特許第6981365号(P6981365)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981365
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】光検出器
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20211202BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20211202BHJP
   H01L 29/866 20060101ALI20211202BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   H01L31/10 G
   H01L29/90 D
   G02B6/12 301
   H01L31/10 A
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-95451(P2018-95451)
(22)【出願日】2018年5月17日
(65)【公開番号】特開2019-201133(P2019-201133A)
(43)【公開日】2019年11月21日
【審査請求日】2020年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】本田 健太郎
【審査官】 佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0283848(US,A1)
【文献】 米国特許第9726841(US,B1)
【文献】 特表2017−517876(JP,A)
【文献】 米国特許第8492866(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0175199(US,A1)
【文献】 特開平9−172190(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/038072(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/20
G02B 6/12−6/138
H01L 21/329、29/866
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトダイオードとツェナーダイオードとを備えた光検出器において、
前記フォトダイオードはアノード電極とカソード電極とを備え、
前記ツェナーダイオードは、
シリコン基板と、
前記シリコン基板上の下部クラッド層と、
前記下部クラッド層上の、第一型不純物イオンがドーピングされた第一型シリコン領域及び第二型不純物イオンがドーピングされた第二型シリコン領域を含むシリコンコア層と、
前記シリコンコア層上のゲルマニウム層と、
前記ゲルマニウム層上の上部クラッド層と、
前記第一型シリコン領域および前記第二型シリコン領域のそれぞれどちらかに接続されたアノード電極とカソード電極と、
を備え、
前記ツェナーダイオードのアノード電極と前記フォトダイオードのアノード電極とが接続し、
前記ツェナーダイオードのカソード電極と前記フォトダイオードのカソード電極とが接続していることを特徴とする光検出器。
【請求項2】
前記ツェナーダイオードにおいて、
前記第二型シリコン領域は、前記ゲルマニウム層の直下にあり、
前記ゲルマニウム層の底面と前記第一型シリコン領域の間には、真性シリコン領域があり、
前記第一型シリコン領域と前記第二型シリコン領域との間に前記真性シリコン領域があることを特徴とする請求項1に記載の光検出器。
【請求項3】
前記フォトダイオードは、
シリコン基板と、
前記シリコン基板上の下部クラッド層と、
前記下部クラッド層上の、第一型不純物イオンがドーピングされた第一型シリコンスラブを含むシリコンコア層と、
前記シリコンコア層に接続されたシリコン導波路層と、
前記シリコンコア層上の、第二型不純物がドーピングされた第二型ゲルマニウム領域を含むゲルマニウム層と、
前記シリコンコア層および前記ゲルマニウム層上の上部クラッド層と、
前記第一型シリコンスラブおよび前記第二型ゲルマニウム領域にそれぞれ接続された電極を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光検出器。
【請求項4】
前記フォトダイオードと、前記ツェナーダイオードとが備えたシリコン基板、下部クラッド層、シリコンコア層、上部クラッド層を共有すること
を特徴とする請求項3に記載の光検出器。
【請求項5】
前記フォトダイオードと前記ツェナーダイオードとが、前記フォトダイオードが備えた前記シリコン導波路層を通過する光の入射方向に並ぶことを特徴とする請求項4に記載の光検出器。
【請求項6】
前記フォトダイオードと前記ツェナーダイオードとが、
前記フォトダイオードが備えた前記シリコン導波路層を通過する光の入射方向に対して垂直方向に並ぶことを特徴とする請求項4に記載の光検出器。
【請求項7】
前記フォトダイオードに対して、前記ツェナーダイオードが複数接続されていることを特徴とする請求項1乃至6いずれか一項に記載の光検出器。
【請求項8】
前記第一型不純物イオンは、p型不純物イオンであり、前記第二型不純物イオンは、n型不純物イオンであることを特徴とする請求項1乃至7いずれか一項に記載の光検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信システムや光情報処理システムにおいて用いられる光検出器に関し、特に静電気放電に対する耐性の優れた光検出器を提供するための構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の光通信の普及に伴い、光通信装置の低コスト化が求められている。その解決策の1つとして、光通信装置を構成する光回路を、シリコンウエハのような大口径ウエハ上に、シリコンフォトニクスのような微小光回路技術を用いて形成する方法がある。これにより、1チップあたりの材料費を劇的に下げ、光通信装置の低コスト化を図ることが出来る。
【0003】
このような技術を用いたシリコン(Si)基板上に形成する代表的な光検出器としては、モノリシック集積が可能なゲルマニウム光検出器(Germanium photodetector;GePD)がある。図1は、従来の導波路結合型の縦型GePDの構造を模式的に示す図である。図2は、図1のII−II’の断面図である。尚、構造を分かり易くするために、図1では、図2に示す上部クラッド層103、電極116〜118を省き、電極116〜118がp++シリコン電極部112、p++シリコン電極部113およびn型Ge領域115に接する位置のみ四角で示している。この四角は電極116〜118の接続面を示している。p++シリコン電極部112は、p++Si電極部、p型シリコン電極部ともいう。
【0004】
GePDは、Si基板、Si酸化膜、表面Si層からなるSOI(Silicon On Insulator)基板にリソグラフィ技術等を用いて形成される。図2に示すGePD100は、Si基板101と、Si基板上のSi酸化膜からなる下部クラッド層102と、コア層110と、信号光を導く導波路(シリコン導波路層)109と、コア層110上に形成された光を吸収するゲルマニウム(Ge)層114と、コア層110およびGe層114上に形成された上部クラッド層103を備える。
【0005】
コア層110は、p型不純物イオンがドーピングされたp型シリコン(Si)スラブ111a、およびp型不純物が高濃度にドーピングされ、電極として作用するp++シリコン電極部112、p++シリコン電極部113が形成されている。Ge層114は、エピタキシャル成長によって積層され、その上部にn型不純物がドーピングされたn型Ge領域115が形成されている。そして、p++シリコン電極部112、p++シリコン電極部113およびn型Ge領域115上には、それらに接するように電極116〜118を備える。
【0006】
GePDは、コア層110に光が入射されてGe層114で光が吸収されると、電極117と電極116、118との間に光電流が流れるので、その電流を検出することで光を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許5370857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図1図2に示す一般的なGePDは静電気放電に弱いという課題を持つ。静電気放電は瞬間的に高電圧パルスがデバイスに印加される現象であり、一般的な静電気放電の規格モデルとして、帯電デバイスモデル、マシンモデル、人型モデルがある。例えば一般的なGePDは人型モデルにおいて50〜150V程度の耐圧を持つ。一般的なデバイスに求められる人型モデルにおける耐圧は250~500V程度であり、GePDの耐圧は不足している。静電気放電の耐圧を上げる一般的な手段としては、並列に容量を付加する、直列に抵抗を付加する、並列にバリスタやツェナーダイオードを付加するなどがあるが、抵抗や容量の付加は、GePDの高速特性を低下させるという課題があり、一般的なバリスタやツェナーダイオードは、適切な保護をする動作閾値を示せない、バリスタやツェナーダイオード自体の容量がGePDの高速特性を低下させる要因となる、シリコン基板上にモノリシック集積することが難しく外付け部品となってしまうため回路規模が増大する、といった課題がある。
【0009】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、静電気放電による破壊を防ぐことができ、100V以上の耐圧の向上が見込める光検出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためにあるものであり、一般的なGePDにシリコンフォトニクス技術でモノリシックに集積可能なツェナーダイオードを備えた光検出器である。本発明で備えたツェナーダイオードは極低容量かつ低直列抵抗であり、また動作電圧は0.5〜−7VとGePDの一般的な動作電圧である0〜3Vをカバーしながら、−7Vと低い閾値電圧により、GePDを保護する。このためGePDの高速特性を劣化させることなく、またモノリシック集積により回路規模および作製プロセスの工程数を増大することを抑制する。
【0011】
本発明の光検出器は以下のような構成を備えたことを特徴とする。図3のように一般的なGePD300に並列にゲルマニウムとシリコンで構成されるツェナーダイオード301を接続する。本発明で接続されるツェナーダイオードは図4の様な断面構成をしている。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、フォトダイオードとツェナーダイオードとを備えた光検出器において、前記フォトダイオードはアノード電極とカソード電極とを備え、前記ツェナーダイオードは、シリコン基板と、前記シリコン基板上の下部クラッド層と、前記下部クラッド層上の、第一型不純物イオンがドーピングされた第一型シリコン領域及び第二型不純物イオンがドーピングされた第二型シリコン領域及びを含むシリコンコア層と、前記シリコンコア層に接続されたシリコン導波路層と、前記シリコンコア層上のゲルマニウム層と、前記ゲルマニウム層上の上部クラッド層と、前記第一型シリコン領域および前記第二型シリコン領域のそれぞれどちらかに接続されているアノード電極とカソード電極と、を備え、前記ツェナーダイオードのアノード電極と前記フォトダイオードのアノード電極とが接続し、前記ツェナーダイオードのカソード電極と前記フォトダイオードのカソード電極とが接続することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様の光検出器であって、前記ツェナーダイオードにおいて、前記第二型シリコン領域は、前記ゲルマニウム層の直下にあり、前記ゲルマニウム層の底面と前記第一型シリコン領域の間には、真性シリコン領域があり、前記第一型シリコン領域と前記第二型シリコン領域との間に前記真性シリコン領域があることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第3の態様は、第1の態様又は第2の態様の光検出器であって、前記フォトダイオードは、シリコン基板と、前記シリコン基板上の下部クラッド層と、前記下部クラッド層上の、第一型不純物イオンがドーピングされた第一型シリコンスラブを含むシリコンコア層と、前記シリコンコア層に接続されたシリコン導波路層と、前記シリコンコア層上の、第二型不純物がドーピングされた第二型ゲルマニウム領域を含むゲルマニウム層と、前記シリコンコア層および前記ゲルマニウム層上の上部クラッド層と、前記第一型シリコンスラブおよび前記第二型ゲルマニウム領域にそれぞれ接続された電極を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の第4の態様は、第3の態様の光検出器であって、前記フォトダイオードと、前記ツェナーダイオードとが備えたシリコン基板、下部クラッド層、シリコンコア層、及び上部クラッド層を共有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の第5の態様は、第4の態様の光検出器であって、前記フォトダイオードと前記ツェナーダイオードとが、前記フォトダイオードが備えた前記シリコン導波路層を通過する光の入射方向に並ぶことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の第6の態様は、第4の態様の光検出器であって、前記フォトダイオードと前記ツェナーダイオードとが、前記フォトダイオードが備えた前記シリコン導波路層を通過する光の入射方向に対して垂直方向に並ぶことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の第7の態様は、第1から第6の態様のいずれか一に記載の光検出器であって、前記フォトダイオードに対して、前記ツェナーダイオードが複数接続されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の第8の態様は、第1から第7の態様のいずれか一に記載の光検出器であって、前記第一型不純物イオンは、p型不純物イオンであり、前記第二型不純物イオンは、n型不純物イオンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の光検出器は、ツェナーダイオードが破壊されるまではGePDに掛かる電圧は一定であり保護されるため、静電気放電による破壊を防ぐことが出来る。また、本発明の光検出器は、一般的なGePDに比べて100V以上の耐圧の向上が見込めるため、人型モデルにおける一般的に求められる耐圧に到達し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来の縦型GePDを示す図である。
図2図1のGePDの断面構造を示す図である。
図3】本発明の光検出器の構成を示す図である。
図4】本発明の光検出器が備えたツェナーダイオードの断面構造を示す図である。
図5】本発明の光検出器、一般的な縦型GePD、および本発明の光検出器が備えたツェナーダイオードの電流電圧曲線を示す図である。
図6】本発明の光検出器が備えたツェナーダイオードの電圧抵抗曲線を示す図である。
図7】本発明の光検出器が備えたツェナーダイオードの電圧容量曲線を示す図である。
図8】本発明の実施例2に係る光検出器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の光変調器の形態について、実施例及び図面を用いて詳細に説明する。なお、図面においては同一の機能を有する部分は同一の番号を付することで、説明の明瞭化を図っている。但し、本発明は以下に示す実施形態の記載内容に限定されず、本明細書等において開示する発明の趣旨から逸脱することなく形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者にとって自明である。
【0023】
(実施例1)
図3に本発明の光検出器の構成を示す。GePDは図1の一般的なGePD100と同じ構成である。本実施例では導波路109から見てGePD300とツェナーダイオード301が、直線状に並ぶ構成であり、導波路109からの光の入射方向に配列する構成である。図3の破線II-II’における断面図及び破線IV-IV’における断面図は、それぞれ、図2及び図4に対応する。
【0024】
図3のツェナーダイオード301はシリコンからなるコア層110(シリコンコア層とも言う)の上に、p型不純物イオンがドーピングされたp型シリコンスラブ111a、およびp型不純物が高濃度にドーピングされ、電極として作用するp++シリコン電極部112、n型不純物イオンがドーピングされたn型シリコンスラブ119、およびn型不純物が高濃度にドーピングされ、電極として作用するn++シリコン電極部120が形成されている。n型シリコンスラブは、n型Siスラブ又はn型シリコン領域ともいう。n++シリコン電極部は、n部シリコン電極部又はn型電極部ともいう。Ge層114は、エピタキシャル成長によって積層されている。そして、p++シリコン電極部112、およびn++シリコン電極部120上には、それらに接するように電極116と電極117を備える。この電極116と電極117はGePD300の電極と接続している。
【0025】
Ge層114は、n型シリコンスラブ119の上に形成され、p型シリコン(Si)領域111bの上には形成されない。p型シリコン領域111bとn型シリコンスラブ119の間にはギャップがあり、真性シリコン領域125が設けてある。このギャップのサイズによってツェナーダイオードの逆バイアス側の閾値が決まる。
【0026】
ツェナーダイオード301のアノード電極とGePD300のアノード電極とが接続し、ツェナーダイオード301のカソード電極とGePD300のカソード電極とが接続する。
【0027】
電極116がアノード電極として機能する場合、電極117、118はカソード電極として機能する。また、電極116がカソード電極として機能する場合、電極117、118はアノード電極として機能する。
【0028】
図4は本発明のツェナーダイオード301のIV-IV'での断面図である。コア層110にかかるp型シリコン領域111bはGe層114の直下には無く、n型シリコンスラブ119がGe層114の下に有る。p++シリコン電極部112はp型シリコン領域111b上にあり、n++シリコン電極部120はn型シリコンスラブ119上にあり、p++シリコン電極部112は、電極116と接続している。また、n++シリコン電極部120は、電極117と接続されている。p型シリコン領域111b、n型シリコンスラブ119の間にはインプラの無い真性シリコン領域125がある。この真性シリコン領域125の大きさ、およびp型シリコン領域111b、n型シリコンスラブ119のドーピング濃度でツェナーダイオードの動作閾値は決定される。動作閾値を調整するため、真性シリコン領域125を無くし、p型シリコン領域111b、n型シリコンスラブ119を接触させても良い。この時、p型シリコン領域111bはGe層114の直下に入っても良い。
【0029】
本実施例では、図5を用い、本発明の光検出器、一般的な縦型GePD、および本発明の光検出器が備えたツェナーダイオードの電流電圧の関係について説明する。
【0030】
本発明の光検出器に備えられているツェナーダイオードは図5の(1)のような電流電圧特性を示す。図5の(2)は一般的なGePDの電流電圧特性である。また、図5の(3)は実施例1の構成であるGePDにツェナーダイオードを備えた図3の構成の光検出器の電流電圧特性である。
【0031】
図5の(1)が示すように本発明のツェナーダイオードは逆バイアス側では−7V程度から一気に電流を上げ、また順バイアス側では0.5V程度から一気に電流を上げる。更に0.5V〜−7Vの間で流れる電流は数nA程度であり、典型的なツェナーダイオードの動作をしている。図5の(3)にある本発明の構成の光検出器の電流電圧特性を見ると、図5の(2)のような通常のGePDの電流電圧特性とは異なり、7V程度から一気に電流を上げる図5の(1)のツェナーダイオードの電流電圧特性を重ね合わせたような挙動を示している。静電気放電による瞬間的な電圧の上昇が有った時には、このツェナーダイオードの急激な電流増加によってGePDにかかる電圧を7V程度に保持する役割を果たす。このため、ツェナーダイオードが破壊されるまではGePDに掛かる電圧は一定であり保護されるため、静電気放電による破壊を防ぐことが出来る。本発明の光検出器は、一般的なGePDに比べて100V以上の耐圧の向上が見込めるため、人型モデルにおける一般的に求められる耐圧に到達し得る。
【0032】
図6は本発明のツェナーダイオードに順バイアスを掛けた時の抵抗の変化を示している。30Ω程度で飽和しており、ツェナーダイオードの直列抵抗成分が30Ω程度であることを示している。
【0033】
図7は本発明のツェナーダイオードの容量の逆バイアスに対する変化を示している。8〜15fF程度で推移している。
【0034】
図6,7の容量と抵抗から算出されるCR時定数は100GHzを大きく超えており、ツェナーダイオードの付加によってGePDの高速動作特性を低下させないことがわかる。GePD300は図1図2にある縦型のGePDだけではなく、シリコンフォトニクスで作製された他のフォトダイオードに変更しても良い。
【0035】
図4は本発明のツェナーダイオード301のIV-IV'での断面図であるコア層110にかかるp型シリコン領域111bはGe層114の直下には無く、n型シリコンスラブ119がGe層114の下に有る。p++シリコン電極部112はp型シリコン領域111b上にあり、n++シリコン電極部120はn型シリコンスラブ119上にあり、p++シリコン電極部112は、電極116と接続している。また、n++シリコン電極部120は、電極117と接続している。p型シリコン領域111b、n型シリコンスラブ119の間にはインプラの無い真性シリコン領域125がある。この真性シリコン領域125の大きさ、およびp型シリコン領域111b、n型シリコンスラブ119のドーピング濃度でツェナーダイオードの動作閾値は決定される。動作閾値を調整するため、真性シリコン領域125を無くし、p型シリコン領域111b、n型シリコンスラブ119を接触させても良い。この時、p型シリコン領域111bはGe層114の直下に入っても良い。
【0036】
(実施例2)
図8は本発明のツェナーダイオード301をGePD300の隣に配置した一例である。図3の実施例1では導波路109から見てGePD300とツェナーダイオード301が直線状に並ぶ構成であるが、図8の実施例2では導波路109から見てGePD300とツェナーダイオード301が一直線状に並ばず、導波路109からの光の入射方向に直交する方向に配列する構成である。GePD300のGe層114の長手方向と、ツェナーダイオード301のGe層114の長手方向とが概略平行の関係にある。図8の破線II-II’における断面図及び破線IV-IV’における断面図は、それぞれ、図2及び図4に対応する。
【0037】
図8の構成では導波路109から直進する光はツェナーダイオード301に入ることがないため、光電流をツェナーダイオードが検出することはない。
【0038】
また、図8ではGePD300に対してツェナーダイオード301を1つ接続しているが、ツェナーダイオード301を複数接続しても良い。その場合はGePDの高速動作特性に影響を与えるものの、より高い静電気放電に対する耐性を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、光通信システムや光情報処理システムにおいて用いられる光検出器に関し、特に静電気放電に対する耐性の優れた光検出器に適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
100, 300 GePD
101 Si基板
102 下部クラッド層
103 上部クラッド層
109 導波路
110 コア層
111a p型シリコンスラブ
111b p型シリコン領域
112 p++シリコン電極部
113 p++シリコン電極部
114 Ge層
115 n型Ge領域
116〜118 電極
119 n型シリコンスラブ
120 n++シリコン電極部
125 真性シリコン領域
301 ツェナーダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8