膜ガス(低蒸気圧ガス)を例えば1.33Pa(0.01Torr)、ODAを含む第2の成膜ガス(高蒸気圧ガス)を例えば1.46Pa(0.011Torr)の分圧で各々ガス供給ノズル3に供給する。これらの成膜ガスは、ガス供給ノズル3の上流側の導入管内で合流して混合され、例えば成膜阻害温度より高温の260℃に加熱された状態でガス供給ノズル3から吐出される。PMDA及びODAは、成膜処理の期間中、継続的に供給される。
【0048】
上述の動作により、回転テーブル2の中心Cの周りを公転している各ウエハWが、ガス供給ノズル3の下方を繰り返し通過する。この結果、各ウエハWの表面に第1の成膜ガスに含まれる第1のモノマーであるPMDAと、第2の成膜ガスに含まれる第2のモノマーであるODAが各々、同時に吸着する。この結果、ウエハWの表面にてPMDAとODAとが反応してポリイミドとなり、当該ポリイミドを堆積させることにより成膜が行われる。
【0049】
このとき既述のように実施の形態に係る成膜装置においては、第1、第2の成膜ガスの分圧P1と、低蒸気圧ガスの飽和蒸気圧P0との比であるP1/P0の値が1以下になるように設定している。この結果、低蒸気圧ガスの液化を防止しつつ、成膜ガスが排気口4に排気されるまでの短い時間にて成膜処理を行うことができる。
【0050】
より詳細には、図6に示すように本例の成膜装置は、ウエハWの移動領域Aと交差するようにガス供給ノズル3を配置している。また、ガス供給ノズル3の下面には、前記移動領域Aと交差する回転テーブル2の中心側から、周縁側側の範囲に亘ってガス吐出孔30が設けられている。さらに第1、第2の成膜ガスを反応効率Eが70%以上となるようにウエハWの加熱温度を設定している。
【0051】
これらの構成及び成膜条件により、各吐出孔30から吐出された成膜ガスの多くは、当該成膜ガスがウエハWに衝突する領域(図6中に「領域D」と記してある)の近傍にて吸着、反応が進行する。この結果、ウエハWをスキャンするようにポリイミドが形成される。そして回転テーブル2を回転させることで、各ウエハWが領域Dを繰り返し通過することにより、ポリイミドが徐々に堆積されて成膜が行われる。
【0052】
また反応効率Eが70%以上となるように反応温度が設定された条件下においては、領域Dの近傍において成膜ガスの多くが吸着されて消費されている。このため、排気口4に流れ込むガス、の大部分はキャリアガスである。
【0053】
このように本実施の形態の成膜装置は、局所領域にて、効率的にウエハWへの成膜を行うことが可能であり、生産性が高い。
【0054】
以上に説明した動作に基づき、予め設定された膜厚の膜を成膜したら、成膜ガスの供給、回転テーブル2の回転、及びウエハWの加熱を停止し、搬入時とは反対手順にて成膜処理を終えたウエハWを搬出した後、次の成膜処理の開始を待つ。
このとき、次の成膜処理を開始する前に、例えば真空容器10内にクリーニングガスであるOガスを供給すると共に、紫外線ランプ83により紫外線を照射する。これにより活性化したOガスを回転テーブル2の表面に供給し、載置部24以外のウエハWによって覆われていなかった領域に形成されたポリイミドの膜を分解する処理を行ってもよい。また回転テーブル2に形成された膜の分解は、予め設定された回数の成膜処理を行った後に行うようにしてもよい。
【0055】
上述の実施の形態によれば、複数のウエハWを回転テーブル2に載置して公転させると共に、互いに反応して膜物質を形成するための成膜ガスである第1の成膜ガス及び第2の成膜ガスを下方に向けて吐出するガス吐出孔30を備えたガス供給ノズル3を、ウエハWの移動領域Aと対向するように設けている。この構成により、複数のウエハWに連続的に成膜処理を行うことができるため生産性が向上する。また、ガス供給ノズル3には、回転テーブル2側に向けて成膜ガス吐出するためのガス吐出孔30が、回転テーブル2の回転中心側から周縁側の範囲に亘って前記移動領域Aと交差するように形成されている。この構成により、回転テーブル2の径方向においてウエハWに成膜される膜厚の均一性が良好になる。
【0056】
さらにまた実施の形態に係る成膜装置を用いて形成する膜は、図7Aに示すようにアミノ基を備えたモノマーを含む成膜ガスとエポキシ基を備えたモノマーを含む成膜ガスとを反応させて、エポキシ結合を有する膜物質により形成してもよい。また図7Bに示すようにアミノ基を備えたモノマーを含む成膜ガスとイソシアネートを備えたモノマーを含む成膜ガスとにより尿素結合を有する膜物質から膜の形成を行ってもよい。あるいは図7Cに示すようにアミノ基を備えたモノマーを含む成膜ガスと、酸無水物であるモノマーを含む成膜ガスとによりイミド結合を有する膜物質から膜を形成してもよい。さらには、アルコールであるモノマーを含む成膜ガスとイソシアネートであるモノマーを含む成膜ガスとによるウレタン結合を有する膜物質や、アミノ基を備えたモノマーを含む成膜ガスと、カルボン酸であるモノマーを含む成膜ガスとによるアミド結合を有する膜物質から膜を形成してもよい。さらには共重合、2分子反応、3分子反応、あるいは3種混合により重合体を形成して膜を形成してもよい。
【0057】
そして第1の成膜ガス及び第2の成膜ガスは、イソシアネート基やアミノ基などの官能基が互いに一官能性であるモノマーのほか、二官能性以上のモノマー同士を互いに結合させて膜物質を形成するものであってもよい。さらに膜物質を成膜するためのモノマーの骨格構造としては、芳香族、脂環族、脂肪族や、芳香族及び脂肪族の結合体などを用いることができる。
【0058】
また実施の形態の成膜装置においては、第1の成膜ガスを供給するガス供給部と第2の成膜ガスを供給するガス供給部とは、互いに独立して個別に設けてもよい。そのような構成の場合にも第1の成膜ガス及び第2の成膜ガスを、移動領域Aの互いに重なる領域に同時に供給することで同様の効果を得ることができる。
【0059】
なおこのとき、個別に設けられた2つのガス供給部(図3に示すガス供給ノズル3を互いに隣り合う位置に2本配置する場合など)から供給される、第1、第2の成膜ガスのウエハW表面への到達位置が重なり合っていることは必須ではない。例えば互いに隣り合う領域に各成膜ガスの到達位置が形成される場合であっても、ウエハWに衝突した後の成膜ガスが双方の到達位置に流れ込み、ウエハWに吸着する場合、これら第1、第2の成膜ガスは、移動領域Aの互いに重なる領域に同時に供給されているということができる。
【0060】
また真空容器10内には、回転テーブル2の回転中心側から周縁側の範囲に亘って複数のガス吐出孔30が設けられたガス供給ノズル3と、当該ガスノズル3から見て、前記角度θが30〜90°の範囲に配置された排気口4との組を複数組設けてもよい。例えば回転テーブル2の直径に沿ってガス供給ノズル3を配置し、前記回転中心側から見て両周縁側の範囲(回転テーブル2の半径)に亘って各々、複数のガス吐出孔30を設け、各半径から見て前記角度θが30〜90°となる位置に、各々、排気口4を設けてもよい。
【0061】
この他、既述の紫外線照射部8により、回転テーブル2に載置されたウエハWに向けて紫外線を照射し、成膜された膜を改質してもよい。あるいは、紫外線照射部8に代えて回転テーブル2の表面に赤外線を照射し、熱によって回転テーブル2に付着した膜物質を除去する構成でもよい。またクリーニング用の照射部と、ウエハWの改質用の照射部と、をともに備えていてもよい。
以上に検討したように、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0062】
次に、図6にて説明したようにガス供給ノズル3から供給した成膜ガスが速やかにウエハWに吸着することを確認するための予備実験を行った結果について説明する。図8に示すように、真空容器100内にウエハWが載置される載置台101を備え、載置台101にはヒータ102が埋設された枚葉式の成膜装置を予備実験に用いた。また真空容器100の側壁には、第1の成膜ガス(PMDA)及び第2の成膜ガス(ODA)を供給するガス供給ノズル3aが設けられ、載置台101に載置されたウエハWの表面に向けて横方向に成膜ガスを供給できるように構成されている。一方載置台101を挟んで、ガス供給ノズル3から成膜ガスが吐出される方向と対向する位置には、排気部を成す排気口4aが設けられている。
【0063】
このような成膜装置を用い、ウエハWの温度を140、160、180及び200℃に各々設定して成膜処理を行い、成膜ガスの吐出方向に伸びウエハWの中心を通る直線に沿った位置における、膜厚の分布を調べた。なお真空容器100内の圧力、第1、第2の成膜ガスの分圧については、図2図3などを用いて説明した実施の形態に係る成膜装置と同様に設定し、これらの成膜ガスの供給シーケンスについては、実施の形態と同様に第1の成膜ガス及び第2の成膜ガスを混合した後、ガス供給ノズル3aから連続的に供給するシーケンスを用いた。
図9は、ウエハWの加熱温度を140、160、180及び200℃の各々に設定したときの膜厚分布を示す特性図である。図9の横軸は、成膜ガスの吐出位置からの距離を示し、縦軸は各位置に成膜されたポリイミドの膜厚を示している。
【0064】
図9に示すように、いずれの加熱温度においても、ウエハWに成膜される膜の膜厚は、ガス供給ノズル3からの距離が長くなるに従い減少していることが分かる。例えばウエハWの加熱温度が最も低い140℃のときには、ウエハWに成膜される膜の膜厚は、ガス供給ノズル3からの吐出位置に近い領域にて他の加熱温度よりも厚い膜が形成され、当該吐出位置からの距離が大きくなるに連れて、急激に減少している。これは、図5を用いて説明したように、加熱温度が比較的低温の場合、ウエハWに吸着したモノマーが離脱する離脱量が少なくなるため、吐出位置に近い領域の膜が厚くなる一方、下流側に流れてくる成膜ガス中のモノマーの量が急激に減少し、これに伴って膜が薄くなっていると考えられる。
【0065】
これに対してウエハWの加熱温度を例えば200℃に上げた場合には、吐出位置からの距離に対して、一次直線を描くように膜厚が減少しているが、その減少量が少ない。これは、加熱温度が高温になるに連れて、ウエハWからのモノマーの離脱量が多くなるためと考えられる。さらにウエハWからのモノマーの離脱量が多くなることでガス供給ノズル3からの距離が長くなってもガス中に成膜ガスが残りやすいと考えられ、ガス供給ノズル3から離れた位置においても成膜されやすいと言える。
【0066】
このようにウエハWの加熱温度を変化させることにより、ウエハWに成膜される膜の膜厚分布を変化させることができる。そして、また第1の成膜ガス及び第2の成膜ガスとしてPMDA及びODAを用いる場合には、ウエハWの加熱温度を140℃程度に設定することで、成膜ガスの供給位置において成膜される膜厚を厚くし、供給位置から離れるに従い、成膜される膜厚を急激に薄くすることが可能であることを確認できた。そして、第1、第2のモノマーとして他のモノマーを用いる場合であっても、反応エネルギーに応じた適切な加熱温度を設定することにより、成膜ガスの吐出位置からの距離と膜厚との関係は、図9に示す例と同様に調節することができる。従って図3図6を用いて説明した実施形態に係るガス供給ノズル3を用いて成膜処理を行ったときに、ウエハWの加熱温度を適切に選択することにより、成膜ガスが衝突する領域Dの近傍にて成膜処理を進行させることができると言える。
【符号の説明】
【0067】
3 ガス供給ノズル
4 排気口
2 回転テーブル
10 真空容器
7 ヒータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9