特許第6981421号(P6981421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭硝子株式会社の特許一覧

特許6981421アルカリ水電解用隔膜およびアルカリ水電解装置
<>
  • 特許6981421-アルカリ水電解用隔膜およびアルカリ水電解装置 図000009
  • 特許6981421-アルカリ水電解用隔膜およびアルカリ水電解装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981421
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】アルカリ水電解用隔膜およびアルカリ水電解装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 13/04 20210101AFI20211202BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20211202BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20211202BHJP
   C25B 13/08 20060101ALI20211202BHJP
   C08J 5/22 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   C25B13/04 301
   C25B1/04
   C25B9/00 A
   C25B13/08 304
   C08J5/22 101
【請求項の数】13
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-545034(P2018-545034)
(86)(22)【出願日】2017年10月11日
(86)【国際出願番号】JP2017036870
(87)【国際公開番号】WO2018070444
(87)【国際公開日】20180419
【審査請求日】2020年8月26日
(31)【優先権主張番号】特願2016-201803(P2016-201803)
(32)【優先日】2016年10月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山木 泰
(72)【発明者】
【氏名】角倉 康介
(72)【発明者】
【氏名】宮本 悟
(72)【発明者】
【氏名】草野 博光
(72)【発明者】
【氏名】西尾 拓久央
【審査官】 坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−075583(JP,A)
【文献】 特開昭56−99234(JP,A)
【文献】 特開昭57−200575(JP,A)
【文献】 特開平03−137136(JP,A)
【文献】 特開平08−188895(JP,A)
【文献】 特開平09−078280(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/093570(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B
C08J 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン酸型官能基を有するポリマーを含み、カルボン酸型官能基を有するポリマーを含まないイオン交換膜と、隔膜の少なくとも一方の最表層として設けられている親水性層とを有し、
前記イオン交換膜の厚さが、25〜70μmであり、
前記スルホン酸型官能基を有するポリマーのイオン交換容量が、1.2〜2.5ミリ当量/g乾燥樹脂である、アルカリ水電解用隔膜。
【請求項2】
前記イオン交換膜に埋め込まれた織布からなる補強材をさらに有する、請求項1に記載のアルカリ水電解用隔膜。
【請求項3】
前記補強材が、ポリテトラフルオロエチレンからなる補強糸、ポリフェニレンサルファイドからなる補強糸、ナイロンからなる補強糸およびポリプロピレンからなる補強糸からなる群から選ばれる少なくとも1種の補強糸を含む織布からなる、請求項に記載のアルカリ水電解用隔膜。
【請求項4】
前記隔膜が、その両面の最表層として親水性層を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載のアルカリ水電解用隔膜。
【請求項5】
前記親水性層が、無機物粒子を含む無機物粒子層である、請求項1〜のいずれか一項に記載のアルカリ水電解用隔膜。
【請求項6】
前記無機物粒子が、第4族元素または第14族元素の酸化物、窒化物および炭化物からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる無機物粒子である、請求項に記載のアルカリ水電解用隔膜。
【請求項7】
前記無機物粒子が、SiO、SiC、ZrOまたはZrCからなる無機物粒子である、請求項またはに記載のアルカリ水電解用隔膜。
【請求項8】
前記スルホン酸型官能基を有するポリマーが、スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーである、請求項1〜のいずれか一項に記載のアルカリ水電解用隔膜。
【請求項9】
前記イオン交換膜が、前記スルホン酸型官能基を有するポリマーとして、下式(u1)で表される単位を有するポリマーを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載のアルカリ水電解用隔膜。
−[CF−CF(−O−CFCF(CF)−O−(CF−SOM)]−
・・・(u1)
ただし、mは、1〜6の整数であり、Mは、アルカリ金属である。
【請求項10】
前記イオン交換膜が、前記スルホン酸型官能基を有するポリマーとして、下式(u2)で表される単位を有するポリマーを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載のアルカリ水電解用隔膜。
−[CF−CF(−O−(CF−SOM)]− ・・・(u2)
ただし、mは、1〜6の整数であり、Mは、アルカリ金属である。
【請求項11】
前記イオン交換膜が、前記スルホン酸型官能基を有するポリマーとして、下式(u3)で表される単位を有するポリマーを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載のアルカリ水電解用隔膜。
【化1】
ただし、Qは、エーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基であり、Qは、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基であり、Rf3は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキル基であり、Xは、酸素原子、窒素原子、または炭素原子であり、Xが酸素原子の場合、aは0であり、Xが窒素原子の場合、aは1であり、Xが炭素原子の場合、aは2であり、Yは、フッ素原子、または1価のペルフルオロ有機基であり、rは、0または1であり、Mは、アルカリ金属である。
【請求項12】
前記式(u3)で表される単位が、下式(u31)で表される単位である、請求項11に記載のアルカリ水電解用隔膜。
【化2】
ただし、RF11は、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状のペルフルオロアルキレン基であり、RF12は、炭素数1〜6の直鎖状のペルフルオロアルキレン基であり、rは、0または1であり、Mは、アルカリ金属である。
【請求項13】
陰極および陽極を備えた電解槽と、
前記電解槽内を前記陰極側の陰極室と前記陽極側の陽極室とに区切るように前記電解槽内に装着された請求項1〜12のいずれか一項に記載のアルカリ水電解用隔膜と
を備えた、アルカリ水電解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ水電解用隔膜およびアルカリ水電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電、風力発電等の再生可能エネルギを利用した発電においては、発電量が時間帯や自然条件によって変化する。そのため、余剰電力を水素に変換することが提案されている。変換された水素は、貯蔵、輸送することが可能であり、メタン、メタノール等の化学原料として用いてもよいし、直接燃焼することで熱源として用いてもよいし、燃料電池に供給して再度電力へ変換してもよい。余剰電力を水素に変換する方法としては、水の電気分解が最も一般的で注目されている方法である。電気分解に用いる液としては、純水の他にアルカリ水溶液(水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等)が一般的であり、装置の大型化が容易である点や、設備の初期投資コストが安いという点において、アルカリ水溶液が有利とされている。
【0003】
アルカリ水電解には、陰極および陽極を備えた電解槽と、電解槽内を陰極側の陰極室と陽極側の陽極室とに区切るように電解槽内に装着された隔膜とを備えたアルカリ水電解装置が用いられる。
アルカリ水電解用隔膜には、下記の性能が要求される。
・電力を節約して効率よくアルカリ水電解を行うためには、電解電圧を低く抑える必要がある。
・陰極で発生する水素と陽極で発生する酸素とが互いに混ざらないように、隔膜のガス透過性を低くする必要がある。
【0004】
アルカリ水電解用隔膜としては、たとえば、下記のものが知られている。
(1)当量重量950g/当量(イオン交換容量に換算すると1.05ミリ当量/g乾燥樹脂)のスルホン酸型官能基を有する含フッ素イオン交換膜と、ポリテトラフルオロエチレンの芯材とを有するイオン透過性隔膜(特許文献1)。
(2)スルホン酸型官能基を有するポリマーを含む層と、カルボン酸型官能基を有するポリマーを含む層との積層体からなるアルカリ水電解用隔膜(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/191140号
【特許文献2】特開2015−117407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、(1)、(2)のアルカリ水電解用隔膜を用いた場合、電解設備当たりの水素発生量を多くするために、アルカリ水電解における電流密度を高くした場合に、電解電圧が高くなるという問題がある。
また、(2)のアルカリ水電解用隔膜を用いた場合、スルホン酸型官能基を有するポリマーを含む層と、カルボン酸型官能基を有するポリマーを含む層との間で剥離が起きやすい。
【0007】
また、電力原単位の向上のために、陽極と陰極とで隔膜を直接挟んだゼロギャップ電解槽の導入が進められている。しかし、ゼロギャップ電解槽においては、隔膜の表面へのガスの付着による電解電圧の上昇がさらに発生しやすくなるという問題がある。
【0008】
本発明は、アルカリ水電解する際に、高電流密度においても電解電圧を低く抑えることができ、層間剥離が起きにくいアルカリ水電解用隔膜およびアルカリ水電解装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の態様を有する。
<1>スルホン酸型官能基を有するポリマーを含み、カルボン酸型官能基を有するポリマーを含まないイオン交換膜と、隔膜の少なくとも一方の最表層として設けられている親水性層とを有し、前記イオン交換膜の厚さが、25〜250μmである、アルカリ水電解用隔膜。
<2>前記イオン交換膜に埋め込まれた織布からなる補強材をさらに有する、<1>のアルカリ水電解用隔膜。
<3>スルホン酸型官能基を有するポリマーを含み、カルボン酸型官能基を有するポリマーを含まないイオン交換膜と、前記イオン交換膜に埋め込まれた織布からなる補強材と、隔膜の少なくとも一方の最表層として設けられている親水性層とを有する、アルカリ水電解用隔膜。
【0010】
<4>前記スルホン酸型官能基を有するポリマーのイオン交換容量が、0.9〜2.5ミリ当量/g乾燥樹脂である、<1>〜<3>のいずれかのアルカリ水電解用隔膜。
<5>前記補強材が、ポリテトラフルオロエチレンからなる補強糸、ポリフェニレンサルファイドからなる補強糸、ナイロンからなる補強糸およびポリプロピレンからなる補強糸からなる群から選ばれる少なくとも1種の補強糸を含む織布からなる、<2>〜<4>のいずれかのアルカリ水電解用隔膜。
<6>前記隔膜が、その両面の最表層として親水性層を有する、<1>〜<5>のいずれかのアルカリ水電解用隔膜。
<7>前記親水性層が、無機物粒子を含む無機物粒子層である、<1>〜<6>のいずれかのアルカリ水電解用隔膜。
<8>前記無機物粒子が、第4族元素または第14族元素の酸化物、窒化物および炭化物からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる無機物粒子である、<7>のアルカリ水電解用隔膜。
<9>前記無機物粒子が、SiO、SiC、ZrOまたはZrCからなる無機物粒子である、<7>または<8>のアルカリ水電解用隔膜。
【0011】
<10>前記スルホン酸型官能基を有するポリマーが、スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーである、<1>〜<9>のいずれかのアルカリ水電解用隔膜。
<11>前記イオン交換膜が、前記スルホン酸型官能基を有するポリマーとして、下式(u1)で表される単位を有するポリマーを含む、<1>〜<10>のいずれかのアルカリ水電解用隔膜。
−[CF−CF(−O−CFCF(CF)−O−(CF−SOM)]− ・・・(u1)
ただし、mは、1〜6の整数であり、Mは、アルカリ金属である。
<12>前記イオン交換膜が、前記スルホン酸型官能基を有するポリマーとして、下式(u2)で表される単位を有するポリマーを含む、<1>〜<10>のいずれかのアルカリ水電解用隔膜。
−[CF−CF(−O−(CF−SOM)]− ・・・(u2)
ただし、mは、1〜6の整数であり、Mは、アルカリ金属である。
【0012】
<13>前記イオン交換膜が、前記スルホン酸型官能基を有するポリマーとして、下式(u3)で表される単位を有するポリマーを含む、<1>〜<10>のいずれかのアルカリ水電解用隔膜。
【化1】
ただし、Qは、エーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基であり、Qは、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基であり、Rf3は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキル基であり、Xは、酸素原子、窒素原子、または炭素原子であり、Xが酸素原子の場合、aは0であり、Xが窒素原子の場合、aは1であり、Xが炭素原子の場合、aは2であり、Yは、フッ素原子、または1価のペルフルオロ有機基であり、rは、0または1であり、Mは、アルカリ金属である。
<14>前記式(u3)で表される単位が、下式(u31)で表される単位である、<13>のアルカリ水電解用隔膜。
【化2】
ただし、RF11は、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状のペルフルオロアルキレン基であり、RF12は、炭素数1〜6の直鎖状のペルフルオロアルキレン基であり、rは、0または1であり、Mは、アルカリ金属である。
<15>陰極および陽極を備えた電解槽と、前記電解槽内を前記陰極側の陰極室と前記陽極側の陽極室とに区切るように前記電解槽内に装着された<1>〜<14>のいずれかのアルカリ水電解用隔膜とを備えた、アルカリ水電解装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアルカリ水電解用隔膜およびアルカリ水電解装置によれば、アルカリ水電解する際に、高電流密度においても電解電圧を低く抑えることができ、層間剥離が起きにくい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のアルカリ水電解用隔膜の一例を示す断面図である。
図2】本発明のアルカリ水電解装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書においては、式(1)で表されるモノマーをモノマー(1)と記す。他の式で表されるモノマーも同様に記す。
本明細書における下記の用語の意味は以下の通りである。
「スルホン酸型官能基」とは、スルホン酸基(−SOH)、スルホン酸塩(−SO。ただし、Mはアルカリ金属または第4級アンモニウムである。)を意味する。
「カルボン酸型官能基」とは、カルボン酸基(−COOH)、カルボン酸塩(−COOM。ただし、Mはアルカリ金属または第4級アンモニウムである。)を意味する。
「スルホン酸型官能基に変換できる基」とは、加水分解処理、酸型化処理等の公知の処理によってスルホン酸型官能基に変換できる基を意味する。
ポリマーにおける「単位」は、モノマーが重合することによって形成された、該モノマー1分子に由来する原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された原子団であってもよく、重合反応によって得られたポリマーを処理することによって該原子団の一部が別の構造に変換された原子団であってもよい。
「一次粒子」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察される最小の粒子を意味する。また、「二次粒子」とは、一次粒子が凝集している粒子意味する。
「補強材」とは、隔膜の強度の向上させるために用いられる構造体を意味する。
「補強布」とは、補強材の原料として用いられる補強糸と犠牲糸とからなる布、または補強材そのものとして用いられる補強糸からなる布を意味する。
「補強糸」は、補強布を構成する糸であり、補強布をアルカリ水溶液に接触させても溶出することのない材料からなる糸である。補強糸は、補強布を含む膜をアルカリ水溶液に接触させて、補強布から犠牲糸の少なくとも一部が溶出した後も溶解せずに残存し、隔膜の機械的強度や寸法安定性の維持に寄与する。
「犠牲糸」は、補強布を構成する糸であり、補強布をアルカリ水溶液に接触させたときに、アルカリ水溶液にその少なくとも一部が溶出する材料からなる糸である。
【0016】
<アルカリ水電解用隔膜>
本発明の第1の態様のアルカリ水電解用隔膜(以下、単に「隔膜」とも記す。)は、スルホン酸型官能基を有するポリマー(以下、単に「ポリマー(S)」とも記す。)を含み、カルボン酸型官能基を有するポリマー(以下、単に「ポリマー(C)」とも記す。)を含まないイオン交換膜と、隔膜の少なくとも一方の最表層として設けられている親水性層とを有する。
第1の態様の隔膜は、イオン交換膜に埋め込まれた織布からなる補強材をさらに有していてもよい。
【0017】
本発明の第2の態様の隔膜は、ポリマー(S)を含み、ポリマー(C)を含まないイオン交換膜と、イオン交換膜に埋め込まれた織布からなる補強材と、隔膜の少なくとも一方の最表層として設けられている親水性層とを有する。
第2の態様の隔膜は、織布からなる補強材を有するため、イオン交換膜を薄くしても機械的強度を保つことができる、すなわち隔膜を充分に薄くできる。
【0018】
第1の態様のイオン交換膜の厚さは、25〜250μmである。第1の態様のイオン交換膜の厚さは、180μm以下が好ましく、110μm以下がより好ましく、70μm以下がさらに好ましい。
第2の態様のイオン交換膜の厚さは、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、25μm以上がさらに好ましい。第2の態様のイオン交換膜の厚さは、250μm以下が好ましく、180μm以下がより好ましく、110μm以下がさらに好ましく、70μm以下が特に好ましい。
イオン交換膜の厚さが5μm以上であれば、隔膜におけるガス透過が発生しにくい。イオン交換膜の厚さが5μm以上25μm未満であっても、補強材があれば、隔膜の機械的強度が高くなり、長期間の電解に耐えることができる。また、イオン交換膜の厚さが25μm以上であれば、補強材がなくても隔膜の機械的強度が高くなり、長期間の電解に耐えることができる。イオン交換膜の厚さが前記範囲の上限値以下であれば、膜抵抗が低く抑えられ、アルカリ水電解する際の電解電圧が低く抑えられる。なお、イオン交換膜の厚さは、補強材の厚さおよび親水性層の厚さを含まない。
隔膜の形状および大きさは、隔膜を装着する電解槽のサイズや電極のタイプに応じて適宜決定すればよい。
【0019】
図1は、本発明の隔膜の一例を示す断面図である。
隔膜1は、ポリマー(S)を含み、ポリマー(C)を含まないイオン交換膜10と、イオン交換膜10の第1の面に接する第1の親水性層12と、イオン交換膜10の第2の面に接する第2の親水性層14と、イオン交換膜10に埋め込まれた補強材16とを有する。
イオン交換膜10は、第1の層10aと、第2の層10bとを有する。
補強材16は、第1の層10aと第2の層10bの間に埋め込まれる。
【0020】
(イオン交換膜)
イオン交換膜は、ポリマー(S)を含み、ポリマー(C)を含まない。ポリマー(C)を含まないため、電解時の電圧上昇を抑えることができる。また、イオン交換膜がポリマー(C)を含まないということは、イオン交換膜がポリマー(S)を含む層とポリマー(C)を含む層とを有しないことである。イオン交換膜がポリマー(S)を含む層とポリマー(C)を含む層とを有するイオン交換膜においては、層間剥離が起きやすい。
また、ポリマー(S)を含む層は、高いガスバリア性を発現するために該ポリマーのみで構成された緻密層で構成されていることが好ましい。
【0021】
イオン交換膜は、単層であってもよく、多層であってもよい。イオン交換膜を多層とする場合、各層を形成するポリマー(S)は、同じであってもよく、異なっていてもよい。異なるポリマー(S)としては、ポリマー(S)を構成する単位の種類を異ならせたもの、ポリマー(S)におけるスルホン酸型官能基を有する単位の割合を異ならせたもの等が挙げられる。イオン交換膜が多層である場合には、ポリマー(S)で構成された緻密層を少なくとも1層有することが好ましい。
イオン交換膜に補強材を埋め込む際に、イオン交換膜を多層とし、製造時にそのいずれかの層間に補強材を挿入することによって、補強材が埋め込まれるようにすることが好ましい。
【0022】
イオン交換膜を2層とする場合、イオン交換膜における第2の層の厚さは、2.5〜125μmが好ましく、5〜90μmがより好ましく、12.5〜90μmがさらに好ましく、12.5〜55μmが特に好ましく、12.5〜35μmが最も好ましい。第2の層の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、補強材をイオン交換膜に埋め込みやすく、また、層間剥離が抑えられる。第2の層の厚さが前記範囲の上限値以下であれば、膜抵抗がさらに低く抑えられ、アルカリ水電解する際の電解電圧がさらに低く抑えられる。
イオン交換膜を2層とする場合、イオン交換膜における第1の層の厚さは、2.5〜125μmが好ましく、5〜90μmがより好ましく、12.5〜90μmがさらに好ましく、12.5〜55μmが特に好ましく、12.5〜35μmが最も好ましい。第1の層の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、補強材をイオン交換膜に埋め込みやすく、また、層間剥離が抑えられる。第1の層の厚さが前記範囲の上限値以下であれば、膜抵抗がさらに低く抑えられ、アルカリ水電解する際の電解電圧がさらに低く抑えられる。
【0023】
本発明においては、ポリマー(S)のイオン交換容量が特定の範囲内にあることが好ましい。本発明においては、ポリマー(S)のイオン交換容量およびポリマー(S)の含水率の両方が特定の範囲内にあることがより好ましい。
【0024】
ポリマー(S)のイオン交換容量は、0.9〜2.5ミリ当量/g乾燥樹脂が好ましく、1.1〜2.5ミリ当量/g乾燥樹脂がより好ましく、1.2〜1.8ミリ当量/g乾燥樹脂がさらに好ましい。ポリマー(S)のイオン交換容量が前記範囲の下限値以上であれば、膜抵抗が低く抑えられ、アルカリ水電解する際の電解電圧が低く抑えられる。ポリマー(S)のイオン交換容量が前記範囲の上限値以下であれば、隔膜の機械的強度が高くなり、長期間の電解使用に耐えることができる。
ポリマー(S)のイオン交換容量は、ポリマー(S)中のスルホン酸型官能基を有する単位の割合によって調整できる。
【0025】
ポリマー(S)の含水率は、10〜150質量%が好ましく、20〜150質量%がより好ましい。ポリマー(S)の含水率が前記範囲の下限値以上であれば、膜抵抗がさらに低く抑えられ、アルカリ水電解する際の電解電圧がさらに低く抑えられる。ポリマー(S)の含水率が前記範囲の上限値以下であれば、隔膜の機械的強度が高くなり、長期間の電解使用に耐えることができる。
ポリマー(S)の含水率は、ポリマー(S)中のスルホン酸型官能基を有する単位の割合、およびポリマー(S)の前駆体である、スルホン酸型官能基に変換できる基を有するポリマー(以下、単に「ポリマー(S’)」とも記す。)の加水分解処理の条件によって調整できる。
なお、上記ポリマー(S)の含水率は、後述実施例に記載した測定法で測定した含水率である。
【0026】
ポリマー(S)のTQ値は、イオン交換膜としての機械的強度および製膜性の点から、150℃以上が好ましく、170〜340℃がより好ましく、170〜300℃がさらに好ましい。
TQ値は、ポリマーの分子量に関係する値であって、容量流速:100mm/秒を示す温度で示したものである。TQ値が高いほど、高分子量であることを示す。
なお、上記TQ値は、後述実施例に記載した測定法で測定したTQ値である。
【0027】
ポリマー(S)としては、スルホン酸型官能基を有する公知のイオン交換樹脂が挙げられる。
ポリマー(S)としては、隔膜の化学的耐久性の点から、スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマー(以下、単に「含フッ素ポリマー(FS)」とも記す。)が好ましい。
【0028】
含フッ素ポリマー(FS)としては、たとえば、スルホン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマー(以下、単に「含フッ素ポリマー(FS’)」とも記す。)のスルホン酸型官能基に変換できる基を加水分解処理してスルホン酸型官能基に変換することによって得られたものが挙げられる。
【0029】
含フッ素ポリマー(FS)としては、モノマー(1)に基づく単位と、モノマー(2)に基づく単位およびモノマー(3)に基づく単位の少なくとも一方とを有する含フッ素ポリマー(以下、単に「含フッ素ポリマー(FS’1)」とも記す。)を加水分解処理して、Zを−SOM(ただし、Mはアルカリ金属である。)に変換した含フッ素ポリマー(以下、単に「含フッ素ポリマー(FS1)」とも記す。)が好ましく、モノマー(1)に基づく単位とモノマー(2)に基づく単位とを有する含フッ素ポリマー(FS’1)を加水分解処理して、Zを−SOMに変換した含フッ素ポリマー(FS1)がより好ましい。
CF=CX ・・・(1)
CF=CF−O−Rf1−Z ・・・(2)
CF=CF−Rf2−Z ・・・(3)
【0030】
およびXは、それぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、またはトリフルオロメチル基である。XおよびXとしては、隔膜の化学的耐久性の点から、フッ素原子が好ましい。
f1およびRf2は、それぞれ独立に炭素数1〜20のペルフルオロアルキレン基、または炭素原子間にエーテル性酸素原子を1つ以上有する、炭素数2〜20のペルフルオロアルキレン基である。ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。
Zは、スルホン酸型官能基に変換できる基である。Zとしては、−SOF、−SOCl、−SOBr等が挙げられる。
【0031】
モノマー(1)としては、CF=CF、CF=CFCl、CF=CFCF等が挙げられ、隔膜の化学的耐久性の点から、CF=CFが好ましい。
【0032】
モノマー(2)またはモノマー(3)としては、工業的な合成が容易である点から、下記の化合物が好ましい。
CF=CF−O−CFCF−SOF、
CF=CF−O−CFCFCF−SOF、
CF=CF−O−CFCFCFCF−SOF、
CF=CF−O−CFCF(CF)−O−CFCF−SOF、
CF=CF−O−CFCF(CF)−O−CFCFCF−SOF、
CF=CF−O−CFCF(CF)−SOF、
CF=CF−CFCF−SOF、
CF=CF−CFCFCF−SOF、
CF=CF−CF−O−CFCF−SOF。
モノマー(2)およびモノマー(3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
含フッ素ポリマー(FS1)は、他のモノマーに基づく単位をさらに有していてもよい。他のモノマーとしては、CF=CFRf4(Rf4は炭素数2〜10のペルフルオロアルキル基である。)、CF=CF−ORf5(Rf5は炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基である。)、CF=CFO(CFCF=CF(vは1〜3の整数である。)等が挙げられる。
含フッ素ポリマー(FS1)が他のモノマーに基づく単位をさらに有することによって、隔膜の可撓性や機械的強度を上げることができる。
【0034】
モノマー(1)に基づく単位の割合、ならびにモノマー(2)に基づく単位およびモノマー(3)に基づく単位の合計の割合は、含フッ素ポリマー(FS1)のイオン交換容量が上述した範囲となるように適宜設定すればよい。
【0035】
隔膜の膜抵抗がさらに低く抑えられ、アルカリ水電解する際の電解電圧がさらに低く抑えられる点から、イオン交換膜は、ポリマー(S)として、下式(u1)で表される単位を有するポリマーを含むことが好ましい。
−[CF−CF(−O−CFCF(CF)−O−(CF−SOM)]− ・・・(u1)
ただし、mは、1〜6の整数であり、Mは、アルカリ金属である。
【0036】
単位質量当たりのイオン交換容量を上げやすく、隔膜の膜抵抗がさらに低く抑えられ、アルカリ水電解する際の電解電圧がさらに低く抑えられる点から、イオン交換膜は、ポリマー(S)として、下式(u2)で表される単位を有するポリマーを含むことが好ましい。
−[CF−CF(−O−(CF−SOM)]− ・・・(u2)
ただし、mは、1〜6の整数であり、Mは、アルカリ金属である。
【0037】
イオン交換膜は、ポリマー(S)として、スルホン酸型官能基を2個以上、好ましくは2個有する単位を有するポリマーを含むことが好ましい。スルホン酸型官能基を2個以上有する単位を有するポリマーを含むことにより、同じモノマー濃度において単位質量当たりのイオン交換基濃度を高めることが可能となるため、スルホン型官能基を1個のみ有する単位を有するポリマーに比べて、少ないモノマー量でもより高いイオン交換能力を有することができる。
【0038】
スルホン酸型官能基を2個以上有する単位としては、下式(u3)で表される単位が好ましい。
【0039】
【化3】
【0040】
ただし、Qは、エーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基であり、Qは、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基であり、Rf3は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキル基であり、Xは、酸素原子、窒素原子、または炭素原子であり、Xが酸素原子の場合、aは0であり、Xが窒素原子の場合、aは1であり、Xが炭素原子の場合、aは2であり、Yは、フッ素原子、または1価のペルフルオロ有機基であり、rは、0または1であり、Mは、アルカリ金属である。
【0041】
式(u3)で表される単位としては、下式(u31)で表される単位が好ましい。
【0042】
【化4】
【0043】
ただし、RF11は、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状のペルフルオロアルキレン基であり、RF12は、炭素数1〜6の直鎖状のペルフルオロアルキレン基であり、rは、0または1であり、Mは、アルカリ金属である。
【0044】
(親水性層)
隔膜は、少なくとも一方の最表層として親水性層を有し、両方の面の最表層として親水性層を有することが好ましい。
隔膜の最表層として親水性層を設けることによって、隔膜の表面にガスが付着することが抑制され、その結果、アルカリ水電解の際に電解電圧が高くなることがさらに抑えられる。
親水性層としては、無機物粒子を含む無機物粒子層が挙げられる。
【0045】
無機物粒子は、酸またはアルカリに対する耐食性に優れ、親水性を有するものが好ましい。具体的には、第4族元素または第14族元素の酸化物、窒化物および炭化物からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、SiO、SiC、ZrO、ZrCがより好ましく、ZrOが特に好ましい。
【0046】
無機物粒子の平均粒子径は、0.5〜1.5μmが好ましく、0.7〜1.3μmがより好ましい。無機物粒子の平均粒子径が前記下限値以上であれば、高いガス付着抑制効果が得られる。無機物粒子の平均粒子径が前記上限値以下であれば、無機物粒子の脱落耐性に優れる。
なお、ここでいう無機物粒子の平均粒径とは、一次粒子が凝集している粒子(二次粒子)の平均粒子径を意味し、無機物粒子を濃度が0.01質量%以下となるようにエタノールに分散し、マイクロトラックを用い、得られた粒度分布の全体積を100%とした累体積正規分布曲線における累積体積が50%となる点の粒子径(D50)を示す。
【0047】
親水性層はバインダーを含んでいてもよい。バインダーとしては、公知の親水性層(ガス解放層)に用いられる公知のバインダーを採用でき、たとえば、メチルセルロース、スルホン酸基を有する含フッ素ポリマー等が挙げられる。
スルホン酸基を有する含フッ素ポリマーとしては、モノマー(1)に基づく単位と、モノマー(2)に基づく単位およびモノマー(3)に基づく単位の少なくとも一方とを有する含フッ素ポリマー(FS’1)を加水分解処理し、ついで酸型化処理してZを−SOHに変換した含フッ素ポリマーが挙げられる。
【0048】
無機物粒子の量は、隔膜の面積あたり、0.5〜50g/mが好ましく、0.5〜30g/mがより好ましく、0.5〜25g/mがさらに好ましい。無機物粒子の量が前記範囲の下限値以上であれば、充分なガス付着抑制効果が得られる。無機物粒子の量が前記範囲の上限値以下であれば、膜抵抗が低く抑えられ、アルカリ水電解する際の電解電圧が低く抑えられる。
【0049】
バインダーの量は、無機物粒子およびバインダーの合計質量に対する質量比で、0.15〜0.3が好ましく、0.15〜0.25がより好ましく、0.16〜0.20がさらに好ましい。バインダーの量が前記範囲の下限値以上であれば、無機物粒子の脱落耐性に優れる。バインダーの量が前記範囲の上限値以下であれば、高いガス付着抑制効果が得られる。
【0050】
(補強材)
補強材は、織布からなる。織布からなる補強材は、他の補強材(不織布、フィブリル、多孔体等)に比べ、隔膜の膜抵抗の上昇を抑えることができる。
補強材としては、補強糸と犠牲糸とからなる補強布(以下、単に「補強布(A)」とも記す。)を原料とした補強材、または補強糸からなる補強布(以下、単に「補強布(B)」とも記す。)そのものの補強材が好ましく、膜抵抗が低く抑えられる点からは、補強布(A)を原料とした補強材が好ましい。
【0051】
補強布(A)を原料とした補強材は、隔膜の製造工程において、ポリマー(S’)を含むイオン交換膜前駆体に補強布(A)が埋め込まれた隔膜前駆体を、アルカリ水溶液に浸漬することによって、補強布(A)中の犠牲糸の少なくとも一部が溶出して形成された補強布(A)に由来の補強糸と任意に含まれる犠牲糸とから形成される材料である。補強布(A)を原料とした補強材は、犠牲糸の一部が溶解した場合は補強糸と溶解残りの犠牲糸とからなり、犠牲糸の全部が溶解した場合は補強糸のみからなる。
【0052】
補強布(A)は、補強糸と犠牲糸が製織されてなる。補強布(A)における補強糸は、経糸および緯糸として製織され、補強布(A)における犠牲糸は、経糸および緯糸として製織され、これらの経糸と緯糸は、平織等の通常の製織法による場合は直交している。
【0053】
補強布(A)における補強糸の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」とも記す。)等の含フッ素ポリマー、ポリフェニルスルホン、ポリフェニレンサルファイド(以下、「PPS」とも記す。)、ポリプロピレン(以下、「PP」とも記す。)、ナイロンが挙げられ、PTFE、PPS、ナイロンおよびPPからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
補強布(A)における犠牲糸の材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0054】
補強布(B)の形態としては、織布、不織布等が挙げられ、機械的強度の点から、織布が好ましい。補強布(B)が織布である場合、織布は、補強糸が製織されてなることが好ましい。
補強布(B)における補強糸の材料としては、PTFE等の含フッ素ポリマー、ポリフェニルスルホン、PPS、PP、ナイロン等が挙げられ、PTFE、PPS、ナイロンおよびPPからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0055】
(隔膜の製造方法)
本発明の隔膜は、たとえば、下記の工程(a)〜(c)を有する製造方法によって製造できる。
工程(a):ポリマー(S’)を含むイオン交換膜前駆体に補強布が埋め込まれた隔膜前駆体を得る工程。
工程(b):工程(a)で得られた隔膜前駆体をアルカリ水溶液に浸漬して、スルホン酸型官能基に変換できる基を加水分解処理してスルホン酸型官能基に変換し、隔膜を得る工程。
工程(c):必要に応じて、工程(a)と同時にもしくは工程(a)と工程(b)との間に、イオン交換膜前駆体の表面の少なくとも一方に親水性層を形成する、または工程(b)の後にイオン交換膜の表面の少なくとも一方に親水性層を形成する工程。
【0056】
(工程(a))
隔膜前駆体は、ポリマー(S’)および補強布を用いた公知の方法によって製造できる。イオン交換膜前駆体が多層の場合、ポリマー(S’)を含むフィルムとポリマー(S’)を含むフィルムとの間に補強材を挟み、これらを積層する、または補強材の両面にポリマー(S’)をコーティングすることによって、イオン交換膜前駆体に補強材を埋め込むことができる。
【0057】
(工程(b))
アルカリ水溶液としては、アルカリ金属水酸化物、水溶性有機溶媒および水を含むものが好ましい。
【0058】
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。アルカリ金属水酸化物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
水溶性有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチルピロリドン等が挙げられ、ジメチルスルホキシドが好ましい。水溶性有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
アルカリ水溶液におけるアルカリ金属水酸化物の濃度は、1〜60質量%が好ましく、3〜55質量%がより好ましく、5〜50質量%がさらに好ましい。アルカリ水溶液における水溶性有機溶媒の濃度は、1〜60質量%が好ましく、3〜55質量%がより好ましく、5〜50質量%がさらにより好ましい。アルカリ金属水酸化物の濃度および水溶性有機溶媒の濃度が前記範囲内であれば、加水分解処理が速やかに完了し、隔膜の生産性が向上する。
【0061】
隔膜前駆体が浸漬されるアルカリ水溶液の温度は、30℃以上100℃未満が好ましく、35℃以上100℃未満がより好ましく、40℃以上100℃未満がさらに好ましい。アルカリ水溶液の温度が前記範囲の下限値以上であれば、加水分解処理が速やかに完了し、隔膜の生産性が向上する。アルカリ水溶液の温度が前記範囲の上限値以下であれば、アルカリ水電解の際の電流効率のばらつきの小さい隔膜が得られる。
【0062】
隔膜前駆体をアルカリ水溶液に浸漬する時間は、3〜300分間が好ましく、5〜120分間がより好ましい。浸漬時間が前記範囲の下限値以上であれば、スルホン酸型官能基に変換できる基からスルホン酸型官能基への変換率が高い。浸漬時間が前記範囲の上限値以下であれば、アルカリ水電解の際の電流効率のばらつきの小さい隔膜が得られる。
【0063】
加水分解処理の後、隔膜をカリウムイオン、ナトリウムイオン、または水素イオンを含む水溶液に接触させ、スルホン酸型官能基の対イオン(カチオン)を置換してもよい。スルホン酸型官能基のカチオンを、アルカリ水中に存在するカチオンと同じカチオンに置換することによって、置換したカチオンが存在する環境下でのアルカリ水電解に供することができ、さらに隔膜の寸法安定性が向上する。
【0064】
(工程(c))
親水性層が無機物粒子層である場合、無機物粒子層は、たとえば、下記の方法によって形成できる。
・無機物粒子とバインダーと分散媒とを含む塗布液を、イオン交換膜前駆体またはイオン交換膜の表面に塗布し、乾燥する方法。
・無機物粒子とバインダーと分散媒とを含むペースト状の塗布液を転写基材に塗布し、乾燥して無機物粒子層を形成し、これを、イオン交換膜前駆体またはイオン交換膜の表面に転写する方法。
【0065】
塗布液の調製方法としては、無機物粒子とバインダーと分散媒を混合し、ボールミル等を用いて撹拌して均一にした後に、ビーズミルによって分散処理を行う方法が好ましい。該方法を用いることによって、無機物粒子の平均二次粒子径を上述した範囲内に制御しやすい。
【0066】
分散媒としては、バインダーがメチルセルロースである場合は、水が挙げられ、スルホン酸基を有する含フッ素ポリマーである場合は、アルコール系溶媒(エタノール、イソプロピルアルコール等)が挙げられる。
【0067】
塗布液の塗布方法としては、たとえば、スプレー法、ロールコート法等が挙げられる。
乾燥方法としては、加熱ロールを用いる方法、オーブンを用いる方法等が挙げられ、工業的には、加熱ロールを備えたロールプレス機によって連続的に加熱処理する方法が好ましい。
乾燥温度は、30℃以上が好ましく、分散媒の沸点以上がより好ましい。乾燥温度は、ポリマー(S’)またはポリマー(S)の融点未満が好ましい。
【0068】
転写基材の無機物粒子層をイオン交換膜前駆体またはイオン交換膜の表面に転写する方法としては、たとえば、一対の金属ロールおよびゴムライニングロールを有する積層ロールによって、無機物粒子層とイオン交換膜前駆体またはイオン交換膜とを加熱圧着する方法等が挙げられる。
加熱圧着は、たとえば、100〜220℃において、1〜150cm/分、1〜100kg/cmの線圧下で行うことができる。
【0069】
(作用機序)
以上説明した本発明の隔膜にあっては、ポリマー(S)を含み、ポリマー(C)を含まないため、電解時の電圧上昇を抑えることができる。また、ポリマー(S)を含む層とポリマー(C)を含む層とを有しないため、層間剥離が起きにくい。
また、以上説明した本発明の隔膜にあっては、親水性層を有するため、アルカリ水電解時に発生するガスの付着が抑制され、その結果、アルカリ水電解の際に電解電圧が高くなることがさらに抑えられる。電力原単位の向上のために、陽極と陰極とで隔膜を直接挟んだゼロギャップ電解槽の導入が進められている。本発明の隔膜にあっては、親水性層による電解電圧上昇抑制とともに、隔膜におけるガス透過を抑制し、高品質のガスを生成することが可能である。
【0070】
また、第1の態様の隔膜にあっては、イオン交換膜の厚さが特定の範囲内にあるため、機械的強度が充分に高くなるとともに、膜抵抗が低く抑えられ、アルカリ水電解する際の電解電圧が低く抑えられる。
また、第2の態様の隔膜にあっては、イオン交換膜に補強材が埋め込まれているため、隔膜の機械的強度が充分に高くなり、長期間の電解に耐えることができるとともに、イオン交換膜を充分に薄くできる。その結果、膜抵抗が低く抑えられ、アルカリ水電解する際の電解電圧が低く抑えられる。
【0071】
また、ポリマー(S)のイオン交換容量が特定の範囲内にあれば、膜抵抗がさらに低くなるため、アルカリ水電解する際に、高電流密度においても電解電圧をさらに低く抑えることができる。
また、スルホン酸型官能基またはカルボン酸型官能基を有するポリマーの含水率が特定の範囲内にあれば、従来の隔膜に比べ、膜抵抗がさらに低い。そのため、アルカリ水電解する際に、高電流密度においても電解電圧をさらに低く抑えることができる。
【0072】
<アルカリ水電解装置>
本発明のアルカリ水電解装置は、陰極および陽極を備えた電解槽と、電解槽内を陰極側の陰極室と陽極側の陽極室とに区切るように電解槽内に装着された本発明の隔膜とを備える。
【0073】
図2は、本発明のアルカリ水電解装置の一例を示す模式図である。
アルカリ水電解装置100は、陰極112および陽極114を備える電解槽110と、電解槽110内を陰極112側の陰極室116と陽極114側の陽極室118とに区切るように電解槽110内に装着された隔膜1とを有する。
【0074】
陰極112は、隔膜1に接触させて配置してもよく、隔膜1と間隔を開けて配置してもよい。
陰極室116を構成する材料としては、アルカリ水および水素に耐性がある材料が好ましい。該材料としては、ステンレス、ニッケル等が挙げられる。
【0075】
陽極114は、隔膜1に接触させて配置してもよく、隔膜1と間隔を開けて配置してもよい。
陽極室118を構成する材料としては、アルカリ水および酸素に耐性がある材料が好ましい。該材料としては、ニッケル、チタン等が挙げられる。
【0076】
(アルカリ水電解)
アルカリ水溶液を電解して水素および酸素を製造する場合は、アルカリ水電解装置100の陽極室118に所定濃度のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物を含む水溶液(以下、アルカリ水溶液とも記す。)を供給し、陰極室116に所定濃度のアルカリ水溶液を供給し、陰極室116および陽極室118から所定濃度のアルカリ水溶液を排出しながら電解する。
アルカリ水溶液としては、電導度や入手のしやすさの点から、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
【0077】
陽極室118に供給されるアルカリ水溶液の濃度は、10〜48質量%が好ましい。
陰極室116および陽極室118から排出されるアルカリ水溶液の濃度は、5〜40質量%が好ましい。
電解槽110内の温度は、50〜100℃が好ましい。
電流密度は、4〜12kA/mが好ましい。
【0078】
(アルカリ水電解装置の他の実施形態)
本発明のアルカリ水電解装置は、隔膜として本発明の隔膜を備えたものであればよく、隔膜以外の構成は、公知のものであってもよい。
電解槽は、隔膜を挟んで陰極室と陽極室とを交互に並べ、陰極室同士と陽極室同士とが電気的に並列になっている単極型であってもよく、陰極室の背面と陽極室の背面とが電気的に接続され、各室が電気的に直列になっている複極型であってもよい。
【0079】
(作用機序)
以上説明した本発明のアルカリ水電解装置にあっては、本発明の隔膜を備えたものであるため、アルカリ水電解する際に、高電流密度においても電解電圧を低く抑えることができる。また、隔膜において層間剥離が起きにくい。
【実施例】
【0080】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
例1〜4は実施例であり、例5〜7は比較例である。
【0081】
(イオン交換容量)
ポリマー(S)の約0.5mgを、約270℃にて平板プレスしてフィルム状にし、これを透過型赤外分光分析装置によって分析し、得られたスペクトルのCFピーク、CFピークおよびOHピークの各ピーク高さを用いて、イオン交換容量を算出した。
【0082】
(含水率)
ポリマー(S’)を、プレス機を用いて成形し、厚さ100μmのフィルムを得た。フィルムから4cm×4cmのサンプルを切り出し、サンプルの質量Wを測定した。質量W、およびポリマー(S’)の1g乾燥樹脂中のスルホン酸型官能基に変換できる基の当量から、Na型のポリマー(S)の乾燥質量W1’を算出した。サンプルをアルカリ金属水酸化物、水溶性有機溶媒および水を含むアルカリ水溶液に浸漬し、16時間かけて加水分解処理した。12質量%の水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した後、室温で12質量%の水酸化ナトリウム水溶液中に16時間浸漬し、液滴を拭きとり後、質量Wを測定した。サンプルを水洗して水酸化ナトリウムを除去し、90℃の真空乾燥機で絶乾させた。このときの質量WDryを測定し、W1’とWDryが同等であることを確認した。含水率は下式から求めた。
ΔW=(W−W1’)/W1’×100
【0083】
(TQ値)
TQ値は、容量流速:100mm/秒を示す温度として求めた。容量流速は、島津フローテスターCFD−100D(島津製作所社製)を用い、ポリマー(S)を3MPaの加圧下に一定温度のオリフィス(径:1mm、長さ:1mm)から溶融、流出させたときの流出するポリマーの量(単位:mm/秒)とした。
【0084】
(イオン交換膜の厚さ)
イオン交換膜の厚さは、以下のようにして求めた。
隔膜を90℃で2時間乾燥させた後、23℃、50%RHの環境下で隔膜の断面を光学顕微鏡にて観察し、画像ソフト(イノテック社製 Pixs2000 PRO)を用いて各々10か所測定し、平均値を求めた。補強材を含む場合は、補強材を構成する補強糸および犠牲糸が存在しない位置における各層の厚さを求めた。
【0085】
(アルカリ水電解装置)
電解槽(電解面サイズ:縦50mm×横50mm)としては、陰極室の液入口を陰極室下部に配し、液出口を陰極室上部に配し、陽極室の液入口を陽極室下部に配し、液出口を陽極室上部に配したものを用いた。
陰極および陽極としては、SUS304のパンチドメタル(短径:5mm、長径:10mm)にルテニウム入りラネーニッケルを電着したものを用いた。
【0086】
(電解電圧)
電解槽に隔膜を、電解槽内を陰極側の陰極室と陽極側の陽極室とに区切るように装着した。
陽極と隔膜とが接触するように陰極側を加圧状態にし、所定濃度の水酸化カリウム水溶液および水を、陽極室および陰極室に供給しながら、陽極室および陰極室から排出される水酸化カリウム水溶液の濃度を28〜32質量%、または13〜17質量%に保ちつつ、温度:80℃、電流密度:6kA/mの条件にてアルカリ水電解を行い、12時間以上電圧が安定したことを確認した際の槽電圧の値を電解電圧とした。
【0087】
(生成水素ガスの純度)
電解電圧を測定する際の条件と同じ条件にてアルカリ水電解を行い、電解槽の陽極室から発生するガスをガスサンプラーにサンプリングした。サンプルガスと、水素濃度が既知の標準ガスを、熱伝導度検出器を有するガスクロマトグラフ(SHIMADZU社製、GC−8A)に導入し、サンプルガス中の水素純度を決定した。
【0088】
(含フッ素ポリマー(FS’−1)の製造)
CF=CFとモノマー(2−1)とを共重合して含フッ素ポリマー(FS’−1)(加水分解後のイオン交換容量:1.1ミリ当量/g乾燥樹脂、加水分解後の含水率:20質量%、加水分解後のTQ値:215℃)を得た。
CF=CF−O−CFCF(CF)−O−CFCF−SOF ・・・(2−1)
【0089】
(含フッ素ポリマー(FS’−2)の製造)
CF=CFとモノマー(2−1)とを共重合して含フッ素ポリマー(FS’−2)(加水分解後のイオン交換容量:1.25ミリ当量/g乾燥樹脂、加水分解後の含水率:40質量%、加水分解後のTQ値:215℃)を得た。
【0090】
(含フッ素ポリマー(FS’−3)の製造)
CF=CFとモノマー(2−1)とを共重合して含フッ素ポリマー(FS’−3)(加水分解後のイオン交換容量:1.05ミリ当量/g乾燥樹脂、加水分解後の含水率:18質量%、加水分解後のTQ値:215℃)を得た。
【0091】
(含フッ素ポリマー(FC’−1)の製造)
CF=CFと、カルボン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素モノマーであるCF=CF−O−CFCFCF−COOCHとを共重合して、カルボン酸型官能基に変換できる基を有する含フッ素ポリマー(FC’−1)(加水分解後のイオン交換容量:1.08ミリ当量/グラム乾燥樹脂)を得た。
【0092】
(フィルム1の製造)
含フッ素ポリマー(FS’−1)を溶融押し出し法により成形し、含フッ素ポリマー(FS’−1)からなるフィルム1(厚さ:30μm)を得た。
【0093】
(フィルム2の製造)
含フッ素ポリマー(FS’−1)を溶融押し出し法により成形し、含フッ素ポリマー(FS’−1)からなるフィルム2(厚さ:80μm)を得た。
【0094】
(フィルム3の製造)
含フッ素ポリマー(FS’−2)を溶融押し出し法により成形し、含フッ素ポリマー(FS’−2)からなるフィルム3(厚さ:30μm)を得た。
【0095】
(フィルム4の製造)
含フッ素ポリマー(FS’−2)を溶融押し出し法により成形し、含フッ素ポリマー(FS’−2)からなるフィルム4(厚さ:10μm)を得た。
【0096】
(フィルム5の製造)
含フッ素ポリマー(FS’−3)を溶融押し出し法により成形し、含フッ素ポリマー(FS’−3)からなるフィルム5(厚さ:200μm)を得た。
【0097】
(フィルム6の製造)
含フッ素ポリマー(FS’−3)を溶融押し出し法により成形し、含フッ素ポリマー(FS’−3)からなるフィルム6(厚さ:20μm)を得た。
【0098】
(フィルム7の製造)
含フッ素ポリマー(FC’−1)と含フッ素ポリマー(FS’−1)を溶融押し出し法により成形し、含フッ素ポリマー(FC’−1)からなる層(12μm)と含フッ素ポリマー(FS’−1)からなる層(68μm)の二層構成のフィルム7を得た。
【0099】
(無機物粒子層付き転写基材の製造)
1質量%のメチルセルロース水溶液にZrO(平均粒子径:1μm)を分散させたペーストを、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」とも記す。)フィルムからなる転写基材の表面にグラビアロールコート法にて塗布し、乾燥して、12g/mのZrOを含む無機物粒子層付き転写基材を得た。以下、得られた無機物粒子層付き転写基材を、以下「転写基材1」という。
【0100】
(補強布1の製造)
PTFEからなる100デニールの糸を経糸および緯糸に用い、PETからなる30デニール6フィラメントの糸を経糸および緯糸に用い、PTFE糸の密度が27本/インチ、PET糸の密度が53本/インチとなるように平織して補強布1を得た。
【0101】
(補強布2の製造)
PTFEからなる50デニールの糸を経糸および緯糸に用い、PTFE糸の密度が80本/インチとなるように平織して補強布2を得た。
【0102】
(例1)
転写基材1/フィルム1/補強布1/フィルム2/転写基材1をこの順で、かつ2枚の転写基材1の無機物粒子層がそれぞれフィルム1およびフィルム2に接するように重ね合わせた。重ね合わせた各部材を温度:200℃、面圧:30MPa/mの平板プレス機にて10分間加熱圧着した後、両面の転写基材を温度:50℃で剥離して、隔膜前駆体を得た。
【0103】
ジメチルスルホキシド/水酸化カリウム/水=30/5.5/64.5(質量比)の溶液に、隔膜前駆体を95℃で30分間浸漬し、隔膜前駆体中のスルホン酸型官能基に変換できる基を加水分解して、K型のスルホン酸型官能基に変換した後、水洗し、乾燥させ、イオン交換膜の厚さが110μmの隔膜を得た。この隔膜を用いてアルカリ水電解を行い、電解電圧を求め、生成水素ガスの純度を評価した。結果を表1に示す。
【0104】
(例2)
転写基材1/フィルム3/補強布2/フィルム3/転写基材1をこの順で、かつ2枚の転写基材1の無機物粒子層がそれぞれフィルム3に接するように重ね合わせた以外は例1と同様に実施し、イオン交換膜の厚さが60μmの隔膜を得た。この隔膜を用いてアルカリ水電解を行い、電解電圧を求め、生成水素ガスの純度を評価した。結果を表1に示す。
【0105】
(例3)
フィルム3をフィルム4に変更した以外は例2と同様に実施し、イオン交換膜の厚さが20μmの隔膜を得た。この隔膜を用いてアルカリ水電解を行い、電解電圧を求め、生成水素ガスの純度を評価した。結果を表1に示す。
【0106】
(例4)
転写基材1/フィルム3/転写基材1をこの順で重ねた以外は例2と同様に実施し、イオン交換膜の厚さが30μmの隔膜を得た。この隔膜を用いてアルカリ水電解を行い、電解電圧を求め、生成水素ガスの純度を評価した。結果を表1に示す。
【0107】
(例5)
フィルム2をフィルム7に変更した以外は例1と同様に実施し、イオン交換膜の厚さが110μmである、スルホン酸型官能基を含む層とカルボン酸型官能基を含む層とを有する隔膜を得た。この隔膜を用いてアルカリ水電解を行い、電解電圧を求め、生成水素ガスの純度を評価した。結果を表1に示す。なお、電解後に膜を解体したところ、スルホン酸型官能基を含む層とカルボン酸型官能基を含む層の間にて層間剥離が発生していた。
【0108】
(例6)
フィルム5を隔膜前駆体とし、ジメチルスルホキシド/水酸化カリウム/水=30/5.5/64.5(質量比)の溶液に隔膜前駆体を95℃で30分間浸漬し、隔膜前駆体中のスルホン酸型官能基に変換できる基を加水分解して、K型のスルホン酸型官能基に変換した後、水洗し、乾燥させ、イオン交換膜の厚さが200μmの隔膜を得た。この隔膜を用いてアルカリ水電解を行い、電解電圧を求め、生成水素ガスの純度を評価した。結果を表1に示す。
【0109】
(例7)
フィルム3をフィルム6に変更した以外は例4と同様に実施し、イオン交換膜の厚さが20μmの隔膜を得ようとしたが、ジメチルスルホキシド/水酸化カリウム/水=30/5.5/64.5(質量比)の溶液に、隔膜前駆体を95℃で30分間浸漬したところ、強度が足りず操作時に塑性変形によりイオン交換膜が延伸および破断し、隔膜を得ることができなかった。
【0110】
【表1】







【0111】
例1〜例4の隔膜は、ポリマー(S)を含み、ポリマー(C)を含まないイオン交換膜を主体とし、かつ親水性層を有し、イオン交換膜の厚さが250μm以下であるため、アルカリ水電解する際に、高電流密度においても電解電圧を低く抑えることができ、かつ水素ガスの純度を高純度に保つことができた。
例3の隔膜は、ポリマー(S)を含み、ポリマー(C)を含まないイオン交換膜を主体とし、かつ親水性層を有し、かつ補強材を有するため、イオン交換膜の厚さが25μm以下であっても充分な機械的強度を維持しつつ電解電圧をさらに低く抑えることができた。
例5の隔膜は、ポリマー(S)およびポリマー(C)を含むイオン交換膜であるため、層間剥離が発生し、電解電圧が高くなった。
例6の隔膜は、親水性層を有さないイオン交換膜であるため、膜表層部にガスが付着し、ガス付着抵抗損の増大により電解電圧が高くなった。
例7の隔膜は、イオン交換容量が1.05ミリ当量/g乾燥樹脂と低いにも関わらず、補強材を有さず、イオン交換膜の厚さが20μmであったため、機械的強度が不足し、隔膜を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の隔膜は、アルカリ水溶液を電解し、水素および酸素を製造するアルカリ水電解に用いるイオン透過性隔膜として有用である。
なお、2016年10月13日に出願された日本特許出願2016−201803号の明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0113】
1 隔膜、10 イオン交換膜、10a 第1の層、10b 第2の層、12 第1の親水性層、14 第2の親水性層、16 補強材、100 アルカリ水電解装置、110 電解槽、112 陰極、114 陽極、116 陰極室、118 陽極室。
図1
図2